(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164972
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】保温コップ
(51)【国際特許分類】
A47G 19/22 20060101AFI20221024BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A47G19/22 C
B65D81/38 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070104
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】321000794
【氏名又は名称】小塩 佑輔
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】小塩 佑輔
【テーマコード(参考)】
3B001
3E067
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001CC11
3E067AA03
3E067AB26
3E067BA07B
3E067BA07C
3E067BB08C
3E067BB14B
3E067CA18
3E067FC03
3E067GA01
(57)【要約】
【課題】内側容器の少なくとも一部が、該内側容器とは別体形成された外側容器の内部に位置決め収容された保温コップであって、高い断熱性能を有するとともに、成形が容易で製造コストも安価な保温コップを提供することを課題とする。
【解決手段】内側容器の少なくとも一部が、該内側容器とは別体形成された外側容器の内部に位置決め収容された保温コップであって、有底筒状に成形された内側容器と、該内側容器の外周面の少なくとも一部をその内部に収容可能な有底筒状に成形された外側容器とを備え、前記内側容器は、前記外側容器よりも変形し易いように、該外側容器とは異なる材料から構成され、前記内側容器は、その外周面の少なくとも一部が前記外側容器の内周面に嵌合して固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側容器の少なくとも一部が、該内側容器とは別体形成された外側容器の内部に位置決め収容された保温コップであって、
有底筒状に成形された内側容器と、
該内側容器の外周面の少なくとも一部をその内部に収容可能な有底筒状に成形された外側容器とを備え、
前記内側容器は、前記外側容器よりも変形し易いように、該外側容器とは異なる材料から構成され、
前記内側容器は、その外周面の少なくとも一部が前記外側容器の内周面に嵌合して固定された
ことを特徴とする保温コップ。
【請求項2】
前記内側容器は、前記外側容器を構成する材料と比較して、熱伝導率の低い材料から構成された
請求項1に記載の保温コップ。
【請求項3】
前記外側容器は透明なガラス材料から構成され、
前記内側容器は透明な合成樹脂材料から構成された
請求項1又は2の何れかに記載の保温コップ。
【請求項4】
前記内側容器の外周面において前記外側容器の内周面と接触する部分の割合を50~100%に設定した
請求項1乃至3の何れかに記載の保温コップ。
【請求項5】
前記内側容器を前記外側容器内に挿入して固定した状態時、該内側容器の開放された上縁部が、前記外側容器の開放された上縁部と同一の高さか、或いはそれよりも低い高さに位置する
請求項1乃至4の何れかに記載の保温コップ。
【請求項6】
前記内側容器の少なくとも上縁部には、その周壁の肉厚を他の部分の周壁と比べて薄くする絞り部が形成され、
前記絞り部の外周面は前記内側容器の内周面に密着された
請求項1乃至5の何れかに記載の保温コップ。
【請求項7】
前記絞り部の内周面は、上方の開放側に向かって径が次第に増加するテーパ面とした
請求項6に記載の保温コップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側容器の少なくとも一部が、該内側容器とは別体形成された外側容器の内部に位置決め収容された保温コップに関する。
【背景技術】
【0002】
有底筒状に成形された内側容器と、該内側容器の外周面の少なくとも一部をその内部に収容可能な有底筒状に成形された外側容器とを備え、内側容器の外周面の少なくとも一部を外側容器の内周面に嵌合して固定した保温コップが公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
