(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164948
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】下水道管渠点検方法、下水道管渠計測方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
E03F7/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070062
(22)【出願日】2021-04-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】山中 明彦
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063EA03
(57)【要約】
【課題】劣化に関連する正確な情報を得る。
【解決手段】本発明の下水道管渠点検方法は、下水道管渠を点検するため方法である。下水道管渠点検方法は、浮き配置ステップ、映像取得ステップ、劣化判断ステップを実行する。浮き配置ステップでは、下水道管渠の上流側のマンホールから、あらかじめ定めた間隔で浮きが取り付けられた糸を、その糸の一端から所定の長さを流した状態にする。映像取得ステップでは、下水道管渠のマンホール内から浮きと一緒に下水道管渠の映像を取得する。劣化判断ステップでは、映像内の下水道管渠の映像に基づいて劣化を判断し、映像内の浮きの映像に基づいて劣化の位置を判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道管渠を点検するための下水道管渠点検方法であって、
前記下水道管渠の上流側のマンホールから、あらかじめ定めた間隔で浮きが取り付けられた糸を、当該糸の一端から所定の長さを流した状態にする浮き配置ステップと、
前記下水道管渠のマンホール内から前記浮きと一緒に前記下水道管渠の映像を取得する映像取得ステップと、
前記映像内の前記下水道管渠の映像に基づいて劣化を判断し、前記映像内の前記浮きの映像に基づいて前記劣化の位置を判断する劣化判断ステップと、
を実行する下水道管渠点検方法。
【請求項2】
請求項1記載の下水道管渠点検方法であって、
前記浮きは、発光部を備えている
ことを特徴とする下水道管渠点検方法。
【請求項3】
請求項2記載の下水道管渠点検方法であって、
前記浮きは、半透明であり、前記発光部の光を拡散させる
ことを特徴とする下水道管渠点検方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の下水道管渠点検方法であって、
前記浮きは、前記糸に取り付けるための固定部を備えおり、
前記固定部は、前記浮きを前記糸に固定する位置を変更できる構造である
ことを特徴とする下水道管渠点検方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載下水道管渠点検方法であって、
前記映像取得ステップで取得する映像は、前記配置ステップで糸を流す上流側のマンホールで取得した映像である
ことを特徴とする下水道管渠点検方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載下水道管渠点検方法であって、
前記映像取得ステップで取得する映像は、前記配置ステップで糸を流す上流側のマンホールと対向している下流側のマンホールで取得した映像である
ことを特徴とする下水道管渠点検方法。
【請求項7】
請求項2記載の下水道管渠点検方法であって、
前記浮きは、映像取得部も備えている
ことを特徴とする下水道管渠点検方法。
【請求項8】
下水道管渠の管径を計測するための下水道管渠計測方法であって、
前記下水道管渠のマンホールの外から、前記マンホールの最も低い位置に先端が接触するまで計測スタッフを挿入する計測スタッフ配置ステップと、
前記下水道管渠のマンホール内から前記計測スタッフと一緒に前記下水道管渠の映像を取得する映像取得ステップと、
前記映像内の前記下水道管渠と前記計測スタッフの映像に基づいて前記管径を計測する管径計測ステップと、
を実行する下水道管渠計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道管渠を点検するための下水道管渠点検方法および下水道管渠計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管渠などの地中に埋設された管渠を点検する従来技術として、特許文献1~4,非特許文献1,2などが知られている。特許文献1~4に示された技術では、管渠内に自走式の装置を侵入させるなど、複雑な構造の装置を用いることで、管渠内を点検、修理している。一方、非特許文献1,2に示された技術では、マンホール内から撮影した映像に基づいて管渠内の状態を点検している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-220002号公報
【特許文献2】特開2003-302219号公報
【特許文献3】特開2007-113240号公報
【特許文献4】特表2015-519570号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】静岡県富士市上下水道部、“官民連携によるストックマネジメント導入への取組み”,平成29年6月,[令和3年4月2日検索]、インターネット<https://www.mlit.go.jp/common/001194078.pdf>.
