(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164842
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物、成形体およびプロピレン重合体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20221020BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221020BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20221020BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20221020BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20221020BHJP
C08F 297/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K3/013
C08K7/04
C08F10/06
C08F210/16
C08F297/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138570
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2021507370の分割
【原出願日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019051001
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板倉 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小池 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】廣井 遼子
(72)【発明者】
【氏名】福島 博之
(72)【発明者】
【氏名】鶴来 交
(72)【発明者】
【氏名】柴原 敦
(72)【発明者】
【氏名】西埜 文晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 康平
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 康寛
(72)【発明者】
【氏名】野田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】道上 憲司
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴憲
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、剛性に優れる成形体を製造することができるプロピレン重合体およびプロピレン系樹脂組成物、ならびに前記成形体を提供することにある。
【解決手段】下記要件(1)~(3)を満たすプロピレン重合体(A)を含有する、プロピレン系樹脂組成物:
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)が5000~22000である;
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5である;
(3)昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)~(3)を満たすプロピレン重合体(A)を含有する、プロピレン系樹脂組成物:
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)が5000~22000である;
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5である;
(3)昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下である。
【請求項2】
前記プロピレン重合体(A)の13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%である、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記プロピレン重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が140℃以上である、請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記プロピレン重合体(A)の13C-NMRにより求められる、全プロピレン単位中の2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計割合が0.3モル%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記プロピレン重合体(A)におけるプロピレンに由来する構成単位の含有割合が98.0モル%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記プロピレン重合体(A)が、嵩密度が0.20(g/cm3)以上のプロピレン重合体(A)粒子である請求項1~5のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記プロピレン重合体(A)が、以下の方法(i)により測定した微粉量が3.0質量%以下のプロピレン重合体(A)粒子である請求項1~6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
〔方法(i)〕
重合体粒子を目開き100μmの篩上で5分間振動させ、篩上に残った重合体粒子と篩を通過した重合体粒子の質量を測定し、以下の計算式から微粉量を算出する。
微粉量(質量%)=W1/(W1+W2)×100
W1:目開き100μmの篩を通過した重合体粒子の質量(g)
W2:目開き100μmの篩上に残った重合体粒子の質量(g)
【請求項8】
前記プロピレン重合体(A)1~99質量%と、下記要件(4)を満たすプロピレン重合体(B)1~99質量%とを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5であり、かつ数平均分子量(Mn)が22000を超える。
【請求項9】
前記プロピレン重合体(A)1~99質量%と、下記要件(5)を満たすプロピレン重合体(B)1~99質量%とを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
(5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5を超える。
【請求項10】
前記プロピレン重合体(B)が、プロピレン単独重合体部(B1)50~99質量%とプロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)1~50質量%とからなるプロピレン系ブロック共重合体であり、
前記プロピレン単独重合体部(B1)が、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%であるプロピレン単独重合体からなり、
前記プロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)が、プロピレンに由来する構成単位40.0~90.0モル%と、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位10.0~60.0モル%とを含有する、
請求項8または9に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項11】
前記プロピレン重合体(B)の13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が98.0~100%である、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項12】
無機充填剤を0.01~70質量%の範囲で含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項13】
無機繊維を0.5~70質量%の範囲で含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項14】
核剤を0.01~1質量%の範囲で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を少なくとも用いて形成された成形体。
【請求項16】
自動車用部品である、請求項15に記載の成形体。
【請求項17】
下記要件(1)~(3)を満たすプロピレン重合体(A):
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)が5000~22000である;
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5である;
(3)昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下である。
【請求項18】
13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%である、請求項17に記載のプロピレン重合体(A)。
【請求項19】
示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が140℃以上である、請求項17または18に記載のプロピレン重合体(A)。
【請求項20】
13C-NMRにより求められる、全プロピレン単位中の2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計割合が0.3モル%以下である、請求項17~19のいずれか1項に記載のプロピレン重合体(A)。
【請求項21】
プロピレンに由来する構成単位の含有割合が98.0モル%以上である、請求項17~20のいずれか1項に記載のプロピレン重合体(A)。
【請求項22】
嵩密度が0.20(g/cm3)以上のプロピレン重合体(A)粒子である請求項17~21のいずれか1項に記載のプロピレン重合体(A)。
【請求項23】
以下の方法(i)により測定した微粉量が3.0質量%以下のプロピレン重合体(A)粒子である請求項17~22のいずれか1項に記載のプロピレン重合体(A)。
〔方法(i)〕
重合体粒子を目開き100μmの篩上で5分間振動させ、篩上に残った重合体粒子と篩を通過した重合体粒子の質量を測定し、以下の計算式から微粉量を算出する。
微粉量(質量%)=W1/(W1+W2)×100
W1:目開き100μmの篩を通過した重合体粒子の質量(g)
W2:目開き100μmの篩上に残った重合体粒子の質量(g)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物、成形体およびプロピレン重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体は、機械物性や成形性に優れ、他材料に比べて相対的にコストパフォーマンスが有利であることにより、自動車用部品や家電用部品など様々な分野での利用が進んでいる(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-214202号公報
【特許文献2】特開2016-084387号公報
【特許文献3】特開2007-224179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車業界では環境に配慮した低燃費車の開発が盛んに行われており、自動車材料の分野においても軽量化を目的とした、材料の樹脂化やさらなる薄肉化が求められている。このため、バンパー材をはじめとする自動車材料として数多くの実績があるプロピレン系材料における改善の期待は大きく、主に金属材料の代替として使用することを目的として、さらなる高剛性を有するプロピレン重合体、およびプロピレン系樹脂組成物の開発が求められている。
【0005】
上記のような従来技術に鑑み、本発明の課題は、剛性に優れる成形体を製造することができるプロピレン重合体およびプロピレン系樹脂組成物、ならびに前記成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、以下に記載の組成を有するプロピレン重合体およびプロピレン系樹脂組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[23]に関する。
【0007】
[1]下記要件(1)~(3)を満たすプロピレン重合体(A)を含有する、プロピレン系樹脂組成物:
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)が5000~22000である;
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5である;
(3)昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下である。
