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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165076
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221024BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221024BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/00 303
G03G15/01 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070260
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】園田 真宏
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033BA25
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE03
2H033CA18
2H033CA30
2H033CA44
2H033CA48
2H270LA25
2H270LB02
2H270MA35
2H270MH09
2H270ZC04
2H270ZC08
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB13
2H300EC02
2H300EC05
2H300EH15
2H300EJ09
2H300EJ46
2H300EJ47
2H300EK04
2H300EK05
2H300EK10
2H300GG11
2H300QQ22
2H300QQ26
2H300RR29
2H300SS02
2H300TT02
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】印字品位を向上する。
【解決手段】カラープリンタ1は、記録媒体Pにおいて主走査方向Drmに関しセル目領域CSと対応する領域である印字率算出領域PCSに形成される画像の印字率TCを判定する印字率判定部74と、印字率算出領域PCSの印字率TCが印字率閾値以上の高印字率である場合、該印字率算出領域PCSと対応するセル目領域CSに対し主走査方向Drmの少なくとも一方向側に隣接する発熱セル40の設定温度TmpSを、該発熱セル40の本来の設定温度TmpSよりも高く設定する定着制御部64とを設ける。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿って複数個が並び互いに分割された発熱部を有し、前記主走査方向に隣接する互いの前記発熱部同士の間に発熱部間領域が形成された加熱源と、
前記加熱源によって加熱される加熱回転体と、
前記加熱回転体の外周面と接触する加圧回転体とを有し、
前記加熱回転体と前記加圧回転体との間に形成されるニップ部に、画像を担持した記録材を挟持して通紙させ前記画像を加熱定着する定着器
を有する画像形成装置であって、
前記記録材において前記主走査方向に関し前記発熱部間領域と対応する領域である印字率算出領域に形成される画像の印字率を判定する印字率判定部と、
前記印字率算出領域の前記印字率が所定の閾値以上の高印字率である場合、該印字率算出領域と対応する前記発熱部間領域に対し前記主走査方向の少なくとも一方向側に隣接する前記発熱部の設定温度を、該発熱部の本来の設定温度よりも高く設定する制御部と
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記印字率算出領域が前記高印字率である場合、該印字率算出領域と対応する前記発熱部間領域に対し前記主走査方向の両側に隣接する前記発熱部の設定温度を、該発熱部の本来の設定温度よりも高く設定する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記印字率算出領域が前記高印字率である場合、該印字率算出領域と対応する前記発熱部間領域に対し前記主走査方向の両側に隣接する前記発熱部である最隣接発熱部の設定温度を、該最隣接発熱部の本来の設定温度よりも高く設定することにより、該最隣接発熱部が本来の設定温度であった場合と比較して、前記加熱回転体における前記発熱部間領域に対応する領域の温度の低下を抑える
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記印字率算出領域が前記高印字率である場合、前記最隣接発熱部の設定温度を、該最隣接発熱部の本来の設定温度よりも高く設定することにより、前記加熱回転体における前記発熱部間領域に対応する領域の温度を、前記高印字率の場合における前記加熱回転体の下限の温度である高印字率定着限界温度よりも高く保つ
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記印字率算出領域が前記高印字率である場合、該印字率算出領域と対応する前記発熱部間領域に対し前記主走査方向の両側に隣接する前記発熱部である最隣接発熱部の設定温度を、該最隣接発熱部の本来の設定温度よりも高く設定し、前記発熱部間領域から離隔する側において該最隣接発熱部に隣接する前記発熱部の設定温度を、該発熱部の本来の設定温度よりも、前記最隣接発熱部の本来の設定温度からの上昇量よりも低い上昇量で高く設定する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
それぞれの前記発熱部に供給される電力を個別にオンオフ制御可能であり、電力をオフにする時間に対し電力をオンにする時間を長くすることにより、前記発熱部の設定温度を高くする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記印字率算出領域は、
前記記録材における前記発熱部間領域と同一の前記主走査方向の範囲と、前記記録材における前記主走査方向に直交する副走査方向における一端から他端までの範囲とに囲まれた領域である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記本来の設定温度は、前記高印字率の場合における前記加熱回転体の下限の温度であるよりも高い温度である
請求項1に記載の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、例えば電子写真式の画像形成装置に搭載される定着器に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、感光ドラムの表面を帯電させ、帯電された感光ドラムの表面を露光して静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、該トナー像を媒体に転写して定着器により定着させるものが広く用いられている。そのような定着器としては、ヒータ等の加熱源により加熱された加熱回転体と、加熱回転体を押圧して加熱回転体との間でニップ部を形成する加圧回転体とを有するものがある。印刷する記録媒体には様々なサイズが存在し、例えば、幅狭の記録媒体を印刷すると非通紙部の温度上昇が問題となる。そのため、画像形成装置としては、加熱源における発熱部を主走査方向に沿って複数に分割し、それぞれの発熱部を独立してON/OFF制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-197653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の発熱部から構成される加熱源は、発熱部同士の絶縁を確保するために、発熱部同士の間に間隔を空け、隣接する発熱部同士の間に発熱部間領域を設ける必要がある。この発熱部間領域は、発熱部を形成する発熱する抵抗発熱配線が存在しないため発熱量が少ない。このため、発熱部間領域の定着性はそれ以外の部分よりも悪くなり、特に印字率が高い印刷のときに定着不良(コールドオフセット)が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、印字品位を向上し得る画像形成装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明の画像形成装置においては、主走査方向に沿って複数個が並び互いに分割された発熱部を有し、主走査方向に隣接する互いの発熱部同士の間に発熱部間領域が形成された加熱源と、加熱源によって加熱される加熱回転体と、加熱回転体の外周面と接触する加圧回転体とを有し、加熱回転体と加圧回転体との間に形成されるニップ部に、画像を担持した記録材を挟持して通紙させ画像を加熱定着する定着器を有する画像形成装置であって、記録材において主走査方向に関し発熱部間領域と対応する領域である印字率算出領域に形成される画像の印字率を判定する印字率判定部と、印字率算出領域の印字率が所定の閾値以上の高印字率である場合、該印字率算出領域と対応する発熱部間領域に対し主走査方向の少なくとも一方向側に隣接する発熱部の設定温度を、該発熱部の本来の設定温度よりも高く設定する制御部とを設けるようにした。
