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特開2022-164991冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータ
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  • 特開-冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータ 図1
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  • 特開-冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164991
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20221024BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F16H25/20 A
F16H25/20 E
F16H25/20 F
B64C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070136
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】福澤 充
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA41
3J062AB21
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA21
3J062CD02
3J062CD22
3J062CD35
3J062CD49
(57)【要約】
【課題】荷重経路を独立させて冗長系の信頼性を向上させるようにした冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】トッププレート第1領域130aで第1アクチュエータ部110を昇降可能に保持し、トッププレート第2領域130bで第2アクチュエータ部120を昇降可能に保持するトッププレート130と、第1アクチュエータ部110に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重をトッププレート第1領域130aに伝達する第1荷重経路Aと、第2アクチュエータ部120に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重をトッププレート第2領域130bに伝達する第2荷重経路Bとを備え、トッププレート第1領域130aとトッププレート第2領域130bの間に溝部135を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時に昇降する第1ロッドエンドベアリング(111)及び第2ロッドエンドベアリング(121)により被負荷体を駆動する第1アクチュエータ部(110)及び第2アクチュエータ部(120)と、
前記第1アクチュエータ部(110)及び前記第2アクチュエータ部(120)を駆動するモータ(140)と、
トッププレート第1領域(130a)により前記第1アクチュエータ部(110)を昇降可能に保持すると共に、トッププレート第2領域(130b)により前記第2アクチュエータ部(120)を昇降可能に保持するトッププレート(130)と、
前記第1アクチュエータ部(110)に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重を前記トッププレート第1領域(130a)に伝達する第1荷重経路(A)と、
前記第2アクチュエータ部(120)に加わる前記被負荷体からの入力負荷に応じた荷重を、前記トッププレート第2領域(130b)に伝達する第2荷重経路(B)と、
を備え、
前記トッププレート(130)には、前記トッププレート第1領域(130a)と前記トッププレート第2領域(130b)の間に溝部(135)が設けられている、
ことを特徴とする冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータ。
【請求項2】
第1ロッドエンドベアリング(111)を昇降駆動する第1スクリュージャッキ(113)と、
第2ロッドエンドベアリング(121)を昇降駆動する第2スクリュージャッキ(123)と、
前記第1スクリュージャッキ(113)の基部を保持する第1ハウジング(117)と、
前記第2スクリュージャッキ(123)の基部を保持する第2ハウジング(127)と、
前記第1スクリュージャッキ(113)の中間部と前記第1ハウジング(117)とを接続する第3ハウジング(118)と、
前記第1スクリュージャッキ(113)の中間部と前記トッププレート(130)とを接続する第5ハウジング(115)と、
前記第2スクリュージャッキ(123)の中間部と前記第2ハウジング(127)とを接続する第4ハウジング(128)と、
前記第2スクリュージャッキ(123)の中間部と前記トッププレート(130)とを接続する第6ハウジング(125)と、
を備え、
前記第1荷重経路(A)において、
前記第1スクリュージャッキ(113)の中間部における前記荷重が前記第5ハウジング(115)を介して前記トッププレート第1領域(130a)に伝達されると共に、
前記第1スクリュージャッキ(113)の基部における前記荷重が前記第1ハウジング(117)、前記第3ハウジング(118)、及び前記第5ハウジング(115)を介して前記トッププレート第1領域(130a)に伝達され、
前記第2荷重経路(B)において、
前記第2スクリュージャッキ(123)の中間部における前記荷重が前記第6ハウジング(125)を介して前記トッププレート第2領域(130b)に伝達されると共に、
