(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165038
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/005 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070212
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
(57)【要約】
【課題】安価でかつ嵩張りの少ない簡易な構成で冷却機能の低下を抑制できる冷却流体循環方式の冷却衣服を提供する。
【解決手段】冷却衣服1はベスト型の衣服本体10を有している。前身ごろ3の内側には冷却流体循環路の一部をなす前面側冷却流路11が配置されており、後身ごろ5の内側には冷却流体循環路の一部をなす背面側冷却流路が配置されている。後身ごろ5の外側に設けられた上収納部23には冷却流体を貯留する貯留部35が冷却流体循環路に連通して収容されており、下収納部25には冷却流体を循環させるポンプ36とバッテリー37が収容されている。貯留部35はキャップ63を開閉することにより、貯留された冷却流体を冷却する冷却体を外部から出し入れ可能となっている。符号39はポンプ36を駆動・停止するスイッチを示している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、前記衣服本体に配廻されて設けられた冷却流体循環路と、冷却流体を循環させるポンプ手段とを備えた冷却衣服において、
前記冷却流体循環路の途中に前記冷却流体を貯留する貯留部が設けられ、前記貯留部は該貯留部内の前記冷却流体を冷却するための冷却体を外部から出し入れ可能に設けられていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
請求項1に記載した冷却衣服において、
前記冷却体は凍結可能な流体を容器に封入して成ることを特徴とする冷却衣服。
【請求項3】
請求項2に記載した冷却衣服において、
前記容器はペットボトルであることを特徴とする冷却衣服。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した冷却衣服において、
前記貯留部は前記衣服本体に備えられていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項5】
請求項4に記載した冷却衣服において、
前記貯留部は前記衣服本体の背面側に設けられていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した冷却衣服において、
前記ポンプ手段は前記衣服本体に備えられていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した冷却衣服において、
冷却流体循環路は、熱を吸収して昇温した冷却流体が貯留部の上端から供給され、冷却された冷却流体は前記貯留部の下端から流出するように構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項8】
請求項7に記載した冷却衣服において、
貯留部は熱を吸収して昇温した冷却流体が冷却体の上部に接触して流れる状態に前記冷却体の姿勢を保持することを特徴とする冷却衣服。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載した冷却衣服において、
冷却流体循環路の全体がチューブによって構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項10】
請求項9に記載した冷却衣服において、
チューブは可撓性を有しており、蛇行するように湾曲して備えられていることを特徴とする冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下での作業現場等で使用される冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場等の高温環境下での作業は汗をかき易く、熱中症になり易い。これを防止するために、ファンの回転によって外気を服の内方と人体側との間の隙間に強制的に流通させ、人体で生じた汗を気流で蒸発させてその際の気化熱により冷却する原理を利用した空調衣服が知られている。
しかしながら、このような空冷方式では、特に温度が高い条件下では良好な冷却機能が得られないため、冷却機能を高めるべく、衣服本体に流路を配廻して氷水等の冷却液を循環させて冷却する液体循環式冷却衣服が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体循環式冷却衣服では、氷水等の冷却液を循環過程で再冷却することなく循環させているだけであるので、着用しているうちに冷却液の温度が上昇してしまい、短時間で冷却機能が低下してしまうという問題があった。特に、溶接作業所のような高熱となる作業場においては、極めて短い時間で冷却機能が低下してしまうことになり、実用性に乏しいという欠点がある。
