(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164999
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】回転制限装置およびステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070144
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植本 隆明
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CB31
3D333CB44
3D333CC03
3D333CC14
3D333CC30
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD06
3D333CD08
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD21
3D333CD22
3D333CD23
3D333CD25
3D333CD26
3D333CD28
3D333CD37
3D333CD38
3D333CD45
3D333CD47
3D333CE04
3D333CE16
3D333CE17
3D333CE52
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくできる回転制限装置を提供する。
【解決手段】外周面に螺旋溝36を有する回転軸28と、回転軸28の外周面と対向する位置に、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝36が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝38を有するガイド部材29と、螺旋溝36とガイド溝38との間に配置された移動部材である玉30と、回転軸28の径方向に伸長する保持孔43を有し、かつ、該保持孔43の内側にガイド部材29を保持するケース31とを備え、ガイド部材29の外周面と保持孔43の内周面とが非円形嵌合している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋溝を有する回転軸と、
前記回転軸の外周面と対向する位置に、前記回転軸の軸方向に関して前記螺旋溝が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝を有する、ガイド部材と、
前記螺旋溝と前記ガイド溝との間に配置され、前記ガイド部材に対する前記回転軸の回転に伴い、前記螺旋溝に沿って移動しながら、前記ガイド溝に沿って前記回転軸の軸方向に移動することが可能であり、かつ、前記螺旋溝の両側の端部のそれぞれと接触することが可能である、移動部材と、
前記回転軸の径方向に伸長する保持孔を有し、かつ、該保持孔の内側に前記ガイド部材を保持するケースと、を備え、
前記ガイド部材の外周面と前記保持孔の内周面とが非円形嵌合している、
回転制限装置。
【請求項2】
前記ガイド部材の外周面が、前記回転軸の径方向に関する内側部のみで、前記保持孔の内周面と非円形嵌合している、
請求項1に記載の回転制限装置。
【請求項3】
前記保持孔のうち、前記回転軸の径方向に関する内側部は、前記回転軸の軸方向に関する幅寸法よりも、前記回転軸の軸方向と前記保持孔の伸長方向とのそれぞれに直交する方向に関する幅寸法の方が小さい、
請求項1または2に記載の回転制限装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記回転軸の外周面に沿って湾曲し、かつ、前記回転軸の外周面と対向する凹面部を備え、
前記ガイド溝は、前記凹面部から径方向外側に凹入するように備えられている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項5】
前記ケースが、前記保持孔の内側に、前記回転軸の径方向に関する移動を可能に保持されており、
前記ガイド部材を前記回転軸の径方向に関して内側に向けて付勢する、第1の弾性部材を備える、
請求項1~4のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項6】
前記螺旋溝の底部と前記ガイド溝の底部との間の径方向幅は、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている、
請求項5に記載の回転制限装置。
【請求項7】
前記螺旋溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている、
請求項6に記載の回転制限装置。
【請求項8】
前記ガイド溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている、
請求項6または7に記載の回転制限装置。
【請求項9】
前記第1の弾性部材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有し、かつ、前記移動部材が前記螺旋溝の端部と接触する際に弾性変形する第2の弾性部材をさらに備える、
請求項5~8のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項10】
前記ガイド部材のうち、前記移動部材と接触する部分が金属により構成されている、
請求項1~9のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項11】
前記ガイド部材のうち、前記移動部材と接触する部分を含む一部が金属により構成されており、かつ、残部が合成樹脂により構成されている、
請求項10に記載の回転制限装置。
【請求項12】
前記螺旋溝および前記ガイド溝のそれぞれの断面形状が、ゴシックアーチ形状である、
請求項1~11のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項13】
前記移動部材が玉により構成されている、
請求項1~12のうちのいずれかに記載の回転制限装置。
【請求項14】
操舵部材の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置を備え、該回転制限装置が、請求項1~13のうちのいずれかに記載の回転制限装置である、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の回転量を制限するための回転制限装置、および、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転部材を備えた各種機械装置において、回転部材の回転量を所定量以下に制限するために、回転制限装置を組み込む場合がある。
【0003】
たとえば、特開2007-106245号公報(特許文献1)および特開2014-210524号公報(特許文献2)には、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に組み込まれて、操舵部材の回転操作量を所定量以下に制限する、回転制限装置が記載されている。特に、特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置は、特開2007-106245号公報に記載された回転制限装置に比べて、少ない部品点数で構成でき、容易に組み立てられるという利点がある。
【0004】
特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置は、円板状の第1プレートと、円板状の第2プレートと、玉とを備える。第1プレートは、操舵部材に接続されて該操舵部材と一体に回転するステアリングシャフトに対し、同軸に固定されている。第2プレートは、ステアリングシャフトの軸方向に関して第1プレートと対向する位置に、第1プレートと同軸に配置され、使用時にも回転しない。第1プレートは、第2プレートに対向する側面に、径方向に伸長する直線状の第1転動路を有する。第2プレートは、第1プレートに対向する側面に、渦巻き状の第2転動路を有する。玉は、第1転動路と第2転動路との間に配置されている。なお、操舵部材が、中立回転位置、すなわち、自動車が直進走行している状態での回転位置にあるとき、玉は、第1転動路と第2転動路とのそれぞれの径方向中央部に位置している。
【0005】