上記文献1の保温コップによれば、内側容器及び外側容器の二重構造によって断熱効果が高まるため、内側容器に注がれた飲料やスープ等の内容物の温度変化が抑制される一方で、内側容器及び外側容器の夫々が、予め定めた所定の形状に成形し難いガラス材料によって構成されるとともに、内側容器の外周面を外側容器の内周面に嵌合させために該外周面及び該内周面の夫々を予め定めた所定の形状に高い精度で成形する必要があり、製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内側容器の少なくとも一部が、該内側容器とは別体形成された外側容器の内部に位置決め収容された保温コップであって、高い断熱性能を有するとともに、成形が容易で製造コストも安価な保温コップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、内側容器の少なくとも一部が、該内側容器とは別体形成された外側容器の内部に位置決め収容された保温コップであって、有底筒状に成形された内側容器と、該内側容器の外周面の少なくとも一部をその内部に収容可能な有底筒状に成形された外側容器とを備え、前記内側容器は、前記外側容器よりも変形し易いように、該外側容器とは異なる材料から構成され、前記内側容器は、その外周面の少なくとも一部が前記外側容器の内周面に嵌合して固定されたことを特徴とする。
【0007】
前記内側容器は、前記外側容器を構成する材料と比較して、熱伝導率の低い材料から構成されたものとしてもよい。
【0008】
前記外側容器は透明なガラス材料から構成され、前記内側容器は透明な合成樹脂材料から構成されたものとしてもよい。
【0009】
前記内側容器の外周面において前記外側容器の内周面と接触する部分の割合を50~100%に設定したものとしてもよい。
【0010】
前記内側容器を前記外側容器内に挿入して固定した状態時、該内側容器の開放された上縁部が、前記外側容器の開放された上縁部と同一の高さか、或いはそれよりも低い高さに位置するものとしてもよい。
【0011】
前記内側容器の少なくとも上縁部には、その周壁の肉厚を他の部分の周壁と比べて薄くする絞り部が形成され、前記絞り部の外周面は前記内側容器の内周面に密着されたものとしてもよい。
【0012】
前記絞り部の内周面は、上方の開放側に向かって径が次第に増加するテーパ面としたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
内側容器が、外側容器よりも変形し易いように該外側容器とは異なる材料から構成され、内側容器の実際の形状が予め定めた形状と異なっていた場合でも、該内側容器を、若干変形させ、その外周面の少なくとも一部を、外側容器の内周面に嵌合して固定することが可能になるため、高い断熱性能と、成形の容易化による製造コストの削減とを両立することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した保温コップの正断面図である。
【
図2】本発明を適用した保温コップの分割正断面図である。
【
図4】本発明の別実施形態に係る保温コップの要部拡大正断面図である。
【
図5】本発明の別実施形態に係る保温コップの要部拡大正断面図である。
【
図6】本発明の別実施形態に係る保温コップの正断面図である。
【
図7】本発明を適用した保温コップと、ガラス製のコップとの保温性能を比較した結果を示す特性グラフである。
【
図8】本発明を適用した保温コップと、ガラス製のコップとの保温性能を比較した結果を示す特性グラフである。
【
図9】ガラス製コップと、アクリル樹脂製コップとの保温性能を比較した結果を示す特性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1,
図2は本発明を適用した保温コップの正断面図及び分割正断面図であり、
図3は
図1の要部拡大図である。これらの図面に示す保温コップは、有底の円筒状に成形された外側容器10と、該外側容器10とは別体であって且つ有底の円筒状に成形された内側容器20とを備えている。
【0016】
外側容器10は、透明な材料であるガラス材料から構成されている。内側容器20は、透明で且つ外側容器10の構成材料(具体的にはガラス材料)よりも変形し易く、熱伝導率の低い材料である合成樹脂材料から構成されている。
【0017】
具体的には、前記ガラス材料として、耐熱ガラスを用いている。一方、前記合成樹脂材料として、アクリル、メタクリルスチレン又はトライタンを用いている。
【0018】
外側容器10は、その底部11の肉厚が、内側容器20の底部21の肉厚以上の厚みを有する。外側容器10は、その周壁12の肉厚が、内側容器20の周壁22の肉厚以上の厚みを有する。このような肉厚の厚みの設定によっても、内側容器20の周壁22は、外側容器10の周壁12よりも変形し易いように構成される。
【0019】
外側容器10の周壁12は、その外周面及び内周面の夫々の径が、該外側容器10の底部11側の端部である下端部から開放された該外側容器10の上縁部12aに至る全範囲で、上方に向かって次第に増加するか、或いは同一又は略同一の形状に成形されている。ちなみに、この周壁12は、その肉厚が、該周壁12の下縁部から上縁部12aに至る全範囲で均一又は略均一になる形状に成形されている。
