(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164998
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】回転制限装置およびステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070143
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植本 隆明
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CB31
3D333CB44
3D333CC03
3D333CC14
3D333CC30
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD06
3D333CD08
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD21
3D333CD22
3D333CD23
3D333CD25
3D333CD26
3D333CD28
3D333CD37
3D333CD38
3D333CD45
3D333CD47
3D333CE04
3D333CE16
3D333CE17
3D333CE52
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくできる回転制限装置を提供する。
【解決手段】外周面に螺旋溝31を有する回転軸28と、回転軸28の外周面に沿って湾曲し、かつ、回転軸28の外周面と対向する凹面部55、および、凹面部55から径方向外側に凹入し、かつ、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝33を有するガイド部材29と、螺旋溝31とガイド溝33との間に配置された移動部材である玉30とを備える。ガイド溝33のうちで、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分が、回転軸28の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋溝を有する回転軸と、
前記回転軸の外周面に沿って湾曲し、かつ、前記回転軸の外周面と対向する凹面部、および、該凹面部から径方向外側に凹入し、かつ、前記回転軸の軸方向に関して前記螺旋溝が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝を有する、ガイド部材と、
前記螺旋溝と前記ガイド溝との間に配置され、前記ガイド部材に対する前記回転軸の回転に伴い、前記螺旋溝に沿って移動しながら、前記ガイド溝に沿って前記回転軸の軸方向に移動することが可能であり、かつ、前記螺旋溝の両側の端部のそれぞれと接触することが可能である、移動部材と、を備え、
前記ガイド溝のうちで、前記回転軸の軸方向に関して前記螺旋溝の端部と同じ位置に存在する部分が、前記回転軸の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している、
回転制限装置。
【請求項2】
前記回転軸の径方向に伸長する保持孔を有し、かつ、該保持孔の内側に前記ガイド部材を、前記回転軸の径方向に関する移動を可能に保持するケースと、
前記ガイド部材を前記回転軸の径方向に関して内側に向けて付勢する、第1の弾性部材とを、さらに備える、
請求項1に記載の回転制限装置。
【請求項3】
前記保持孔が、円筒状の内周面を有する円孔により構成されている、
請求項2に記載の回転制限装置。
【請求項4】
前記螺旋溝の底部と前記ガイド溝の底部との間の径方向幅は、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている、
請求項2または3に記載の回転制限装置。
【請求項5】
前記螺旋溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている、
請求項4に記載の回転制限装置。
【請求項6】
前記ガイド溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている、
請求項4または5に記載の回転制限装置。
【請求項7】
前記第1の弾性部材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有し、かつ、前記移動部材が前記螺旋溝の端部と接触する際に弾性変形する第2の弾性部材をさらに備える、
請求項2~6のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項8】
前記ガイド部材のうち、少なくとも前記移動部材と接触する部分が金属により構成されている、
請求項1~7のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項9】
前記ガイド部材のうち、前記移動部材と接触する部分を含む一部が金属により構成されており、かつ、残部が合成樹脂により構成されている、
請求項8に記載の回転制限装置。
【請求項10】
前記螺旋溝および前記ガイド溝のそれぞれの断面形状が、ゴシックアーチ形状である、
請求項1~9のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項11】
前記移動部材が玉により構成されている、
請求項1~10のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項12】
操舵部材の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置を備え、該回転制限装置が、請求項1~11のうちのいずれかに記載の回転制限装置である、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の回転量を制限するための回転制限装置、および、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転部材を備えた各種機械装置において、回転部材の回転量を所定量以下に制限するために、回転制限装置を組み込む場合がある。
【0003】
たとえば、特開2007-106245号公報(特許文献1)および特開2014-210524号公報(特許文献2)には、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に組み込まれて、操舵部材の回転操作量を所定量以下に制限する、回転制限装置が記載されている。特に、特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置は、特開2007-106245号公報に記載された回転制限装置に比べて、少ない部品点数で構成でき、容易に組み立てられるという利点がある。
【0004】
特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置は、円板状の第1プレートと、円板状の第2プレートと、玉とを備える。第1プレートは、操舵部材に接続されて該操舵部材と一体に回転するステアリングシャフトに対し、同軸に固定されている。第2プレートは、ステアリングシャフトの軸方向に関して第1プレートと対向する位置に、第1プレートと同軸に配置され、使用時にも回転しない。第1プレートは、第2プレートに対向する側面に、径方向に伸長する直線状の第1転動路を有する。第2プレートは、第1プレートに対向する側面に、渦巻き状の第2転動路を有する。玉は、第1転動路と第2転動路との間に配置されている。なお、操舵部材が、中立回転位置、すなわち、自動車が直進走行している状態での回転位置にあるとき、玉は、第1転動路と第2転動路とのそれぞれの径方向中央部に位置している。
【0005】
このような構成を有する回転制限装置では、操舵部材を中立回転位置から一方側に回転させると、玉は、第1転動路と第2転動路とのそれぞれに沿って転動しながら径方向内側に移動する。そして、玉が渦巻き状の第2転動路の径方向内側の端部に接触した時点で、操舵部材がそれ以上一方側に回転することが制限される。これに対して、操舵部材を中立回転位置から他方側に回転させると、玉は、第1転動路と第2転動路とのそれぞれに沿って転動しながら径方向外側に移動する。そして、玉が渦巻き状の第2転動路の径方向外側の端部に接触した時点で、操舵部材がそれ以上他方側に回転することが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-106245号公報
【特許文献2】特開2014-210524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置は、第1プレートおよび第2プレートが、ステアリングシャフトと同軸に配置された円板状の部材であるため、径方向寸法が嵩みやすい。したがって、径方向の設置スペースが限られている場合には、採用しにくい。