このような構成を有する回転制限装置では、操舵部材を中立回転位置から一方側に回転させると、玉は、第1転動路と第2転動路とのそれぞれに沿って転動しながら径方向内側に移動する。そして、玉が渦巻き状の第2転動路の径方向内側の端部に接触した時点で、操舵部材がそれ以上一方側に回転することが制限される。これに対して、操舵部材を中立回転位置から他方側に回転させると、玉は、第1転動路と第2転動路とのそれぞれに沿って転動しながら径方向外側に移動する。そして、玉が渦巻き状の第2転動路の径方向外側の端部に接触した時点で、操舵部材がそれ以上他方側に回転することが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-106245号公報
【特許文献2】特開2014-210524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置は、第1プレートおよび第2プレートが、ステアリングシャフトと同軸に配置された円板状の部材であるため、径方向寸法が嵩みやすい。したがって、径方向の設置スペースが限られている場合には、採用しにくい。
【0008】
また、特開2014-210524号公報に記載された回転制限装置では、操舵部材を一方側に回転させて玉を第2転動路の径方向内側の端部に接触させる場合に、操舵部材を他方側に回転させて玉を第2転動路の径方向外側の端部に接触させる場合よりも、ステアリングシャフトの回転中心から玉の中心までの径方向距離が短くなる。このため、操舵部材を一方側に回転させて玉を第2転動路の径方向内側の端部に接触させる際の接触荷重が、操舵部材を他方側に回転させて玉を第2転動路の径方向外側の端部に接触させる際の接触荷重よりも大きくなり、運転者に違和感を与えるなどの不都合を生じる可能性がある。
【0009】
本発明は、径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくすることができる回転制限装置、および、該回転制限装置を備えたステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の回転制限装置は、回転軸と、ガイド部材と、移動部材と、ケースとを備える。
前記回転軸は、外周面に螺旋溝を有する。
前記ガイド部材は、前記回転軸の外周面と対向する位置に、前記回転軸の軸方向に関して前記螺旋溝が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝を有する。
前記移動部材は、前記螺旋溝と前記ガイド溝との間に配置され、前記ガイド部材に対する前記回転軸の回転に伴い、前記螺旋溝に沿って移動しながら、前記ガイド溝に沿って前記回転軸の軸方向に移動することが可能であり、かつ、前記螺旋溝の両側の端部のそれぞれと接触することが可能である。
前記ケースは、前記回転軸の径方向に伸長する保持孔を有し、かつ、該保持孔の内側に前記ガイド部材を保持する。
前記ガイド部材の外周面と前記保持孔の内周面とが非円形嵌合している。
【0011】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド部材の外周面が、前記回転軸の径方向に関する内側部のみで、前記保持孔の内周面と非円形嵌合している。
【0012】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記保持孔のうち、前記回転軸の径方向に関する内側部は、前記回転軸の軸方向に関する幅寸法よりも、前記回転軸の軸方向と前記保持孔の伸長方向とのそれぞれに直交する方向に関する幅寸法の方が小さい。
【0013】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド部材は、前記回転軸の外周面に沿って湾曲し、かつ、前記回転軸の外周面と対向する凹面部を備え、前記ガイド溝は、前記凹面部から径方向外側に凹入するように備えられている。
【0014】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ケースが、前記保持孔の内側に、前記回転軸の径方向に関する移動を可能に保持されており、前記ガイド部材を前記回転軸の径方向に関して内側に向けて付勢する、第1の弾性部材を備える。
【0015】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記螺旋溝の底部と前記ガイド溝の底部との間の径方向幅は、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている。
【0016】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記螺旋溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0017】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド溝の深さは、前記回転軸の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0018】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記第1の弾性部材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有し、かつ、前記移動部材が前記螺旋溝の端部と接触する際に弾性変形する第2の弾性部材をさらに備える。
【0019】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド部材のうち、前記移動部材と接触する部分が金属により構成されている。
【0020】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記ガイド部材のうち、前記移動部材と接触する部分を含む一部が金属により構成されており、かつ、残部が合成樹脂により構成されている。
【0021】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記螺旋溝および前記ガイド溝のそれぞれの断面形状が、ゴシックアーチ形状である。
【0022】
本発明の一態様の回転制限装置では、前記移動部材が玉により構成されている。
【0023】
本発明の一態様のステアリング装置では、操舵部材の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置を備え、該回転制限装置が、本発明の回転制限装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくすることができる回転制限装置、および、該回転制限装置を備えたステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置を組み込んだステアリング装置を示す部分切断側面図である。
【
図4】
図4は、第1例の回転制限装置の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1のC部に相当する、第1例の回転制限装置の断面図である。
【
図9】
図9(a)は、第1例の回転制限装置を構成するガイド部材、回転軸、および玉のみを取り出し、玉が螺旋溝の端部まで移動した状態を、回転軸の軸方向から見た図であり、
図9(b)は、ガイド部材および玉を、
図9(a)の下側から見た図であり、
図9(c)は、回転軸および玉を、
図9(a)の上方から見た図である。
【
図10】
図10は、第1例の回転制限装置を構成するガイド部材の斜視図である。
【
図11】
図11は、第1例の回転制限装置を構成するガイド部材を示しており、
図9(a)は、該ガイド部材を回転軸の軸方向から見た図であり、
図9(b)は、該ガイド部材を、
図9(a)の右側から見た図であり、
図9(c)は、該ガイド部材を、
図9(a)の下側から見た図である。
【
図12】
図12は、第1例の回転制限装置を構成するケースを、
図6の上方から見た平面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態の第2例に関する、
図6に相当する図である。
【
図14】
図14は、第2例の回転制限装置を構成するガイド部材の斜視図である。
【
図15】
図15は、第2例の回転制限装置を構成するガイド部材を示しており、
図15(a)は、該ガイド部材を回転軸の軸方向から見た図であり、
図15(b)は、該ガイド部材を、
図15(a)の右側から見た図であり、
図15(c)は、該ガイド部材を、
図15(a)の下側から見た図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態の第3例に関する、
