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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165037
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】無線中継システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20221024BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20221024BHJP
【FI】
H04B7/15
H04B10/2575 120
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070211
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【テーマコード(参考)】
5K072
5K102
【Fターム(参考)】
5K072AA04
5K072AA12
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB22
5K072DD01
5K072DD11
5K072DD15
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG14
5K102AA38
5K102AB13
5K102AD01
5K102AL12
5K102AL15
5K102PA01
5K102PA14
5K102PH47
5K102PH48
(57)【要約】
【課題】同一周波数の電波の回り込み干渉を防止できるとともに中継用周波数を必要としないリピータ型の無線中継システムを提供する。
【解決手段】無線中継システムは、中継元の無線中継装置と中継先の無線中継装置との間の光通信を中継するための一又は複数の光ファイバーを備える。中継元の無線中継装置は、移動通信網側と通信する網側通信部と、網側通信部から受けた移動通信網側の電気信号と光ファイバーを伝搬する光信号との間の変換を行う中継元の電気光信号変換部とを有する。中継先の無線中継装置は、端末装置側と無線通信する端末側通信部と、端末側通信部から受けた端末装置側の電気信号と光ファイバーを伝搬する光信号との間の変換を行う中継先の電気光信号変換部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継元の無線中継装置と上空に位置する中継先の無線中継装置とを備える無線中継システムであって、
前記中継元の無線中継装置と前記中継先の無線中継装置との間の光通信を中継するための一又は複数の光ファイバーを備え、
前記中継元の無線中継装置は、
移動通信網側と通信する網側通信部と、
前記網側通信部から受けた移動通信網側の電気信号と前記光ファイバーを伝搬する光信号との間の変換を行う中継元の電気光信号変換部と、を有し、
前記中継先の無線中継装置は、
端末装置側と無線通信する端末側通信部と、
前記端末側通信部から受けた端末装置側の電気信号と前記光ファイバーを伝搬する光信号との間の変換を行う中継先の電気光信号変換部と、を有する、ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項2】
請求項1の無線中継システムにおいて、
前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置に向かう下り光信号を伝送するための下り回線の光ファーバーと、
前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置に向かう上り光信号を伝送するための上り回線の光ファイバーと、を備え、
前記中継元の電気光信号変換部は、
下り電気信号を前記下り光信号に変換する下り信号変換部と、
前記上り光信号を上り電気信号に変換する上り信号変換部と、を有し、
前記中継先の電気光信号変換部は、
前記下り光信号を下り電気信号に変換する下り信号変換部と、
上り電気信号を前記上り光信号に変換する上り信号変換部と、を有する、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項3】
請求項1の無線中継システムにおいて、
前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置に向かう第1波長の下り光信号と、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置に向かう前記第1波長とは異なる第2波長の上り光信号とを伝搬させるため単一の光ファイバーを備え、
前記中継元の電気光信号変換部は、
下り電気信号を前記第1波長の下り光信号に変換する下り回線変換部と、
前記第2波長の上り光信号を上り電気信号に変換する上り回線変換部と、
前記下り回線変換部及び前記上り回線変換部と前記光ファイバーとに接続された波長分割多重接続部と、を有し、
前記中継先の電気光信号変換部は、
前記第1波長の下り光信号を下り電気信号に変換する下り信号変換部と、
上り電気信号を前記第2波長の上り光信号に変換する上り信号変換部と、
前記下り回線変換部及び前記上り回線変換部と前記光ファイバーとを接続する波長分割多重接続部と、を有する、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項4】
請求項3の無線中継システムにおいて、
前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置への下り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(N)の信号を送信するMIMO送信であり、
前記中継元の無線中継装置は、前記網側通信部から受けた複数(N)の下り電気信号を、波長が互いに異なる複数(N)の第1波長の下り光信号に変換して前記光ファイバーに入力する複数の下り信号変換部を有し、
前記中継先の無線中継装置は、前記光ファイバーから出力された前記複数(N)の第1波長の下り光信号を複数(N)の電気信号に変換して前記端末側通信部に渡す、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項5】
請求項3の無線中継システムにおいて、
前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置への下り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(N)の信号を送信するMIMO送信であり、
前記中継元の無線中継装置の前記網側通信部は、複数(N)の下り電気信号の搬送周波数を互いに異なる複数の搬送周波数に変えた複数の中間信号を生成し、前記複数の中間信号を加算して前記下り信号変換部に入力し、
前記中継先の無線中継装置の前記端末側通信部は、前記下り信号変換部から出力された複数の搬送周波数の複数の中間信号を分岐し、前記複数の中間信号の搬送周波数を元の搬送周波数に戻して出力する、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかの無線中継システムにおいて、
前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(M)の信号を送信するMIMO送信であり、
前記中継先の無線中継装置は、前記端末側通信部から受けた複数(M)の上り電気信号を、波長が互いに異なる複数(M)の第2波長の上り光信号に変換して前記光ファイバーに入力する複数の上り信号変換部を有し、
前記中継元の無線中継装置は、前記光ファイバーから出力された前記複数(M)の第2波長の上り光信号を複数(M)の電気信号に変換して前記網側通信部に渡す、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれかの無線中継システムにおいて、
前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(M)の信号を送信するMIMO送信であり、
前記中継先の無線中継装置の前記端末側通信部は、複数(M)の上り電気信号の搬送周波数を互いに異なる複数の搬送周波数に変えた複数の中間信号を生成し、前記複数の中間信号を加算して前記上り信号変換部に入力し、
前記中継元の無線中継装置の前記網側通信部は、前記上り信号変換部から出力された複数の搬送周波数の複数の中間信号を分岐し、前記複数の中間信号の搬送周波数を元の搬送周波数に戻して出力する、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項8】
請求項4又は5の無線中継システムにおいて、
前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置への下り回線において、同一周波数を用いて同時に2信号を送信するMIMO送信を行い、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線において1信号を送信する、ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項9】
請求項6又は7の無線中継システムにおいて、
前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線において、同一周波数を用いて同時に2信号を送信するMIMO送信を行う、ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかの無線中継システムにおいて、
前記中継先の無線中継装置は、同一の移動通信事業者が使用する互いに異なる周波数の複数の下り回線の通信を中継し、前記同一の移動通信事業者が使用する互いに異なる周波数の複数の上り回線の通信を中継する、ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかの無線中継システムであって、