【0008】
また、特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置では、操舵部材を一方側に回転させて玉を第2転動路の径方向内側の端部に接触させる場合に、操舵部材を他方側に回転させて玉を第2転動路の径方向外側の端部に接触させる場合よりも、ステアリングシャフトの回転中心から玉の中心までの径方向距離が短くなる。このため、操舵部材を一方側に回転させて玉を第2転動路の径方向内側の端部に接触させる際の接触荷重が、操舵部材を他方側に回転させて玉を第2転動路の径方向外側の端部に接触させる際の接触荷重よりも大きくなり、運転者に違和感を与えるなどの不都合を生じる可能性がある。
【0009】
本発明は、径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくすることができる回転制限装置、および、該回転制限装置を備えたステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の回転制限装置は、回転軸と、ガイド部材と、玉とを備える。
前記回転軸は、外周面に螺旋溝を有する。
前記ガイド部材は、前記回転軸の外周面に沿って湾曲し、かつ、前記回転軸の外周面と対向する凹面部、および、該凹面部から径方向外側に凹入し、かつ、前記回転軸の軸方向に関して前記螺旋溝が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝を有する。
前記玉は、前記螺旋溝と前記ガイド溝との間に配置され、前記ガイド部材に対する前記回転軸の回転に伴い、前記螺旋溝に沿って移動しながら、前記ガイド溝に沿って前記回転軸の軸方向に移動することが可能であり、かつ、前記螺旋溝の両側の端部のそれぞれと接触することが可能である。
前記ガイド溝のうちで、前記回転軸の軸方向に関して前記螺旋溝の端部と同じ位置に存在する部分が、前記回転軸の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。
【0011】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記回転軸の径方向に伸長する保持孔を有し、かつ、該保持孔の内側に前記ガイド部材を、前記回転軸の径方向に関する移動を可能に保持するケースと、前記ガイド部材を前記回転軸の径方向に関して内側に向けて付勢する、第1の弾性部材とを、さらに備える。
【0012】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記保持孔が、円筒状の内周面を有する円孔により構成されている。
【0013】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記螺旋溝の底部と前記ガイド溝の底部との間の径方向幅は、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている。
【0014】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記螺旋溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0015】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0016】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記第1の弾性部材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有し、かつ、前記玉が前記螺旋溝の端部と接触する際に弾性変形する第2の弾性部材をさらに備える。
【0017】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド部材のうち、少なくとも前記玉と接触する部分が金属により構成されている。
【0018】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド部材のうち、前記玉と接触する部分を含む一部が金属により構成されており、かつ、残部が合成樹脂により構成されている。
【0019】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記螺旋溝および前記ガイド溝のそれぞれの断面形状が、ゴシックアーチ形状である。
【0020】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記移動部材が玉により構成されている。
【0021】
本発明の一態様のステアリング装置は、操舵部材の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置を備え、該回転制限装置が、本発明の回転制限装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくすることができる回転制限装置、および、該回転制限装置を備えたステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置を組み込んだステアリング装置を示す部分切断側面図である。
【
図4】
図4は、
図1のC部に相当する、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置を、ケースを省略して軸方向から見た図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置を構成するガイド部材、回転軸、および玉を、回転軸の軸方向から見た図であり、
図7(b)は、ガイド部材および玉を、
図7(a)の下方から見た図であり、
図7(c)は、回転軸および玉を、
図7(a)の上方から見た図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置を構成するガイド部材を、
図7(a)の下方から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態の第2例に関する、
図6に相当する図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態の第2例に関する、
図7(b)に相当する図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態の第2例に関する、
図8に相当する図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態の第3例に関する、
図6に相当する図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態の第3例に関する、
図7(b)に相当する図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態の第3例に関する、
図8に相当する図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施の形態の第4例に関する、
図4に相当する図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施の形態の第4例の回転制限装置を、ケースを省略して示す分解斜視図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施の形態の第5例に関する、
図4に相当する図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施の形態の第5例の回転制限装置を、ケースを省略して示す分解斜視図である。
【
図21】
図21は、本発明の実施の形態の第6例に関する、
図4に相当する図である。
【
図22】
図22は、本発明の実施の形態の第7例に関する、
図4に相当する図である。
【
図23】
図23は、本発明の実施の形態の第8例に関する、螺旋溝およびガイド溝の断面形状を示す図である。
【
図24】
図24は、本発明の実施の形態の第9例に関する、螺旋溝およびガイド溝の断面形状を示す図である。
【
図25】
図25は、本発明の実施の形態の第10例のステアリング装置を示す略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図10を用いて説明する。なお、本例を含めて、以下、本発明の一態様の回転制限装置について、該回転制限装置をステアリング装置に適用した場合を例に説明するが、回転制限装置の用途はステアリング装置には制限されず、各種の機械装置に対して広く適用可能である。
【0025】
図1~
