(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165089
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】蓄電池システム、および、その充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20221024BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221024BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070285
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152294
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】原田 知典
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 貴紀
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA12
5G503DA04
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS01
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB02
5H030BB03
5H030BB07
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の蓄電池を有するシステムにおいて、各蓄電池の充電状態に応じて効率的で最適な充電を達成する蓄電池システム及び蓄電池の充電制御方法を提供する。
【解決手段】充電器5を有する蓄電池システムにおいて、複数の蓄電池1A、1Bの満充電を個別に制御するコントローラ3を有する。コントローラ3は、全ての蓄電池の充電状態を検知するとともに、満充電についての電流値や時間に関する充電パターンを作成して、この充電パターンに基づき少なくとも2つ以上の蓄電池を同時に充電する期間を設けて制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池の満充電を制御するコントローラを有する蓄電池システムにおいて、
前記コントローラは、全ての蓄電池の充電状態を検知するとともに、満充電についての電流値や時間に関する充電パターンを作成して、少なくとも2つ以上の蓄電池を同時に充電する期間を設けて制御することを特徴とする蓄電池システム。
【請求項2】
前記コントローラは、一の蓄電池または他の蓄電池を個別に充電する第一充電期間と、当該一の蓄電池および他の蓄電池を同時に充電する第二充電期間を有するように制御することを特徴とする請求項1の蓄電池システム。
【請求項3】
前記コントローラは、各蓄電池を多段階定電流制御することを特徴とする請求項1の蓄電池システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第一充電期間は定電流充電制御を行い、前記第二充電期間は定電圧充電制御を行うことを特徴とする請求項2の蓄電池システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記蓄電池に個別に接続されたコンバータに信号を送って、当該コンバータを調整することで蓄電池に対する満充電を制御することを特徴とする請求項1の蓄電池システム。
【請求項6】
前記蓄電池の電源は再生可能エネルギーであることを特徴とする請求項1の蓄電池システム。
【請求項7】
複数の蓄電池の満充電を制御する蓄電池の充電制御方法において、
コントローラは、
すべての蓄電池の充電状態を検知して、
すべての蓄電池の満充電についての電流値や時間に関する充電パターンを作成して、
少なくとも2つ以上の蓄電池を同時に充電する期間を設けて、
制御することを特徴とする蓄電池の充電制御方法。
【請求項8】
前記コントローラは、
一の蓄電池または他の蓄電池を個別に充電する充電期間と、
一の蓄電池および他の蓄電池を同時に充電する充電期間を、
含むように制御することを特徴とする請求項7の蓄電池の充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蓄電池システム、およびその充電制御方法に関する。特に、鉛蓄電池のような二次電池を複数有する場合の満充電を制御する蓄電池システムとその充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の充電方法として、従来から定電流充電法が知られているが、近年は、電池の長寿命化を目的として、基準値を2値以上に設ける多段階定電流充電法が行われている(特許文献1)。また、蓄電池の充電は、放電深度(DOD)にもよるが、充電期間の前半は定電流充電を行い、後半において定電圧充電に変更する定電流定電圧充電も行われている(特許文献2)。
【0003】
