(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164965
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】検体容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20221024BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20221024BHJP
G01N 1/44 20060101ALI20221024BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B65D81/18 Z
B65D77/20 J
G01N1/44
G01N1/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070093
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】508376638
【氏名又は名称】株式会社サン・ワイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】千田 泰史
(72)【発明者】
【氏名】川口 敦史
【テーマコード(参考)】
2G052
3E067
【Fターム(参考)】
2G052AA29
2G052AA36
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052DA02
2G052DA12
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2G052DA23
2G052DA27
2G052EB11
3E067AA03
3E067AB83
3E067AB96
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067CA16
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3E067EA23
3E067FA04
3E067GA09
3E067GC10
(57)【要約】
【課題】不活化液を用いることなく検体を不活化することが可能な検体容器を提供する。
【解決手段】検体容器1は、有底筒状の形状を有し、検体TBを収容するための容器本体2と、容器本体2の開口部22を閉塞する蓋体3と、容器本体2内に収容された検体TBを加熱する加熱部(第一反応容器C1、第二反応容器C2)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の形状を有し、検体を収容するための容器本体と、
前記容器本体の開口部を閉塞する蓋体と、
前記容器本体内に収容された前記検体を加熱する加熱部とを備える検体容器。
【請求項2】
前記加熱部は、前記検体を加熱することにより不活化する請求項1記載の検体容器。
【請求項3】
前記加熱部は、前記検体を、発熱反応による反応熱で加熱する請求項1又は2に記載の検体容器。
【請求項4】
前記加熱部は、第一反応物を収容する第一反応容器と、第二反応物を収容する第二反応容器とを備え、
前記第一反応容器の第一内部空間と前記第二反応容器の第二内部空間とは、互いに連通可能とされており、
前記反応熱は、前記第一内部空間と前記第二内部空間とが連通されることによって、前記第一反応物と前記第二反応物とが発熱反応して生じる請求項3記載の検体容器。
【請求項5】
前記第二反応容器は、前記蓋体に設けられている請求項4に記載の検体容器。
【請求項6】
前記第一反応容器は、前記容器本体の内径よりも外径が小さい有底筒状形状を有し、前記容器本体内に収容可能とされている請求項4又は5に記載の検体容器。
【請求項7】
前記第一反応容器の、底とは反対側の端部である先端部の近傍には、前記第二反応物が通過可能な取入口が形成され、
前記第二反応容器に前記第一反応容器の前記先端部が差し込まれることによって、前記第一内部空間と前記第二内部空間とが前記取入口を介して連通する請求項6に記載の検体容器。
【請求項8】
前記先端部には、尖形形状を有する尖形突起が設けられ、
前記尖形突起が前記第二反応容器の壁に押し当てられることによって、前記尖形突起が前記壁を穿孔して前記第二反応容器に前記先端部が差し込まれる請求項7に記載の検体容器。
【請求項9】
前記第二反応容器は、前記蓋体の内側に設けられている請求項7又は8に記載の検体容器。