図3は、本例のステアリング装置1を示している。ステアリング装置1は、操舵部材であるステアリングホイール2の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置10を備える。
【0026】
より具体的には、本例のステアリング装置1は、ステアリングホイール2と、ステアリングシャフト3と、ステアリングコラム4と、電動アシスト装置5と、1対の自在継手6a、6bと、中間シャフト7と、ステアリングギヤユニット8と、1対のタイロッド9と、回転制限装置10とを備える。
【0027】
なお、ステアリング装置1に関して、前後方向は、ステアリング装置1が組み付けられた車両の前後方向をいい、前側は、
図1の左側であり、後側は、
図1の右側である。
【0028】
ステアリングシャフト3は、車体に支持されたステアリングコラム4の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト3の後側の端部には、ステアリングホイール2が支持固定されている。ステアリングシャフト3の前側の端部は、電動アシスト装置5と、後側の自在継手6aと、中間シャフト7と、前側の自在継手6bとを介して、ステアリングギヤユニット8のピニオン軸11に接続されている。このため、運転者がステアリングホイール2を回転させると、ステアリングホイール2の回転が、ステアリングギヤユニット8のピニオン軸11に伝達される。ピニオン軸11の回転は、ピニオン軸11と噛合した図示しないラック軸の直線運動に変換され、1対のタイロッド9を押し引きする。この結果、1対の操舵輪にステアリングホイール2の回転操作量に応じた舵角が付与される。
【0029】
本例のステアリング装置1では、ステアリングホイール2の前後位置を調節可能とするためのテレスコピック機構を備える。このために、ステアリングコラム4は、筒状のインナコラム12の後側の端部に、筒状のアウタコラム13の前側の端部を軸方向の相対変位を可能に外嵌することにより、全長を伸縮可能に構成されている。また、ステアリングシャフト3は、インナシャフト14の後側の端部の外周面に、筒状のアウタシャフト15の前側の端部の内周面をスプライン係合させることにより、インナシャフト14とアウタシャフト15との間でのトルク伝達を可能に、かつ、全長を伸縮可能に構成されている。アウタシャフト15は、後側の端部をアウタコラム13よりも後方に突出させた状態で、アウタコラム13の内側に図示しない転がり軸受により回転のみを可能に支持されている。したがって、アウタシャフト15の後側の端部に支持固定されたステアリングホイール2の前後位置を調節する際には、アウタシャフト15とともにアウタコラム13が、インナコラム12およびインナシャフト14に対して前後方向に変位することで、ステアリングシャフト3およびステアリングコラム4が伸縮する。
【0030】
電動アシスト装置5は、ハウジング16と、電動モータ17と、トーションバー18と、出力軸19と、1対の玉軸受20a、20bと、ウォーム減速機21と、トルクセンサ22とを備える。
【0031】
ハウジング16は、インナコラム12の前側の端部に結合固定されている。電動モータ17は、ハウジング16に支持固定されている。インナシャフト14の前側の端部は、ハウジング16の内側に挿入されている。インナシャフト14の前側の端部は、トーションバー18を介して、出力軸19に連結されている。出力軸19の前側の端部は、ハウジング16の前端面から前側に突出している。出力軸19の前側の端部には、後側の自在継手6aが結合される。出力軸19は、ハウジング16の内側に、1対の玉軸受20a、20bにより回転のみを可能に支持されている。出力軸19のうち、1対の玉軸受20a、20bにより支持された部分の間には、ウォーム減速機21を構成するウォームホイール23が外嵌固定されている。ウォームホイール23の外周面に備えられたホイール歯24には、ウォーム減速機21を構成するウォーム25の軸方向中間部外周面に備えられたウォーム歯26が噛合している。ウォーム25には、電動モータ17の出力軸27がトルク伝達可能に連結されている。
【0032】
出力軸19の後側の端部の周囲には、トルクセンサ22が配置されている。トルクセンサ22は、ステアリングホイール2の回転操作に伴うトーションバー18の捩れ量に基づいて、ステアリングホイール2からステアリングシャフト3に加えられたトルクの方向および大きさを検出する。電動アシスト装置5は、トルクセンサ22により検出したトルクに見合った電流で電動モータ17を駆動する。そして、電動モータ17により発生したアシストトルクを、ウォーム減速機21を介して出力軸19に付与することで、運転者がステアリングホイール2を回転操作するのに要する力を軽減する。
【0033】
回転制限装置10は、ステアリングシャフト3の前側部が位置する場所に設置されている。なお、本発明を実施する場合、回転制限装置10は、ステアリングホイール2から1対の操舵輪までの間に存在する、いずれかの操舵力伝達軸上の任意の場所に設置することができる。すなわち、回転制限装置10は、本例のように、トーションバー18よりもステアリングホイール2に近い側に設置することもできるし、トーションバー18よりも1対の操舵輪に近い側に設置することもできる。なお、本例の構造では、ステアリングシャフト3、出力軸19、中間シャフト7、およびピニオン軸11のそれぞれが、操舵力伝達軸に相当する。
【0034】
回転制限装置10は、
図4および
図5に示すように、回転軸28と、ガイド部材29と、移動部材である玉30とを備える。
【0035】
なお、回転制限装置10に関する以下の説明中、軸方向、径方向、周方向は、特に断らない限り、回転軸28の軸方向、径方向、周方向をいう。
【0036】
回転軸28は、回転操作されるステアリングホイール2とともに回転する部材であり、外周面に螺旋溝31を有する。本例では、回転軸28は、インナシャフト14の前側部を構成しており、一般構造用圧延鋼材(SS材)、機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)などの金属製である。ただし、本発明を実施する場合、回転軸28の材質は、回転軸28に必要な強度や剛性などの機械的特性を確保できる限り、特に限定されない。回転軸28の外径は、螺旋溝31から外れた部分で軸方向の全長にわたり一定である。
【0037】
螺旋溝31は、玉30の径方向内側部を係合させるための部位である。螺旋溝31は、全体がひとつながりに形成された、1条ねじの溝のような形状、すなわち、3次元の曲線形状を有する。螺旋溝31の深さは、軸方向に関する全範囲で一定である。なお、螺旋溝の深さは、後述するように玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に、玉30および螺旋溝31の端部32の強度を確保することができ、かつ、玉30が螺旋溝31から脱落しなければ、任意の深さとすることができる。
【0038】
本例では、螺旋溝31の伸長方向である螺旋方向に直交する仮想平面で切断した場合の螺旋溝31の断面形状は、単一円弧形である。このような螺旋溝31の断面形状の曲率半径は、玉30の表面の曲率半径、すなわち玉30の半径よりも、少しだけ大きい。
【0039】
螺旋溝31の端部32は、
図7(a)に示すような凹曲面、すなわち、螺旋溝31の伸長方向に関して螺旋溝31の中央部から離れる方向に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した凹曲面により構成されている。ただし、螺旋溝31の端部32は、後述するように玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に、玉30および螺旋溝31の端部32の強度を確保することができ、かつ、玉30が螺旋溝31から脱落しなければ、任意の形状を有する面により構成することができる。たとえば、螺旋溝31の端部32は、切り上がり形状を有する面や、螺旋溝31の伸長方向に対して直交する平面により構成することもできる。また、玉と螺旋溝の端部との衝突音を小さくするために、螺旋溝の端部を、たとえばポリアセタール(POM)やMCナイロンなどの合成樹脂により構成することもできる。
【0040】
回転軸28の外周面における螺旋溝31の巻数は、凡そ、回転制限装置10により制限されるステアリングホイール2の最大回転数に相当する数となる。ここで、ステアリングホイール2の最大回転数とは、ステアリングホイール2をいずれか一方の回転制限位置から他方の回転制限位置まで回転させたときの回転数である。図示の例(
図5参照)では、螺旋溝31の巻数は、凡そ2である。ただし、本発明を実施する場合、螺旋溝の巻数は、所望とするステアリングホイール2の最大回転数に合わせて、任意の巻数とすることができる。
【0041】