しかし、蓄電池に対する充電速度は、充電量(SOC)が小さいときは速いものの、充電時間の経過とともに、充電量が上昇することで充電速度も低下してしまう。また、充電器は最大電流値を対象として設計されているため、充電速度が低下する時間帯においては、パフォーマンスが悪いという問題もあった。この現象は、特に、蓄電池容量kWhに対して入出力kWhが大きい充電器、コンバータやそれらを搭載する蓄電システムではより顕著な問題となる。
【0004】
さらに、近年は、電気自動車や再生可能エネルギーの実用化に伴い、多数の蓄電池を有するシステムが常套手段となりつつある。この場合も複数の蓄電池を効率的に満充電するためのシステムが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4114082号
【特許文献2】特公平4-6074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようする課題は、複数の蓄電池を有するシステムにおいて、各蓄電池の充電状態に応じて効率的で最適な充電ができるシステムと制御方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電池システムは、複数の蓄電池の満充電を制御するコントローラを有して、このコントローラは、全ての蓄電池の充電状態を検知するとともに、満充電についての電流値や時間に関する充電パターンを作成して、少なくとも2つ以上の蓄電池を同時に充電する期間を設けて制御することを特徴とする。
【0008】
さらに、コントローラは、一の蓄電池または他の蓄電池を個別に充電する第一充電期間と、前記一の蓄電池および他の蓄電池に同時に充電する第二充電期間を有するように制御することを特徴とする。
【0009】
さらに、コントローラは、各蓄電池を多段階定電流充電制御することを特徴とする。
【0010】
さらに、コントローラは、第一充電期間は定電流充電制御を行い、第二充電期間は定電圧充電制御を行うことを特徴とする。
【0011】
さらに、コントローラは、蓄電池に個別に接続されたコンバータに対して信号を送って当該蓄電池に対する満充電を制御することを特徴とする。
【0012】
さらに、蓄電池の電源は再生可能エネルギーであることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る蓄電池の充電制御方法は、コントローラが、すべての蓄電池の充電状態を検知して、すべての蓄電池の満充電についての電流値や時間に関する充電パターンを作成して、少なくとも2つ以上の蓄電池を同時に充電する期間を設けて制御することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る蓄電池の充電制御方法は、一の蓄電池または他の蓄電池を個別に充電する充電期間と、一の蓄電池および他の蓄電池を同時に充電する充電期間を含むように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る蓄電池システムおよびその充電制御方法は、複数の蓄電池の各々について充電状態(SOC)を検知・把握し、相互の関係を考慮して、充電する順番や充電時間、充電量に関する充電パターンを作成し、当該パターンに基づき、各蓄電池を個別に充電制御することを特徴とする。特に、SOCが大きい場合には、最適な蓄電池同志を選択して、同時に充電動作を行うことで、充電器のサイズや容量を大きくすることなく、システム全体の満充電動作を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る蓄電池システムの実施形態を示す。
【
図2】本発明に係る蓄電池システムの充電制御のタイムチャートを示す。
【
図3】本発明に係る蓄電池システムの実施形態を示す。
【
図4】本発明に係る蓄電池システムの実施形態を示す。
【
図5】本発明に係る蓄電池システムの実施形態を示す。
【
図6】本発明に係る蓄電池システムの充電動作のフローチャートを示す。
【
図7】本発明に係る蓄電池システムの実施形態を示す。
【
図8】本発明に係る蓄電池システムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る蓄電池システムの全体構成を示す。(a)は全体構成を示し、(b)はコントローラの内部構成を示す。蓄電池1は蓄電池1Aと蓄電池1Bよりなり、スイッチ素子2(2A、2B)を介して供給電源を含む充電器5に接続されている。各蓄電池1(1A、1B)には電流検出器、電圧検出器、温度検出器が備えられており、電流値41(41A、41B)、電圧値42(42A、42B)、温度値43(43A、43B)がコントローラ3に送信される。コントローラ3はスイッチ素子2(2A、2B)を制御する。
【0018】
コントローラ3は、入力部31、SOC測定部32、充電パターン決定部33、送信部34を有する。各蓄電池1の電流値41、電圧値42、温度値43は、入力部31において、電流信号、電圧信号、温度信号となって、SOC測定部32に送信される。SOC測定部32は、電流値41により、蓄電池1の充電時や放電時の電流積算値が導かれて各蓄電池1の充電開始時の充電状態(SOC)を把握する。一例をあげると、蓄電池1AのSOCは5%、蓄電池1BのSOCは10%となる。なお、SOCの測定には、電流値41、電圧値42、温度値43の全てが必要というわけではない、使用環境や電池種に応じて、最適な情報を選択して使うことになる。