図6に相当する図である。
【
図18】
図18は、第3例の回転制限装置を構成するガイド部材の斜視図である。
【
図19】
図19は、第3例の回転制限装置を構成するガイド部材を示しており、
図19(a)は、該ガイド部材を回転軸の軸方向から見た図であり、
図19(b)は、該ガイド部材を、
図19(a)の右側から見た図であり、
図19(c)は、該ガイド部材を、
図19(a)の下側から見た図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施の形態の第4例に関する、
図6に相当する図である。
【
図22】
図22は、第4例の回転制限装置を構成するガイド部材の斜視図である。
【
図23】
図23は、第4例の回転制限装置を構成するガイド部材を示しており、
図23(a)は、該ガイド部材を回転軸の軸方向から見た図であり、
図23(b)は、該ガイド部材を、
図23(a)の右側から見た図であり、
図23(c)は、該ガイド部材を、
図23(a)の下側から見た図である。
【
図24】
図24は、本発明の実施の形態の第5例に関する、
図6に相当する図である。
【
図26】
図26は、第5例の回転制限装置を構成するガイド部材の斜視図である。
【
図27】
図27は、第5例の回転制限装置を構成するガイド部材を示しており、
図27(a)は、該ガイド部材を回転軸の軸方向から見た図であり、
図27(b)は、該ガイド部材を、
図27(a)の右側から見た図であり、
図27(c)は、該ガイド部材を、
図27(a)の下側から見た図である。
【
図28】
図28は、本発明の実施の形態の第6例に関する、
図6に相当する図である。
【
図29】
図29(a)は、第6例の回転制限装置を構成するOリングを装着したガイド部材の分解斜視図である。
【
図30】
図30は、本発明の実施の形態の第7例に関する、
図6に相当する図である。
【
図31】
図31は、第7例の回転制限装置を構成するガイド部材の分解斜視図である。
【
図32】
図32は、本発明の実施の形態の第8例に関する、
図6に相当する図である。
【
図33】
図33は、本発明の実施の形態の第9例に関する、
図6に相当する図である。
【
図34】
図34は、本発明の実施の形態の第10例に関する、螺旋溝およびガイド溝の断面形状を示す図である。
【
図35】
図35は、本発明の実施の形態の第11例に関する、螺旋溝およびガイド溝の断面形状を示す図である。
【
図36】
図36は、本発明の実施の形態の第12例のステアリング装置を示す略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例の回転制限装置および該回転制限装置を適用したステアリング装置について、
図1~
図12を用いて説明する。なお、本例を含めて、以下、本発明の一態様の回転制限装置について、該回転制限装置をステアリング装置に適用した場合を例に説明するが、回転制限装置の用途はステアリング装置には制限されず、各種の機械装置に対して広く適用可能である。
【0027】
図1~
図3は、本例のステアリング装置1を示している。ステアリング装置1は、操舵部材であるステアリングホイール2の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置10を備える。
【0028】
より具体的には、本例のステアリング装置1は、ステアリングホイール2と、ステアリングシャフト3と、ステアリングコラム4と、電動アシスト装置5と、1対の自在継手6a、6bと、中間シャフト7と、ステアリングギヤユニット8と、1対のタイロッド9と、回転制限装置10とを備える。
【0029】
なお、ステアリング装置1に関して、前後方向および幅方向は、ステアリング装置1が組み付けられた車両の前後方向および幅方向をいい、前側は、
図1の左側であり、後側は、
図1の右側である。
【0030】
ステアリングシャフト3は、車体に支持されたステアリングコラム4の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト3の後側の端部には、ステアリングホイール2が支持固定されている。ステアリングシャフト3の前側の端部は、電動アシスト装置5と、後側の自在継手6aと、中間シャフト7と、前側の自在継手6bとを介して、ステアリングギヤユニット8のピニオン軸11に接続されている。このため、運転者がステアリングホイール2を回転させると、ステアリングホイール2の回転が、ステアリングギヤユニット8のピニオン軸11に伝達される。ピニオン軸11の回転は、ピニオン軸11と噛合した図示しないラック軸の直線運動に変換され、1対のタイロッド9を押し引きする。この結果、1対の操舵輪にステアリングホイール2の回転操作量に応じた舵角が付与される。
【0031】
本例のステアリング装置1は、ステアリングホイール2の前後位置を調節可能とするためのテレスコピック機構を備える。このために、ステアリングコラム4は、筒状のインナコラム12の後側の端部に、筒状のアウタコラム13の前側の端部を軸方向の相対変位を可能に外嵌することにより、全長を伸縮可能に構成されている。また、ステアリングシャフト3は、インナシャフト14の後側の端部の外周面に、筒状のアウタシャフト15の前側の端部の内周面をスプライン係合させることにより、インナシャフト14とアウタシャフト15との間でのトルク伝達を可能に、かつ、全長を伸縮可能に構成されている。アウタシャフト15は、後側の端部をアウタコラム13よりも後方に突出させた状態で、アウタコラム13の内側に図示しない転がり軸受により回転のみを可能に支持されている。したがって、アウタシャフト15の後側の端部に支持固定されたステアリングホイール2の前後位置を調節する際には、アウタシャフト15とともにアウタコラム13が、インナコラム12およびインナシャフト14に対して前後方向に変位することで、ステアリングシャフト3およびステアリングコラム4が伸縮する。
【0032】
電動アシスト装置5は、ハウジング16と、電動モータ17と、トーションバー18と、出力軸19と、1対の玉軸受20a、20bと、ウォーム減速機21と、トルクセンサ22とを備える。
【0033】
ハウジング16は、インナコラム12の前側の端部に結合固定されている。電動モータ17は、ハウジング16に支持固定されている。インナシャフト14の前側の端部は、ハウジング16の内側に挿入されている。インナシャフト14の前側の端部は、トーションバー18を介して、出力軸19に連結されている。出力軸19の前側の端部は、ハウジング16の前端面から前側に突出している。出力軸19の前側の端部には、後側の自在継手6aが結合される。出力軸19は、ハウジング16の内側に、1対の玉軸受20a、20bにより回転のみを可能に支持されている。出力軸19のうち、1対の玉軸受20a、20bにより支持された部分の間には、ウォーム減速機21を構成するウォームホイール23が外嵌固定されている。ウォームホイール23の外周面に備えられたホイール歯24には、ウォーム減速機21を構成するウォーム25の軸方向中間部外周面に備えられたウォーム歯26が噛合している。ウォーム25には、電動モータ17の出力軸27がトルク伝達可能に連結されている。
【0034】
出力軸19の後側の端部の周囲には、トルクセンサ22が配置されている。トルクセンサ22は、ステアリングホイール2の回転操作に伴うトーションバー18の捩れ量に基づいて、ステアリングホイール2からステアリングシャフト3に加えられたトルクの方向および大きさを検出する。電動アシスト装置5は、トルクセンサ22により検出したトルクに見合った電流で電動モータ17を駆動する。そして、電動モータ17により発生したアシストトルクを、ウォーム減速機21を介して出力軸19に付与することで、運転者がステアリングホイール2を回転操作するのに要する力を軽減する。
【0035】
回転制限装置10は、ステアリングシャフト3の前側部が位置する場所に設置されている。なお、本発明を実施する場合、回転制限装置10は、ステアリングホイール2から1対の操舵輪までの間に存在する、いずれかの操舵力伝達軸上の任意の場所に設置することができる。すなわち、回転制限装置10は、本例のように、トーションバー18よりもステアリングホイール2に近い側に設置することもできるし、トーションバー18よりも1対の操舵輪に近い側に設置することもできる。なお、本例の構造では、ステアリングシャフト3、出力軸19、中間シャフト7、およびピニオン軸11のそれぞれが、操舵力伝達軸に相当する。
【0036】
本例では、回転制限装置10は、