【0007】
本発明は、加熱回転体における、発熱部間領域の部分の発熱量を、該発熱部間領域に隣接する発熱部で補うことができ、発熱部間領域の温度低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば印字品位を向上し得る画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カラープリンタの構成を示す右側面図である。
図2】定着器の構成を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
図3】ヒータの構成を示す底面図であり、(A)はヒータの全体構成、(B)は(A)の部分拡大図である。
図4】カラープリンタの制御構成を示すブロック図である。
図5】印字率及び定着限界温度を示す図である。
図6】ヒータの温度分布を示す図である。
図7】印字率を判定する範囲を示す図である。
図8】発熱セルのON Dutyと定着ベルト温度との関係を示すグラフである。
図9】第1の実施の形態による発熱セルのON Dutyを示す表である。
図10】第1の実施の形態によるヒータの温度分布を示す図である。
図11】比較例によるヒータの温度分布を示す図である。
図12】第1の実施の形態による発熱セルのON Dutyの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
図13】第2の実施の形態による発熱セルのON Dutyを示す表である。
図14】第2の実施の形態によるヒータの温度分布を示す図である。
図15】第2の実施の形態による発熱セルのON Dutyの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、カラープリンタ1は、カラー用電子写真式プリンタであり、例えばA3サイズやA4サイズ等の大きさでなる記録媒体Pに対し、所望のカラー画像を印刷する。因みに以下では、図1における左端部分をカラープリンタ1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。また以下では、記録媒体Pが搬送される搬送路5上における任意の位置から見て記録媒体格納部4に近い位置、又は記録媒体格納部4へ向かう方向を上流と呼ぶ。さらに以下では、搬送路5上における任意の位置から見て、記録媒体Pが排出されて積載される排出スタッカ部22に近い位置、又は排出スタッカ部22へ向かう方向を下流と呼ぶ。さらに、上流から下流に向かう方向を搬送方向という。また、搬送方向と、搬送される記録媒体Pの紙面に直交する厚さ方向とに直交する、左右方向を、搬送幅方向とも呼ぶ。
【0011】
このカラープリンタ1は、本体部2と開閉可能なトップカバー部3とにより構成される。本体部2内の最下部には、複数枚の記録媒体Pを収容可能である記録媒体格納部4が設けられている。記録媒体格納部4の前端上側には、記録媒体格納部4に集積された状態で収容されている記録媒体Pを1枚ずつ分離して搬送路5へ給紙する給紙ローラ6が設けられている。第1レジストローラ7及び第2レジストローラ8は、記録媒体格納部4から給紙ローラ6により給紙された記録媒体Pを画像形成部9まで搬送する搬送ローラである。画像形成部9は、画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kにより構成されている。
【0012】
IN1センサ10は、第1レジストローラ7の上流側に設置されており、記録媒体Pが到達したことを検知する走行系センサである。IN2センサ11は、第2レジストローラ8の上流側に設置されており、記録媒体Pが到達したことを検知する走行系センサである。WRセンサ12は、第2レジストローラ8の下流側に設置されており、記録媒体Pを検知する走行系センサであり、記録媒体Pが画像形成部9に到達するタイミングを検知する。
【0013】
本体部2内における記録媒体格納部4の上方には、該本体部2内を前後に大きく横切るようにして搬送ベルト13が設けられている。搬送ベルト13は、中心軸を左右方向に向けた細長い円筒状でなる前後のローラを周回するように張架されており、画像形成ユニット14の下側に対向して配置され、記録媒体Pを上面に載せて後方向である下流側へ搬送する。
【0014】
一方、搬送ベルト13の上側には、4個の画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14K(以下では、これらをまとめて画像形成ユニット14とも呼ぶ)が前側から後側へ向かって順に配置されている。すなわち各色の画像形成ユニット14は、いわゆるタンデム方式で配置されている。この画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色にそれぞれ対応している。また画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kは、互いに同様に構成されており、対応するトナーの色のみがそれぞれ相違する。画像形成ユニット14は、記録媒体Pの左右幅に対応するべく、左右方向に比較的長い略箱状に形成されている。
【0015】
また各画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kは、それぞれ上方にトナーカートリッジ15Y、15M、15C及び15K(以下では、これらをまとめてトナーカートリッジ15とも呼ぶ)が設けられている。トナーカートリッジ15は、左右方向に長い中空の容器であり、粉末状でなる各色のトナーがそれぞれ収容されると共に、所定の撹拌機構が組み込まれている。
【0016】
また本体部2内には、各画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kとそれぞれ対応するように、LEDヘッド16Y、16M、16C及び16K(以下では、これらをまとめてLEDヘッド16とも呼ぶ)が設けられている。このLEDヘッド16は、左右方向に細長い直方体状に構成されると共に、その内部に複数のLED(Light Emitting Diode)が左右方向に沿って並ぶように配置されており、露光制御部62(図4)から供給される画像データに応じた発光パターンで各LEDを発光させる。LEDヘッド16は、トップカバー部3に支持されており、トップカバー部3が閉じられた際、感光ドラム17がこのLEDヘッド16と極めて近接するようになっており、該LEDヘッド16からの光により露光処理が行われる。
【0017】
各画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kには、感光ドラム17Y、17M、17C及び17K(以下では、これらをまとめて感光ドラム17とも呼ぶ)が設けられている。感光ドラム17は、静電気力により表面に印刷データに応じた静電潜像を作成可能であり、トナーカートリッジ15から供給されるトナーによりトナー像が形成される。
【0018】
転写ローラ18Y、18M、18C及び18K(以下では、これらをまとめて転写ローラ18とも呼ぶ)は、各画像形成ユニット14Y、14M、14C及び14Kの真下となる4箇所にそれぞれ設けられている。すなわち転写ローラ18は、搬送ベルト13を挟んで、感光ドラム17と対向して配設されている。転写ローラ18は、帯電し得るように構成されており、感光ドラム17の表面上に形成されたトナー像を記録媒体P上に転写する。これら感光ドラム17及び転写ローラ18は、後述する高圧電源24から高圧を印加されることにより、静電気的に帯電、現像及び転写といった電子写真プロセスを実行する。
【0019】
モータ制御部63(図4)は、トナーカートリッジ15からトナーを画像形成ユニット14へ供給させる。これと共に露光制御部62(図4)は、PC54(図4)から供給された画像データに応じた発光パターンを形成するようにLEDヘッド16を発光させる。これに応じて各画像形成ユニット14は、トナーカートリッジ15から供給されるトナーを用い、LEDヘッド16の発光パターンに応じたトナー像を形成し、このトナー像を記録媒体Pにそれぞれ転写する。これにより、搬送ベルト13によって搬送されている記録媒体P上には、画像データに応じた4色のトナー像が順次転写されていく。
【0020】
FUSER-INセンサ19は、定着器20の上流側の近傍に設置されており、記録媒体Pを検知する走行系センサである。
【0021】
画像形成ユニット14よりも下流側には、定着器20が設けられている。定着器20は、定着制御部64(図4)の制御に基づき、定着ベルト30(図2)を加熱すると共に該定着ベルト30及び加圧ローラ32(図2)をそれぞれ所定方向へ回転させる。これにより定着器20は、受け渡された記録媒体P、すなわち4色のトナー像が重ねられた記録媒体Pに対して熱及び圧力を加えてトナーを定着させ、さらに下流側へ受け渡す。
