(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164935
(43)【公開日】2022-10-28
(54)【発明の名称】止水フィルターを用いた小型で衛生的な身体洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A47K 7/04 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
A47K7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070052
(22)【出願日】2021-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】309020127
【氏名又は名称】尾池 哲郎
(71)【出願人】
【識別番号】320005420
【氏名又は名称】大河平 優子
(72)【発明者】
【氏名】大河平優子
(72)【発明者】
【氏名】尾池哲郎
【テーマコード(参考)】
2D134
【Fターム(参考)】
2D134DA04
(57)【要約】
【課題】身体洗浄装置は構造が複雑で、大型になりやすく、取り扱いや移動において不便であった。また高度な洗浄を目的とする場合は高価になりがちで、メンテナンスしにくく、衛生的にも課題が残されていた。
【解決手段】常圧下で止水できる止水フィルターと、コネクタが必要でない密封キャップと、汎用ペットボトルを組み合わせ、構造がシンプルで小型で安価であり、メンテナンスしやすく、使用する場所を選ばない身体洗浄装置を提供する。また複数の洗浄ボトルを切り替えることで誰もが高度な洗浄ケアが可能になる身体洗浄装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のチューブ1に、もう一つの径の小さなチューブ2を通し二重構造の二つの流路を形成し、いずれか一方の流路から供給される洗浄水が、チューブ1の先端が肌に密着した際にチューブ1先端内側の肌を洗浄した後、他方の流路を通って回収される洗浄機において、流路3の先端部に、大気圧において漏水しない止水弁が設置され、チューブ1の先端を肌に密着させた際にチューブ1の先端内側が負圧になった場合にのみ流路3から洗浄水がチューブ1先端内側に供給され、チューブ2内側に回収され、チューブ1の先端を肌から離すと洗浄水の供給が停止されることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1の洗浄装置において、止水フィルターの孔径が100~1000μmの範囲の指定された径であり、チューブ2の末端から回収される洗浄水を貯める排水タンク4がペットボトルであり、チューブ2の末端と排水タンク4をつなぐチューブ5がペットボトルキャップ6に開けられた穴7に通されており、穴7の径がチューブ5よりも0.1~3mm小さく、ペットボトル4の密封度がとペットボトルキャップ6に開けられた穴7の内径とチューブ5外径の密着度のみによって保たれ、接着剤やコネクタが不要であることを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2の洗浄装置において、洗浄を実現するための動力源がチューブ2内を負圧にするための吸引機8のみであり、吸引機8とペットボトル4をつなぐチューブ9がペットボトルキャップ6に開けられた穴7に通されており、穴7の径がチューブ5よりも2mm小さく、ペットボトル4の密封度がペットボトルキャップ6に開けられた穴7の内径とチューブ5外径の密着度のみによって保たれ、接着剤やコネクタが不要であり、吸引機8による負圧によってペットボトル4の変形を防ぐためにペットボトル4にリング10が取り付けてあることを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項1あるいは2あるいは3の洗浄装置において、吸引機8が掃除機であり、複数の洗浄水を切り替えることができ、複数の洗浄水用ボトルが3本以内の500mlのペットボトルであり、洗浄水が水、希釈液体洗剤、弱アルカリ水、グリセリン水のいずれかであり、排水用ボトルが1.5Lのペットボトルであり、洗浄水の吐出部11が吐出圧によって回転し、水流が放射状に噴出し、チューブ先端部13が傾斜していることを特徴とする洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所を選ばずに身体を洗浄できる装置に関する。