図4~
図7に示すように、回転軸28と、ガイド部材29と、移動部材である玉30と、ケース31と、第1の弾性部材であるコイルばね32とを備える。
【0037】
なお、回転制限装置10に関する以下の説明中、軸方向、径方向、周方向は、特に断らない限り、回転軸28の軸方向、径方向、周方向をいう。
【0038】
回転軸28は、回転操作されるステアリングホイール2とともに回転する部材であり、外周面に螺旋溝36を有する。本例では、回転軸28は、インナシャフト14の前側部を構成しており、一般構造用圧延鋼材(SS材)、機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)などの金属製である。ただし、本発明を実施する場合、回転軸28の材質は、回転軸28に必要な強度や剛性などの機械的特性を確保できる限り、特に限定されない。回転軸28の外径は、螺旋溝36から外れた部分で軸方向の全長にわたり一定である。
【0039】
螺旋溝36は、玉30の径方向内側部を係合させるための部位である。螺旋溝36は、全体がひとつながりに形成された、1条ねじの溝のような形状、すなわち、3次元の曲線形状を有する。本例では、螺旋溝36の深さは、軸方向に関する全範囲で一定である。なお、螺旋溝の深さは、後述するように玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際に、玉30および螺旋溝36の端部37の強度を確保することができ、かつ、玉30が螺旋溝36から脱落しなければ、任意の深さとすることができる。
【0040】
本例では、螺旋溝36の伸長方向である螺旋方向に直交する仮想平面で切断した場合の螺旋溝36の断面形状は、単一円弧形である。このような螺旋溝36の断面形状の曲率半径は、玉30の表面の曲率半径、すなわち玉30の半径よりも、少しだけ大きい。
【0041】
螺旋溝36の端部37は、
図9(a)に示すような凹曲面、すなわち、螺旋溝36の伸長方向に関して螺旋溝36の中央部から離れる方向に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した凹曲面により構成されている。ただし、螺旋溝36の端部37は、後述するように玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際に、玉30および螺旋溝36の端部37の強度を確保することができ、かつ、玉30が螺旋溝36から脱落しなければ、任意の形状を有する面により構成することができる。たとえば、螺旋溝36の端部37は、切り上がり形状を有する面や、螺旋溝36の伸長方向に対して直交する平面により構成することもできる。また、玉と螺旋溝の端部との衝突音を小さくするために、螺旋溝の端部を、たとえばポリアセタール(POM)やMCナイロンなどの合成樹脂により構成することもできる。
【0042】
回転軸28の外周面における螺旋溝36の巻数は、実質的に、回転制限装置10により制限されるステアリングホイール2の最大回転数に相当する数となる。ここで、ステアリングホイール2の最大回転数とは、ステアリングホイール2をいずれか一方の回転制限位置から他方の回転制限位置まで回転させたときの回転数である。図示の例(
図4参照)では、螺旋溝36の巻数は、実質的に2である。ただし、本発明を実施する場合、螺旋溝の巻数は、所望とするステアリングホイール2の最大回転数に合わせて、任意の巻数とすることができる。
【0043】
なお、螺旋溝36は、玉30をガイドする機能を有していればよいため、過度に精度よく形成する必要はない。このような螺旋溝36は、切削や転造などの適宜の加工方法で形成することができる。
【0044】
ガイド部材29は、回転軸28の外周面と対向する位置に、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝36が存在する範囲の全長にわたり備えられたガイド溝38を有する。
【0045】
本例では、ガイド部材29は、
図4、
図10、および
図11(a)~
図11(c)に示すように、全体が、回転軸28の径方向に伸長する略楕円柱状に構成されている。このようなガイド部材29は、回転軸28の径方向から見て、
図11(c)に示すような、非円形である楕円形の輪郭形状を有する。本例では、回転制限装置10の組み立て状態で、この輪郭形状の長手方向である長軸方向(
図11(c)における上下方向)を、回転軸28の軸方向に一致させている。本例では、ガイド部材29は、一般構造用圧延鋼材(SS材)、機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)などの金属製である。ただし、本発明を実施する場合、ガイド部材29の材質は、ガイド部材29に必要とされる強度や剛性などの機械的特性を確保できる限り、特に限定されない。
【0046】
ガイド部材29は、回転軸28の外周面と対向する径方向内側面(
図4~
図6、
図9(a)、
図10、
図11(a)、
図11(b)における下側面)に、平面部39を有する。平面部39は、回転軸28の径方向に伸長するガイド部材29の中心軸に対して直交する平面により構成されている。
【0047】
ガイド溝38は、平面部39から径方向外側に凹入するように形成されている。ガイド溝38は、径方向内側から見た場合に、
図11(c)に示すように、平面部39を、短軸方向(
図11(c)における左右方向)の中央部において長軸方向(
図11(c)における上下方向)に横切るように形成されている。つまり、ガイド溝38は、長軸方向、すなわち回転軸28の軸方向に伸長しており、ガイド溝38の両側の端部のそれぞれは、ガイド部材29の外周面に開口している。
【0048】
このようなガイド溝38は、径方向に関する玉30の外側部を係合させ、かつ、ステアリングホイール2および回転軸28が回転することに伴って玉30が軸方向に移動するようにガイドするための部位である。ガイド溝38は、回転軸28の軸方向に関して螺旋溝36が存在する範囲の全長にわたり備えられている。
【0049】
本例では、ガイド溝38の深さは、ガイド溝38の伸長方向の全範囲で一定である。なお、ガイド溝38の深さは、後述するように玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際に、玉30およびガイド溝38の強度を確保することができ、かつ、玉30がガイド溝38から脱落しなければ、任意の深さとすることができる。
【0050】
なお、本発明を実施する場合、ガイド溝の端部において、ガイド溝の底部の形状を、ガイド溝の端縁に向かうにしたがってガイド溝の深さが浅くなる方向に傾斜したテーパ形状または凹曲面形状とすることがきる。このような構成を採用すれば、玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際に、玉30が螺旋溝36の端縁に乗り上がりにくくすることができる。
【0051】
本例では、ガイド溝38の伸長方向に対して直交する仮想平面で切断した場合のガイド溝38の断面形状は、単一円弧形である。このようなガイド溝38の断面形状の曲率半径は、玉30の表面の曲率半径よりも、少しだけ大きい。
【0052】
本例では、ガイド部材29は、外周面に、1対の係止溝40を備える。1対の係止溝40は、回転軸28の径方向に関して互いに離隔配置されており、それぞれがガイド部材29の外周面の全周にわたり備えられている。
【0053】
本例では、ガイド部材29は、回転軸28の外周面に対して反対側を向いた径方向外側面(
図4~
図6、
図9(a)、
図10、
図11(a)、
図11(b)における上側面)の中央部に、径方向内側に凹入する有底の凹孔41を有し、かつ、径方向外側面のうちで凹孔41の周囲部分に、ガイド部材29の中心軸に対して直交する円環状の平面により構成された座面部42を有する。
【0054】
玉30は、螺旋溝36とガイド溝38との間に配置されている。より具体的には、玉30は、螺旋溝36に対して、螺旋溝36に沿う転動を可能に係合、すなわち転がり接触し、かつ、ガイド溝38に対して、ガイド溝38に沿う移動を可能に係合、すなわち、転がり接触している。このような玉30は、ガイド部材29に対する回転軸28の回転に伴い、螺旋溝36に沿って移動、すなわち転動しながら、ガイド溝38に沿って回転軸28の軸方向に移動することが可能であり、かつ、螺旋溝36の両側の端部37のそれぞれと接触することが可能である。また、玉30は、ステアリングホイール2が中立回転位置にあるとき、
図5に示すように、螺旋溝36が存在する軸方向範囲の中央部に位置している。