また、冷却機能の低下を抑制すべく、冷却衣服に昇温した冷却液を冷却する熱交換器を備えた冷却装置を設けることも考えられるが、冷却衣服の製造コストが高くなってしまうことになる。更に、熱交換器を備えた冷却装置はどうしても嵩張るので、冷却衣服を着て作業を行う者の負担が大きくなってしまうという問題もある。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、安価でかつ嵩張りの少ない簡易な構成で冷却機能の低下を抑制できる冷却流体循環方式の冷却衣服の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、衣服本体と、前記衣服本体に配廻されて設けられた冷却流体循環路と、冷却流体を循環させるポンプ手段とを備えた冷却衣服において、前記冷却流体循環路の途中に前記冷却流体を貯留する貯留部が設けられ、前記貯留部は該貯留部内の前記冷却流体を冷却するための冷却体を外部から出し入れ可能に設けられていることを特徴とする冷却衣服である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した冷却衣服において、前記冷却体は凍結可能な流体を容器に封入して成ることを特徴とする冷却衣服である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した冷却衣服において、前記容器はペットボトルであることを特徴とする冷却衣服である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した冷却衣服において、前記貯留部は前記衣服本体に備えられていることを特徴とする冷却衣服である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載した冷却衣服において、前記貯留部は前記衣服本体の背面側に設けられていることを特徴とする冷却衣服である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した冷却衣服において、前記ポンプ手段は前記衣服本体に備えられていることを特徴とする冷却衣服である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した冷却衣服において、冷却流体循環路は、熱を吸収して昇温した冷却流体が貯留部の上端から供給され、冷却された冷却流体は前記貯留部の下端から流出するように構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載した冷却衣服において、貯留部は熱を吸収して昇温した冷却流体が冷却体の上部に接触して流れる状態に前記冷却体の姿勢を保持することを特徴とする冷却衣服である。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれかに記載した冷却衣服において、冷却流体循環路の全体がチューブによって構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9に記載した冷却衣服において、チューブは可撓性を有しており、蛇行するように湾曲して備えられていることを特徴とする冷却衣服である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷却流体循環方式の冷却衣服において、安価でかつ嵩張りの少ない簡易な構成で冷却機能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷却衣服を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は面状ファスナーによる開閉箇所を開放した状態の背面図である。
【
図2】
図1で示した冷却衣服の内側から見た展開平面図である。
【
図3】
図1で示した冷却衣服の冷却流体循環路の構成を示す模式図である。
【
図4】
図1で示した冷却衣服の貯留部における冷却体の交換可能構成を示す斜視図である。
【
図5】
図1で示した冷却衣服の使用状態における背面側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る冷却衣服の貯留部における冷却体の交換可能構成を示す斜視図である。
【
図7】
図6の冷却衣服の貯留部へ冷却流体が流入する様子を示す図である。
【
図8】
図6の冷却衣服の貯留部へ冷却流体が流入する様子を示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る冷却衣服の正面側から見た斜視図である。
【
図10】
図9の冷却衣服の冷却流体循環路を露出した状態の正面図である。
【
図11】
図9の冷却衣服の冷却流体循環路の部分分解斜視図である。
【
図13】
図9の冷却衣服を装着した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施の形態に係る冷却衣服を
図1から