前記中継先の無線中継装置は、無人航空機又は係留気球に搭載されている、ことを特徴とする無線中継システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空に位置する中継局により無線通信を中継するリピータ型の無線中継システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の無線中継システムとして、係留気球無線中継システムや有線給電ドローン無線中継システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。係留気球無線中継システムでは、地上から上空に延びた係留線(係留索)で係留されて支持された係留気球に中継局が搭載され、有線給電ケーブルを介して地上給電装置から中継局に電力が供給される。有線給電ドローン無線中継システムでは、上空で停止飛行(ホバリング)可能なドローン(無人航空機)に中継局が搭載され、有線給電ケーブルを介して地上給電装置から中継局に電力が供給される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“有線給電ドローン無線中継システムの実証実験に成功”,[online],令和2年7月9日,ソフトバンク株式会社,ニュース,プレスリリース2020,[令和2年12月24日検索],インターネット<URL:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200709_01/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の無線中継システムでは、非再生周波数変換型の無線中継リピータシステムであり、網側から端末装置への下り回線及び端末装置から網側への上り回線のそれぞれについて、同一周波数の電波の回り込み干渉を防止するために、上空の無線中継装置(リピータ子機)と地上の無線中継装置(リピータ親機)との間の無線通信に中継用の電波(周波数f1)を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る無線中継システムは、中継元の無線中継装置と上空に位置する中継先の無線中継装置とを備える無線中継システムである。この無線中継システムは、前記中継元の無線中継装置と前記中継先の無線中継装置との間の光通信を中継するための一又は複数の光ファイバーを備える。前記中継元の無線中継装置は、移動通信網側と通信する網側通信部と、前記網側通信部から受けた移動通信網側の電気信号と前記光ファイバーを伝搬する光信号との間の変換を行う中継元の電気光信号変換部と、を有する。前記中継先の無線中継装置は、端末装置側と無線通信する端末側通信部と、前記端末側通信部から受けた端末装置側の電気信号と前記光ファイバーを伝搬する光信号との間の変換を行う中継先の電気光信号変換部と、を有する。
【0006】
前記無線中継システムにおいて、前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置に向かう下り光信号を伝送するための下り回線の光ファーバーと、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置に向かう上り光信号を伝送するための上り回線の光ファイバーと、を備え、前記中継元の電気光信号変換部は、下り電気信号を前記下り光信号に変換する下り信号変換部と、前記上り光信号を上り電気信号に変換する上り信号変換部と、を有し、前記中継先の電気光信号変換部は、前記下り光信号を下り電気信号に変換する下り信号変換部と、上り電気信号を前記上り光信号に変換する上り信号変換部と、を有してもよい。
【0007】
前記無線中継システムにおいて、前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置に向かう第1波長の下り光信号と、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置に向かう前記第1波長とは異なる第2波長の上り光信号とを伝搬させるため単一の光ファイバーを備え、前記中継元の電気光信号変換部は、下り電気信号を前記第1波長の下り光信号に変換する下り回線変換部と、前記第2波長の上り光信号を上り電気信号に変換する上り回線変換部と、前記下り回線変換部及び前記上り回線変換部と前記光ファイバーとに接続された波長分割多重接続部と、を有し、前記中継先の電気光信号変換部は、前記第1波長の下り光信号を下り電気信号に変換する下り信号変換部と、上り電気信号を前記第2波長の上り光信号に変換する上り信号変換部と、前記下り回線変換部及び前記上り回線変換部と前記光ファイバーとを接続する波長分割多重接続部と、を有してもよい。
【0008】
前記無線中継システムにおいて、前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置への下り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(N)の信号を送信するMIMO送信であり、前記中継元の無線中継装置は、前記網側通信部から受けた複数(N)の下り電気信号を、波長が互いに異なる複数(N)の第1波長の下り光信号に変換して前記光ファイバーに入力する複数の下り信号変換部を有し、前記中継先の無線中継装置は、前記光ファイバーから出力された前記複数(N)の第1波長の下り光信号を複数(N)の電気信号に変換して前記端末側通信部に渡してもよい。
【0009】
前記無線中継システムにおいて、前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置への下り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(N)の信号を送信するMIMO送信であり、前記中継元の無線中継装置の前記網側通信部は、複数(N)の下り電気信号の搬送周波数を互いに異なる複数の搬送周波数に変えた複数の中間信号を生成し、前記複数の中間信号を加算して前記下り信号変換部に入力し、前記中継先の無線中継装置の前記端末側通信部は、前記下り信号変換部から出力された複数の搬送周波数の複数の中間信号を分岐し、前記複数の中間信号の搬送周波数を元の搬送周波数に戻して出力してもよい。
【0010】
前記無線中継システムにおいて、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(M)の信号を送信するMIMO送信であり、前記中継先の無線中継装置は、前記端末側通信部から受けた複数(M)の上り電気信号を、波長が互いに異なる複数(M)の第2波長の上り光信号に変換して前記光ファイバーに入力する複数の上り信号変換部を有し、前記中継元の無線中継装置は、前記光ファイバーから出力された前記複数(M)の第2波長の上り光信号を複数(M)の電気信号に変換して前記網側通信部に渡してもよい。
【0011】
前記無線中継システムにおいて、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線の送信が、同一周波数を用いて同時に複数(M)の信号を送信するMIMO送信であり、前記中継先の無線中継装置の前記端末側通信部は、複数(M)の上り電気信号の搬送周波数を互いに異なる複数の搬送周波数に変えた複数の中間信号を生成し、前記複数の中間信号を加算して前記上り信号変換部に入力し、前記中継元の無線中継装置の前記網側通信部は、前記上り信号変換部から出力された複数の搬送周波数の複数の中間信号を分岐し、前記複数の中間信号の搬送周波数を元の搬送周波数に戻して出力してもよい。
【0012】
前記無線中継システムにおいて、前記中継元の無線中継装置から前記中継先の無線中継装置への下り回線において、同一周波数を用いて同時に2信号を送信するMIMO送信を行い、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線において1信号を送信してもよい。
【0013】
前記無線中継システムにおいて、前記中継先の無線中継装置から前記中継元の無線中継装置への上り回線において、同一周波数を用いて同時に2信号を送信するMIMO送信を行ってもよい。
【0014】
前記無線中継システムにおいて、前記中継先の無線中継装置は、同一の移動通信事業者が使用する互いに異なる周波数の複数の下り回線の通信を中継し、前記同一の移動通信事業者が使用する互いに異なる周波数の複数の上り回線の通信を中継してもよい。
【0015】
前記無線中継システムにおいて、前記中継先の無線中継装置は、無人航空機又は係留気球に搭載されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、同一周波数の電波の回り込み干渉を防止できるとともに中継用周波数を必要としないリピータ型の無線中継システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る無線中継システムを含む通信システムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】参考例に係る無線中継システムの説明図。
図3】実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機及びリピータ子機の主要部構成の一例を示すブロック図。
図4】実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機及びリピータ子機の主要部構成の他の例を示すブロック図。
図5】実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機及びリピータ子機の主要部構成の更に他の例を示すブロック図。
図6】実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機及びリピータ子機の主要部構成の更に他の例を示すブロック図。
