(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164870
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 151/06 20060101AFI20221020BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221020BHJP
C09J 123/14 20060101ALI20221020BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221020BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221020BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20221020BHJP
【FI】
C09J151/06
C09J163/00
C09J123/14
C09J11/06
C09J7/30
C09J7/22
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139304
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2020504976の分割
【原出願日】2019-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018041341
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】沖村 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
(72)【発明者】
【氏名】山田 成志
(57)【要約】
【課題】ポリイミド樹脂等からなる基材フィルムや銅箔に対する接着性が良好であり、誘電特性がさらに向上した接着剤組成物を提供する。
【解決手段】変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)を含有し、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)がα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、固形分換算で、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が10質量%以上であり、かつ、固形分換算で、上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量が1質量%以上90質量%以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、
変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)を含有し、
前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)がα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、
前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が、前記接着剤組成物の固形分100質量部に対して10質量部以上であり、かつ、
前記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量が、前記接着剤組成物の固形分100質量部に対して1質量部以上90質量部以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記α,β-不飽和カルボン酸の誘導体が、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合が、前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%に対して0.1~20質量%である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるプロピレンの共重合比が70質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記未変性ポリプロピレン樹脂(C)におけるプロピレンの共重合比が70質量%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)及び前記未変性ポリプロピレン系樹脂(D)が、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
さらに、有機溶剤を含有し、前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)、前記エポキシ樹脂(B)及び前記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)が、前記有機溶剤に溶解している、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記有機溶剤が、メチルシクロヘキサン及び/又はシクロヘキサンである脂環式炭化水素溶剤、並びにアルコール系溶剤を含み、
前記有機溶剤100質量部に対する前記脂環式炭化水素の含有量が、20質量部以上90質量部以下であり、
前記有機溶剤100質量部に対する前記アルコール系溶剤の含有量が、1質量部以上20質量部以下である、請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
トルエンを含有することを特徴とする請求項9又は10に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
固形分濃度が、5質量%以上50質量%以下である請求項9~11のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、前記接着剤層はBステージ状であることを特徴とする接着剤層付き積層体。
【請求項14】
前記基材フィルムが、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、TPXフィルム、フッ素系樹脂フィルム、及び銅箔からなる群より選択される少なくとも1種である請求項13に記載の接着剤層付き積層体。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層を含む、プリント配線板。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層を含む、フレキシブルフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体に関する。更に詳しくは、電子部品等の接着用途、特に、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」ともいう)の関連製品の製造に適した接着剤組成物、及び接着剤層付き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、その用途が拡大しつつある。そして、近年、電子機器の小型化、軽量化等に伴い、フレキシブルプリント配線板の関連製品は多様化して、その需要が増大している。このような関連製品としては、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル銅張積層板、フレキシブル銅張積層板に電子回路を形成したフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板と補強板を貼り合せた補強板付きフレキシブルプリント配線板、フレキシブル銅張積層板又はフレキシブルプリント配線板を重ねて接合した多層板、基材フィルムに銅配線を貼り合わせたフレキシブルフラットケーブル(以下、「FFC」ともいう)等があり、例えば、フレキシブル銅張積層板を製造する場合、ポリイミドフィルムと銅箔とを接着させるために、通常、接着剤が用いられる。
【0003】
また、フレキシブルプリント配線板を製造する場合、配線部分を保護するために、通常、「カバーレイフィルム」と呼ばれるフィルムが用いられる。このカバーレイフィルムは、絶縁樹脂層と、その表面に形成された接着剤層とを備え、絶縁樹脂層の形成には、ポリイミド樹脂組成物が広く用いられている。そして、例えば、熱プレス等を利用して、配線部分を有する面に、接着剤層を介してカバーレイフィルムを貼り付けることにより、フレキシブルプリント配線板が製造される。このとき、カバーレイフィルムの接着剤層は、配線部分及びフィルム基層の両方に対して、強固な接着性が必要である。
【0004】
また、プリント配線板としては、基板の表面に、導体層と有機絶縁層とを交互に積層するビルドアップ方式の多層プリント配線板が知られている。このような多層プリント配線板を製造する場合、導体層及び有機絶縁層を接合するために、「ボンディングシート」と呼ばれる、絶縁接着層形成材料が用いられる。絶縁接着層には、配線部分への埋め込み性
や回路を形成している導体部の構成材料(銅等)及び有機絶縁層(ポリイミド樹脂等)の両方に対して、強固な接着性が必要である。
