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特開2022-165088データ処理プログラム、データ処理方法、およびデータ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165088
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】データ処理プログラム、データ処理方法、およびデータ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20221024BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20221024BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070284
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】井筒 正義
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA11
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】 振動特性の変化点の検出精度を向上させることができるデータ処理プログラム、データ処理方法、およびデータ処理装置を提供する。
【解決手段】 データ処理プログラムは、ンピュータに、振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算する処理と、前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する処理と、所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する処理と、前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行させる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算する処理と、
前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する処理と、
所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する処理と、
前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、
検出された前記極小値に対応する計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を新たに計算する処理と、
新たに計算された前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行させることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理プログラム。
【請求項3】
前記時間窓ごとに前記周波数スペクトルを計算する際に、短時間フーリエ変換を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ処理プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータに、
前記相関係数に対してノイズ除去のためのフィルタリング処理を実行させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデータ処理プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータに、
前記極小値を検出する処理において、前記相関係数の平均値以下の最初の極小値を検出する処理を実行させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデータ処理プログラム。
【請求項6】
振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算する処理と、
前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する処理と、
所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する処理と、
前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、をコンピュータが実行することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項7】
振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算するスペクトル計算部と、
前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する平均計算部と、
所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する相関計算部と、
前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する検出部と、を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、データ処理プログラム、データ処理方法、およびデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に対して何らかの作業を行なう機械について、異常検知や劣化予測を自動で行う技術が望まれている。そこで、例えば、機械の振動データに対して機械学習を行ない、機械の異常検知や劣化予測を行なうことが考えられている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-26580号公報
【特許文献2】特開2016-200451号公報