なお、螺旋溝31は、玉30をガイドする機能を有していればよいため、過度に精度よく形成する必要はない。このような螺旋溝31は、切削や転造などの適宜の加工方法で形成することができる。
【0042】
ガイド部材29は、回転軸28の外周面に沿って湾曲し、かつ、回転軸28の外周面と対向する凹面部55、および、凹面部55から径方向外側に凹入し、かつ、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31が存在する範囲の全長にわたり備えられた、ガイド溝33を有する。
【0043】
本例では、ガイド部材29は、
図4~
図9に示すように、全体が、回転軸28の径方向に伸長する略円柱状に構成されている。本例では、ガイド部材29は、一般構造用圧延鋼材(SS材)、機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)などの金属製である。ただし、本発明を実施する場合、ガイド部材29の材質は、ガイド部材29に必要とされる強度や剛性などの機械的特性を確保できる限り、特に限定されない。
【0044】
ガイド部材29は、回転軸28の外周面と対向する径方向内側面(
図4~
図6、
図7(a)、
図9における下側面)に、凹面部55を有する。凹面部55は、
図6および
図7(a)に示すように、回転軸28の外周面の曲率半径よりも少しだけ大きい曲率半径を有する部分円筒状の凹面により構成されており、回転軸28の外周面に近接して配置されている。
【0045】
ガイド部材29は、凹面部55から径方向外側に凹入するガイド溝33を有する。ガイド溝33は、径方向に関する玉30の外側部を係合させ、かつ、ステアリングホイール2および回転軸28が回転することに伴って玉30が軸方向に移動するようにガイドするための部位である。ガイド溝33は、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31が存在する範囲の全長にわたり備えられている。
【0046】
また、ガイド溝33のうちで、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分、すなわち、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に該玉30が配置される部分が、回転軸28の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。特に、本例では、ガイド溝33の全体が、回転軸28の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。本例では、回転軸28の軸方向に対してガイド溝33が傾斜する方向は、螺旋溝31のうちでガイド部材29の凹面部55と対向する部分が回転軸28の軸方向に対して傾斜する方向と同じ方向である。換言すれば、径方向外側から見た場合に、回転軸28の軸方向に対する螺旋溝31の傾斜方向と、回転軸28の軸方向に対するガイド溝33の傾斜方向とを、互いに同じ方向にしている。ただし、本発明を実施する場合には、回転軸の軸方向に対してガイド溝が傾斜する方向を、螺旋溝のうちでガイド部材の凹面部と対向する部分が回転軸の軸方向に対して傾斜する方向と逆方向にすることもできる。換言すれば、径方向外側から見た場合に、回転軸の軸方向に対する螺旋溝の傾斜方向と、回転軸の軸方向に対するガイド溝の傾斜方向とを、互いに逆の方向にすることもできる。
【0047】
すなわち、本例では、ガイド溝33は、径方向内側から見た場合に、
図7(b)に示すように、凹面部55を、ガイド部材29の直径方向に横切るように形成されており、ガイド溝33の両側の端部のそれぞれは、ガイド部材29の外周面に開口している。なお、径方向内側から見た場合の、ガイド溝33の形状、すなわち2次元形状は、単なる直線形状であるが、ガイド溝33は、凹面部55に沿うように形成されているため、ガイド溝33全体の3次元形状は、凹面部55に沿って湾曲している。
【0048】
また、径方向内側から見た場合の、ガイド溝33の伸長方向は、回転軸28の軸方向に対して角度θ(0゜<θ<90゜)だけ傾斜している。本発明を実施する場合に、角度θは、30゜以上80゜以下とすることが好ましく、50゜以上80゜以下とすることがより好ましい。本例では、ガイド溝33の両側の端部のそれぞれが、螺旋溝31の両側の端部32のそれぞれと同じ軸方向位置に配置されている。
【0049】
ガイド溝33の深さは、ガイド溝の伸長方向の全範囲で一定である。なお、ガイド溝33の深さは、後述するように玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に、玉30およびガイド溝33の強度を確保することができ、かつ、玉30がガイド溝33から脱落しなければ、任意の深さとすることができる。
【0050】
なお、本発明を実施する場合、ガイド溝の端部において、ガイド溝の底部の形状を、ガイド溝の端縁に向かうにしたがってガイド溝の深さが浅くなる方向に傾斜したテーパ形状または凹曲面形状とすることがきる。このような構成を採用すれば、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に、玉30が螺旋溝31の端縁に乗り上がりにくくすることができる。
【0051】
本例では、ガイド溝33の伸長方向に対して直交する仮想平面で切断した場合のガイド溝33の断面形状は、単一円弧形である。このようなガイド溝33の断面形状の曲率半径は、玉30の表面の曲率半径よりも、少しだけ大きい。
【0052】
本例では、ガイド部材29は、外周面に、1対の係止溝34を備える。1対の係止溝34は、径方向に関して互いに離隔配置されており、それぞれがガイド部材29の外周面の全周にわたり備えられている。
【0053】
本例では、ガイド部材29は、回転軸28の外周面に対して反対側を向いた径方向外側面(
図4、
図5、
図9における上側面)の中央部に、径方向内側に凹入する有底の凹孔35を有し、かつ、径方向外側面のうちで凹孔35の周囲部分に、径方向内側に凹入する円環状の凹部36を全周にわたり有する。凹部36の深さは、凹孔35の深さよりも浅い。
【0054】
玉30は、螺旋溝31とガイド溝33との間に配置されている。より具体的には、玉30は、螺旋溝31に対して、螺旋溝31に沿う転動を可能に係合、すなわち転がり接触し、かつ、ガイド溝33に対して、ガイド溝33に沿う移動を可能に係合、すなわち、転がり接触している。このような玉30は、ガイド部材29に対する回転軸28の回転に伴い、螺旋溝31に沿って移動、すなわち転動しながら、ガイド溝33に沿って回転軸28の軸方向に移動することが可能であり、かつ、螺旋溝31の両側の端部32のそれぞれと接触することが可能である。また、玉30は、ステアリングホイール2が中立回転位置にあるとき、
図4に示すように、螺旋溝31およびガイド溝33が存在する軸方向範囲の中央部に位置している。
【0055】
なお、本例では、移動部材として玉を使用しているが、本発明を実施する場合には、移動部材として、玉以外の部材を用いることもできる。すなわち、移動部材は、ガイド部材に対する回転軸の回転に伴い、螺旋溝に沿って移動しながら、ガイド溝に沿って回転軸の軸方向に移動することが可能であり、かつ、前記螺旋溝の両側の端部のそれぞれと接触することが可能であればよい。
【0056】
本例では、玉30は、高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)などの金属製又はセラミック製である。ただし、本発明を実施する場合、玉30の材質は、玉30に必要な強度や剛性などの機械的特性を確保できる限り、特に限定されない。なお、本例では、玉30の表面と、その相手面である螺旋溝31の表面およびガイド溝33の表面とに、潤滑用のグリースが塗布されている。ただし、該グリースは省略することもできる。
【0057】
また、本例では、玉30が螺旋溝31の端部32に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4における上側)に変位する場合を含めて、常に、ガイド部材29の凹面部55と、回転軸28の外周面のうち螺旋溝31から外れた部分との間隔が、玉30の直径よりも小さくなるように規制されている。これにより、ガイド部材29の凹面部55と、回転軸28の外周面のうち螺旋溝31から外れた部分との間に、玉30が侵入することを防止し、螺旋溝31とガイド溝33との間に玉30が配置された状態が維持されるようにしている。
【0058】
本例の回転制限装置10は、ケース37と、1対のOリング38と、キャップ39と、第1の弾性部材であるコイルばね40と、第2の弾性部材である皿ばね41とを、さらに備える。
【0059】
ケース37は、回転軸28の径方向に伸長する保持孔42を有し、かつ、保持孔42の内側にガイド部材29を、回転軸28の径方向、すなわち保持孔42の伸長方向に関する移動を可能に保持している。