【請求項10】
前記蓋体が前記開口部を閉塞する際に前記容器本体の底と対向する前記第二反応容器の壁の少なくとも一部は、前記蓋体よりも穿孔容易に構成されている請求項9に記載の検体容器。
【請求項11】
前記第二反応容器は、前記蓋体よりも穿孔容易なフィルムにより袋状に構成されている請求項9に記載の検体容器。
【請求項12】
前記第一反応容器の底の外壁面から前記取入口の前記先端部に最も近い位置までの距離は、前記開口部を前記蓋体で閉塞した状態における前記容器本体の底の内壁面から前記第二反応容器の壁までの距離よりも長い請求項9~11のいずれか1項に記載の検体容器。
【請求項13】
前記第一反応容器は、外周から鍔状に突出する鍔部を備え、
前記鍔部の外径は、前記容器本体の内径よりも僅かに小さい請求項6~13のいずれか1項に記載の検体容器。
【請求項14】
前記第二反応物は、液体又は気体であり、
前記第一反応容器の内壁には、前記先端部側から前記底へ向かって延びる溝が形成されている請求項4~13のいずれか1項に記載の検体容器。
【請求項15】
前記溝は、前記先端部から遠ざかるに従って幅狭になる幅狭部を有する請求項14に記載の検体容器。
【請求項16】
前記溝は、前記先端部から遠ざかるに従って幅広になる幅広部を有する請求項14に記載の検体容器。
【請求項17】
前記第一反応物は生石灰であり、前記第二反応物は水である請求項4~16のいずれか1項に記載の検体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を収容するための検体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、新型コロナウイルス感染症のPCR(Polymerase Chain Reaction)検査の検体を郵送する際、ウイルスを不活化する不活化液が入った容器に、だ液等の検体を入れて郵送することが行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本郵便ホームページ「新型コロナウイルス感染症のセルフPCR検査の検体の取り扱い」(https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2021/00_honsha/0118_01.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不活化液が入った容器に検体を入れると、不活化液の影響を排除するために、PCR検査を行う前に、容器の内容物を精製する必要がある。そのため、精製コストと時間がかかるという不都合があった。また、不活化液によって検体が薄まるため、PCR検査によるウイルス検出感度が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、不活化液を用いることなく検体を不活化することが容易な検体容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検体容器は、有底筒状の形状を有し、検体を収容するための容器本体と、前記容器本体の開口部を閉塞する蓋体と、前記容器本体内に収容された前記検体を加熱する加熱部とを備える。
【0007】
この構成によれば、容器本体に収容した検体を蓋体によって密閉しつつ加熱することにより、検体を不活化することが容易となる。その結果、不活化液を用いることなく検体を不活化することが容易となる。
【0008】
また、前記加熱部は、前記検体を加熱することにより不活化することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、容器本体に収容した検体を蓋体によって密閉しつつ加熱することにより、検体を不活化することが可能となる。その結果、不活化液を用いることなく検体を不活化することが可能となる。
【0010】
また、前記加熱部は、前記検体を、発熱反応による反応熱で加熱することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、発熱反応による反応熱を用いて検体を加熱することができる。
【0012】