図7】実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機及びリピータ子機の主要部構成の更に他の例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、地上又は海上の中継元の無線中継装置(リピータ親機)と、ドローン(無人航空機)や係留気球等の飛行体に搭載された無線中継装置(リピータ子機)とを備え、災害時や山岳や森林などの遭難者の捜索時に固定基地局の圏外エリアに対して無線中継を実施することができる臨時無線中継システムである。特に、本実施形態の無線中継システムは、リピータ親機とリピータ子機との通信を、光ファイバーを用いたROF(Radio on Fiber)で行うことにより、同一周波数の電波の回り込み干渉を防止できるとともに中継用周波数を必要としないリピータ型の無線中継システムである。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線中継システムを含む通信システムの全体構成の一例を示す説明図である。
図1において、本実施形態に係る無線中継システムは、地上に位置する中継元の無線中継装置(以下「リピータ親機」という。)10及び上空に位置する中継先の無線中継装置(以下「リピータ子機」という。)20を備える。リピータ親機10及びリピータ子機20は、通信オペレータ(通信事業者)の移動通信網80のコアネットワークに接続されたeNodeB、gNodeBなどの固定基地局(以下「基地局」という。)30と、通信オペレータの無線中継エリア(リピータ子機20のセル200A)内に位置する単一又は複数の端末装置(ユーザ装置)としての移動局40との間の下り回線及び上り回線の無線通信を中継する。
【0020】
なお、本実施形態の無線中継システムは、同一の通信オペレータで使用される互いに周波数が異なる下り回線の複数の無線信号を中継し、同一の通信オペレータで使用される互いに周波数が異なる上り回線の複数の無線信号を中継してもよい。また、本実施形態の無線中継システムは、複数の通信オペレータで使用される互いに周波数が異なる下り回線の複数の無線信号を中継し、前記複数の通信オペレータで使用される互いに周波数が異なる上り回線の複数の無線信号を中継してもよい。
【0021】
移動通信網80には遠隔制御装置81(遠隔制御元)を設けてもよい。遠隔制御装置81は、例えばリピータ親機10及びリピータ子機20の情報を保持し、リピータ親機10及びリピータ子機20の少なくとも一方に制御情報を送信することができる。また、遠隔制御装置81は、情報の送信先として機能し、リピータ親機10及びリピータ子機20の少なくとも一方から情報を受信してもよい。なお、遠隔制御装置81は、リピータ親機10やリピータ子機20と通信可能な場所であれば、移動通信網80以外に設けてもよい。
【0022】
移動通信網80には、リピータ子機20が搭載された飛行体としてのドローン60を遠隔的に操縦する遠隔ドローン操縦装置を設けてもよい。
【0023】
遠隔制御装置81は、例えばリピータ親機10を介してリピータ子機20と通信可能な、サーバ、PC若しくはタブレット端末であってもよい。また、遠隔ドローン操縦装置は、例えばリピータ親機10を介してドローン60の制御部と通信可能な、サーバ、PC若しくはタブレット端末であってもよい。
【0024】
リピータ親機10は、基地局30のアンテナ31に向いた指向性を有するアンテナ(対基地局向けアンテナ)101を介して、基地局30との間で中継対象の第1周波数(「無線中継周波数」又は「基地局側周波数」ともいう。)f0d(下り信号)及びf0u(上り信号)の無線信号を送受信する。また、リピータ親機10は、ケーブル70に搭載した単一又は複数の光ファイバー71を介して、リピータ子機20との間で所定波長の光信号を送受信する。リピータ親機10は、基地局30との間で送受信されるf0d(下り信号)及びf0u(上り信号)の無線信号と、リピータ子機20との間で送受信される所定波長の光信号とを変換する電気光信号変換機能を有する。
【0025】
リピータ親機10は、移動体としての車両である自動車50に搭載されることにより地上の目標位置に移動することができる。自動車50は、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車など、リピータ親機10に長時間にわたって電力を供給可能なバッテリーや発電機などを備えているものであってもよい。自動車50は、ドローン60が離発着可能な離発着部を備えてもよい。また、図1の構成例は、リピータ親機10が自動車50に組み込まれた場合の例であるが、リピータ親機10が組み込まれる移動体は、道路を走行する自動車以外の車両、線路上を走行する鉄道車両、航空機、又は、河川上若しくは海上の船舶などであってもよい。
【0026】
リピータ子機20は、ケーブル70に搭載した単一又は複数の光ファイバー71を介して、リピータ親機10との間で所定波長の光信号を送受信する。また、リピータ子機20は、移動局向けのアンテナ202を介して、移動局40との間の中継対象の第1周波数(以下、「無線中継周波数」又は「移動局側周波数」ともいう。)f0d(下り信号)及びf0u(上り信号)の無線信号を送受信する。リピータ子機20は、リピータ親機10との間で送受信される所定波長の光信号と、移動局40との間で送受信されるf0d(下り信号)及びf0u(上り信号)の無線信号とを変換する電気光信号変換機能を有する。
【0027】
リピータ子機20は、自律制御により又は外部からの制御により所定の空域に滞在又は移動する浮揚体である飛行体としてのドローン60に搭載されている。リピータ子機20が搭載されたドローン60は、自動車(無線中継車)50により地上の目標位置に運搬され、地上から所定高度(例えば100~150m)の上空に滞在するように制御される。ドローン60の飛行駆動部及びリピータ子機20には内蔵のバッテリーから電力が供給される。ドローン60の飛行駆動部及びリピータ子機20には、ケーブル70に搭載した給電線を介して、地上の自動車50に搭載されたバッテリーや発電機から電力を供給してもよい。
【0028】
光ファイバー71は、例えば、光信号を主に伝送するコアと、コアを取り囲むクラッドと、これらを補強及び保護する被覆と有する。コア及びクラッドは、互いに屈折率が異なり、例えば石英などのガラス又はプラスチックで形成されている。光ファイバー71は、更に外側に、補強繊維層やシースなどを有してもよい。
【0029】
光ファイバー71を含むケーブル70は、リピータ子機20を搭載したドローン60を係留する係留線として機能してもよいし、地上からリピータ子機20に電力を供給する給電線を有してもよい。ケーブル70が給電線を有する場合、自動車50に搭載したバッテリーや発電機からリピータ子機20とドローン60のプロペラを駆動するモータ等の飛行駆動部とに電力を供給することにより、長時間にわたってリピータ子機20を上空に滞在させることができ、無線中継システムの要であるリピータ子機20の長時間の運用が可能になる。
【0030】
なお、本実施形態では、ドローン60にリピータ子機20を搭載して、自動車50の上空又は斜め上空に滞在させているが、係留気球等の浮揚体にリピータ子機20を搭載して自動車50の上空又は斜め上空に滞在させてもよい。
【0031】
図2は、参考例に係る非再生・周波数変型リピータ方式の無線中継システムの説明図である。図2に示す参考例に係る無線中継システムでは、リピータ親機10とリピータ子機20との通信を、中継用周波数(f1d,f1u)の電波を用いた無線通信で行っている。リピータ親機10は、リピータ子機20に向いた指向性を有するアンテナ(対子機向けアンテナ)102を有する。リピータ子機20は、リピータ親機10に向いた指向性を有するアンテナ(対親機向けアンテナ)201を有する。
【0032】
図2において、リピータ親機10は、基地局30から受信した周波数f0dの電波を、中継用周波数f1dの電波に変換してリピータ子機20に向けて送信し、リピータ子機20から受信した中継用周波数f1uの電波を、周波数f0uの電波に戻して(変換して)基地局30に向けて送信する。リピータ子機20は、リピータ親機10から受信した中継用周波数f1dの電波を、周波数f0dの電波に戻して(変換して)移動局40に向けて送信し、移動局40から受信した周波数f0uの電波を、中継用周波数f1uの電波に変換してリピータ親機10に向けて送信する。
【0033】
図2の無線中継システムでは、中継用周波数f1d,f1uに変換して中継するため、リピータ子機20のアンテナ201,202間に電波吸収体を入れなくてもアンテナ201,202間で同一周波数の電波の回り込みによる干渉がなくなり、リピータ子機20は最大送信電力で送信できる。また、リピータ子機20はベースバンド信号に復号しないことから装置構成が簡易・軽量になる。
【0034】
しかしながら、図2の無線中継システムでは、リピータ親機10とリピータ子機20との間の通信に中継用の無線周波数f1d,f1uが必要である。
【0035】
これに対し、本実施形態の無線中継システムでは、リピータ親機10とリピータ子機20との間の通信を、光ファイバー71を用いたROFで行うため、中継用の無線周波数f1d,f1uが不要であり、同一周波数の電波の回り込みによる干渉もない。
【0036】
図3は、実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機10及びリピータ子機20の主要部構成の一例を示すブロック図である。図3の構成例は、対移動局方向(下り回線)が1信号の送信であり、対基地局方向(上り回線)が1信号の送信である、上下回線1送信のSISO(Single Input Single Output)対応の無線中継システムの例である。
【0037】