【0055】
なお、本例では、移動部材として玉を使用しているが、本発明を実施する場合には、移動部材として、玉以外の部材を用いることもできる。すなわち、移動部材は、ガイド部材に対する回転軸の回転に伴い、螺旋溝に沿って移動しながら、ガイド溝に沿って回転軸の軸方向に移動することが可能であり、かつ、前記螺旋溝の両側の端部のそれぞれと接触することが可能であればよい。
【0056】
本例では、玉30は、高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)などの金属製又はセラミック製である。ただし、本発明を実施する場合、玉30の材質は、玉30に必要な強度や剛性などの機械的特性を確保できる限り、特に限定されない。なお、本例では、玉30の表面と、その相手面である螺旋溝36の表面およびガイド溝38の表面とに、潤滑用のグリースが塗布されている。ただし、該グリースは省略することもできる。
【0057】
また、本例では、玉30が螺旋溝36の端部37に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図5および
図6における上側)に変位する場合を含めて、常に、螺旋溝36の開口縁とガイド溝38の開口縁との間隔が、玉30の直径よりも小さくなるように規制されている。これにより、回転軸28の外周面のうち螺旋溝36から外れた部分とガイド部材29の平面部39との間に、玉30が侵入することを防止し、螺旋溝36とガイド溝38との間に玉30が配置された状態が維持されるようにしている。
【0058】
ケース31は、回転軸28の径方向に伸長する保持孔43を有し、かつ、保持孔43の内側にガイド部材29を、回転軸28の径方向、すなわち保持孔43の伸長方向に関する移動を可能に保持している。
【0059】
本例では、ケース31は、全体がT字管状に構成されており、第1の筒部44と、保持孔43を有する第2の筒部45とを備える。本例では、ケース31は、インナコラム12の前側部を構成している。
【0060】
第1の筒部44は、円筒状に構成されており、径方向内側に回転軸28が挿通されている。
【0061】
第2の筒部45は、第1の筒部44の軸方向中間部の円周方向1箇所(図示の例では、上側部)から径方向外側に向けて伸長した略円筒状に構成されている。第2の筒部45の中心孔(内側空間)は、第1の筒部44の中心孔(内側空間)と連通している。第2の筒部45の中心孔は、径方向に関する内側部(
図5および
図6における下側部)が保持孔43により構成されており、径方向に関する外側部(
図5および
図6における上側部)が、保持孔43よりも大径の雌ねじ孔46により構成されている。なお、本例では、ケース31は、インナコラム12の前側部を構成している。このため、後述するように玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際に発生する荷重がガイド部材29などを介してケース31に負荷される際にも、ケース31は、インナコラム12の他の部分に対して回転したり変位したりすることはない。
【0062】
本例では、保持孔43は、楕円筒状の内周面を有する。このような保持孔43は、回転軸28の径方向から見て、
図12に示すように、非円形である楕円形の輪郭形状を有する。本例では、この輪郭形状の長手方向である長軸方向を、回転軸28の軸方向(
図5における左右方向、
図8および
図12における上下方向)に一致させている。このため、保持孔43は、回転軸28の軸方向に関する幅寸法Waよりも、回転軸28の軸方向と保持孔43の伸長方向とのそれぞれに直交する方向である幅方向(
図6、
図8、および
図12における左右方向)に関する幅寸法Wbの方が小さい。
【0063】
本例では、ガイド部材29は、
図5および
図6に示すように、1対の係止溝40のそれぞれにOリング33を係止した状態で、保持孔43の内側に、回転軸28の径方向に関する移動を可能に保持されている。このために、本例では、それぞれが楕円筒状に構成されたガイド部材29の外周面と保持孔43の内周面とが、隙間嵌めで、非円形嵌合である楕円嵌合している。また、この状態で、Oリング33は、係止溝40の底面と保持孔43の内周面との間で弾性的に圧縮されることにより、ガイド部材29の外周面と保持孔43の内周面との間をシールしている。これにより、ガイド部材29の外周面と保持孔43の内周面との間を通じて、玉30と螺旋溝36およびガイド溝38との接触部を潤滑するグリースが外部空間に流出したり、外部空間から玉30の設置部に塵芥などの異物が侵入したりすることを防止している。
【0064】
なお、本発明を実施する場合、ガイド部材29の外周面と保持孔43の内周面との間をシールするOリング33の数を、1個または3個以上とすることもできる。ただし、Oリング33の数を2個以上とすれば、これらのOリング33により、保持孔43の内周面に対してガイド部材29を、径方向に離隔した複数箇所で全周にわたり支持することができる。このため、保持孔43の中心軸に対してガイド部材29の中心軸が傾くことを抑制できる。
【0065】
本例では、第2の筒部45の中心孔の径方向外側の開口は、キャップ34により塞がれている。キャップ34は、全体が円板状に構成されている。キャップ34は、外周面に雄ねじ部47を有し、かつ、径方向内側面(
図4における下側面)の中央部に、径方向内側に向けて突出した円柱状の凸部48を有する。凸部48の外径は、ガイド部材29の凹孔41の内径よりも大きく、かつ、ガイド部材29の座面部42の外径よりも小さい。このようなキャップ34は、雄ねじ部47を雌ねじ孔46に螺合することによりケース31に装着され、第2の筒部45の中心孔の径方向外側の開口を塞いでいる。
【0066】
なお、本例では、キャップ34は、雄ねじ部47を雌ねじ孔46に螺合することによりケース31に装着されているため、ケース31に対して着脱可能である。したがって、たとえば、メンテナンス時に、キャップ34を取り外すことで、ケース31内に配置された部品を交換したり、前記グリースを補充したりすることができる。なお、本発明を実施する場合、ケースに対するキャップの取付方法は、本例とは異なる方法、たとえば、ダブルナットを用いた螺合、接着(螺合部の接着を含む)、かしめ付けなどの方法を採用することもできる。ただし、いずれの方法を採用する場合も、玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際に加わる荷重を、キャップにより支承できるようにすることが必要である。
【0067】
第1弾性部材であるコイルばね32は、ガイド部材29を回転軸28の径方向に関して内側に向けて付勢する。すなわち、本例では、コイルばね32は、自身の中心軸を径方向(
図4~
図6における上下方向)に一致させた状態で、ガイド部材29の凹孔41の内側に配置されており、かつ、凹孔41の底面とキャップ34の凸部48の径方向内側面との間で径方向に圧縮されている。これにより、コイルばね32は、ガイド部材29を径方向内側に向けて弾性的に付勢し、玉30に予圧を付与している。なお、本発明を実施する場合には、第1弾性部材として、コイルばね以外の各種ばねやゴム部材などを使用することもできる。
【0068】
本例の構造は、玉30が螺旋溝36の端部37と接触する際に弾性変形する、第2の弾性部材である皿ばね35をさらに備える。皿ばね35は、コイルばね32の弾性係数(ばね定数)k1よりも大きい弾性係数(ばね定数)k2を有する(k2>k1)。皿ばね35は、コイルばね32の周囲に、コイルばね32と同軸に配置されており、かつ、径方向(
図4~
図6における上下方向)に関して、ガイド部材29の座面部42とキャップ34の凸部48の径方向内側面との間に配置されている。
【0069】
皿ばね35は、玉30が螺旋溝36の端部37に接触していない状態では、ガイド部材29の座面部42とキャップ34の凸部48の径方向内側面との間で径方向(
図4~
図6における上下方向)に圧縮されないが、玉30が螺旋溝36の端部37に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4~
図6における上側)に変位する際には、ガイド部材29の座面部42とキャップ34の凸部48の径方向内側面との間で径方向に圧縮されて弾性変形するように、皿ばね35自身の軸方向寸法が規制されている。なお、本発明を実施する場合には、第2弾性部材として、皿ばね以外の各種ばねやゴム部材などを使用することもできる。
【0070】
なお、本発明を実施する場合には、第2の弾性部材(本例では、皿ばね35)は、省略することもできる。