[2]前記プロピレン重合体(A)の13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%である、前記[1]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[3]前記プロピレン重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が140℃以上である、前記[1]または[2]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[4]前記プロピレン重合体(A)の13C-NMRにより求められる、全プロピレン単位中の2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計割合が0.3モル%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[5]前記プロピレン重合体(A)におけるプロピレンに由来する構成単位の含有割合が98.0モル%以上である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[6]前記プロピレン重合体(A)が、嵩密度が0.20(g/cm3)以上のプロピレン重合体(A)粒子である前記[1]~[5]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[7]前記プロピレン重合体(A)が、以下の方法(i)により測定した微粉量が3.0質量%以下のプロピレン重合体(A)粒子である前記[1]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
〔方法(i)〕
重合体粒子を目開き100μmの篩上で5分間振動させ、篩上に残った重合体粒子と篩を通過した重合体粒子の質量を測定し、以下の計算式から微粉量を算出する。
微粉量(質量%)=W1/(W1+W2)×100
W1:目開き100μmの篩を通過した重合体粒子の質量(g)
W2:目開き100μmの篩上に残った重合体粒子の質量(g)
[8]前記プロピレン重合体(A)1~99質量%と、下記要件(4)を満たすプロピレン重合体(B)1~99質量%とを含有する、前記[1]~[7]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5であり、かつ数平均分子量(Mn)が22000を超える。
[9]前記プロピレン重合体(A)1~99質量%と、下記要件(5)を満たすプロピレン重合体(B)1~99質量%とを含有する、前記[1]~[7]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
(5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5を超える。
[10]前記プロピレン重合体(B)が、プロピレン単独重合体部(B1)50~99質量%とプロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)1~50質量%とからなるプロピレン系ブロック共重合体であり、前記プロピレン単独重合体部(B1)が、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%であるプロピレン単独重合体からなり、前記プロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)が、プロピレンに由来する構成単位40.0~90.0モル%と、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位10.0~60.0モル%とを含有する、前記[8]または[9]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[11]前記プロピレン重合体(B)の13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が98.0~100%である、前記[8]~[10]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[12]無機充填剤を0.01~70質量%の範囲で含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[13]無機繊維を0.5~70質量%の範囲で含む、前記[1]~[12]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[14]核剤を0.01~1質量%の範囲で含む、前記[1]~[13]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[15]前記[1]~[14]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を少なくとも用いて形成された成形体。
[16]自動車用部品である、前記[15]に記載の成形体。
[17]下記要件(1)~(3)を満たすプロピレン重合体(A):
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)が5000~22000である;
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5である;
(3)昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下である。
[18]13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%である、前記[17]に記載のプロピレン重合体(A)。
[19]示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が140℃以上である、前記[17]または[18]に記載のプロピレン重合体(A)。
[20]13C-NMRにより求められる、全プロピレン単位中の2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計割合が0.3モル%以下である、前記[17]~[19]のいずれかに記載のプロピレン重合体(A)。
[21]プロピレンに由来する構成単位の含有割合が98.0モル%以上である、前記[17]~[20]のいずれかに記載のプロピレン重合体(A)。
[22]嵩密度が0.20(g/cm3)以上のプロピレン重合体(A)粒子である前記[17]~[21]のいずれかに記載のプロピレン重合体(A)。
[23]以下の方法(i)により測定した微粉量が3.0質量%以下のプロピレン重合体(A)粒子である前記[17]~[22]のいずれかに記載のプロピレン重合体(A)。
〔方法(i)〕
重合体粒子を目開き100μmの篩上で5分間振動させ、篩上に残った重合体粒子と篩を通過した重合体粒子の質量を測定し、以下の計算式から微粉量を算出する。
微粉量(質量%)=W1/(W1+W2)×100
W1:目開き100μmの篩を通過した重合体粒子の質量(g)
W2:目開き100μmの篩上に残った重合体粒子の質量(g)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剛性に優れる成形体を製造することができるプロピレン重合体およびプロピレン系樹脂組成物、ならびに前記成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本明細書において「プロピレン重合体」は、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。また、「重合」は、単独重合および共重合を包含する。
【0010】
以下に説明する各物性の測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。また、以下に説明する各成分は、特に言及しない限りそれぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
[プロピレン系樹脂組成物]
本発明のプロピレン系樹脂組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)は、以下に説明するプロピレン重合体(A)を含有する。以下の記載において、本発明のプロピレン重合体(A)も併せて説明する。本発明の組成物は、以下に説明するプロピレン重合体(B)をさらに含有することが好ましい。
【0011】
<プロピレン重合体(A)>
プロピレン重合体(A)は、
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)が5000~22000であり、
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5であり、
(3)昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下である
ことを特徴とする。
【0012】
プロピレン重合体(A)は、GPCにより測定した数平均分子量(Mn)が、5000~22000であり、好ましくは6000~21000、より好ましくは7000~20000である。Mnが前記範囲内にあると、プロピレン系樹脂組成物の高剛性、機械的強度保持の観点から好ましい。Mnが5000未満であると、得られる成形体の機械的強度が低下する傾向にある。
【0013】
プロピレン重合体(A)は、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.2~3.5であり、好ましくは1.2~3.2、より好ましくは1.2~3.0である。Mw/Mnが前記範囲内にあると、超低分子量成分(成形体でブリード成分として作用すると推察)が少ないという観点から好ましい。
【0014】
プロピレン重合体(A)は、昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下であり、好ましくは3.2質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。ここで、TREFにおける測定温度-20~130℃において溶出する全成分量を100質量%とする。前記溶出成分の割合が前記範囲内にあると、プロピレン重合体(A)の耐熱性、および得られる成形体において剛性の指標である曲げ弾性率等の機械的性質が向上する傾向にある。
【0015】
プロピレン重合体(A)は、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が、好ましくは90.0~100%、より好ましくは96.0~100%、さらに好ましくは97.0~100%である。mmmmの上限値は、一実施態様では99.9%、99.5%または99.0%であってもよい。mmmmが前記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。
【0016】
メソペンタッド分率は、分子鎖中の五連子アイソタクティック構造の存在割合を示しており、プロピレン単位が5個連続してメソ構造を有する連鎖の中心にあるプロピレン単位の分率である。
【0017】
プロピレン重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が、好ましくは140℃以上、より好ましくは143~170℃、さらに好ましくは150~160℃である。Tmが前記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。
【0018】
プロピレン重合体(A)は、13C-NMRにより求められる、全プロピレン単位中におけるプロピレンモノマーの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計割合が、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下である。異種結合の合計割合が上記範囲内にあると、低結晶性・超低分子量成分(剛性向上効果を阻害すると推察)が少ないという観点から好ましい。
【0019】
プロピレン重合体(A)において、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は、全繰返し構成単位100モル%中、好ましくは98.0モル%以上、より好ましくは99.0モル%以上である。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0020】
プロピレン重合体(A)は、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
これらの重合体の中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/1-ヘキセン共重合体、プロピレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン/1-オクテン共重合体、プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/エチレン/1-ヘキセン共重合体、プロピレン/エチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン/エチレン/1-オクテン共重合体が好ましい。
【0022】
プロピレン重合体(A)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物におけるプロピレン重合体(A)の含有割合は、通常は1~99質量%、好ましくは1~97質量%、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは1~25質量%である。
【0023】
≪プロピレン重合体(A)の製造方法≫
プロピレン重合体(A)は、メタロセン触媒の存在下でプロピレンを単独重合するか、またはプロピレンと他のモノマーとを共重合することによって製造された重合体であることが好ましい。