【0019】
SOC測定部32で測定された各蓄電池1A、1BのSOC値は、充電パターン決定部33に送信されて、例えば、いずれの蓄電池から充電を開始するか、各蓄電池の充電電流、充電時間などの充電パターンを作成する。特に、SOCが大きくなることで充電電流値が小さくなる状態においては、最適な蓄電池同志を選定して同時に充電させるようにパターンを決定する。また、SOCは常時測定しているので、パターンは常に修正されることになる。送信部34からの信号(34A、34B)は、スイッチ2Aとスイッチ2Bに信号を送り、スイッチの開閉制御により、各蓄電池の充電が制御される。なお、スイッチ素子は機械的な素子であってもよく半導体素子であってもかまわない。
【0020】
図2は、コントローラ3による蓄電池1(1A、1B)に対する充電制御のタイムチャートを概念的に示すものであり、(a)は本発明に係る蓄電池システムによる制御を示し、(b)は比較のために、従来の蓄電池システムによる制御を示す。(a)(b)ともに、横軸は時間を示し、縦軸は充電電流値を示す。
【0021】
まず、比較例(b)から説明する。
図1に示す構成は、前述のように本発明に係る内容ではあるが、説明の便宜上、
図1の蓄電池、スイッチ、コントローラを使って説明する。
(1)コントローラ3はスイッチ2Aをオンすることで蓄電池1Aの充電を開始する。このとき、スイッチ2Bはオフとして蓄電池1Bに対する充電は行わない。
(2)蓄電池1Aに流入する電流値は、基準値が段階的に設定されており、初期値をI0(最大値)とすると、時間の経過とともに、「1/2×I0」⇒「1/4×I0」⇒「1/8×I0」と変化する。そして、時間T1をかけて蓄電池11は満充電される。この制御はいわゆる定電流制御であり、基準値を段階的に変化させている点で多段階定電流制御と呼ばれている。
(3)次に、コントローラ3は、蓄電池1Aのスイッチ2Aをオフするとともに、蓄電池1Bのスイッチ2Bをオンすることで、蓄電池1Bに対して同様の充電制御を行う。初期の残充電量(SOC)が異なるので、充電時間そのものは異なるが、時間T2をかけて蓄電池1Bの満充電が完了する。
(4)両蓄電池を共に満充電するために要した時間は、T1とT2の合算値に近いものとなる。このように、従来は、複数の蓄電池に対して、順番に一つずつ満充電させるものである。
【0022】
次に、
図2(a)を使って、本発明に係る蓄電池システムについて説明する。
(1)まず、コントローラ3は、充電動作開始前に、両蓄電池1(1A、1B)の電圧値、電流値、温度値から充電状態(SOC)を把握して、
図2(a)に示すような両蓄電池を満充電させるための充電パターンを作成する。
(2)次に、コントローラ3は、スイッチ2Aをオンすることで、蓄電池1Aに対して充電器5からの充電を開始する。このとき、スイッチ2Bはオフとして蓄電池1Bに対しては充電しない。そして、蓄電池1Aに対して基準値I0での充電が完了すると(期間T11の終点)、スイッチ2Aをオフするとともにスイッチ2Bをオンすることで、蓄電池1Bに対する充電を開始する。
【0023】
(3)次に、蓄電池1Bに対する基準値I0による充電が終了すると(期間T12の終点)、コントローラ3は、スイッチ2Aとスイッチ2Bを共にオンして、充電器5から蓄電池1Aと蓄電池1Bを同時に充電させる(期間T2の始点)。もともと、充電器5やコントローラ3の内部素子は最大電流値I0を前提に設計されているので、供給電流値が最大値の1/2以下になると、同時充電が可能になるからである。
(4)以後、期間T2、期間T3、期間T4において、蓄電池1Aと蓄電池1Bを同時に充電していくことになるが、図に示すように、期間T2の基準値は「1/2×I0」であり、期間T3の基準値は「1/4×I0」であり、期間T4の基準値は「1/8×I0」となる。
【0024】
ここで、図では、便宜上、蓄電池1Aに対する充電を実線、蓄電池1Bに対する充電を点線で示している。本実施形態では、蓄電池を個別に充電する期間(T11、T12)を第一充電期間と称し、複数の蓄電池を同時に充電する期間(T2、T3、T4)を第二充電期間と称する。
【0025】
このように、本実施形態では、第一充電期間は一つの蓄電池に対して高い充電電流を供給する個別の充電となるが、その後、SOCが50%以上になった時点からは、充電器からの電流を分配することが可能になるので、複数の蓄電池に対して同時に充電する方法に切り替えている。なお、同時充電の開始は50%以上に限るものではない。
【0026】
このように、本発明に係る蓄電池システムは、複数の蓄電池をすべて満充電するに際し、各蓄電池の充電開始直前の充電状態(SOC)を検出して、その値に基づいて、全ての蓄電池を効率的に満充電させるための充電パターンを作成するものであり、特に、蓄電池の充電量に応じて、複数の蓄電池を同時に充電させることを特徴とする。
【0027】
これにより、蓄電池全体として満充電完了を時間的に短くすることができる。また、蓄電池池システムを構成する充電器、コントローラ、スイッチ素子を構成する各種部品や素子の耐性や許容値を考慮して効率的に運用するものであり、極端にいえば、蓄電池一つ分の仕様に対応させて設計することができる。
