(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164966
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】エレベータ制御システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20221024BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070094
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】597077643
【氏名又は名称】株式会社西電通
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正幸
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CA01
3F303CA10
3F303CB30
3F502HB02
3F502JA04
3F502JA07
3F502JA08
3F502JA17
3F502MA02
3F502MA07
3F502MA11
(57)【要約】
【課題】ユーザによる接触機会を減少させることが容易なエレベータ制御システムを提供する。
【解決手段】エレベータ制御システム1は、ユーザが携帯可能な無線端末装置4から、近距離無線通信によってユーザを識別する識別情報を受信する近距離通信装置2と、複数のユーザに対応する複数の識別情報を予め記憶する記憶部34と、近距離通信装置2によって受信された識別情報と記憶部34に記憶されている識別情報との照合結果に基づき認証を行う認証処理部31と、認証処理部31による認証が成功した場合、エレベータの呼び登録及び行先登録のうち少なくとも一方を行うエレベータ制御部32とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが携帯可能な無線端末装置から、近距離無線通信によって前記ユーザを識別する識別情報を受信する近距離通信部と、
複数のユーザに対応する複数の識別情報を予め記憶する記憶部と、
前記近距離通信部によって受信された識別情報と前記記憶部に記憶されている識別情報との照合結果に基づき認証を行う認証処理部と、
前記認証処理部による認証が成功した場合、エレベータの呼び登録及び行先登録のうち少なくとも一方を行うエレベータ制御部とを備えるエレベータ制御システム。
【請求項2】
前記エレベータは、集合住宅に設置されており、
前記集合住宅の入り口には扉が設置され、
前記近距離通信部は、前記扉の外側近傍の領域が、前記近距離無線通信による通信可能な範囲内となる位置に設置される請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項3】
前記扉は自動扉であり、
前記認証が成功した場合、前記扉を開かせる扉制御部をさらに備える請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項4】
前記扉は施錠可能な扉であり、
前記認証が成功した場合、前記扉を解錠させる扉制御部をさらに備える請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項5】
前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記扉が設置されている階への呼び登録を行う請求項2~4のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項6】
前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記識別情報を受信した近距離通信部が設置されている階への呼び登録を行う請求項1~4のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項7】
前記記憶部は、前記各識別情報に対応付けて階を予め記憶し、
前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記記憶部によって前記受信された識別情報と対応付けられた階を、行先階として前記行先登録を行う請求項1~6のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項8】
前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記識別情報の送信元となった無線端末装置へ、行先階を問い合わせる行先要求信号を送信し、その無線端末装置から受信された、行先階を示す行先階情報に基づき、前記行先登録する請求項1~6のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項9】
前記無線端末装置は、
前記ユーザの操作を受け付ける受付部と、