【特許文献3】特開2002-323371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業内容などに応じて振動特性が変化する。機械の異常検知や劣化予測の精度を向上させるには、振動特性ごとに特徴量、機械学習モデルなどを作成することが望まれる。しかしながら、閾値を用いて振動特性の変化点を検出しようとすると、閾値に応じて、検出される変化点の数が増減してしまう。
【0005】
1つの側面では、本件は、振動特性の変化点の検出精度を向上させることができるデータ処理プログラム、データ処理方法、およびデータ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、データ処理プログラムは、コンピュータに、振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算する処理と、前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する処理と、所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する処理と、前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
振動特性の変化点の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】振動データを例示する図である。
図2】スペクトルの平均分布の計算を例示する図である。
図3】変化点の検出を例示する図である。
図4】(a)および(b)は検出された変化点を例示する図である。
図5】(a)はデータ処理装置の全体構成を表す概略図であり、(b)はデータ処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図6】データ処理装置が実行するデータ処理を例示するフローチャートである。
図7】変化点の検出を例示する図である。
図8】(a)~(g)は検出された各変化点と、計算された相関係数とを例示する図である。
図9】振動データと、検出された変化点とを示す図である。
図10】実施例2に係るデータ処理装置の全体構成を表す概略図である。
図11】データ処理装置が実行するデータ処理を例示するフローチャートである。
図12】変化点の検出を例示する図である。
図13】(a)~(g)は検出された各変化点と、計算された相関係数とを例示する図である。
図14】(a)および(b)は振動データと、検出された変化点とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例の説明に先立って、振動特性変化の検出について説明する。
【0010】
対象物に対して何らかの作業を行なう機械について、異常検知や劣化予測を自動で行う技術が望まれている。そこで、例えば、機械の振動データに対して機械学習を行ない、機械の異常検知や劣化予測を行なうことが考えられている。
【0011】
しかしながら、作業内容などに応じて、振動データに含まれる周波数および振幅が変化するため、振動特性が変化する。例えば、対象物に対する作業プロセスが切り替わることによって変化する。例えば、研磨装置などの回転機械では、対象物の表面を粗く削る作業プロセスから、対象物の表面を滑らかに仕上げる作業プロセスに切り替わる際に、対象物への接触の態様が変化するため、振動特性が変化する。または、同じ作業プロセス内でも、対象物の加工状態が変化することによって振動特性が変化する。例えば、研磨の過程で対象物の表面状態が変化することで、振動特性が変化する。または、機械に故障が生じた場合にも振動特性が変化する。例えば、ベアリング装置などでベアリング部に傷が入ると、回転の状態が変化して振動特性が変化する。これらのような様々な振動特性が含まれた振動データに対して機械学習してしまうと、機械の異常検知や劣化予測の精度が低下してしまう。
【0012】
機械の異常検知や劣化予測の精度を向上させるには、振動特性ごとに特徴量、機械学習モデルなどを作成することが望まれる。そこで、例えば、振動データを、振動特性ごとに分割することが望まれる。このようにすることで、振動特性ごとに振動データに対して機械学習することができるようになり、機械の異常検知や劣化予測の精度が向上することになる。したがって、振動データにおいて、振動特性が変化する変化点を検知する技術が重要となる。
【0013】
図1は、振動データを例示する図である。図1において、横軸は経過時間を示し、縦軸はスペクトルのパワーを示す。この振動データに対して、短時間フーリエ変換(STFT:Short-Time Fourier Transformation)によって周波数スペクトルを計算し、スペクトル平均分布を計算する。例えば、図2で例示するように、所定の計算窓内で、当該計算窓範囲よりも小さい時間窓であるSTFT窓を所定の刻み値でスライドさせていき、各周波数スペクトルの平均値を取得することによって、スペクトル平均分布を計算することができる。各STFT窓は、同じ時間幅を有する。スペクトル平均分布において、横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸はスペクトルのパワーを示している。このスペクトル平均分布の計算を繰り返すことで、初期スペクトル平均分布に対して相関係数を計算することができる。
【0014】
図3の(1)で示す太線枠に示すように、初期時刻のスペクトル平均分布を計算する。次に、図3の(2)に示すように、計算窓を後の時刻側に所定の刻み値で移動させ、各計算窓についてスペクトル平均分布を計算する。各計算窓は、同じ時間幅を有する。次に、(3)に示すように、初期スペクトル平均分布に対して、各計算窓におけるスペクトル平均分布との相関係数を計算する。相関係数は互いに似ている類似度合いを表すため、初期スペクトル平均分布との相関係数が高いスペクトル平均分布の時点では、初期の状態から振動状態に変化がほとんど無いことになり、振動特性に変化が現れていないと判断することができる。次に、図3の(4)に示すように、相関係数が閾値以下になる最初の時刻を、振動特性の変化点として検出する。次に、図3の(5)に示すように、振動特性の変化点に対応するスペクトル平均分布を初期スペクトル平均分布とし、(2)から(4)を繰り返す。この手順を経ることによって、振動特性が変化する変化点を順次検出することができるようになる。