【0024】
〈メタロセン化合物〉
メタロセン触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格などの配位子を分子内に持つメタロセン化合物を含む重合触媒である。前記メタロセン化合物としては、例えば、式(I)に示すメタロセン化合物(I)および式(II)に示す架橋型メタロセン化合物(II)が挙げられ、好ましくは架橋型メタロセン化合物(II)である。
【0025】
【化1】
式(I)および(II)において、Mは、周期表第4族遷移金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムであり、Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1~4の整数であり、Cp
1およびCp
2は、Mを挟んだサンドイッチ構造を形成するシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0026】
置換シクロペンタジエニル基としては、例えば、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、およびこれらの基やシクロペンタジエニル基に1個以上のハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびハロゲン化炭化水素基等の置換基が置換した基が挙げられ、置換シクロペンタジエニル基がインデニル基、フルオレニル基およびアズレニル基である場合、シクペンタジエニル基に縮合する不飽和環の二重結合の一部は水添されていてもよい。
【0027】
式(II)において、Yaは、炭素数1~20の2価の炭化水素基、炭素数1~20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、-Ge-、2価のゲルマニウム含有基、-Sn-、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-NRa-、-P(Ra)-、-P(O)(Ra)-、-BRa-または-AlRa-である。Raは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、または炭素数1~20の炭化水素基が1個もしくは2個結合したアミノ基である。また、Yaの一部は、Cp1および/またはCp2と結合して環を形成していてもよい。
前記メタロセン化合物としては、式(III)に示す架橋型メタロセン化合物(III)が好ましい。
【0028】
【化2】
式(III)において、R
1~R
14は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはハロゲン化炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭化水素基である。Yは、第14族元素であり、好ましくは炭素、ケイ素またはゲルマニウムであり、より好ましくは炭素である。Mは、周期表第4族遷移金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子である。jは1~4の整数であり、好ましくは2であり、jが2以上のとき、Qは同一でも異なっていてもよい。
【0029】
R1~R14における各原子および基の具体例は以下のとおりである。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基等の直鎖状または分岐状炭化水素基;シクロアルキル基、多環式飽和炭化水素基等の環状飽和炭化水素基;アリール基、シクロアルケニル基、多環式不飽和炭化水素基等の環状不飽和炭化水素基;アリール基置換アルキル基等の環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常は1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。
【0030】
上記ケイ素含有基としては、例えば、式-SiR3(前記式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基である)で表される基が挙げられる。
【0031】
上記ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基等の、上記炭化水素基が有する1または2以上の水素原子をハロゲン原子に置換してなる基が挙げられる。
R5~R12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、具体的には、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基およびオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを形成してもよい。このうち特に、R6、R7、R10およびR11が同時に水素原子ではないフルオレン環を形成するのが好ましい。
【0032】
R13およびR14は、互いに結合して環を形成してもよく、また、R5~R12の隣接した基またはR1~R4の隣接した基と互いに結合して環を形成してもよい。
Qにおいて、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ;炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のアルキル基や、炭素数3~10、好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基が挙げられる。
【0033】
炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンとしては、例えば、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-2,4-ヘキサジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエンが挙げられる。
【0034】
アニオン配位子としては、例えば、メトキシ、t-ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリーロキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基が挙げられる。
【0035】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
【0036】
Qは、好ましくはハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基である。
メタロセン化合物の具体例としては、国際公開第2001/27124号、国際公開第2005/121192号、国際公開第2006/025540号、国際公開第2014/050817号、国際公開第2014/123212号、国際公開第2017/150265号などに記載された化合物が挙げられる。
【0037】
前記メタロセン化合物としては、国際公開第2014/050817号などに記載された、式(IV)に示す架橋型メタロセン化合物(IV)がより好ましい。
【0038】
【化3】
式(IV)中、R
1bは、炭化水素基、ケイ素含有基またはハロゲン化炭化水素基である。R
2b~R
12bは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびハロゲン化炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。nは、1~3の整数である。Mは、周期表第4族遷移金属である。Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子である。jは1~4の整数であり、好ましくは2であり、jが2以上のとき、Qは同一でも異なっていてもよい。
【0039】
式(IV)中の上述のハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ハロゲン化炭化水素基、周期表第4族遷移金属、Qにおけるハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、孤立電子対で配位可能な中性配位子については、それぞれ式(III)の説明で列挙した具体例が挙げられる。
【0040】
R2bからR12bまでの置換基のうち、2つの置換基が互いに結合して環を形成していてもよく、前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。2つの置換基が互いに結合して形成された環(スピロ環、付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環、ベンゼン環、水素化ベンゼン環、シクロペンテン環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環、ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0041】
R1bは、立体規則性の観点から、炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~20の炭化水素基であることがより好ましく、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基または環状飽和炭化水素基であることがさらに好ましく、遊離原子価を有する炭素(シクロペンタジエニル環に結合する炭素)が3級炭素である置換基であることが特に好ましい。
【0042】
R1bとしては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、tert-アミル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基が挙げられ、より好ましくはtert-ブチル基、tert-ペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基等の遊離原子価を有する炭素が3級炭素である置換基であり、特に好ましくはtert-ブチル基、1-アダマンチル基である。
【0043】
R4bおよびR5bは、好ましくは水素原子である。
R2b、R3b、R6bおよびR7bは、好ましくは水素原子または炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。また、R2bとR3bが互いに結合して環を形成し、かつR6bとR7bが互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
【0044】
R8bは、好ましくは水素原子である。
R9bは、炭化水素基であることが好ましく、炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがより好ましく、炭素数2以上のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0045】
また、合成上の観点からは、R10bおよびR11bは水素原子であることも好ましい。
あるいは、n=1である場合、R9bおよびR10bが互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。この場合、R11bは水素原子であることが好ましい。
あるいは、R8bおよびR9bは、それぞれ炭化水素基であってもよい。
R12bは、好ましくは炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。
nは1~3の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
【0046】
式(IV)に示すメタロセン化合物としては、例えば、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド、[3-(2',7'-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-(1-アダマンチル)-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド、または(8-(2,3,6,7-テトラメチルフルオレン)-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドが特に好ましい。ここで、上記オクタメチルフルオレンとは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレンのことである。
【0047】
〈助触媒〉
メタロセン触媒は、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(助触媒)をさらに含むことが好ましい。
【0048】
有機金属化合物(ただし、有機アルミニウムオキシ化合物を除く)としては、例えば、有機アルミニウム化合物が挙げられ、具体的には、一般式Ra
mAl(ORb)nHpXq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロヘキシルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0049】
有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。具体的には、メチルアルミノキサンが挙げられる。
【0050】