前記行先要求信号を受信した場合、前記ユーザによる前記行先階の入力を促し、前記受付部によって受け付けられた行先階を示す行先階情報を、前記エレベータ制御部へ送信する行先階送信処理部とを備える請求項8に記載のエレベータ制御システム。
【請求項10】
前記無線端末装置は、前記近距離無線通信の無線信号によって、前記識別情報を繰り返し送信する請求項1~9のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項11】
前記近距離通信部は、前記近距離無線通信の無線信号によって、前記識別情報の要求を繰り返し送信し、
前記無線端末装置は、前記識別情報の要求を受信したとき、前記識別情報を送信する請求項1~9のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項12】
前記近距離無線通信の通信方式は、BLE Beaconを含む請求項1~11のいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【請求項13】
入り口に扉が設けられ、エレベータを備えた集合住宅におけるエレベータ制御システムであって、
前記集合住宅の各住戸に対応する居住者用端末から、前記扉の解錠を要求する解錠要求を受け付ける解錠要求受付部と、
前記解錠要求受付部によって前記解錠要求が受け付けられたとき、前記扉を解錠する扉制御部と、
前記解錠要求受付部によって前記解錠要求が受け付けられたとき、前記扉が設置されている階へ前記エレベータの呼び登録を行うエレベータ制御部とを備えるエレベータ制御システム。
【請求項14】
前記各居住者用端末と対応付けて、前記各居住者用端末に対応する住戸が有る階を予め記憶する階記憶部をさらに備え、
前記エレベータ制御部は、前記解錠要求受付部によって前記解錠要求が受け付けられたとき、前記解錠要求を要求した前記居住者用端末と対応付けられた階を、前記エレベータの行先階として行先登録を行う請求項13記載のエレベータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの動作を制御するエレベータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エレベータの呼び登録と、行先登録とをボタン操作で行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の技術では、エレベータを使用する際に、不特定多数の人が、エレベータの操作ボタンに触れることになる。不特定多数の人が同じ操作ボタンに触れると、感染症の接触感染が生じやすくなるという、不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、ユーザによる接触機会を減少させることが容易なエレベータ制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエレベータ制御システムは、ユーザが携帯可能な無線端末装置から、近距離無線通信によって前記ユーザを識別する識別情報を受信する近距離通信部と、複数のユーザに対応する複数の識別情報を予め記憶する記憶部と、前記近距離通信部によって受信された識別情報と前記記憶部に記憶されている識別情報との照合結果に基づき認証を行う認証処理部と、前記認証処理部による認証が成功した場合、エレベータの呼び登録及び行先登録のうち少なくとも一方を行うエレベータ制御部とを備える。
【0007】
この構成によれば、近距離通信部の通信可能範囲に無線端末装置を携帯したユーザが入ると、ユーザの認証が行われ、認証が成功した場合、エレベータの呼び登録及び行先登録のうち少なくとも一方が行われる。従って、ユーザがエレベータに手を触れなくてもエレベータの呼び登録及び行先登録のうち少なくとも一方を行うことができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【0008】
また、前記エレベータは、集合住宅に設置されており、前記集合住宅の入り口には扉が設置され、前記近距離通信部は、前記扉の外側近傍の領域が、前記近距離無線通信による通信可能な範囲内となる位置に設置されることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ユーザが集合住宅に入る際に、扉の外側で近距離通信部の通信可能範囲に無線端末装置を携帯したユーザが入り、ユーザの認証が行われる。その結果、ユーザが扉を入ってエレベータに到達する前に、エレベータの呼び登録及び行先登録のうち少なくとも一方を行うことができるので、ユーザの待ち時間を減少させることが容易である。
【0010】
また、前記扉は自動扉であり、前記認証が成功した場合、前記扉を開かせる扉制御部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、無線端末装置を所持するユーザは、外から自動扉に近づき、近距離通信部の通信可能範囲に入るだけで認証されて自動扉が開き、集合住宅内に入ることができる。これにより、集合住宅のセキュリティを確保しながら、ユーザが手を触れることなく自動扉を開いて中に入ることができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【0012】
