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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164996
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】調理用鉄板
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A47J37/06 316
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070141
(22)【出願日】2021-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日 令和3年1月5日 ウェブサイトのアドレス https://readyfor.jp/projects/hagane/preview?preview_token=767a54016e37376fb03719b74396933157715c43 (2)ウェブサイトの掲載日 令和3年2月1日 ウェブサイトのアドレス https://readyfor.jp/、https://readyfor.jp/pp/mirakana、https://readyfor.jp/projects/hagane等 (3)ウェブサイトの掲載日 令和3年2月2日 ウェブサイトのアドレス https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1253451 (4)発行日 令和3年3月4日 刊行物名 福井新聞 令和3年3月4日付朝刊第6面 (5)ウェブサイトの掲載日 令和3年3月4日 ウェブサイトのアドレス https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1271225 (6)ウェブサイトの掲載日 令和3年3月8日 ウェブサイトのアドレス https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1273897 (7)ウェブサイトの掲載日 令和3年1月25日等、ウェブサイトのアドレス https://www.instagram.com/taiseiseikou (8)ウェブサイトの掲載日 令和3年2月11日、ウェブサイトのアドレス https://www.instagram.com/p/CLJkSWMBcLW/?igshid=stg9q13xg2wd (9)ウェブサイトの掲載日 令和3年1月7日等、ウェブサイトノのアドレス https://www.youtube.com/channel/UCfnjEr1XuwpambPVp8d977A等 (10)展示日 令和3年2月6日~3月17日 展示場所 ガラガラ山キャンプ場(福井県福井市赤坂町66-84) (11)展示日 令和3年2月9日~3月17日 展示場所 リカーワールド華 越前店(福井県越前市片屋町61-21-2) (12)試験日 令和3年2月27日 試験場所 吉田焼肉店(福井県あわら市春宮2丁目10-30)
(71)【出願人】
【識別番号】521133056
【氏名又は名称】大成精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124718
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 建
(74)【代理人】
【識別番号】100136216
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】辻澤 幸夫
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA03
4B040AA08
4B040AC03
4B040AD04
4B040AE01
4B040AE07
4B040EB03
4B040GD07
(57)【要約】
【課題】本発明は、鉄板が傾いても貯溜溝に溜った脂等が低方向に一様に流れ出すのを防ぎ、載置した五徳に固定されてずれにくいと共に、容易に熱した鉄板の位置を調整可能な調理用鉄板を提供する。
【解決手段】本発明に係る調理用鉄板は、それぞれ同形の縁部により画された表面と裏面と、この2面の縁部を厚さ方向に接続する側面とを有する調理用鉄板において、裏面の中心部から放射状に複数の設置溝を刻設した調理用鉄板である。本発明の調理用鉄板は、表面の縁部に沿って貯溜溝を刻設するのが好適であり、この貯溜溝から縁部に達するように、一又は複数の排出溝を刻設してもよい。また、本発明に係る調理用鉄板セットは、先端と接続部を有する調理用平坦部および該接続部に接続する持ち手から成る調理用のヘラと、該調理用のヘラの先端を嵌合可能な嵌合溝を前記側面に刻設した前記調理用鉄板と、をセットにしてもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ同形の縁部により画された表面と裏面と、この2面の縁部を厚さ方向に接続する側面とを有する調理用鉄板において、