特に小型で取扱い易く、構造がシンプルで安価で、装置内を洗浄しやすく清潔であり、周辺が濡れることなく、場所を選ばずに使用できる身体洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄は毎日欠かせない行為であるが、洗浄時には周囲が濡れないように気を遣うことが通常である。特に医療や介護現場、エステサロンなど他者への洗浄の場合で、浴室以外での洗浄の場合は周囲への飛散は普段以上に気を遣わなければならず、重労働の一つでもある。そうした現場ではシャワーを使うことが多く、洗浄に便利であるが、周囲への洗浄水の飛散が著しい。
【0003】
身体を洗浄する場合、周囲に水が飛び散ることが前提であるため、浴場や洗面台が必要になる。急な必要が生じて洗浄する場合も、洗面器や防水シートなどを準備する。
【0004】
特に医療介護現場における緊急性や、エステサロンにおける快適性の追求などにおいて、周囲に水が飛び散らない小型の洗浄装置は以前より検討されてきた。
【0005】
たとえば「特許 3452194」では、洗浄水が周囲に飛散することのないノズル構造が検討されている。「特開 2002-238972」では、噴射した洗浄水を、すぐに吸入口から吸引して循環ダクト内を循環させ、再び洗浄水として再利用するアイデアも提出されている。また「特開 2003-126212」では、注水と同時に吸引するカップ状の洗浄具も提案されている。「特開 2000-070325」では吸引動力として掃除機を利用した技術が検討されている。
【0006】
いずれも使用するのはシャワー洗浄であり、カップ等で区切られた小さな面積を手軽に洗浄するものが多い。
【0007】
水が飛び散らないようにするために、基本的には負圧吸引であり、吸引された洗浄水は排水タンクに回収され、汚染水に触れずに廃棄できるように工夫されている。
【0008】
さらにそうした基本構造をベースに吸引ポンプによる負圧だけで噴射吸引を同時に達成したり、飛散だけでなく漏水も防いだり、カップを肌に乗せて閉じた洗浄空間を作ると同時に洗浄水が噴射する機構を設けたりといった工夫が試みられている。
【0009】
動力が限られる現場を想定して、手軽に調達できる掃除機を吸引ポンプに使用するなど、より手軽に洗浄できるように工夫が繰り返されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開 2000-070325
【特許文献2】特許 3452194
【特許文献3】特開 2002-238972
【特許文献4】特開 2003-126212
【特許文献5】特許 3825712
【特許文献6】特開 2005-198987
【特許文献7】特開 2006-346415
【特許文献8】特許 4468936
【特許文献9】特開 2010-131518
【特許文献10】特許 5669368
【特許文献11】特許 6472071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多くの小型洗浄装置が開発されているものの、広く一般的に普及しているとは言えない。特に家庭用としてはほとんど流通していない。実際に、多くの有力な特許が年金不納で権利が抹消されている。こうした洗浄ツールは開発が進んでおらず、その結果、洗浄の作業効率はあまり向上していない。
【0012】
手軽な防水洗浄ツールが普及しない、あるいは開発が進まない理由として、先行技術の装置が決して小型化しているとは言えず、取り扱いしにくい点がある。現場が求めている防水洗浄装置は、周囲への水の飛散を防止しつつ、しかも長時間の操作でも疲れず、メンテナンスもしやすい小型の装置である。しかしいずれの提案もメカニズムが複雑で大型になりやすく、操作が煩雑で、しかも高価格になりやすい。
【0013】
また複雑な装置は内部の洗浄が難しく、使用を繰り返すと不潔になりがちである。特に介護現場やエステサロンといった第三者への洗浄の場合、高度な清潔さが求められる上に、作業時間が限られているため、複雑な装置は敬遠される。
【0014】
特に介護現場などで頻繁に使用する洗浄装置の場合、一日に繰り返しメンテナンスしなければならず、複数の装置が必要になるため、本体だけでなく、消耗品も安価であることが重要になる。
【0015】
また装置自体だけでなく、肌への接触部品や洗浄水ボトルなど交換部品が取り外しやすかったり、安価でディスポーザブル化しやすい点も重要である。
【0016】