前記第2スクリュージャッキ(123)の基部における前記荷重が前記第2ハウジング(127)、前記第4ハウジング(128)、及び前記第6ハウジング(125)を介して前記トッププレート第2領域(130b)に伝達される、
ことを特徴とする請求項1に記載の航空機用リニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータに関し、特に、独立した荷重経路により冗長系の信頼性を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられていた冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータとしては、特許文献1に開示されたリニアアクチュエータ100Aが知られている。
特許文献1に開示された航空機用のリニアアクチュエータ100Aは、図4に示すように、第1アクチュエータ部110と第2アクチュエータ部120とにより、信頼性を高め、冗長系伸縮型二重経路を有するように構成されている。
【0003】
ここで、リニアアクチュエータ100Aは、同時に昇降することにより被負荷体を駆動する第1ラムチューブ112及び第2ラムチューブ122と、回転せずに上下動のみ可能な第1ナット113aと回転する第1ねじ軸113bとにより第1ラムチューブ112を昇降駆動する第1スクリュージャッキ113と、回転せずに上下動のみ可能な第2ナット123aと回転する第2ねじ軸123bとにより第2ラムチューブ122を昇降駆動する第2スクリュージャッキ123と、変速部142とギヤ142tとギヤ113tとギヤ150tとギヤ123tとを介して第1ねじ軸113b及び第2ねじ軸123bを回転駆動するモータ140とを備えている。
【0004】
第1ラムチューブ112の上部には、図示しない被負荷体と係合するための第1ロッドエンドベアリング111が設けられている。第2ラムチューブ122の上部には、図示しない被負荷体と係合するための第2ロッドエンドベアリング121が設けられている。
【0005】
第1ラムチューブ112は、第1トッププレート130T1と第2トッププレート130T2とを積層した第1二重ハウジング119において、軸受131を介して昇降可能に、第1トッププレート130T1により保持されている。
第2ラムチューブ122は、第2トッププレート130T2と第1トッププレート130T1とを積層した第2二重ハウジング129において、軸受132を介して昇降可能に、第2トッププレート130T2により保持されている。
【0006】
第1スクリュージャッキ113の中間部は、第1軸受114及び第5ハウジング115を介して第1二重ハウジング119に接続されると共に、第3ハウジング118を介して第1ハウジング117に接続されている。
第1スクリュージャッキ113の基部は、第3軸受116を介して、第1ハウジング117により保持されると共に、第1ハウジング117、第3ハウジング118、第5ハウジング115を介して第1二重ハウジング119に接続されている。
【0007】
第2スクリュージャッキ123の中間部は、第2軸受124及び第6ハウジング125を介して第2二重ハウジング129に接続されると共に、第4ハウジング128を介して第2ハウジング127に接続されている。
第2スクリュージャッキ123の基部は、第4軸受126を介して、第2ハウジング127により保持されると共に、第2ハウジング127、第4ハウジング128、第6ハウジング125を介して第2二重ハウジング129に接続されている。
なお、第1二重ハウジング119と第2二重ハウジング129とには、取付フランジが設けられている。従って、リニアアクチュエータ100Aは、取付フランジを介して、航空機構造物に取り付けられている。
【0008】
以上の構成において、第1ラムチューブ112及び第2ラムチューブ122は、モータ140により駆動されて回転する第1ねじ軸113b及び第2ねじ軸123bと、回転せずに上下動のみ可能な第1ナット113a及び第2ナット123aとにより、矢印YA,YBに沿って各々同時に伸縮することで、冗長系を構成している。すなわち、第1アクチュエータ部110と第2アクチュエータ部120とにより、冗長系伸縮型二重経路を有するように構成されている。
【0009】
ここで、リニアアクチュエータ100Aにおける荷重経路について図5を用いて説明する。図5は、従来のリニアアクチュエータ100Aにおける荷重経路を示すロードパスダイアグラムである。
このロードパスダイアグラムにおいて、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、以下の第1荷重経路Aを経由して第1二重ハウジング119に伝達される。また、これと並行して、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、以下の第2荷重経路Bを経由して第2二重ハウジング129に伝達される。
【0010】
ここで、第1荷重経路Aにおいて、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、第1ロッドエンドベアリング111、第1ラムチューブ112、及び、第1ナット113aと第1ねじ軸113bによる第1スクリュージャッキ113に加わる。
第1スクリュージャッキ113の中間部における荷重は、第1ねじ軸113bから第1軸受114と第5ハウジング115とを介して、第1ラムチューブ112を保持する第1二重ハウジング119に伝達される。
また、第1スクリュージャッキ113の基部における荷重は、第1ねじ軸113bから第3軸受116、第1ハウジング117、第3ハウジング118、及び第5ハウジング115を介して、第1二重ハウジング119に伝達される。
【0011】