また、前記加熱部は、第一反応物を収容する第一反応容器と、第二反応物を収容する第二反応容器とを備え、前記第一反応容器の第一内部空間と前記第二反応容器の第二内部空間とは、互いに連通可能とされており、前記反応熱は、前記第一内部空間と前記第二内部空間とが連通されることによって、前記第一反応物と前記第二反応物とが発熱反応して生じることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、検体容器が備える第一反応容器と第二反応容器とを連通させることによって、検体を加熱して不活化することが可能となるので、利便性が向上する。
【0014】
また、前記第二反応容器は、前記蓋体に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、蓋体と別に第二反応容器を備える必要が無いので、検体容器の校正を簡素化することが容易である。
【0016】
また、前記第一反応容器は、前記容器本体の内径よりも外径が小さい有底筒状形状を有し、前記容器本体内に収容可能とされていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、容器本体内に第一反応容器を収容することにより、容器本体内に収容された検体に第一反応容器を接触させることができるので、第一反応容器内で生じた反応熱により検体を加熱することが容易となる。
【0018】
また、前記第一反応容器の、底とは反対側の端部である先端部の近傍には、前記第二反応物が通過可能な取入口が形成され、前記第二反応容器に前記第一反応容器の前記先端部が差し込まれることによって、前記第一内部空間と前記第二内部空間とが前記取入口を介して連通することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第二反応容器に第一反応容器の先端部を差し込むことによって、発熱反応を生じさせ、その反応熱で検体を加熱することにより、検体を不活化することが可能となる。
【0020】
また、前記先端部には、尖形形状を有する尖形突起が設けられ、前記尖形突起が前記第二反応容器の壁に押し当てられることによって、前記尖形突起が前記壁を穿孔して前記第二反応容器に前記先端部が差し込まれることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第一反応容器先端の尖形突起を第二反応容器の壁に押し当てることによって、尖形突起が壁を穿孔し、第一反応容器と第二反応容器とが連通して発熱反応を生じさせることができるので、ユーザの利便性が向上する。
【0022】
また、前記第二反応容器は、前記蓋体の内側に設けられていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、蓋体の内側に第一反応容器の先端部を差し込むことによって、発熱反応を生じさせることができるので、ユーザの利便性が向上する。
【0024】
また、前記蓋体が前記開口部を閉塞する際に前記容器本体の底と対向する前記第二反応容器の壁の少なくとも一部は、前記蓋体よりも穿孔容易に構成されていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、蓋体で容器本体の開口部を閉塞する際に、第二反応容器に第一反応容器の先端部を差し込むことが容易となる。
【0026】
また、前記第二反応容器は、前記蓋体よりも穿孔容易なフィルムにより袋状に構成されていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、第二反応容器から第二反応物が漏れるおそれが低減される。
【0028】
また、前記第一反応容器の底の外壁面から前記取入口の前記先端部に最も近い位置までの距離は、前記開口部を前記蓋体で閉塞した状態における前記容器本体の底の内壁面から前記第二反応容器の壁までの距離よりも長いことが好ましい。
【0029】
この構成によれば、蓋体で容器本体の開口部を閉塞すると、第二反応容器に第一反応容器の先端部が差し込まれ、取入口の少なくとも一部が第二反応容器内に入る。従って、第二反応容器内の第二反応物を、取入口を介して第一反応容器へ取り込むことが容易となる。
【0030】
また、前記第一反応容器は、外周から鍔状に突出する鍔部を備え、前記鍔部の外径は、前記容器本体の内径よりも僅かに小さいことが好ましい。
【0031】
この構成によれば、容器本体内で、第一反応容器を位置決めすることが容易となる。
【0032】
また、前記第二反応物は、液体又は気体であり、前記第一反応容器の内壁には、前記先端部側から前記底へ向かって延びる溝が形成されていることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、第二反応物が、溝を通って第一反応容器の底方向へ供給されるので、第二反応物を、第一反応容器内にむらなく供給し、第一反応物に効率よく発熱反応を生じさせることが容易となる。