【0071】
上述のような構成を有する本例のステアリング装置1では、ステアリングホイール2を中立回転位置から回転操作することにより、回転軸28をステアリングホイール2とともに回転させると、玉30は、螺旋溝36に沿って転動しながら、ガイド溝38に沿って軸方向に移動する。ここで、玉30がガイド溝38に沿って移動する向きは、ステアリングホイール2が一方側に回転する場合と他方側に回転する場合とで、互いに逆向きになる。
【0072】
そして、玉30がガイド溝38の端部まで移動して、
図9(a)に仮想線(二点鎖線)で示すように、玉30が螺旋溝36の端部37に接触すると、それ以上、玉30が螺旋溝36に沿って移動できなくなる。このため、ステアリングホイール2が、それ以上一方側または他方側に回転することを制限される。なお、本例では、玉30は、ステアリングホイール2が中立回転位置にあるとき、
図5に示すように、螺旋溝36が存在する軸方向範囲の中央部に位置している。このため、ステアリングホイール2が中立回転位置から一方側に回転する場合と他方側に回転する場合とで、ステアリングホイール2の回転制限量は互いに同じになり、具体的には、前記最大回転数の1/2となる。
【0073】
以上のようなステアリング装置1に組み込まれた、本例の回転制限装置10によれば、径方向寸法を小さく抑えられ、かつ、回転軸28の回転方向にかかわらず、回転量を制限する部材に作用する荷重をほぼ等しくすることができる。
【0074】
すなわち、本例の回転制限装置10では、玉30の係合箇所が、回転軸28の外周面に備えられた螺旋溝36、および、ガイド部材29のうちで回転軸28の外周面に対向する位置に備えられたガイド溝38であるため、回転制限装置10の径方向寸法を小さく抑えられる。したがって、径方向の設置スペースが限られている場合でも、回転制限装置10を設置しやすい。
【0075】
また、ステアリングホイール2を一方側に回転操作して玉30を螺旋溝36の一方側の端部37に接触させた場合における、回転軸28の回転中心から玉30の中心までの径方向距離と、ステアリングホイール2を他方側に回転操作して玉30を螺旋溝36の他方側の端部37に接触させた場合における、回転軸28の回転中心から玉30の中心までの径方向距離とを、同じ大きさにすることができる。このため、玉30が螺旋溝36の一方側の端部37に接触する際の接触荷重と、玉30が螺旋溝36の他方側の端部37に接触する際の接触荷重とを、ほぼ等しくすることができる。したがって、ステアリングホイール2を回転操作する運転者に違和感を与えるなどの不都合が生じることを防止できる。
【0076】
本例の構造では、ガイド部材29の外周面と保持孔43の内周面とが、非円形嵌合である楕円嵌合、すなわち、相対回転不能に嵌合している。このため、
図9(a)および
図9(b)に示すように、玉30が螺旋溝36の端部37に接触することに伴い、玉30からガイド溝38の端部に対して、回転軸28の軸方向に直交する方向、すなわち、ガイド部材29を自身の中心軸を中心に回転させる方向の荷重Fが作用する際にも、保持孔43の内側でガイド部材29が自身の中心軸を中心に回転することを防止できる。このため、このようにガイド部材29が回転して、ステアリングホイール2の回転制限量が大きくなるといった不都合が生じることを、有効に防止できる。
【0077】
保持孔43は、回転軸28の軸方向に関する幅寸法Waよりも、幅方向に関する幅寸法Wbの方が小さい。このため、本例の回転制限装置10を組み立てる際に、保持孔43のうち、回転軸28の径方向に関する内側部において、螺旋溝36に係合させた玉30を幅方向の中央部に寄せながら組み立てるといった手間を軽減できる。したがって、回転制限装置10の組み立て性を確保しやすい。
【0078】
コイルばね32により、ガイド部材29を径方向内側に向けて弾性的に付勢することで、玉30に予圧を付与している。このため、ステアリングホイール2を回転操作する際に、玉30ががたつくことを抑えられる。したがって、玉30のがたつきに基づく振動が、ステアリングホイール2に伝わり、運転者に違和感を与えるといった不都合を防止できる。
【0079】
玉30に付与された予圧に基づいて、回転軸28、すなわち、ステアリングホイール2に、適度な回転抵抗を生じさせることができる。このため、運転者の操舵感を向上させることができる。
【0080】
玉30が螺旋溝36の端部37に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4~
図6における上側)に変位する際には、ガイド部材29の凹孔41の底面とキャップ34の凸部48の径方向内側面との間で、コイルばね32が径方向(
図4~
図6における上下方向)にさらに圧縮される。このため、玉30が螺旋溝36の端部37に衝突する際の衝撃および打音を、コイルばね32の弾力によって低減することができる。
【0081】
玉30が螺旋溝36の端部37に接触することに伴い、ガイド部材29が玉30に押されて径方向外側(
図4~
図6における上側)に変位する際には、ガイド部材29の座面部42とキャップ34の凸部48の径方向内側面との間で、皿ばね35が径方向(
図4~
図6における上下方向)に圧縮されて弾性変形する。このため、玉30が螺旋溝36の端部37に衝突する際の衝撃および打音を、コイルばね32の弾力だけでなく、皿ばね35の弾力によっても、低減することができる。すなわち、本例の構造では、玉30が螺旋溝36の端部37に衝突する際の衝撃および打音の低減効果を、皿ばね35によって向上させることができる。
【0082】
なお、コイルばね32の弾性係数k1を大きくしすぎると、玉30の動き、すなわち、ステアリングホイール2の回転操作が、過度に重くなったり、滑らかに行われなくなったりする。このため、本例の構造では、コイルばね32の弾性係数k1を、皿ばね35の弾性係数k2よりも小さくしている(k1<k2)。
【0083】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図13~
図15を用いて説明する。
【0084】
本例の構造では、ガイド部材29aは、回転軸28の外周面と対向する径方向内側面に、回転軸28の外周面に沿って湾曲し、かつ、回転軸28の外周面と対向する凹面部49を有する。凹面部49は、回転軸28の外周面の曲率半径よりも少しだけ大きい曲率半径を有する部分円筒状の凹面により構成されており、回転軸28の外周面に近接して配置されている。ガイド溝38は、凹面部49から径方向外側に凹入するように備えられている。
【0085】
本例の構造では、回転制限装置10を組み立てる際に、保持孔43のうち、回転軸28の径方向に関する内側部において、螺旋溝36に係合させた玉30を、ガイド部材29aの凹面部49により案内して幅方向中央に寄せながら組み立てられる。したがって、回転制限装置10の組み立て性を確保しやすい。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0086】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、
図16~
図19を用いて説明する。
【0087】
本例の構造では、ガイド部材29bは、全体が、回転軸28の径方向に伸長する略矩形柱状に構成されている。また、ケース31aの保持孔43aは、略矩形筒状の内周面を有する。そして、ガイド部材29bの外周面と保持孔43aの内周面とが、
図16および
図17に示すように、隙間嵌めで非円形嵌合している。このため、玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際にも、保持孔43aの内側でガイド部材29bが自身の中心軸を中心に回転することを防止できる。
【0088】
また、本例の構造では、ガイド部材29bおよび保持孔43aのそれぞれは、回転軸28の径方向から見て、回転軸28の軸方向を長手方向とする略矩形の輪郭形状を有する。すなわち、本例の構造でも、保持孔43aは、回転軸28の軸方向に関する幅寸法Waよりも、幅方向に関する幅寸法Wbの方が小さい。このため、実施の形態の第1例の場合と同様の理由により、回転制限装置10の組み立て性を確保しやすい。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0089】
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例について、
図20~
図23を用いて説明する。
【0090】