そして医療現場、介護現場、エステサロン、ペットショップなど、現場によって洗浄ノウハウが異なることが多いため、柔軟に対応できる構造であることも求められる。高機能というよりかは、様々な洗浄に対応できるシンプルかつユニバーサルなデザインでなければならない。施術者の工夫や高度な洗浄ノウハウに対応できるカスタマイズ可能な柔軟性も重要になる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
先行特許の多くは洗浄水の噴出に加圧ポンプを使用し、噴出の制御にも物理的な止水弁を使用している。そのため加圧ポンプのオンオフのために電子回路が必要であったり、ポンプ圧に耐えるだけの止水弁が必要で、大型化につながっていた。
【0018】
そのため発明者らは加圧ポンプと止水弁を使わず、洗浄水の噴出には吸引ポンプによる吸引力だけを利用し、洗浄しない時(洗浄口が閉じていない時)は、吸引力が洗浄水の吸引に働かず、自然に止水できる構造を検討した。
【0019】
いくつかの先行特許には吸引力によって噴出が起きるような工夫がすでになされているものの、技術の主眼は噴出を生じさせることであり、止水への工夫は十分ではなかった。
【0020】
発明者らは、シンプルな構造で止水を確実に行える方法について、シャワーの散水板のような多くの孔をあけたフィルターの止水効果に着目した。ハーゲンポアズイユの式によれば、孔の直径が十分に小さく、フィルターの厚さ(孔の管長)が十分に大きければ、水の粘性によって水の漏れを遅くすることができる。
【0021】
孔からの水の漏れとは、孔中(管中)の流れの速さに依存するが、管中の流れは主に液体の粘性係数に依存し、一般的にハーゲンポアズイユの式「Q=π*R^4*P/(8*η*L)」によってあらわすことができる。ここで、漏れ量 : Q[mL/sec]、差圧 : P[Pa]、孔の直径 : R[cm]、散水板の厚さ : L[cm]、流体の粘度係数 : η[Pa・sec]である。
【0022】
この式によれば厚さ20μmの板に200μmの孔を開け2000Paの差圧をかけると水は1分間に0.004mL通り抜ける。これは見た目にはほぼ通り抜けていないように見える。しかし孔径を500μmまで大きくすると1分間に0.16mL通り抜ける。これは20秒に1滴(0.05mL)であるので、ぽたぽた漏れることになる。実際に厚さ20μmのアルミ箔に約500μmの孔を開けたところ、ほぼ同じ状態を再現することができた。
【0023】
フィルターの孔径によって止水を試みる例はこれまでにないが、止水フィルターは洗浄水が常圧下で漏れない程度の穴や網目構造にするだけでよく、きわめてシンプルな構造にすることができ、施策の結果、装置の小型化に成功した。
【0024】
この止水フィルターによって、洗浄機が肌に接している時のみ洗浄水が一方向に流れ、必要最小限の流量で、しかも常にきれいな水で肌を洗うことができるようになった。
【0025】
またこうした圧力を利用する構造の場合、配管構造の耐圧性や漏水防止が大型化につながりやすいが、発明者らはこの課題を克服すべく検討を繰り返す中で、汎用ペットボトルのキャップとウレタンホース両方の柔軟性に着目し、キャップに開けた穴とウレタンチューブの外形の寸法を工夫することで、接着剤を使用せずに密封できることを発見した。
【0026】
この発見によって密封キャップとチューブが一体となり、コネクタが劇的にシンプルになった。密封キャップ一体型チューブと上記止水フィルターと組み合わせることで洗浄装置全体のさらなる小型化につながった。
【0027】
洗浄水はチューブの内部だけを通り、コネクタ構造を通過しないため、装置内部の洗浄が不要となり、サニタリー性も格段に向上した。
【0028】
先行特許は複雑な設計のため、洗浄水や排水タンクも独自のものを設計しなければならずコスト高につながっていた。本案の発明者らは汎用ペットボトルの使用を基本とし、上記の密封キャップ一体型チューブと組み合わせることで、装置はさらにシンプルな構造となった。
【0029】
給水側には小さな500mLボトルを使用し、排水側には1.5Lボトルを使用するといった工夫も特にコストをかけずに可能になる。必ず給水側が排水タンクよりも少なくなるため、慣れない作業者においても排水タンク漏れが生じることがない。ペットボトルはいつでも手軽に調達できるため、作業の時と場所を選ばない。
【0030】
洗浄やリンスは主に流水、温熱、アルカリ性、界面活性剤の4つの効果によるものである。先行特許はいずれも給水タンクが1つしか設置されておらず、これらを段階的に切り替えたりといった、高度な洗浄ノウハウを実現するような構造にはなっていない。