【0034】
また、前記溝は、前記先端部から遠ざかるに従って幅狭になる幅狭部を有することが好ましい。
【0035】
この構成によれば、第二反応物の入り口側で溝が幅広になるので、溝を流れる第二反応物の量を増大させることが容易となる。そして、第二反応物が溝を流れるにつれて第一反応物に徐々に供給され、溝を流れる第二反応物が徐々に減少するに従って溝の幅が狭くなるので、第二反応物を、第一反応容器内の第一反応物全体にバランスよく供給することが容易となる。
【0036】
また、前記溝は、前記先端部から遠ざかるに従って幅広になる幅広部を有することが好ましい。
【0037】
この構成によれば、溝を流れる第二反応物が、入り口から遠ざかって第二反応物の量が減少するに従って溝が幅広になって第二反応物が広い範囲に拡げられて第一反応物へ供給されるので、減少した第二反応物をむらなく第一反応物へ供給することが容易となる。
【0038】
また、前記第一反応物は生石灰であり、前記第二反応物は水であることが好ましい。
【0039】
生石灰は第一反応物として好適であり、水は第二反応物として好適である。
【発明の効果】
【0040】
このような構成の検体容器は、不活化液を用いることなく検体を不活化することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検体容器の構成の一例を示す分解図である。
【
図2】
図1に示す第一反応容器を先端部側から見た斜視図である。
【
図3】
図1における第一反応容器のIII-III断面、及びIII-III断面から下の部分の第一反応容器の内面を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す第一反応容器の変形例を示す断面図である。
【
図5】
図3に示す第一反応容器の変形例を示す断面図である。
【
図6】
図1に示す検体容器の使い方を説明するための説明図である。
【
図7】
図1に示す蓋体の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図1に示す蓋体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る検体容器の構成の一例を示す分解図である。
【0043】
図1に示す検体容器1は、容器本体2と、蓋体3と、第一反応容器C1とを備えている。容器本体2は、有底の円筒形状を有し、検体TBを収容可能とされている。容器本体2の開口部22近傍の外周には、ねじ山21が形成されている。
【0044】
検体TBは、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻汁、血液、髄液、尿、生体組織の一部、その他検査の対象となる種々のものであってよい。検体TBは、例えばコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、手足口病ウイルス、肝炎ウイルス等の病原体を含む感染性検体であってよい。検体TBは、液体であることが好ましいが、必ずしも液体でなくてもよい。
【0045】
図2は、
図1に示す第一反応容器C1を先端部12側から見た斜視図である。第一反応容器C1は、容器本体2の内径よりも外径が小さい有底の円筒形状を有し、容器本体2内に収容可能とされている。なお、容器本体2及び第一反応容器C1は、円筒状に限られず、例えば断面矩形の筒状形状を有していてもよい。
【0046】
第一反応容器C1の、底11とは反対側の端部である先端部12の近傍の周壁には、水7(第二反応物)が通過可能な1又は複数の取入口6が形成されている。先端部12は、蓋状の閉塞部13によって閉塞されている。取入口6は、閉塞部13よりも底11側の位置に設けられている。
【0047】
第一反応容器C1の、取入口6よりも底11側には、外周から一定の突出高さで鍔状に突出する鍔部5が設けられている。鍔部5の外径は、容器本体2の内径よりも僅かに小さい。
【0048】
第一反応容器C1の第一内部空間14には、粒状の生石灰15(第一反応物)が収容されている。これにより、取入口6から第一内部空間14に取り込まれた水7が、生石灰15と発熱反応して反応熱を生じるようになっている。取入口6は、生石灰15の粒が通らない、又は通りにくい大きさ又は形状にされている。これにより、生石灰15が取入口6からこぼれるおそれが低減されている。