図5にしたがって説明する。
【0019】
図1及び
図2は本実施の形態に係る冷却衣服1を示しており、
図1(a)は正面図、
図1(b)は背面図、
図1(c)は
図1(b)の状態から面状ファスナーによる開閉箇所を開放した状態を示す背面図である。
図2は、冷却衣服1をその内側から見た展開平面図である。
冷却衣服1は、前身ごろ3と、後身ごろ5と、襟ぐり7を有する連結部9とを備えたベスト型の衣服本体10を有している。前身ごろ3の内側には、衣服本体10に配廻されて設けられた冷却流体循環路49(
図3参照)の一部をなす前面側冷却流路11を備えた合成樹脂シート13が縫着されており、後身ごろ5の内側には冷却流体循環路49の一部をなす背面側冷却流路15を備えた合成樹脂シート17が縫着されている。合成樹脂シート13、17は冷却衣服1を着る者の体の形状に応じて変形する柔軟性を有している。
【0020】
前身ごろ3の左右には外側に出っ張る止め代3a、3bが形成されており、これらの止め代3a、3bの内側には面状ファスナー19が固定されている。これに対応して後身ごろ5の外側の左右には面状ファスナー19に係合する面状ファスナー21が固定されている。襟ぐり7に首を通した後に、止め代3a、3bを折り曲げて面状ファスナー19と面状ファスナー21とを係合することにより、
図1(b)に示すように、前身ごろ3と後身ごろ5とが一体化される。
【0021】
図1(b)、(c)に示すように、後身ごろ5の外側には、上収納部23と下収納部25とが形成されている。上収納部23には冷却流体循環路49の途中に設けられた袋状の貯留部35が収納され、下収納部25には冷却流体を循環させるポンプ手段としての小型のポンプ36と、該ポンプ36に電力を供給するバッテリー37とが収納されている。すなわち、貯留部35とポンプ36、バッテリー37は衣服本体10に一体に備えられている。
上収納部23はポケット23aと、蓋23bとを有し、ポケット23aの上部表面に固定された面状ファスナー27と、蓋23bの裏面に固定された面状ファスナー29とにより着脱自在に開閉される。
下収納部25も同様に、ポケット25aと、蓋25bとを有し、ポケット25aの上部表面に固定された面状ファスナー31と、蓋25bの裏面に固定された面状ファスナー33とにより着脱自在に開閉される。
貯留部35はポケット23aの外面に突出するキャップ63を有しており、衣服本体10の外部から開閉できるようになっている。
図1(b)、(c)において、符号39はポンプ36の駆動・停止を操作するスイッチを示している。
【0022】
次に、
図3を参照して冷却流体循環路49の構成を詳細に説明する。
前身ごろ3の内側に設けられた合成樹脂シート13は、矩形の2枚のシートを重ね合わせた状態で冷却流体の入口と出口に対応する部分を残して縁周りを溶着するとともに、前面側冷却流路11に対応する部分を残して溶着した構成を有している。図示しないが、冷却流体の入口と出口に対応する部分には合成樹脂製の接続ジャックが固着されている。後身ごろ5の内側に設けられた合成樹脂シート17も同様の冷却流路構成となっている。合成樹脂シート13、17は、ウレタン樹脂や塩化ビニール樹脂等の材料で形成される。
【0023】
冷却衣服1の使用状態において、冷却流体循環路49は冷却流体としての水Wで満たされており、貯留部35にも水Wが溜められている。
【0024】
図3に示す合成樹脂シート13、17は、冷却衣服1を着た状態での配置を示している。貯留部35の上端から出た水Wは、接続チューブ41を通って前身ごろ3における合成樹脂シート13の前面側冷却流路11の上端に入口用の接続ジャックを介して流入する。前面側冷却流路11に流入した水Wは前面側冷却流路11を下方に向かって流れた後上方に向かって流れ、出口用の接続ジャックに接続された接続チューブ43を通って後身ごろ5における合成樹脂シート17の背面側冷却流路15の上端に入口用の接続ジャックを介して流入する。背面側冷却流路15に流入した水Wは背面側冷却流路15を下方に向かって流れた後、出口用の接続ジャックに接続された接続チューブ45を通ってポンプ36に入る。その後、水Wはポンプ36の吐出圧で送り出され、接続チューブ47を通って貯留部35の下端から内部に流入する。接続チューブ41、43、45、47は、柔軟性を有する合成樹脂製のチューブである。
【0025】
前面側冷却流路11、背面側冷却流路15、貯留部35、接続チューブ41、43、45、47により冷却流体循環路49が構成されている。冷却流体循環路49は、貯留部35を除いて衣服本体10の前面側と背面側とに略均等に分けた状態に配置されている。
貯留部35には、貯留部35内の水Wを冷却するための冷却体51が水没状態に収容されている。本実施の形態における冷却体51は、凍結可能な流体である水を容器としてのペットボトル53に封入して成り、冷凍庫で凍らせたものである。
【0026】
前面側冷却流路11及び背面側冷却流路15を通って人体から熱を吸収した水Wは昇温した状態で貯留部35内に入るが、貯留部35内で冷却体51に接触し、または冷却体51に接触して冷却された水Wと混ざることにより、冷却される。