【0020】
内側容器20の周壁22は、その外周面及び内周面の夫々の径が、該内側容器20の底部21側の端部である下端部から開放された該内側容器20の上縁部22aに至る全範囲で、上方に向かって次第に増加するか、或いは同一又は略同一の形状に成形されている。ちなみに、この周壁22における上縁部22a以外の部分は、その肉厚が、該周壁22の下端部から上端縁部22aに至る全範囲で均一又は略均一になる形状に成形されている。
【0021】
内側容器20を外側容器10の内部に嵌合挿入して固定された際、内側容器20の周壁22における上縁部22aが、外側容器10の周壁12における上縁部12aと同一の高さに位置するか、或いは、該上縁部12aよりも低い高さに位置した状態になる。
【0022】
また、内側容器20の周壁22の上縁部22aを含む部分は、その肉厚を、開放側である上方に向かって次第に減少させる絞り部となる。図示する例では、上縁部22aのみを絞り部としているが、周壁22における底部側から上縁部22aに至る範囲の中途部から該上縁部22aに至る部分を、絞り部としてもよい。
【0023】
絞り部22aの形状について具体的に説明すると、周壁22において絞り部22aを形成する範囲の内周面を、その径が開放側である上方に向かって次第に増加させるテーパ面とすることによって、該絞り部22aを上述した形状に成形している。
【0024】
加えて、内側容器20の周壁22の外周面の少なくとも一部又は全部(本例では、全部)を、外側容器10の周壁12の内周面の全体に挿入して固定することが可能なように、内側容器20の周壁22の径は、外側容器10の周壁12の径よりも小さい値に設定されている。
【0025】
ちなみに、内側容器20の外側容器10内への挿入固定は、圧入のみによって行ってもよいが、接着剤を用いて、周壁22の外周面を、周壁12の内周面に接着させるとともに、底部21の下面を、底部11の上面に接着させることによって、前記固定を行ってもよい。
【0026】
具体的には、内側容器20の周壁22の外周面と底部21の下面とから構成された凸状の面が、外側容器10の周壁12の内周面と底部11の上面(底面)とから構成された凹状に面と同一又は略同一の形状に成形され、両者を凹凸嵌合させて固定している。
【0027】
このため、内側容器20を外側容器10の内部に嵌合して挿入すれば、内側容器20の周壁21の外周面の半分以上の面(本例では、全体)が、外側容器10の周壁12の内周面と面接触して密着した状態になるとともに、内側容器20の底部21の下面の半分以上の面(本例では、全体)が、外側容器10の底部11の上面(底面)と面接触して密着した状態になる。
【0028】
この状態では、この絞り部22aの外周面も、その全周に亘り、外側容器10の周壁12の上端部の内周面に面接触して密着した状態になる。
【0029】
以上のように構成された保温コップによれば、外側容器10と内側容器20との間には、通常の二重構造の保温コップのように隙間(空気層)が形成されることが抑制され、外側容器10及び内側容器20が一体化して単一の保温コップを形成する。このため、内側容器20の内周面側に飲料を注ぎ入れた状態でも、空気層が目立ってデザイン性が害されることがなく、通常のコップのように利用できる。
【0030】
ちなみに、空気層によって、内側容器20の底部21及び周壁22の全体を空気層でカバーしていなくても、外側容器10によって十分な断熱性が確保できる。
【0031】
また、通常の二重構造の保温コップでは、二重構造によって、開放された上縁部の肉厚が厚くなり、この部分に口を当てて該保温コップに注ぎ入れられた飲料を飲む際、口当りが悪くなるが、本形態の保温コップでは、絞り部22aおいてテーパ面状に成形された内周面によって、肉厚が薄い状態で保持されるので、この口当たりが良好に保持される。
【0032】
さらに、外側容器10として既存のグラスを用い、内側容器20を後付けすることも可能であり、全てを買い替える必要もない。
【0033】
次に、
図4に基づき本発明の別実施形態について上述の形態と異なる部分を説明する。
【0034】
図4は、本発明の別実施形態に係る保温コップの要部拡大正断面図である。同図に示す例では、外側容器10の周壁12の少なくとも上縁部12aには、該周壁12の肉厚を、開放側である上方に向かって次第に減少させる絞り部が設けられている。図示する例では、この絞り部12aは、上縁部12aのみに形成されているが、この周壁12における底部側から上縁部12aに至る範囲の中途部から該上縁部22aに至る部分を、絞り部としてもよい。
【0035】