【0015】
しかしながら、閾値によっては、変化点が過剰に検出されることがある。例えば、閾値を高く設定してしまうと、図4(a)で例示するように、検出される変化点数が多くなってしまい、周波数特性の変化点ではない時刻が変化点であると検出されてしまうおそれがある。図4(a)において、太い各縦点線が、検出された変化点を示している。一方、閾値を低く設定してしまうと、図4(b)で例示するように、検出される変化点数が少なくなってしまい、周波数特性の変化点が検出されないおそれがある。図4(b)においても、太い各縦点線が、検出された変化点を示している。
【0016】
このように、図1図4(b)の手法では、適切な閾値を決定することが困難であり、高い精度で振動特性の変化点を検出することが困難である。そこで、以下の実施例では、振動特性の変化点の検出精度を向上させることができるデータ処理装置、データ処理方法、およびデータ処理プログラムについて説明する。
【実施例0017】
図5(a)は、データ処理装置100の全体構成を表す概略図である。図5(a)で例示するように、データ処理装置100は、振動データ格納部10、スペクトル計算部20、平均計算部30、初期データ格納部40、相関計算部50、検出部60などを備えている。
【0018】
図5(b)は、データ処理装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。図5(b)で例示するように、データ処理装置100は、CPU101、RAM102、記憶装置103、表示装置104などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。表示装置104は、データ処理装置100の処理結果などを表示する表示装置であり、液晶ディスプレイなどである。CPU101が記憶装置103に記憶されているデータ処理プログラムを実行することによって、データ処理装置100に、振動データ格納部10、スペクトル計算部20、平均計算部30、初期データ格納部40、相関計算部50、検出部60などが実現される。なお、データ処理装置100の各部は、専用の回路などのハードウェアであってもよい。
【0019】
振動データ格納部10は、機械200の振動を検出する振動センサ300が取得した振動データを格納している。振動データは、図1で例示したように、振動の時系列データを含んでいる。機械200は、対象物に何らかの作業を行なう機械であって、対象物に対する作業プロセスが切り替わる際、同じ作業プロセス内で対象物の加工状態が変化する際、機械に故障が生じた際などに振動特性変化する機械である。
【0020】
図6は、データ処理装置100が実行するデータ処理を例示するフローチャートである。以下、図6のフローチャートに沿って、データ処理装置100が実行するデータ処理について説明する。
【0021】
まず、スペクトル計算部20は、振動データ格納部10に格納されている振動データを取得する(ステップS1)。
【0022】
次に、スペクトル計算部20は、ステップS1で取得した振動データに対して、所定の刻み値でSTFT窓をスライドさせていき、各STFT窓で短時間フーリエ変換を行なう(ステップS2)。それにより、STFT窓ごとに、周波数スペクトルが計算される。
【0023】
次に、平均計算部30は、図2で説明したように、STFT窓よりも大きい計算窓内で各STFT窓の周波数スペクトルの平均値を取得することによって、スペクトル平均分布を計算する。平均計算部30は、所定の刻み値で計算窓を後の時刻側に移動させていき、各計算窓についてスペクトル平均分布の計算を繰り返す(ステップS3)。
【0024】
次に、平均計算部30は、最初の計算窓のスペクトル平均分布を初期スペクトル平均分布として初期データ格納部40に格納する(ステップS4)。
【0025】
図7において、(1)は、最初の初期スペクトル平均分布の計算窓を示している。図7の(2)は、ステップS3を示している。
【0026】
次に、相関計算部50は、初期データ格納部40から、初期スペクトル平均分布を取得し、取得した初期スペクトル平均分布に対して、当該初期スペクトル平均分布よりも後の時間の各計算窓のスペクトル平均分布との相関係数を計算する(ステップS5)。図7の(3)はステップS5で計算された相関係数を示している。
【0027】
検出部60は、相関係数の平均値以下の極小値が有るか否かを判定する(ステップS6)。
【0028】
ステップS6で「Yes」と判定された場合、検出部60は、相関係数の平均値以下の最初の極小値を、振動特性の変化点として検出する(ステップS7)。図7の例では、(4)が最初の極小値を示している。
【0029】
次に、検出部60は、相関係数の平均値以下の最初の極小値となった際の計算窓のスペクトル平均分布を、初期スペクトル平均分布として初期データ格納部40に格納しなおす(ステップS8)。すなわち、検出部60は、初期データ格納部40に格納されている初期スペクトル平均分布を更新する。その後、ステップS5から再度実行される。図7の例では、(5)が次の初期スペクトル平均分布として格納される。
【0030】
全ての変化点が検出されると、ステップS6で「No」と判定される。ステップS6で「No」と判定されると、フローチャートの実行が終了し、データ処理の結果が表示装置104に表示される。例えば、全ての変化点などが表示される。
【0031】
図8(a)~図8(g)は、検出された各変化点と、計算された相関係数とを例示する図である。図8(a)は、検出された各変化点1~6を例示している。図8(b)は、変化点1が検出された際の相関係数を例示している。図8(c)は、変化点2が検出された際の相関係数を例示している。図8(c)では、変化点1の時刻のスペクトル平均分布を基に相関係数が計算されているため、図8(b)の相関係数とは異なっている。以下、図8(d)は、変化点3が検出された際の相関係数を例示している。図8(e)は、変化点4が検出された際の相関係数を例示している。図8(f)は、変化点5が検出された際の相関係数を例示している。図8(g)は、変化点6が検出された際の相関係数を例示している。