裏面の中心部から放射状に複数の設置溝を刻設した調理用鉄板。
【請求項2】
前記複数の設置溝が交わる前記中心部に、中央穴を刻設した、請求項1に記載の調理用鉄板。
【請求項3】
同形の表面と裏面の縁部が矩形又は楕円形である、請求項1に記載の調理用鉄板。
【請求項4】
前記複数の設置溝を、60度間隔で刻設した、請求項1に記載の調理用鉄板。
【請求項5】
前記複数の設置溝を、45度間隔で刻設した、請求項1に記載の調理用鉄板。
【請求項6】
前記複数の設置溝を、30度間隔で刻設した、請求項1に記載の調理用鉄板。
【請求項7】
同形の表面と裏面の縁部が長方形である請求項3に記載の調理用鉄板であって、
裏面の中心部から長方形の長手方向に刻設した設置溝を0度の設置溝として、
該0度の設置溝から反時計回りに、
45度間隔で刻設した設置溝と30度間隔で刻設した設置溝とを重ね合わせた、合計16本の設置溝を、裏面の中心部から放射状に刻設した調理用鉄板。
【請求項8】
前記側面に嵌合溝を刻設した請求項1に記載の調理用鉄板であって、
先端と接続部を有する調理用平坦部および該接続部に接続する持ち手から成る調理用のヘラの先端を、該嵌合溝に嵌合可能な調理用鉄板。
【請求項9】
表面の縁部に沿って貯溜溝を刻設した、請求項1に記載の調理用鉄板。
【請求項10】
前記貯溜溝から縁部に達するように、一又は複数の排出溝を刻設した、請求項9に記載の調理用鉄板。
【請求項11】
先端と接続部を有する調理用平坦部および該接続部に接続する持ち手から成る調理用のヘラと、該調理用のヘラの先端を嵌合可能な嵌合溝を前記側面に刻設した請求項11に記載の調理用鉄板と、をセットにした調理用鉄板セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用鉄板に関する。
【背景技術】
【0002】
焼肉や焼きそば、お好み焼きなどの調理に用いる調理用鉄板は、ガスコンロなどの熱源上に設置された五徳(図10参照)などの上にその裏面を載置して、表面に脂等を塗布した後、加熱しながら食材を載せ、箸やヘラなどを用いてこれを調理することができる。しかし、調理用鉄板の表面が平坦であると、表面に塗布した脂や、肉・野菜などの食材から発生した材料汁等が鉄板の縁部から流れ落ち、熱源やその周辺を汚すという問題があった。
【0003】
そのため、特許文献1は、「平板状の鉄板の周囲表面に機械加工によって脂たれ防止の
溝を形成し、これによって該溝の外周囲部に補強枠部を形成したことを特徴とする調理用鉄板」を提供し、調理中に発生した脂が周縁部からたれ落ちることを防止することができる。
【0004】
また、特許文献2は、「任意形状の調理用焼き板の表裏両面における周縁部に材料汁、油等の貯溜溝ならびにそれらの流出防止突起をそれぞれ形成したことを特徴とする調理用鉄板焼き板」を提供する。特許文献2に係る調理用鉄板焼き板は、貯溜溝に材料汁、油等を流れ落として、これらが縁部から流出するのを防ぐことができる。あるいは、貯溜溝と表裏一体に形成された流出防止突起により、材料汁、油等が縁部から流れ落ちるのを防ぐことができる。
【0005】
近年では、野外キャンプ等の流行もあり、図9のような携帯用バーベキューセットなども市販されている。同じく図9に示す携帯用コンロの五徳上に小サイズの鉄板を載置し、食材を載せて、ヘラなどを用いて野外でも調理することができる。
【0006】
ところが、上述のように、現在では調理用鉄板の表面には脂たれ防止の貯溜溝が設けられているのが一般的であるものの、裏面は平板であるため、ヘラなどで食材を調理する際に鉄板が、載置した五徳からずれたり脱落するなどの不都合があった。また、加熱された調理用鉄板は直に触れられないため、位置を調整するのに不便であった。
【0007】
さらに、野外で地面上に携帯用コンロを設置する際は、載置した調理用鉄板が傾き、貯溜溝に溜った脂等が低方向の鉄板上や鉄板周囲に簡単に流れ出してしまうという不都合もあった。
【0008】
【特許文献1】実開昭51-117757号公報
【特許文献2】実開昭50-116774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み開発されたもので、鉄板が傾いても貯溜溝に溜った脂等が低方向に一様に流れ出すのを防ぎ、載置した五徳に固定されてずれにくいと共に、容易に熱した鉄板の位置を調整可能な調理用鉄板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る調理用鉄板は、それぞれ同形の縁部により画された表面と裏面と、この2面の縁部を厚さ方向に接続する側面とを有する調理用鉄板において、裏面の中心部から放射状に複数の設置溝を刻設した。