絞り部12aの形状について具体的に説明すると、周壁12において絞り部12aを形成する範囲の内周面を、その径が開放側である上方に向かって次第に増加させるテーパ面とすることによって、該絞り部12aを上述した形状に成形している。
【0036】
この絞り部12aのテーパ面は、上述した絞り部22aのテーパ面と面一となり、一体的なテーパ面を形成しており、これによって、飲む際の上述した口当りがさらに良好になる。
【0037】
次に、
図5に基づき本発明の別実施形態について上述の形態と異なる部分を説明する。
【0038】
図5は、本発明の別実施形態に係る保温コップの要部拡大正断面図である。同図に示す例では、外側容器10及び内側容器20の絞り部12a,21aを省略し、夫々の周壁12,22の肉厚を、その軸方向の全体に亘り、一定又は略一定に維持している。
【0039】
次に、
図6に基づき本発明の別実施形態について上述の形態と異なる部分を説明する。
【0040】
図6は、本発明の別実施形態に係る保温コップの正断面図である。同図に示す保温コップの外側容器10は、その周壁12の上縁部12aが、その径方向の内側に突出形成されて係止部を構成している。係止部12aは、周壁12の全周に亘り形成されている。
【0041】
内側容器20は、外側容器10の周壁12の係止部12a以外の内周面と、底部11の上面とに嵌め込み収容(嵌合挿入)して固定されるように、その周壁22の上縁部が、外側容器10の周壁12の該係止部12aよりも低い位置に形成されている。収容作業の際には、内側容器20を若干弾性変形させながら、外側容器10内に挿入する。この状態において、内側容器20の周壁22の内周面と、
【0042】
この嵌め込み収容時、内側容器20の周壁22の内周面と、係止部12の内周面とが面一となり、単一の周面を構成する。
【0043】
続いて、本発明を適用した保温コップの性能を確認する実験を行ったので、その実験の内容及び結果を
図7乃至
図9に基づいて説明する。
【0044】
図7は、本発明を適用した保温コップと、ガラス製のコップとの保温性能を比較した結果を示す特性グラフである。この実験では、3℃程度の冷水150ccを、本発明を適用した保温コップ及びガラス製のコップの夫々に注ぎ入れ、24℃の温度下で、その水の温度変化を観察した。ちなみに、保温コップは、その内側容器がアクリル樹脂材料から構成され、その外側容器がガラス材料から構成されている。
【0045】
その結果は、
図7に示す通りであり、本発明を適用した保温コップ内の水の方がガラス製のコップ内の水よりも温度変化を抑制されている状態が確認され、本発明を適用した保温コップにおいて、水を冷たい温度で保持する性能が高いことが確認できた。ちなみに、本発明を適用した保温コップには3℃の水を注ぎ入れ、ガラス製のコップには3.6℃の水を注ぎ入れた。
【0046】
図8は、本発明を適用した保温コップと、ガラス製のコップとの保温性能を比較した結果を示す特性グラフである。この実験では、80℃弱の温水170ccを、本発明を適用した保温コップ及びガラス製のコップの夫々に注ぎ入れ、23℃の温度下で、その水の温度変化を観察した。ちなみに、保温コップは、その内側容器がアクリル樹脂材料から構成され、その外側容器がガラス材料から構成されている。
【0047】
その結果は、
図8に示す通りであり、本発明を適用した保温コップ内の水の方がガラス製のコップ内の水よりも温度変化を抑制されている状態が確認され、本発明を適用した保温コップにおいて、水を温かい温度で保持する性能が高いことが確認できた。ちなみに、本発明を適用した保温コップには75℃の水を注ぎ入れ、ガラス製のコップには78℃の水を注ぎ入れた。
【0048】
図9は、ガラス製コップと、アクリル樹脂製コップとの保温性能を比較した結果を示す特性グラフである。この実験では、3℃程度の冷水170ccを、ガラス製コップ及びアクリル樹脂製コップの夫々に注ぎ入れ、14℃の温度下で、その水の温度変化を観察した。
【0049】
その結果は、
図9に示す通りであり、ガラス製コップ内の水よりもアクリル樹脂製コップ内の水の方が温度変化を抑制されている状態が確認され、アクリル樹脂材料について、高い保温効果が確認できた。ちなみに、ガラス製コップには3.8℃の水を注ぎ入れ、アクリル樹脂製コップには3.5℃の水を注ぎ入れた。
【0050】
これらの実験結果によれば、アクリル樹脂材料の高い保温効果が確認できた。また、本発明を適用した保温コップに冷水を入れた際に、外側容器の外周面の結露が効率的に防止されている様子も確認できた。さらに、本発明を適用した保温コップに高温水を入れた際に、外側容器の外周面が熱くなって持てなくなることを効率的に防止できることも確認できたので、取っ手を設ける必要性も低くなる。
【符号の説明】
【0051】
10 内側容器
11 底部
12 周壁
12a 上縁部
20 外側容器
21 底部
22 周壁
22a 上縁部(絞り部)