(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165085
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】二重構造容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070274
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】風間 淳史
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA17
3E033BA18
3E033BA21
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA03
3E033DA10
3E033DB03
3E033DC10
3E033DE05
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】内袋容器の外面と外容器との間の空間に空気の導入を行う空隙が形成され、速やかに空気の導入を行うことが可能な新規な構造の二重構造容器を提供する。
【解決手段】外容器2と、外容器2内に収容された内袋容器3とからなり、外容器2は、ノズル21と、ノズル21の下方に形成されている肩部22、胴部23及び底部24からなる延伸成形部とから形成され、内袋容器3は、筒状口部31と、筒状口部31に連なり且つ延伸により薄肉化された袋状胴部32とを有しており、袋状胴部32の外面は、外容器2の胴部23内面に剥離可能に密着しているとともに、内袋容器3の筒状口部31の外面と、外容器2のノズル21の内面との間には、空気導入可能な空気路Hが形成されており、かつ内袋容器3の袋状胴部32の上端部近傍部分には、平断面で見て、袋状胴部32の外面と外容器2の肩部22内面とが接触している接触部Xと、両者が離れている非接触部Yとが存在している不定形領域が形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外容器と、該外容器内に収容された内袋容器とからなり、該内袋容器内に内容物が収容される二重構造容器において、
前記外容器は、ノズルと、該ノズルの下方に形成されている肩部、胴部及び底部からなる延伸成形部とから形成されており、
前記内袋容器は、固定した形状を有する筒状口部と、該筒状口部に連なり且つ延伸により薄肉化された袋状胴部とを有しており、該袋状胴部の外面は、前記外容器の胴部内面に剥離可能に密着しているとともに、
前記内袋容器の筒状口部外面と、前記外容器のノズル内面との間には、空気導入可能な空気路が形成されており、かつ該内袋容器の袋状胴部の上端部近傍部分には、平断面で見て、該袋状胴部の外面と前記外容器の肩部内面とが接触している接触部と、両者が離れている非接触部とが存在している不定形領域が形成されていることを特徴とする二重構造容器。
【請求項2】
前記不定形領域において、接触部と非接触部とが不規則に存在している請求項1に記載の二重構造容器。
【請求項3】
前記内袋容器は、内容物が収容される前の空容器の状態にある請求項1または2に記載の二重構造容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外容器と、該外容器内に挿入されて保持された内袋容器とからなる二重構造容器に関するものであり、より詳細には、スタックプリフォームと呼ばれる方法により製造された二重構造容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内袋容器と外容器とからなる二重構造を有している二重構造容器は、例えばエアレスボトルと呼ばれ、醤油等の調味液が収容される容器として実用されている(例えば特許文献1、2参照)。かかるエアレスボトルは、逆止弁付のキャップと組み合わせて使用されるものであり、外容器であるボトルの胴部壁を外部からスクイズして凹ませることにより、内袋容器に充填されている内容液がキャップに形成されている注出路から排出され、ボトルの胴部壁の押圧を停止することにより内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器内には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋容器と外容器との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、内袋容器が収縮していく。このような方法により内容液が排出されるエアレスボトルでは、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0003】