【非特許文献2】山中明彦、「包括的民間委託による下水道管渠の維持管理」,建設機械施工 Vol.73,No.3,March 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4に示された従来技術は、コストが高くなりやすく、車両が入れないような路地の下に配置された管渠の点検は難しい。したがって、膨大な設備の点検に適用することは難しい。一方で、非特許文献1,2に示された技術は、地上部において点検用マンホール内に立ち入らずに簡易な装置のみで実施できるので膨大な設備の点検に適用しやすい。しかし、劣化の位置あるいは修理対象である下水道管渠の管径を点検用マンホール内に立ち入らずに正確に測定することが難しい。
本発明は、非特許文献1,2に示された技術に基づきながら、劣化に関連する正確な情報を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の下水道管渠点検方法は、点検用マンホール内に立ち入らずに下水道管渠を点検するため方法である。下水道管渠点検方法は、浮き配置ステップ、映像取得ステップ、劣化判断ステップを実行する。浮き配置ステップでは、下水道管渠の上流側のマンホールから、あらかじめ定めた間隔で浮きが取り付けられた糸を、その糸の一端から所定の長さを流した状態にする。映像取得ステップでは、下水道管渠のマンホール内から浮きと一緒に下水道管渠の映像を取得する。劣化判断ステップでは、映像内の下水道管渠の映像に基づいて劣化を判断し、映像内の浮きの映像に基づいて劣化の位置を判断する。
【0007】
本発明の下水道管渠計測方法は、点検用マンホール内に立ち入らずに下水道管渠の管径を計測するための方法である。下水道管渠計測方法は、計測スタッフ配置ステップ、映像取得ステップ、管径計測ステップを実行する。計測スタッフ配置ステップでは、下水道管渠のマンホールの外から、マンホールの最も低い位置に先端が接触するまで計測スタッフを挿入する。映像取得ステップでは、下水道管渠のマンホール内から計測スタッフと一緒に下水道管渠の映像を取得する。管径計測ステップでは、映像内の下水道管渠と計測スタッフの映像に基づいて管径を計測する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の下水道管渠点検方法によれば、あらかじめ定めた間隔で浮きを下水道管渠内に配置できるので、点検用マンホール内に立ち入らずに簡易な装置のみで劣化の位置を正確に測定できる。本発明の下水道管渠計測方法によれば、下水が流れている状態でも簡易に管径を計測できる。つまり、どちらの方法も劣化に関連する正確な情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】下水道管渠点検方法で実際に取得した映像の例を示す図。
【
図8】下水道管渠の管径を計測する場合の縦断面図。
【
図10】下水道管渠計測方法で実際に取得した映像の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0011】
図1に下水道管渠点検方法の処理フローを示す。
図2に上流側から映像を取得する場合の縦断面図、
図3に下流側から映像を取得する場合に縦断面図を示す。
図4は、下水道管渠点検方法で実際に取得した映像の例を示す図である。
図5に糸に取り付けられた浮きの構成を示す。
図6に発光部を備えた浮きの構成を示す。下水道管渠点検方法は、点検用マンホール内に立ち入らずに下水道管渠930を点検するため方法である。下水道管渠点検方法は、浮き配置ステップ(S100)、映像取得ステップ(S200)、劣化判断ステップ(S300)を実行する。
【0012】
浮き配置ステップ(S100)では、下水道管渠930の上流側のマンホール910から、あらかじめ定めた間隔で浮き110が取り付けられた糸100を、その糸100の一端から計測対象位置までの所定の長さを流した状態にする。上流側のマンホール910から糸100を流せば、流れにしたがって、浮き110が配置されるので、あらかじめ定めた間隔で浮き110が配置されることになる。例えば、
図2のように浮き110が5個配置された状態で、糸100をマンホール910付近で固定すればよい。
図2の状態の場合、浮き110を2m間隔で取り付けているとすると、上流側の管口920から最も下流側の浮き110までの距離は約10mとなる。また、