【0022】
EXITセンサ21は、定着器20の下流側に設置されており、記録媒体Pを検知する走行系センサであり、定着器20から記録媒体Pが排出されたことを検知する。排出スタッカ部22は、本体部2の外部に設けられており、画像が形成された記録媒体Pを集積する。濃度センサ23は、搬送ベルト13上に作成される特殊なパターンを読み取る光学式センサであり、濃度補正等の印字品位保持動作に用いられる。
【0023】
高圧電源24は、感光ドラム17及び転写ローラ18に印加する高圧電圧を発生する電源である。低圧電源25は、商用のAC電源をDC電源に変換するAC-DC電源である。この低圧電源25は、図示しない各基板に3.3[V]、5[V]及び24[V]等のDC電源を供給する。また低圧電源25は、後述するトライアック38を介して定着器20のヒータ31(図3)にAC100[V]を供給する。
【0024】
ここで、上述した各走行系センサ(用紙センサとも呼ぶ)(IN1センサ10、IN2センサ11、WRセンサ12、FUSER-INセンサ19及びEXITセンサ21)と濃度センサ23とは、ケーブルを介してプロセス制御部60(図4)に接続されている。また、各ローラ(定着器20内の各ローラ、給紙ローラ6、第1レジストローラ7、第2レジストローラ8、感光ドラム17及び転写ローラ18)は、図示しないアクチュエータによりメカ的に駆動され、記録媒体Pをカラープリンタ1の下流側へ搬送することが可能である。
【0025】
一方、本体部2の外部の前側には表示部26が設けられている。表示部26は、液晶表示パネル及びスイッチ等により構成されており、カラープリンタ1の状態の表示とユーザによる入力操作とが可能である。表示部26は、ケーブルを介してプロセス制御部60(図4)に接続されている。また液晶表示パネルは、例えば、24文字×2行のキャラクタ(文字)を表示可能である。
【0026】
[1-2.定着器の構成]
図2に示すように、定着器20は、定着ベルト30、ヒータ31、加圧ローラ32、温度センサ33、34、35、熱拡散部材36、ヒータホルダ(図示せず)及び固定支持部材(図示せず)により構成される。なお図2(A)は、電力供給を含めた図である。
【0027】
定着ベルト30は、無端の帯状体であり、内部が固定支持部材により支持されている。この定着ベルト30は、内周側から外周側に向かって、基材、ゴム層及び離型層が形成されており、例えば、基材はポリイミド、ゴム層はシリコンゴム、離型層はフッ素系樹脂PFA等の材質である。ヒータ31は、定着ベルト30の内周側に配置されており、長方形状の基体と、該基体上に形成される発熱セル40(図3)とから構成される加熱源である(詳細は後述する)。
【0028】
加圧ローラ32は、定着ベルト30の下側に対向して配設され、定着ベルト30との間にニップ部を形成する。この加圧ローラ32は、金属材料からなる円筒状の部材周面がゴム弾性層で覆われた構成となっており、例えば、ゴム弾性層はシリコンゴム等の材質である。
【0029】
熱拡散部材36は、ヒータ31と定着ベルト30との間に左右方向(長手方向)に沿って配設されており、例えば、熱伝導率が高いアルミニウム等の材質の板状の部材である。この熱拡散部材36は、長手方向と幅方向(記録媒体Pが搬送される前後方向)とに温度を均一に拡散する。
【0030】
温度センサ33は、非接触式の温度検知センサであり、定着ベルト30における搬送幅方向の中央部の通紙領域に設置され、定着ベルト30の表面温度である定着ベルト温度を検知する。温度センサ34及び35は、接触式サーミスタであり、記録媒体Pが通過しない領域である、加圧ローラ32における搬送幅方向の両端部の非通紙領域に設置され、加圧ローラ32の表面温度を検知する。
【0031】
交流公称電圧37は、例えばAC100[V]のAC入力電圧である。トライアック38a、38b、38c、38d及び38e(以下では、これらをまとめてトライアック38とも呼ぶ)は、ヒータ31の電力制御に用いられる半導体スイッチング素子であり、定着制御部64によりON/OFFが制御される。定着制御部64の詳細は後述するが、各温度センサ33、34及び35の検知結果に基づいて定着ベルト30の温度が最適となるように制御する。
【0032】
[1-3.ヒータの構成]
図3(A)に示すように、ヒータ31は、長方形状の基体の上において該ヒータ31の長手方向(すなわち搬送幅方向又は主走査方向(以下ではヒータ長手方向とも呼ぶ))に沿って複数個の発熱セル40a、40b、40c、40d及び40e(以下では、これらをまとめて発熱セル40とも呼ぶ)が左側から右側に向かって順に配置されている。図3(B)に、説明を簡略化するために、発熱セル40a、40b、40c、40d及び40eのうち、発熱セル40a、40b及び40cを拡大した図を示す。なお本実施の形態においては、全ての発熱セル40a、40b、40c、40d及び40eにおけるヒータ長手方向の幅は同一となっている。
【0033】
各発熱セル40a、40b及び40cは、給電されることにより発熱する抵抗発熱配線41a、41b及び41cにより構成される。以下では、抵抗発熱配線41a、41b、41c、41d(図示せず)及び41e(図示せず)をまとめて抵抗発熱配線41とも呼ぶ。抵抗発熱配線41d及び41eは、それぞれ発熱セル40d及び41eに対応した抵抗発熱配線41である。抵抗発熱配線41は、搬送幅方向に沿って延びる配線が、搬送幅方向の両端部において複数回折り返されることにより、該搬送幅方向に直交する搬送方向の所定の領域を占めている。共通給電配線42は、各発熱セル40a、40b及び40cの抵抗発熱配線41a、41b及び41cそれぞれに共通して接続される共通ラインであり、抵抗発熱配線41a、41b及び41cとの接続箇所の反対側は、交流公称電圧37(図2)に接続される。給電配線43a、43b及び43cは、共通給電配線42とは反対側において、それぞれ、抵抗発熱配線41a、41b及び41cに接続される。また給電配線43a、43b及び43cは、抵抗発熱配線41a、41b及び41cとの接続箇所の反対側が、それぞれ、トライアック38a、38b及び38c(図2)に接続される。このようにヒータ31は、抵抗発熱配線41a、給電配線43a及びトライアック38aの組と、抵抗発熱配線41b、給電配線43b及びトライアック38bの組と、抵抗発熱配線41c、給電配線43c及びトライアック38cの組と、抵抗発熱配線41d、給電配線43d及びトライアック38d(何れも図示せず)の組と、抵抗発熱配線41e、給電配線43e及びトライアック38e(何れも図示せず)の組との5組が、互いに独立した回路を形成し、これら5組の回路が、共通給電配線42と接続されている。このためヒータ31は、各発熱セル40a~40eが独立して制御可能となっている。
【0034】
[1-4.カラープリンタの制御構成]
図4に示すように、カラープリンタ1は、コントローラ制御部50により全体を統括制御する。コントローラ制御部50は、CPU51、ROM(Read Only Memory)52及びRAM(Random Access Memory)53を有しており、これらCPU51、ROM52及びRAM53は、内部バスにより互いに接続されている。CPU51は、ROM52に記憶されている印刷処理プログラムに従って、RAM53及びプロセス制御部60を制御する。ROM52は、印刷処理プログラムを記憶する領域であり、カラープリンタ1の電源が切れてもデータを保持可能な不揮発性メモリである。RAM53は、PC54から入力された印刷データを記憶し、カラープリンタ1の電源が切られるとデータが消去される揮発性メモリである。コントローラ制御部50には、カラープリンタ1の外部のPC54が接続されている。
【0035】
PC54は、例えばパーソナルコンピュータであり、PC表示部55及びPC入力部56を有している。このPC54は、印刷データを作成し、該印刷データを、USB(Universal Serial Bus)やLAN(Local Area Network)等からなる通信インターフェースを介してカラープリンタ1へ送信する。またPC54は、カラープリンタ1より出された指示を通信インターフェースを介して受信する。PC表示部55は、液晶ディスプレイ等により構成されており、アプリケーション(図示せず)で作成される印刷画像を表示すると共に、カラープリンタ1から出された指示を表示する。PC入力部56は、キーボードやマウス等により構成されており、アプリケーション(図示せず)等を介して印刷データの画像を作成すると共に、カラープリンタ1より出された指示に対する応答を入力する。
【0036】
プロセス制御部60は、高圧制御部61、露光制御部62、モータ制御部63及び定着制御部64を有しており、記録媒体Pの搬送、帯電、現像、転写及び定着等の印刷プロセスを制御する。
【0037】