また、前記扉は施錠可能な扉であり、前記認証が成功した場合、前記扉を解錠させる扉制御部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、無線端末装置を所持するユーザは、外から扉に近づき、近距離通信部の通信可能範囲に入るだけで認証されて扉が解錠され、集合住宅内に入ることができる。これにより、集合住宅のセキュリティを確保しながら、ユーザが解錠のために扉の鍵を操作する必要がないので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【0014】
また、前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記扉が設置されている階への呼び登録を行うことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、無線端末装置を所持するユーザが、近距離通信部の通信可能範囲に入って認証成功すると、扉が設置されている階、すなわちユーザがいる階への呼び登録が行われる。
【0016】
また、前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記識別情報を受信した近距離通信部が設置されている階への呼び登録を行うことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、無線端末装置を携帯したユーザが、近距離通信部の通信可能範囲に入って認証成功すると、識別情報を受信した近距離通信部が設置されている階、すなわちユーザがいる階への呼び登録が行われる。
【0018】
また、前記記憶部は、前記各識別情報に対応付けて階を予め記憶し、前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記記憶部によって前記受信された識別情報と対応付けられた階を、行先階として前記行先登録を行うことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、認証に成功すると、記憶部によって予め各識別情報に対応付けて記憶された階、例えば居住階へ、手を触れることなく行先登録を行うことができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易である。
【0020】
また、前記エレベータ制御部は、前記認証が成功した場合、前記識別情報の送信元となった無線端末装置へ、行先階を問い合わせる行先要求信号を送信し、その無線端末装置から受信された、行先階を示す行先階情報に基づき、前記行先登録することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ユーザは、自分の無線端末装置から行先階情報を送信させることによって、エレベータに触れることなくエレベータに行先登録することができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易である。
【0022】
また、前記無線端末装置は、前記ユーザの操作を受け付ける受付部と、前記行先要求信号を受信した場合、前記ユーザによる前記行先階の入力を促し、前記受付部によって受け付けられた行先階を示す行先階情報を、前記エレベータ制御部へ送信する行先階送信処理部とを備えることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ユーザは、受付部を操作するだけで、エレベータに触れることなく所望の行先階を、エレベータに行先登録することができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易である。
【0024】
また、前記無線端末装置は、前記近距離無線通信の無線信号によって、前記識別情報を繰り返し送信することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、無線端末装置を携帯したユーザが、近距離通信部の通信可能範囲に入っただけで、近距離通信部が識別情報を受信することが可能となる。
【0026】
また、前記近距離通信部は、前記近距離無線通信の無線信号によって、前記識別情報の要求を繰り返し送信し、前記無線端末装置は、前記識別情報の要求を受信したとき、前記識別情報を送信することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、無線端末装置を携帯したユーザが、近距離通信部の通信可能範囲に入っただけで、近距離通信部が識別情報を受信することが可能となる。さらに、無線端末装置は識別情報を常時送信する必要がなく、識別情報の要求を受信待機していればよいので、無線端末装置の消費電力を低減することが容易となる。