【0060】
本例では、ケース37は、全体をT字管状に構成されており、第1の筒部43と、第2の筒部44とを備える。本例では、ケース37は、インナコラム12の前側部を構成している。
【0061】
第1の筒部43は、円筒状に構成されており、径方向内側に回転軸28が挿通されている。
【0062】
第2の筒部44は、第1の筒部43の軸方向中間部の円周方向1箇所(図示の例では、上側部)から径方向外側に向けて伸長した円筒状に構成されている。第2の筒部44の中心孔(内側空間)は、第1の筒部43の中心孔(内側空間)と連通している。第2の筒部44の中心孔は、径方向に関する内側部(
図4における下側部)および中間部が保持孔42により構成されており、径方向に関する外側部(
図4における上側部)が雌ねじ孔45により構成されている。また、本例では、保持孔42は、円筒状の内周面を有する円孔により構成されている。
【0063】
本例では、ガイド部材29は、1対の係止溝34のそれぞれにOリング38を係止した状態で、保持孔42の内側に、回転軸28の径方向に関する移動を可能に保持されている。このために、具体的には、ガイド部材29は、保持孔42の内側に隙間嵌めで内嵌されている。また、この状態で、Oリング38は、係止溝34の底面と保持孔42の内周面との間で弾性的に圧縮されることにより、ガイド部材29の外周面と保持孔42の内周面との間をシールしている。これにより、ガイド部材29の外周面と保持孔42の内周面との間を通じて、玉30と螺旋溝31およびガイド溝33との接触部を潤滑するグリースが外部空間に流出したり、外部空間から玉30の設置部に塵芥などの異物が侵入したりすることを防止している。
【0064】
なお、本発明を実施する場合、ガイド部材29の外周面と保持孔42の内周面との間をシールするOリング38の数を、1個または3個以上とすることもできる。ただし、Oリング38の数を2個以上とすれば、これらのOリング38により、保持孔42の内周面に対してガイド部材29を、径方向に離隔した複数箇所で全周にわたり支持することができる。このため、保持孔42の中心軸に対してガイド部材29の中心軸が傾くことを抑制して、保持孔42の内周面とガイド部材29の外周面とが干渉することを抑制できる。
【0065】
キャップ39は、第2の筒部44の中心孔の径方向外側(
図4における上側)の端部開口を塞ぐための部材であり、円板状に構成されている。キャップ39は、外周面に雄ねじ部46を有し、かつ、径方向内側面(
図4における下側面)の中央部に、径方向内側に向けて突出した円柱状の凸部47を有する。凸部47の外径は、ガイド部材29の凹孔35の内径よりも大きく、かつ、ガイド部材29の凹部36の内径よりも小さい。このようなキャップ39は、雄ねじ部46を第2の筒部44の雌ねじ孔45に螺合することによりケース37に装着され、第2の筒部44の中心孔の径方向外側の端部開口を塞いでいる。
【0066】
なお、本例では、キャップ39は、雄ねじ部46を雌ねじ孔45に螺合することによりケース37に装着されているため、ケース37に対して着脱可能である。このため、たとえば、メンテナンス時に、キャップ39を取り外すことで、ケース37内に配置された部品を交換したり、前記グリースを補充したりすることができる。なお、本発明を実施する場合、ケースに対するキャップの取付方法は、本例とは異なる方法、たとえば、ダブルナットを用いた螺合、接着(螺合部の接着を含む)、かしめ付けなどの方法を採用することもできる。ただし、いずれの方法を採用する場合も、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に加わる荷重を、キャップにより支承できるようにすることが必要である。
【0067】
コイルばね40は、自身の中心軸を径方向(
図4における上下方向)に一致させた状態で、ガイド部材29の凹孔35の内側に配置されており、かつ、凹孔35の底面とキャップ39の凸部47の径方向内側面との間で径方向に圧縮されている。これにより、コイルばね40は、ガイド部材29を径方向内側に向けて弾性的に付勢し、玉30に予圧を付与している。
【0068】
皿ばね41は、コイルばね40の周囲に、コイルばね40と同軸に配置されており、かつ、径方向(
図4における上下方向)に関して、ガイド部材29の凹部36の底面とキャップ39の凸部47の径方向内側面との間に配置されている。皿ばね41は、コイルばね40の弾性係数(ばね定数)k1よりも大きい弾性係数(ばね定数)k2を有する(k2>k1)。
【0069】
皿ばね41は、玉30が螺旋溝31の端部32に接触していない状態では、ガイド部材29の凹部36の底面とキャップ39の凸部47の径方向内側面との間で径方向(
図4における上下方向)に圧縮されないが、玉30が螺旋溝31の端部32に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4における上側)に変位する際には、ガイド部材29の凹部36の底面とキャップ39の凸部47の径方向内側面との間で径方向に圧縮されて弾性変形するように、皿ばね41自身の軸方向寸法が規制されている。
【0070】
なお、本発明を実施する場合には、第1の弾性部材(本例では、コイルばね40)および第2の弾性部材(本例では、皿ばね41)の両方を省略したり、第1の弾性部材および第2の弾性部材のうち、第2の弾性部材のみを省略したりすることができる。第1の弾性部材および第2の弾性部材の両方を省略する場合には、回転軸の径方向に関するガイド部材の変位を阻止しておくことができる。
【0071】
上述のような構成を有する本例のステアリング装置1では、ステアリングホイール2を中立回転位置から回転操作することにより、回転軸28をステアリングホイール2とともに回転させると、玉30は、螺旋溝31に沿って転動しながら、ガイド溝33に沿って軸方向に移動、より具体的には、ガイド溝33の伸長方向に移動する。ここで、玉30がガイド溝33に沿って移動する向きは、ステアリングホイール2が一方側に回転する場合と他方側に回転する場合とで、互いに逆向きになる。
【0072】
そして、玉30がガイド溝33の端部まで移動して、
図7(a)に仮想線(二点鎖線)で示すように、玉30が螺旋溝31の端部32に接触すると、それ以上、玉30が螺旋溝31に沿って移動できなくなる。このため、ステアリングホイール2が、それ以上一方側または他方側に回転することを制限される。なお、本例では、玉30は、ステアリングホイール2が中立回転位置にあるとき、
図4に示すように、螺旋溝31が存在する軸方向範囲の中央部に位置している。このため、ステアリングホイール2が中立回転位置から一方側に回転する場合と他方側に回転する場合とで、ステアリングホイール2の回転制限量は互いに同じになり、具体的には、前記最大回転数の1/2となる。
【0073】
以上のようなステアリング装置1に組み込まれた、本例の回転制限装置10によれば、径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸28の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくすることができる。
【0074】
すなわち、本例の回転制限装置10では、玉30の係合箇所が、回転軸28の外周面に備えられた螺旋溝31、および、ガイド部材29の径方向内側面に備えられたガイド溝33であるため、回転制限装置10の径方向寸法を小さく抑えられる。したがって、径方向の設置スペースが限られている場合でも、回転制限装置10を設置しやすい。
【0075】
また、ステアリングホイール2を一方側に回転操作して玉30を螺旋溝31の一方側の端部32に接触させた場合における、回転軸28の回転中心から玉30の中心までの径方向距離と、ステアリングホイール2を他方側に回転操作して玉30を螺旋溝31の他方側の端部32に接触させた場合における、回転軸28の回転中心から玉30の中心までの径方向距離とを、実質的に、すなわち、製造上不可避な誤差を除き、同じ大きさにすることができる。このため、玉30が螺旋溝31の一方側の端部32に接触する際の接触荷重と、玉30が螺旋溝31の他方側の端部32に接触する際の接触荷重とを、ほぼ等しくすることができる。したがって、ステアリングホイール2を回転操作する運転者に違和感を与えるなどの不都合が生じることを防止できる。
【0076】
また、本例の構造では、ガイド溝33のうちで、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分が、回転軸28の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。このため、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に生じる、ガイド部材29を回転させようとする力を小さく抑えられる。
【0077】
すなわち、本例の構造では、