従って、二重構造容器(エアレスボトル)では、上記のような空気の流通を確保するために、一般に、外容器の首部内面と内袋容器の口部内面との間に空隙が形成され、さらに、外容器の首部に装着されるキャップの筒状側壁(スカート部)には、その内面に、上下に揺動する弁体が設けられ、この弁体により、上記導入口を通して空気の流通が制御されるように構成される(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ところで、エアレスボトルのような二重構造容器の製造方法として、スタックプリフォーム法と呼ばれる方法が知られている(例えば特許文献3参照)。この方法は、射出成形等により、一旦、試験管形状の外容器用プリフォームと内袋容器用プリフォームとを成形しておき、外容器用プリフォームの内部に内袋容器用プリフォームが挿入されたスタックプリフォームを用いて、延伸ブロー成形を行うという方法である。この方法では、このスタックプリフォームをブロー型内に配置し、延伸成形温度(ガラス転移点以上融点未満)に加熱し、この状態でブロー流体を内袋容器用プリフォーム内に吹き込んでブロー成形が行われる。即ち、ブロー流体の吹き込みによって、内袋容器用プリフォームが膨張し、これに伴い、外容器用プリフォームが押し広げられてボトル状の外容器の形態に賦形され、内袋容器用プリフォームは、外容器の内面に密着した袋の形態に賦形されることとなる。このような方法は、容器用プリフォーム(外容器用プリフォーム及び内袋容器用プリフォーム)の量産が可能であり、生産性が高く、また、容器重量や内容積のバラつきも少なく、安定した品質の容器を製造できるという利点があり、特にコストの低減が可能となるという利点がある。
【0005】
しかしながら、上述した二重構造容器は、スタックプリフォーム法に限らず、内袋容器の外面が外容器の内面に密着した形態で成形されるため、どのようにして、内袋容器の外面と外容器の内面との間に空気が導入されるようにするかという基本的な問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-39906号公報
【特許文献2】特開2018-2198号公報
【特許文献3】特開2016-210181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、内袋容器の外面と外容器との間の空間に空気の導入を行う空隙が形成され、速やかに空気の導入を行うことが可能な新規な構造の二重構造容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、先に、内袋容器の外面と外容器との間の空間に空気の出し入れを行う空気路が形成されている二重構造容器をスタックプリフォーム法により製造する方法を提案したが(特願2020-79736号)、この方法により得られる二重構造容器の形態をさらに推し進めて検討した結果、ブロー成形後、内容物の充填に先立って、内袋容器の外面と外容器との間の空間に空気の導入を行う空隙を積極的に形成したときには、従来の二重構造容器とは全く異なる特異な形態が形成されることを見出した。
【0009】
本発明によれば、外容器と、該外容器内に収容された内袋容器とからなり、該内袋容器内に内容物が収容される二重構造容器において、
前記外容器は、ノズルと、該ノズルの下方に形成されている肩部、胴部及び底部からなる延伸成形部とから形成されており、
前記内袋容器は、固定した形状を有する筒状口部と、該筒状口部に連なり且つ延伸により薄肉化された袋状胴部とを有しており、該袋状胴部の外面は、前記外容器の胴部内面に剥離可能に密着しているとともに、
前記内袋容器の筒状口部外面と、前記外容器のノズル内面との間には、空気導入可能な空気路が形成されており、かつ該内袋容器の袋状胴部の上端部近傍部分には、平断面で見て、該袋状胴部の外面と前記外容器の肩部内面とが接触している接触部と、両者が離れている非接触部とが存在している不定形領域が形成されていることを特徴とする二重構造容器が提供される。
【0010】