本例の構造では、ガイド部材29cの外周面が、回転軸28の径方向に関する内側部のみで、ケース31bの保持孔43bの内周面と非円形嵌合している。
【0091】
すなわち、本例の構造では、ガイド部材29cは、回転軸28の径方向に関する内側の端部に内側ガイド部50を有し、回転軸28の径方向に関する外側の端部および中間部に外側ガイド部51を有する。内側ガイド部50は、幅方向の中間部をガイド溝38が軸方向に貫通することによって、全体が二股に構成されている。内側ガイド部50は、略楕円筒状の外周面を有する。外側ガイド部51は、円筒状の外周面を有する。本例では、1対の係止溝40は、外側ガイド部51の外周面に備えられている。
【0092】
本例の構造では、保持孔43bは、回転軸28の径方向に関する内側の端部に、回転軸28の径方向に伸長する略楕円孔により構成された内側孔部52を有し、回転軸28の径方向に関する外側の端部および中間部に、回転軸28の径方向に伸長する円孔により構成された外側孔部53を有する。
【0093】
そして、本例の構造では、内側ガイド部50の外周面と内側孔部52の内周面とを、
図20および
図21(b)に示すように、隙間嵌めで非円形嵌合させ、かつ、外側ガイド部51の外周面と外側孔部53の内周面とを、
図20および
図21(a)に示すように、隙間嵌めで円形嵌合させている。また、この状態で、係止溝40のそれぞれに係止されたOリング33を、該係止溝40の底面と外側孔部53の内周面との間で弾性的に圧縮している。
【0094】
本例の構造では、内側ガイド部50の外周面と内側孔部52の内周面とを非円形嵌合させているため、玉30が螺旋溝36の端部37に接触する際にも、保持孔43aの内側でガイド部材29bが自身の中心軸を中心に回転することを防止できる。
【0095】
本例の構造は、保持孔43bのうち、回転軸28の径方向に関する内側部である内側孔部52は、回転軸28の軸方向に関する幅寸法Waよりも、幅方向に関する幅寸法Wbの方が小さい。このため、実施の形態の第1例の場合と同様の理由により、回転制限装置10の組み立て性を確保しやすい。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例および第2例と同様である。
【0096】
[実施の形態の第5例]
本発明の実施の形態の第5例について、
図24~
図27を用いて説明する。
【0097】
本例の構造では、互いに隙間嵌めで非円形嵌合する、ガイド部材29dの内側ガイド部50aの外周面と、ケース31cを構成する保持孔43cの内側孔部52aの内周面とを、
図24および
図25(b)に示すように、略矩形筒状に構成している。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第4例と同様である。
【0098】
[実施の形態の第6例]
本発明の実施の形態の第6例について、
図28および
図29を用いて説明する。
【0099】
本例の構造では、ガイド部材29eのうち、少なくとも玉30と接触する部分が金属により構成されている。具体的には、ガイド部材29eのうち、玉30と接触する部分であるガイド溝38を含む一部が金属により構成されており、かつ、残部が合成樹脂により構成されている。より具体的には、ガイド部材29eは、前記一部に相当する、ガイド溝38の表層部が、金属製の金属部54により構成されており、残部が合成樹脂製の樹脂部55により構成されている。
【0100】
金属部54は、鋼材などの金属により部分筒状に構成されており、径方向内側面に、ガイド溝38を有する。
【0101】
樹脂部55は、径方向内側面に、保持凹部56を有する。保持凹部56の表面は、金属部54の径方向外側面と合致する形状を有する。金属部54と樹脂部55とは、金属部54の径方向外側面と樹脂部55の保持凹部56の表面とを、融着、接着、圧入嵌合などすることにより、互いに結合固定されている。
【0102】
以上のような本例の構造では、ガイド部材29eのうち、ガイド溝38の表面を含む一部が金属により構成されており、残部が合成樹脂により構成されているため、ガイド溝38の強度および耐久性の確保と、ガイド部材29eの重量の軽減とを両立させることができる。
その他の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0103】
[実施の形態の第7例]
本発明の実施の形態の第7例について、
図30および
図31を用いて説明する。
【0104】
本例の構造では、ガイド部材29fは、外周面が、係止溝を有さない円筒面により構成されている。本例の構造では、ガイド部材29fの外周面と保持孔43の内周面との間にOリングは組み付けられていない。その代わりに、本例の構造では、ガイド部材29fの外周面を、保持孔43の内周面に対し、保持孔43の径方向に関するがたつきがない隙間嵌め、または、保持孔43の内側でガイド部材29fが径方向(
図30における上下方向)に移動することを阻害しない程度の軽圧入により内嵌している。これにより、ガイド部材29fの外周面と保持孔43の内周面との間のシール性を確保している。
【0105】
以上のような本例の構造では、ガイド部材29fの外周面と保持孔43の内周面との間に組み付けるOリングを省略しているため、部品点数を削減できる。また、ガイド部材29dを構成する樹脂部55aの外周面にOリングを係止するための係止溝が備えられていないため、樹脂部55aの成形コストを抑えられる。
その他の構成および作用効果は、実施の形態の第6例と同様である。
【0106】
[実施の形態の第8例]
本発明の実施の形態の第8例について、
図32を用いて説明する。
【0107】
本例の構造では、回転軸28aの螺旋溝36aの底部とガイド部材29のガイド溝38の底部との間の径方向幅が、回転軸28aの軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている。このような構成を採用するために、本例では、螺旋溝36aの深さが、回転軸28aの軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0108】
以上のような構成を有する本例の構造では、ステアリングホイール2(
図1参照)を中立回転位置から回転操作することにより、玉30をガイド溝38の中央部から端部に向けて移動させると、玉30には、コイルばね32の弾力に基づいて、螺旋溝36aの底部から、ガイド溝38の中央部に戻される方向の成分を持った押し付け力が作用する。このため、このような成分を持った押し付け力によって、ステアリングホイール2が中立回転位置に戻りやすくなる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0109】
[実施の形態の第9例]
本発明の実施の形態の第9例について、
図33を用いて説明する。
【0110】
本例の構造も、回転軸28の螺旋溝36の底部とガイド部材29gのガイド溝38aの底部との間の径方向幅が、回転軸28の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって小さくなっている。このような構成を採用するために、本例では、ガイド溝38aの深さが、回転軸28の軸方向に関して中央部から両側に向かうにしたがって浅くなっている。
【0111】
以上のような構成を有する本例の構造では、ステアリングホイール2(
図1参照)を中立回転位置から回転操作することにより、玉30をガイド溝38aの中央部から端部に向けて移動させると、玉30には、コイルばね32の弾力に基づいて、ガイド溝38aの端部から、ガイド溝38aの中央部に戻される方向の成分を持った押し付け力が作用する。このため、このような成分を持った押し付け力によって、ステアリングホイール2が中立回転位置に戻りやすくなる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0112】
[実施の形態の第10例]
本発明の実施の形態の第10例について、
図34を用いて説明する。
【0113】
本例の構造では、螺旋溝36bの伸長方向である螺旋方向に直交する仮想平面で切断した場合の螺旋溝36bの断面形状、および、ガイド溝38bの伸長方向に直交する仮想平面で切断した場合のガイド溝38bの断面形状として、図示のようなV字形状の断面形状を採用している。このような螺旋溝36bおよびガイド溝38bでは、玉30は、溝表面に対して、溝幅方向に離隔した2箇所(2つのP部)で接触する。このため、それぞれの接触部での面圧を小さく抑えられ、その分、螺旋溝36b、ガイド溝38b、および玉30の耐久性を向上させることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0114】