図7(a)に示すように、玉30が螺旋溝31の端部32に接触すると、
図7(b)の紙面内、すなわち、ガイド部材29の中心軸に対して直交する仮想平面内において、ガイド溝33のうちで回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分に、玉30から荷重Fが作用する。この荷重Fの方向は、
図7(b)の紙面内において、回転軸28の軸方向に直交する方向となる。本例の構造では、このような荷重Fの方向は、
図7(b)の紙面内において、ガイド部材29の中心軸と荷重Fの作用点とを結ぶ直線に直交する方向(=矢印fの方向)に対して、角度θだけ傾いている。このため、この荷重Fのうち、ガイド部材29を回転させようとする荷重成分fの大きさは、F・cosθとなる。前述したように、角度θは、0゜<θ<90゜であるので、ガイド部材29を回転させようとする荷重成分f(=F・cosθ)の大きさは、荷重Fの大きさよりも小さくなる。
【0078】
この点について、言い方を変えて説明する。たとえば、本例のように、螺旋溝31が右ねじのように形成されている場合に、運転者がステアリングホイール2を左に回すことで、玉30が螺旋溝31の端部32に接触したときを考える。このとき、玉30はガイド部材29を押すが、玉30がガイド部材29を押す力は、ガイド部材29を径方向外側から見た場合に、ガイド部材29を反時計回りに回転させるように作用し、その大きさはFとなる。ここで、本例のように、ガイド溝33を角度θだけ傾けると、前記力Fのうち、ガイド部材29の中心軸を中心とする円の接線方向の分力がF・cosθになり、換言すれば、ガイド部材29を反時計回りに回転させようとする力が、F(1-cosθ)の分だけ小さくなる。したがって、ガイド部材29の回り止め効果を得られる。
【0079】
なお、本例の構造とは異なるが、径方向外側から見た場合に、回転軸の軸方向に対する螺旋溝の傾斜方向と、回転軸の軸方向に対するガイド溝の傾斜方向とを、互いに逆の方向にする場合も、上述したような効果、すなわち、玉が螺旋溝の端部に接触する際に、玉がガイド部材を回転させようとする荷重成分fの大きさが、荷重Fの大きさよりも小さくなるという効果を得られる。ただし、本発明を実施する場合には、本例のように、径方向外側から見た場合に、回転軸の軸方向に対する螺旋溝の傾斜方向と、回転軸の軸方向に対するガイド溝の傾斜方向とを、互いに同じ方向にするのが好ましい。ただし、この場合、ガイド溝の傾斜角度は、螺旋溝の傾斜角度と同じでなくてもよい。
【0080】
一方、
図10(a)および
図10(b)は、本例の構造に対する、比較例の構造を示している。この比較例の構造では、ガイド部材29zの径方向内側面に備えられたガイド溝33zの全体が、回転軸28の軸方向に伸長している。この比較例の構造でも、
図10(a)に示すように、玉30が螺旋溝31の端部32に接触すると、
図10(b)の紙面内、すなわち、ガイド部材29zの中心軸に対して直交する仮想平面内において、ガイド溝33zのうちで回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分に、玉30から荷重Fが作用する。そして、この荷重Fの向きは、
図10(b)の紙面内において、回転軸28の軸方向に対して直交する向きとなる。ただし、比較例の構造では、このような荷重Fの方向は、
図10(b)の紙面内において、ガイド部材29zの中心軸と荷重Fの作用点とを結ぶ直線に直交する方向(=矢印fzの方向)と一致している。このため、この荷重Fのうち、ガイド部材29zを回転させようとする荷重成分fzの大きさは、荷重Fの大きさと等しくなる。
【0081】
したがって、本例の構造では、比較例の構造に比べて、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に生じる、ガイド部材29を回転させようとする力を小さく抑えられる。したがって、たとえば、ステアリングホイール2を回転制限位置まで勢い良く回転させることにより、玉30が螺旋溝31の端部32に勢い良く接触した場合でも、玉30がガイド部材29を回転させようとする力を小さく抑えて、ガイド部材29が回転することを有効に防止できる。このため、ガイド部材29が回転してステアリングホイール2の回転制限量が大きくなることを有効に防止できる。
【0082】
本例の構造では、ガイド溝33の端部(回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分)が回転軸28の軸方向に対してθだけ傾斜した方向に伸長しているため、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に生じる、玉30からガイド部材29に作用する荷重のうち、ガイド部材29の軸方向の分力(
図7(a)における上向きの分力)も、比較例の構造に比べて小さく抑えることができる。
【0083】
また、本例の構造では、コイルばね40により、ガイド部材29を径方向内側に向けて弾性的に付勢することで、玉30に予圧を付与している。このため、ステアリングホイール2を回転操作する際に、玉30ががたつくことを抑えられる。したがって、玉30のがたつきに基づく振動が、ステアリングホイール2に伝わり、運転者に違和感を与えるといった不都合を防止できる。
【0084】
また、本例の構造では、玉30に付与された予圧に基づいて、回転軸28、すなわち、ステアリングホイール2に、適度な回転抵抗を生じさせることができる。このため、運転者の操舵感を向上させることができる。
【0085】
また、本例の構造では、玉30が螺旋溝31の端部32に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4における上側)に変位する際には、ガイド部材29の凹孔35の底面とキャップ39の凸部47の径方向内側面との間で、コイルばね40が径方向(
図4における上下方向)にさらに圧縮される。このため、玉30が螺旋溝31の端部32に衝突する際の衝撃および打音を、コイルばね40の弾力によって低減することができる。
【0086】
また、本例の構造では、玉30が螺旋溝31の端部32に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4における上側)に変位する際には、ガイド部材29の凹部36の底面とキャップ39の凸部47の径方向内側面との間で、皿ばね41が径方向(
図4における上下方向)に圧縮されて弾性変形する。このため、玉30が螺旋溝31の端部32に衝突する際の衝撃および打音を、コイルばね40の弾力だけでなく、皿ばね41の弾力によっても、低減することができる。すなわち、本例の構造では、玉30が螺旋溝31の端部32に衝突する際の衝撃および打音の低減効果を、皿ばね41によって向上させることができる。
【0087】
なお、コイルばね40の弾性係数k1を大きくしすぎると、玉30の動き、すなわち、ステアリングホイール2の回転操作が過度に重くなったり滑らかに行われなくなったりする。このため、本例の構造では、コイルばね40の弾性係数k1を、皿ばね41の弾性係数k2よりも小さくしている(k1<k2)。
【0088】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図11~
図13を用いて説明する。
【0089】
本例の構造では、ガイド部材29aのガイド溝33aは、
図12に示すように、それぞれが回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32(
図7(a)参照)と同じ位置に存在する部分である、ガイド溝33aの両側の端部に、傾斜部48を有する。傾斜部48のそれぞれは、回転軸28の軸方向に対して角度θ(0゜<θ<90゜)だけ傾斜した方向に伸長している。
【0090】
また、ガイド溝33aは、該ガイド溝33aの中間部に、非傾斜部49を有する。非傾斜部49は、回転軸28の軸方向に対して傾斜しておらず、回転軸28の軸方向に伸長している。
【0091】
また、ガイド溝33aは、傾斜部48のそれぞれと非傾斜部49との端部同士を滑らかに接続する、1対の接続部50を有する。接続部50のそれぞれを径方向内側から見た形状は、
図12に示すように、扇形状である。
【0092】
本例の場合も、ガイド溝33aのうちで、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分である傾斜部48が、回転軸28の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。このため、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に生じる、ガイド部材29を回転させようとする力を小さく抑えられる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0093】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、