【0005】
このようなFPC関連製品に使用される接着剤としては、エポキシ樹脂と高い反応性を有する熱可塑性樹脂を含有するエポキシ系接着剤組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、エチレン-アクリル酸エステル共重合ゴム/エポキシ樹脂系接着剤が開示されている。また、特許文献2には、グリシジル基含有熱可塑性エラストマー/エポキシ樹脂系接着剤が開示されている。更に、特許文献3には、スチレン-マレイン酸共重合体/エポキシ樹脂系接着剤が開示されている。これらの文献に記載されている接着剤組成物は、ゴムやエラストマー成分のカルボキシ基とエポキシ樹脂との反応性を利用することにより、速やかな硬化反応を実現し、接着性にも優れているため、広く利用されている。
【0006】
また、近年需要が急速に拡大している携帯電話や、情報機器端末などの移動体通信機器においては、大量のデータを高速で処理する必要があるため、信号の高周波数化が進んでいる。信号速度の高速化と、信号の高周波数化に伴い、FPC関連製品に用いる接着剤には、高周波数領域での使用に耐え得る誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)が求められている。このような誘電特性の要求に応えるため、例えば、特許文献4にはエポキシ樹脂、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸を必須成分として得られる共重合樹脂及び特定のフェノール化合物を含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。また、特許文献5には、変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂とを含有する接着剤組成物において、変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂とが特定の含有量である接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-235767号公報
【特許文献2】特開2001-354936号公報
【特許文献3】特開2007-2121号公報
【特許文献4】特開平10-17685号公報
【特許文献5】国際公開第2016/047289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の通り、信号の高周波数化に伴い、特許文献1~4に記載された接着剤組成物では、極超短波のマイクロ波帯(1~3GHz)における誘電特性が不十分であるという問題がある。また、これらの接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体は、熱硬化前(Bステージ)における積層体が反る場合があり、FPC製造工程において作業性が悪いという問題がある。上記誘電特性を向上させるためには基材フィルムをより薄くする必要があるが、基材フィルムが薄くなった場合でも、接着剤層付き積層体の反りが少ないことが望まれている。更に、これらの接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体は、保管時に反りが発生することがあり、積層体での貯蔵安定性が悪いという問題もある。
【0009】
特許文献5に記載された接着剤組成物は、接着性、誘電特性、及び、積層体の接着剤層に用いたときの積層体での貯蔵安定性に優れるものであるが、近年の信号速度の更なる高速化、信号の更なる高周波数化に対応するため、更なる誘電特性の向上が求められている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、ポリイミド樹脂等からなる基材フィルムや銅箔に対する接着性が良好であり、誘電特性がさらに向上した接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、誘電特性がさらに向上し、反りが抑制され、貯蔵安定性に優れる接着剤層付き積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、変性ポリプロピレン系樹脂とエポキシ樹脂と未変性ポリプロピレン系樹脂を含有する接着剤組成物において、上記変性ポリプロピレン系樹脂及び未変性ポリプロピレン系樹の含有量が特定の範囲内である場合に、接着性が良好であり、誘電特性がさらに向上することを見出した。また、この接着剤組成物を用いて得られる接着剤付き積層体であって、接着剤層がBステージ状である場合に、接着性に優れるだけでなく、積層体の反りがほとんどなく、貯蔵安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の一局面によれば、接着剤組成物であって、変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)を含有し、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)がα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が、上記接着剤組成物の固形分100質量部に対して10質量部以上であり、かつ、上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量が、上記接着剤組成物の固形分100質量部に対して1質量部以上90質量部以下であることを特徴とする接着剤組成物が提供される。。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記α,β-不飽和カルボン酸の誘導体は、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合は、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%に対して0.1~20質量%である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記エポキシ樹脂(B)は、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるプロピレンの共重合比は70質量%以下である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記未変性ポリプロピレン樹脂(C)におけるプロピレンの共重合比は70質量%以下である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)及び上記未変性ポリプロピレン系樹脂(D)は、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記接着剤組成物は酸化防止剤を含有する。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記接着剤組成物は、さらに、有機溶剤を含有し、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)、上記エポキシ樹脂(B)及び上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)が、上記有機溶剤に溶解している。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記有機溶剤は、メチルシクロヘキサン及び/又はシクロヘキサンである脂環式炭化水素溶剤、並びにアルコール系溶剤を含み、上記有機溶剤100質量部に対する上記脂環式炭化水素の含有量が、20質量部以上90質量部以下であり、上記有機溶剤100質量部に対する上記アルコール系溶剤の含有量が、1質量部以上20質量部以下である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記接着剤組成物は、上記有機溶剤としてトルエンを含有する。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記有機溶剤を含有する接着剤組成物の固形分濃度は、5質量%以上50質量%以下である。
本発明の他の局面によれば、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、上記接着剤層はBステージ状であることを特徴とする接着剤層付き積層体が提供される。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記基材フィルムは、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、TPXフィルム、フッ素系樹脂フィルム、及び銅箔からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の他の局面によれば、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を含む、プリント配線板が提供される。
本発明の他の局面によれば、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を含む、フレキシブルフラットケーブルが提供される。