【0011】
本発明に係る調理用鉄板は、前記複数の設置溝が交わる前記中心部に、中央穴を刻設してもよい。
【0012】
本発明に係る調理用鉄板は、同形の表面と裏面の縁部が矩形又は楕円形であってよい。
【0013】
本発明に係る調理用鉄板は、前記複数の設置溝を60度間隔で刻設してもよい。
【0014】
本発明に係る調理用鉄板は、前記複数の設置溝を45度間隔で刻設してもよい。
【0015】
本発明に係る調理用鉄板は、前記複数の設置溝を30度間隔で刻設してもよい。
【0016】
本発明に係る調理用鉄板は、前記複数の設置溝は、同形の表面と裏面の縁部が長方形である上記調理用鉄板であって、
裏面の中心部から長方形の長手方向に刻設した設置溝を0度の設置溝として、該0度の設置溝から反時計回りに、45度間隔で刻設した設置溝と30度間隔で刻設した設置溝とを重ね合わせた、合計16本の設置溝を、裏面の中心部から放射状に刻設してもよい。
【0017】
本発明に係る調理用鉄板は、前記側面に嵌合溝を刻設した前記調理用鉄板であって、先端と接続部を有する調理用平坦部および該接続部に接続する持ち手から成る調理用のヘラの先端を、該嵌合溝に嵌合可能である。
【0018】
本発明に係る調理用鉄板は、表面の縁部に沿って貯溜溝を刻設するのが好適である。
【0019】
本発明に係る調理用鉄板は、表面の縁部に沿って刻設した前記貯溜溝から縁部に達するように、一又は複数の排出溝を刻設してもよい。
【0020】
本発明に係る調理用鉄板セットは、先端と接続部を有する調理用平坦部および該接続部に接続する持ち手から成る調理用のヘラと、該調理用のヘラの先端を嵌合可能な嵌合溝を前記側面に刻設した前記調理用鉄板と、をセットにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る調理用鉄板は、裏面の中心部から放射状に複数の設置溝を刻設したので、コンロやバーナーなどの熱源に中心部を合わせ、熱源の上方に設置された五徳に設置溝を嵌合させることができる。そのため、本発明の調理用鉄板は、容易に五徳上の最適の位置に載置することができ、熱源からの熱供給を、調理用鉄板の中央部から安定して受けることができる。
【0022】
このような裏面に放射状の設置溝を刻設した本発明の調理用鉄板は、特に、野外で地面などに熱源の携帯用コンロを載置する場合など、熱源及びその上に設置する五徳を水平に維持するのが困難な場合に便利である。すなわち、五徳が傾いても、五徳に設置溝を嵌合させるため、これに載せた本発明の調理用鉄板はずれにくく、五徳からの脱落を防ぐことができる。
【0023】
また、本発明に係る調理用鉄板は、表面の貯溜溝から縁部に達するように排出溝を刻設したので、上記のように鉄板が傾いても貯溜溝に溜った脂等を低位置に配置した排出溝から流出させることができ、脂等が四方に流れ出すのを防ぐことができる。排出溝の直下に置いた容器に脂等の排液を収集することができるので、本発明の調理用鉄板の周囲を汚すことなく使用することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る調理用鉄板は、側面に嵌合溝を刻設したので、この嵌合溝に調理用のヘラの先端を嵌合させ、熱した鉄板の位置を容易に調整することができる。正面と裏面、又は左右の側面の対称な位置に、対になるように嵌合溝を刻設すれば、対になった嵌合溝の夫々に調理用のヘラの先端を嵌合させて、本発明の調理用鉄板が高温の場合でも、ヘラの持ち手を持って容易にこれを持ち上げ、移動させることができる。
【0025】
本発明に係る調理用鉄板セットは、上記のような側面に嵌合溝を刻設した本発明の調理用鉄板と、この嵌合溝に先端を嵌合させることができる専用の調理用のヘラを具えるため、上述したように高温になった本発明の調理用鉄板を容易に持ち上げ、移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】設置溝を60度間隔で刻設した、本発明に係る調理用鉄板の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図。
図2】設置溝を45度間隔で刻設した、本発明に係る調理用鉄板の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図。
図3】設置溝を30度間隔で刻設した、本発明に係る調理用鉄板の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図。
図4】30度間隔と45度間隔の設置溝を組み合わせた、本発明に係る調理用鉄板の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図。
