(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164978
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 15/00 20060101AFI20221024BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B01D15/00 H
G01N30/26 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070110
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匡
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017BA04
4D017CA03
4D017CA05
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA05
(57)【要約】
【課題】分離対象物質を含む混合物から、効率的に分離対象物質を分離することが可能な分離装置を提供する。
【解決手段】
分離装置は、充填剤層と、充填剤層の下流側に配された第1フィルター層と、第1フィルター層の下流側に配された第2フィルター層とを有し、第1フィルター層は、第2フィルター層よりも目開き寸法が大きいフィルターを用いることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填剤層と、前記充填剤層の下流側に配された第1フィルター層と、前記第1フィルター層の下流側に配された第2フィルター層と、を有し、
前記第1フィルター層は、前記第2フィルター層よりも目開き寸法が大きいフィルターを用いることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記第2フィルター層の濾過面積は、前記第1フィルター層の濾過面積より大きいことを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記第2フィルター層は、並列に配された複数の流路内にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記第2フィルター層の濾過面積は、前記第1フィルター層の濾過面積の1.1倍以上、100倍以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項5】
前記第1フィルター層の目開き寸法は10.0μm~50.0μm、前記第2フィルター層の目開き寸法は0.1μm~5.0μmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項6】
前記第1フィルター層は、前記充填剤層に接触するように配されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項7】
前記充填剤層は円筒状のカラムの内部に活性炭を充填させたものからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置、特に、高分離性能と高分離効率を有する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶離溶媒等の移動相をポンプなどによって加圧してカラムを通過させ、分離対象物質を含む混合物とカラムに充填される充填剤等の固定相及び移動相との相互作用(吸着、分配、イオン交換、サイズ排除など)の差を利用して混合物から分離対象物質を分離する分離装置は食品、化学、製薬、臨床化学などの分野において広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、弱アニオン交換型の固定相と、両性イオン交換型の固定相、及びアイソクラティックモードがアルコール系有機溶剤の移動相とを用いて、キラルアミノ酸を分離する液体クロマトグラフィーが開示されている。また、特許文献2には、1,2,4-トリメチルベンゼンまたはテトラリンを溶離溶媒として、活性炭を充填剤として、分離カラムを利用して、フラーレン混合物からC60フラーレンを分離することが記載されている。また、特許文献3には、活性炭、ゼオライト、シリカゲル等を充填剤として、分離カラムで2-アダマンタノンを精製するのも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-100906号公報
【特許文献2】特開2005-187250号公報
【特許文献3】特開2010-270047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2、特許文献3の分離装置の充填剤として用いる活性炭、ゼオライト、シリカゲル等の工業品は、安価で入手できるため、分離コストを抑えることができる。しかし、これらの工業品は、粒子径分布が広くて、粒子径が小さい微粉末を含むものが多く、特に、活性炭は、分離対象物を分離する際に、破損してしまい、微粉末が生成する。このため、充填剤に含まれる微粉末を分離装置から流出させないように、充填剤が充填されるカラムの底部に充填剤の微粉末を捕捉可能な目開き寸法の小さいフィルターが設けられている。