高圧制御部61は、供給電圧制御部66、現像電圧制御部67、帯電電圧制御部68及び転写制御部69を有しており、記録媒体Pにトナーを転写するために、各種ローラに印加する電圧を適正に制御する。供給電圧制御部66は、供給ローラ70に印加する供給電圧を制御する。現像電圧制御部67は、現像ローラ71に印加する現像電圧を制御する。帯電電圧制御部68は、帯電ローラ72に印加する帯電電圧を制御する。転写制御部69は、転写ローラ18に印加する転写電圧を制御する。露光制御部62は、LEDヘッド16の露光制御を行う。
【0038】
モータ制御部63は、カラープリンタ1内のメインモータ76を制御し、回転駆動させることにより、画像形成ユニット14内の各ローラ、定着器20内の各ローラ、給紙ローラ6、第1レジストローラ7及び第2レジストローラ8を駆動する。
【0039】
定着制御部64は、各温度センサ33、34及び35の検出結果に基づいて低圧電源25のトライアック38a~38eをON/OFF制御することにより、交流公称電圧37からヒータ31に電力を供給し定着ベルト30の表面温度を所定の適切な温度に制御する。印字率判定部74は、ヒータ31の発熱セル40a~40eのON Dutyパラメータを保持し、RAM53に展開された印刷データの情報から各領域の印字率を判定し、判定結果に基づいて、各発熱セルのON Dutyを決定する。
【0040】
[1-5.印字率及び定着限界温度について]
まず図5及び図6を用いて、現状の問題点を説明する。図5に、印字率(トナー濃度)と定着限界温度TmpLとの関係を示す。
【0041】
まず、定着器20の定着性良好範囲Rgfという特性に関して記載する。定着性良好範囲Rgfとは、ホット限界温度TmpUと定着限界温度TmpLとの間の温度範囲である。ホット限界温度TmpUは、定着ベルト温度がそれ以上の温度になるとホットオフセット等の印字不良が発生する温度であり、本実施の形態においては190[℃]に設定されている。定着限界温度TmpLは、定着ベルト温度がそれ以下の温度になると定着不良等の印字不良が発生する温度である。この定着性良好範囲Rgfは記録媒体P毎に異なると共に、印刷データの印字率TC毎に異なる。ここで印字率TCとは、記録媒体Pに形成される画像のトナー濃度のことである。設定温度TmpSは、オーバーシュートや温度ドロップ等が発生しても定着性の良好範内に収まるように実験に基づいて設定された、定着ベルト30の設定温度である。
【0042】
この説明においては、例として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)について記載する。マゼンタ(M)50[%](単色50[%])や、マゼンタ(M)25[%]+イエロー(Y)25[%](混色50[%])等、印字率TCが50[%]の場合、定着限界温度TmpLは145[℃]となる。また、マゼンタ(M)100[%](単色100[%])や、マゼンタ(M)50[%]+イエロー(Y)50[%](混色100[%])等、印字率TCが100[%]の場合、定着限界温度TmpLは150[℃]となる。さらに、マゼンタ(M)100[%]+イエロー(Y)100[%](混色200[%])等、印字率TCが200[%]の場合、定着限界温度TmpLは160[℃]となる。さらに、シアン(C)80[%]+マゼンタ(M)80[%]+イエロー(Y)80[%](混色240[%])等、印字率TCが240[%]の場合、定着限界温度TmpLは160[℃]となる。
【0043】
このように、印字率TCが高くなると定着限界温度TmpLが高くなり、定着性良好範囲Rgfが狭くなる。なお、図5においては説明の簡素化のため、印字率TC240[%]、印字率TC200[%]、印字率TC100[%]及び印字率TC50[%]の例しか記載していないものの、実験から、印字率TC<200[%]であれば定着限界温度TmpLは150[℃]以下である。本実施の形態においては、印字率TCが高印字率であるか又は低印字率であるかを判定する印字率閾値を200[%]とし、印字率TC<200[%]の場合を低印字率、印字率TC≧200[%]の場合を高印字率とする。
【0044】
[1-6.ヒータの温度分布について]
図6に、ヒータ31の温度分布を示す。このヒータ31の温度分布において、横軸はヒータ長手方向の位置、縦軸は定着ベルト温度TmpFである。なお実際のカラープリンタ1においては、温度センサ33(図2(A))は、定着ベルト30における搬送幅方向の中央部のみに設置されているが、図6における定着ベルト温度TmpFは、実験のために温度センサ33をヒータ長手方向に沿って複数個設置して得られた検出値である。グラフ中の太い実線は、測定された定着ベルト温度TmpFの、ヒータ長手方向に亘る温度分布を示す、温度分布線L1である。また、設定温度TmpSは165[℃]、ホット限界温度TmpUは190[℃]、高印字率の場合の定着限界温度TmpLである高印字率定着限界温度TmpLuは160[℃]、低印字率の場合の定着限界温度TmpLである低印字率定着限界温度TmpLlは150[℃]である。以下では、高印字率定着限界温度TmpLu及び低印字率定着限界温度TmpLlをまとめて、定着限界温度TmpLとも呼ぶ。
【0045】
それぞれ独立して給電される複数の発熱セル40a~40eを直列に並べて配置するためには、隣接する各発熱セル40同士の間に、絶縁を保つための空隙を設ける必要がある。このため、ヒータ31において、発熱セル40aと発熱セル40bとの間には空隙であるセル目領域CSaが、発熱セル40bと発熱セル40cとの間には空隙であるセル目領域CSbが、発熱セル40cと発熱セル40dとの間には空隙であるセル目領域CScが、発熱セル40dと発熱セル40eとの間には空隙であるセル目領域CSdが、それぞれ配置されている。以下では、セル目領域CSa、CSb、CSc及びCSdをまとめて、セル目領域CSとも呼ぶ。
【0046】
ここで、セル目領域CSを含まない、発熱セル40bにおいて破線で囲んだ四角形の領域を領域AR1とし、セル目領域CSを含む、発熱セル40b及び40cにおいて破線で囲んだ、領域AR1と同面積の四角形の領域を領域AR2とする。また、領域AR1に占める抵抗発熱配線41(図3)の占める割合をX、領域AR2に占める抵抗発熱配線41(図3)の占める割合をYとすると、領域AR2はセル目領域CSbを含むため、X>Yの関係となる。すなわち、領域AR1の発熱量Qx(J)と領域AR2の発熱量Qy(J)とを比較すると、Qx>Qyとなり、領域AR2の発熱量は領域AR1に対して少なくなる。
【0047】
従って、カラープリンタ1がヒータ31の各発熱セル40a~40eに給電し設定温度TmpSが165[℃]となるように制御すると、ヒータ31の温度分布は図6の温度分布線L1で示すような温度分布となる。この温度分布線L1により示されるように、セル目領域CSを含まない各発熱セル40の領域は定着ベルト温度TmpFが165[℃]となるが、各発熱セル40a~40e間のセル目領域CSは発熱量不足のため定着ベルト温度TmpFが低くなり、低印字率定着限界温度TmpLl(150[℃])は上回るものの、高印字率定着限界温度TmpLu(160[℃])を下回ってしまう。例えば、A3サイズの記録媒体PであるA3サイズ記録媒体Pa3において、印字率TCが200[%](イエロー(Y)100[%]+マゼンタ(M)100[%]のレッド)の高印字率の画像IMG200が、ヒータ長手方向に関し、発熱セル40cの範囲とセル目領域CSbとを含む範囲で形成され、印字率TCが100[%](マゼンタ(M)100[%])の低印字率の画像IMG100が、ヒータ長手方向に関しそれ以外の範囲で形成され、定着器20まで搬送されてくる場合を考える。
【0048】
この場合、ヒータ長手方向に関し、画像IMG200が形成されている範囲のうちセル目領域CSb以外の範囲である領域AR3は、温度分布線L1が高印字率定着限界温度TmpLuよりも上の温度に維持されているのでコールドオフセットが発生しない。一方、ヒータ長手方向に関し、画像IMG200が形成されている範囲のうちセル目領域CSbの範囲である領域AR4は、温度低下により温度分布線L1が高印字率定着限界温度TmpLuを下回ってしまっているためコールドオフセットが発生してしまう。また、セル目領域CSにおけるコールドオフセットを回避するために、設定温度TmpSを180[℃]とする等、最初から高めの設定温度TmpSとしてしまうと、ヒータ長手方向に関し、領域AR4以外の範囲であり定着ベルト温度TmpFが十分確保されている領域まで高めの温度設定となり、消費電力の無駄となったり、記録媒体Pが通過しない領域である非通紙領域の定着ベルト温度TmpFが高くなったりする等の不都合が生じてしまう。
【0049】
[1-7.印字率を判定する範囲について]