図5】実施例に係る円形の調理用鉄板の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図。
図6】実施例に係る正方形の調理用鉄板の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図。
図7】コンロに設置した五徳と、五徳に載置した実施例に係る調理用鉄板の裏面斜視図。
図8】本発明に係る調理用鉄板の(a)平面図、(b)裏面図、および、(c)当該調理用鉄板の側面に嵌合可能なヘラの平面図。
図9】携帯用バーベキューセットの斜視図。
図10】五徳の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明に係る調理用鉄板の実施形態及び実施例について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。

(1)調理用鉄板
【0028】
本発明に係る調理用鉄板10は、図1(a)~(c)に示すように、それぞれ同形の縁部10eにより画された表面10sと裏面10rと、この2面の縁部10eを厚さ方向に接続する側面10tとを有し、表面10sの縁部10eに沿って貯溜溝14を刻設した調理用鉄板10である。
(1-1)設置溝
【0029】
本発明に係る調理用鉄板10は、図1(c)のように、裏面10rの中心部10rcから放射状に複数の設置溝12を刻設したことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る調理用鉄板10は、図9に示すようなコンロ112に載せて、その表面10sに脂等を塗布した後、加熱しながら食材を載せ、ヘラ120やピンセット122などを用いてこれを調理し、焼肉や焼きそば、お好み焼きなどを調理することができる。本発明の調理用鉄板10は、コンロ112などの熱源上に設置された五徳110(図9図10参照)などの上にその裏面10rを載置する際に、裏面10rに放射状に刻設した複数の設置溝12を五徳110に嵌合させることができるため、容易に五徳110上の最適の位置に載置でき、調理用鉄板10の中央部に安定して熱源からの熱を受けることができる。
【0031】
また、野外で地面などに熱源の携帯用コンロ112を載置する場合など、熱源及びその上に設置する五徳110を水平に維持するのが困難な場合は、本発明の調理用鉄板10は特に有用である。すなわち、載置する五徳110が傾いても、五徳110に設置溝12を嵌合させることができるので、五徳110に載せた本発明の調理用鉄板10はずれにくく、五徳110から脱落するのを防ぐことができる。
【0032】
図1(c)に示す調理用鉄板10は、複数の設置溝12を60度間隔で刻設しているが、隣接する設置溝12間の角度は特に限定されず、設置溝12の深さと幅も特に限定されない。また、調理用鉄板10の大きさ、厚さは特に限定されない。また、調理用鉄板10を形成する材料は熱伝導性が高い鋼鉄が好適であるが、その他の材料で形成してもよく、特に限定されない。
【実施例0033】
本実施例に係る調理用鉄板10において、複数の設置溝12は、図2(c)のように45度間隔で刻設してもよい。あるいは、図3(c)のように30度間隔で刻設してもよく、図示しないが90度間隔で刻設してもよい。または、隣接する設置溝12間の角度が一定でなくてもよい。
【0034】
図7は、携帯用コンロ112に設置した五徳110と、五徳110に載置した本実施例に係る調理用鉄板10の裏面斜視図である。このように、本実施例に係る調理用鉄板10は、五徳110に設置溝12を嵌合させて用いることができるので、五徳110上に安定して載置することができ、安心して調理を行うことができる。
【実施例0035】
本実施例に係る長方形状の調理用鉄板10において、複数の設置溝12は、図4(c)のように、裏面の中心部から長方形の長手方向に刻設した設置溝を0度の設置溝として、この0度の設置溝から反時計回りに、45度間隔で刻設した設置溝と30度間隔で刻設した設置溝とを重ね合わせた、合計16本の設置溝を、裏面の中心部から放射状に刻設してもよい。すなわち、本実施例の調理用鉄板10は、0度の設置溝から反時計回りに、30度、45度、60度、90度、120度、135度、150度、180度、210度、225度、240度、270度、300度、315度、330度の角度に、それぞれ設置溝を刻設している。
【0036】
このような図4(c)に示す本実施例の調理用鉄板10は、図9に示すような3本の手から成る五徳110、図10のような6本の手から成る五徳110に対応できる他、90度間隔の4本の手から成る五徳など(図示せず)にも対応することができる。

(1-2)中央穴
【0037】
また、本発明に係る調理用鉄板10は、図1(c)~図4(c)に示すように、複数の設置溝12が交わる中心部10rcに、中央穴13を刻設するのが好適である。図1(c)~図4(c)において、中央穴13は中心部10rcを中心とする円であるが、中央穴13の形状、深さや面積は特に限定されない。