本発明の二重構造容器においては、前記不定形領域において、接触部と非接触部とが不規則に存在しており、また、内袋容器は、内容物が収容される前の空容器の状態にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二重構造容器は、スタックプリフォーム法により製造されるものであり、特にブロー成形後、内袋容器の拡径開始領域(即ち、筒状口部の下端から袋状胴部の上端にかけての部分)を強制的に変形させて不定形にするという手段により製造される。この不定形領域では、袋状胴部の上端部分の一部が不規則的に外容器の内面から剥離しており、これにより、内袋容器の袋状胴部の外面と外容器の胴部内面との間に不規則な空隙が形成され、この空隙を介して空気の導入が容易になるというものである。即ち、内袋容器の袋状胴部の上端部分の外面全体が外容器の内面に密着していると、この袋状胴部と外容器の胴部との間への空気の導入が困難となるが、上記のように、袋状胴部の上端部分を不規則に変形させて、外容器の内面との間に空隙を形成しておくと、内容物の排出に際して、空気の導入が速やかに行われるわけである。
【0012】
即ち、本発明の二重構造容器は、袋状胴部の上端部分が外容器の内面との間に不規則な空隙が形成されているのであるが、平断面でみると、内袋容器の筒状口部と袋状胴部との境界部近傍部分の外面と外容器の肩部内面との間に、両者が接触している接触部と両者が離れている非接触部とが存在している不定形領域が確認されるのである。この領域では、この接触部と非接触部とが一定の位置にあるというのではなく、その位置は常に変動する不安定な形状となっている。これは、ブロー成形により形成された内袋容器の袋状胴部は、自立性を失うほど薄肉化されているからである。
【0013】
このように、本発明の二重構造容器は、内袋容器の袋状胴部の上端部近傍部分に不定形領域が成形直後に形成されているため、その後内袋容器内に内容物の充填を行い、外容器の胴部を押圧して凹ませて内容物の排出を行うに際して、外容器の胴部の押圧を停止して該胴部が原形に復帰したとき、上記不定形領域に形成されている非接触部を通して、袋状胴部と外容器の胴部との間に空気が速やかに流入し、次の内容物の排出作業もスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の二重構造容器の概略構造を示す縦断面図。
【
図2】本発明の二重構造容器の製造に用いるスタックプリフォームの側断面図。
【
図3】
図2のスタックプリフォームのA-A断面図。
【
図4】
図2のスタックプリフォームを用いてのブロー成形工程を示す図。
【
図5】ブロー成形工程時のスタックプリフォームの変形状態を説明するための要部拡大側断面図。
【
図6】ブロー成形工程後の加熱工程を説明するための要部拡大側断面図。
【
図7】本発明の二重構造容器の要部を示す要部拡大側断面図。
【
図9】実験例4の二重構造容器において、内容物排出後の形態を示す要部拡大縦断面図。
【
図10】実験例11の二重構造容器において、内容物排出後の形態を示す要部拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の二重構造容器の概略構造について、簡単に説明しておく。
この二重構造容器の概略構造を示す
図1を参照して、全体として1で示す二重構造容器は、ボトル形状の外容器2と、醤油等の内容物が収容される内袋容器3とからなっている。
【0016】
外容器2は、ノズル21、該ノズル21に連なる肩部22、胴部23及び底部24とから構成されている。この外容器2は、弾性変形性を有するものであり、この胴部23を押圧することにより胴部23は凹み、押圧を停止すると、凹んだ胴部23は原形に復帰する。
また、内袋容器3は、筒状口部31と、筒状口部31に連なる薄肉の袋状胴部32とからなっている。筒状口部31は、厚肉であり、固定した形状を有しており(即ち、この部分は延伸されない部分であり、容易に変形しないような剛性を有している)、袋状胴部32には、内容物が充填され、内容物の排出に伴う減容により収縮変形する。
【0017】
外容器2のノズル21は、上端が開放されている円筒形状を有するものであり、これには逆止弁機能を有するキャップ(図示せず)が打栓により装着される。このノズル21の上端には、拡径した頭部21aが形成されており、これにより、打栓篏合されたキャップが安定に保持されるようになっている。また、ノズル21の下方部分には、サポートリング21bが形成されており、治具を用いての二重構造容器1(或いはプリフォーム)の移送等が容易に行い得るようになっている。