本明細書において、「プロピレン系樹脂」とは、プロピレンに由来する単量体単位を有する樹脂を意味する。また、「未変性」とは、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されていないことを意味する。
また、本明細書において、重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)により測定された標準ポリスチレン換算値である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリル及びメタクリルを意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着剤組成物は、ポリイミド樹脂等からなる基材フィルムや銅箔に対する接着性が良好であり、誘電特性(低誘電率、及び低誘電正接)に優れる。また、本発明の接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体は、反りがほとんどないため、各種部品の製造工程において作業性に優れ、積層体の貯蔵安定性も良好である。従って、本発明の接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体は、FPC関連製品の製造等に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
1.接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)を含有し、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)がα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が、上記接着剤組成物の固形分100質量部に対して10質量部以上であり、かつ、上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量が、上記接着剤組成物の固形分100質量部に対して1質量部以上90質量部以下であることを特徴とする。以下に本発明を特定する事項について、具体的に説明する。
【0016】
1.1.変性ポリプロピレン系樹脂(A)
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)に由来する部分と、変性剤に由来するグラフト部分とを有する樹脂であり、好ましくは、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)の存在下にα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤をグラフト重合することにより得られたものである。グラフト重合による変性ポリプロピレン系樹脂(A)の製造は、公知の方法で行うことが可能であり、製造の際にはラジカル開始剤を用いてもよい。上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法としては、例えば、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)をトルエン等の溶剤に加熱溶解し、上記変性剤及びラジカル開始剤を添加する溶液法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して未変性ポリプロピレン系樹脂(D)、変性剤及びラジカル開始剤を溶融混練する
溶融法等が挙げられる。未変性ポリプロピレン系樹脂(D)、変性剤及びラジカル開始剤の使用方法は、特に限定されず、これらを、反応系に一括添加しても、逐次添加してもよい。
【0017】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)を製造する場合には、α,β-不飽和カルボン酸のグラフト効率を向上させるための変性助剤、樹脂安定性の調整のための安定剤等を更に使用することができる。
【0018】
変性ポリプロピレン系樹脂(A)の製造に用いる未変性ポリプロピレン系樹脂(D)は、プロピレンに由来する構造単位を有し、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されていないものであれば、特に限定されないが、プロピレンとエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上20以下のオレフィンとの共重合体が好ましく用いられる。本発明においては、プロピレンと炭素数2以上6以下のオレフィンとの共重合体が特に好ましい。
【0019】
電子部品等の接着用途に用いられる接着剤組成物は、溶液の安定化を図るため、5℃程度の低温で数日~数カ月間保管されることがあるが、保管中に接着剤組成物がゲル状態となり、流動性が消失してしまうことがある。そのため、本用途に用いられる接着剤組成物には、低温での貯蔵安定性も求められる。低温での貯蔵安定性を得る観点から、変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるプロピレンの共重合比は70質量%以下であることが好ましく、68質量%以下であることがより好ましい。また、優れた接着性を得つつ2つの部材を接着した後の接着部に柔軟性を付与する観点から、変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるプロピレンの共重合比の下限値は50質量%以上であることが好ましい。未変性ポリプロピレン系樹脂(D)中のプロピレン以外の構造単位とその含有割合は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるプロピレンの共重合比が上記上限値以下になるものであれば、任意に選択できる。難接着性被着体への接着を行う場合は、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、エチレン-プロピレン、プロピレン-ブテン及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である未変性ポリプロピレン系樹脂(D)の変性樹脂であることが好ましい。また、未変性ポリプロピレン系樹脂(D)の分子量は、特に制限されない。
【0020】
変性剤は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む。α,β-不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、上記α,β-不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等が挙げられる。上記変性剤としては、ポリカルボン酸が好ましく、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸がより好ましく、無水イタコン酸及び無水マレイン酸が、接着性の点で特に好ましい。変性剤は、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上を含めばよく、例えば、α,β-不飽和カルボン酸1種以上とその誘導体1種以上の組み合わせ、α,β-不飽和カルボン酸2種以上の組み合わせ、又は、α,β-不飽和カルボン酸の誘導体2種以上の組み合わせとすることができる。
【0021】
本発明に係る変性剤は、目的に応じて、α,β-不飽和カルボン酸等又はその誘導体に加えて、他の化合物(他の変性剤)を含むことができる。他の化合物(他の変性剤)としては、例えば、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル、他の(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニル化合物、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの他の化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
CH2=CR1COOR2 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭化水素基である。)
【0022】
上記(メタ)アクリル酸エステルを表す式(1)において、R1は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。R2は炭化水素基であり、好ましくは炭素数8~18のアルキル基である。上記式(1)で示される化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、耐熱接着性が改良されることから、炭素数8~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを更に含む変性剤を用いることが好ましく、特に、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル又は(メタ)アクリル酸ステアリルを含むことが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、イソシアネート含有(メタ)アクリル酸等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。上記変性剤として、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体と、他の変性剤とを併用することで、変性剤によるグラフト率を向上させたり、溶媒に対する溶解性を向上させたり、接着性を更に向上させたりすることができる。尚、上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを除く他の変性剤を用いる場合、その使用量は、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体及び(メタ)アクリル酸エステル使用量の合計を超えないことが望ましい。