しかしながら、カラムの底部に充填剤の微粉末が流出しない程度の目開き寸法が小さいフィルターを配置すると、高い圧力で分離対象物質を含む混合液や溶離溶媒など液体を送液しても、液体のカラムを通過する流速を高めることが困難であるという課題があった。そのため、分離対象物質の分離には非常に時間がかかり、効率的に分離対象物質を分離することができない。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、分離対象物質を含む混合物(以下「混合物」ともいう)から、効率的に分離対象物質を分離することが可能な分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
充填剤層と、前記充填剤層の下流側に配された第1フィルター層と、前記第1フィルター層の下流側に配された第2フィルター層と、を有し、前記第1フィルター層は、前記第2フィルター層よりも目開き寸法が大きいフィルターを用いる。
【0008】
また、本発明では、前記第2フィルター層の濾過面積は、前記第1フィルター層の濾過面積より大きくてもよい。
【0009】
また、本発明では、前記第2フィルター層は、並列に配された複数の流路内にそれぞれ配置されていてもよい。
【0010】
また、本発明では、前記第2フィルター層の濾過面積は、前記第1フィルター層の濾過面積の1.1倍以上、100倍以下であってもよい。
【0011】
また、本発明では、前記第1フィルター層の目開き寸法は10.0μm~50.0μm、前記第2フィルター層の目開き寸法は0.1μm~5.0μmであってもよい。
【0012】
また、本発明では、前記第1フィルター層は、前記充填剤層に接触するように配されていてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記充填剤層は円筒状のカラムの内部に活性炭を充填させたものからなってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分離対象物質を含む混合物から、効率的に分離対象物質を分離することが可能な分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る分離装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る分離装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
(分離装置:第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る分離装置の一例を示す断面図である。
本実施形態の分離装置10は、カラム11と、フィルターユニット12とを備えている。
カラム11は、例えば円筒形の筐体21を有し、一端および他端に流入口21a、流出口21bがそれぞれ形成されている。フィルターユニット12は、流入口22aと流出口25aを有する。そして、カラム11の流出口21bと、フィルターユニット12の流入口22aとは、配管14によって接続されている。
【0018】
なお、混合物を含む混合液や溶離溶媒はカラム11の流入口21aから分離装置10内に導入され、フィルターユニット12の流出口25aに向けて、液体が流れる。よって、以下の説明では、ある特定の部材の下流側と称した場合、当該部材よりもフィルターユニット12の流出口25aに近い側とする。
【0019】
カラム11の内部には、充填剤層20と、第1フィルター層23とが配されている。充填剤層20は、例えば、充填剤をカラム11の内に充填したものからなる。
充填剤は、例えば、微粉末を含有する球状または破砕状のシリカゲル、アルミナ粒子、ゼオライト粒子、活性炭粉末、ポリマー粒子等が挙げられる。微粉末として、粒子径が平均粒子径の30%以下の粒子を例として挙げられる。本実施形態において、多孔質炭素からなる活性炭を充填剤として用いられる。その平均粒子径は、例えば30μm~200μmである。ここで、平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0020】
第1フィルター層23は、充填剤層20の下流側で、充填剤層20に直接接触するように配されている。
【0021】
第1フィルター層23は、例えば、酢酸セルロース,セルロースエステル,フッ素樹脂,ポリエーテル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどからなるメンブランフィルターを用いることができる。または、金属製メッシュから選ばれる。第1フィルター層23は、後述する第2フィルター層26a,26b,26cよりも目開き寸法が大きいものを用いる。本実施形態では、第1フィルター層23は、例えば、目開き寸法が10.0μm~50.0μmのものを用いていることができ、より好ましくは10.0μm~40.0μmのものを用いる。第1フィルター層23は、例えば、カラム11の筐体21の内部形状に合わせて、円板状に形成されていればよい。
【0022】
カラム11の下流側に配されるフィルターユニット12は、流入口22a側で流路が複数、本実施形態では3つの並列な流路24a,24b,24cに分離し、流出口25a側でこれら3つの流路24a,24b,24cが1つに合流する構成となっている。
【0023】
そして、3つの流路24a,24b,24cの途上には、それぞれ第2フィルター層26a,26b,26cが配されている。
【0024】
より具体的には、フィルターユニット12は、流入口22aを有する配管22から、3つの並列な流路24a,24b,24cが分離され、流出口25aを有する配管25において、1つに合流する構成となっている。
【0025】
