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  • 特開-流量センサ 図1
  • 特開-流量センサ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165025
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】流量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/12 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
G01F1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070195
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】三浦 卓也
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA01
2F030CC04
2F030CD04
2F030CE03
2F030CF01
2F030CG01
2F030CG09
(57)【要約】
【課題】ケースの外部に設けた磁気検出器によりケース内の羽根車の回転を検出し、流体の流量と磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数Pとの関係を表す特性線に基づいて流量を算出する流量センサであって、高流量側と低流量側とで特性線が異なるものにおいて、流量の算出に用いる特性線の切換えが頻繁に起こることで検出流量のばらつきが大きくなることを抑制できるようにする。
【解決手段】高流量側の特性線Hと低流量側の特性線Lとの交点Oを含む所定のパルス数範囲を不感帯YPとして設定する。Pが不感帯上限YPmaxを上回ったときは、Pが次に不感帯下限YPminを下回るまで、高流量側特性線Hに基づいて流量を算出し、Pが不感帯下限YPminを下回ったときは、Pが次に不感帯上限YPmaxを上回るまで、低流量側特性線Lに基づいて流量を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出し、流体の流量と磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数との関係を表す流量パルス数特性線に基づいて流量を算出する流量センサであって、高流量側と低流量側とで流量パルス数特性線が異なるものにおいて、
高流量側の流量パルス数特性線と低流量側の流量パルス数特性線との交点の単位時間当たりパルス数を含む所定のパルス数範囲を不感帯として設定し、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が不感帯の上限を上回ったときは、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が次に不感帯の下限を下回るまで、高流量側の流量パルス数特性線に基づいて流量を算出し、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が不感帯の下限を下回ったときは、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が次に不感帯の上限を上回るまで、低流量側の流量パルス数特性線に基づいて流量を算出することを特徴とする流量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出し、流体の流量と磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数との関係を表す流量パルス数特性線に基づいて流量を算出する流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流量センサにおいて、センサケースの入口側に設けられる羽根車用の軸受部材に、軸方向に対し傾斜した複数の誘導羽根を設け、羽根車に向かう流体の流れに誘導羽根により旋回成分を付与して、低流量も検知できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような流量センサでは、流体の流量と磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数との関係が図3に点線で示す如くになる。この特性に近似させるには、傾きの異なる高流量側の流量パルス数特性線Hと低流量側の流量パルス数特性線Lを用いざるを得なくなる。そして、従来は、磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数をP、高流量側の流量パルス数特性線Hと低流量側の流量パルス数特性線Lとの交点Oの単位時間当たりパルス数をOPとして、P≧OPのときに、高流量側の流量パルス数特性線Hに基づいて流量を算出し、P<OPのときに、低流量側の流量パルス数特性線Lに基づいて流量を算出している。
【0004】
然し、これでは、PがOP近傍であるときに、流量の算出に用いる流量パルス数特性線の切換えが頻繁に起こることになり、流量センサによる検出流量のばらつきが大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-85549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、検出流量のばらつきを小さくすることができるようにした流量センサを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、流体が流れる筒状のセンサケース内に、流体の流れで回転する羽根車が設けられ、羽根車の羽根を磁化させて、センサケースの外部に設けた磁気検出器により羽根車の回転を検出し、流体の流量と磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数との関係を表す流量パルス数特性線に基づいて流量を算出する流量センサであって、高流量側と低流量側とで流量パルス数特性線が異なるものにおいて、高流量側の流量パルス数特性線と低流量側の流量パルス数特性線との交点の単位時間当たりパルス数を含む所定のパルス数範囲を不感帯として設定し、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が不感帯の上限を上回ったときは、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が次に不感帯の下限を下回るまで、高流量側の流量パルス数特性線に基づいて流量を算出し、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が不感帯の下限を下回ったときは、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が次に不感帯の上限を上回るまで、低流量側の流量パルス数特性線に基づいて流量を算出することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、磁気センサから出力される単位時間当たりパルス数が不感帯の範囲に入っているときは、流量の算出に用いる流量パルス数特性線の切換が行われない。そのため、流量の算出に用いる流量パルス数特性線の頻繁な切換えを抑制して、検出流量のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の流量センサの切断側面図。