次に上述した問題点を解決する本実施の形態について、図7図12を用いて説明する。まず、図7を用いて、印字率TCを算出し判定する範囲を説明する。以下では、記録媒体P(例えばA3サイズ記録媒体Pa3)において、ヒータ31におけるセル目領域CSa、CSb、CSc及びCSdそれぞれと対応した、印字率TCが算出される領域を、図7において色が塗られた領域である印字率算出領域PCSa、PCSb、PCSc及びPCSd(以下では、これらをまとめて印字率算出領域PCSとも呼ぶ)とする。発熱セル40aの左端からの主走査方向Drm(搬送幅方向)に沿って右側へ向かって距離L0の位置を画像が形成される左最上点(原点OC)とし、ヒータ長手方向を主走査方向Drm(搬送幅方向)とし、ヒータ長手方向に対して直交する方向を副走査方向Drs(搬送方向)とする。また、ヒータ31の発熱セル40a~40eの主走査方向Drmの幅を発熱セル幅Laとし、各セル目領域CSの主走査方向Drmの幅をセル目領幅域Lbとする。
【0050】
このとき、各印字率算出領域PCSにおける原点OCを基準とした主走査方向Drmの範囲は以下のようになる。
印字率算出領域PCSa…(La-L0)~(La-L0+Lb)の範囲
印字率算出領域PCSb…(2La-L0+Lb)~(2La-L0+2Lb)の範囲
印字率算出領域PCSc…(3La-L0+2Lb)~(3La-L0+3Lb)の範囲
印字率算出領域PCSd…(4La-L0+3Lb)~(4La-L0+4Lb)の範囲
【0051】
また、各印字率算出領域PCSにおける原点OCを基準とした副走査方向Drsの範囲は、記録媒体P(例えばA3サイズ記録媒体Pa3)の副走査方向Drsの長さとなる。このようにカラープリンタ1は、印字率TCを算出する範囲を、主走査方向Drmの範囲は、各セル目領域CSのセル目領幅域Lbとし、副走査方向Drsの範囲は、記録媒体Pの副走査方向Drsの一端から他端までの長さとする。
【0052】
[1-8.各発熱セルON Dutyと定着ベルト温度との関係]
次に、発熱セル40のON Duty(以下では、発熱セルON Dutyとも呼ぶ)について説明する。発熱セル40のON Dutyとは、定着制御部64がトライアック38a~38eをON/OFF制御する時間のうち、ONしている時間の割合である。ON時間をTon、OFF時間をToffとすると、発熱セル40のON Duty=Ton/(Ton+Toff)である。発熱セル40のON Dutyが高いと発熱セル40がONしている時間が長くなる。すなわちカラープリンタ1は、発熱セル40のON Dutyを長くONするほど、発熱セル40の温度を高く制御する。
【0053】
図8に、発熱セル40のON Dutyと定着ベルト温度TmpFとの関係を示す。図8(A)のグラフは、横軸が発熱セルON Duty、縦軸が主走査方向Drmに関しセル目領域CSの領域の定着ベルト温度TmpFである。図8(B)の表に示すように、α0は、主走査方向Drmに関しセル目領域CS以外(すなわち発熱セル40)は設定温度TmpSの定着ベルト温度TmpFを維持でき、且つ、主走査方向Drmに関しセル目領域CSは低印字率定着限界温度TmpLlを上回る定着ベルト温度TmpFを確保できる発熱セルON Dutyである。α2は、主走査方向Drmに関しセル目領域CS以外は定着ベルト温度TmpFがホット限界温度TmpUを超えることなく、且つ、主走査方向Drmに関しセル目領域CSは高印字率定着限界温度TmpLuを上回る定着ベルト温度TmpFを確保できる発熱セルON Dutyである。α1は、主走査方向Drmに関しセル目領域CS以外は設定温度TmpSとホット限界温度TmpUとの中間の定着ベルト温度TmpFを維持し、且つ、主走査方向Drmに関しセル目領域CSは高印字率定着限界温度TmpLuと低印字率定着限界温度TmpLlとの中間の定着ベルト温度TmpFを維持できる発熱セルON Dutyである。発熱セルON Dutyの大小関係はα2>α1>α0である。
【0054】
[1-9.各発熱セルのON Dutyの設定について]
次に、ROM52に保存されている図9の表TB1を用いて、第1の実施の形態による各発熱セル40のON Duty設定を説明する。表TB1は、セル目領域CSa、CSb、CSc及びCSdの印字率TCに対応した各発熱セル40a~40eのON Duty設定のマトリクスである。この表TB1において、「セル目領域の印字率」における「低」は、低印字率を、「高」は、高印字率をそれぞれ示している。ここで、印字率TCにおける高印字率と低印字率との判定閾値は200[%]とする。すなわち、印字率TC≧200[%]の場合は高印字率、印字率TC<200[%]の場合は低印字率である。以下では、説明を簡単にするため、太い線で囲ったケース4の場合について説明する。ケース4の場合、セル目領域CSbは高印字率で、それ以外のセル目領域CSa、CSc及びCSdは低印字率である。セル目領域CSbに隣接する発熱セル40bと発熱セル40cとのON Dutyはα2に設定され、ON Dutyがα2に設定された発熱セル40以外の発熱セル40である発熱セル40a、40d及び40eのON Dutyはα0に設定される。
【0055】
[1-10.ケース4の場合のヒータ温度分布について]
図6と対応する図10に、ケース4の場合の第1の実施の形態によるヒータ温度分布を示す。グラフの詳細な説明は図6と同じであるため省略する。図6と同様に、A3サイズ記録媒体Pa3において、印字率TC200[%](イエロー(Y)100[%]+マゼンタ(M)100[%]のレッド)の画像IMG200が、ヒータ長手方向に関し、発熱セル40cの範囲とセル目領域CSbとを含む範囲で形成され、印字率TC100[%](マゼンタ(M)100[%])の画像IMG100が、ヒータ長手方向に関しそれ以外の範囲で形成されてくる場合を考える。
【0056】
この場合、セル目領域CSbは印字率TC200[%]であるため高印字率と判定され、それ以外のセル目領域CSa、CSc及びCSdは、印字率TC100[%]であるため低印字率と判定される。各発熱セル40のON Dutyは表TB1(図9)に従い、セル目領域CSbに対し主走査方向Drmに隣接する発熱セル40b及び40cのON Dutyはα2に、それ以外の発熱セル40a、40d及び40eのON Dutyはα0に設定される。
【0057】
発熱セル40b及び40cの領域はホット限界温度TmpUを超えない定着ベルト温度TmpFに維持されるため、当然ながら、主走査方向Drmに関し発熱セル40cの範囲に形成された印字率TC200[%]の画像IMG200の定着性は問題ない。セル目領域CSbは、該セル目領域CSbを挟んで主走査方向Drmの両側に配された発熱セル40b及び40cのON Dutyがα0よりも高いα2に設定されているため、発熱セル40b及び40cのON Dutyがα0に設定されている場合と比較して発熱セル40b及び40cの温度上昇につられて定着ベルト温度TmpFが上昇する。このため、セル目領域CSbは、高印字率定着限界温度TmpLuを下回らない定着ベルト温度TmpFに維持されるため、セル目領域CSbに形成された印字率TC200[%]の画像IMG200の定着性も良好となりコールドオフセットは発生しない。
【0058】
発熱セル40a領域の温度は、隣接している発熱セル40bのON Dutyがα0よりも高いα2に設定されているため、発熱セル40bに近づくにつれて定着ベルト温度TmpFは高く分布し、セル目領域CSaの定着ベルト温度TmpFも連動して高くなる。
【0059】
セル目領域CSaの定着ベルト温度TmpFは、高印字率定着限界温度TmpLuを下回っているが、低印字率定着限界温度TmpLlを上回っており、主走査方向Drmに関し発熱セル40aとセル目領域CSaとの範囲に形成されている画像IMG100は、印字率TC100[%]であるためコールドオフセットは発生せず問題ない。また主走査方向Drmに関し発熱セル40dとセル目領域CScとの範囲に形成されている画像IMG100も、同様に印字率TC100[%]であるため問題ない。
【0060】
発熱セル40eは、ON Dutyがα0に設定されているため、発熱セル40e領域は設定温度TmpSが維持される。セル目領域CSdは、低印字率定着限界温度TmpLlを上回る温度に維持されるため、コールドオフセットは発生せず、問題ない。
【0061】
参考までに、印字率TCの判定を、主走査方向Drmに関しセル目領域CSではなく発熱セル40領域で判定し、高印字率と判定された発熱セル40のみのON Dutyを高めに設定した場合を、図10と同様の画像が形成された図11を用いて説明する。主走査方向Drmに関し発熱セル40c範囲の印字率TCが200[%]であるため高印字率と判定され、主走査方向Drmに関し発熱セル40cのみのON Dutyがα2に設定され、それ以外の発熱セル40a、40b、40d及び40eのON Dutyがα0に設定されたとする。発熱セル40cの領域はホット限界温度TmpUを超えない温度に維持されるため、主走査方向Drmに関し発熱セル40c範囲の印字率TC200[%]画像IMG200の定着性は問題ない。しかしながら、セル目領域CSbの定着ベルト温度TmpFは発熱セル40cにつられて上昇するものの、高印字率定着限界温度TmpLuを超えず下回ってしまう。このため、主走査方向Drmに関しセル目領域CSbの範囲の印字率TC200[%]画像IMG200はコールドオフセットとなってしまう。
【0062】
[1-11.動作]