【0038】
上述のように、裏面10rに放射状に刻設した複数の設置溝12を、コンロ112などの熱源上に設置された五徳110(図9図10参照)に嵌合させて載置すると、本発明に係る調理用鉄板10の中央穴13は、図7のように、コンロ112のバーナーなどの熱源の直上に位置することになる。そのため、本発明の調理用鉄板10は、厚みが薄くなった中央穴13から、熱源からの熱を効率的に受けることができる。

(1-3)排出溝
【0039】
本発明に係る調理用鉄板10は、図1(a)~図4(a)に示すように、表面10sの縁部10eに沿って貯溜溝14を刻設するのが好適である。貯溜溝14に材料汁、脂等が流れ込んで、これらの排液が縁部10eから流出するのを防ぐことができる。
【0040】
しかし、調理用鉄板10に載せた食材からの材料汁や脂等が多量の場合、貯溜溝14に溜った材料汁等を適宜拭き取って掃除する作業が必要になる。また、野外で地面上に携帯用コンロ112を設置する際は、載置した調理用鉄板が傾き、貯溜溝14に溜った材料汁、脂等が低方向に位置する鉄板上や鉄板周囲に簡単に流れ出してしまうという不都合もある。
【0041】
そのため、本発明に係る調理用鉄板10は、表面10sの縁部10eに沿って刻設した貯溜溝14から縁部10eに達するように、一又は複数の排出溝15を刻設するのが好適である。この排出溝15を、傾いた調理用鉄板10の低い方向に位置させれば、貯溜溝14に流入する材料汁、脂等を低位置の排出溝15から流出させることができ、脂等が四方に流れ出すのを防ぐことができる。そして、排出溝15の直下に容器を置けば、これに脂等の排液を収集することができるので、調理用鉄板10の周囲を汚すことなくこれを使用することができる。なお、貯溜溝14及び排出溝15の深さ、幅は特に限定されない。

(1-4)嵌合溝
【0042】
本発明に係る調理用鉄板10は、図1図4の各平面図(a)及び側面図(b)に示すように、側面10tに嵌合溝16を刻設すると便利である。嵌合溝16は、図1図4の各平面図(a)には点線で示しているが、各裏面図(c)では省略している。
【0043】
鉄板焼きに欠かせない焼きそばやお好み焼きを調理する調理用のヘラ120(図8参照)は、先端と接続部を有する調理用平坦部および接続部に接続する持ち手から成るため、その先端を嵌合できる嵌合溝16を形成するのが好適である。従って、本発明の調理用鉄板10に設けた嵌合溝16に、その先端を嵌合可能な、専用の調理用のヘラ20を準備するのが望ましい。
【0044】
側面10tに嵌合溝16を刻設した本発明の調理用鉄板10は、この嵌合溝16に調理用のヘラ20の先端を嵌合させ、熱した鉄板10の位置がずれても容易にその位置を調整することができる。正面と裏面、又は左右の側面10tの対称な位置に、対になるように嵌合溝16を刻設すれば、対になった嵌合溝16の夫々に調理用のヘラ20の先端を嵌合させて、調理用鉄板10が高温の場合でも、ヘラ20の持ち手を持って容易にこれを持ち上げ、移動させることができる。

(1-5)実施例
【0045】
本発明に係る調理用鉄板10は、主として鋼鉄をワイヤー放電加工機などの加工機で加工することにより形成することができるが、その材料は鋼鉄に限定されず、適宜変更することができる。その形状も矩形、楕円形などが好適であるが、特に限定されない。
【0046】
また、裏面10rの中心部10rcから放射状に刻設する複数の設置溝12は、隣接する設置溝12同士のなす角度が上記のように任意である他、その長さも特に限定されず、図1(c)~図4(c)に示すように必ずしも縁部10eに達する必要はない。更に、貯溜溝14から縁部10eに達するように刻設する排出溝15の位置及び本数も、特に限定されない。
【実施例0047】
本実施例に係る調理用鉄板10は、図5(a)~(c)に示すように、同形の表面10sと裏面10rの縁部10eが円形である。貯溜溝14が円周状に、表面10sの縁部10eに沿って刻設され、排出溝15が貯溜溝14から縁部10eに達するように設けられている(図5(a)参照)。
【0048】
また、円の中心に対して対称な2組の嵌合溝16の対が、それぞれの対を結ぶ直線が直交するように側面10tに設けられている(図5(a)、(b)参照)。さらに、裏面10rには、中央穴13で交差する設置溝12が60度間隔で刻設され、裏面10rの縁部10eに達している。
【実施例0049】
本実施例に係る調理用鉄板10は、図6(a)~(c)に示すように、同形の表面10sと裏面10rの縁部10eが正方形である。貯溜溝14が、表面10sの縁部10eに沿って方形状に刻設され、正方形の縁部10eの角部の一角に、排出溝15が貯溜溝14から縁部10eに達するように設けられている(図6(a)参照)。
【0050】