尚、キャップの装着は、打栓によらず、ノズル21の外面に螺子を設け、螺子装着により行うことも可能である。
【0018】
上述したノズル21は、非延伸成形部であり、その下方部分がブロー成形により延伸される部分であり、このノズル21に下端21cに連なって拡径した肩部22が形成され、この肩部22には胴部23が連なり、胴部23は底部24によって閉じられている。
尚、ノズル21の内面には、内袋容器3を安定に保持するための水平段差21dが形成されている。
【0019】
内袋容器3は、
図1から理解されるように、外容器2内に収容されており、その筒状口部31(即ち、延伸成形されない部分)は、外容器2のノズル21の内面との間に間隙が形成されるように、該ノズル21内を延びているが、この筒状口部31の外面には、リング状突起31aが形成されており、この突起31aの外周面が外容器2のノズル21の内面に密接し、且つ水平段差21d上に載っている。これにより、外容器2内に収容された内袋容器3は、ガタつくことなく、外容器2内に安定に保持されている。
【0020】
また、このリング状突起31aには、切欠き31bが複数個所に形成されており、リング状突起31aよりも上の間隙と、リング状突起31aよりも下側の間隙とが連通し、空気が流通するようになっている。このような空気路は、
図3において、Hで示されている。なお、このような切欠き31bを形成せず、外容器2のノズル21の内面に溝を形成することによっても空気路Hを形成することもできる。
【0021】
さらに、
図1に示されているように、内袋容器3の筒状口部31の上端には、持ち運びや位置決め等のために、外方に延びているフランジ31cが形成されている。
尚、
図1では、内袋容器3の筒状口部31の上端と外容器2のノズル21の上端とはほぼ同一の高さに設定されているが、キャップの機能や形態によっては、この筒状口部31の上端が、ノズル21よりも突出していてもよい。また、
図1の例では、内袋容器3の筒状口部31の上端と外容器2のノズル21の上端との間に空隙が形成されており、この空隙から空気が導入される形態となっているが、勿論、水平段差21dよりも上方の部分に、ノズル21に空孔を形成し、この空孔から空気が導入される構造とすることも可能である。
また、成形直後の段階においては、内袋容器3の袋状胴部32(即ち、ブロー成形での延伸により成形される部分)は、外容器2の延伸成形部(肩部22、胴部23及び底部24)の内面に密着している。
この袋状胴部32は、既に述べたように、内容物の排出による減容に伴って収縮変形し、外容器2の延伸成形部(肩部22、胴部23及び底部24)の内面から離れることとなる。
【0022】
このような二重構造容器において、本発明においては、上述した内袋容器3の袋状胴部32の上端を含む部分に不定形領域αが形成されている。この領域αにおいて、外容器2の肩部22の上端部分の内面との間に空隙Gが形成されており、袋状胴部32が収縮したとき、袋状胴部32と外容器2の胴部23との間が負圧となり、前述した空気路Hから空隙Gを通って空気が導入されるのである。かかる領域αについては、後述する。
【0023】
上記のような外容器2及び内袋容器3は、これに限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフラノエート、非晶ポリアリレート、ポリ乳酸等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン等のオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂など、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂を用いて成形される。また、外容器2と内袋容器3とは、異なる樹脂で成形されていてもよいが、一般的には、ブロー成形条件を設定し易いことなどから、同一の樹脂で成形されていることが好ましく、特にエチレンテレフタレート系ポリエステルで成形されていることが最も好適である。
【0024】
かかる構造の二重構造容器1は、スタックプリフォームを用いてのブロー成形により成形される。
図2には、このようなスタックプリフォーム(全体として10で示す)の縦断面が示されており、