一方、第2荷重経路Bにおいて、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、第2ロッドエンドベアリング121、第2ラムチューブ122、及び、第2ナット123aと第2ねじ軸123bによる第2スクリュージャッキ123に加わる。
第2スクリュージャッキ123の中間部における荷重は、第2ねじ軸123bから第2軸受124と第6ハウジング125とを介して、第2ラムチューブ122を保持する第2二重ハウジング129に伝達される。
また、第2スクリュージャッキ123の基部における荷重は、第2ねじ軸123bから第4軸受126、第2ハウジング127、第4ハウジング128、及び第6ハウジング125を介して、第2二重ハウジング129に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2017-150585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のリニアアクチュエータ100Aは、第1トッププレート130T1と第2トッププレート130T2とを積層し、第1ラムチューブ112を保持する第1二重ハウジング119と、第2ラムチューブ122を保持する第2二重ハウジング129とにより、第1アクチュエータ部110と第2アクチュエータ部120とに加わる荷重経路を独立させて、信頼性の高い冗長系を構成していた。
しかし、このような第1トッププレート130T1と第2トッププレート130T2との二重構造により、リニアアクチュエータ100A全体の重量の増加、第1アクチュエータ部110と第2アクチュエータ部120の位置精度の悪化といった新たな課題を生じていた。
【0014】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、重量を増加させず、位置精度を保ちつつ、荷重経路を独立させて冗長系の信頼性を向上させるようにした冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータは、同時に昇降する第1ロッドエンドベアリング及び第2ロッドエンドベアリングにより被負荷体を駆動する第1アクチュエータ部及び第2アクチュエータ部と、第1アクチュエータ部及び第2アクチュエータ部を駆動するモータと、トッププレート第1領域により第1アクチュエータ部を昇降可能に保持すると共に、トッププレート第2領域により第2アクチュエータ部を昇降可能に保持するトッププレートと、第1アクチュエータ部に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重を、トッププレート第1領域に伝達する第1荷重経路と、第2アクチュエータ部に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重を、トッププレート第2領域に伝達する第2荷重経路と、を備え、トッププレートには、トッププレート第1領域とトッププレート第2領域の間に溝部が設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータにおいて、第1ロッドエンドベアリングを昇降駆動する第1スクリュージャッキと、第2ロッドエンドベアリングを昇降駆動する第2スクリュージャッキと、第1スクリュージャッキの基部を保持する第1ハウジングと、第2スクリュージャッキの基部を保持する第2ハウジングと、第1スクリュージャッキの中間部と第1ハウジングとを接続する第3ハウジングと、第1スクリュージャッキの中間部とトッププレートとを接続する第5ハウジングと、第2スクリュージャッキの中間部と第2ハウジングとを接続する第4ハウジングと、第2スクリュージャッキの中間部とトッププレートとを接続する第6ハウジングと、を備え、第1荷重経路において、第1スクリュージャッキの中間部における荷重が第5ハウジングを介してトッププレート第1領域に伝達されると共に、第1スクリュージャッキの基部における荷重が第1ハウジング、第3ハウジング、及び第5ハウジングを介してトッププレート第1領域に伝達され、第2荷重経路において、第2スクリュージャッキの中間部における荷重が第6ハウジングを介してトッププレート第2領域に伝達されると共に、第2スクリュージャッキの基部における荷重が第2ハウジング、第4ハウジング、及び第6ハウジングを介してトッププレート第2領域に伝達される。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、第1アクチュエータ部に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重を、トッププレート第1領域に伝達する第1荷重経路と、第2アクチュエータ部に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重を、トッププレート第2領域に伝達する第2荷重経路とを備え、トッププレート第1領域とトッププレート第2領域の間に溝部が設けられているため、第1アクチュエータ部と第2アクチュエータ部とに加わる荷重を伝達する荷重経路を独立させ、重量を増加させず、位置精度を保ちつつ、信頼性の高い冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1に係るリニアアクチュエータの全体構成を示す断面図である。
図2図1の要部の拡大断面図である。
図3】実施の形態1に係るリニアアクチュエータにおける荷重経路を示すロードパスダイアグラムである。
図4】従来のリニアアクチュエータの全体構成を示す断面図である。
図5】従来のリニアアクチュエータにおける荷重経路を示すロードパスダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態1に係る冗長系伸縮型二重経路を有する航空機用リニアアクチュエータ(以下、単に「リニアアクチュエータ」と言う)について、図面を用いて説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