図3において、本実施形態に係る無線中継システムは、基地局30と通信できる位置に停車した自動車50に搭載された搭載するリピータ親機10と、リピータ親機10と通信できる位置で上空に滞在するドローン60に搭載するリピータ子機20と、リピータ親機10とリピータ子機20との間の光通信の媒体である2本の光ファイバー71(71d,71u)とを備える。
【0038】
第1の光ファイバー71dは、リピータ親機10からリピータ子機20への下り回線(フォワードリンク)の光信号(下り光信号)を伝送し、第2の光ファイバー71uは、リピータ子機20からリピータ親機10への上り回線(リバースリンク)の光信号(上り光信号)を伝送する。下り光信号及び上り光信号の波長(以下「光波長」ともいう。)は、例えば、伝送損失が比較的小さい、S帯(1460~1530[nm])、C帯(1530~1565[nm])、L帯(1565~1625[nm])又はO帯(1260~1360[nm])の波長である。下り光信号の波長λdと上り光信号の波長λuは同一波長でもよいし、互いに異なる波長であってもよい。
【0039】
リピータ親機10は、移動通信網側と通信する機能を有する網側通信部としての親機無線部110と、中継元の電気光信号変換部(120,130)とを備える。
【0040】
親機無線部110は、基地局向けの指向性を有するアンテナ(対基地局向けアンテナ)101に接続され、アンテナ101を介して、下り回線の対移動局周波数f0dの下り信号を受信し、上り回線の対基地局周波数f0uの下り信号を送信する。親機無線部110は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0041】
親機無線部110の信号処理部は、下り回線において、対移動局周波数f0dの下り信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+f0dの中間信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+f0uの中間信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、対基地局周波数f0uの上り信号を生成する。
【0042】
親機無線部110の信号処理部は、例えば、局部発振器と、下り回線及び上り回線それぞれの乗算器(「混合器」ともいう。)と、下り回線及び上り回線それぞれの帯域通過フィルタとを備える。局部発振器は、信号発生器(SG)などで構成することができ、所定の搬送周波数fcの信号を発生する。下り回線の乗算器は、対移動局周波数f0dの下り信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。上り回線の乗算器は、周波数fc+f0uの中間信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。下り回線の帯域通過フィルタは、下り回線の乗算器から出力された信号のうち周波数fc+f0dの中間信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタは、上り回線の乗算器から出力された信号のうち対基地局周波数f0uの上り信号のみを通過させる。
【0043】
中継元の電気光信号変換部は、下り信号変換部としてのE/O変換部120と、上り信号変換部としてのO/E変換部130とを有する。E/O変換部120は、親機無線部110から出力された移動局40向けの下り電気信号(RF信号)を所定の下り波長λdからなる下り光信号に変換する。O/E変換部130は、所定の上り波長λuからなる上り光信号を基地局30向けの上り電気信号(RF信号)に変換して親機無線部110に出力する。E/O変換部120は例えばLD(レーザダイオード)などの発光素子を用いて構成され、O/E変換部130は例えばPD(フォトダイオード)などの受光素子を用いて構成される。
【0044】
リピータ子機20は、移動局(端末装置)40側と通信する機能を有する端末側通信部としての子機無線部210と、中継先の電気光信号変換部(220,230)とを備える。
【0045】
子機無線部210は、セル200A向けの指向性を有するアンテナ(対移動局向けアンテナ)202に接続され、アンテナ202を介して、上り回線の対基地局周波数f0uの上り信号を受信し、下り回線の対移動局周波数f0dの下り信号を送信する。子機無線部210は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0046】
子機無線部210の信号処理部は、下り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+f0dの中間信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、対移動局周波数f0dの下り信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、対基地局周波数f0uの上り信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+f0uの中間信号を生成する。
【0047】
子機無線部210の信号処理部は、例えば、局部発振器と、下り回線及び上り回線それぞれの乗算器と、下り回線及び上り回線それぞれの帯域通過フィルタとを備える。局部発振器は、信号発生器(SG)などで構成することができ、所定の搬送周波数fcの信号を発生する。下り回線の乗算器は、周波数fc+f0dの中間信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。上り回線の乗算器は、対基地局周波数f0uの上り信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。下り回線の帯域通過フィルタは、下り回線の乗算器から出力された信号のうち対移動局周波数f0dの下り信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタは、上り回線の乗算器から出力された信号のうち周波数fc+f0uの中間信号のみを通過させる。
【0048】
中継先の電気光信号変換部は、上り信号変換部としてのE/O変換部230と、下り信号変換部としてのO/E変換部220とを有する。E/O変換部230は、子機無線部210から出力された基地局30向けの上り電気信号(RF信号)を所定の上り波長λuからなる上り光信号に変換する。O/E変換部220は、所定の下り波長λdからなる下り光信号を移動局40向けの下り電気信号(RF信号)に変換して子機無線部210に出力する。E/O変換部230は例えばLDなどの発光素子を用いて構成され、O/E変換部220は例えばPDなどの受光素子を用いて構成される。
【0049】
図3の無線中継システムの構成例において、リピータ親機10のE/O変換部120及びO/E変換部130と、リピータ子機20のO/E変換部220及びE/O変換部230と、光ファイバー71(71d,71u)は、無線中継システムの一部であるROFシステムを構成する。
【0050】
図3の構成例では、リピータ親機10及びリピータ子機20はともに、E/O変換部及びO/E変換部の数がそれぞれ1である。また、2本の光ファイバー(下り回線用の光ファイバー71d、上り回線用の光ファイバー71u)を用いるため、リピータ親機10及びリピータ子機20はともに、複数の光信号を束ねる波長分割多重接続部(WDM:Wavelength Division Multiplexing)が不要である。
【0051】
図4は、実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機10及びリピータ子機20の主要部構成の他の例を示すブロック図である。図4の構成例は、図3の構成例と同様に、対移動局方向(下り回線)が1信号の送信であり、対基地局方向(上り回線)が1信号の送信である、上下回線1送信のSISO対応の無線中継システムの例である。以下、図3と異なる構成について主に説明する。
【0052】
図4において、本実施形態に係る無線中継システムは、リピータ親機10と、リピータ子機20と、リピータ親機10とリピータ子機20との間の光通信の媒体である上下回線に共通の1本の光ファイバー71とを備える。
【0053】
光ファイバー71は、リピータ親機10からリピータ子機20への下り回線(フォワードリンク)の光信号(波長λdの下り光信号)を伝送するとともに、リピータ子機20からリピータ親機10への上り回線(リバースリンク)の光信号(波長λuの上り光信号)を伝送する。下り光信号の波長λdと上り光信号の波長λuは、互いに異なる波長である。
【0054】
リピータ親機10は、親機無線部111と、中継元の電気光信号変換部(121,131)と、光方向性結合器としての機能を有するWDM141とを備える。親機無線部111の構成は、前述の図3の親機無線部110の構成と同等である。
【0055】
中継元の電気光信号変換部は、下り信号変換部としてのE/O変換部121,131と、上り信号変換部としてのO/E変換部131とを有する。E/O変換部121は、親機無線部110から出力された移動局40向けの下り電気信号(RF信号)を所定の下り波長λdからなる下り光信号に変換する。O/E変換部131は、下り波長λdとは異なる所定の上り波長λuからなる上り光信号を基地局30向けの上り電気信号(RF信号)に変換して親機無線部111に出力する。
【0056】
WDM141は、E/O変換部121から出力された下り波長λdの下り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM141は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した上り波長λuの上り光信号を親機無線部111に入力する。
【0057】
リピータ子機20は、子機無線部211と、中継先の電気光信号変換部(221,231)と、光方向性結合器としての機能を有するWDM241とを備える。子機無線部211の構成は、前述の図3の子機無線部210の構成と同等である。
【0058】