【0028】
また、前記近距離無線通信の通信方式は、BLE Beaconを含むことが好ましい。
【0029】
BLE Beaconは、上述の近距離無線通信の通信方式として好適である。
【0030】
また、本発明に係るエレベータ制御システムは、入り口に扉が設けられ、エレベータを備えた集合住宅におけるエレベータ制御システムであって、前記集合住宅の各住戸に対応する居住者用端末から、前記扉の解錠を要求する解錠要求を受け付ける解錠要求受付部と、前記解錠要求受付部によって前記解錠要求が受け付けられたとき、前記扉を解錠する扉制御部と、前記解錠要求受付部によって前記解錠要求が受け付けられたとき、前記扉が設置されている階へ前記エレベータの呼び登録を行うエレベータ制御部とを備える。
【0031】
この構成によれば、居住者が居住者用端末を操作して入り口の扉を解錠したとき、扉が設置されている階へエレベータの呼び登録が行われる。その結果、訪問者がエレベータの呼び操作をする必要がないので、訪問者による接触機会を減少させることが容易となる。
【0032】
また、前記各居住者用端末と対応付けて、前記各居住者用端末に対応する住戸が有る階を予め記憶する階記憶部をさらに備え、前記エレベータ制御部は、前記解錠要求受付部によって前記解錠要求が受け付けられたとき、前記解錠要求を要求した前記居住者用端末と対応付けられた階を、前記エレベータの行先階として行先登録を行うことが好ましい。
【0033】
この構成によれば、居住者が居住者用端末を操作して入り口の扉を解錠すると、訪問者は、エレベータEVに手を触れることなく、呼び出されたエレベータEVに乗り込むだけで、訪問先の住戸がある階へ行くことができる。
【発明の効果】
【0034】
このような構成のエレベータ制御システムは、ユーザによる接触機会を減少させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】集合住宅のエントランスとエレベータホールの一例を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るエレベータ制御システムの電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】記憶部に記憶される識別情報テーブルの一例を示す説明図である。
【
図4】
図2に示すエレベータ制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】タッチパネルディスプレイに表示される行先階入力画面の一例を示す説明図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係るエレベータ制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図6に示すエレベータ制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
【0037】
図1は、集合住宅のエントランスとエレベータホールの一例を概略的に示す斜視図である。エントランス101には、自動扉ADが取り付けられている。自動扉ADから中に入った先にはエレベータホール102がある。エレベータホール102には、エレベータEVが設置されている。エレベータEVの扉の横には、エレベータEVの呼び登録ボタンBが取り付けられている。
【0038】
自動扉ADの上方には、近距離通信装置2(近距離通信部)が取り付けられている。近距離通信装置2は、近距離無線通信を行う無線通信装置である。近距離通信装置2は、例えば通信距離が10m以下、より好ましくは通信距離が3m~5m程度とされている。
【0039】
近距離無線通信の通信方式としては、上述のような通信距離が近距離の種々の通信方式を用いることができる。近距離無線通信の通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等を用いることができ、特にBLE Beaconを好適に用いることができる。
【0040】
近距離通信装置2は、自動扉ADの外側近傍の領域が、近距離無線通信による通信可能範囲A内となる位置に設置されている。なお、自動扉ADの外側近傍の領域が通信可能範囲A内となるようにされていればよく、自動扉ADの上方に近距離通信装置2が取り付けられる例に限らない。また、近距離通信装置2のアンテナが、近距離通信装置2の本体と分離されていてもよく、アンテナのみが自動扉ADの近傍に設けられていてもよい。
【0041】
近距離通信装置2は、ユーザの識別情報を要求する識別情報要求信号を繰り返し送信する。そして、通信可能範囲Aに入ったユーザの無線端末装置4が、識別情報要求信号に応答して識別情報を送信すると、その識別情報が近距離通信装置2によって受信される。
【0042】
なお、近距離通信装置2は識別情報を待ち受け、無線端末装置4が識別情報を繰り返し送信するようにしてもよい。そして、通信可能範囲Aに入ったユーザの無線端末装置4から送信された識別情報が、近距離通信装置2によって受信されるようにしてもよい。