図12を用いて、第1の実施の形態のカラープリンタ1による動作を改めて説明する。動作例として、以下の印刷ジョブを受信した場合を説明する。
・印刷ジョブ1(A3サイズ、連続6ページ)
ページ1及びページ3:セル目領域CSbに高印字率(200[%])の画像IMG、それ以外のセル目領域CSは低印字率の画像
ページ2及びページ6:主走査方向Drmの全範囲が低印字率の画像
ページ4:セル目領域CScに高印字率(200[%])の画像IMG、それ以外のセル目領域CSは低印字率の画像
ページ5:主走査方向Drmの全範囲が高印字率(200[%])の画像IMG
・印刷ジョブ2(A3サイズ、連続3ページ)
ページ1及びページ3:主走査方向Drmの全範囲が低印字率の画像
ページ2:セル目領域CSa及びCSdに高印字率(200[%])の画像IMG、それ以外のセル目領域CSは低印字率の画像
【0063】
図12の上部には、定着器20にA3サイズの記録媒体Pが矢印方向に通紙される様子を示している。最初の6ページが印刷ジョブ1で次の3ページが印刷ジョブ2である。
【0064】
図12の上下中央部のタイミングチャートにおける各チャートは下記の通りである。
ChartA:…印字率判定
ChartB:…用紙センサON/OFF(ON:紙有り、OFF:紙無し)
ONタイミングはFUSER-INセンサ19、OFFタイミングはEXITセンサ21とする。
ChartC:…発熱セル40eのON Duty設定
ChartD:…発熱セル40dのON Duty設定
ChartE:…発熱セル40cのON Duty設定
ChartF:…発熱セル40bのON Duty設定
ChartG:…発熱セル40aのON Duty設定
【0065】
図12の下部のタイミングチャートは、横軸を時間としたタイミングT1~T22の時間経過における、縦軸を各発熱セル40の定着ベルト温度TmpFとした定着ベルト温度TmpFの推移を示し、図12上下中央部のタイミングチャートと同期した形で記載している。なおこのタイミングチャートは、説明の都合上、同じ定着ベルト温度TmpFであっても、互いの発熱セル40毎に上下方向に位置を僅かにずらして記載している。
【0066】
タイミングT1において、カラープリンタ1は、PC54から送信されてきた印刷ジョブ1を受信する。CPU51は、受信した印刷ジョブ1からR、G及びBの画像データを現像色のY、M、C及びKの濃度データに変換しRAM53に格納する。印字率判定部74は、格納された画像データから画像が形成されるページ、位置及び印字率TCを判定し、各発熱セルON Dutyを決定する。
【0067】
タイミングT2において、定着制御部64は、印字率判定部74で決定されたON Dutyに基づいて定着制御を開始する。印刷ジョブ1の1ページ目はセル目領域CSbに高印字率(200[%])の画像IMG、それ以外の範囲は低印字率の画像が形成されているため、表TB1(図9)のケース4に示すON Dutyの組み合わせが各発熱セル40に設定され制御される。すなわち、発熱セル40b及び40cのON Dutyはα2、それ以外の発熱セル40のON Dutyはα0である。各発熱セル40の温度は上昇していき、発熱セル40b及び40cは高印字率定着限界温度TmpLuを上回る定着ベルト温度TmpF、それ以外の発熱セル40は低印字率定着限界温度TmpLlを上回る定着ベルト温度TmpFとなる。
【0068】
タイミングT3において、1ページ目が定着器20まで到達し定着が開始される。記録媒体Pに熱を奪われるため記録媒体Pの先頭付近で温度ドロップが発生するが、設定されるON Dutyは温度ドロップも考慮した値に設計されるため、それぞれの発熱セル40の定着ベルト温度TmpFが対応する定着限界温度TmpLを下回ることはない。各発熱セル40のON Dutyは記録媒体PがEXITセンサ21をOFFするまで、すなわち定着器20を抜けるまで、設定されたON Dutyに制御される。
【0069】
タイミングT4において、1ページ目の定着が終了すると、2ページ目のON Dutyが設定される。2ページ目は主走査方向Drmの全範囲で低印字率の画像であるため、表TB1(図9)のケース0に示すON Dutyの組み合わせが各発熱セル40に設定され制御される。発熱セル40b及び40cのON Dutyはα2からα0に切り替えられる。それ以外の発熱セル40のON Dutyはα0のままである。発熱セル40b及び40cの定着ベルト温度TmpFは徐々に低下していき低印字率定着限界温度TmpLlを下回らない温度まで低下する。
【0070】
タイミングT5において、2ページ目が定着器20まで到達し定着される。タイミングT6において、2ページ目の定着が終了すると、3ページ目のON Dutyが設定される。3ページ目は再度セル目領域CSbは高印字率(200[%])の画像IMG、それ以外の範囲は低印字率の画像が形成されているため、表TB1(図9)のケース4に示すON Dutyの組み合わせが各発熱セル40に設定され制御される。
【0071】
タイミングT7において、3ページ目が定着器20まで到達し定着される。タイミングT8において、3ページ目の定着が終了すると、4ページ目のON Dutyが設定される。4ページ目はセル目領域CScは高印字率(200[%])の画像IMG、それ以外の範囲は低印字率の画像が形成されているため、表TB1(図9)のケース2に示すON Dutyの組み合わせが各発熱セル40に設定され制御される。発熱セル40c及び40dのON Dutyはα2、それ以外の発熱セル40のON Dutyはα0である。発熱セル40cのON Dutyはα2のままで、発熱セル40dのON Dutyはα0からα2に切り替えられる。また、発熱セル40bのON Dutyはα2からα0に切り替えられる。
【0072】
タイミングT9において、4ページ目が定着器20まで到達し定着される。タイミングT10において、4ページ目の定着が終了すると、5ページ目のON Dutyが設定される。5ページ目は主走査方向Drmの全範囲で高印字率(200[%])の画像IMGであるため、表TB1(図9)のケース15に示すON Dutyの組み合わせが各発熱セル40に設定され制御される。発熱セル40c及び40dのON Dutyはα2のままで、それ以外の発熱セル40a、40b及び40eのON Dutyはα0からα2に切り替えられる。
【0073】
タイミングT11において、5ページ目が定着器20まで到達し定着される。タイミングT12において、5ページ目の定着が終了すると、6ページ目のON Dutyが設定される。6ページ目は主走査方向Drmの全範囲で低印字率の画像であるため、表TB1(図9)のケース0に示すON Dutyの組み合わせが各発熱セル40に設定され制御される。全ての発熱セル40のON Dutyはα2からα0に切り替えられる。
【0074】
タイミングT13において、6ページ目が定着器20まで到達し定着される。タイミングT14において、印刷ジョブ1の印刷が完了したため各発熱セル40の設定はクリアされる。タイミングT15~タイミングT22は、印刷ジョブ2を受信してから印刷完了するまでの動作であり印刷ジョブ1と同様であるため省略する。
【0075】
[1-12.効果等]
以上の構成においてカラープリンタ1は、記録媒体Pにおいてそれぞれのセル目領域CSと同一の主走査方向Drmの範囲である印字率算出領域PCSに形成される画像の印字率TCを印字率判定部74により判定し、定着制御部64により、印字率算出領域PCSの印字率TCが所定の閾値としての印字率閾値以上の高印字率である場合、主走査方向Drmの範囲が該印字率算出領域PCSと同一のセル目領域CSに対し主走査方向Drmの両側に隣接する発熱セル40のON Dutyを、該発熱セル40の本来のON Dutyよりも高く設定することにより、該発熱セル40の設定温度TmpSを本来の設定温度TmpSよりも高くするようにした。
【0076】
このためカラープリンタ1は、定着ベルト30における、主走査方向Drmに関しセル目領域CS部分の発熱量を、該セル目領域CSに隣接する発熱セル40で補うことができ、セル目領域CS部分の温度低下を抑えることができる。これによりカラープリンタ1は、高い印字率TCの印刷時における、セル目領域CSの発熱量不足による定着不良(コールドオフセット)を防止でき、良好な印字結果を得ることができる。
【0077】
ここで仮に、全ての発熱セル40を高印字率定着限界温度TmpLuとホット限界温度TmpUとの間の本来の設定温度TmpS(例えば160[℃])よりも高く(例えば180[℃])設定することにより、セル目領域CS部分の温度低下を防ぎ定着性を保つことも考えられる。しかしながらその場合、定着器20は、印字率TCの低い画像の印刷時にも、不必要な高温で発熱セル40を加熱するため、電力の無駄が生じてしまう。
【0078】
これに対しカラープリンタ1は、印字率算出領域PCSが高印字率である場合にのみ、主走査方向Drmの範囲が該印字率算出領域PCSと同一のセル目領域CSに対し主走査方向Drmの両側に隣接する発熱セル40の設定温度TmpSのみを、該発熱セル40の本来の設定温度TmpSよりも高くするようにした。このためカラープリンタ1は、印字率TCの低い画像の印刷時に、不必要な高温で発熱セル40を加熱することを防止し、省電力化できる。