【0024】
上記のように、変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、少なくとも変性剤に由来するグラフト部分を有する。以下、変性ポリプロピレン系樹脂(A)に含まれるグラフト部分の含有割合(以下、「グラフト質量」ともいう)について、説明する。
【0025】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分を有する。上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)において、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分のグラフト質量は、接着性の観点から、変性ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%に対して0.1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2~18質量%である。グラフト質量が0.1質量%以上であると、溶媒に対する溶解性に優れ、金属等からなる被着体に対する接着性に特に優れる。
また、グラフト質量が20質量%以下であると、樹脂等からなる被着体に対する十分な接着性を得ることができる。
【0026】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト質量は、アルカリ滴定法により求めることができるが、α,β-不飽和カルボン酸の誘導体が酸基を持たないイミド等である場合、グラフト質量は、フーリエ変換赤外分光法で求めることができる。
【0027】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)が、上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来するグラフト部分を含む場合、そのグラフト質量は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%に対して0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~25質量%である。グラフト質量が0.1~30質量%であると、溶媒に対する溶解性に優れ、後述する他の樹脂又はエラストマーを含む場合のこれらとの相溶性に優れ、被着体に対する接着性を更に向上させることができる。
【0028】
上記変性剤が、上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む場合、得られた変性ポリプロピレン系樹脂(A)におけるグラフト質量は、フーリエ変換赤外分光法で求めることができる。
【0029】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の製造に用いるラジカル開始剤は、公知のものから、適宜、選択できるが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0030】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の製造に用いることができる変性助剤としてはジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。安定剤としては、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ニトロソフェニルヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0031】
上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000~250,000であり、より好ましくは50,000~200,000である。重量平均分子量(Mw)が30,000~250,000であることにより、溶媒への溶解性、及び、被着体に対する初期接着性に優れ、更に、接着後の接着部における耐溶剤性にも優れた接着剤組成物とすることができる。
【0032】
変性ポリプロピレン系樹脂(A)の酸価は、0.1~50mgKOH/gであることが好ましく、0.5~40mgKOH/gであることがより好ましく、1.0~30mgKOH/gであることが更に好ましい。この酸価が0.1~50mgKOH/gであることにより、接着剤組成物が十分に硬化し、良好な接着性、耐熱性及び樹脂流れ出し性が得られる。
【0033】
変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して10質量部以上であることが必要であり、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましい。変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であることにより、はんだリフロー時の耐熱性を向上させることができる。
また、変性ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して99質量部以下であることが好ましい。
【0034】
1.2.エポキシ樹脂(B)
次に、上記接着剤組成物の一つの成分であるエポキシ樹脂(B)について説明する。エポキシ樹脂は(B)は、上記変性ポリプロピレン系樹脂中のカルボキシ基と反応し、被着体に対する高い接着性や、接着剤硬化物の耐熱性を発現させる成分である。
【0035】
エポキシ樹脂(B)の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらに水素添加したもの;オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール
のポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定するものではない。また、フェノールノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂も用いることができる。
【0036】
更に、エポキシ樹脂(B)の例として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、グリシジルアミノ基を有しないエポキシ樹脂が好ましい。接着剤層付き積層体の貯蔵安定性が向上するからである。また、誘電特性に優れた接着剤組成物が得られることから、脂環骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。
【0037】
本発明に用いるエポキシ樹脂(B)としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。変性ポリプロピレン系樹脂(A)との反応で架橋構造を形成し、高い耐熱性を発現させることができるからである。また、エポキシ基が2個以上のエポキシ樹脂を用いた場合、変性ポリプロピレン系樹脂(A)との架橋度が十分であり、十分な耐熱性が得られる。
【0038】
上記エポキシ樹脂(B)の含有量は、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対して1~20質量部であることが好ましい。上記含有量は、3~15質量部であることがより好ましい。この含有量が1質量部以上であると、十分な接着性と耐熱性が得られる。一方、この含有量が20質量部を以下であると、はく離接着強さや誘電特性が良好になる。
【0039】
1.3.未変性ポリプロピレン系樹脂(C)
未変性ポリプロピレン系樹脂(C)は、プロピレンに由来する構造単位を有し、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されていないものであれば、特に限定されないが、プロピレンとエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上20以下のオレフィンとの共重合体が好ましく用いられる。本発明においては、プロピレンと炭素数2以上6以下のオレフィンとの共重合体が特に好ましい。低温での貯蔵安定性を得る観点から、未変性ポリプロピレン系樹脂(C)におけるプロピレンの共重合比は70質量%以下であることが好ましく、68質量%以下であることがより好ましい。また、優れた接着性を得つつ2つの部材を接着した後の接着部に柔軟性を付与する観点から、未変性ポリプロピレン系樹脂(C)におけるプロピレンの共重合比の下限値は50質量%以上であることが好ましい。未変性ポリプロピレン系樹脂(C)中のプロピレン以外の構造単位とその含有割合は、未変性ポリプロピレン系樹脂(C)におけるプロピレンの共重合比が上記上限値以下になるものであれば、任意に選択でき、難接着性被着体への接着を行う場合は、上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)は、エチレン-プロピレン、プロピレン-ブテン又はエチレン-プロピレン-ブテン共重合体であることが好ましい。また、未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の分子量は、特に制限されない。