中継先の電気光信号変換部は、上り信号変換部としてのE/O変換部231と、下り信号変換部としてのO/E変換部221とを有する。E/O変換部231は、子機無線部211から出力された基地局30向けの上り電気信号(RF信号)を所定の上り波長λuからなる上り光信号に変換する。O/E変換部221は、上り波長λuとは異なる所定の下り波長λdからなる下り光信号を移動局40向けの下り電気信号(RF信号)に変換して子機無線部211に出力する。
【0059】
WDM241は、E/O変換部231から出力された上り波長λuの上り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM241は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した下り波長λdの下り光信号をO/E変換部221に入力する。
【0060】
図4の無線中継システムの構成例において、リピータ親機10のE/O変換部121、O/E変換部131及びWDM141と、リピータ子機20のO/E変換部221、E/O変換部231及びWDM241と、光ファイバー71は、無線中継システムの一部であるROFシステムを構成する。
すること
【0061】
図4の構成例では、リピータ親機10及びリピータ子機20はともに、互いに光波長が異なるE/O変換部及びO/E変換部の数がそれぞれ1である。また、光方向性結合器としての機能を有する2波の光信号を束ねるWDM141,241が必要であるが、光伝送の媒体は下り回線及び上り回線に共通の1本の光ファイバー71で構成できる。
【0062】
以上のように、図4の構成例によれば、下り回線信号(f0d)と上り回線信号(f0u)を互いに異なる波長(λd,λu)の光素子(E/O変換器121,231及びO/E変換器131,221)を使い、光多重することで1本の光ファイバー71で中継することができる。
【0063】
図5は、実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機10及びリピータ子機20の主要部構成の更に他の例を示すブロック図である。図5の構成例は、対移動局方向(下り回線)が同一周波数を用いて同時に2信号を送信するMIMO送信であり、対基地局方向(上り回線)が1信号の送信である、下り回線2送信・上り回線1送信対応の無線中継システムの例である。以下、図3と異なる構成について主に説明する。
【0064】
図5において、本実施形態に係る無線中継システムは、リピータ親機10と、リピータ子機20と、リピータ親機10とリピータ子機20との間の光通信の媒体である上下回線に共通の1本の光ファイバー71とを備える。
【0065】
光ファイバー71は、リピータ親機10からリピータ子機20への下り回線(フォワードリンク)の2つの光信号(2つの波長λd1,λd2の下り光信号)を伝送するとともに、リピータ子機20からリピータ親機10への上り回線(リバースリンク)の1つの光信号(波長λuの上り光信号)を伝送する。第1の下り光信号の第1下り波長λd1と、第2の下り光信号の第2下り波長λd2と、上り光信号の上り波長λuは、互いに異なる波長である。
【0066】
リピータ親機10は、親機無線部112と、中継元の電気光信号変換部(122(1),122(2),132)と、光方向性結合器としての機能と光信号を束ねる合波機能とを有するWDM142とを備える。
【0067】
親機無線部112は、基地局向けの指向性を有するアンテナ(対基地局向けアンテナ)101に接続され、アンテナ101を介して、下り回線の対移動局周波数f0d1の第1下り信号と対移動局周波数f0d2の第2下り信号を受信し、上り回線の対基地局周波数f0uの下り信号を送信する。親機無線部112は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0068】
親機無線部112の信号処理部は、下り回線において、対移動局周波数f0d1の第1下り信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+f0d1の中間信号を生成する。更に、信号処理部は、下り回線において、対移動局周波数f0d2の第2下り信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+f0d2の中間信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+f0uの中間信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、対基地局周波数f0uの上り信号を生成する。
【0069】
親機無線部110の信号処理部は、例えば、局部発振器と、下り回線の第1乗算器及び第2乗算器と、上り回線の乗算器と、下り回線の第1帯域通過フィルタ及び第2帯域通過フィルタと、上り回線の帯域通過フィルタとを備える。局部発振器は、信号発生器(SG)などで構成することができ、所定の搬送周波数fcの信号を発生する。
【0070】
下り回線の第1乗算器は、対移動局周波数f0d1の第1下り信号と搬送周波数fcの信号とを乗算し、第2乗算器は、対移動局周波数f0d2の第2下り信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。上り回線の乗算器は、周波数fc+f0uの中間信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。下り回線の第1帯域通過フィルタは、第1乗算器から出力された信号のうち周波数fc+f0d1の中間信号のみを通過させ、第2帯域通過フィルタは、第2乗算器から出力された信号のうち周波数fc+f0d2の中間信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタは、上り回線の乗算器から出力された信号のうち対基地局周波数f0uの上り信号のみを通過させる。
【0071】
中継元の電気光信号変換部は、下り信号変換部としての第1のE/O変換部122(1)及び第2のE/O変換部122(2)と、上り信号変換部としてのO/E変換部132とを有する。第1のE/O変換部122(1)は、親機無線部112から出力された移動局40向けの第1下り周波数fd1からなる第1下り電気信号(RF信号)を、所定の第1下り波長λd1からなる第1下り光信号に変換する。第2のE/O変換部122(2)は、親機無線部112から出力された移動局40向けの第2下り周波数fd2からなる第2下り電気信号(RF信号)を、所定の第2下り波長λd2からなる第2下り光信号に変換する。O/E変換部132は、第1下り波長λd1及び第2下り波長λd2それぞれとは異なる所定の上り波長λuの上り光信号を、基地局30向けの上り周波数f0uからなる上り電気信号(RF信号)に変換して親機無線部110に出力する。
【0072】
WDM142は、第1のE/O変換部122(1)から出力された第1下り波長λd1の第1の下り光信号と、第2のE/O変換部122(2)から出力された第2下り波長λd2からなる第2の下り光信号とを合波して光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM142は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した上り波長λuの上り光信号をO/E変換部132に入力する。
【0073】
リピータ子機20は、子機無線部212と、中継先の電気光信号変換部(222(1),222(2)232)と、光方向性結合器としての機能と光信号を束ねる合波機能とを有するWDM242とを備える。
【0074】
子機無線部212は、セル200A向けの指向性を有するアンテナ(対移動局向けアンテナ)202に接続され、アンテナ202を介して、上り回線の対基地局周波数f0uの上り信号を受信し、下り回線の対移動局周波数f0dの下り信号を送信する。子機無線部210は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0075】
子機無線部212の信号処理部は、下り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+f0d1の中間信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、対移動局周波数f0d1の第1下り信号を生成する。更に、信号処理部は、光信号から変換された後の周波数fc+f0d2の中間信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、対移動局周波数f0d2の第2下り信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、対基地局周波数f0uの上り信号と搬送周波数fcの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+f0uの中間信号を生成する。
【0076】
子機無線部212の信号処理部は、例えば、局部発振器と、下り回線の第1乗算器及び第2乗算器と、上り回線の乗算器と、下り回線の第1帯域通過フィルタ及び第2帯域通過フィルタと、上り回線の帯域通過フィルタとを備える。局部発振器は、信号発生器(SG)などで構成することができ、所定の搬送周波数fcの信号を発生する。
【0077】
下り回線の第1乗算器は、周波数fc+f0d1の中間信号と搬送周波数fcの信号とを乗算し、第2乗算器は、周波数fc+f0d2の中間信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。上り回線の乗算器は、対基地局周波数f0uの上り信号と搬送周波数fcの信号とを乗算する。下り回線の第1帯域通過フィルタは、第1乗算器から出力された信号のうち対移動局周波数f0d1の第1下り信号のみを通過させ、第2帯域通過フィルタは、第2乗算器から出力された信号のうち対移動局周波数f0d2の第2下り信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタは、上り回線の乗算器から出力された信号のうち周波数fc+f0uの中間信号のみを通過させる。