すなわち、貯留部35内に流入する昇温した水Wは再冷却された状態で貯留部35から流出し、冷却流体循環路49を循環することになる。冷却体51を適宜のインターバルで交換することにより、冷却流体循環路49の冷却機能が復元され、良好な冷却機能を長時間に亘って維持することができる。
【0027】
貯留部35内では、昇温して貯留部35に流入する水Wと冷却体51及び既に冷却された貯留部35内の水Wとの間で熱交換が行われるので、貯留部35と冷却体51とからなる構成は、手動操作による安価で簡易な構成の熱交換器とも言うべきものである。この場合、冷媒は交換可能なペットボトル53のみであるので構成上の嵩張りもほとんどなく、よって冷却衣服1を着て作業を行う者の負担も少ない。
【0028】
冷媒としての冷却体51を機能させるための電力も必要ないので、熱交換器を設ける場合に比べてランニングコストも生じない。また、本実施の形態では冷却体51として日常生活で使用されるペットボトル53に水を封入したものを使用しているので、冷却体51の購入費用も生じない。
【0029】
内部の水を凍らせたペットボトル53の1本分での冷却機能の平均的な持続時間を予め環境条件別に把握しておき、例えばタイマー等で管理して冷却体51を定期的に交換するようにすれば、良好な冷却機能を長時間に亘って持続させることができる。冷却機能が低下した冷却体51は冷凍庫に入れて次の使用に備えられる。
【0030】
貯留部35は、貯留部35内の水Wを冷却するための冷却体51を外部から出し入れ可能に設けられている。
図4を参照して貯留部35における冷却体51の交換可能な構成について説明する。
貯留部35は、水Wが溜められた冷却流体収容袋55と、この冷却流体収容袋55の表面側に固定された口金57と、口金57の開口部に固定されたリング状の合成樹脂製の雌ネジ部59と、口金57に柔軟性を有する紐状体58で接続されたリング状の金属製のホルダ61と、ホルダ61に回転自在に設けられ、外周面に雌ネジ部59に螺合する雄ネジ部63aを有する合成樹脂製のキャップ63とを備えている。
【0031】
冷却体51を冷却流体収容袋55内に入れた後、キャップ63を雌ネジ部59に螺合することにより、貯留部35は水漏れが生じないように封止される。冷却流体収容袋55は分離しないようにその一部が上収納部23のポケット23a内に固定されている。
図1(b)、(c)に示すように、上収納部23のポケット23aには円形の開口部23cが形成されており、貯留部35はポケット23a内に収納された後、口金57やキャップ63が開口部23cから外部に突出するようにセットされて蓋23bが閉じられる。なお、
図1(b)、(c)では口金57の表示を省略している。キャップ63は、後身ごろ5の外側から内方側に凹んだ一対の指入れ凹部63bを有しており、開閉操作が容易にできるようになっている。
上記構成により、貯留部35は、冷却体51をキャップ63の開閉操作のみで外部から出し入れ可能となっている。
図4において、符号HWは昇温した水を、CWは冷却体51によって冷却された水を、IWはペットボトル53内の凍った水、すなわち氷を示している。
【0032】
図5は、冷却衣服1を着た状態の背面側からの斜視図である。水Wが貯められかつ冷却体51が入れられた重量のある貯留部35と、ポンプ36及びバッテリー37が、一般的に人が荷物を背負うのに適した背中側、すなわち衣服本体10の背面側に設けられていることにより、冷却衣服1を着た者はあまり貯留部35等の重さを感じることなく動くことができる。スイッチ39は左手の手首近傍に位置するように設けられており、ポンプ36の駆動・停止の操作が容易にできるようになっている。
【0033】
冷却体51の交換は、基本的には冷却衣服1を脱いで自分自身で行うのであるが、冷却衣服1を着たままの状態で作業場の同僚にキャップ63を外して交換してもらうようにすることもできる。貯留部35には冷却された水CWが収容されているので、衣服本体10の背面側では合成樹脂シート17による冷却に加えて、貯留部35による冷却効果も加味される。
【0034】
特許文献1の構成では、冷却液を溜めるタンクやポンプ及び電源が衣服本体の外部に分離して設けられて接続チューブで接続されているため、作業動作の範囲が制限されて機動性に欠けるが、本実施の形態に係る冷却衣服1では特許文献1のタンクに相当する貯留部35と、ポンプ36及びバッテリー37が衣服本体10に一体に備えられているので、作業動作の範囲が制限されず機動性に優れる。
【0035】
本発明の第2の実施の形態に係る冷却衣服を
図6から
図8にしたがって説明する。
冷却衣服は第1の実施の形態に係る冷却衣服1と略同様の構成を有するので、同様の構成については説明を省略し、その相違点についてのみ説明する。また必要に応じて第1の実施の形態の説明で用いた符号を引用することとする。
貯留部65の冷却流体収容袋75は、収容された冷却体51が僅かに傾いて立った姿勢を保つサイズに設定されている。また、冷却流体収容袋75の上端の略中心部分に接続チューブ47が接続され、下端の左側に寄った部分に接続チューブ41が接続されている。冷却体51は接続チューブ47の開口の下方に位置している。