【0040】
上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000~250,000であり、より好ましくは50,000~200,000である
。重量平均分子量(Mw)が30,000~250,000であることにより、溶媒への溶解性、及び、被着体に対する初期接着性に優れ、更に、接着後の接着部における耐溶剤性にも優れた接着剤組成物とすることができる。
【0041】
未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して1質量部以上90質量部以下であることが必要であり、20質量部以上70質量部以下であることが好ましく、30質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量が上記範囲内であることにより、はんだリフロー時の耐熱性を維持しつつ、誘電特性を向上させることができる。
【0042】
本発明に係る接着剤組成物において、変性ポリプロピレン系樹脂(A)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の含有量の合計は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましい。この含有量の合計が50質量部以上であることにより、接着剤層の柔軟性を付与し、積層体の反りを防止することができる。
また、この含有量の合計は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して99質量部以下であることが好ましい。
【0043】
本発明に係る接着剤組成物は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)を所定量含有し、周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電率(ε)が2.2未満であることを特徴としている。当該誘電率が2.2未満であれば、近年の信号速度の更なる高速化、信号の更なる高周波数化に対応したFPC関連製品への利用に好適である。また、周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電正接(tanδ)が、0.001未満であることが好ましい。当該誘電正接が0.001未満であれば、誘電特性に優れるFPC関連製品を製造することができる。誘電率及び誘電正接は、接着剤組成物中の変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)の割合に応じて調整できるので、用途に応じて、種々の構成の接着剤組成物を設定することができる。なお、誘電率及び誘電正接の測定方法は後述する。
【0044】
1.4.その他の成分
上記接着剤組成物は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)に加えて、変性ポリプロピレン系樹脂(A)及び未変性ポリプロピレン系樹脂(C)以外の他の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、難燃剤、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、熱老化防止剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、顔料、及び溶媒等を、接着剤組成物の機能に影響を与えない程度に含有することができる。
【0045】
(熱可塑性樹脂)
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(粘着付与剤)
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン-インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(難燃剤)
上記難燃剤は、有機系難燃剤及び無機系難燃剤のいずれでもよい。有機系難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等のリン系難燃剤;メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物や、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃剤;シリコーン化合物、シラン化合物等のケイ素系難燃剤等が挙げられる。また、無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ニッケル等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラス等が挙げられる。これらの難燃剤は、2種以上を併用することができる。
【0048】
(硬化剤)
上記硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミン系硬化剤としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のメラミン樹脂、ジシアンジアミド、4,4'-ジフェニルジアミノスルホン等が挙げられる。また、酸無水物としては、芳香族系酸無水物、及び脂肪族系酸無水物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、5~70質量部であることがより好ましい。
【0049】
(硬化促進剤)
上記硬化促進剤は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)とエポキシ樹脂との反応を促進させる目的で使用するものであり、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤等を使用することができる。
【0050】
第三級アミン系硬化促進剤としては、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N'-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。
【0051】
第三級アミン塩系硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩や、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
【0052】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダ
ゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
接着剤組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが更により好ましい。硬化促進剤の含有量が上記範囲内であれば、優れた接着性及び耐熱性を有する。
【0054】
(カップリング剤)
また、上記カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(熱老化防止剤)
上記熱老化防止剤としては、例えば、酸化防止剤が挙げられ、その具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノ-ル系酸化防止剤;ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-ジチオプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の接着剤組成物は、熱老化防止剤を含有することにより、後述するアフターキュアを高温条件下において短時間で行った場合でも、優れた誘電特性を発現させ易くなる。
【0056】
接着剤組成物が熱老化防止剤を含有する場合、熱老化防止剤の含有量は、接着剤組成物の固形分100質量部に対して、0.5~5質量部であることが好ましく、1~3質量部であることがより好ましい。熱老化防止剤の含有量が上記範囲内であれば、180℃加熱硬化時の誘電特性の悪化を抑制することができる。。
【0057】
(無機充填剤)
上記無機充填剤としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカ、タルク、銅、及び銀等からなる粉体が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