【0031】
サービスの消費者や受給者のケースやニーズの多様化によって、洗浄装置側もそれに対応できるだけの柔軟性や機能性が求められる時代になっている。しかもエステサロンは高度なノウハウが要求されるにも関わらず、単純なシャワーだけに頼る状況が続いている。
【0032】
発明者らは、本件の着眼点による洗浄装置を試作し、実際に洗浄を試し、工夫を重ねたところ、本発明の汎用性と応用展開性が様々な高度洗浄ノウハウにも広く対応できることを発見した。特に供給水用のボトルを複数用意し、手元で切り替えながら高度な洗浄ノウハウを手軽に実現することができる。
【0033】
一般的に肌の洗浄対象は古い皮脂やたんぱく質であるが、まず古い皮脂は温水によってある程度は溶かされ洗浄される。皮脂は32℃から溶け始めるため、湯温は一般的に32℃から35℃に設定されることが多い。湯温が高すぎると皮脂が溶けすぎ、洗顔後につっぱり感(過乾燥)がひどくなり、過剰の分泌にもつながるため、32℃がベストとされている。つまり1℃単位の制御が重要であるが、一般的な洗浄装置はそこまで高度に湯温をコントロールしているわけではない。
【0034】
しかし本件発明は供給水用のボトルにサーモスタットを組み合わせることで常に供給湯温を一定にすることができるため、手軽に1℃単位で制御が可能である。
【0035】
また古いたんぱく質は温水だけでは不十分であり、アルカリ性や界面活性剤が必要になる。敏感な肌や、炎症を起こした肌の場合、界面活性剤が強すぎる場合がある。そうした場合、たとえば弱アルカリ性の温泉水が洗浄に適している場合がある。たとえば固形純石鹸が肌にやさしいのは、弱アルカリ性と弱い界面活性の組み合わせによるものである。そうした組み合わせ洗浄のための弱アルカリ水と薄めた界面活性剤を複数の洗浄ボトルに充填し、切り替えながらやさしくシャワー洗浄することで、敏感肌にも適した洗浄が可能になる。
【0036】
また、肌の洗浄において最も避けなければならないのは、肌への界面活性剤の洗い残しである。この場合も排水側のpHを監視することで弱アルカリ水の残存を確認することができ、ペットボトルの内側が目視できるため、泡立ちも確認することができる。
【0037】
すすぎにおいてはクエン酸等の弱酸性成分を配合したリンスインすすぎ水でさらにしっかりとすすぐことも想定できるが、先行特許のような複雑なコネクタの場合、金属部品を使うこともあるため、幅広い成分の使用は錆などの不具合につながりやすい。しかし本発明はコネクタが不要であるためシームレスな配管となり、洗浄水の性質にはまったく影響を受けないため、幅広い洗浄水と洗浄方法を採用することができる。
【0038】
また本発明は常に清浄な洗浄水を必要最小限の水量によって効率的に手軽に肌を洗浄できることが最大の特徴であり、敏感で弱い肌、炎症部、褥瘡部などへの洗浄に適用できる。特に炎症部や褥瘡部においては水流だけで表面の雑菌だけを洗い流すなどが重要なステップになる。
【0039】
水圧によって水を飛散させる構造として類似のものにスプリンクラーがある。本装置も同様に、水圧によって回転する機構を取り入れることで、水流が遠心方向に噴出させることもできる。チューブ先端も同様に遠心方向に開口部を広げることで広範囲を効率よく洗浄することができる。
【0040】
犬猫のように体毛が長い場合で、寝たきりが長くなると、まず毛が薄くなったり、抜けたりして、その後、褥瘡ができやすくなる。この場合も温水流だけでよく洗浄し、雑菌だけを取り除くことが重要になるが、さらにその後の乾燥も本発明であればタオルなど刺激のあるふき取りではなく、即座に乾燥空気に切り替えてやさしく乾燥することができる。
【0041】
高齢化によって、人もペットも老々介護が問題になりつつあり、重たい体重を抱えてバスルームへ移動することが困難となっている。そうした場合も本発明による洗浄装置であれば場所を選ばず手軽に素早く清潔に洗浄が行えるようになる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によって、これまで洗面台や防水シートや特別な動力が必要であった身体の洗浄が、場所を選ばずに手軽に行えるようになる。複数の洗浄剤を使用することで、敏感な肌質や、特に注意が必要な炎症部についても、同じ操作で同じ程度にやさしい洗浄が可能になる。これまでは特別なノウハウが必要であった洗浄も、マニュアルに従って行うことで誰もが同じような洗浄ケアが可能になる。家庭での洗顔や介護、医療現場、エステ、被災地など広範囲なケースで利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】洗浄装置本体チューブの構造とチューブ先端拡大図