【0043】
近距離無線通信としてBLE Beaconを用いた場合、近距離通信装置2が識別情報要求信号をBLE Beaconのビーコン信号として送信することができる。また、無線端末装置4が、識別情報をBLE Beaconのビーコン信号として送信してもよい。
【0044】
図2は、本発明の第一実施形態に係るエレベータ制御システムの電気的構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すエレベータ制御システム1は、上述の近距離通信装置2と、制御部3とを備える。制御部3には、自動扉AD及びエレベータEVが接続されている。
【0045】
制御部3は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の記憶装置、及びその周辺回路等を用いて構成されている。そして、制御部3は、例えば記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって、認証処理部31、エレベータ制御部32、及び扉制御部33として機能する。
【0046】
上述の記憶装置は、記憶部34としても機能する。記憶部34には、例えば集合住宅の居住者等の複数のユーザに対応する複数の識別情報が、識別情報テーブルTとして予め記憶されている。
図3は、記憶部34に記憶される識別情報テーブルTの一例を示す説明図である。
【0047】
識別情報テーブルTは、各居住者の識別情報AAAAA、BBBBB、CCCCC、・・・、ZZZZZに対して、各居住者の居住階2、5、3、3、4、・・・、5が対応付けられている。
【0048】
認証処理部31は、近距離通信装置2によって受信された識別情報と記憶部34に記憶されている識別情報テーブルTの識別情報との照合結果に基づき認証を行う。
【0049】
エレベータ制御部32は、認証処理部31による認証が成功した場合、エレベータEVの呼び登録及び行先登録を行う。具体的には、エレベータ制御部は、認証処理部31による認証が成功した場合、近距離通信装置2から識別情報の送信元となった無線端末装置4へ、行先階を問い合わせる行先要求信号を送信させ、その無線端末装置4から近距離通信装置2によって受信された行先階を、エレベータEVの行先として行先登録する。
【0050】
扉制御部33は、認証処理部31による認証が成功した場合、自動扉ADを開かせる。
【0051】
無線端末装置4としては、例えばユーザのスマートフォンを用いることができる。無線端末装置4は、例えば、通信部41、移動体通信部42、タッチパネルディスプレイ43(受付部)、及び制御部44を備える。
【0052】
通信部41は、近距離無線通信によって近距離通信装置2と通信する無線通信回路である。移動体通信部42は、移動体通信事業者が運用する移動体通信に接続する無線通信回路である。
【0053】
タッチパネルディスプレイ43は、ユーザの操作を受け付ける受付部の一例である。なお、受付部は、タッチパネルディスプレイ43に限られず、キーボードや押しボタンスイッチ等であってもよい。
【0054】
制御部44は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU、データを一時的に記憶するRAM、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置、及びその周辺回路等を用いて構成されている。そして、制御部44は、例えば記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって、識別情報送信処理部441、及び行先階送信処理部442として機能する。また、上述の記憶装置には、ユーザを識別する識別情報が予め記憶されている。
【0055】
識別情報送信処理部441は、通信部41によって識別情報要求信号が受信されたとき、上述の記憶装置に記憶された識別情報を、通信部41によって近距離通信装置2へ送信させる。
【0056】
行先階送信処理部442は、近距離通信装置2から行先要求信号を受信した場合、ユーザによる行先階の入力を促し、タッチパネルディスプレイ43によって受け付けられた行先階を、近距離通信装置2へ送信する。
【0057】
図4は、
図2に示すエレベータ制御システム1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、近距離通信装置2は、識別情報要求信号を繰り返し送信する(ステップS1)。
【0058】
そして、無線端末装置4を所持したユーザが通信可能範囲Aに入ると、識別情報要求信号が無線端末装置4の通信部41によって受信される。識別情報要求信号が通信部41によって受信されると、識別情報送信処理部441は、ユーザの識別情報を通信部41によって近距離通信装置2へ送信させる。その結果、近距離通信装置2によって識別情報が受信され(ステップS2でYES)、ステップS3へ処理を移行する。