アルミノキサンとしては、固体助触媒成分としての固体状アルミノキサンが好適に用いられ、例えば、国際公開第2010/055652号、国際公開第2013/146337号、あるいは、国際公開第2014/123212号で開示される固体状アルミノキサンが特に好適に用いられる。
【0051】
「固体状」とは、固体状アルミノキサンが用いられる反応環境下において、当該アルミノキサンが実質的に固体状態を維持することを意味する。より具体的には、例えばメタロセン触媒を構成する各成分を接触させて固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエン等の不活性炭化水素媒体中、特定の温度・圧力環境下において前記アルミノキサンが固体状態であることを表す。
【0052】
固体状アルミノキサンは、好ましくは式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を有するアルミノキサンを含有し、より好ましくは式(1)で表される構成単位を有するアルミノキサンを含有し、さらに好ましくは式(1)で表される構成単位のみからなるポリメチルアルミノキサンを含有する。
【0053】
【0054】
式(2)中、R1は炭素数2~20の炭化水素基、好ましくは炭素数2~15の炭化水素基、より好ましくは炭素数2~10の炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、エチル、プロピル、n-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-エチルヘキシル等のアルキル基;シクロヘキシル、シクロオクチル等のシクロアルキル基;フェニル、トリル等のアリール基が挙げられる。
【0055】
固体状アルミノキサンの構造は必ずしも明らかにされておらず、通常は、式(1)および/または式(2)で表される構成単位が2~50程度繰り返されている構成を有すると推定されるが、当該構成に限定されない。また、その構成単位の結合態様は、例えば、線状、環状またはクラスター状と種々であり、アルミノキサンは、通常、これらのうちの1種からなるか、または、これらの混合物であると推定される。また、アルミノキサンは、式(1)または式(2)で表される構成単位のみからなってもよい。
【0056】
固体状アルミノキサンとしては、固体状ポリメチルアルミノキサンが好ましく、式(1)で表される構成単位のみからなる固体状ポリメチルアルミノキサンがより好ましい。
固体状アルミノキサンは、通常は粒子状であり、体積基準のメジアン径(D50)が好ましくは1~500μm、より好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmである。D50は、例えば、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0057】
固体状アルミノキサンは、後述する実施例欄に記載の均一性指数が、通常は0.40以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.27以下である。均一性指数の下限は、特に限定されないが、例えば0.15でもよい。均一性指数が大きくなるほど粒度分布が広いことを示す。
【0058】
固体状アルミノキサンは、比表面積が好ましくは100~1000m2/g、より好ましくは300~800m2/gである。比表面積は、BET吸着等温式を用い、固体表面におけるガスの吸着および脱着現象を利用して求めることができる。
【0059】
固体状アルミノキサンは、例えば、国際公開第2010/055652号および国際公開第2014/123212号に記載された方法により調製することができる。
メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号公報などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0060】
〈担体〉
メタロセン触媒は、担体をさらに含むことができる。担体は、好ましくは粒子状であり、その表面および/または内部にメタロセン化合物を固定化させることで、前記メタロセン触媒が形成される。このような形態の触媒は一般にメタロセン担持触媒と呼ばれる。
【0061】
なお、上述した固体状アルミノキサンは、担体として機能する。このため、固体状アルミノキサンを用いる場合は、担体として、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、塩化マグネシウム等の固体状無機担体、またはポリスチレンビーズ等の固体状有機担体を用いなくともよい。
【0062】
担体は、例えば、無機または有機の化合物からなる。固体状無機担体としては、例えば、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物等の無機化合物からなる担体が挙げられる。固体状有機担体としては、例えば、ポリスチレンビーズ等の担体が挙げられる。
【0063】
多孔質酸化物としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の酸化物、またはこれらを含む複合物もしくは混合物が挙げられる。例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgOが挙げられる。
【0064】
無機ハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0065】
粘土は、通常は粘土鉱物を主成分として構成される。イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能である。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物としては、例えば、粘土、粘土鉱物、または六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物が挙げられる。
【0066】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理が挙げられる。
【0067】
担体の体積基準のメジアン径(D50)は、好ましくは1~500μm、より好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmである。体積基準のD50は、例えば、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0068】
〈有機化合物成分〉
メタロセン触媒は、さらに必要に応じて、有機化合物成分を含有することもできる。有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩が挙げられる。
【0069】
〈重合条件〉
固体助触媒成分等の担体にメタロセン化合物が担持された固体触媒成分においては、α-オレフィン等のオレフィンが予備重合されていてもよく(予備重合触媒成分)、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
プロピレン重合の際には、メタロセン触媒における各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。メタロセン触媒を用いてプロピレン重合を行うに際して、前記触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。
【0070】
メタロセン化合物は、反応容積1L当り、通常は10-10~10-2モル、好ましくは10-9~10-3モルとなるような量で用いられる。
助触媒としての有機金属化合物は、当該化合物と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M;すなわち周期表第4族遷移金属)とのモル比[有機金属化合物/M]が、通常は10~10000、好ましくは30~2000、より好ましくは50~500となるような量で用いることができる。
【0071】
助触媒としての有機アルミニウムオキシ化合物は、当該化合物中のアルミニウム原子(Al)と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比[Al/M]が、通常は10~10000、好ましくは30~2000、より好ましくは50~500となるような量で用いることができる。
【0072】
助触媒としてのメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物(イオン対形成化合物)は、当該化合物と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比[イオン対形成化合物/M]が、通常は1~10000、好ましくは2~2000、より好ましくは10~500となるような量で用いることができる。
【0073】
プロピレン重合体(A)は、上述したメタロセン触媒の存在下で少なくともプロピレンを重合させることで得ることができる。
重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施することができる。液相重合法において、重合溶媒として、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;脂環族炭化水素;芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素などの不活性有機溶媒を用いることができる。また、プロピレン等のオレフィン自体を重合媒体として用いることもできる。
【0074】
重合体の分子量を調整するため、水素分子を重合系に添加してもよい。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001~100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0075】
また、重合系内の重合触媒被毒物質を補足する目的で前述した有機金属化合物(ただし、有機アルミニウムオキシ化合物を除く)を添加してもよい。系内に有機金属化合物を添加する場合、反応容積1L当り、通常は10-6~0.1モル、好ましくは10-5~10-2モルとなるような量で用いられる。
【0076】
さらに、重合系内に帯電防止剤を添加してもよい。帯電防止剤としてはポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールジステアレート、エチレンジアミン-ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)-ブロックコポリマー、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体(PEG-PPG-PEG))などが好ましく、特にポリオキシアルキレン(PEG-PPG-PEG)が好ましい。これらの帯電防止剤は、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)の1モルに対する質量(g)の比(g/mol)が通常100~100,000、好ましくは100~10,000となるような量で用いられる。
【0077】
重合は、例えば、20~150℃、好ましくは50~100℃の温度で、また常圧~10MPa/G、好ましくは常圧~5MPa/Gの圧力下で行うことができる。重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。
【0078】
<プロピレン重合体(A)粒子>
本発明のプロピレン重合体(A)は、好ましくは粒子であり、以下「プロピレン重合体(A)粒子」ともいう。
【0079】
プロピレン重合体(A)粒子は、GPCにより測定した数平均分子量(Mn)が、5000~22000である。上記Mnは、好ましくは6000以上、より好ましくは7000以上である。上記Mnは、好ましくは21000以下、より好ましくは20000以下である。Mnが前記範囲内にあると、プロピレン系樹脂組成物の高剛性、機械的強度保持の観点から好ましい。Mnが5000未満であると、得られる成形体の機械的強度が低下する傾向にある。
【0080】
プロピレン重合体(A)粒子は、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.2~3.5であり、好ましくは1.2~3.2、より好ましくは1.2~3.0である。Mw/Mnが前記範囲内にあると、超低分子量成分(成形体でブリード成分として作用すると推察)が少ないという観点から好ましい。
【0081】
プロピレン重合体(A)粒子は、昇温溶出分別測定法(TREF)において-20℃以下の温度で溶出する成分の割合が3.5質量%以下であり、好ましくは3.2質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。ここで、TREFにおける測定温度-20~130℃において溶出する全成分量を100質量%とする。前記溶出成分の割合が前記範囲内にあると、プロピレン重合体(A)の耐熱性、および得られる成形体において剛性の指標である曲げ弾性率等の機械的性質が向上する傾向にある。
【0082】
プロピレン重合体(A)粒子は、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が、好ましくは90.0~100%、より好ましくは96.0~100%、さらに好ましくは97.0~100%である。mmmmの上限値は、一実施態様では99.9%、99.5%または99.0%であってもよい。mmmmが前記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。