【発明を実施するための形態】
【0044】
本件発明の装置は洗浄用器具、供給水ボトル、排水ボトル、吸引装置からなる。供給水ボトルと排水ボトルは密封キャップ一体型チューブとペットボトルからなる。洗浄用器具は主に供給水(洗浄水)用のチューブ、排水用チューブ、止水フィルターからなる。吸引装置は真空ポンプや掃除機が利用できる。
【0045】
洗浄用器具について詳しく解説する。洗浄用器具はパイプ型とカップ型の2種類である。パイプ型はある径のチューブ1に、もう一つの径の小さなチューブ2を通し二重構造の流路を形成し、チューブ1とチューブ2に挟まれた流路3から供給される洗浄水が、チューブ1の先端部13が肌に密着した際にチューブ1先端内側の肌を洗浄した後、チューブ2内の流路を通って回収される洗浄機において、流路3の先端部に、大気圧において漏水しにくい止水フィルターが設置され、チューブ1の先端を肌に密着させた際にチューブ1の先端内側が負圧になった場合にのみ流路3から洗浄水がチューブ1先端内側に供給され、チューブ2内側に回収され、チューブ1の先端を肌から離すと洗浄水の供給が停止される。なおチューブ1とチューブ2による二重構造流路の洗浄水と排水の経路は内外が逆になってもよい。
【0046】
カップ型の場合はお椀状のカップを肌にかぶせるように使用する。チューブ1とチューブ2は二重構造をとらず、それぞれカップの対極の位置に接続する。供給水型のチューブ1の出口に止水フィルターを設置する。カップを肌に密着させた際にチューブ1の先端内側が負圧になった場合にのみ洗浄水がチューブ1に供給され、止水フィルターを通って肌を洗浄した後、チューブ2内側に回収され、カップを肌から離すと洗浄水の供給が停止される。
【0047】
止水フィルターの孔の孔径(直径)は100~1000μmの範囲の指定された径であり、差圧10kPaにおける孔1個の流量が0.1〜10mL/minの範囲となるように孔径とフィルターの厚さが定められ、望ましくは1mL/min(孔250個で250mL/min)が理想的である。止水フィルターは孔の開いた散水板状のもの以外に、不織布、綿類でも、同じ差圧で同様の流量となるものであれば利用できる。止水フィルターはフィルターにおける差圧が小さくなった場合に、液体の粘性によって流量が著しく下がる場合に「止水した」と判断する。具体的には、差圧が2kPa以下の条件下で、孔1個の流量が0.1mL/min(孔250個で25mL/min)以下となる孔径とフィルター厚である。たとえば差圧が2kPaで、フィルター厚が20μmの場合、孔径は440μmである。フィルター厚が100μmの場合、孔径は650μmである。
【0048】
洗浄機の先端は肌に密着させるため顔の曲面に追随できるようにスポンジや湾曲したゴム板を取り付けて使用する。スポンジは水分を保持できる気泡を有し、気泡が水分で満たされ、かつ肌に密着して圧縮されているときは通水性が落ちるため、洗浄部の密封度を上げることができる。
【0049】
チューブ先端の吐出部11が水圧(吐出圧)によって回転させることによって、水流を放射状に噴出させることもできる。チューブ先端部13も同様に遠心方向に開口部を広げることで広範囲を効率よく洗浄することができる。
【0050】
水流の強さを調節する場合は3通りの方法がある。一つは上記スポンジの材質(気泡の大きさや、空隙率)を変えることで洗浄部の密封度を変えることができるため、水流の強さに直接関係する負圧を調節することができ、その結果、生じる水流の強さを調整することができる。
【0051】
またチューブで調整する場合は流量調整コックなどを使用する。また止水フィルターの穴径や厚さを調節する方法でも調整できる。
【0052】
供給水ボトル、排水ボトルは、ペットボトルと、密封キャップ一体型チューブはからなる。密封キャップ一体型チューブはペットボトルのキャップに開けられた穴にチューブが差し込まれた構造をしており、キャップの密封度はキャップとチューブの密着度のみによって保たれ、接着剤やコネクタが不要であるものである。
【0053】