図3には、このスタックプリフォーム10のA-A断面が示されている。
【0025】
図2及び
図3において、このスタックプリフォーム10は、外プリフォーム20と内プリフォーム30とからなっており、何れも
図2から理解されるように、試験管形状を有しており、外プリフォーム20内に内プリフォーム30が挿入されている形態を有している。
【0026】
かかるスタックプリフォーム10において、上部は延伸成形されない非延伸成形部(固定部)であり、下方の胴部が延伸成形部となっている。外プリフォーム20では、この延伸成形部は、外容器2のノズル21に相当し、内プリフォーム30では、筒状口部31が、延伸成形部に相当する。即ち、ブロー成形による変形は生じないため、外容器2のノズル21及び内袋容器3の筒状口部31と同様の引照数字で示されている。例えば、外プリフォーム20のノズル21は、上端に拡径した頭部21aを有しており、外面の下方部分にはサポートリング21bが形成されており、内面には、水平段差21dが形成されている。また、内プリフォーム30の筒状口部31には、その内面には、外プリフォーム20のノズル21の内面に嵌合する大きさのリング状突起31aが形成されており、このリング状突起31aには、複数個所に切り欠き31bが形成され、これにより、内プリフォーム30は、外プリフォーム20内に安定に保持され、且つ空気路Hが確保されている(
図3参照)。
尚、先にも述べたとおり、切欠き31bを形成せず、外容器2のノズル21の内面に溝を形成することによって空気路Hが形成されていてもよい。
【0027】
なお、
図2に示されているように、外プリフォーム20及び内プリフォーム30の何れも、非延伸成形部から下方の延伸成形部(胴部)にかけて縮径した形状を有しており、これにより、ブロー成形により、より薄肉化されるようになっている。
【0028】
このようなスタックプリフォーム10は、外プリフォーム20及び内プリフォーム30がそれぞれ所定の延伸成形可能な温度(プリフォーム形成樹脂の軟化点以上融点未満の温度)に加熱された後、
図4に示すように、外容器2(延伸成形部)に対応するキャビティ空間を有するブロー成形型100内にセットされ、ブローノズル101の吹き出し口102からブロー流体(通常、エア)が内プリフォーム30内に供給され、これによりブロー成形が行われる。この場合、ブローノズル101をセットしてのブロー流体の吹き込みに先立って、ストレッチロッドを内プリフォーム30に挿入し、一軸方向(縦方向)に延伸しておくこともできる。
【0029】
これにより、内プリフォーム30が延伸により薄肉化されると同時に、外プリフォーム20は、膨張した内プリフォーム30によって延伸されて薄肉化され、ブロー成形型100により冷却され、外容器2の形態に賦形される。このとき、内プリフォーム30の延伸成形部は、袋状に薄肉化され、外プリフォーム20により成形された外容器2の延伸成形部(肩部22、胴部23、底部24)の内面にぴったりと密着した状態に保持されている。即ち、
図5に示されているように、外容器2のノズル21の下端21c(延伸成形による拡径開始位置)には、内袋容器3の筒状口部31の下端部分(袋状胴部32の上端部分)が密着した形態となっている。
【0030】
このように、内袋容器3の筒状口部31の下端部分が外容器2の内面に密着していると、内袋容器3の袋状胴部32と外容器2の胴部23との間への空気の導入が困難となってしまう。このために、本発明の容器では、袋状胴部32の上端部分と外容器2の胴部23の上端部分との間に、空気導入路となる空隙Gを強制的に形成するわけである。
【0031】
本発明において、このような空隙Gを形成する手段としては、熱収縮による方法と流体吹き付けによる強制変形による方法がある。
【0032】
熱収縮による方法は、既に述べたように、本出願人の先願である特願2020-79736号による方法であり、袋状胴部32の上端部を内面から加熱して収縮させる方法である。
即ち、
図6に示されているように、ブロー成形後、成形された内袋容器3の筒状口部31(外容器2のノズル21内に位置している)から棒状の発熱体103を挿入し、袋状胴部32の上端部分を加熱する。この加熱により、この袋状胴部32の上端(拡径開始位置或いは薄肉化開始位置)を含む部分が収縮し、外容器2の肩部22の内面との間に空隙Gを含む不定形領域αが形成されることとなる。
【0033】