上記接着剤組成物は、変性ポリプロピレン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、未変性ポリプロピレン系樹脂(C)及びその他成分を混合することにより製造することができる。混合方法は特に限定されず、接着剤組成物が均一になればよい。接着剤組成物は、溶液又は分散液の状態で好ましく用いられることから、通常は、有機溶剤等の溶媒も使用される。
【0059】
1.5.有機溶剤
本発明に用いる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。接着剤組成物が有機溶媒を含み、上記変性ポリプロピレン系樹脂(A)、上記エポキシ樹脂(B)及び上記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)が、有機溶剤に溶解又は分散した溶液又は分散液(樹脂ワニス)であると、基材フィルムへの塗工及び接着剤層の形成を円滑に行うことができ、所望の厚さの接着剤層を容易に得ることができる。
【0060】
本発明に用いる有機溶剤は、上記例示したものの中でも、メチルシクロヘキサン及び/又はシクロヘキサンである脂環式炭化水素系溶剤、並びにアルコール系溶剤を含むことが好ましい。かかる形態において、有機溶剤100質量部に対する上記脂環式炭化水素の含有量は、20質量部以上90質量部以下であることが好ましく、40質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
また、上記有機溶剤100質量部に対する上記アルコール系溶剤の含有量が、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
脂環式炭化水素及び/又はアルコール系溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、低温での貯蔵安定性に優れる接着剤組成物とすることができる。
【0061】
また、本発明に用いる有機溶剤は、上記例示したものの中でも、トルエンを含有することが好ましい。かかる形態において、接着剤組成物100質量部に対するトルエンの含有量は、10質量部以上60質量部以下であることが好ましく、20質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。トルエンの含有量が上記範囲内であることにより、有機溶剤へのエポキシ樹脂(B)等の溶解性を向上させることができる。
【0062】
接着剤組成物が有機溶剤を含む場合、接着剤層の形成を含む作業性等の観点から、固形分濃度は、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下の範囲内である。固形分濃度が80質量%以下であると、溶液の粘度が適度であり、均一に塗工し易い。
【0063】
2.接着剤層付き積層体
本発明に係る接着剤層付き積層体は、上記接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、上記接着剤層がBステージ状であることを特徴とする。ここで、接着剤層がBステージ状であるとは、接着剤組成物の一
部が硬化し始めた半硬化状態をいい、加熱等により、接着剤組成物の硬化が更に進行する状態をいう。
【0064】
本発明に係る接着剤層付き積層体の一態様として、カバーレイフィルムが挙げられる。カバーレイフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に接着剤層が形成されているものであり、基材フィルムと接着剤層のはく離が困難な積層体である。
【0065】
接着剤層付き積層体がカバーレイフィルムの場合の基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。これらの中でも、接着性及び誘電特性の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルムが好ましい。
【0066】
このような基材フィルムは市販されており、ポリイミドフィルムについては、東レ・デュポン(株)製「カプトン(登録商標)」、東洋紡績(株)製「ゼノマックス(登録商標)」、宇部興産(株)製「ユーピレックス(登録商標)-S」、(株)カネカ製「アピカル(登録商標)」等を使用することができる。また、ポリエチレンナフタレートフィルムについては、帝人デュポンフィルム(株)製「テオネックス(登録商標)」等を用いることができる。更に、液晶ポリマーフィルムについては、(株)クラレ製「ベクスター(登録商標)」、(株)プライマテック製「バイアック(登録商標)」等を用いることができる。基材フィルムは、該当する樹脂を所望の厚さにフィルム化して用いることもできる。
【0067】
カバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを、ポリイミドフィルム等の基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、該樹脂ワニス層から上記溶媒を除去することにより、Bステージ状の接着剤層が形成されたカバーレイフィルムを製造する方法がある。
上記溶媒を除去するときの乾燥温度は、40~250℃であることが好ましく、70~170℃であることがより好ましい。乾燥は、接着剤組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行われる。
なお、必要に応じて、接着剤層の表面には、保管等のため、離型性フィルムを積層してもよい。上記離型性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等の公知のものが用いられる。
【0068】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、ボンディングシートが挙げられる。ボンディングシートも、基材フィルムの表面に上記接着剤層が形成されたものであるが、基材フィルムは離型性フィルムが用いられる。また、ボンディングシートは、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。ボンディングシートを使用するときに、離型性フィルムをはく離して使用する。離型性フィルムは、上記と同様なものを用いることができる。
【0069】
このような離型性フィルムも市販されており、東レフィルム加工(株)製「ルミラー(登録商標)」、東洋紡績(株)製「東洋紡エステル(登録商標)フィルム」、旭硝子(株)製「アフレックス(登録商標)」、三井化学東セロ(株)製「オピュラン(登録商標)」等を用いることができる。
【0070】
ボンディングシートを製造する方法としては、例えば、離型性フィルムの表面に上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを塗布し、上記カバーレイフィルムの場合と同
様にして乾燥する方法がある。
【0071】
基材フィルムの厚さは、接着剤層付き積層体を薄膜化するため、5~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、5~30μmであることが更に好ましい。
【0072】
Bステージ状の接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、10~50μmであることが更に好ましい。
上記基材フィルム及び接着剤層の厚さは用途により選択されるが、誘電特性を向上させるために基材フィルムはより薄くなる傾向にある。一般的に基材フィルムの厚さが薄く、接着剤層の厚さが厚くなると、接着剤層付き積層体に反りが生じやすくなり、作業性が低下するが、本発明の接着剤層付き積層体は、基材フィルムの厚さが薄く、接着剤層の厚さが厚い場合でも、積層体の反りがほとんど生じない。本発明の接着剤層付き積層体において、接着剤層の厚さ(A)と、基材フィルムの厚さ(B)との比(A/B)は、1以上、10以下であることが好ましく、1以上、5以下であることがより好ましい。更に、接着剤層の厚さが、基材フィルムの厚さより厚いことが好ましい。
【0073】
接着剤層付き積層体の反りは、FPC関連製品の製造工程における作業性に影響するため、できるだけ少ない方が好ましい。具体的には、正方形状の接着剤層付き積層体を、接着剤層を上にして水平面上に載置したときに、上記積層体の端部の浮き上がり高さ(H)と、上記積層体の一辺の長さ(L)との比(H/L)が、0.05未満であることが好ましい。この比は、0.04未満であることがより好ましく、0.03未満であることが更に好ましい。当該比(H/L)が、0.05未満であると、積層体が反ったり、カールしたりすることをより抑制できるため、作業性に優れる。
また、上記H/Lの下限値は、Hが0である場合、すなわち0である。
【0074】
上記積層体の接着剤層を硬化させた後、周波数1GHzで測定した接着剤層付き積層体の誘電率(ε)が3.0未満であり、かつ、該誘電正接(tanδ)が0.01未満であることが好ましい。上記誘電率は、2.7以下であることがより好ましく、誘電正接は、0.003以下であることがより好ましい。誘電率が3.0未満であり、かつ、誘電正接が0.01未満であれば、近年の信号速度の更なる高速化、信号の更なる高周波数化に対応した、誘電特性の要求が厳しいFPC関連製品にも好適に用いることができる。誘電率及び誘電正接は、接着剤成分の種類及び含有量、並びに基材フィルムの種類等により調整できるので、用途に応じて種々の構成の積層体を設定することができる。