【0078】
中継先の電気光信号変換部は、E/O変換部232と、第1のO/E変換部222(1)と、第2のO/E変換部222(2)とを有する。E/O変換部232は、子機無線部212から出力された基地局30向けの上り周波数f0uからなる上り電気信号(RF信号)を、所定の上り波長λuからなる上り光信号に変換する。第1のO/E変換部222(1)は、上り波長λuとは異なる所定の第1下り波長λd1からなる第1下り光信号を移動局40向けの下り周波数f0d1からなる第1下り電気信号(RF信号)に変換して子機無線部212に出力する。第2のO/E変換部222(2)は、上り波長λu及び第1下り波長λd1とは異なる所定の第2下り波長λd2からなる第2下り光信号を移動局40向けの周波数f0d2からなる第2下り電気信号(RF信号)に変換して子機無線部212に出力する。
【0079】
WDM242は、E/O変換部232から出力された上り波長λuの上り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM242は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した第1下り波長λd1の第1下り光信号を第1のO/E変換部222(1)に入力するとともに、光ファイバー71の伝送路端部から出射した第2下り波長λd2の第2下り光信号を第2のO/E変換部222(2)に入力する。
【0080】
図5の無線中継システムの構成例において、リピータ親機10のE/O変換部122(1),122(2)、O/E変換部132及びWDM142と、リピータ子機20のO/E変換部222(1),222(2)、E/O変換部232及びWDM242と、光ファイバー71は、無線中継システムの一部であるROFシステムを構成する。
【0081】
図5の構成例では、リピータ親機10は、互いに光波長が異なるE/O変換部の数が2でありO/E変換部の数が1である。また、リピータ子機20は、互いに光波長が異なるE/O変換部の数が2であり、O/E変換部の数が1である。また、光方向性結合器としての機能及び合波機能を有する2波の光信号を束ねるWDM142,242が必要であるが、光伝送の媒体としては下り回線及び上り回線に共通の1本の光ファイバーで済む。
【0082】
以上のように、図5の構成例によれば、下り回線が同一周波数を用いて同時に2信号(f0d1,f0d2)を送信するMIMO送信であり、上り回線が1信号(f0u)を送信する無線中継システムにおいて、2つの下り回線信号(f0d1,f0d2)と上り回線信号(f0u)を互いに異なる波長(λd1,λd2,λu)の光素子(E/O変換器122(1),122(2),232及びO/E変換器132,222(1),222(2))を使い、光多重することで1本の光ファイバー71で中継することができる。
【0083】
なお、図5の構成例において、上り回線が同一周波数を用いて同時に2信号(f0u1,f0u2)を送信するMIMO送信であってもよい。この場合、例えば、リピータ親機10は、2つの上り信号(f0u1,f0u2)に対応するように、光波長λu1用O/E変換部と光波長λu2用のO/E変換部とを別々に備え、リピータ子機20は、2つの上り信号(f0u1,f0u2)に対応するように、光波長λu1用E/O変換部と光波長λu2用のE/O変換部とを別々に備える。
【0084】
また、図5の構成例において、下り回線が同一周波数を用いて同時に3以上の信号(f0d1,f0d2,f0d3、・・・)を送信するMIMO送信であり、上り回線が同一周波数を用いて同時に3以上の信号(f0u1,f0u2,f0u3、・・・)を送信するMIMO送信であってもよい。この場合、例えば、リピータ親機10は、3以上の下り信号(f0d1,f0d2,f0d3、・・・)に対応するように互いに異なる3以上の光波長(λd1,λd2,λd3,・・・)用の複数のE/O変換部を別々に備え、リピータ子機20は、3以上の下り信号(f0d1,f0d2,f0d3、・・・)に対応するように互いに異なる3以上の光波長(λd1,λd2,λd3,・・・)用の複数のO/E変換部を別々に備える。また、リピータ親機10は、3以上の上り信号(f0u1,f0u2,f0u3、・・・)に対応するように互いに異なる3以上の光波長(λu1,λu2,λu3,・・・)用の複数のO/E変換部を別々に備え、リピータ子機20は、3以上の上り信号(f0u1,f0u2,f0u3、・・・)に対応するように互いに異なる3以上の光波長(λu1,λu2,λu3,・・・)用の複数のE/O変換部を別々に備える。
【0085】
図6は、実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機10及びリピータ子機20の主要部構成の更に他の例を示すブロック図である。図6の構成例は、図5の構成例と同様に、対移動局方向(下り回線)が同一周波数を用いて同時に2信号を送信するMIMO送信であり、対基地局方向(上り回線)が1信号の送信である、下り回線2送信・上り回線1送信対応の無線中継システムの例である。以下、図3と異なる構成について主に説明する。
【0086】
図6において、本実施形態に係る無線中継システムは、リピータ親機10と、リピータ子機20と、リピータ親機10とリピータ子機20との間の光通信の媒体である上下回線に共通の1本の光ファイバー71とを備える。
【0087】
光ファイバー71は、リピータ親機10からリピータ子機20への下り回線(フォワードリンク)の2つの光信号(波長λdの下り光信号)を伝送するとともに、リピータ子機20からリピータ親機10への上り回線(リバースリンク)の1つの光信号(波長λuの上り光信号)を伝送する。下り光信号の下り波長λdと上り光信号の上り波長λuは、互いに異なる波長である。
【0088】
リピータ親機10は、親機無線部113と、中継元の電気光信号変換部(123,133)と、光方向性結合器としての機能を有するWDM143とを備える。
【0089】
親機無線部113は、基地局向けの指向性を有するアンテナ(対基地局向けアンテナ)101に接続され、アンテナ101を介して、下り回線の対移動局周波数f0d1の第1下り信号と対移動局周波数f0d2の第2下り信号を受信し、上り回線の対基地局周波数f0uの下り信号を送信する。親機無線部113は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0090】
親機無線部113の信号処理部は、下り回線において、対移動局周波数f0d1の第1下り信号と第1搬送周波数fc+Δfc1の信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+Δfc1+f0d1の中間信号を生成する。更に、信号処理部は、下り回線において、対移動局周波数f0d2の第2下り信号と第2搬送周波数fc+Δfc2の信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+Δfc2+f0d2の中間信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+Δfc1+f0uの中間信号と第1搬送周波数fc+Δfc1の信号とに基づいて、対基地局周波数f0uの上り信号を生成する。
【0091】
親機無線部113の信号処理部は、例えば図6に示すように、局部発振器と、下り回線の第1乗算器1131(1)及び第2乗算器1131(2)と、上り回線の乗算器1133と、下り回線の第1帯域通過フィルタ1132(1)及び第2帯域通過フィルタ1132(1)と、上り回線の帯域通過フィルタ1134、信号加算部1135とを備える。
【0092】
局部発振器は、周波数が互いに異なる第1搬送周波数fc+Δfc1の信号及び第2搬送周波数fc+Δfc2の信号を発生する信号発生器(SG)などで構成することができる。
【0093】
下り回線の第1乗算器1131(1)は、対移動局周波数f0d1の第1下り信号と第1搬送周波数fc+Δfc1の信号とを乗算し、第2乗算器1131(2)は、対移動局周波数f0d2の第2下り信号と第2搬送周波数fc+Δfc2の信号とを乗算する。上り回線の乗算器1133は、周波数fc+Δfc1+f0uの中間信号と第1搬送周波数fc+Δfc1の信号とを乗算する。下り回線の第1帯域通過フィルタ1132(1)は、第1乗算器1131(1)から出力された信号のうち周波数fc+Δfc1+f0d1の中間信号のみを通過させ、第2帯域通過フィルタ1132(2)は、第2乗算器1131(2)から出力された信号のうち周波数fc+Δfc1+f0d2の中間信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタ1134は、上り回線の乗算器1133から出力された信号のうち対基地局周波数f0uの上り信号のみを通過させる。
【0094】
信号加算部1135は、互いに異なる周波数fc+Δfc1+f0d1の中間信号及び周波数fc+Δfc1+f0d2の中間信号を加算し、加算した伝送対象の下り信号をE/O変換部123に出力する。
【0095】
中継元の電気光信号変換部は、下り信号変換部としてのE/O変換部123と、上り信号変換部としてのO/E変換部133とを有する。E/O変換部123は、親機無線部113から出力された前述の伝送対象の下り信号を、所定の下り波長λdからなる下り光信号に変換する。O/E変換部133は、リピータ子機20から送信されてきた上り波長λuの上り光信号を、基地局30向けの上り周波数f0uからなる上り電気信号(RF信号)に対応する周波数fc+Δfc1+f0uの中間信号に変換して親機無線部113に出力する。
【0096】