具体的にはチューブ2の末端と供給水タンクあるいは排水タンクをつなぐチューブ5がペットボトルキャップ6に開けられた穴7に通されており、穴7の直径がチューブ5よりも0.1~3mm小さく、ペットボトル4の密封度がとペットボトルキャップ6に開けられた穴7の内径とチューブ5外径の密着度のみによって保たれ、接着剤やコネクタが不要となっている。
【0054】
穴7の直径は望ましくはチューブ外径より2mm小さくする。具体的には外径6mmのウレタンチューブを使用する場合、ボトルキャップ6に開ける穴7の直径は4mmとすれば、差圧300kPaにおいても漏れの生じない高密閉のキャップ一体型チューブを作成することができる。
【0055】
吸引装置には、真空ポンプや掃除機、あるいは手作業であれば手動真空ポンプが使用できる。一般的な掃除機の吸引圧力は25~15kPaであるが、少なくとも10kPa以上のものを使用する。吸引機8による負圧によってペットボトル4の変形が生じることがあるため、ペットボトル4にリング10を取り付けるか、より高強度なボトルを利用する。
【0056】
複数の洗浄水用ペットボトルを使用し、複数の洗浄水を切り替えることができるようにする場合は、複数の洗浄水用ペットボトルの合計容量が排水用ペットボトルよりも小さくなるようにする。具体的には複数の洗浄水用ボトルが3本の500mlのペットボトルの場合、排水用ボトルは1.5Lのものを利用する。
【0057】
洗浄用の供給水は、水、温水、希釈液体洗剤、弱アルカリ水、グリセリン水などが利用できる。それらの切り替えは市販の3方ルアーストップコックなどが利用できる。
【0058】
洗浄水の水温を調節する場合はペットボトルにサーモスタットとヒーターを投入して制御する。
【0059】
以上の洗浄用器具、洗浄水ボトル、排水ボトル、吸引装置を組み合わせて洗浄機とする。排水ボトルと同じサイズの洗浄水ボトルに1種類の洗浄水を充填して使用することもでき、複数の洗浄水ボトルに水、温水、希釈液体洗剤、弱アルカリ水、グリセリン水などから選び充填し、3方ルアーストップコックなどで切り替えながら洗浄することもできる。
【0060】
特にクレンジングのリンスの場合は、温水のみによる流水洗浄がもっとも効果的である場合もある。特に界面活性剤は毛髪の生え際、顎回り、輪郭回りなどで落ちにくく、ある程度の水量と時間が必要である。
【0061】
すすぎ残しを避けるためには、排水ボトル内に泡立ちを確認できる小さなカップなどの受けを設置して泡立ちを目視にて確認したり、同じく小カップ部にpHセンサーを設置して数値で確認できる。
【実施例0062】
中空のチューブ1に、もう一つの径の小さなチューブ2を通し二重構造の流路を形成し、チューブ1とチューブ2に挟まれた流路3に500mLの洗浄水ボトルの密封キャップ一体型チューブを連結した。
【0063】
密封キャップ一体型チューブ用のチューブは外形6mmのウレタンチューブであり、ペットボトルキャップ6に開けられた穴7に通されており、穴7はチューブよりも2mm小さい直径4mmである。ペットボトルキャップの中心から5mmの位置に二つ印をつけ、そこに直径4mmの孔を二つあける。外径6mm、内径4mmウレタンチューブの先端を斜めにカットし、ペンチで引っ張りながら通す。二つのチューブのうちの1本はペットボトルに充填された液体の通用であり、もう1本はエア抜き用であるため通常は開口するが、高度に清潔な作業が必要な場合はチューブの先端に無菌フィルターを設置する。
【0064】
排水が回収されるチューブ2には1.5Lの排水ボトル側も密封キャップ一体型チューブ用のチューブ5を連結し、さらに排水ボトルのもう一方のチューブには吸引装置8を接続した。吸引装置側のチューブは排水ボトル内において短くカットされ、排水を引き込まないようにしてある。
【0065】
また吸引装置8による負圧によって排水用ペットボトル4の変形を防ぐためにペットボトル4に金属製リング10を取り付けた。
【0066】
流路3の先端には厚さ50μm、孔径500μmの穴を250個有した散水板を使用した。流量は差圧10kPa(掃除機)において1分間約80mLであり、500mLボトルの場合、約6分間洗浄できる。
【0067】
チューブ1の先端にはシリコンゴムを取付、肌の局面に追随できるようにした。
【0068】
3本の500mL洗浄水ボトルを全て使用して洗浄したが、1.5Lの排水ボトルがあふれることはなく、吸引装置へ排水が引き込まれることもなかった。
【0069】
実際に洗浄に用いたところ、肌に密着させると水流が発生し、肌を洗浄したあと、排水は排水ボトルへ回収された。洗浄機を肌から離すと、水流はほぼ停止した。洗浄機を肌から離した場合の流量は数秒に1滴程度であった。