【0036】
図7に示すように、人体から熱を吸収した水HWは昇温した状態で接続チューブ47から流出して貯留部65の上端から供給される。冷却体51は接続チューブ47の開口の下方に位置しているので、水HWは冷却体51に接触する。または冷却体51に接触して冷却された水CWと混ざることにより、冷却される。そして、再冷却された水CWは接続チューブ41を通って貯留部65の下端から流出する。
図8に示すように、ペットボトル53内の氷IWが徐々に解けて小さくなると浮上して、ペットボトル53内の上部に位置することになる。前述のように冷却体51は僅かに傾いて立った姿勢で冷却流体収容袋75に収容されているので、接続チューブ47から流出した水HWはペットボトル53内の小さくなった氷IWに対応する領域、すなわち冷却体51の上部に接触する。従って、氷IWが小さくなっても、水HWを確実に冷却することが可能となる。よって、冷却流体循環路49の良好な冷却機能を長時間に亘って確実に維持することができる。
【0037】
本発明の第3の実施の形態に係る冷却衣服81を
図9から
図13にしたがって説明する。
冷却衣服81は第1の実施の形態または第2の実施の形態に係る冷却衣服と同様の構成部分を有するので、同様の構成部分については説明を省略する。また、必要に応じて第1の実施の形態または第2の実施の形態の説明で用いた符号を引用することとする。
この冷却衣服81はバッグ部85のみを有する、言わばリュックサック形状を為している。バッグ部85の前面側には一対の肩掛けベルト87が取り付けられている。肩掛けベルト87はバッグ部85の上下の端部に取り付けられている。これらバッグ部85と一対の肩掛けベルト87によって衣服本体が構成されている。
肩掛けベルト87は冷却機能を備えた幅広でバッグ部85の下端部近傍まで延びる主部89と細幅の紐状部90とからなり、図示しない長さ調節機構を備えている。また、主部89の上下方向の略中間部には連結状態と連結を解除する状態とにできるバックル91を備えた固定ベルト93が取り付けられている。また、バッグ部85の前面側の下部にも同様のバックル95を備えた固定ベルト97が取り付けられている。
【0038】
バッグ部85の前面側と一対の肩掛けベルト87の裏面側には、冷却流体循環路99が固定されて設けられている。この冷却流体循環路99全体が可撓性を有する合成樹脂製のチューブによって構成されており、蛇行するように湾曲して備えられている。
冷却流体循環路99の一端はポンプ36の吐出口に接続され、他端は流入口に接続されている。また、
図11に示すように冷却流体循環路99はメッシュ状のシート101によって覆われている。
【0039】
図12に示すように、バッグ部85の背面側には、上収納部123と下収納部125とが形成されている。上収納部123には冷却流体循環路99の途中に設けられた貯留部35が収納され、下収納部125には冷却流体を循環させるポンプ手段としての小型のポンプ36と、該ポンプ36に電力を供給するバッテリー37とが収納されている。
上収納部123は下端部から左右両端部に渡って設けられたファスナー127によって開閉できるようになっている。下収納部125は下端部から左右両端部に渡って設けられたファスナー129によって開閉できるようになっている。
【0040】
図13に示すように、肩掛けベルト87に腕を通し、バッグ部85を背負うようにして冷却衣服81を装着する。そして、バックル91、95を連結状態にして、固定ベルト93、97を締める。
ポンプ36を駆動させると、
図10において矢印で示すように水Wが冷却流体循環路99を流れる。これにより、冷却衣服81を装着した者の背中と左右の肩掛けベルト87の主部89に対応する部分が冷やされる。
この冷却衣服81では、冷却流体循環路99全体をチューブによって構成したので、製作コストを低く抑えることが可能である。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では冷却体51としてペットボトル53に水Wを封入したものを使用したが、液体状の保冷剤を合成樹脂製の袋に封入した市販の保冷材を使用してもよい。また、ペットボトル53に封入する凍結可能な流体は水に限定されず、液体状の保冷剤等の他の流体でもよい。また、合成樹脂シート13、17における前面側冷却流路11、背面側冷却流路15としてジグザグに延びる流路形状を例示したが、碁盤の目のように直線状の流路が交差する形状でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…冷却衣服 3…前身ごろ 5…後身ごろ 10…衣服本体
11…前面側冷却流路 15…背面側冷却流路 13、17…合成樹脂シート
35…貯留部 36…ポンプ 49…冷却流体循環路 51…冷却体
53…ペットボトル(容器) 57…口金 59…雌ネジ部
63…キャップ 63a…雄ネジ部 65…貯留部 81…冷却衣服
85…バッグ部 87…肩掛けベルト 99…冷却流体循環路
W…水(冷却流体)