WDM143は、E/O変換部123から出力された下り波長λdの下り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM143は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した上り波長λuの上り光信号をO/E変換部133に入力する。
【0097】
リピータ子機20は、子機無線部213と、中継先の電気光信号変換部(223,233)と、光方向性結合器としての機能を有するWDM243とを備える。
【0098】
子機無線部213は、セル200A向けの指向性を有するアンテナ(対移動局向けアンテナ)202に接続され、アンテナ202を介して、上り回線の対基地局周波数f0uの上り信号を受信し、下り回線の対移動局周波数f0d1の第1下り信号と対移動局周波数f0d2の第2下り信号を送信する。子機無線部213は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0099】
子機無線部213の信号処理部は、下り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+Δfc1+f0d1の中間信号と搬送周波数fc+Δfc1の信号とに基づいて、対移動局周波数f0d1の第1下り信号を生成する。更に、信号処理部は、光信号から変換された後の周波数fc+Δfc2+f0d2の中間信号と搬送周波数fc+Δfc2の信号とに基づいて、対移動局周波数f0d2の第2下り信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、対基地局周波数f0uの上り信号と搬送周波数fc+Δfc1の信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+Δfc1+f0uの中間信号を生成する。
【0100】
子機無線部213の信号処理部は、例えば図6に示すように、分岐部2131と、局部発振器と、下り回線の第1乗算器2132(1)及び第2乗算器2132(2)と、上り回線の乗算器2134と、下り回線の第1帯域通過フィルタ2133(1)及び第2帯域通過フィルタ2133(2)と、上り回線の帯域通過フィルタ2135とを備える。
【0101】
局部発振器は、周波数が互いに異なる第1搬送周波数fc+Δfc1の信号及び第2搬送周波数fc+Δfc2の信号を発生する信号発生器(SG)などで構成することができる。
【0102】
分岐部2131は、O/E変換部223から出力された移動局40向けの2つの下り周波数f0d1,f0d2からなる下り電気信号(RF信号)に対応する2つの下り信号を含む受信信号を分岐する。
【0103】
下り回線の第1乗算器2132(1)は、周波数fc+Δfc1+f0d1の中間信号と第1搬送周波数fc+Δfc1の信号とを乗算し、第2乗算器2132(2)は、周波数fc+Δfc2+f0d2の中間信号と第2搬送周波数fc+Δfc2の信号とを乗算する。上り回線の乗算器2134は、対基地局周波数f0uの上り信号と第1搬送周波数fc+Δfc1の信号とを乗算する。下り回線の第1帯域通過フィルタ2133(1)は、第1乗算器2132(1)から出力された信号のうち対移動局周波数f0d1の第1下り信号のみを通過させ、第2帯域通過フィルタ2133(2)は、第2乗算器2132(2)から出力された信号のうち対移動局周波数f0d2の第2下り信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタ2135は、上り回線の乗算器2134から出力された信号のうち周波数fc+Δfc1+f0uの中間信号のみを通過させる。
【0104】
中継先の電気光信号変換部は、下り信号変換部としてのO/E変換部223と、上り信号変換部としてのE/O変換部233とを有する。O/E変換部223は、リピータ親機10から送信されてきた下り波長λdの下り光信号を、移動局40向けの2つの下り周波数f0d1,f0d2からなる下り電気信号(RF信号)に対応する2つの下り信号を含む受信信号に変換して子機無線部213に出力する。E/O変換部233は、子機無線部213から出力された伝送対象の上り信号を、所定の上り波長λuからなる上り光信号に変換する。
【0105】
WDM243は、E/O変換部233から出力された上り波長λuの上り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM243は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した下り波長λdの下り光信号をO/E変換部22に入力する。
【0106】
図6の無線中継システムの構成例において、リピータ親機10のE/O変換部123、O/E変換部133及びWDM143と、リピータ子機20のO/E変換部223、E/O変換部233及びWDM243と、光ファイバー71は、無線中継システムの一部であるROFシステムを構成する。
【0107】
図6の構成例では、リピータ親機10及びリピータ子機20はともに、互いに光波長が異なるE/O変換部及びO/E変換部の数がそれぞれ1である。また、光方向性結合器としての機能を有する2波の光信号を束ねるWDM143,243が必要であるが、光伝送の媒体としては下り回線及び上り回線に共通の1本の光ファイバーで済む。
【0108】
以上のように、図6の構成例によれば、下り回線が同一周波数を用いて同時に2信号(f0d1,f0d2)を送信するMIMO送信であり、上り回線が1信号(f0u)を送信する無線中継システムにおいて、2つの下り回線信号の周波数(f0d1,f0d2)が相互に重ならないように所定の周波数だけ異ならせて加算して、周波数多重した1つの下り無線周波数とみなし、1つの下り回線信号及び1つの上り回線信号を互いに異なる波長(λd,λu)の光素子(E/O変換器123,233及びO/E変換器133,223)を使い、光多重することで1本の光ファイバー71で中継することができる。
【0109】
なお、図6の構成例において、上り回線が同一周波数を用いて同時に2信号(f0u1,f0u2)を送信するMIMO送信であってもよい。この場合、親機無線部113における上り回線の信号処理部は、子機無線部213の下り回線の信号処理部と同様に構成し、子機無線部213における上り回線の信号処理部は、親機無線部113の下り回線の信号処理部と同様に構成してもよい。
【0110】
図7は、実施形態に係る無線中継システムのリピータ親機10及びリピータ子機20の主要部構成の更に他の例を示すブロック図である。図7の構成例は、対移動局方向(下り回線)が同一周波数を用いて同時にN個の信号を送信するMIMO送信であり、対基地局方向(上り回線)が同一周波数を用いて同時にM個の信号を送信するMIMO送信である、下り回線N送信・上り回線M送信対応の無線中継システムの例である。以下、図3と異なる構成について主に説明する。
【0111】
図7において、本実施形態に係る無線中継システムは、リピータ親機10と、リピータ子機20と、リピータ親機10とリピータ子機20との間の光通信の媒体である上下回線に共通の1本の光ファイバー71とを備える。
【0112】
光ファイバー71は、リピータ親機10からリピータ子機20への下り回線(フォワードリンク)の2つの光信号(波長λdの下り光信号)を伝送するとともに、リピータ子機20からリピータ親機10への上り回線(リバースリンク)の1つの光信号(波長λuの上り光信号)を伝送する。下り光信号の下り波長λdと上り光信号の上り波長λuは、互いに異なる波長である。
【0113】
リピータ親機10は、親機無線部114と、中継元の電気光信号変換部(124,134)と、光方向性結合器としての機能を有するWDM144とを備える。
【0114】
親機無線部114は、基地局向けの指向性を有するアンテナ(対基地局向けアンテナ)101に接続され、アンテナ101を介して、下り回線の複数(N)の対移動局周波数f0dn(n=1~N)の下り信号を受信し、上り回線の複数(M)の対基地局周波数f0um(m=1~M)の下り信号を送信する。親機無線部114は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0115】
以下の図7の説明において、下り回線の複数(N)の信号や構成を識別する符号として「n」(n=1~N)を付加し、上り回線の複数(M)の信号や構成を識別する符号として「m」(mn=1~M)を付加する。
【0116】
以下の図7の構成例において、下り回線の信号の数(N)は2、4又は8であってもよく、上り回線の信号の数(M)は2、4又は8であってもよい。また、下り回線の信号の数(N)と上り回線の信号の数(M)は同一数であってもよいし、異なる数であってもよい。
【0117】
親機無線部114の信号処理部は、下り回線において、対移動局周波数f0dnの下り信号と搬送周波数fc+Δfcnの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+Δfcn+f0dnの中間信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+Δfcm+f0umの中間信号と搬送周波数fc+Δfcmの信号とに基づいて、対基地局周波数f0umの上り信号を生成する。
【0118】
親機無線部114の信号処理部は、例えば図7に示すように、局部発振器と、下り回線の複数の乗算器1141(n)と、上り回線の複数の乗算器1143(m)と、下り回線の複数の帯域通過フィルタ1142(n)と、上り回線の複数の帯域通過フィルタ1144(m)と、信号加算部1145と、分岐部1146とを備える。
【0119】
局部発振器は、周波数が互いに異なる複数の搬送周波数fc+Δfcnの信号及び搬送周波数fc+Δfcmの信号を発生する信号発生器(SG)などで構成することができる。
【0120】