また、側面10tには、正方形の中心に対して対称な位置に、1組の嵌合溝16が設けられている(図6(a)、(b)参照)。さらに、裏面10rには、中央穴13で交差する設置溝12が、正方形の対角線上に90度間隔で刻設されているが、裏面10rの縁部10eには達していない。設置溝12の長さは、標準的な五徳の手が嵌合すれば十分であり、特に縁部10eに達する必要はない。

2.調理用鉄板の製造方法
【0051】
本発明に係る調理用鉄板10の製造方法は、
(1)鉄板を準備するステップと、
(2) 前記鉄板を、それぞれ同形の縁部10eにより画された表面10sと裏面10rと、この2面の縁部10eを厚さ方向に接続する側面10tとを有するように型出し加工するステップと、
(3)裏面10rの中心部10rcから放射状に複数の設置溝12を刻設するステップと、
(4)裏面10rの複数の設置溝12が交わる中心部10rcに、中央穴13を刻設するステップと、
(5)表面10sの縁部10eに沿って貯溜溝14を刻設するステップと、
(6)貯溜溝14から縁部10eに達するように、一又は複数の排出溝15を刻設するステップと、
(7)側面10tに嵌合溝16を刻設するステップと、
を含む。
【0052】
ステップ(1)では、材料メーカより定尺サイズを購入する。
【0053】
また、ステップ(2)において、調理用鉄板10の全体形状に関しては、せん断・溶断・切削といった形状出しが可能な加工機により成型加工する。例えば、ワイヤー放電加工機、レーザー加工機・切断機・せん断機・フライス盤などの市販の加工機を使用して、ステップ(1)で準備した鉄板を型出し加する。
【0054】
また、ステップ(3)、(4)において、裏面10rの設置溝12および中央穴13の刻設は、例えばボールエンドミル、フラットエンドミルなどの公知の加工具により行う。加工具のサイズは適宜選択し(例えば直径φ10で先端が5Rなど)、刻設の深さも適宜選択すればよい(例えば深さは1.2mmなど)。
【0055】
また、ステップ(5)~(6)において、表面10sの貯溜溝14および排出溝15の刻設は、裏面10rと同様、例えばボールエンドミルなどにより行い、加工具のサイズも適宜選択し(例えば直径φ2.0で先端が1Rなど)、刻設の深さも適宜決定する。
【0056】
ステップ(7)において、嵌合溝16の刻設は、例えば以下のように行う。
(7-1)センタードリルで下穴を開口する。
(7-2)一点のみドリル(例えば直径φ2.0)で溝深さまで彫り込む。
(7-3)このドリル穴を基点に、例えばφ2.0フラットエンドミルによる溝加工を行う。
【0057】
以上の工程により、本発明に係る調理用鉄板10を製造することができる。

3.調理用鉄板セット
【0058】
本発明に係る調理用鉄板セット1は、側面10tに嵌合溝16を刻設した本発明の調理用鉄板10と、この嵌合溝16に先端を嵌合させることができる専用の調理用のヘラ20とを具える。すなわち、本発明の調理用鉄板セット1は、図8のように、先端と接続部を有する調理用平坦部および接続部に接続する持ち手から成る調理用のヘラ20と、この調理用のヘラ20の先端を嵌合可能な嵌合溝16を側面10tに刻設した調理用鉄板10とを含む。
【0059】
本発明に係る調理用鉄板セット1は、上述したように、調理用鉄板10の左右又は前後の側面10tに対になって刻設された嵌合溝16の夫々に、2本の調理用のヘラ20の先端を嵌合させることができるので、調理用鉄板10が高温の場合でも、ヘラ20の持ち手を持って容易にこれを持ち上げ、移動させることができる。本発明の調理用鉄板セット1は、調理用鉄板10及び複数の調理用のヘラ20以外にも、図9のような五徳110、携帯用コンロ112、ピンセット122などをセットにすることもできる。
【0060】
以上、本発明に係る調理用鉄板および調理用鉄板セットについて説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではない。本発明に係る調理用鉄板を構成する材料、材質、種類等は特に限定されず、その寸法、厚さも適宜変更可能である。
【0061】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る調理用鉄板は、バーベキューなどで焼肉や焼きそば、お好み焼きなどを調理するのに利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:本発明に係る調理用鉄板セット
10:本発明に係る調理用鉄板
10s:表面
10r:裏面
10t:側面
10e:縁部
10rc:裏面の中心部
12:設置溝
13:中央穴
14:貯溜溝
15:排出溝
16:嵌合溝
20:本発明に係るヘラ
100:従来の調理用鉄板
110:五徳
112:コンロ
120: ヘラ
122:ピンセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10