[実施の形態の第11例]
本発明の実施の形態の第11例について、
図35を用いて説明する。
【0115】
本例の構造では、螺旋溝36cの伸長方向である螺旋方向に直交する仮想平面で切断した場合の螺旋溝36cの断面形状、および、ガイド溝38cの伸長方向に直交する仮想平面で切断した場合のガイド溝38cの断面形状として、図示のようなゴシックアーチ形状の断面形状を採用している。すなわち、この断面形状は、曲率中心O
a、O
bが異なる位置に存在する2つの円弧を略V字形に組み合わせてなる。これら2つの円弧のそれぞれの曲率半径rは、互いに等しく、かつ、玉30の表面の曲率半径よりも大きい。このような螺旋溝36cおよびガイド溝38cでも、玉30は、溝表面に対して、軸方向に離隔した2箇所(2つのQ部)で接触する。また、これらの2箇所(2つのQ部)のそれぞれの接触面積は、
図34における2箇所(2つのP部)のそれぞれの接触面積よりも大きい。したがって、螺旋溝36c、ガイド溝38c、および玉30の耐久性を、さらに向上させることができる。本発明を実施する場合には、回転制限装置の耐久性を確保する観点から、螺旋溝およびガイド溝のそれぞれの断面形状を、ゴシックアーチ形状とすることが最も好ましい。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0116】
[実施の形態の第12例]
本発明の実施の形態の第12例について、
図36を用いて説明する。
【0117】
本例は、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置1aに対して、ステアリングホイール2の回転量を所定量以下に制限する回転制限装置10(実施の形態の第1例に関する、
図4~
図12参照)を適用した例である。なお、本発明の回転制限装置は、ステアリングホイールと1対の操舵輪とが機械的に接続されたステアリング装置に比べて、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に対して、より好適に適用することができる。
【0118】
本例のステアリング装置1aは、ステアリングホイール2を有する操舵装置57と、図示しない1対の操舵輪に舵角を付与するための転舵装置58とを備え、操舵装置57と転舵装置58とが電気的に接続されている。自動車の運転時には、ステアリングホイール2の回転操作量が、操舵装置57を構成する図示しないセンサにより検出され、該センサの出力信号に基づいて、転舵装置58を構成するアクチュエータが駆動されることにより、1対の操舵輪に舵角が付与される。
【0119】
操舵装置57は、ステアリングホイール2および前記センサの他、ステアリングシャフト59と、ステアリングコラム60と、図示しないロック機構と、反力付与装置61と、回転制限装置10とを備える。
【0120】
ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト59の後端部に支持固定されている。ステアリングシャフト59は、車体に支持されたステアリングコラム60の内側に回転可能に支持されている。
【0121】
本例のステアリング装置1aは、ステアリングホイール2の高さ位置の調節を可能とするための、首振り式のチルト機構を備える。このために、ステアリングコラム60は、前側に配置された筒状の前側コラム62と、後側に配置された筒状の後側コラム63と、前側コラム62の後端部と後側コラム63の前端部とを揺動可能に連結する車幅方向の揺動軸64とを有する。すなわち、後側コラム63は、前側コラム62に対し、車幅方向の揺動軸64を中心とする揺動可能である。前側コラム62は、自身の軸方向を前後方向に一致させることにより水平に配置され、かつ、図示しない支持ブラケットなどを用いて車体に支持固定されている。本例のステアリング装置1aでは、このように前側コラム62が水平方向に配置されているため、運転席の足元空間を上下方向に関して広く確保することができる。ただし、前側コラム62は、前側に向かうほど下側に向かう方向に傾斜した状態で配置することもできる。
【0122】
ステアリングシャフト59は、前側に配置された前側シャフト65と、後側に配置された後側シャフト66と、前側シャフト65の後端部と後側シャフト66の前端部とを揺動可能にかつトルク伝達可能に連結した自在継手67とを有する。前側シャフト65は、前側コラム62の内側に、図示しない転がり軸受により回転可能に支持されている。後側シャフト66は、後側コラム63の内側に、図示しない転がり軸受により回転可能に支持されている。自在継手67の揺動中心は、揺動軸64の中心軸線上に位置している。このため、前側コラム62に対する後側コラム63の揺動と、前側シャフト65に対する後側シャフト66の揺動とを、互いに同期して円滑に行える。
【0123】
ステアリングホイール2は、後側シャフト66の後端部に支持固定されている。ステアリングホイール2は、前側コラム62に対して後側コラム63が揺動変位できる範囲で、その高さ位置を調節可能である。また、前記ロック機構により、前側コラム62に対する後側コラム63の揺動変位を可能として、ステアリングホイール2の高さ位置の調節を可能とする状態と、前側コラム62に対する後側コラム63の揺動変位を不能として、ステアリングホイール2の高さ位置を調節後の位置に保持する状態とを、切り換え可能としている。
【0124】
反力付与装置61は、前側コラム62の前端部に支持されている。反力付与装置61は、動力源となる電動モータと減速機とを有しており、運転者によるステアリングホイール2の回転操作に伴って、電動モータを駆動する。電動モータのトルクは、減速機により増大されてから、前側シャフト65に対し、ステアリングホイール2の回転操作方向と逆方向のトルクである、逆トルクとして伝達される。これにより、該逆トルクに基づく操作反力が、ステアリングホイール2に付与される。なお、ステアリングホイール2に付与される操作反力の大きさは、基本的には、前記センサにより取得した、ステアリングホイール2の回転操作量やステアリングホイール2からステアリングシャフト59に入力されるトルクなどに応じて決定される。
【0125】
本例では、回転制限装置10(
図4~
図12参照)が備える回転軸28は、前側シャフト65の軸方向中間部を構成している。回転制限装置10が備えるケース31は、前側コラム62の軸方向中間部を構成している。本例のステアリング装置1aにおいても、このような回転制限装置10により、ステアリングホイール2の回転量を所定量以下に制限することができる。
【0126】
本発明は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。たとえば、実施の形態の第2例~第11例の回転制限装置も、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に対して適用することができる。
【0127】
1、1a ステアリング装置
2 ステアリングホイール
3 ステアリングシャフト
4 ステアリングコラム
5 電動アシスト装置
6a、6b 自在継手
7 中間シャフト
8 ステアリングギヤユニット
9 タイロッド
10 回転制限装置
11 ピニオン軸
12 インナコラム
13 アウタコラム
14 インナシャフト
15 アウタシャフト
16 ハウジング
17 電動モータ
18 トーションバー
19 出力軸
20a、20b 玉軸受
21 ウォーム減速機
22 トルクセンサ
23 ウォームホイール
24 ホイール歯
25 ウォーム
26 ウォーム歯
27 出力軸
28、28a 回転軸
29、29a、29b、29c、29d、29e、29f、29g ガイド部材
30 玉
31、31a、31b、31c ケース
32 コイルばね
33 Oリング
34 キャップ
35 皿ばね
36、36a、36b、36c 螺旋溝
37 端部
38、38a、38b、38c ガイド溝
39 平面部
40 係止溝
41 凹孔
42 座面部
43、43a、43b、43c 保持孔
44 第1の筒部
45 第2の筒部
46 雌ねじ孔
47 雄ねじ部
48 凸部
49 凹面部
50、50a 内側ガイド部
51 外側ガイド部
52、52a 内側孔部
53 外側孔部
54 金属部
55、55a 樹脂部
56 保持凹部
57 操舵装置
58 転舵装置
59 ステアリングシャフト
60 ステアリングコラム
61 反力付与装置
62 前側コラム
63 後側コラム
64 揺動軸
65 前側シャフト
66 後側シャフト
67 自在継手