【0083】
メソペンタッド分率は、分子鎖中の五連子アイソタクティック構造の存在割合を示しており、プロピレン単位が5個連続してメソ構造を有する連鎖の中心にあるプロピレン単位の分率である。
【0084】
プロピレン重合体(A)粒子は、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が、好ましくは140℃以上、より好ましくは143~170℃、さらに好ましくは150~160℃である。Tmが前記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。
【0085】
プロピレン重合体(A)は、13C-NMRにより求められる、全プロピレン単位中におけるプロピレンモノマーの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計割合が、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下である。異種結合の合計割合が上記範囲内にあると、低結晶性・超低分子量成分(剛性向上効果を阻害すると推察)が少ないという観点から好ましい。
【0086】
プロピレン重合体(A)粒子において、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は、全繰返し構成単位100モル%中、好ましくは98.0モル%以上、より好ましくは99.0モル%以上である。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0087】
プロピレン重合体(A)粒子は、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
本発明のプロピレン重合体(A)粒子は、例えば、固体助触媒成分等の担体にメタロセン化合物が担持された固体触媒成分を用いて製造することができ、粒子性状に優れているという特徴を有する。粒子性状の指標としては嵩密度、微粉量が知られている。一般的に、重合体製造時に嵩密度が低い重合体粒子が生成すると粗大ポリマーが多く生成し、ポリマー排出口や、ポリマー移送ラインの閉塞などを引き起こすため、工業的な製造が困難となることがある。さらに、重合体粒子の微粉量が多くなると静電気による重合体粒子の帯電付着によるファウリングが発生し、工業的な生産が困難となることがある。一方、嵩密度が高く微粉量が少ない粒子性状に優れた重合体粒子は、製造時の反応器や配管内での重合体の付着や閉塞などがなく効率よく重合体の製造が可能であるため、工業的な重合体の製造には嵩密度が高く微粉量が少ない粒子性状に優れた重合体粒子の生成が非常に重要である。また、粒子性状に優れた重合体粒子は製造後の充填作業や、取り扱い作業時の作業性が良好であるという利点もある。
【0089】
プロピレン重合体(A)粒子の嵩密度は、好ましくは0.20(g/cm3)以上、より好ましくは0.25(g/cm3)以上、さらに好ましくは0.28(g/cm3)以上、最も好ましくは0.30(g/cm3)以上である。嵩密度の上限は特に限定されないが、例えば0.55(g/cm3)、好ましくは0.52(g/cm3)である。
【0090】
プロピレン重合体(A)粒子を目開き100μmの篩上で振動させ、篩を通過した重合体粒子の質量%である微粉量は、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、最も好ましくは1.0質量%以下である。
【0091】
<プロピレン重合体(B)>
プロピレン重合体(B)は、下記要件(4)または(5)を満たすことを特徴とする。(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2~3.5であり、かつ数平均分子量(Mn)が22000を超える。
【0092】
要件(4)において、前記Mw/Mnは、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは2.0~3.5である。Mw/Mnが前記範囲内にあると、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性と成形性との両立の観点から好ましい。要件(4)において、前記Mnは、好ましくは30000~170000、より好ましくは32000~150000である。Mnが前記範囲内にあると、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性と成形性との両立の観点から好ましい。
【0093】
(5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5を超える。
要件(5)において、前記Mw/Mnは、好ましくは4.0~20、より好ましくは4.2~15、さらに好ましくは4.4~10である。Mw/Mnが前記範囲内にあると、プロピレン系樹脂組成物の剛性と耐衝撃性とのバランス向上の観点から好ましい。
【0094】
プロピレン重合体(B)は、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が、好ましくは98.0~100%である。mmmmの上限値は、一実施態様では99.9%または99.5%であってもよい。mmmmが前記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。プロピレン重合体(B)のmmmmは、また、90.0%以上であってもよい。
【0095】
プロピレン重合体(B)は、MFR(ASTM D1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)が、好ましくは0.5~1000g/10分、より好ましくは1.0~800g/10分、さらに好ましくは1.5~500g/10分である。MFRが前記範囲内にあると、前記樹脂組成物は成形性と機械強度とのバランスが優れる。
【0096】
プロピレン重合体(B)は、プロピレンの単独重合体であっても、ランダム共重合体やブロック共重合体等の、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。プロピレンと他のモノマーとの共重合体の場合、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は、全繰返し構成単位100モル%中、好ましくは90モル%以上100モル%未満である。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0097】
他のモノマーとしては、例えば、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられ、エチレンが好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
プロピレン重合体(B)は、一実施態様においてプロピレン単独重合体である。
プロピレン重合体(B)は、一実施態様においてランダム共重合体であり、例えば、プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体である。ランダム共重合体の場合、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は、全繰返し構成単位100モル%中、好ましくは91モル%以上100モル%未満、より好ましくは93~99モル%である。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0099】
プロピレン重合体(B)は、一実施態様においてブロック共重合体であり、例えば、プロピレン単独重合体部(B1)とプロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)とからなるプロピレン系ブロック共重合体である。
【0100】
前記単独重合体部(B1)は、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が、通常90.0~100%、好ましくは95.0~100%、さらに好ましくは97.0~100%である。mmmmの上限値は、一実施態様では99.9%または99.5%であってもよい。mmmmが前記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。
【0101】
前記共重合体部(B2)は、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体からなる。前記α-オレフィンの具体例は上述したとおりであり、エチレンが好ましい。
【0102】
前記共重合体部(B2)は、プロピレンに由来する構成単位を40.0~90.0モル%、好ましくは50.0~90.0モル%、より好ましくは55.0~85.0モル%の範囲で有し、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位を10.0~60.0モル%、好ましくは10.0~50.0モル%、より好ましくは15.0~45.0モル%の範囲で有する。ただし、プロピレンに由来する構成単位と前記α-オレフィンに由来する構成単位との合計を100モル%とする。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0103】
前記プロピレン系ブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部(B1)を好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~95質量%の範囲で含有し、プロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)を好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%の範囲で含有する。ただし、前記(B1)と前記(B2)との合計を100質量%とする。プロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)は、通常、前記プロピレン系ブロック共重合体の23℃n-デカン可溶成分に相当する。
【0104】
前記プロピレン系ブロック共重合体のプロピレン/α―オレフィン共重合体部(B2)は、135℃のデカリンで測定した極限粘度[η]が、通常は1.0~12dL/g、好ましくは1.5~11dL/g、より好ましくは2.0~10dL/gである。
【0105】
前記プロピレン系ブロック共重合体を用いることで、耐熱性および剛性と、耐衝撃性とのバランスに優れた成形体を形成することができる。
プロピレン重合体(B)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
本発明の組成物におけるプロピレン重合体(B)の含有割合は、通常は1~99質量%、好ましくは50~99質量%、より好ましくは75~99質量%である。プロピレン重合体(B)の含有割合は、一実施態様において、97質量%以下であってもよい。
【0107】
≪プロピレン重合体(B)の製造方法≫
プロピレン重合体(B)の製造方法は特に限定されず、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下でプロピレンを単独重合するか、またはプロピレンと他のモノマーとを共重合することによって製造することができる。前記触媒としては、例えば、特開2014-214202号公報、特開2016-084387号公報、国際公開第2019/004418号、特開2007-224179号公報などに記載された触媒が挙げられる。プロピレン重合体(B)の製造条件に関しても、これらの公報、例えば特開2014-214202号公報の段落[0053]~[0077]、特開2016-084387号公報の段落[0052]~[0075]、国際公開第2019/004418号の段落[0100]~[0110]を参照することができる。
【0108】
<他の成分>
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した成分以外の、樹脂、ゴム、無機充填剤、核剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの他の成分を含有することができる。
【0109】
≪他の樹脂およびゴム≫
他の樹脂およびゴムとして、例えば、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとのランダム共重合体(以下「エチレン系ランダム共重合体(C)」ともいう)が挙げられる。エチレン系ランダム共重合体(C)は、全繰返し構成単位100モル%中、エチレンに由来する構成単位を通常は50~95モル%、好ましくは55~90モル%の範囲内で有し、前記α-オレフィンに由来する構成単位を通常は5~50モル%、好ましくは10~45モル%の範囲で有する。前記構成単位の含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。エチレン系ランダム共重合体(C)を用いることにより、得られる成形体の耐衝撃性をさらに向上させることができる。
【0110】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、1-ブテンおよび1-オクテンがより好ましい。
【0111】