【0059】
次に、認証処理部31は、受信された識別情報を、記憶部34に記憶された識別情報テーブルTと照合して認証する(ステップS3)。そして、認証処理部31は、受信された識別情報が識別情報テーブルTに記憶された識別情報と一致すれば認証成功とし(ステップS4でYES)、一致しなければ認証失敗とする(ステップS4でNO)。認証失敗した場合(ステップS4でNO)、処理を終了する。
【0060】
一方、認証成功した場合(ステップS4でYES)、扉制御部33は、自動扉ADを開かせる(ステップS5)。これにより、無線端末装置4を所持するユーザは、外から歩いて自動扉ADに近づき、通信可能範囲Aに入るだけで認証されて自動扉ADが開き、集合住宅内に入ることができる。これにより、集合住宅のセキュリティを確保しながら、ユーザが手を触れることなく自動扉ADを開いて中に入ることができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【0061】
なお、エントランス101には、自動扉ADの代わりに、自動扉ではない、電気錠によって施錠可能な扉が取り付けられていてもよい。そして、認証成功した場合(ステップS4でYES)、扉制御部33は、ステップS5でエントランス101の扉の電気錠を解錠してもよい。自動扉ではない扉が設けられている場合であっても、後述するようにエレベータEVに手を触れることなくエレベータEVに乗ることができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【0062】
次に、エレベータ制御部32は、エレベータEVを、自動扉ADが設置されている階へ呼び登録する(ステップS6)。例えば、一階に自動扉ADが設置されていれば、エレベータEVは一階に呼び登録されて一階へ向かい、二階に自動扉ADが設置されていれば、エレベータEVは二階に呼び登録されて二階へ向かう。これにより、ユーザが通信可能範囲Aに入って認証成功したときにエレベータEVがユーザのいる階に呼び登録されるので、ユーザがエレベータホール102を歩いてエレベータEVの扉へ向かっている間にユーザがいる階にエレベータEVが呼び出される。これにより、ユーザの待ち時間を減少させることが容易となる。また、ユーザがエレベータEVの呼び登録操作をする必要がないので、訪問者による接触機会を減少させることが容易となる。
【0063】
次に、エレベータ制御部32は、ステップS2で受信された識別情報に対して、識別情報テーブルTによって対応付けられた階を、エレベータEVの行先階として行先登録する(ステップS7)。
図3を参照して、例えば、受信された識別情報が「BBBBB」であった場合、識別情報テーブルTによって「BBBBB」と対応付けられた「5」が行先階として行先登録される。
【0064】
これにより、ユーザは、エレベータEVに手を触れることなく、呼び出されたエレベータEVに乗り込むだけで、識別情報テーブルTに記憶された行先階、例えば居住階へ行くことができる。
【0065】
次に、エレベータ制御部32は、識別情報の送信元となった無線端末装置4へ、近距離通信装置2から、行先階を問い合わせる行先要求信号を送信させる(ステップS8)。そうすると、行先要求信号が無線端末装置4の通信部41によって受信される。
【0066】
行先要求信号が通信部41によって受信されると、行先階送信処理部442は、ユーザによる行先階の入力を促すメッセージをタッチパネルディスプレイ43によって表示させ、タッチパネルディスプレイ43によって受け付けられた行先階を示す行先階情報を、通信部41によって近距離通信装置2を介してエレベータ制御部32へ送信させる。
【0067】
図5は、タッチパネルディスプレイ43に表示される行先階入力画面G1の一例を示す説明図である。例えば、行先階送信処理部442は、タッチパネルディスプレイ43に「行先階を入力してください」というようなメッセージを表示させる。そして、ユーザがテンキー等をタッチ操作して入力ボックス5に行先階を入力し、送信ボタン6をタッチしたとき、行先階送信処理部442は、ユーザが入力した行先階を取得し、取得した行先階を示す情報を行先階情報として通信部41から送信させる。
【0068】
その結果、近距離通信装置2によって行先階情報が受信され(ステップS9でYES)、エレベータ制御部32は、ステップS10へ処理を移行する。
【0069】
なお、ステップS8におけるエレベータ制御部32から無線端末装置4への行先要求信号の送信、及びステップS9における行先階送信処理部442からエレベータ制御部32への行先階情報の送信は、近距離無線通信に限らない。ステップS8,S9においては、近距離通信装置2及び通信部41を用いず、移動体通信やWiFi(登録商標)等、種々の無線通信方式を用いることができる。
【0070】