流路24aは、配管22と濾過部24a-2とを接続する流入配管24a-1と、濾過部24a-2と、濾過部24a-2と配管25とを接続する流出配管24a-3と、を有する。濾過部24a-2に第2フィルター層26aが設けられている。
流路24bは、配管22と濾過部24b-2とを接続する流入配管24b-1と、濾過部24b-2と、濾過部24b-2と配管25とを接続する流出配管24b-3と、を有する。濾過部24b-2に第2フィルター層26bが設けられている。
流路24cは、配管22と濾過部24c-2とを接続する流入配管24c-1と、濾過部24c-2と、濾過部24c-2と配管25とを接続する流出配管24c-3と、を有する。濾過部24c-2に第2フィルター層26cが設けられている。
【0026】
濾過部24a-2、濾過部24b-2、濾過部24c-2の形状は特に限定しないが、例えば、円柱状であってもよく、長方体であってもよいし、それぞれ同様な形状を有してもよく、互いに異なる形状を有してよい。また、本実施形態の濾過部24a-2、濾過部24b-2、濾過部24c-2は、互いに重なるように配置されているが、それぞれ分離して、配置されてもよい。
【0027】
第2フィルター層26a,26b,26cは、第1フィルター層23よりも目開き寸法が小さいものを用いる。第2フィルター層26a,26b,26cは、例えば、酢酸セルロース,セルロースエステル,フッ素樹脂,ポリエーテル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどからなるメンブランフィルターを用いることができる。また、金属製フィルターを用いることができる。
本実施形態では、第2フィルター層26は、例えば、目開き寸法が0.1μm~5.0μmのものを用い、より好ましくは0.2μm~3.0μmのものを用いる。この範囲内であれば、第2フィルター層26は第1フィルター層23を通過した充填剤層20から流出する微粉末を捕捉できる。
【0028】
また、第2フィルター層26の濾過面積(第2フィルター層26a,26b,26cの濾過面積の合計)は、第1フィルター層23の濾過面積よりも大きくなるように形成されている。
【0029】
以上のような構成の分離装置10によれば、混合物から分離対象物質を分離する際に、充填剤層20の直下にある第1フィルター層23が、充填剤層20から流出する充填剤の微粉末を少なくとも一部を通過させることができ、第2フィルター層26が第1フィルター層23を通過した微粉末を捕捉することができる。これにより、第1フィルター層23における充填剤の微粉末によって目詰まることと充填剤の微粉末が外部に流出することを防止する同時に、液体が充填剤層20を通過する流速を高めることが可能になる。ひいては、分離対象物質を効率的に分離することができる。
【0030】
また、第2フィルター層26の濾過面積は、第1フィルター層23の濾過面積よりも大きくなるように形成することで、第1フィルター層23を通過した微粉末を捕捉する第2フィルター層26の目開き寸法が小さくても、液体の濾過流速の低下を抑制でき、また、濾過による目詰まりを長期間抑制し、第2フィルター層26における濾過流速を長時間、高い状態で維持することができる。
【0031】
そして、第2フィルター層26の濾過面積は、第1フィルター層23の濾過面積に対して、1.1倍以上、100倍以下の範囲になるように形成されているのが好ましく、2倍以上、50倍以下の範囲になるように形成されているのがより好ましい。この範囲内であれば、分離対象物質を分離する時間を短縮でき、またフィルター交換が簡単にできる。
【0032】
なお、上述した第1実施形態では、フィルターユニット12を内部で3つの並列な流路24a,24b,24cに分離しているが、流路は3つに限定されるものではなく、任意の数、2つや4つ以上に流路を分離することができる。また、流路は分離せずに、一つのみを有してもよい。
【0033】
また、上述した第1実施形態では、カラム11内で充填剤層20と第1フィルター層23とが接触するように互いに隣接して配されているが、充填剤層20と第1フィルター層23とがカラム11内で離間して配されていてもよく、また、充填剤層20と第1フィルター層23とがそれぞれ別な筐体に収容され、配管で接続されるような構成であってもよい。
【0034】
(分離装置:第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る分離装置の一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の分離装置30は、カラム11と、フィルターユニット32とを備えている。フィルターユニット32は、例えば円筒形の筐体42を有し、一端および他端に流入口42a、流出口42bがそれぞれ形成されている。そして、カラム11の流出口21bと、フィルターユニット32の流入口42aとは、配管14によって接続されている。
【0035】
フィルターユニット32の筐体42の内部には、第2フィルター層44が配されている。第2フィルター層44は、例えば一方が閉じられた円筒型に形成され、中心の空洞部分が筐体42の流入口42aに連通している。また、第2フィルター層44の円筒型の外周面と筐体42の内面との間には、隙間が形成されている。
【0036】
これにより、筐体42の流入口42aからフィルターユニット32内に流入した流体は、第2フィルター層44を通って筐体42の流出口42bに達し、フィルターユニット32から排出される構成となっている。
また、本実施形態では、フィルターユニット32は一つのみを有するが、二つ以上を並列に用いることもできる。