エチレン系ランダム共重合体(C)のMFR(ASTM D1238E、測定温度190℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.1~50g/10分、より好ましくは0.3~20g/10分、さらに好ましくは0.5~10g/10分である。エチレン系ランダム共重合体(C)の密度は、好ましくは850~920kg/m3、より好ましくは855~900kg/m3である。
【0112】
ランダム共重合体(C)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物におけるエチレン系ランダム共重合体(C)の含有割合は、一実施態様において、好ましくは1~40質量%、より好ましくは3~30質量%、さらに好ましくは5~25質量%である。
【0113】
≪無機充填剤≫
無機充填剤としては、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック;硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維が挙げられる。
無機充填剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物における無機充填剤の含有割合は、一実施態様において、好ましくは0.01~70質量%、より好ましくは0.5~70質量%、さらに好ましくは1~40質量%、特に好ましくは3~30質量%である。
【0114】
≪核剤≫
核剤としては、例えば、フォスフェート系核剤(有機リン酸金属塩)、ソルビトール系核剤、芳香族カルボン酸の金属塩、脂肪族カルボン酸の金属塩、ロジン系化合物等の有機系の核剤;無機化合物等の無機系の核剤が挙げられる。
核剤の市販品としては、例えば、フォスフェート系核剤「アデカスタブNA-11」((株)ADEKA製)、ソルビトール系核剤「ミラッドNX8000」(ミリケン社製)、脂肪族カルボン酸の金属塩からなる核剤「ハイパーフォームHPN-20E」(ミリケン社製)、ロジン系化合物からなる核剤「パインクリスタルKM1610」(荒川化学(株)製)が挙げられる。
【0115】
核剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物における核剤の含有割合は、一実施態様において、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.02~0.8質量%、さらに好ましくは0.03~0.5質量%である。
【0116】
<プロピレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述した各成分を配合することにより製造することができる。各成分は、任意の順番で逐次配合してもよく、同時に混合してもよい。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。
【0117】
各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機などの混合装置を用いて、各成分を同時にもしくは逐次に、混合または溶融混練する方法が挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は、MFR(ASTM D1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)が、好ましくは1~200g/10分、より好ましくは3~160g/10分、さらに好ましくは5~120g/10分である。MFRが前記範囲内にあると、前記樹脂組成物は成形性と機械強度とのバランスが優れる。上記組成物のMFRは、一実施態様において、1~300g/10分であってもよい。
【0119】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明の組成物を少なくとも用いて形成される。
本発明の成形体は、例えば、自動車用部品、家電用部品、食品容器、医療容器など様々な分野に好適に用いることができ、自動車用部品として特に好適である。前記自動車用部品としては、例えば、バンパー、ピラー、インストルメンタルパネル等の自動車内外装部材;エンジンファン、ファンシェラウド等の自動車機能部材;ルーフ、ドアパネル、フェンダー等の外板材が挙げられる。
本発明の成形体の成形法としては、特に限定されず、樹脂組成物の成形法として公知の様々な方法を採用することができるが、特に射出成形やプレス成形が好ましい。
【実施例0120】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の記載において、特に言及しない限り「質量部」は単に「部」と記載する。
【0121】
[各種物性の測定法]
極限粘度([η])
離合社製自動動粘度測定装置VMR-053PCおよび改良ウベローデ型毛細管粘度計を用い、デカリン、135℃での比粘度ηspを求め、下記式より極限粘度([η])を算出した。
[η]=ηsp/{C(1+K・ηsp)}
(C:溶液濃度[g/dL]、K:定数)
【0122】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の装置および条件で測定し、得られたクロマトグラムを公知の方法によって解析することで、Mw値、Mn値およびMw/Mn値を算出した。
(GPC測定装置)
液体クロマトグラフ:東ソー(株)製、HLC-8321GPC/HT
検出器:RI
カラム:東ソー(株)製TOSOH GMHHR-H(S)HT×2本を直列接続
(測定条件)
移動相媒体:1,2,4-トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
測定温度:145℃
検量線の作成方法:標準ポリスチレンサンプルを使用して検量線を作成した。
分子量換算:ユニバーサルキャリブレーション法により、PS(ポリスチレン)からPP(ポリプロピレン)換算分子量へ変換
サンプル濃度:5mg/10ml
サンプル溶液量:300μl
【0123】
昇温溶出分別測定法(TREF)
昇温溶出分別法(TREF)は、下記測定条件にて行い、-20℃以下溶出成分割合を算出した。
装置 :Polymer Char製CFC2型クロス分別クロマトグラフ
検出器:Polymer Char製IR4型赤外分光光度計(内蔵)
移動相:o-ジクロロベンゼン、BHT添加
流速 :1.0mL/min
試料濃度:90mg/30mL
注入量:0.5mL
溶解条件:145℃、30min
安定化条件:135℃、30min
降温速度:1.0℃/min
溶出区分:-20℃~0℃ 10℃刻み、0℃~80℃ 5℃刻み、
80℃~104℃ 3℃刻み、104~130℃ 2℃刻み
溶出時間:3min
【0124】
メソペンタッド分率(mmmm)
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率(mmmm,%)は、プロピレン重合体においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C-NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C-NMRスペクトルは、日本電子製EX-400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o-ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
【0125】
重合体組成(異種結合)
13C-NMRを用いて、特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、2,1-挿入結合量、および1,3-挿入結合量を測定した。
【0126】
プロピレン/エチレン共重合体中のエチレン含量
エチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20~30mgを1,2,4-トリクロロベンゼン/重ベンゼン(2:1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)を行った。プロピレン、エチレンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。プロピレン/エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
プロピレン(mol%)=(PP+1/2EP)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)
エチレン(mol%)=(1/2EP+EE)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)
【0127】
融点(Tm)
プロピレン重合体のTmは、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。ここで、第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
(測定条件)
第1step:10℃/minで230℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで30℃まで降温する。
第3step:10℃/minで230℃まで昇温する。
【0128】
デカン可溶成分量
ガラス製の測定容器にプロピレン系ブロック共重合体約3g(10-4gの単位まで測定した。また、この重量を、下式においてb(g)と表した。)、n-デカン500ml、およびn-デカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン系ブロック共重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G-4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得て、この重量を10-4gの単位まで測定した(この重量を、下式においてa(g)と表した)。この操作の後、デカン可溶成分量を下記式によって決定した。
23℃におけるデカン可溶成分(Dsol)含有率
= 100×(500×a)/(100×b)
【0129】
メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16kgとした。
嵩密度
ASTM D 1895-96 A法に準じて測定を行った。
微粉量
重合体粒子を目開き100μmの篩上で5分間振動させ、篩上に残った重合体粒子と篩を通過した重合体粒子の質量を測定し、以下の計算式から微粉量を算出した。
微粉量(質量%)=W1/(W1+W2)×100
W1:目開き100μmの篩を通過した重合体粒子の質量(g)
W2:目開き100μmの篩上に残った重合体粒子の質量(g)
【0130】
予備重合触媒成分中のジルコニウム含量
予備重合触媒成分中のジルコニウム含量は、島津製作所社製のICP発光分光分析装置(ICPS-8100型)を用いて測定した。サンプルは硫酸および硝酸にて湿式分解した後、定容(必要に応じてろ過および希釈を含む)したものを検液とし、濃度既知の標準試料を用いて作成した検量線から定量を行った。
【0131】
固体助触媒成分の体積基準のメジアン径(D50)、粒度分布および均一性
固体助触媒成分の体積基準のメジアン径(中位径、D50)および粒度分布は、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めた。粒度分布測定には、固体助触媒成分を、窒素流通下、湿潤デシケーター中で事前に失活させたサンプルを用いた。分散媒には主にメタノールを用いた。
固体助触媒成分粒子の均一性を下記式で表される均一性指数により評価した。
均一性指数 = ΣXi|D50-Di|/D50ΣXi
式中、Xiは粒度分布測定における粒子iのヒストグラム値、D50は体積基準のメジアン径、Diは粒子iの体積基準径を示す。固体助触媒成分粒子のXi、D50およびDiは、前記レーザー回折・散乱法により求めた。
特に断りのない限り、全ての実施例は乾燥窒素雰囲気下、乾燥溶媒を用いて行った。
【0132】
[合成例1]遷移金属錯体(メタロセン化合物(M))の合成
国際公開第2014/050817号の合成例4に従い、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド(メタロセン化合物(M-1))を合成した。
【0133】
[固体助触媒成分の調製1]
使用する固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物は公知の手法(国際公開第2014/123212号)に基づいて調製した。具体的には、攪拌機付の1Lガラス製オートクレーブにトルエン40mL、アルベマール社製ポリメチルアルミノキサンの20質量%トルエン溶液(Al濃度=2.95mmol/mL、166mL、490mmol)を加え、その後撹拌しながら45℃に昇温した。続いてn-Octanophenone(14.7g、71.8mmol)のトルエン溶液(20.5mL)を80分かけて添加した。添加後45℃で30分間攪拌し、0.80℃/分の昇温速度で115℃まで昇温し、115℃で30分間反応させた。その後、0.58℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で150分間反応させた。反応後室温まで冷却し、得られたスラリーをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水トルエンで3回洗浄した。その後脱水トルエンを加えて固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリーを得た。