次に、エレベータ制御部32は、近距離通信装置2によって受信された行先階情報が示す行先階を、エレベータEVの行先として行先登録し(ステップS10)、処理を終了する。この場合、ユーザは、自分の無線端末装置4のタッチパネルディスプレイ43を操作するだけで、エレベータEVに触れることなく所望の行先階を、エレベータEVに行先登録することができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易である。
【0071】
ステップS10において、エレベータ制御部32は、ステップS7で登録された行先登録を取り消して行先階情報が示す行先階を行先登録してもよく、ステップS7で登録された行先登録に加えて行先階情報が示す行先階を行先登録してもよい。
【0072】
一方、ステップS9において、予め設定された待ち時間内に行先階情報が受信されなかった場合(ステップS9でNO)、エレベータ制御部32は、ステップS10を実行することなく処理を終了する。
【0073】
なお、エレベータ制御システム1は、扉制御部33を備えず、ステップS5を実行しなくてもよい。また、エレベータ制御部32は、ステップS6の呼び登録を実行しなくてもよい。また、入り口には、自動扉ADや電気錠で施錠可能な扉が設けられていなくてもよい。また、エレベータ制御部32は、ステップS7の行先登録を実行しなくてもよい。また、エレベータ制御部32は、ステップS8~S10の行先登録を実行しなくてもよい。
【0074】
また、近距離通信装置2は、エレベータEVの扉近傍に設置されていてもよい。また、エレベータ制御システム1は、近距離通信装置2とは別に、無線端末装置4と近距離無線通信可能な通信装置をエレベータEVの扉近傍に備えてもよい。
【0075】
また、エレベータ制御システム1は、複数の近距離通信装置2を備え、各近距離通信装置2が集合住宅の各階に取り付けられていてもよい。そして、エレベータ制御部32は、ステップS6において、エレベータEVを、ステップS2で識別情報を受信した近距離通信装置2が設置されている階への呼び登録を行ってもよい。
【0076】
このようにすれば、例えば集合住宅の居住者等が、無線端末装置4を所持して自分の住戸から出て集合住宅の一階に降りる際や他の階に移動する際にも、識別情報を受信した近距離通信装置2が設置されている階、すなわち居住者等が現在いる階へエレベータEVが呼び登録されるので、エレベータEVに手を触れることなく他の階へ移動することが可能となる。
【0077】
また、エレベータEVは、集合住宅のエレベータに限らない。
(第二実施形態)
【0078】
次に、本発明の第二実施形態に係るエレベータ制御システム1aについて説明する。まず、エレベータ制御システム1aが用いられる集合住宅では、
図1における近距離通信装置2を設ける必要がない。
図6は、エレベータ制御システム1aの構成の一例を示すブロック図である。
【0079】
図6に示すエレベータ制御システム1aと、
図1に示すエレベータ制御システム1とでは、下記の点で異なる。すなわち、
図6に示すエレベータ制御システム1aは、近距離通信装置2を備えない。制御部3aは、認証処理部31及び記憶部34を備えず、解錠要求受付部35及び階記憶部36を備える。また、エレベータ制御部32a、扉制御部33aは、エレベータ制御部32、扉制御部33とは動作が異なる。
【0080】
以下、本実施形態の特徴的な点について説明する。集合住宅の各住戸には、居住者用端末7が設けられ、あるいは各住戸の居住者が居住者用端末7を所有している。これにより、各住戸に居住者用端末7が対応付けられている。
【0081】
居住者用端末7は、例えばインターホン子機、スマートフォン、タブレット端末、その他エレベータ制御システム1a用の専用端末装置等であってもよい。
【0082】
各居住者用端末7は、ネットワーク8を介して制御部3aと通信可能とされている。また、各居住者用端末7は、例えばエントランス101に設けられた図略の集合玄関機等と通話可能なインターホンとして機能してもよい。
【0083】
各居住者用端末7には、例えばそれぞれを識別する識別情報が付与されており、各居住者用端末7が制御部3aにアクセスすると、制御部3aが、どの住戸に対応する居住者用端末7からのアクセスであるかがわかるようになっている。
【0084】
居住者用端末7は、例えばタッチパネル操作やボタン操作等の入力操作によって、居住者等から、自動扉ADの解錠を指示する解錠指示を受け付け可能にされている。居住者用端末7は、解錠指示を受け付けると、ネットワーク8を介して制御部3aへ、自機の識別情報と共に、解錠要求を送信する。
【0085】
ネットワーク8は、例えばインターネット、公衆電話回線、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、WiFi(登録商標)等、種々の通信手段であってもよく、これらの通信手段が組み合わされていてもよく、有線、無線、あるいは有線と無線とが組み合わされて構成されていてもよい。例えばネットワーク8を移動体通信網とした場合、居住者用端末7は、特許第6795833号に記載のスマートフォン21,22を兼ねていてもよい。
【0086】