また、上記積層体の接着剤層を硬化させた後、周波数1GHzで測定した接着剤層付き積層体の誘電率(ε)が2.0以上であり、かつ、該誘電正接(tanδ)が0以上であることが好ましい。
【0075】
3.フレキシブル銅張積層板
本発明のフレキシブル銅張積層板は、上記接着剤層付き積層体を用いて、基材フィルムと銅箔とが貼り合わされていることを特徴とする。即ち、本発明のフレキシブル銅張積層板は、基材フィルム、接着層及び銅箔の順に構成されたものである。なお、接着層及び銅箔は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明のフレキシブル銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。
【0076】
本発明のフレキシブル銅張積層板を製造する方法としては、例えば、上記積層体の接着剤層と銅箔とを面接触させ、80℃~150℃で熱ラミネートを行い、更にアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法がある。アフターキュアの条件は、例えば、100℃~200℃、30分~4時間とすることができる。なお、上記銅箔は、特に限定されず、電
解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。
【0077】
4.フレキシブルフラットケーブル(FFC)
本発明のフレキシブルフラットケーブルは、上記接着剤層付き積層体を用いて、基材フィルムと銅配線とが貼り合わされていることを特徴とする。即ち、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、基材フィルム、接着層及び銅配線の順に構成されたものである。なお、接着層及び銅配線は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、一体化物として安定性に優れる。
【0078】
本発明のフレキシブルフラットケーブルを製造する方法としては、例えば、上記積層体の接着剤層と銅配線とを接触させ、80℃~150℃で熱ラミネートを行い、更にアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法がある。アフターキュアの条件は、例えば、100℃~200℃、30分~4時間とすることができる。上記銅配線の形状は、特に限定されず、所望に応じ、適宜形状等を選択すればよい。
【実施例0079】
本発明を、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0080】
1.評価方法
(1)重量平均分子量
下記の条件で、GPC測定を行い、変性ポリプロピレン系樹脂のMw(A)を求めた。
Mwは、GPCにより測定したリテンションタイムを標準ポリスチレンのリテンションタイムを基準にして換算した。
装置:アライアンス2695(Waters社製)
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-H 2本、TSKgel
SuperHZ2500 2本、(東ソー社製)
カラム温度: 40℃
溶離液: テトラヒドロフラン 0.35ml/分
検出器: RI(示差屈折率検出器)
【0081】
(2)酸価
変性ポリプロピレン系樹脂(A)1gをトルエン30mlに溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.01mol/Lのベンジルアルコール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0082】
(3)はく離接着強さ
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、その一方の表面に、表1に記載の組成を有する実施例1~28、比較例1~13の接着剤組成物を、それぞれロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ25μm)を形成し、カバーレイフィルム(実施例1~28、比較例1~13の接着剤層付き積層体)を得た。その後、厚さ35μmの圧延銅箔を、カバーレイフィルムの接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次いで、この積層体(ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔)を温度180℃、及び圧力3MPaの条件で30分間加熱圧着し、フレキシブル銅張積層板Aを得た。このフレキシブル銅張積層板Aを切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。
接着性を評価するために、JIS C 6481「プリント配線板用銅張積層板試験方
法」に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、各接着試験片の銅箔をポリイミドフィルムから剥がすときの180゜はく離接着強さ(N/mm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0083】
(4)反り性
厚さ25μmのポリイミドフィルム(縦200mm×横200mm)を用意し、その一方の表面に、表1に記載の組成を有する実施例1~28、比較例1~13の接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ25μm)を形成し、カバーレイフィルム(実施例1~28、比較例1~13の接着剤層付き積層体、厚さ50μm)を得た。上記カバーレイフィルムを、接着剤層を上にして水平面に載置し、四隅それぞれについて垂直方向の浮き上がり高さを測定した。この4点の平均高さ(H)と、積層体の一辺の長さ(L)との比(H/L)を求め、反り性を評価した。
<評価基準>
◎:H/Lが0.020未満
○:H/Lが0.030以上0.05未満
×:H/Lが0.10以上
【0084】
(5)はんだ耐熱性
JIS C 6481「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠し、次の条件で試験を行った。各接着試験片を20mm角に裁断し、120℃、30分の加熱処理を行った。その後、ポリイミドフィルムの面を上にして、260℃のはんだ浴に60秒間浮かべて、接着試験片表面の発泡状態を観察した。
<評価基準>
○:フクレなし
×:フクレあり
【0085】
(6)誘電特性(誘電率及び誘電正接)
(a)接着剤硬化物
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、表1に記載の組成を有する実施例1~28、比較例1~13の接着剤組成物を、それぞれロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着性層)を形成し、ボンディングシートを得た。次に、このボンディングシートをオーブン内に静置して、150℃/60分間又は180℃/30分間加熱処理をした。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(150×120mm)を作製した。誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数1GHzの条件で測定した。
(b)接着剤層付き積層体
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、その一方の表面に、表1に記載の組成を有する実施例1~28、比較例1~13の接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ25μm)を形成し、カバーレイフィルム(実施例1~28、比較例1~13の接着剤層付き積層体、厚さ50μm)を得た。次に、このカバーレイフィルムをオーブン内に静置して、150℃で60分間加熱硬化処理をして、試験片(120mm×100mm)を作製した。
接着剤層付き積層体の誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数1GHzの条件で測定した。
【0086】
(7)接着剤組成物の貯蔵安定性
表1に記載の組成を有する実施例1~28、比較例1~13の接着剤組成物を、それぞれガラス瓶に入れ密封し、5℃で所定時間保管し組成物の結晶性を観察した。所定時間保管後、接着剤組成物の流動性が消失した点を樹脂の結晶化(貯蔵安定性不良)と見なし、評価を行った。
<評価基準>
◎:1か月以上
○:2週間以上1か月未満
△:1週間以上2週間未満
×:1週間未満
【0087】
(8)接着剤層付き積層体の貯蔵安定性
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、その一方の表面に、表1に記載の組成を有する実施例1~28、比較例1~13の接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させてBステージ状の接着剤層(厚さ25μm)を形成し、カバーレイフィルム(実施例1~28、比較例1~13の接着剤層付き積層体、厚さ50μm)を得た。作製したカバーレイフィルムを23℃で所定時間保管し、保管後のカバーレイフィルムと片面銅基板(L/S=50μm/50μm、銅厚さ18μm)とを温度180℃、圧力3MPaで3分間熱プレスを行い、樹脂の埋まり込みを評価した。樹脂が基板に埋まり込まなくなる保存期間について、以下の基準で評価を行った。
