(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164981
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ロボットビジョンシステム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221024BHJP
B25J 19/04 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
B25J19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070113
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】三本木 將夫
【テーマコード(参考)】
3C707
5L096
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707KS06
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT11
5L096BA05
5L096EA39
5L096FA69
5L096GA51
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】ワークの周辺環境に変化が生じた場合であっても、ワークの特徴量を正確に抽出することが可能なロボットビジョンシステムを提供する。
【解決手段】本発明のロボットビジョンシステムは、カメラを用いて画像を撮像する撮像部と、画像からワークの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、特徴量と画像中の座標を対応付ける座標取得部と、ワーク中心部の特徴量とワーク周辺部の特徴量に分類する領域設定部と、中心部の特徴量を用いて画像からワーク中心部の認識スコアを算出する中心部認識スコア算出部と、周辺部の特徴量を用いて画像からワーク周辺部の認識スコアを算出する周辺部認識スコア算出部と、2つの認識スコアを比較する比較部と、2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合には、認識スコアが高かった方の特徴量をワークの認識に用いる特徴量として選択する特徴量決定部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを有するロボットビジョンシステムにおいて、
前記カメラを用いて画像を撮像する撮像部と、
前記画像からワークの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量と前記画像中の座標を対応付ける座標取得部と、
前記座標から前記特徴量の中心位置を算出し、ワーク中心部の特徴量とワーク周辺部の特徴量に分類する領域設定部と、
前記中心部の特徴量を用いて前記画像からワーク中心部の認識スコアを算出する中心部認識スコア算出部と、
前記周辺部の特徴量を用いて前記画像からワーク周辺部の認識スコアを算出する周辺部認識スコア算出部と、
前記2つの認識スコアを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果において、前記2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合には、認識スコアが高かった方の特徴量を前記ワークの認識に用いる特徴量として選択する特徴量決定部と、
を有することを特徴とするロボットビジョンシステム。
【請求項2】
前記特徴量決定部は、前記2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合には、認識スコアが高かった方の特徴量に、認識スコアが低かった方の特徴量に低い重み付けをして加えて、前記ワークの認識に用いる特徴量を決定することを特徴とする請求項1に記載のロボットビジョンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを有するロボットビジョンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等の生産現場において、ロボットアーム等の産業用機械が用いられている。産業用機械によって把持するワークを識別する方法としては、例えば特許文献1にはロボット装置および物体の位置姿勢推定方法が開示されている。
【0003】
特許文献1の位置姿勢推定方法では、距離センサによって作業環境内に存在する物体との距離を計測してレンジデータを生成し、生成したレンジデータを形状データと照合することによって、物体の初期形状と初期位置姿勢を推定する。そして、カメラによって撮像した物体の画像データを生成し、生成した画像データの特徴を抽出する。その後、推定した物体の初期形状と初期位置姿勢を初期値として、抽出した画像データの特徴と、物体の形状と位置姿勢との誤差を評価関数とした最小化問題を解くことで、物体の位置姿勢を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで特許文献1の物体の位置姿勢推定方法では、カメラによって撮像した物体の画像データをエッジ処理することにより線分を抽出している。しかしながら、画像データのエッジ等の特徴量を抽出する際には、ワークの周辺環境、特に昼夜等による光の当たり方によって画像におけるワークの明暗情報が変化する。すると画像におけるワークの特徴量も当然に変化する。このため、特許文献1の技術ではワークの特徴量を正確に抽出することができず、さらなる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ワークの周辺環境に変化が生じた場合であっても、ワークの特徴量を正確に抽出することが可能なロボットビジョンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のロボットビジョンシステムの代表的な構成は、カメラを有するロボットビジョンシステムにおいて、カメラを用いて画像を撮像する撮像部と、画像からワークの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、特徴量と画像中の座標を対応付ける座標取得部と、座標から特徴量の中心位置を算出し、ワーク中心部の特徴量とワーク周辺部の特徴量に分類する領域設定部と、中心部の特徴量を用いて画像からワーク中心部の認識スコアを算出する中心部認識スコア算出部と、周辺部の特徴量を用いて画像からワーク周辺部の認識スコアを算出する周辺部認識スコア算出部と、2つの認識スコアを比較する比較部と、比較部における比較結果において、2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合には、認識スコアが高かった方の特徴量をワークの認識に用いる特徴量として選択する特徴量決定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
例えば、ワークの周囲が明るい場合には、画像から抽出されるワークの中心部の特徴量およびワークの周辺部の特徴量はともに明確であり、それらから算出される認識スコアもともに高くなる。ただしワークが光沢を持っていて光ってしまう場合や、背景との色の差が少ない場合などには、明るくても周辺部の特徴量が不明確になることもある。これに対し、例えばワークの周囲が暗い場合には、画像から抽出されるワークの周辺部の特徴量は大きく変化し(ぼやけた状態になり)、そこから算出される認識スコアは低くなる。