階記憶部36には、各居住者用端末7と対応付けて、各居住者用端末7に対応する住戸が有る階が予め記憶されている。例えば、2階の201号室に対応する居住者用端末7には2階が対応付けられ、5階の501号室に対応する居住者用端末7には5階が対応付けられている。
【0087】
解錠要求受付部35は、集合住宅の各住戸に対応する居住者用端末7から、ネットワーク8を介して自動扉ADの解錠を要求する解錠要求を受け付ける。
【0088】
扉制御部33aは、解錠要求受付部35によって解錠要求が受け付けられたとき、自動扉ADを開かせることによって自動扉ADを解錠する。
【0089】
エレベータ制御部32aは、解錠要求受付部35によって解錠要求が受け付けられたとき、自動扉ADが設置されている階へエレベータEVの呼び登録を行う。また、エレベータ制御部32aは、解錠要求受付部35によって解錠要求が受け付けられたとき、階記憶部36を参照し、解錠要求を要求した居住者用端末7と対応付けられた階を、エレベータEVの行先階として行先登録を行う。
【0090】
次に、上述のように構成されたエレベータ制御システム1aの動作について説明する。
図7は、エレベータ制御システム1aの動作の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、例えば訪問者が、エントランス101に設けられた図略の集合玄関機を用いて訪問先の住戸を呼び出す。この場合、集合玄関機と、呼び出された住戸に対応する居住者用端末7とが、インターホンとして機能することで、訪問者と居住者とが通話可能であってもよい。また、居住者用端末7とは別の通話装置等によって、訪問者と居住者とが通話してもよい。
【0092】
訪問者を確認した居住者が、居住者用端末7の解錠指示操作を行うと、居住者用端末7によって解錠指示が受け付けられ、居住者用端末7からネットワーク8を介して制御部3aへ、自機の識別情報と共に解錠要求が送信される。その結果、解錠要求受付部35によって、解錠要求が受け付けられる(ステップS21でYES)。
【0093】
解錠要求受付部35によって解錠要求が受け付けられると(ステップS21でYES)、扉制御部33aは、自動扉ADを開かせることにより解錠する(ステップS22)。これにより、訪問者は、入り口の扉に手を触れることなく集合住宅内に入ることができる。これにより、集合住宅のセキュリティを確保しながら、ユーザが手を触れることなく自動扉ADを開いて中に入ることができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【0094】
次に、エレベータ制御部32aは、ステップS6と同様に、自動扉ADが設置されている階へ呼び登録する(ステップS23)。これにより、居住者が解錠指示操作を行ったことによりエレベータEVが訪問者のいる階に呼び登録されるので、訪問者がエレベータホール102を歩いてエレベータEVの扉へ向かっている間に訪問者がいる階にエレベータEVが呼び出される。これにより、訪問者の待ち時間を減少させることが容易となる。また、訪問者がエレベータEVの呼び登録操作をする必要がないので、訪問者による接触機会を減少させることが容易となる。
【0095】
次に、エレベータ制御部32aは、階記憶部36を参照し、解錠要求を要求した居住者用端末7と対応付けられた階を、エレベータEVの行先階として行先登録を行う(ステップS24)。例えば501号室に対応する居住者用端末7が解錠要求を要求した場合、501号室の居住者用端末7に対応付けられた5階が行先階として行先登録される。
【0096】
これにより、訪問者は、エレベータEVに手を触れることなく、呼び出されたエレベータEVに乗り込むだけで、訪問先の住戸がある階へ行くことができる。
【0097】
なお、エレベータ制御システム1aは階記憶部36を備えず、ステップS24の行先登録を実行しなくてもよい。また、エントランス101に、自動扉ADの代わりに、自動扉ではない、電気錠によって施錠可能な扉が取り付けられていた場合、扉制御部33aは、ステップS22において、エントランス101の扉の電気錠を解錠してもよい。自動扉ではない扉が設けられている場合であっても、エレベータEVに手を触れることなくエレベータEVに乗ることができるので、ユーザによる接触機会を減少させることが容易となる。
【符号の説明】
【0098】
1,1a エレベータ制御システム
2 近距離通信装置(近距離通信部)
3,3a 制御部
4 無線端末装置
5 入力ボックス
6 送信ボタン
7 居住者用端末
8 ネットワーク
31 認証処理部
32,32a エレベータ制御部
33,33a 扉制御部
34 記憶部
35 解錠要求受付部
36 階記憶部
41 通信部
42 移動体通信部
43 タッチパネルディスプレイ(受付部)
44 制御部
101 エントランス
102 エレベータホール
441 識別情報送信処理部
442 行先階送信処理部
A 通信可能範囲
AD 自動扉(扉)
B 登録ボタン
EV エレベータ
G1 行先階入力画面
T 識別情報テーブル