図2】実施形態の流量センサの実施形態の流量センサの分解状態の斜視図。
図3】実施形態の流量センサにおける高流量側と低流量側の流量パルス数特性線を示すグラフ。
図4】実施形態の流量センサで行う流量算出制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、1は、給湯用熱交換器に連なる給水路等に介設される本発明の実施形態の流量センサを示している。この流量センサ1は、流体が流れる筒状のセンサケース2と、センサケース2内に設けられた、流体の流れで回転する羽根車3と、センサケース2の外部に、羽根車3に対向するように設けられたホール素子等から成る磁気検出器4と、磁気検出器4に接続された演算器5とを備えている。
【0011】
図2も参照して、羽根車3は、軸方向に長手の筒状の胴体部31と、胴体部31に貫通させた回転軸32と、胴体部31の外面に放射状に配置した、磁化された複数の羽根33とを有している。各羽根33は、軸方向に対し傾斜している。羽根車33が回転すると、各羽根33が磁気検出器4に対向する位置を通過する度に磁気検出器4からパルスが出力され、このパルスが演算器5に入力される。そして、演算器5は、流体の流量と磁気検出器4から出力される単位時間当たりのパルス数との関係を表す流量パルス数特性線に基づいて流量を算出する。
【0012】
センサケース2の入口側(図1の下側)と出口側には、センサケース2内に羽根車3を回転自在に保持する軸受部材21,22が設けられている。入口側の軸受部材21は、センサケース2と一体成形され、羽根車3の回転軸32の一端部を挿入する軸孔211を形成した筒状の軸受部212と、軸受部212の外周面から外方に放射状にのびる、軸方向に対し傾斜した複数の誘導羽根213を有している。
【0013】
出口側の軸受部材22には、羽根車3の回転軸32の他端部を挿入する軸孔221を形成した筒状の軸受部222と、センサケース2の出口側端部(上端部)に嵌合固定される環状のリム部223と、軸受部222とリム部223との間に放射状に配置した複数のスポーク部224とを有している。
【0014】
また、出口側の軸受部材22には、回転抑止部材23が装着されている。回転抑止部材23は、筒状であって、出口側の軸受部材22の複数のスポーク部224に夫々軸方向に変位自在に係合する複数のスリット231が形成されている。また、回転抑止部材23の羽根車2に対向する一端面(下端面)には、羽根車3の羽根33に係合可能な突起232が複数突設されている。そして、センサケース2内に出口側から入口側に向けて流体が逆流するときは、回転抑止部材23が羽根車3側(下方)に変位し、突起232が羽根33に係合して羽根車3の回転が抑止されるようにしている。
【0015】
ここで、上記の如く入口側の軸受部材21に誘導羽根213を設けると、羽根車3に向かう流体の流れに誘導羽根213により旋回成分が付与され、羽根車3の羽根33も軸方向に対し傾斜させることと相俟って、低流量も検知できるようになる。一方、流体の流量と磁気検出器4から出力される単位時間当たりのパルス数との関係が図3に点線で示す如く途中で非線形になる。従って、この特性に近似させるには、傾きの異なる高流量側の流量パルス数特性線Hと低流量側の流量パルス数特性線Lとを用いざるを得なくなる。そして、磁気検出器4から出力される単位時間当たりのパルス数をP、高流量側の流量パルス数特性線Hと低流量側の流量パルス数特性線Lとの交点Oの単位時間当たりパルス数をOPとして、P≧OPのときに、高流量側の流量パルス数特性線Hに基づいて流量を算出し、P<OPのときに、低流量側の流量パルス数特性線Lに基づいて流量を算出することが考えられる。然し、これでは、PがOP近傍であるときに、流量の算出に用いる流量パルス数特性線の切換えが頻繁に起こることになり、流量センサによる検出流量のばらつきが大きくなってしまう。
【0016】
そこで、本実施形態では、OPを含む所定のパルス数範囲を不感帯YPとして設定し、演算器5で図4に示す流量算出制御を行うようにしている。以下、この点について説明する。流量算出制御では、先ず、STEP1において、Pが不感帯YPの上限YPmaxを上回っているか否かを判別し、P>YPmaxであれば、STEP2に進んで、高流量側の流量パルス数特性線Hに基づいて流量を算出する。次に、STEP3に進んで、Pが不感帯YPの下限YPminを下回ったか否かを判別し、P<YPminになるまでは、STEP2に戻って、高流量側の流量パルス数特性線Hに基づく流量算出を継続する。
【0017】
また、STEP1において、P≦YPmaxと判別されたときは、STEP4に進んで、低流量側の流量パルス数特性線Lに基づいて流量を算出する。次に、STEP5に進んで、Pが不感帯YPの上限YPmaxを上回ったか否かを判別し、P>YPmaxになるまでは、STEP4に戻って、低流量側の流量パルス数特性線Lに基づく流量算出を継続する。
【0018】
STEP3でP<YPminと判別されたときは、STEP4に進んで、流量の算出に用いる流量パルス数特性線を高流量側の流量パルス数特性線Hから低流量側の流量パルス数特性線Lに切換える。また、STEP5でP>YPmaxと判別されたときは、STEP2に進んで、流量の算出に用いる流量パルス数特性線を低流量側の流量パルス数特性線Lから高流量側の流量パルス数特性線Hに切換える。
【0019】
上記流量算出制御によれば、PがYPmaxを上回ったときは、Pが次にYPminを下回るまで、高流量側の流量パルス数特性線Hに基づいて流量を算出し、PがYPminを下回ったときは、Pが次にYPmaxを上回るまで、低流量側の流量パルス数特性線Lに基づいて流量を算出することになる。従って、PがYPの範囲に入っているときは、流量の算出に用いる流量パルス数特性線の切換が行われない。そのため、流量の算出に用いる流量パルス数特性線の頻繁な切換えを抑制して、検出流量のばらつきを小さくすることができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、羽根車3の羽根33を軸方向に対し傾斜させると共に、入口側の軸受部材21に軸方向に対し傾斜した誘導羽根213を設けているが、このような構造を有しなくても、高流量側と低流量側とで流量パルス数特性線が異なる流量センサであれば、同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1…流量センサ、2…センサケース、3…羽根車、33…羽根、4…磁気検出器、P…磁気検出器から出力される単位時間当たりのパルス数、YP…不感帯、YPmax…不感帯の上限、YPmin…不感帯の下限、H…高流量側の流量パルス数特性線、L…低流量側の流量パルス数特性線、O…高流量側の流量パルス数特性線と低流量側の流量パルス数特性線との交点、OP…交点の単位時間当たりパルス数。
図1
図2
図3
図4