【0032】
図9は、振動データと、検出された変化点とを示す図である。図9において、太い各縦点線が、検出された変化点を示している。図4(a)の結果と比較すると変化点が少なくなっており、図4(b)の結果と比較すると変化点が多くなっている。
【0033】
本実施例によれば、振動データについてSTFT窓ごとに周波数スペクトルを計算することによって、振動データの周波数分布を計算することができる。STFTよりも大きい時間範囲の計算窓内の各周波数スペクトルを平均してスペクトル平均分布を計算することによって、異常値などが除去された周波数スペクトルを計算することができる。初期スペクトル平均分布と、初期スペクトル平均分布よりも後の時刻のスペクトル平均分布との相関係数を計算することで、初期スペクトル平均分布との類似度合いを得ることができる。相関係数の平均値以下の極小値を検出することによって、相対的な相関係数の減少を検出することができるようになる。したがって、閾値を設定することなく、振動特性の変化点の検出精度を向上させることができる。
【実施例0034】
図10は、実施例2に係るデータ処理装置100aの全体構成を表す概略図である。図10で例示するように、データ処理装置100aが実施例1のデータ処理装置100と異なる点は、フィルタリング部70がさらに備わっている点である。データ処理装置100aのハードウェア構成は、図5(b)と同様である。図5(b)のCPU101が記憶装置103に記憶されているデータ処理プログラムを実行することによって、データ処理装置100aに、振動データ格納部10、スペクトル計算部20、平均計算部30、初期データ格納部40、相関計算部50、検出部60、フィルタリング部70などが実現される。なお、データ処理装置100aの各部は、専用の回路などのハードウェアであってもよい。
【0035】
図11は、データ処理装置100aが実行するデータ処理を例示するフローチャートである。以下、図11のフローチャートに沿って、データ処理装置100aが実行するデータ処理について説明する。
【0036】
まず、スペクトル計算部20は、振動データ格納部10に格納されている振動データを取得する(ステップS11)。
【0037】
次に、スペクトル計算部20は、ステップS11で取得した振動データに対して、所定の刻み値でSTFT窓をスライドさせていき、各STFT窓で短時間フーリエ変換を行なう(ステップS12)。それにより、STFT窓ごとに、周波数スペクトルが計算される。
【0038】
次に、平均計算部30は、図2で説明したように、STFT窓よりも大きい計算窓内で各STFT窓の周波数スペクトルの平均値を取得することによって、スペクトル平均分布を計算する。平均計算部30は、所定の刻み値で計算窓を後の時刻側に移動させていき、各計算窓についてスペクトル平均分布の計算を繰り返す(ステップS13)。
【0039】
次に、平均計算部30は、最初の計算窓のスペクトル平均分布を初期スペクトル平均分布として初期データ格納部40に格納する(ステップS14)。
【0040】
図12において、(1)は、最初の初期スペクトル平均分布の計算窓を示している。図12の(2)は、ステップS13を示している。
【0041】
次に、相関計算部50は、初期データ格納部40から、初期スペクトル平均分布を取得し、取得した初期スペクトル平均分布に対して、当該初期スペクトル平均分布よりも後の時間の各計算窓のスペクトル平均分布との相関係数を計算する(ステップS15)。図12の(3)はステップS15で計算された相関係数を示している。
【0042】
次に、フィルタリング部70は、ステップS15で計算された相関係数のノイズを除去するためのフィルタリング処理を行なう(ステップS16)。図12の(4)は、ノイズ除去された相関係数を示している。
【0043】
検出部60は、相関係数の平均値以下の極小値が有るか否かを判定する(ステップS17)。
【0044】
ステップS17で「Yes」と判定された場合、検出部60は、相関係数の平均値以下の最初の極小値を、振動特性の変化点として検出する(ステップS18)。図12の例では、(5)が最初の極小値を示している。
【0045】
次に、検出部60は、相関係数の平均値以下の最初の極小値となった際の計算窓のスペクトル平均分布を、初期スペクトル平均分布として初期データ格納部40に格納しなおす(ステップS19)。すなわち、検出部60は、初期データ格納部40に格納されている初期スペクトル平均分布を更新する。その後、ステップS15から再度実行される。図12の例では、(6)が次の初期スペクトル平均分布として格納される。
【0046】
全ての変化点が検出されると、ステップS17で「No」と判定される。ステップS17で「No」と判定されると、フローチャートの実行が終了し、データ処理の結果が表示装置104に表示される。例えば、全ての変化点などが表示される。
【0047】
図13(a)~図13(g)は、検出された各変化点と、計算された相関係数とを例示する図である。図13(a)は、検出された各変化点1~6を例示している。図13(b)は、変化点1が検出された際の相関係数を例示している。図13(c)は、変化点2が検出された際の相関係数を例示している。図13(c)では、変化点1の時刻のスペクトル平均分布を基に相関係数が計算されているため、図13(b)の相関係数とは異なっている。以下、図13(d)は、変化点3が検出された際の相関係数を例示している。図13(e)は、変化点4が検出された際の相関係数を例示している。図13(f)は、変化点5が検出された際の相関係数を例示している。図13(g)は、変化点6が検出された際の相関係数を例示している。
【0048】