【0049】
なお、取入口6は、第一反応容器C1の周壁に形成される例に限らない。閉塞部13に取入口6が形成されていてもよい。先端部12には、尖形形状を有する尖形突起4が二つ設けられている。なお、尖形突起4は、三つ以上あってもよく、一つでもよい。例えば、先端部12が斜めに切り落とされたような形状、先端部12の端面が第一反応容器C1の軸線に対して傾斜した傾斜面となった形状等、先端部12の一部が尖形突起4を構成していてもよい。
【0050】
図3は、
図1における第一反応容器C1のIII-III断面、及びIII-III断面から下の部分の第一反応容器C1の内面を示す断面図である。
図4、
図5は、
図3に示す第一反応容器C1の変形例を示す断面図である。
【0051】
第一反応容器C1の内壁には、先端部12側から底11へ向かって延びる複数の凸条16が形成されている。凸条16と凸条16との間が、先端部12側から底11へ向かって延びる複数の溝17とされている。溝17は、先端部12から遠ざかるに従って幅狭になる幅狭部171と、幅が一定の一定幅部172とが連結されて構成されている。
【0052】
なお、溝17は、一定幅部172を備えていなくもよい。また、
図4に示すように、溝17は、幅狭部171を備えず、溝17全体が幅一定であってもよい。また、
図5に示すように、溝17は、先端部12から遠ざかるに従って幅広になる幅広部173と、幅が一定の一定幅部172とが連結されて構成されていてもよい。
【0053】
図1を参照して、蓋体3は、第二反応容器C2と一体に形成されている。蓋体3は、容器本体2のねじ山21と螺合するねじ溝31を備え、容器本体2の開口部22を閉塞可能とされている。なお、容器本体2がねじ溝、蓋体3がねじ山を備えていてもよい。また、容器本体2と蓋体3とは、ねじ機構によって結合される例に限られない。
【0054】
第二反応容器C2は、蓋体3の内側に設けられている。蓋体3で容器本体2の開口部22を閉塞した際に、容器本体2の底23と対向する第二反応容器C2の壁32は、円環部321と閉塞シート322とを備える。円環部321は、蓋体3の側壁から内側へ円環状に突出する。閉塞シート322は、円環部321の中央部の開口部323を塞ぐように円環部321に貼付されている。閉塞シート322の開口部323を塞ぐ部分は、第二反応容器C2の壁32の一部に相当する。
【0055】
閉塞シート322は、例えばアルミシート、円環部321よりも肉薄の樹脂等、蓋体3よりも破断し易く、穿孔容易とされている。第二反応容器C2の内壁面と、壁32とによって第二反応容器C2が構成され、第二反応容器C2の内壁面と、壁32とによって囲まれた空間が、第二内部空間33とされている。第二内部空間33には、水7(第二反応物)が収容されている。
【0056】
図6は、
図1に示す検体容器1の使い方を説明するための説明図である。まず、容器本体2に、唾液等の検体TBを入れる(ステップS1)。
【0057】
次に、容器本体2に、生石灰15が収容された第一反応容器C1を挿入する(ステップS2)。このとき、検体TBは、容器本体2の内壁と第一反応容器C1の外壁との隙間に拡がるので、第一反応容器C1の外周面と検体TBとの接触面積が増大する。また、容器本体2の底23に第一反応容器C1の底11が当接した状態で、鍔部5が容器本体2の中に位置するように、容器本体2の深さ、第一反応容器C1の長さ、及び鍔部5の取付位置が設定されている。これにより、第一反応容器C1の外周から一定の突出高さで鍔部5が鍔状に突出し、鍔部5の外径は容器本体2の内径よりも僅かに小さくされている。その結果、鍔部5によって、先端部12が容器本体2の径方向略中央に位置決めされる。
【0058】
次に、容器本体2の開口部22に、蓋体3を覆い被せる(ステップS3)。この状態で、蓋体3を回転させることにより、容器本体2のねじ山21と蓋体3のねじ溝31とが螺合し、蓋体3が容器本体2の底23方向へ進行する。そうすると、尖形突起4が閉塞シート322に押し当てられ、さらに蓋体3が進行することにより尖形突起4が閉塞シート322を穿孔して第二反応容器C2に先端部12が差し込まれる(ステップS4)。
【0059】
その結果、取入口6が第二内部空間33内に入り、第一内部空間14と第二内部空間33とが取入口6を介して連通し、第二内部空間33内の水7が第一内部空間14に流入する。第一内部空間14に流入した水7は、第一内部空間14内の生石灰15と発熱反応を生じ、反応熱を発生させる。第一反応容器C1の外周面と検体TBとは、上述のように大きな接触面積で接触しているので、第一反応容器C1内で発生した反応熱によって、検体TBが加熱され、検体TBに含まれるウイルスや細菌等が不活化される。