図14~
図16を用いて説明する。
【0094】
本例の構造では、ガイド部材29bのガイド溝33bの径方向内側から見た形状は、
図15に示すような、蛇行形状である。すなわち、本例の構造では、ガイド溝33bは、それぞれが回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32(
図7(a)参照)と同じ位置に存在する部分である、ガイド溝33bの両側の端部に、傾斜部48aを有する。傾斜部48aのそれぞれは、回転軸28の軸方向に対して角度θ(0゜<θ<90゜)だけ傾斜した方向に伸長している。
【0095】
また、ガイド溝33bは、該ガイド溝33bの中間部に、逆傾斜部51を有する。逆傾斜部51は、回転軸28の軸方向に対して、傾斜部48aと逆方向に傾斜した方向に伸長している。
【0096】
また、ガイド溝33aは、傾斜部48のそれぞれと非傾斜部49との端部同士を滑らかに接続する、1対の接続部50aを有する。接続部50aのそれぞれを径方向内側から見た形状は、
図15に示すように、略扇形状である。
【0097】
本例の場合も、ガイド溝33bのうちで、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝31の端部32と同じ位置に存在する部分である傾斜部48aが、回転軸28の軸方向に対して傾斜した方向に伸長している。このため、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に生じる、ガイド部材29bを回転させようとする力を小さく抑えられる。
【0098】
特に、本例の構造では、玉30が螺旋溝31の端部32に接触する際に生じる、ガイド部材29bを回転させようとする力(荷重成分f(=F・cosθ)、
図7(b)参照)を小さく抑えるために、傾斜部48aのそれぞれの傾斜の角度θ(0゜<θ<90゜)を大きくし、かつ、傾斜部48aに対する玉30の係合状態を安定させるために、傾斜部48aのそれぞれの長さを長くする構成を、実現しやすい。
【0099】
すなわち、傾斜部48aのそれぞれの傾斜の角度θ(0゜<θ<90゜)を大きくし、かつ、傾斜部48aのそれぞれの長さを長くすると、
図15に示すように、径方向内側から見た場合に、双方の傾斜部48aの互いに近い側の端部が、回転軸28の軸方向に対して直交する方向(
図15における左右方向)オフセットして配置される。このため、ガイド溝の中間部を、回転軸28の軸方向に伸長する非傾斜部により構成すると、この非傾斜部を介して、双方の傾斜部48aの互いに近い側の端部を接続することが難しくなる。
【0100】
これに対して、本例の構造では、ガイド溝33bの中間部を、回転軸28の軸方向に対して、傾斜部48aと逆方向に傾斜した逆傾斜部51により構成している。このため、この逆傾斜部51を介して、双方の傾斜部48aの互いに近い側の端部を接続することが容易となる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0101】
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例について、
図17および
図18を用いて説明する。
【0102】
本例の構造では、ガイド部材29cのうち、少なくとも玉30と接触する部分が金属により構成されている。具体的には、ガイド部材29cのうち、玉30と接触する部分であるガイド溝33を含む一部が金属により構成されており、かつ、残部が合成樹脂により構成されている。より具体的には、ガイド部材29cは、前記一部に相当するガイド溝33の表層部が、金属製の金属部52により構成されており、残部が合成樹脂製の樹脂部53により構成されている。
【0103】
金属部52は、鋼材などの金属により部分筒状に構成されており、径方向内側面に、ガイド溝33を有する。
【0104】
樹脂部53は、径方向内側面に、保持凹部54を有する。保持凹部54の表面は、金属部52の径方向外側面と合致する形状を有する。金属部52と樹脂部53とは、金属部52の径方向外側面と樹脂部53の保持凹部54の表面とを、融着、接着、圧入嵌合などすることにより、互いに結合固定されている。
【0105】
以上のような本例の構造では、ガイド部材29cのうち、ガイド溝33の表面を含む一部が金属により構成されており、残部が合成樹脂により構成されているため、ガイド溝33の強度および耐久性の確保と、ガイド部材29cの重量の軽減とを両立させることができる。
その他の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0106】
[実施の形態の第5例]
本発明の実施の形態の第5例について、
図19および
図20を用いて説明する。
【0107】
本例の構造では、ガイド部材29dは、外周面が、係止溝を有さない円筒面により構成されている。本例の構造では、ガイド部材29dの外周面と保持孔42の内周面との間にOリングは組み付けられていない。その代わりに、本例の構造では、ガイド部材29dの外周面を、保持孔42の内周面に対し、保持孔42の径方向に関するがたつきがない隙間嵌め、または、保持孔42の内側でガイド部材29dが径方向(
図19における上下方向)に移動することを阻害しない程度の軽圧入により内嵌している。これにより、ガイド部材29dの外周面と保持孔42の内周面との間のシール性を確保している。
【0108】
以上のような本例の構造では、ガイド部材29dの外周面と保持孔42の内周面との間に組み付けるOリングを省略しているため、部品点数を削減できる。また、ガイド部材29dを構成する樹脂部53aの外周面にOリングを係止するための係止溝が備えられていないため、樹脂部53aの成形コストを抑えられる。
その他の構成および作用効果は、実施の形態の第4例と同じである。
【0109】
[実施の形態の第6例]
本発明の実施の形態の第6例について、
図21を用いて説明する。
【0110】
本例の構造では、回転軸28aの螺旋溝31aの底部とガイド部材29のガイド溝33の底部との間の径方向幅が、回転軸28aの軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている。このような構成を採用するために、本例では、螺旋溝31aの深さが、回転軸28aの軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0111】
以上のような構成を有する本例の構造では、ステアリングホイール2(
図1参照)を中立回転位置から回転操作することにより、玉30をガイド溝33の中央部から端部に向けて移動させると、玉30には、コイルばね40の弾力に基づいて、螺旋溝31aの底部から、ガイド溝33の中央部に戻される方向の成分を持った押し付け力が作用する。このため、このような成分を持った押し付け力によって、ステアリングホイール2が中立回転位置に戻りやすくなる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0112】
[実施の形態の第7例]
本発明の実施の形態の第7例について、
図22を用いて説明する。
【0113】
本例の構造も、回転軸28の螺旋溝31の底部とガイド部材29eのガイド溝33cの底部との間の径方向幅が、回転軸28の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている。このような構成を採用するために、本例では、ガイド溝33cの深さが、回転軸28の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0114】
以上のような構成を有する本例の構造では、ステアリングホイール2(
図1参照)を中立回転位置から回転操作することにより、玉30をガイド溝33cの中央部から端部に向けて移動させると、玉30には、コイルばね40の弾力に基づいて、ガイド溝33cの底部から、ガイド溝33cの中央部に戻される方向の成分を持った押し付け力が作用する。このため、このような成分を持った押し付け力によって、ステアリングホイール2が中立回転位置に戻りやすくなる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0115】
[実施の形態の第8例]
本発明の実施の形態の第8例について、
図23を用いて説明する。
【0116】