図14(a)は、フィルタリング部70がフィルタリング処理を行なった場合に検出された変化点を例示する図である。図14(b)は、フィルタリング部70がフィルタリング処理を行なわなかった場合に検出された変化点を例示する図である。図14(b)の場合と比較すると、図14(a)の場合には変化点がすくなくなっている。これは、相関係数に対するフィルタリング処理によって、異常値などが除去されたからであると考えられる。
【0049】
本実施例によれば、相関係数の異常値などのノイズが除去されるため、振動特性の変化点の検出精度がさらに向上する。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
(付記)
(付記1)
コンピュータに、
振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算する処理と、
前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する処理と、
所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する処理と、
前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。
(付記2)
前記コンピュータに、
検出された前記極小値に対応する計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を新たに計算する処理と、
新たに計算された前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行させることを特徴とする付記1に記載のデータ処理プログラム。
(付記3)
前記時間窓ごとに前記周波数スペクトルを計算する際に、短時間フーリエ変換を行なうことを特徴とする付記1または付記2に記載のデータ処理プログラム。
(付記4)
前記コンピュータに、
前記相関係数に対してノイズ除去のためのフィルタリング処理を実行させることを特徴とする付記1から付記3のいずれか一項に記載のデータ処理プログラム。
(付記5)
前記コンピュータに、
前記極小値を検出する処理において、前記相関係数の平均値以下の最初の極小値を検出する処理を実行させることを特徴とする付記1から付記4のいずれか一項に記載のデータ処理プログラム。
(付記6)
振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算する処理と、
前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する処理と、
所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する処理と、
前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、をコンピュータが実行することを特徴とするデータ処理方法。
(付記7)
前記コンピュータが、
検出された前記極小値に対応する計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を新たに計算する処理と、
新たに計算された前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する処理と、を実行することを特徴とする付記6に記載のデータ処理方法。
(付記8)
前記時間窓ごとに前記周波数スペクトルを計算する際に、短時間フーリエ変換を行なうことを特徴とする付記6または付記7に記載のデータ処理方法。
(付記9)
前記コンピュータが、
前記相関係数に対してノイズ除去のためのフィルタリング処理を実行することを特徴とする付記6から付記8のいずれか一項に記載のデータ処理方法。
(付記10)
前記コンピュータが、
前記極小値を検出する処理において、前記相関係数の平均値以下の最初の極小値を検出する処理を実行することを特徴とする付記6から付記9のいずれか一項に記載のデータ処理方法。
(付記11)
振動データについて、時間窓ごとに周波数スペクトルを計算するスペクトル計算部と、
前記時間窓よりも大きい時間範囲の計算窓内の前記周波数スペクトルを平均することでスペクトル平均分布を計算する平均計算部と、
所定の計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該所定の計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を計算する相関計算部と、
前記相関係数の平均値以下の極小値を検出する検出部と、を備えることを特徴とするデータ処理装置。
(付記12)
前記相関計算部は、前記検出部によって検出された前記極小値に対応する計算窓の前記スペクトル平均分布と、当該計算窓以降の計算窓の前記スペクトル平均分布との相関係数を新たに計算し、
前記検出部は、新たに計算された前記相関係数の平均値以下の極小値を検出することを特徴とする付記11に記載のデータ処理装置。
(付記13)
前記スペクトル計算部は、前記時間窓ごとに前記周波数スペクトルを計算する際に、短時間フーリエ変換を行なうことを特徴とする付記11または付記12に記載のデータ処理装置。
(付記14)
前記相関係数に対してノイズ除去のためのフィルタリング処理を実行するフィルタリング部を備えることを特徴とする付記11から付記13のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
(付記15)
前記検出部は、前記極小値を検出する際に、前記相関係数の平均値以下の最初の極小値を検出することを特徴とする付記11から付記14のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【符号の説明】
【0051】
10 振動データ格納部
20 スペクトル計算部
30 平均計算部
40 初期データ格納部
50 相関計算部
60 検出部
70 フィルタリング部
100,100a データ処理装置
101 CPU
102 RAM
103 記憶装置
104 表示装置
図1
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