【0079】
以上の構成によればカラープリンタ1は、主走査方向Drmに沿って複数個が並び互いに分割された発熱部としての発熱セル40を有し主走査方向Drmに隣接する互いの発熱セル40同士の間に発熱部間領域としてのセル目領域CSが形成されたヒータ31と、ヒータ31によって加熱される定着ベルト30と、定着ベルト30の外周面と接触する加圧ローラ32とを有し、定着ベルト30と加圧ローラ32との間に形成されるニップ部に、画像を担持した記録材としての記録媒体Pを挟持して通紙させ画像を加熱定着する定着器20を設けるようにした。またカラープリンタ1は、記録媒体Pにおいて主走査方向Drmに関しセル目領域CSと対応する領域である印字率算出領域PCSに形成される画像の印字率TCを判定する印字率判定部74と、印字率算出領域PCSの印字率TCが所定の閾値としての印字率閾値以上の高印字率である場合、該印字率算出領域PCSと対応するセル目領域CSに対し主走査方向Drmの少なくとも一方向側に隣接する発熱セル40の設定温度TmpSを、該発熱セル40の本来の設定温度TmpSよりも高く設定する定着制御部64とを設けるようにした。
【0080】
これによりカラープリンタ1は、定着ベルト30における、セル目領域CS部分の発熱量を、該セル目領域CSに隣接する発熱セル40で補うことができ、セル目領域CS部分の温度低下を抑えることができる。
【0081】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.画像形成装置の構成]
第2の実施の形態によるカラープリンタ101(図1及び図4)は、第1の実施の形態によるカラープリンタ1と比較して、図9に示す表TB1に代わる図13に示す表TB101がROM52に保存されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0082】
[2-2.各発熱セルのON Dutyの設定について]
次に、ROM52に保存されている、表TB1(図9)と対応する図13の表TB101を用いて、第2の実施の形態による各発熱セル40のON Duty設定を説明する。表TB101は、セル目領域CSa、CSb、CSc及びCSdの印字率TCに対応した各発熱セル40a~40eのON Duty設定のマトリクスである。ここで、印字率TCにおける高印字率と低印字率との判定閾値は200[%]とする。すなわち、印字率TC≧200[%]の場合は高印字率、印字率TC<200[%]の場合は低印字率である。以下では、説明を簡単にするため、太い線で囲ったケース4の場合について説明する。ケース4の場合、セル目領域CSbは高印字率で、それ以外のセル目領域CSa、CSc及びCSdは低印字率である。まず、セル目領域CSbに隣接する発熱セル40bと発熱セル40cとのON Dutyはα2に設定される。また、ON Dutyをα2に設定された発熱セル40の、高印字率のセル目領域CSbから離隔する方向に一つ隣の発熱セル40は、ON Dutyがα1に設定される。ここでは発熱セル40bの左隣の発熱セル40aと、発熱セル40cの右隣の発熱セル40dとのON Dutyが、α1に設定される。さらに、ON Dutyがα2又はα1に設定された発熱セル40以外の発熱セル40である発熱セル40eのON Dutyはα0に設定される。
【0083】
このように表TB101は、第1の実施の形態による表TB1(図9)と比較して、ON Dutyがα0及びα2の2パターンであった点に代えて発熱セルON Dutyがα0、α1及びα2の3パターンである点が相違すると共に、発熱セルON Dutyがα2に設定された発熱セル40の一つ隣の発熱セル40のON Dutyが、α0であった点に代えてα1に設定される点が相違している。
【0084】
[2-3.ケース4の場合のヒータ温度分布について]
図10と対応する図14に、ケース4の場合の第2の実施の形態によるヒータ温度分布を示す。グラフの詳細な説明は図10と同じであるため省略する。図10と同様に、A3サイズ記録媒体Pa3において、印字率TC200[%](イエロー(Y)100[%]+マゼンタ(M)100[%]のレッド)の画像IMG200が、ヒータ長手方向に関し、発熱セル40cの範囲とセル目領域CSbとを含む範囲で形成され、印字率TC100[%](マゼンタ(M)100[%])の画像IMG100が、ヒータ長手方向に関しそれ以外の範囲で形成されてくる場合を考える。
【0085】
この場合、セル目領域CSbは印字率TC200[%]であるため高印字率と判定され、それ以外のセル目領域CSa、CSc及びCSdは、印字率TC100[%]であるため低印字率と判定される。各発熱セル40のON Dutyは表TB101(図13)に従い、セル目領域CSbに対し主走査方向Drmに隣接する発熱セル40b及び40cのON Dutyはα2に、ON Dutyがα2に設定された発熱セル40に対し高印字率のセル目領域CSbから離隔する方向の一つ隣である発熱セル40a及び40dのON Dutyはα1に、それら以外の発熱セル40eのON Dutyはα0に設定される。
【0086】
発熱セル40b及び40cの領域はホット限界温度TmpUを超えない定着ベルト温度TmpFに維持されるため、当然ながら、主走査方向Drmに関し発熱セル40cの範囲に形成された印字率TC200[%]の画像IMG200の定着性は問題ない。セル目領域CSbは、該セル目領域CSbを挟んで主走査方向Drmの両側に配された発熱セル40b及び40cのON Dutyがα0よりも高いα2に設定されているため、発熱セル40b及び40cのON Dutyがα0に設定されている場合と比較して発熱セル40b及び40cの温度上昇につられて定着ベルト温度TmpFが上昇する。このため、セル目領域CSbは、高印字率定着限界温度TmpLuを下回らない定着ベルト温度TmpFに維持されるため、セル目領域CSbに形成された印字率TC200[%]の画像IMG200の定着性も良好となりコールドオフセットは発生しない。
【0087】
発熱セル40a及び40d領域の温度は、隣接している発熱セル40b及び40cのON Dutyがα1よりも高いα2に設定されているため、発熱セル40b及び40cに近づくにつれて定着ベルト温度TmpFは高く分布する。ここで、発熱セル40a及び40d自身のON Dutyも、α0よりも高いα1に設定されているため、第1の実施の形態と比較して、定着ベルト温度TmpFは高い温度が維持される。これにより、第1の実施の形態と比較して、セル目領域CSa及びCScの定着ベルト温度TmpFも連動して高くなる。
【0088】
このため、セル目領域CSa及びCScの定着ベルト温度TmpFは、高印字率定着限界温度TmpLuと同等程度であり、低印字率定着限界温度TmpLlを上回っており、主走査方向Drmに関しセル目領域CSaに形成されている画像IMG100は、印字率TC100[%]であるためコールドオフセットは発生せず問題ない。また主走査方向Drmに関しセル目領域CScに形成されている画像IMG100も、同様に印字率TC100[%]であるため問題ない。
【0089】
発熱セル40eは、ON Dutyがα0に設定されているため、発熱セル40e領域は設定温度TmpSが維持される。セル目領域CSdは、低印字率定着限界温度TmpLlを上回る温度に維持されるため、コールドオフセットは発生せず、問題ない。さらにセル目領域CSdは、ON Dutyがα1に設定されている、隣接する発熱セル40dに近づくにつれて定着ベルト温度TmpFが高く分布する。
【0090】
[2-4.動作]
図12と対応する図15に、第2の実施の形態のカラープリンタ101による動作を示す。この動作は、基本的には第1の実施の形態のカラープリンタ1と同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
[2-5.効果等]
以上の構成においてカラープリンタ101は、第1の実施の形態によるカラープリンタ1と比較して、発熱セル40のON Dutyを、α0及びα2に加えて、α0<α1<α2の関係となるようなα1を追加し、ON Dutyをα2に設定した発熱セル40の一つ隣の発熱セル40を、α2とα0との中間のON Dutyであるα1に設定するようにした。すなわちカラープリンタ101は、印字率算出領域PCSが高印字率である場合、該印字率算出領域PCSと主走査方向Drmの範囲が同一のセル目領域CSに対し主走査方向Drmの両側に隣接する発熱セル40である最隣接発熱部としての最隣接発熱セルの設定温度TmpSを、該最隣接発熱セルの本来の設定温度TmpSよりも高く設定し、主走査方向Drmに関し該セル目領域CSから離隔する側において該最隣接発熱セルに隣接する発熱セル40の設定温度TmpSを、該発熱セル40の本来の設定温度よりも、最隣接発熱セルの本来の設定温度TmpSからの上昇量よりも低い上昇量で高く設定するようにした。このためカラープリンタ101は、第1の実施の形態によるカラープリンタ1と比較して、隣り合う発熱セル40同士の定着ベルト温度TmpFの温度差を少なくでき、温度ムラをより一層低減させることができる。