【0060】
図6に示す例では、第一反応容器C1の底11の外壁面から、取入口6の、底11に最も近い位置までの距離L2は、容器本体2の底23の内壁面から第二反応容器C2の壁32の一部である閉塞シート322までの距離L1よりも長い。その結果、取入口6全体が第二内部空間33内に入り込むので、第二反応容器C2内の水7を、取入口6から効率よく第一反応容器C1内に取り込むことができる。
【0061】
なお、距離L2が距離L1よりも長い例に限らない。蓋体3を閉めきって容器本体2の開口部22を蓋体3で閉塞した状態で、少なくとも、第一反応容器C1の底11の外壁面から、取入口6の、先端部12に最も近い位置までの距離L3が、距離L1よりも長ければ、第二反応容器C2内の水7を、取入口6から第一反応容器C1内に取り込むことができる。
【0062】
鍔部5によって、先端部12が容器本体2の径方向略中央に位置決めされることによって、閉塞シート322の開口部323を塞いでいる部分、すなわち穿孔容易とされている部分に、尖形突起4を押し当てることが容易にされている。これにより、閉塞シート322が穿孔されやすくなっている。
【0063】
取入口6から第一反応容器C1に取り込まれた水7は、直接生石灰15に染み込んで浸透する他、第一反応容器C1の内壁に設けられた溝17を通って第一反応容器C1内に拡がるので、水7を、第一反応容器C1内の生石灰15全体にむらなく供給し、効率よく発熱反応を生じさせることが容易となる。
【0064】
特に、
図3に示すように、溝17に、先端部12から遠ざかるに従って幅狭になる幅狭部171が設けられた構成では、水7の入り口側で溝17が幅広になるので、溝17を流れる水7の量を増大させることができる。そして、水7が溝17を流れるにつれて生石灰15に徐々に供給され、溝17を流れる水7が徐々に減少するに従って溝17の幅が狭くなるので、水7を、第一反応容器C1内の生石灰15全体にバランスよく供給することが容易となる。
【0065】
また、
図5に示すように、溝17に、先端部12から遠ざかるに従って幅広になる幅広部173が設けられた構成では、水7の入り口から遠ざかって水7の量が減少するに従って溝17が幅広になって水7が広い範囲に拡げられて生石灰15へ供給されるので、減少した水7をむらなく生石灰15へ供給することが容易となる。
【0066】
検体TBが、例えば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス(SARS-CoV-2)検査用の検体である場合、反応熱による発熱量が、検体TBを、3分~15分程度の時間、65℃~80℃に加熱できるように、生石灰15(第一反応物)と水7(第二反応物)の量が設定されている。
【0067】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス(SARS-CoV-2)は、3分~15分程度の時間、65℃~80℃で加熱することによって、不活化される(例えば「Chin A W H, Chu J T S, Perera M R A, et al. Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditions. Lancet Microbe 2020; published online April 2. https://doi.org/10.1016/S2666-5247(20)30003-3.」参照)。
【0068】
このように、検体容器1によれば、不活化液を用いることなく検体を不活化することが可能となる。従って、不活化液で検体を不活化する場合のように、検体を精製する必要がないので、精製コストと検査時間を低減することが容易となる。また、不活化液によって検体が薄まることがないので、検体検査によるウイルスや細菌等の検出感度が低下するおそれを低減することが容易となる。
【0069】
新型コロナウイルス感染症のウイルス以外のものを検体TBとする場合には、その検体TBを不活化するのに適した加熱温度、及び加熱時間が得られるように、適宜、生石灰15(第一反応物)と水7(第二反応物)の量を調節すればよい。
【0070】
図7、
図8は、
図1に示す蓋体3の変形例を示す断面図である。
図7に示す蓋体3は、