得られた固体状ポリアルミノキサン組成物の粒度分布を測定した。体積基準のメジアン径(D50)は9.8μm、均一性指数は0.237であった。
【0134】
[固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製1]
十分に窒素置換した、撹拌器を取り付けた200mL三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製ヘキサンを17.8mL、および先に合成した固体助触媒成分のトルエンスラリー20.5mL(固体状ポリアルミノキサン組成物(固体助触媒成分)の固形分として2.00g)を装入し、懸濁液とした。その後撹拌しながら35℃に昇温した。続いて、先に合成したメタロセン化合物(M-1)80.0mg(10mg/mLのトルエン溶液として8.0mL)を撹拌しながら加えた。60分間反応させた後、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を3.75mL加え、60分間反応させた。室温まで降温し撹拌を停止した後、上澄み液(17mL)をデカンテーションで除去した。得られた固体触媒成分はヘキサン(75mL)を用いて室温で3回洗浄し、その後ヘキサンを加えて全量を50mLに調製した。
【0135】
[予備重合触媒成分(BPP)の調製]
上記のとおり調製した固体触媒成分のスラリーに、窒素気流下、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を2.0mL加えた。その後20℃に冷却し、エチレン(6.3g)を6時間かけて装入した。エチレン装入完了後、撹拌を停止し、室温にてヘキサンによるデカンテーション洗浄を行い(洗浄効率98%)、50mLのヘキサンスラリーとした。得られたスラリー10mLをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水ヘキサン10mLで2回洗浄した。洗浄後の粉体を2時間減圧乾燥して予備重合触媒成分(BPP-1)を粉体として得た。これをミネラルオイルと混合して、予備重合触媒成分濃度が9.98質量%のミネラルオイルスラリーを得た。得られた予備重合触媒成分(BPP-1)中のジルコニウム含量を測定したところ、0.087質量%であった。
【0136】
[プロピレン重合]
[重合例A-1]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した予備重合触媒成分(BPP-1)のミネラルオイルスラリー159.6mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン750g、水素8.1Lを装入し、充分に撹拌しながら70℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、166.6gのプロピレン重合体(A-1)を得た。
【0137】
[重合例A-2]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した予備重合触媒成分(BPP-1)のミネラルオイルスラリー165.7mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン750g、水素10.6Lを装入し、充分に撹拌しながら70℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、180.9gのプロピレン重合体(A-2)を得た。
【0138】
[固体助触媒成分の調製2]
使用する固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物は公知の手法(国際公開第2014/123212号)に基づいて調製した。具体的には、攪拌機付の1Lガラス製オートクレーブにトルエン55mL、アルベマール社製ポリメチルアルミノキサンの20質量%トルエン溶液(Al濃度=2.97mmol/mL、192mL、570.2mmol)を加えた後、撹拌しながら70℃に昇温した。続いてベンズアルデヒド(9.10g、85.8mmol)のトルエン溶液(24.5mL)を80分かけて添加した。添加後70℃で10分間攪拌した後、1.0℃/分の昇温速度で140℃まで昇温し、140℃で4時間反応させた。80℃まで降温後、上澄み液(125mL)をデカンテーションで除去した。析出した固体状ポリアルミノキサンはトルエン(400mL)を用いて80℃で2回洗浄した後、トルエンを加えて全量を300mLに調製して、固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリーを得た。
得られた固体状ポリアルミノキサン組成物の粒度分布を測定した。体積基準のメジアン径(D50)は22.7μm、均一性指数は0.278であった。
【0139】
[固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製2]
上記の通りに調整した固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリー(Al濃度=1.65mmol/mL、2.45mL、4.05mmol)およびトルエン16.0mLを反応器に採取した。ここに、合成例1で得られたメタロセン化合物(M-1)を10.0mg含むトルエン溶液1.00mLを加え、室温で1時間攪拌した。得られたスラリーをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水トルエン5mLで2回、次いで脱水ヘキサン5mLで2回洗浄した。洗浄後の粉体を2時間減圧乾燥して0.246gの粉体からなる担持触媒を得た。これをミネラルオイルと混合して、固体触媒成分濃度が5.00質量%の固体触媒成分(メタロセン触媒-1)のミネラルオイルスラリーを得た。
【0140】
[重合例A-3]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した固体触媒成分(メタロセン触媒-1)のミネラルオイルスラリー153.5mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素6.5Lを装入し、充分に撹拌しながら60℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、156.5gのプロピレン重合体(A-3)を得た。
【0141】
[合成例2]遷移金属錯体(メタロセン化合物(M))の合成
国際公開第2014/142111号の合成例2に従い、[3-(2',7'-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-(1-アダマンチル)-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド(メタロセン化合物(M-2))を合成した。
【0142】
[固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製3]
[固体助触媒成分の調製2]で得られた固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリー(Al濃度=1.65mmol/mL、2.45mL、4.05mmol)およびトルエン16.5mLを反応器に採取した。ここに、合成例2で得られたメタロセン化合物(M-2)を10.0mg含むトルエン溶液1.00mLを加え、室温で1時間攪拌した。得られたスラリーをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水トルエン5mLで2回、次いで脱水ヘキサン5mLで2回洗浄した。洗浄後の粉体を2時間減圧乾燥して0.235gの粉体からなる担持触媒を得た。これをミネラルオイルと混合して、固体触媒成分濃度が5.00質量%の固体触媒成分(メタロセン触媒-2)のミネラルオイルスラリーを得た。
【0143】
[重合例A-4]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した固体触媒成分(メタロセン触媒-2)のミネラルオイルスラリー321.2mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素3.0Lを装入し、充分に撹拌しながら70℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、102.1gのプロピレン重合体(A-4)を得た。
【0144】
[合成例3]遷移金属錯体(メタロセン化合物(M))の合成
国際公開第2006/025540号の合成例4に従い、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-エチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド(メタロセン化合物(M-3))を合成した。
【0145】
[固体助触媒成分の調製3]
使用する固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物は公知の手法(国際公開第2014/123212号)に基づいて調製した。具体的には、攪拌機付の1Lガラス製オートクレーブにトルエン83mL、アルベマール社製20wt%ポリメチルアルミノキサントルエン溶液(Al濃度=3.01mmol/mL、167mL、502.7mmol)を加えた後、撹拌しながら70℃に昇温した。続いて2-Phenyl-2-propanol(10.2g、75.3mmol)のトルエン溶液(21.5mL)を80分かけて添加した。添加後70℃で10分間攪拌した後、1.0℃/分の昇温速度で140℃まで昇温し、140℃で4時間反応させた。80℃まで降温後、上澄み液(125mL)をデカンテーションで除去した。析出した固体状ポリアルミノキサンはトルエン(400mL)を用いて80℃で2回洗浄した後、トルエンを加えて全量を300mLに調製して、固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリーを得た。
【0146】
得られた固体状ポリアルミノキサン組成物の粒度分布を測定した。体積基準のメジアン径(D50)は26.9μm、均一性指数は0.229であった。
【0147】
[固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製4]
上記の通りに調製した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のトルエンスラリー(Al濃度=1.77mmol/mL、4.65mL、8.23mmol)およびトルエン13.4mLを反応器に採取した。ここに、合成例3で得られたメタロセン化合物(M-3)を20.0mg含むトルエン溶液2.00mLを加え、室温で1時間攪拌した。得られたスラリーをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水トルエン5mLで2回、次いで脱水ヘキサン5mLで2回洗浄した。洗浄後の粉体を2時間減圧乾燥して0.409gの粉体からなる担持触媒を得た。これをミネラルオイルと混合して、固体触媒成分濃度が5.00質量%の固体触媒成分(メタロセン触媒-3)のミネラルオイルスラリーを得た。
【0148】
[重合例A-5]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した固体触媒成分(メタロセン触媒-3)のミネラルオイルスラリー824.1mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素0.7Lを装入し、充分に撹拌しながら50℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、78.4gのプロピレン重合体(A-5)を得た。
【0149】
[重合例a-1]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した予備重合触媒成分(BPP-1)のミネラルオイルスラリー226.5mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素15.0Lを装入し、充分に撹拌しながら60℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、135.4gのプロピレン重合体(a-1)を得た。
【0150】
[重合例B-1]
<予備重合触媒(b-1)の調製>
国際公開第2019/004418号の[実施例1]([0157]~[0161])と同様にして、チタン1.3重量%、マグネシウム20重量%、ジイソブチルフタレート13.8重量%、ジエチルフタレート0.8重量%を含有する固体状チタン触媒成分(i-1)を得た。なお、本発明者は、固体状チタン触媒成分(i-1)中に検出されたジエチルフタレートは、おそらく、固体状チタン触媒成分の製造過程で、ジイソブチルフタレートと、固体状チタンを製造するのに用いたエタノールとのエステル交換が随伴したことに起因するのではないかと推測している。
【0151】
前記固体状チタン触媒成分(i-1)90.0g、トリエチルアルミニウム66.7mL、イソプロピルピロリジノジメトキシシラン15.6mL、ヘプタン10Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを900g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた固体成分を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1.0g/Lとなるようヘプタンにより調整を行い、予備重合触媒(b-1)を得た。