【0037】
本実施形態では、第2フィルター層44は、第1フィルター層23よりも目開き寸法が小さいものを用いる。例えば、第2フィルター層44は、目開き寸法が0.1μm~5.0μmのものを用い、より好ましくは0.2μm~3.0μmのものを用いる。この範囲内であれば、第2フィルター層44は第1フィルター層23を通過した充填剤層20から流出する微粉末を捕捉できる。
【0038】
また、第2フィルター層44は、カラム11の第1フィルター層23よりも濾過面積が大きい。例えば、第2フィルター層44の濾過面積は、第1フィルター層23の濾過面積に対して、1.1倍以上、100倍以下の範囲になるように形成されているのが好ましく、2倍以上、50倍以下の範囲になるように形成されているのがより好ましい。この範囲内であれば、分離対象物質を分離する時間を短縮でき、またフィルターを簡単に交換することができる。
【0039】
なお、第2フィルター層44の構成材料としては、例えば、酢酸セルロース,セルロースエステル,フッ素樹脂,ポリエーテル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、金属などからなるメンブランフィルターを用いることができる。
【0040】
以上のような構成の本実施形態の分離装置30によれば、混合物から分離対象物質を分離する際に、充填剤層20の直下にある第1フィルター層23が、充填剤層20から流出する充填剤の微粉末を少なくとも一部を通過させることができ、第2フィルター層44が第1フィルター層23を通過した微粉末を捕捉することができる。これにより、第1フィルター層における充填剤の微粉末による目詰りと、充填剤の微粉末が外部に流出することを防止すると同時に、液体が充填剤層20を通過する流速を高めることが可能になる。
【0041】
また、第2フィルター層44の濾過面積は、第1フィルター層23の濾過面積よりも大きくなるように形成することで、第1フィルター層23を通過した微粉末を捕捉する第2フィルター層44の目開きが小さくても、濾過速度の低下を抑制でき、また、濾過による目詰まりを長期間抑制し、第2フィルター層44における濾過流速を長時間、高い状態で維持することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0043】
以下、2-アダマンタノン、1-アダマンタノール、2-アダマンタノールを含有する混合物から分離対象物質2-アダマンタノンを分離する実施例及び比較例を用いて、本実施形態の分離装置の効果をより明らかにする。例えば、アダマンタンやアダマンタノールを原料として酸化反応により、2-アダマンタノンを生成する方法において、通常は1-アダマンタノールや2-アダマンタノールが中間体や未反応原料として生成物中に存在する。高純度の2-アダマンタノンを得るために、生成物から2-アダマンタノンを分離する必要がある。
【0044】
なお、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0045】
(実施例1)
図1に示す分離装置10を用いて、2-アダマンタノンを分離した。
【0046】
粉末状活性炭(MAXSORB MSC30:関西熱化学株式会社製)を篩い(No.286:ヤマト科学株式会社製)の上に95.1g量りとり、篩震とう機(VSS―50:筒井理化学機械株式会社製)及び目の開き25μmの篩いを使用して、目盛り50の強度で空気中5分間篩ったところ、49.5gの粉末状活性炭が篩い上に残存したので、この篩分けされた粉末状活性炭を1Lガラス製ビーカーに移し取った。
【0047】
篩いの上に量りとる量を変えながら同様の操作をさらに2回繰り返し、篩い上に残存した粉末状活性炭を合計177.6g得た。篩いの上に残存した粉末状活性炭を0.2g量りとり水に分散させ、レーザーディフラクションパーティクルアナライザー(SALD-2000J:株式会社島津製作所製)で粒径を分析したところ、篩い残存物の平均粒径(粒度分布における積算値50%での粒径)が94μmであった。また、篩い残存物の内、25μm以下の粒径を持つ粒子の含有割合は9体積%であった。
【0048】
篩い残存物のうち140gを2Lビーカーに移し取り、メチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社製)0.7Lを撹拌しながら10分間かけてゆっくりと添加して活性炭スラリーを作製した。
【0049】
カラム11の筐体21はSUS304製で、円筒部と底部フランジ部と上部フランジ部とを有し、円筒部の内径は6.8cm、高さは10.0cmである。底部フランジ部に目皿(穴径2mm、ピッチ3.5mm、開口率29.6%、厚み1mm)を入れ、目皿の上に直径が6.8cm(濾過面積が36.3cm2)、目開き寸法が32.0μmの第1フィルター層23(SUS304製メッシュ500)を置き、円筒部に取り付けてネジで固定した。底部フランジ部に、直径(内径)8mmの流出口21bが設けられている。上部フランジ部を取り外し、上記活性炭スラリーをカラム11の中に注ぎ込み、流出口21bから減圧吸引し、スラリー中のメチルエチルケトンを抜き出しながら活性炭ベッドを作製した。
【0050】
活性炭ベッドの上部が液面より上に出る直前までメチルエチルケトンを抜き、スラリーを追加する操作を繰り返しながら層高98mmの活性炭ベッドを作製し、上部フランジを取り付けてネジで固定した。上部フランジには、直径(内径)が8mmの流入口21aが設けられている。以上の手順でカラム11を作製した。
【0051】