図1に示す蓋体3とは、閉塞シート322を備えず、第二反応容器C2が樹脂等のフィルムにより袋状に構成されている点で異なる。第二反応容器C2を構成するフィルムは、蓋体3の壁部よりも穿孔容易とされている。この場合、フィルムが第二反応容器C2の壁を構成する。
【0071】
図7に示す蓋体3によれば、水7(第二反応物)が、袋状の第二反応容器C2に収容されるので、水7の漏れが生じるおそれが低減される。
図7に示す蓋体3は、円環部321を備えていなくてもよい。
【0072】
図8に示す蓋体3は、
図7に示す蓋体3に加えて、さらに閉塞シート322を備える。
図8に示す蓋体3によれば、袋状の第二反応容器C2が蓋体3から脱落するおそれが低減される。
【0073】
なお、蓋体3で容器本体2を閉塞する(ねじ込む)ことによって、第二反応容器C2に第一反応容器C1の先端部12が差し込まれる例に限らない。例えば、先に容器本体2に先端部12を差し込んでから、第一反応容器C1を容器本体2に挿入する構成であってもよい。
【0074】
また、第二反応容器C2は、蓋体3の外側に設けられていてもよい。例えば、蓋体3を裏返して第二反応容器C2に第一反応容器C1の先端部12を差し込み、第一反応容器C1内に水7を供給した後に蓋体3を裏返して容器本体2を閉塞してもよい。また、第二反応容器C2は、蓋体3とは別体に設けられていてもよい。
【0075】
また、第一内部空間14と第二内部空間33とが連通することによって、第一内部空間14に水7(第二反応物)が供給される例に限らない。例えば、第二反応容器C2から水7(第二反応物)を第一反応容器C1へ注ぎ込んだ後に、第一反応容器C1を容器本体2に挿入する構成であってもよい。また、第一反応容器C1は、尖形突起4を備えていなくてもよい。
【0076】
また、検体容器1は、第二反応容器C2を備えていなくてもよい。例えばユーザが、第一反応容器C1に水を注ぎ込んだ後に、第一反応容器C1を容器本体2に挿入する構成であってもよい。
【0077】
また、第一反応容器C1には、溝17(凸条16)が設けられていなくてもよい。また、第一反応容器C1は、鍔部5を備えていなくてもよい。
【0078】
また、容器本体2内に第一反応容器C1が収容される例に限らない。例えば、第一反応容器C1内に、第一反応容器C1よりも小径の容器本体2が収容され、容器本体2の外から検体TBが加熱される構成であってもよい。
【0079】
また、第一反応物と第二反応物の組み合わせは、生石灰と水に限らない。第一反応物と第二反応物とは、発熱反応を生じる物質の組み合わせであればよい。例えば、第一反応物を鉄粉、第二反応物を酸素とし、酸化による発熱反応を生じる物質の組み合わせとしてもよい。その他、第一反応物と第二反応物としては、発熱反応を生じる種々の物質を用いることができる。
【0080】
また、第一反応物と第二反応物とは、液体、固体、気体のいずれであってもよい。しかしながら、第二反応物は、液体、又は気体であった場合に、第一反応容器C1へ供給されやすくなる点で固体よりも好ましい。
【0081】
また、加熱部は、発熱反応による反応熱で検体を加熱することができればよく、第一反応容器C1と第二反応容器C2とを備える例に限らない。例えば、容器本体を蓋体で閉塞した状態で、第一反応容器の内部空間へ外気を取り込み可能な通気口を設け、第一反応容器に鉄粉を収容しておく。このような検体容器を、外気から遮断する袋に入れて保管しておく。検体容器を使用する際に、袋を開けることで第一反応容器内に外気が流入し、外気の酸素と鉄粉とが酸化熱を生じて検体TBを加熱するものであってもよい。
【0082】
また、加熱部は、検体を加熱することができればよく、反応熱によって加熱する例に限らない。加熱部は、例えばヒータ等を用いて検体を加熱してもよい。また、加熱部は、不活化を目的に検体を加熱することができればよく、必ずしも加熱により確実に不活化するものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 検体容器
2 容器本体
3 蓋体
4 尖形突起
5 鍔部
6 取入口
7 水(第二反応物)
11,23 底
12 先端部
13 閉塞部
14 第一内部空間
15 生石灰(第一反応物)
16 凸条
17 溝
21 ねじ山
22 開口部
31 ねじ溝
32 壁
33 第二内部空間
171 幅狭部
172 一定幅部
173 幅広部
321 円環部
322 閉塞シート
323 開口部
C1 第一反応容器
C2 第二反応容器
L1,L2,L3 距離
TB 検体