【0020】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1に係るリニアアクチュエータ100について、図1図2を参照して説明する。図1は実施の形態1に係るリニアアクチュエータ100の全体構成を示す断面図であり、図2図1の要部の拡大断面図である。
【0021】
[リニアアクチュエータ100の構成]
リニアアクチュエータ100は、主に、第1アクチュエータ部110と、第2アクチュエータ部120と、トッププレート130と、モータ140とを備えている。第1アクチュエータ部110には、第1ロッドエンドベアリング111と、第1ラムチューブ112と、第1スクリュージャッキ113とが設けられている。第2アクチュエータ部120には、第2ロッドエンドベアリング121と、第2ラムチューブ122と、第2スクリュージャッキ123とが設けられている。
【0022】
ここで、第1ラムチューブ112と第2ラムチューブ122とは、円筒状に構成されており、モータ140により駆動されて、同時に等速で昇降する。第1ラムチューブ112及び第2ラムチューブ122には、先端に第1ロッドエンドベアリング111及び第2ロッドエンドベアリング121が設けられており、第1ロッドエンドベアリング111と第2ロッドエンドベアリング121とが同時に被負荷体を駆動する。
【0023】
第1スクリュージャッキ113は、回転せずに上下動のみ可能な第1ナット113aと、モータ140により駆動されて回転する第1ねじ軸113bとにより構成され、第1ラムチューブ112を昇降駆動する。
第1スクリュージャッキ113の中間部は、第1軸受114及び第5ハウジング115を介してトッププレート第1領域130aに接続されると共に、第3ハウジング118により第1ハウジング117に接続されている。
第1スクリュージャッキ113の基部は、第3軸受116を介して、第1ハウジング117により保持されると共に、第1ハウジング117、第3ハウジング118、第5ハウジング115を介してトッププレート第1領域130aに接続されている。
【0024】
第2スクリュージャッキ123は、回転せずに上下動のみ可能な第2ナット123aと、モータ140により駆動されて回転する第2ねじ軸123bとにより、第2ラムチューブ122を昇降駆動する。
第2スクリュージャッキ123の中間部は、第2軸受124及び第6ハウジング125を介してトッププレート第2領域130bに接続されると共に、第4ハウジング128により第2ハウジング127に接続されている。
第2スクリュージャッキ123の基部は、第4軸受126を介して、第2ハウジング127により保持されると共に、第2ハウジング127、第4ハウジング128、第6ハウジング125を介してトッププレート第2領域130bに接続されている。
【0025】
トッププレート130は、1枚の板状部材で構成されており、トッププレート第1領域130aにより第1ラムチューブ112を保持し、トッププレート第2領域130bにより第2ラムチューブ122を保持する。ここで、トッププレート第1領域130aは、軸受131を介して第1ラムチューブ112を昇降可能に保持する。また、トッププレート第2領域130bは、軸受132を介して第2ラムチューブ122を昇降可能に保持する。
トッププレート130には、トッププレート第1領域130aとトッププレート第2領域130bの間に、溝部135が設けられている。トッププレート130には、リニアアクチュエータ100を航空機構造物に取り付けるための取付フランジが設けられている。
トッププレート第1領域130aには、後述する第1荷重経路Aを経由して、第1スクリュージャッキ113に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重が伝達される。トッププレート第2領域130bには、後述する第2荷重経路Bを経由して、第2スクリュージャッキ123に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重が伝達される。
【0026】
モータ140は、変速部142と、ギヤ142tと、ギヤ113tと、ギヤ150tと、ギヤ123tとを介して、第1ねじ軸113b及び第2ねじ軸123bを等速回転駆動する。この結果、モータ140の回転によって、第1ねじ軸113bと第2ねじ軸123bとは等速回転するため、第1ラムチューブ112と第2ラムチューブ122とは等速で同時に昇降する。
エンコーダ150は、ギヤ150tの回転により、第1ねじ軸113b及び第2ねじ軸123bの回転速度を検知する。
【0027】
[リニアアクチュエータ100の特徴構成]
以上の構成において、第1ラムチューブ112及び第2ラムチューブ122は、第1スクリュージャッキ113と第2スクリュージャッキ123とにより駆動され、矢印YA,YBに沿って各々同時に伸縮する。すなわち、第1ラムチューブ112及び第2ラムチューブ122は、モータ140により駆動されて等速回転する第1ねじ軸113b及び第2ねじ軸123bと、回転せずに上下動のみ可能な第1ナット113a及び第2ナット123aとにより、矢印YA,YBに沿って各々同時に伸縮することで、冗長系伸縮型二重経路を構成している。
【0028】
溝部135は、図2に示すように、第1ラムチューブ112を昇降可能に保持するトッププレート第1領域130aと、第2ラムチューブ122を昇降可能に保持するトッププレート第2領域130bとの間に設けられている。ここで、溝部135は、図2の紙面垂直方向に延伸して設けられている。