【0152】
<プロピレン重合体の製造>
内容積500Lの攪拌機付き重合槽に液化プロピレンを300L装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン100kg/h、予備重合触媒(b-1)1.0g/h、トリエチルアルミニウム8.9mL/h、イソプロピルピロリジノジメトキシシラン2.8mL/hを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また重合槽内の気相部の水素濃度が6.9mol%となるように、水素を連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のプロピレン重合体(B-1)を得た。得られたプロピレン重合体(B-1)は、MFRが29g/10分であった。
【0153】
[重合例B-2]
内容積500Lの攪拌機付き重合槽に液化プロピレンを300L装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン100kg/h、予備重合触媒(b-1)1.0g/h、トリエチルアルミニウム8.9mL/h、イソプロピルピロリジノジメトキシシラン2.8mL/hを連続的に供給し、温度60℃で重合した。また重合槽内の気相部の水素濃度が20.1mol%となるように、水素を連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のプロピレン重合体(B-2)を得た。得られたプロピレン重合体(B-2)は、MFRが245g/10分であった。
【0154】
[重合例B-3]
<予備重合触媒(b-2)の調製>
前記固体状チタン触媒成分(i-1)120.0g、トリエチルアルミニウム88.9mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン25.3mL、ヘプタン10Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを720g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた固体成分を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1.0g/Lとなるようヘプタンにより調整を行い、予備重合触媒(b-2)を得た。
【0155】
<プロピレン重合体の製造>
内容積500Lの攪拌機付き重合槽に液化プロピレンを300L装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン130kg/h、予備重合触媒(b-2)1.8g/h、トリエチルアルミニウム17.7mL/h、ジエチルアミノトリエトキシシラン6.5mL/hを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また重合槽内の気相部の水素濃度が2.5mol%となるように、水素を連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のプロピレン重合体(B-3)を得た。得られたプロピレン重合体(B-3)は、MFRが31g/10分であった。
【0156】
[重合例B-4]
内容量58Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレン45kg/h、水素450NL/h、予備重合触媒(b-2)0.60g/h、トリエチルアルミニウム3.3mL/h、ジエチルアミノトリエトキシシラン2.5mL/hを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。
【0157】
得られたスラリーを内容量70Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを43kg/h、気相部の水素濃度が8.9mol%になるように水素を連続的に供給した。重合温度66.5℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。
【0158】
得られたスラリーは失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のプロピレン重合体(B-4)を得た。得られたプロピレン重合体(B-4)は、MFRが230g/10分であった。
【0159】
[プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造]
[重合例B-5]
内容量58Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレン45kg/h、水素450NL/h、予備重合触媒(b-2)0.60g/h、トリエチルアルミニウム3.3mL/h、ジエチルアミノトリエトキシシラン2.5mL/hを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。
【0160】
得られたスラリーを内容量70Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを43kg/h、気相部の水素濃度が8.9mol%になるように水素を連続的に供給した。重合温度66.5℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。
【0161】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.239(モル比)、水素/エチレン=0.0043(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.7MPa/Gで重合を行った。
【0162】
得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行い、80℃で真空乾燥を行った。これにより、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有する、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B-5)を得た。得られたブロック共重合体(B-5)(プロピレン重合体(B-5))の特性は次のとおりであった。
MFR(230℃、2.16kg)=85g/10分
Mn=22000
Mw/Mn=5.4
ホモPP部のメソペンダット分率(mmmm)=97.8%
23℃n-デカン可溶成分の割合=11質量%
23℃n-デカン可溶成分のエチレン量=40mol%
23℃n-デカン可溶成分の極限粘度[η]=7.8dL/g
以上の重合例で得られた物性を、三井化学(株)製のハイワックス(登録商標)NP055およびNP805とともに以下の表に記載する。
【0163】
<プロピレン重合体の製造>
[重合例B-6]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した予備重合触媒成分(BPP-1)のミネラルオイルスラリー557.1mgとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素0.6Lを装入し、充分に撹拌しながら70℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、305.2gのプロピレン重合体(B-6)を得た。
【0164】
【0165】
【0166】
[実施例1]
プロピレン重合体(B-1)76部、プロピレン重合体(A-1)4部、タルク(浅田製粉(株)製「JM-209」)20部、耐熱安定剤「IRGANOX1010」(ビーエスエフ社)0.1部、耐熱安定剤「IRGAFOS168」(ビーエスエフ社)0.1部、およびステアリン酸カルシウム0.1部をタンブラーにて混合した。次いで、二軸混練押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。
(溶融混練条件)
同方向二軸混練押出機:(株)テクノベル社製「KZW-15」
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:50rpm
【0167】
[実施例2~20、比較例1~20]
耐熱安定剤およびステアリン酸カルシウム以外の配合組成を表3~12に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様に行い、ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。
各表で用いた成分は以下のとおりである。
NP055:ポリプロピレン「ハイワックスNP055」(三井化学(株)製)
NP805:ポリプロピレン「ハイワックスNP805」(三井化学(株)製)
プロピレン/エチレン共重合体ゴム:「Vistamaxx6102」(エクソンモービル・ジャパン合同会社(製)
エチレン/ブテン共重合体ゴム:「タフマーA-1050S」(三井化学(株)製)
エチレン/オクテン共重合体ゴム:「エンゲージ8842」(ダウ・ケミカル日本(株)製)
タルク-1:「JM-209」(浅田製粉(株)製)
タルク-2:「HAR W92」((株)イメリス ミネラルズ(製))
モスハイジ:「モスハイジ」(塩基性硫酸マグネシウム無機繊維、
宇部マテリアルズ(株)製)
核剤:フォスフェート系核剤「アデカスタブNA-11」((株)ADEKA製)
【0168】
実施例および比較例で得られたプロピレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機にて下記条件で、後述する形状を有する各試験片を作成した。
(JIS小型試験片、小型角板/射出成形条件)
射出成形機:東芝機械(株)製「EC40」
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間-保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒
【0169】
<曲げ弾性率(FM)、曲げ強度(FS)>
曲げ弾性率FM(MPa)および曲げ強度(FS)(MPa)は、JIS K7171に従って、下記条件で測定した。
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm
【0170】
<シャルピー衝撃値>
シャルピー衝撃値(kJ/m2)は、JIS K7111に従って、温度:23℃または-30℃、試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)、ノッチ:機械加工の条件で測定した。
【0171】
<熱変形温度(HDT)>
熱変形温度は、JIS K7191-1に準拠して測定した。すなわち、試験片の両端を加熱浴槽中で支え、下で中央の荷重棒によって試験片に所定の曲げ応力(0.45MPaの一定荷重)を加えつつ、加熱媒体の温度を2℃/分の速度で上昇させ、試験片のたわみが所定の量に達したときの加熱媒体の温度をもって、熱変形温度とした。
【0172】
<線膨張係数(平均)>
線膨張係数(10-5/℃)は、JIS Z7197に準拠し、TMA法(測定範囲:-30~80℃)にて評価した。小型角板(30mm(幅)×30mm(長さ)×2mm(厚さ))の中央部付近からMD方向およびTD方向にそれぞれ約10mm×5mm×2mm厚の形状の試験片を切り出した。切り出した試験片に対して120℃、2時間のアニール操作を実施した後、MD方向に切り出した試験片およびTD方向に切り出した試験片のそれぞれについて線膨張係数を測定し、両者の平均値を求めた。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
表3、表4、表8、表10、表11および表12の結果から、プロピレン重合体(A)を用いることにより、剛性に優れた成形体が得られることがわかる。また、表5~表7および表9の結果から、プロピレン重合体(A)を用いることにより、剛性および耐衝撃性のバランスに優れ、耐熱性にも優れる成形体が得られることがわかる。
前記プロピレン重合体(A)が、以下の方法(i)により測定した微粉量が3.0質量%以下のプロピレン重合体(A)粒子である請求項1~6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
〔方法(i)〕
重合体粒子を目開き100μmの篩上で5分間振動させ、篩上に残った重合体粒子と篩を通過した重合体粒子の質量を測定し、以下の計算式から微粉量を算出する。
微粉量(質量%)=W1/(W1+W2)×100
W1:目開き100μmの篩を通過した重合体粒子の質量(g)
W2:目開き100μmの篩上に残った重合体粒子の質量(g)
前記プロピレン重合体(B)が、プロピレン単独重合体部(B1)50~99質量%とプロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)1~50質量%とからなるプロピレン系ブロック共重合体であり、
前記プロピレン単独重合体部(B1)が、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が90.0~100%であるプロピレン単独重合体からなり、
前記プロピレン/α-オレフィン共重合体部(B2)が、プロピレンに由来する構成単位40.0~90.0モル%と、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位10.0~60.0モル%とを含有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。