【0092】
その他、第2の実施の形態によるカラープリンタ101は、第1の実施の形態によるカラープリンタ1と同様の作用効果を奏し得る。
【0093】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、セル目領域CSの印字率TCが印字率閾値以上である場合、該セル目領域CSに対し主走査方向Drmの一方向側及び他方向側である両側に隣接する発熱セル40の設定温度TmpSを、該発熱セル40の本来の設定温度TmpSよりも高く設定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、セル目領域CSの印字率TCが印字率閾値以上である場合、該セル目領域CSに対し主走査方向Drmの少なくとも一方向側に隣接する発熱セル40の設定温度TmpSを、該発熱セル40の本来の設定温度TmpSよりも高く設定しても良い。
【0094】
また上述した実施の形態においては、トライアック38a~38eのON Dutyを制御することにより、発熱セル40の加熱量を調整する場合について述べた。本発明はこれに限らず、他の種々の方法により、発熱セル40の発熱量を変更しても良い。
【0095】
さらに上述した第1の実施の形態においては、発熱セル40のON Dutyをα0及びα2の2種類に分類し、第2の実施の形態においては発熱セル40のON Dutyをα0、α1及びα2の3種類に分類する場合について述べた。本発明はこれに限らず、発熱セル40のON Dutyを4種類以上の種々の個数に分類しても良い。
【0096】
さらに上述した実施の形態においては、印字率TCを算出する範囲を、主走査方向Drmの範囲は、各セル目領域CSのセル目領幅域Lbとし、副走査方向Drsの範囲は、記録媒体Pの副走査方向Drsの一端から他端までの長さとする場合について述べた。本発明はこれに限らず、印字率TCを算出する副走査方向Drsの範囲を、1印刷ラインから、1つの印刷ジョブ内の複数ページに亘るまで、種々の副走査方向Drsの範囲としても良い。
【0097】
さらに上述した実施の形態においては、主走査方向Drmに沿って延びる抵抗発熱配線41が主走査方向Drmの両端部において複数回折り返されることにより形成された発熱セル40を有するヒータ31が搭載されたカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、主走査方向Drmに隣接する発熱セル40同士の間にセル目領域CSが存在すれば、他の種々の構造からなる発熱セル40を有するヒータ31が搭載されたカラープリンタに本発明を適用しても良い。
【0098】
さらに上述した実施の形態においては、主走査方向Drmに沿って5つに分割された発熱セル40を有するヒータ31が搭載されたカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、主走査方向Drmに沿って4つ以下又は6つ以上の種々の個数に分割された発熱セル40を有するヒータ31が搭載されたカラープリンタに本発明を適用しても良い。
【0099】
さらに上述した実施の形態においては、感光ドラム17から記録媒体Pにトナー像を直接転写する、いわゆる直接転写方式のカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、感光ドラム17から各色のトナー像を媒体としての中間転写ベルトに順次重ねるように転写し、この中間転写ベルトから記録媒体Pにトナー像を転写する、いわゆる中間転写方式(又は2次転写方式)の画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0100】
さらに上述した実施の形態においては、一成分現像方式に用いる現像剤を用いるカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、キャリアとトナーとを混合することにより、そのキャリアとトナーとの摩擦を利用してトナーに適切な帯電量を付与する方式である二成分現像方式の現像剤を用いる画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0101】
さらに上述した実施の形態においては、前後方向に沿って直列に配置された各色の画像形成ユニット14を有するタンデム方式のカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば4サイクル方式等、他の種々の方式の画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0102】
さらに上述した実施の形態においては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色に対応した4個の画像形成ユニット14を有し4色のトナーを用いたカラー画像を形成するカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、画像形成装置において使用されるトナーの色数に応じて3個以下や5個以上の画像形成ユニット14を有する画像形成装置や、1個の画像形成ユニットを有しモノクロ印刷を行う画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0103】
さらに上述した実施の形態においては、単機能のプリンタであるカラープリンタ1又は101に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば複写機やファクシミリ装置の機能を有するMFP(Multi Function Peripheral:複合機)等、他の種々の機能を有する画像形成装置に本発明を適用しても良い。また、複数個に分割されたヒータを用いて加熱を行う定着器を有し用紙等の記録媒体に画像を形成する種々の電子機器に本発明を適用しても良い。
【0104】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【0105】
さらに上述した実施の形態においては、加熱源としてのヒータ31と、加熱回転体としての定着ベルト30と、加圧回転体としての加圧ローラ32とによって、定着器としての定着器20を構成し、該定着器と、印字率判定部としての印字率判定部74と、制御部としての定着制御部64とによって、画像形成装置としてのカラープリンタ1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる加熱源と、加熱回転体と、加圧回転体とによって定着器を構成し、該定着器と、その他種々の構成でなる印字率判定部と、制御部とによって、画像形成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、例えば電子写真式のプリンタで利用できる。
【符号の説明】
【0107】
1……カラープリンタ、2……本体部、3……トップカバー部、4……記録媒体格納部、5……搬送路、6……給紙ローラ、7……第1レジストローラ、8……第2レジストローラ、9……画像形成部、10……IN1センサ、11……IN2センサ、12……WRセンサ、13……搬送ベルト、14……画像形成ユニット、15……トナーカートリッジ、16……LEDヘッド、17……感光ドラム、18……転写ローラ、19……FUSER-INセンサ、20……定着器、21……EXITセンサ、22……排出スタッカ部、23……濃度センサ、24……高圧電源、25……低圧電源、26……表示部、30……定着ベルト、31……ヒータ、32……加圧ローラ、33、34、35……温度センサ、36……熱拡散部材、37……交流公称電圧、38……トライアック、40……発熱セル、41……抵抗発熱配線、42……共通給電配線、43……給電配線、50……コントローラ制御部、51……CPU、52……ROM、53……RAM、54……PC、55……PC表示部、56……PC入力部、60……プロセス制御部、61……高圧制御部、62……露光制御部、63……モータ制御部、64……定着制御部、66……供給電圧制御部、67……現像電圧制御部、68……帯電電圧制御部、69……転写制御部、70……供給ローラ、71……現像ローラ、72……帯電ローラ、74……印字率判定部、76……メインモータ、CS……セル目領域、PCS……印字率算出領域、TmpU……ホット限界温度、TmpL……定着限界温度、TmpLu……高印字率定着限界温度、TmpLl……低印字率定着限界温度、TmpS……設定温度、Rgf……定着性良好範囲、TmpF……定着ベルト温度、L1……温度分布線、Drm……主走査方向、Drs……副走査方向、Pa3……A3サイズ記録媒体、P……記録媒体。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15