<評価基準>
○:2か月以上
△:1週間以上1か月未満
【0088】
2.変性ポリプロピレン系樹脂(A)の製造
以下に示す方法により、変性ポリプロピレン系樹脂(A)として、変性ポリプロピレン系樹脂a1~a3を製造した。
(1)変性ポリプロピレン系樹脂a1
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位65質量%及び1-ブテン単位35質量%からなるプロピレン-ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸1質量部、メタクリル酸ラウリル0.3質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド0.4質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、変性ポリプロピレン系樹脂a1を製造した。変性ポリプロピレン系樹脂a1は、重量平均分子量が7万、酸価が10mgKOH/g、プロピレン/ブテン質量比が65/35であった。
【0089】
(2)変性ポリプロピレン系樹脂a2
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位60質量%及びブテン単位40質量%からなるプロピレン-ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸1質量部、メタクリル酸ラウリル0.3質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド0.4質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、変性ポリプロピレン系樹脂a2を製造した。変性ポリプロピレン系樹脂a2は、重量平均分子量が6万、酸価が10mgKOH/g、プロピレン/ブテン質量比が60/40であった。
【0090】
(3)変性ポリプロピレン系樹脂a3
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位80質量%及びブテン単位20質量%からなるプロピレン-ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸1質量部、メタクリル酸ラウリル0.3質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド0.4
質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、変性ポリプロピレン系樹脂a3を製造した。変性ポリプロピレン系樹脂a3は、重量平均分子量が6万、酸価が10mgKOH/g、プロピレン/ブテン質量比が80/20であった。
【0091】
3.未変性ポリプロピレン系樹脂の製造
(1)未変性ポリプロピレン系樹脂c1
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位65質量%及びブテン単位35質量%を反応させ、未変性ポリプロピレン系樹脂c1を得た。未変性ポリプロピレン系樹脂c1は、重量平均分子量が15万、プロピレン/ブテン質量比が65/35であった。
【0092】
(2)未変性ポリプロピレン系樹脂c2
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位60質量%及びブテン単位40質量%を反応させ、未変性ポリプロピレン系樹脂c2を得た。未変性ポリプロピレン系樹脂c2は、重量平均分子量が15万、プロピレン/ブテン質量比が60/40であった。
【0093】
(3)未変性ポリプロピレン系樹脂c3
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位75質量%及びブテン単位25質量%を反応させ、未変性ポリプロピレン系樹脂c3を得た。未変性ポリプロピレン系樹脂c3は、重量平均分子量が15万、プロピレン/ブテン質量比が75/25であった。
【0094】
4.接着剤組成物の原料
4-1.エポキシ樹脂(B)
(1)エポキシ樹脂b1
DIC社製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂)を用いた。
【0095】
4-2.添加剤
(1)硬化促進剤
四国化成社製 商品名「キュアゾールC11-Z」(イミダゾール系硬化促進剤)を用いた。
(2)酸化防止剤
ADEKA製 商品名「AO-60」(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を用いた。
【0096】
4-3.有機溶剤
メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール及びメチルエチルケトンを用いた。
【0097】
5.接着剤組成物の製造
撹拌装置付き1000mlフラスコに、上記の原料を表1に示す割合で添加し、室温下で6時間撹拌して溶解することにより、接着剤組成物を調製し評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例4、5及び13の接着剤組成物は、樹脂分が溶剤に溶解しなかったため、上記評価を行わなかった。
【0098】
6.接着剤層付き積層体の製造及び評価
上記接着剤組成物を用いて、上記各評価方法に関する説明に記載の通り、接着剤層付き
積層体を製造し評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
上記表1及び表2の結果より、実施例1~11、13~28の接着剤組成物は、150℃で60分間熱養生した場合、及び、180℃で30分間熱養生した場合のいずれも、硬
化物の誘電特性に優れており、接着性及びはんだ耐熱性が良好であった。また、実施例12の接着剤組成物は、150℃で60分間熱養生した場合の硬化物の誘電特性に優れており、接着性及びはんだ耐熱性が良好であった。さらに、実施例1~17及び20~28の接着剤組成物は、低温での貯蔵安定性が良好であった。
また、実施例1~28の接着剤層付き積層体は、誘電特性及び貯蔵安定性に優れ、反りが抑制されていた。
一方、変性ポリプロピレン系樹脂のみを含有する比較例1及び9~12並びに未変性ポリプロピレン系樹脂の含有量が本発明の範囲に満たない比較例8の接着剤組成物は、誘電特性に劣っており、比較例9、11及び12では低温貯蔵安定性も劣っていた。未変性ポリプロピレン系樹脂のみを含有する比較例2並びに変性ポリプロピレン系樹脂の含有量が本発明の範囲に満たない比較例6及び7の接着剤組成物は、接着性に劣り、さらに誘電特性及びはんだ耐熱性の少なくとも1つに劣っていた。エポキシ樹脂を含有しない比較例3の接着剤組成物は、接着性及びはんだ耐熱性に劣っていた。
本発明の接着剤組成物は、接着性及び低温での貯蔵安定性が良好であり、誘電特性に優れる。また、この接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体は、基材フィルムが薄い場合でも反りがほとんどなく、作業性が良好である。従って、本発明の接着剤組成物及びこれを用いた接着剤層付き積層体は、FPC関連製品の製造に好適である。
前記α,β-不飽和カルボン酸の誘導体が、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の接着剤組成物。
前記α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合が、前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%に対して0.1~20質量%である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
前記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)及び前記未変性ポリプロピレン系樹脂(D)が、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
さらに、有機溶剤を含有し、前記変性ポリプロピレン系樹脂(A)、前記エポキシ樹脂(B)及び前記未変性ポリプロピレン系樹脂(C)が、前記有機溶剤に溶解している、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
請求項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備え、前記接着剤層はBステージ状であることを特徴とする接着剤層付き積層体。
前記基材フィルムが、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、TPXフィルム、フッ素系樹脂フィルム、及び銅箔からなる群より選択される少なくとも1種である請求項13に記載の接着剤層付き積層体。