フィルターユニット12は、
図1に示す構造を有する。配管22、流入配管24a-1、流出配管24a-3、流入配管24b-1、流出配管24b-3、流入配管24c-1、流出配管24c-3、配管25の内径は8mmである。
濾過部24a-2、濾過部24b-2、濾過部24c-2は、第2フィルター層26a,26b,26cをそれぞれ収容可能な円柱状の筐体である。
第2フィルター層26a,26b,26cは、直径が9.0cm、目開き寸法が0.45μmの円形PTFE製メンブランフィルターを用いた。濾過面積(第2フィルター層26a,26b,26cの濾過面積の合計)は190.8cm
2であった。
【0052】
作製したカラム11は配管14により、フィルターユニット12と接続した。カラム11の流入口21aは、送液ラインと接続され、フィルターユニット12の流出口25aは溶離液回収タンクと接続された。
【0053】
2-アダマンタノンを含む混合物15.00g(2-アダマンタノン10.00g、1-アダマンタノール2.50g、2-アダマンタノール2.50gの混合物)と、溶離溶媒メチルエチルケトン1Lとを混合して、スリーワンモータで60minを攪拌して混合液を作製した。
【0054】
送液ポンプを駆動し、送液ラインを介して混合液をカラム11に送液した。そして、流出口25aから2-アダマンタノンを含む溶離液を回収した。カラム11に設置した圧力計の表示が0.02MPaになるように、送液ポンプの出力を調整した。そして、流出口25aにおける2-アダマンタノンを含む溶離液の流出速度(以下「流出速度1」ともいう)は45mL/minであった。
【0055】
混合液を送液した後に、同様な方法で、溶離溶媒メチルエチルケトンをカラム11に送液した。カラム11に設置した圧力計の表示が0.3MPaになるように、送液ポンプの出力を調整した。そして、流出口25aから流出する2-アダマンタノンを含む溶離液の流出速度(以下「流出速度2」ともいう)は250mL/minであった。そして、溶離溶媒メチルエチルケトンの送液量が30Lに到着した時点で送液ポンプを停止させた。
混合液と溶離溶媒の送液時間の合計は、140minであった。
【0056】
溶離液回収タンクから溶離液を回収し、ロータリーエバポレーターを用いて2-アダマンタノンを含む溶離液からメチルエチルケトンを除去し、固体物を得た。得られた固体物を取り出して、140℃で24hを真空乾燥させ、最終に固体物を9.10g回収した。
【0057】
液体クロマトグラフィー(HPLC:株式会社島津製作所製)を用いて、固体物中の2-アダマンタノンの含有率(質量%)を測定した。その結果、固体物中の2-アダマンタノンの含有率は99.10質量%であり、活性炭は検出されなかった。この結果から、固体物中の2-アダマンタノンの含有量は9.02gであることが分かった。
【0058】
(実施例2~7)
第1フィルター層23の目開き寸法、直径、濾過面積、第2フィルター層26a,26b,26cの目開き寸法、直径、濾過面積は表1に示すようにした以外は実施例1と同様に2-アダマンタノンを分離した。
【0059】
(比較例1)
第1フィルター層23として、目開き寸法が0.45μmのPTFE製メンブランフィルターを用いた以外は、実施例1と同様にカラム11を作製した。カラム11の流入口21aは送液ラインと接続され、流出口21bは、溶離液の回収タンクと接続された。
【0060】
実施例1と同様に混合液を作製して、送液ポンプを駆動し、送液ラインを介して混合液をカラム11に送液した。そして、流出口21bから2-アダマンタノンを含む溶離液を回収した。カラム11に設置した圧力計の表示値が0.02MPaになるように、送液ポンプの出力を調整した。そして、流出口21bにおける2-アダマンタノンを含む溶離液の流出速度(流出速度1)は31mL/minであった。
混合液を送液した後に、同様な方法で、溶離溶液メチルエチルケトンをカラムに送液した。カラム11に設置した圧力計の表示が0.3MPaになるように、送液ポンプの出力を調整した。そして、流出口21bから流出する溶液の流出速度(流出速度2)は100mL/minであった。溶離溶液メチルエチルケトンの送液量が30L到着した時点で送液ポンプを停止させた。
混合液と溶離溶液の送液時間の合計は、329minであった。
上記以外は、実施例1と同様に、固体物を回収して、固体物中の2-アダマンタノンの含有率を測定した。
【0061】
実施例1~7、比較例1の流出速度1、流出速度2、送液時間の合計、及び回収した固体物中の2-アダマンタノンの含有率、2-アダマンタノンの含有量を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1に示す結果によれば、実施例1~7の流出速度1、流出速度2は、いずれも比較例1と比べて向上しており、これにより送液時間の合計が短縮できることが確認された。また、実施例1~7の回収した固体物中の2-アダマンタノンの含有率、2-アダマンタノンの含有量は、いずれも比較例1と比べて大きな差は見られなかった。すなわち、本発明の2-アダマンタノン分離装置を用いることにより、得られた2-アダマンタノンの量および純度を低下させずに、従来の比較例よりも分離時間を短縮することができ、分離効率の向上が確認できた。
10…分離装置 11…カラム 12…フィルターユニット 20…充填剤層 21…筐体 22…配管 23…第1フィルター層 24a,24b,24c…流路 25…配管 26a,26b,26c…第2フィルター層 30…分離装置 32…フィルターユニット 42…筐体 44…第2フィルター層