なお、トッププレート130の一方の面に設けられた溝135aとトッププレート130の他方の面に設けられた溝135bの例を示しているが、いずれか一方のみでもよい。また、溝部135の断面形状は、図示した形状に限定されるものではない。そして、図2の紙面垂直方向の溝部135の延伸は、直線状だけでなく、曲線状でもよいし、蛇行していてもよい。
【0029】
[リニアアクチュエータ100における荷重経路]
ここで、リニアアクチュエータ100における荷重経路について図3を用いて詳細に説明する。図3は、実施の形態1に係るリニアアクチュエータ100における荷重経路を示すロードパスダイアグラムである。
【0030】
図3のロードパスダイアグラムにおいて、第1アクチュエータ部110に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、第1荷重経路Aを経由してトッププレート第1領域130aに伝達され、第2アクチュエータ部120に加わる被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、第2荷重経路Bを経由してトッププレート第2領域130bに伝達される。
【0031】
より詳しく説明すると、第1荷重経路Aにおいて、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、第1ロッドエンドベアリング111、第1ラムチューブ112、及び、第1ナット113aと第1ねじ軸113bによる第1スクリュージャッキ113に加わる。
そして、第1スクリュージャッキ113の中間部における荷重は、第1ねじ軸113b、第1軸受114、及び第5ハウジング115を介して、トッププレート第1領域130aに伝達される。
更に、第1スクリュージャッキ113の基部における荷重は、第1ねじ軸113b、第3軸受116、第1ハウジング117、第3ハウジング118、及び第5ハウジング115を介して、トッププレート第1領域130aに伝達される。
【0032】
以上の第1荷重経路Aにおける荷重伝達と並行して、第2荷重経路Bにおいて、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重は、第2ロッドエンドベアリング121、第2ラムチューブ122、及び、第2ナット123aと第2ねじ軸123bによる第2スクリュージャッキ123に加わる。
そして、第2スクリュージャッキ123の中間部における荷重は、第2ねじ軸123b、第2軸受124、及び第6ハウジング125を介して、トッププレート第2領域130bに伝達される。
更に、第2スクリュージャッキ123の基部における荷重は、第2ねじ軸123b、第4軸受126、第2ハウジング127、第4ハウジング128、及び第6ハウジング125を介して、トッププレート第2領域130bに伝達される。
【0033】
以上のリニアアクチュエータ100において、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重により、第1荷重経路Aと第2荷重経路Bとのいずれか一方に、機械的な損傷を生じることがある。このような損傷が生じた場合、溝部135はトッププレート130を2分割するメカニカルヒューズ、すなわち亀裂進展経路として作用し、第1荷重経路Aと第2荷重経路Bとを独立した状態に保つことができる。
【0034】
この結果、損傷は、第1荷重経路Aと第2荷重経路Bとのいずれか一方から溝部135までの領域に限定され、溝部135から先の他方の経路まで及ぶことがない。すなわち、亀裂進展経路としての溝部135により、第1アクチュエータ部110と第2アクチュエータ部120とのいずれか他方は保護され、冗長系として確保することができる。
【0035】
そして、このような冗長系を実現する際に、溝部135を有する1枚のトッププレート130により、第1アクチュエータ部110の第1荷重経路Aと第2アクチュエータ部120の第2荷重経路Bとを独立させている。このため、トッププレートに2枚板を使用する従来構成(図4参照)と比較した場合、重量を増加させず、加工工数及び組み立て工数を削減し、位置精度を保ちつつ、信頼性の高い冗長系伸縮型二重経路を有するリニアアクチュエータ100を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
実施の形態1のリニアアクチュエータ100は、被負荷体からの入力負荷に応じた荷重によって第1荷重経路Aと第2荷重経路Bとのいずれか一方に機械的な損傷を生じたとしても、溝部135により亀裂進展経路をコントロールし、第1荷重経路Aと第2荷重経路Bとのいずれか他方を保護し、冗長系として確保することができる。このため、第1アクチュエータ部110と第2アクチュエータ部120のいずれかが機能を維持できるため、航空機用の高信頼性リニアアクチュエータとして好適である。
【符号の説明】
【0037】
100 リニアアクチュエータ、110 第1アクチュエータ部、111 第1ロッドエンドベアリング、112 第1ラムチューブ、113 第1スクリュージャッキ、113a 第1ナット、113b 第1ねじ軸、113t ギヤ、114 第1軸受、115 第5ハウジング、116 第3軸受、117 第1ハウジング、118 第3ハウジング、120 第2アクチュエータ部、121 第2ロッドエンドベアリング、122 第2ラムチューブ、123 第2スクリュージャッキ、123a 第2ナット、123b 第2ねじ軸、123t ギヤ、124 第2軸受、125 第6ハウジング、126 第4軸受、127 第2ハウジング、128 第4ハウジング、130 トッププレート、130a トッププレート第1領域、130b トッププレート第2領域、131 軸受、135 溝部、135a,135b 溝、140 モータ、142 変速部、142t ギヤ、150 エンコーダ、150t ギヤ、A 第1荷重経路、B 第2荷重経路。
図1
図2
図3
図4
図5