下り回線の乗算器1141(n)は、対移動局周波数f0dnの下り信号と搬送周波数fc+Δfcnの信号とを乗算する。上り回線の乗算器1143(m)は、周波数fc+Δfcm+f0umの中間信号と搬送周波数fc+Δfcmの信号とを乗算する。下り回線の帯域通過フィルタ1142(n)は、乗算器1141(n)から出力された信号のうち周波数fc+Δfcn+f0dnの中間信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタ1144(m)は、上り回線の乗算器1143(m)から出力された信号のうち対基地局周波数f0umの上り信号のみを通過させる。
【0121】
信号加算部1145は、互いに異なる周波数fc+Δfcn+f0dnの複数の中間信号を加算し、加算した伝送対象の下り信号をE/O変換部123に出力する。
【0122】
分岐部1146は、O/E変換部134から出力された基地局30向けの複数の上り周波数f0dmからなる上り電気信号(RF信号)に対応する複数の上り信号を含む受信信号を分岐する。
【0123】
中継元の電気光信号変換部は、下り信号変換部としてのE/O変換部124と、上り信号変換部としてのO/E変換部134とを有する。E/O変換部124は、親機無線部114から出力された前述の伝送対象の下り信号を、所定の下り波長λdからなる下り光信号に変換する。O/E変換部134は、リピータ子機20から送信されてきた上り波長λuの上り光信号を、基地局30向けの上り周波数f0umからなる上り電気信号(RF信号)に対応する周波数fc+Δfcm+f0umの中間信号に変換して親機無線部114に出力する。
【0124】
WDM144は、E/O変換部124から出力された下り波長λdの下り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM144は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した上り波長λuの上り光信号をO/E変換部134に入力する。
【0125】
リピータ子機20は、子機無線部214と、中継先の電気光信号変換部(224,234)と、光方向性結合器としての機能を有するWDM244とを備える。
【0126】
子機無線部214は、セル200A向けの指向性を有するアンテナ(対移動局向けアンテナ)202に接続され、アンテナ202を介して、上り回線の複数(M)の対基地局周波数f0um(m=1~M)の上り信号を受信し、下り回線の複数(N)の対移動局周波数f0dnの下り信号を送信する。子機無線部214は、例えば高周波の増幅器(AMP)、信号処理部などを用いて構成される。
【0127】
子機無線部214の信号処理部は、下り回線において、光信号から変換された後の周波数fc+Δfcn+f0dnの中間信号と搬送周波数fc+Δfcnの信号とに基づいて、対移動局周波数f0dnの下り信号を生成する。また、信号処理部は、上り回線において、対基地局周波数f0mの上り信号と搬送周波数fc+Δfcmの信号とに基づいて、光信号に変換する前の周波数fc+Δfcm+f0umの中間信号を生成する。
【0128】
子機無線部214の信号処理部は、例えば図7に示すように、分岐部2141と、局部発振器と、下り回線の複数の乗算器2142(n)と、上り回線の複数の乗算器2144(m)と、下り回線の複数の帯域通過フィルタ2143(n)と、上り回線の複数の帯域通過フィルタ2145(m)と、信号加算部2146とを備える。
【0129】
局部発振器は、周波数が互いに異なる複数の搬送周波数fc+Δfcnの信号及び搬送周波数fc+Δfcmの信号を発生する信号発生器(SG)などで構成することができる。
【0130】
分岐部2141は、O/E変換部224から出力された移動局40向けの複数の下り周波数f0dnからなる下り電気信号(RF信号)に対応する複数の下り信号を含む受信信号を分岐する。
【0131】
下り回線の乗算器2142(n)は、周波数fc+Δfcn+f0dnの中間信号と搬送周波数fc+Δfcnの信号とを乗算する。上り回線の乗算器2144(m)は、対基地局周波数f0umの上り信号と搬送周波数fc+Δfcmの信号とを乗算する。下り回線の帯域通過フィルタ2143(n)は、乗算器2142(n)から出力された信号のうち対移動局周波数f0dnの下り信号のみを通過させる。上り回線の帯域通過フィルタ2145(m)は、上り回線の乗算器2144(m)から出力された信号のうち周波数fc+Δfcm+f0umの中間信号のみを通過させる。
【0132】
信号加算部2146は、互いに異なる周波数fc+Δfcm+f0dmの複数の中間信号を加算し、加算した伝送対象の下り信号をE/O変換部234に出力する。
【0133】
中継先の電気光信号変換部は、下り信号変換部としてのO/E変換部224と、上り信号変換部としてのE/O変換部234とを有する。O/E変換部224は、リピータ親機10から送信されてきた下り波長λdの下り光信号を、移動局40向けの下り周波数f0dnからなる下り電気信号(RF信号)に対応する複数の下り信号を含む受信信号に変換して子機無線部214に出力する。E/O変換部234は、子機無線部214から出力された伝送対象の上り信号を、所定の上り波長λuからなる上り光信号に変換する。
【0134】
WDM244は、E/O変換部234から出力された上り波長λuの上り光信号を光ファイバー71の伝送路端部に入射する。また、WDM244は、光ファイバー71の伝送路端部から出射した下り波長λdの下り光信号をO/E変換部22に入力する。
【0135】
図7の無線中継システムの構成例において、リピータ親機10のE/O変換部124、O/E変換部134及びWDM144と、リピータ子機20のO/E変換部224、E/O変換部234及びWDM244と、光ファイバー71は、無線中継システムの一部であるROFシステムを構成する。
【0136】
図7の構成例では、リピータ親機10及びリピータ子機20はともに、互いに光波長が異なるE/O変換部及びO/E変換部の数がそれぞれ1である。また、光方向性結合器としての機能を有する2波の光信号を束ねるWDM144,244が必要であるが、光伝送の媒体としては下り回線及び上り回線に共通の1本の光ファイバーで済む。
【0137】
以上のように、図7の構成例によれば、下り回線が同一周波数を用いて同時にN個の信号(f0dn)を送信するMIMO送信であり、上り回線が同一周波数を用いて同時にM個の信号(f0um)を送信する無線中継システムにおいて、N個の下り回線信号の周波数(f0dn)及びM個の上り回線信号の周波数(f0um)が相互に重ならないように所定の周波数だけ異ならせて加算して、周波数多重した一つの下り無線周波数及び周波数多重した一つの上り無線周波数とみなし、1つの下り回線信号及び1つの上り回線信号を互いに異なる波長(λd,λu)の光素子(E/O変換器124,234及びO/E変換器134,224)を使い、光多重することで1本の光ファイバー71で中継することができる。
【0138】
以上、本実施形態によれば、リピータ親機10とリピータ子機20との間の通信を、光ファイバー71を用いたROFで行うため、中継用の無線周波数f1d,f1uが不要であり、同一周波数の電波の回り込みによる干渉もない。
【0139】
また、本実施形態によれば、リピータ子機20において同一周波数の電波の回り込みによる干渉がなくなるため、リピータ子機20は最大送信電力で送信できる。
【0140】
また、本実施形態によれば、リピータ型の無線中継システムであり、リピータ子機20はベースバンド信号の符号化及びベースバンド信号への復号化などの基地局(eNodeB、gNodeB)に特有の処理を行う必要がないことから、リピータ子機20の装置構成が簡易・軽量になる。
【0141】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無線中継システムを含む通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0142】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0143】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0144】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0145】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0146】
10:リピータ親機
20:リピータ子機
30:基地局
31:アンテナ
40:移動局
50:自動車
60:ドローン
70:ケーブル
71,71d,71u:光ファイバー
80:移動通信網
81:遠隔制御装置
101:アンテナ
110,111,112,113,114:親機無線部
120,121,122,123,124:E/O変換部
130,131,132,133,134:O/E変換部
200A:セル
201:アンテナ
202:アンテナ
210,211,212,213,214:子機無線部
220,221,222,223,224:O/E変換部
230,231,232,233,234:E/O変換部
1131(1):第1乗算器
1131(2):第2乗算器
1132(1):第1帯域通過フィルタ
1132(2):第2帯域通過フィルタ
1133:乗算器
1134:帯域通過フィルタ
1135:信号加算部
1141(1)~1141(N):乗算器
1142(1)~1142(N):帯域通過フィルタ
1143(1)~1143(M):乗算器
1144(1)~1144(M):帯域通過フィルタ
1145:信号加算部
1146:分岐部
2131:分岐部
2132(1):第1乗算器
2132(2):第2乗算器
2133(1):第1帯域通過フィルタ
2133(2):第2帯域通過フィルタ
2134 :乗算器
2135 :帯域通過フィルタ
2141:分岐部
2142(1)~2142(N):乗算器
2143(1)~2143(N):帯域通過フィルタ
2144(1)~2144(M):乗算器
2145(1)~2145(M):帯域通過フィルタ
2146:信号加算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7