尚、上記の加熱に用いる発熱体103は、例えば、高周波加熱により加熱されており、この発熱体103による加熱温度は、袋状胴部32の上端部分の温度が内袋容器3(内プリフォーム30)を形成する樹脂のガラス転移点(Tg)以上であればよく、ポリエチレンテレフタレートで約75℃程度である。この場合、過度に高温に加熱すると、外容器2の肩部22やノズル21の熱変形を生じることがあるので、そのような熱変形が生じない程度の温度及び時間で加熱を行う。
【0034】
また、上記のような加熱のタイミングは、特に制限されず、ブロー成形後、ブロー成形型100により完全に冷却された後であってもよいが、一般的には、筒状胴部32が完全に冷却されず、50℃前後の加温状態にあるときに加熱を開始することが好ましい。樹脂の余熱があるため、加熱時間を短時間で行うことができるからである。
さらに、上記のような加熱は、発熱体103を用いての加熱によらず、例えば加熱エアの吹き込みや、レーザー加熱によっても可能である。
【0035】
上記のような熱収縮を利用する方法以外に、ブロー成形中での流体FL(窒素等の不活性ガスやエア)の吹き付けにより、袋状胴部32の上端を強制的に変形させて空隙Gを有する不定形領域αを形成することもできる。
【0036】
即ち、
図7に示されているように、内袋容器3の筒状口部31と外容器2のノズル21との上端の空間から空気路Hを通して流体FLを供給し、袋状胴部32の上端部を流体圧によって強制的に変形させることにより、空隙Gを有する不定形領域αを形成することができる。
先に述べた熱収縮を利用する方法では、外容器2の肩部22も同時に収縮変形しやすく、加熱温度や加熱時間の調整が難しいが、この方法では、外容器の変形を生じる恐れがないので、工業的に有利である。
【0037】
上記のようにして形成される不定形領域αは、内袋容器3の袋状胴部32の上端部分、具体的には、筒状口部31(未延伸部分)の下端に位置する薄肉化による拡径開始部分を含む部分に形成されるが、この領域αの平断面を
図8に示した。
【0038】
即ち、ブロー成形により形成される内袋容器3の袋状胴部32は、極薄肉化されており、自立性を有していない袋の形態を有している。このため、上記のような熱収縮や流体吹き付けによる強制変形により形成される不定形領域αでは、
図8に示されているように、内袋容器3の筒状胴部32が、外容器2の肩部22の内面と接触している部分Xと、該内面とは非接触の部分Yとがランダムに存在しており、非接触部Yの部分が空隙Gとなっている。即ち、袋状胴部32の上端部分を完全に均等に変形させることはできず、どうしても袋状胴部32の上端部分の変形が不均一となり、
図8の周方向でみると、接触部分Xと非接触部分Yとがランダムに形成されてしまうのである。勿論、このような接触部分Xと非接触部分Yとは、常に一定の位置に安定して存在しているものではなく、袋の性質上、その形態は常に変化している。
【0039】
このような不定形領域αにおいては、接触部Xの周長が、袋状胴部32の上端の周長(外容器3の肩部22の上端の内周)の90%以下となるように、発熱体103による加熱や流体BLによる流体圧をコントロールすることが好適である。
【0040】
このような本発明の二重構造容器1は、内袋容器3(袋状胴部32)内に醤油等の内容物を充填し、逆止弁付きキャップを装着して使用されるのであるが、キャップを開封状態にして、外容器2の胴部23を押圧(スクイズ)すると、胴部23が大きく凹み、これに伴って、内袋容器3の袋状胴部32が押圧され、これにより、この袋状胴部32内に収容されている内容物が排出される。内容物が排出されると、内容物の減容に応じて袋状胴部32が収縮するが、外容器3の胴部23は、その弾性により原形に復帰し、両者の間に負圧が生じる。この負圧により、外容器3の胴部23と筒状胴部32との間に、空気路Hから上記の空隙Gを介して空気が導入される。即ち、
図1の二点鎖線で示されているように、袋状胴部32は、外容器3の肩部22の内面から完全に離れた状態となる。
【0041】
上記のような排出操作を繰り返し行っていくとき、袋状胴部32は、内容物の減容に応じてより大きく収縮していく。従って、外容器2の胴部23のスクイズに際して、この胴部23と内袋容器3の袋状胴部32との間に空気が導入されていないと、収縮した袋状胴部32内の内容物を排出するためには、外容器2の胴部23をより強く押圧して大きく変形させなければならなくなり、最終的には、内容物の排出を行うことができなくなってしまう。本発明においては、初期状態においても、上述した不定形領域に形成されている空隙Gから空気の導入が速やかに行われ、内袋容器3の袋状胴部32と外容器2の胴部23との間に空気の導入により空気層が形成されるため、続けての胴部23の押圧により、内容物の排出を速やかに行うことができる。