【0009】
そこで上記構成では、ワークの中心部の認識スコアとワークの周辺部の認識スコアとを比較し、それらの差が所定値以上であった場合、すなわち一方の認識スコアが低かった場合、認識スコアが高かった方の特徴量をワークの認識に用いる特徴量として選択する。これにより、ワークの周辺環境に変化が生じた場合であっても、その影響を除外してワークの特徴量を正確に算出し、ワークを安定して認識することが可能となる。
【0010】
上記特徴量決定部は、2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合には、認識スコアが高かった方の特徴量に、認識スコアが低かった方の特徴量に低い重み付けをして加えて、ワークの認識に用いる特徴量を決定するとよい。かかる構成によれば、2つの認識スコアを用いて、ワークの認識に用いる特徴量を決定する。したがって、ワークの認識に用いる特徴量の精度を高め、ワークをより確実に認識することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワークの周辺環境に変化が生じた場合であっても、ワークの特徴量を正確に抽出することが可能なロボットビジョンシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態にかかるロボットビジョンシステムを説明する概略図である。
【
図2】本実施形態のロボットビジョンシステムの機能ブロック図である。
【
図3】本実施形態のロボットビジョンシステムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかるロボットビジョンシステム100を説明する概略図である。本実施形態のロボットビジョンシステム100では、産業用機械としてロボットアーム102を例示している。
図1に示すように、本実施形態のロボットビジョンシステム100は、ロボットアーム102と、ワーク104を撮影するカメラ106を含んで構成される。ロボットアーム102は、ワーク104を把持し、かかるワーク104を所定の位置まで移動する。
【0015】
図2は本実施形態のロボットビジョンシステム100の機能ブロック図である。
図3は本実施形態のロボットビジョンシステム100の動作を説明するフローチャートである。
【0016】
図2に示すように、本実施形態のロボットビジョンシステム100は、カメラ106、ロボット制御装置110およびカメラ制御装置120を含んで構成される。ロボット制御装置110は、アーム移動部112を有する。アーム移動部112は、ロボットアーム102に対して所定の位置への移動を指示する。
【0017】
カメラ制御装置120は、撮像部122、特徴量抽出部124、座標取得部126、領域設定部128、中心部認識スコア算出部130、周辺部認識スコア算出部132、比較部134および特徴量決定部136を有する。
【0018】
図3に示すように、まずカメラ制御装置120は撮像部122を介してカメラ106によってワーク104を撮像する(S202)。ワーク104の画像を取得したら、特徴量算出部124は、撮像された画像からワーク104の特徴量を抽出する(S204)。特徴量としては、ワーク104のエッジ特徴量やコーナー特徴量等を例示することができる。
【0019】
次に座標取得部126は、特徴量抽出部124において抽出されたワーク104の特徴量と、それに用いられた画像中の座標とを対応付ける(S206)。そして領域設定部128は、座標から特徴量の中心位置(すなわちワークの中心位置)を算出し、ワーク中心部の特徴量とワーク周辺部の特徴量に分類する(S208)。なお、ワーク中心部とは、ワーク104の中央に位置する領域のことであり、ワーク周辺部とは、ワーク104の輪郭に相当する領域のことである。
【0020】
ワーク104の特徴量が分類されたら、中心部認識スコア算出部130は、中心部の特徴量を用いて画像からワーク中心部の認識スコアを算出し、周辺部認識スコア算出部132は、周辺部の特徴量を用いて画像からワーク周辺部の認識スコアを算出する(S210)。認識スコアを算出する方法としては、撮像画像から抽出されたワーク104の特徴量と、撮影画像の特徴量のマッチング処理(正規化相互相関等)を用いることができる。以下、中央部認識スコアと周辺部認識スコアを特に区別しない場合には、2つの認識スコアと称する。
【0021】
2つの認識スコアが算出されたら、比較部134はそれらを比較する(S212)。そして特徴量決定部136は、比較部134における比較結果において2つの認識スコアの差が所定値以上であるかを判断する(S214)。
【0022】
図4は領域と特徴量の選択を説明する図である。画像Pにおいて、ワーク104を中心に、中央部領域R1と周辺部領域R2が設定されている。2つの認識スコアの差が所定値未満であった場合(S214のNO)には、いずれの認識スコアも信頼性が高いと判断することができる。そこで特徴量決定部136は、
図4(a)に示すように、全ての特徴量(中心部および周辺部の両方の特徴量)をワーク104に認識に用いる特徴量として選択する(S216)。
【0023】
一方、比較部134における比較結果において、2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合(S214のYES)には、認識スコアが高かった方の特徴量をワーク104の認識に用いる特徴量として選択する(S218)。
【0024】
例えば中心部領域R1の認識スコアが高い場合には、
図4(b)に示すように、中心部の特徴量104aを、ワーク104の認識に用いる特徴量として選択する。また、周辺部領域R2の認識スコアが高い場合には、
図4(c)に示すように、周辺部の特徴量104bを、ワーク104の認識に用いる特徴量として選択する。
【0025】
すなわち本実施形態のロボットビジョンシステム100によれば、一方の認識スコアが低かった場合、認識スコアが高かった方の特徴量をワーク104の認識に用いる特徴量として選択する。これにより、ワーク104の周辺環境に変化が生じた場合であっても、その影響を除外してワーク104の特徴量を正確に算出し、ワーク104を安定して認識することが可能となる。
【0026】
なお、上記説明したS218では、「認識スコアが高かった方の特徴量をワーク104の認識に用いる特徴量として選択する」構成を例示した。ただし、これに限定するものではなく、2つの認識スコアの差が所定値以上であった場合に、認識スコアが高かった方の特徴量に、認識スコアが低かった方の特徴量に低い重み付けをして加えて、ワーク104の認識に用いる特徴量を決定することとしてもよい。かかる構成によれば、2つの認識スコアを用いて、ワーク104の認識に用いる特徴量を決定する。したがって、ワーク104の認識に用いる特徴量の精度を高め、ワーク104をより確実に認識することができる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、カメラを有するロボットビジョンシステムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…ロボットビジョンシステム、102…ロボットアーム、104…ワーク、104a…中心部の特徴量、104b…周辺部の特徴量、106…カメラ、110…ロボット制御装置、112…アーム移動部、120…カメラ制御装置、122…撮像部、124…特徴量抽出部、126…座標取得部、128…領域設定部、130…中心部認識スコア算出部、132…周辺部認識スコア算出部、134…比較部、136…特徴量決定部、R1…中心部領域、R2…周辺部領域、P…画像