本例の構造では、螺旋溝31Aの伸長方向である螺旋方向に直交する仮想平面で切断した場合の螺旋溝31Aの断面形状、および、ガイド溝33Aの伸長方向に直交する仮想平面で切断した場合のガイド溝33Aの断面形状として、図示のようなV字形状の断面形状を採用している。このような螺旋溝31Aおよびガイド溝33Aでは、玉30は、溝表面に対して、溝幅方向に離隔した2箇所(2つのP部)で接触する。このため、それぞれの接触部での面圧を小さく抑えられ、その分、螺旋溝31A、ガイド溝33A、および玉30の耐久性を向上させることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0117】
[実施の形態の第9例]
本発明の実施の形態の第9例について、
図24を用いて説明する。
【0118】
本例の構造では、螺旋溝31Bの伸長方向である螺旋方向に直交する仮想平面で切断した場合の螺旋溝31Bの断面形状、および、ガイド溝33Bの伸長方向に直交する仮想平面で切断した場合のガイド溝33Bの断面形状として、図示のようなゴシックアーチ形状の断面形状を採用している。すなわち、この断面形状は、曲率中心O
a、O
bが異なる位置に存在する2つの円弧を略V字形に組み合わせてなる。これら2つの円弧のそれぞれの曲率半径rは、互いに等しく、かつ、玉30の表面の曲率半径よりも大きい。このような螺旋溝31Bおよびガイド溝33Bでも、玉30は、溝表面に対して、軸方向に離隔した2箇所(2つのQ部)で接触する。また、これらの2箇所(2つのQ部)のそれぞれの接触面積は、
図23(a)における2箇所(2つのP部)のそれぞれの接触面積よりも大きい。したがって、螺旋溝31B、ガイド溝33B、および玉30の耐久性を、さらに向上させることができる。本発明を実施する場合には、回転制限装置の耐久性を確保する観点から、螺旋溝およびガイド溝のそれぞれの断面形状を、ゴシックアーチ形状とすることが最も好ましい。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0119】
[実施の形態の第10例]
本発明の実施の形態の第10例について、
図25を用いて説明する。
【0120】
本例は、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置1aに対して、ステアリングホイール2の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置10(実施の形態の第1例に関する、
図4~
図10参照)を適用した例である。なお、本発明の回転制限装置は、ステアリングホイールと1対の操舵輪とが機械的に接続されたステアリング装置に比べて、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に対して、より好適に適用することができる。
【0121】
本例のステアリング装置1aは、ステアリングホイール2を有する操舵装置56と、図示しない1対の操舵輪に舵角を付与するための転舵装置57とを備え、操舵装置56と転舵装置57とが電気的に接続されている。自動車の運転時には、ステアリングホイール2の回転操作量が、操舵装置56を構成する図示しないセンサにより検出され、該センサの出力信号に基づいて、転舵装置57を構成するアクチュエータが駆動されることにより、1対の操舵輪に舵角が付与される。
【0122】
操舵装置56は、ステアリングホイール2および前記センサの他、ステアリングシャフト58と、ステアリングコラム59と、図示しないロック機構と、反力付与装置60と、回転制限装置10とを備える。
【0123】
ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト58の後端部に支持固定されている。ステアリングシャフト58は、車体に支持されたステアリングコラム59の内側に回転可能に支持されている。
【0124】
本例のステアリング装置1aは、ステアリングホイール2の高さ位置の調節を可能とするための、首振り式のチルト機構を備える。このために、ステアリングコラム59は、前側に配置された筒状の前側コラム61と、後側に配置された筒状の後側コラム62と、前側コラム61の後端部と後側コラム62の前端部とを揺動可能に連結する車幅方向の揺動軸63とを有する。すなわち、後側コラム62は、前側コラム61に対し、車幅方向の揺動軸63を中心とする揺動可能である。前側コラム61は、自身の軸方向を前後方向に一致させることにより水平に配置され、かつ、図示しない支持ブラケットなどを用いて車体に支持固定されている。本例のステアリング装置1aでは、このように前側コラム61が水平方向に配置されているため、運転席の足元空間を上下方向に関して広く確保することができる。ただし、前側コラム61は、前側に向かうほど下側に向かう方向に傾斜した状態で配置することもできる。
【0125】
ステアリングシャフト58は、前側に配置された前側シャフト64と、後側に配置された後側シャフト65と、前側シャフト64の後端部と後側シャフト65の前端部とを揺動可能にかつトルク伝達可能に連結した自在継手66とを有する。前側シャフト64は、前側コラム61の内側に、図示しない転がり軸受により回転可能に支持されている。後側シャフト65は、後側コラム62の内側に、図示しない転がり軸受により回転可能に支持されている。自在継手66の揺動中心は、揺動軸63の中心軸線上に位置している。このため、前側コラム61に対する後側コラム62の揺動と、前側シャフト64に対する後側シャフト65の揺動とを、互いに同期して円滑に行える。
【0126】
ステアリングホイール2は、後側シャフト65の後端部に支持固定されている。ステアリングホイール2は、前側コラム61に対して後側コラム62が揺動変位できる範囲で、その高さ位置を調節可能である。また、前記ロック機構により、前側コラム61に対する後側コラム62の揺動変位を可能として、ステアリングホイール2の高さ位置の調節を可能とする状態と、前側コラム61に対する後側コラム62の揺動変位を不能として、ステアリングホイール2の高さ位置を調節後の位置に保持する状態とを、切り換え可能としている。
【0127】
反力付与装置60は、前側コラム61の前端部に支持されている。反力付与装置60は、動力源となる電動モータと減速機とを有しており、運転者によるステアリングホイール2の回転操作に伴って、電動モータを駆動する。電動モータのトルクは、減速機により増大されてから、前側シャフト64に対し、ステアリングホイール2の回転操作方向と逆方向のトルクである、逆トルクとして伝達される。これにより、該逆トルクに基づく操作反力が、ステアリングホイール2に付与される。なお、ステアリングホイール2に付与される操作反力の大きさは、基本的には、前記センサにより取得した、ステアリングホイール2の回転操作量やステアリングホイール2からステアリングシャフト58に入力されるトルクなどに応じて決定される。
【0128】
本例では、回転制限装置10(
図4~
図10参照)が備える回転軸28は、前側シャフト64の軸方向中間部を構成している。回転制限装置10が備えるケース37は、前側コラム61の軸方向中間部を構成している。本例のステアリング装置1aにおいても、このような回転制限装置10により、ステアリングホイール2の回転量を所定量以下に制限することができる。
【0129】
本発明は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。たとえば、実施の形態の第2例~第9例の回転制限装置も、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に対して適用することができる。
【0130】
1、1a ステアリング装置
2 ステアリングホイール
3 ステアリングシャフト
4 ステアリングコラム
5 電動アシスト装置
6a、6b 自在継手
7 中間シャフト
8 ステアリングギヤユニット
9 タイロッド
10 回転制限装置
11 ピニオン軸
12 インナコラム
13 アウタコラム
14 インナシャフト
15 アウタシャフト
16 ハウジング
17 電動モータ
18 トーションバー
19 出力軸
20a、20b 玉軸受
21 ウォーム減速機
22 トルクセンサ
23 ウォームホイール
24 ホイール歯
25 ウォーム
26 ウォーム歯
27 出力軸
28、28a 回転軸
29、29a、29b、29c、29d、29e、29z ガイド部材
30 玉
31、31a、31A、31B 螺旋溝
32 端部
33、33a、33b、33c、33z、33A、33B ガイド溝
34 係止溝
35 凹孔
36 凹部
37 ケース
38 Oリング
39 キャップ
40 コイルばね
41 皿ばね
42 保持孔
43 第1の筒部
44 第2の筒部
45 雌ねじ孔
46 雄ねじ部
47 凸部
48、48a 傾斜部
49 非傾斜部
50、50a 接続部
51 逆傾斜部
52 金属部
53、53a 樹脂部
54 保持凹部
55 凹面部
56 操舵装置
57 転舵装置
58 ステアリングシャフト
59 ステアリングコラム
60 反力付与装置
61 前側コラム
62 後側コラム
63 揺動軸
64 前側シャフト
65 後側シャフト
66 自在継手