図3のように最も下流側の浮き110が下流側の管口920付近に配置されるように糸100を流した状態にしてもよい。
【0013】
浮き110は、管渠内水面950上に浮く構造である。浮き110は、浮き部111、固定部112、接続部113で構成すればよい(
図5参照)。固定部112および接続部113は釣り用の浮きと同様の形状とすればよい。浮き110は、糸100に固定されるが、釣り用の浮きと同様に位置を人手で変更できる。したがって、「あらかじめ定めた間隔」はマンホール910同士の間隔などを考慮し、下水道管渠点検方法を実行する前に設定しておけばよい。
【0014】
また、浮き部111内に発光部114と電池115を備えてもよい。この場合は、浮き部111は半透明とし、発光部114の光を拡散させる材料を用いればよい。例えば、半透明な乳白色の材質を用いればよい。発光部114にはLED(発光ダイオード)などを利用すればよい。また、電池115などの重い物の反対側に発光部114を配置することで、発光部114が上になるように配置すればよい。浮き部111が発光部114を備えれば、下水道管渠930内を明るくできるので、映像を取得しやすくなり、後述の劣化判断ステップ(S300)でも劣化を判断しやすくなる。
【0015】
映像取得ステップ(S200)では、下水道管渠930のマンホール910内から浮き110と一緒に下水道管渠930の映像を取得する。
図2は、配置ステップ(S100)で糸100を流す上流側のマンホール910から、管口カメラ200を用いて映像を取得する様子を示している。
図3は、配置ステップ(S100)で糸100を流す上流側のマンホール910と対向している下流側のマンホール910から、管口カメラ200を用いて映像を取得する様子を示している。作業者は、地上から管口カメラ200をマンホール内に挿入し、映像を取得する。管口カメラ200としては、非特許文献1に示されている管口簡易カメラまたは管口TVカメラを用いればよい。また、得られた映像は、非特許文献1に示されているタブレット端末などに格納すればよい。
図4は、下水道管渠点検方法で実際に取得した映像の例を示す図である。
【0016】
劣化判断ステップ(S300)では、映像内の下水道管渠の映像に基づいて劣化を判断し、映像内の浮きの映像に基づいて劣化の位置を判断する。下水道管渠の映像に基づく劣化(例えば、非特許文献1に記載されている「侵入水」、「目地ずれ」、「腐食」など)の判断は、人が目視により行えばよい。その際、人は、浮きの映像に基づいて位置を判断すればよい。
図4に示されたように、浮きの位置から下水道管渠の位置(管口からの距離)を判断できる。劣化判断の結果は、非特許文献1に示されたような集計処理に利用すればよい。
【0017】
上述の下水道管渠点検方法によれば、あらかじめ定めた間隔で浮き110を下水道管渠930内に配置できるので、人が劣化の位置(管口920からの距離)を認識しやすい。よって、点検用マンホール内に立ち入らずに簡易な装置(例えば、管口カメラ200、浮き110を固定した糸100、タブレット端末など)で劣化の位置を正確に測定できる。よって、劣化に関連する正確な情報を得ることができる。
[変形例1]
【0018】
図7に、変形例1の浮き部の構成を示す。
図7に示す浮き部111は、映像取得部116も備えている。
図7の浮き部111の場合は、少なくとも映像取得部116が配置されている部分は無色透明である。その他の部分は乳白色などの光を散乱する材質とすればよい。映像取得部116としては、小型のCCDカメラなどを利用すればよい。また、映像取得部116の制御、取得した映像の送受信は無線により行えばよい。その他の構成および処理フローなどは実施例1と同じである。管口カメラ200も用いて映像を取得すればよい。
【0019】
変形例1の場合、糸100をマンホール910付近に固定した後、映像取得部116でも映像を取得してもよいし、糸100を流している際にも映像取得部116でも映像を取得してもよい。下水道管渠930の壁面に近い映像を取得できるので、劣化の判断しやすくなる。また、実施例1と同様の効果も得られる。
上述の下水道管渠計測方法によれば、下水道の場合は最も低い位置に管口920が配置されていることを利用しているので、点検用マンホール内に立ち入らずに下水が流れている状態でも簡易に管径を計測できる。よって、劣化に関連する正確な情報を得ることができる。