【0042】
このような本発明の二重構造容器1は、内袋容器3に内容物が充填される前の形態(即ち、製造直後の形態)に大きな特徴を有しており、内容物が充填される前のから容器の状態で、
図8に示すような平断面を有している不定形領域を有するものは、従来公知の二重構造容器には存在しない。
【実施例0043】
本発明を次の実験例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った製造方法、並びに、得られた二重構造容器(ボトル)の特性等は次の通りである。
【0044】
(排出性の評価)
後述の方法で作製した二重構造容器(ボトル)に、内容液を充填して、逆止弁付きのヒンジ付きキャップを装着し、内容物が全て排出するまで繰り返し行い、排出性を評価した。
外袋と内袋との剥離性、且つ、容液の排出性に優れるものを○、内袋賦形不良が見られるものを△、プリフォームの延伸開始領域の外袋内面に内袋外面が張り付いて排出出来なかったものを×、とした。
【0045】
(二重構造容器(ボトル)の作製)
ポリエチレンテレフタレート樹脂の単層からなる外プリフォームと、酸素吸収剤含有ポリエチレンテレフタレート樹脂の単層からなる内プリフォームとからなる二重プリフォームを用意し、該プリフォーム胴部を樹脂のガラス転移温度以上に加熱後、所定のブロー圧によりメインブロー成形を開始し、次いで、内プリフォームと外プリフォームの中間部にサポートブロー成形を行った。二重構造容器を賦形した後、内袋と外袋との中間部内部のブローエアーを排出して、ポリエチレンテレフタレート樹脂製二重構造容器を作製した。
【0046】
(実験例1~4)
メインブローを3MPa、2秒間行った。メインブロー開始した後、1.5秒後にサポートブローを開始した。実験例1乃至4のサポートブロー圧にて行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂製二重構造容器を作製した。評価結果を表1に示す。実験例4の拡大縦断面を
図9に示す。実験例1にて得られた二重構造容器は、胴部の最も下側のヒール部において賦形不良であった。
尚、表1中、サポートブロー開始時は、メインブローを開始した時点から秒数(s)で示した。
【0047】
【0048】
(実験例5~8)
サポートブロー時間(s)、サポートブロー開始時(s)を変更した以外は、実験例3と同様にポリエチレンテレフタレート樹脂製二重構造容器を作製した。評価結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
(実験例9~12)
サポートブロー時間(s)、サポートブロー開始時(s)を変更した以外は、実験例3と同様にポリエチレンテレフタレート樹脂製二重容器を作製した。評価結果を表3に示す。実験例11の拡大縦断面を
図10に示す。
【0051】
【0052】
以上の結果からブロー圧よりもサポートブロー圧が大きくなっていくと結果が良好になっていくが、サポートブロー圧とブロー圧の差があり過ぎると胴部の最も下側のヒール部において賦形不良になる。サポートブロー開始時間は、0.9~1.8秒の範囲、サポートブロー時間は、0.2~0.8秒の範囲の結果が良好である。所定の条件に設定することで、内袋の口部下部の延伸開始領域における賦形を制御できることがわかった。つまり内袋が外袋に密着する前に、サポートブローエアーが壁となり、部分的に外袋内面に接触しない領域が存在する。すなわち、賦形の開始は底部から口部にかけて行われて最終的に全体の賦形が完了する。そのため肩部の賦形が完了される際、ブロー圧力よりもサポートブロー圧力が大きいことでサポートブローエアーが内袋と外袋の中間部に残留し、これにより内袋の肩部から口部下部に不定形領域が形成される。
図10の実験例11の拡大縦断面を参照すると、内袋の口部下端から肩部にかけて、肉厚になっている部分と延伸によって薄肉になっている部分が存在している。肉厚部分は、容易には変形しない剛性を有している。一方で、薄肉部は、内容液が排出して減容するに伴って変形する。そして、前記肉厚部分と外袋と間には隙間があることが確認できる。本発明の不定形領域は、肉厚部分に形成される。