【0028】
なお、本発明に係る蓄電システムは、充電開始時だけでなく、充電動作中においても各蓄電池のSOCを常時測定することで、当初作成した充電パターンを適宜変更しながら最適な充電をすることもできる。例えば、充電中に、いずれかの蓄電池を使用するような場合には充電プログラムの変更は重要となる。
【0029】
図3は蓄電池が3つの場合(蓄電池1A、蓄電池1B、蓄電池1C)の実施形態を概念的に示すものである。
(a)において、期間T11において蓄電池1Aのみ、期間T12において蓄電池1Bのみ、期間T13において蓄電理1Cのみ、それぞれ、基準値(限界値)I0にて充電を行う。各蓄電池の初期SOCは異なるので期間T11、期間T12、期間T13はそれぞれ異なる。次に、期間T2において、蓄電池1A、蓄電池1B、蓄電池1Cの充電を同時に行う。各蓄電池に対する充電電流値は1/3×I0となる。さらに、期間T3でも蓄電池1A、蓄電池1B、蓄電池1Cの充電を同時に行うが、各蓄電池に対する充電電流は1/6×I0となる。
【0030】
この実施形態は、多段階定電流充電において、基準電流値を、I0⇒1/3×I0⇒1/6×I0と変化させている。そして、各蓄電池を個別に充電する期間(T11、T12、T13)を第一充電期間、複数の蓄電池を同時に充電する期間(T2、T3)を第二充電期間となる。なお、各蓄電池の第一充電期間は、その後の第二充電期間において、同じ時間で同時充電ができるように調整するのがよい。
【0031】
図3(b)は他の実施形態を示す。蓄電池の個数は(a)と同じ3つではあるが、充電制御方法が異なる。期間T11において蓄電池1Aのみ、期間T12において蓄電池1Bのみ、期間T13において蓄電理1Cのみに対して、それぞれ、基準値I0にて充電を行う。ここまでは
図3(a)と同じである。次に、期間T2において、蓄電池1A、蓄電池1Bについて、同時に充電を行う。電流値は1/2×I0である。次に、期間T3において、蓄電池1A、蓄電池1B、蓄電池1Cについて、同時に充電を行う。蓄電池1Aと蓄電池1Bについては電流値1/6×I0であり、蓄電池1Cについては電流値2/3×I0となる。すなわち、この実施形態は、3つの蓄電池に対して、必ずしも均等に充電する必要はなく、合計電流値が限界値(I0)を超えない範囲において、複数の蓄電池を選択して同時に充電できることを示している。各蓄電池のSOCの状態と充電器から供給できる電流量との関係で最適な組み合わせを設計することになる。なお、本実施形態では、各蓄電池を個別に充電する期間(T11、T12、T13)を第一充電期間に、複数の蓄電池を同時に充電する期間(T2、T3)を第二充電期間となる。
【0032】
図4は本発明に係る蓄電池システムの他の実施形態を示す。(a)は蓄電池システムの全体構成を示し、(b)は充電制御のタイムチャートを示す。この実施形態は、多数の蓄電池を有するシステムに関するものであって、例えば、工場の夜間充電や電気自動車のバッテリなど使用電力量の大きいシステムを想定している。蓄電池1(1A、1B、1C、・・・1n)は、それぞれに対応してスイッチ素子2(2A、2B、2C、・・・2n)を有しており、コントローラ3は、前述の実施形態と同様に、各蓄電池1(1A、1B、1C、・・・1n)のSOCを検知・把握して、これら蓄電池を限界の電流量を超えない範囲にて供給電流を設定して効率的に満充電させるための充電パターンを作成する。
【0033】
(b)に示すタイムチャートは、説明の便宜上、蓄電池を6個(1A、1B、1C、1D、1E、1F)としている。期間T11において蓄電池1Aと蓄電池1Bを同時に充電し、期間T12において蓄電池1Cと蓄電池1Dを同時に充電し、期間T13において蓄電池1Eと蓄電池1Fを同時に充電する。組合せはSOCが近いものを選択するのがよい。各期間の長さ(時間)はSOCにより異なっている。その後、期間T21において蓄電池1Aと蓄電池1Bを同時に充電し、期間T22において蓄電池1A、蓄電池1B、蓄電池1C、蓄電池1Dを同時に充電する。
【0034】
この実施形態は、蓄電池の数が大きい場合は、充電器の容量もそれなりに大きくなるので、
図2や
図3に示した形態のように、充電器からの最大供給電流量は蓄電池1つ分に制限されているわけではない。そして、各蓄電池の充電開始時におけるSOCを常時把握して、最適な蓄電池を選定して組み合わせることになる。
【0035】
図5は本発明に係る蓄電システムの他の実施形態を示す。
図1に示す形態は蓄電地1と充電器5の間にスイッチ素子2を有していたのに対し、本実施形態はコンバータ4(4A、4B)を有する点で異なる。充電器5からはラフに調整された直流電流がコンバータ4(4A、4B)に供給されて、コンバータ4(4A、4B)において、各蓄電池に対応して微調整された充電電流が供給される。コントローラ3は、コンバータ4(4A、4B)に蓄電池のSOCなどに対応した信号が送信される。
【0036】
図6は本発明に係る蓄電池システムのフローチャートを示す。このフローチャートは、説明の便宜上、
図1及び
図2(a)に示した実施形態に基づいている。まず、(a)において、蓄電池システムの動作を開始する。(b)において、コントローラは、蓄電池1(1A、1B)の電圧値、電流値、温度値から各蓄電池のSOCを把握する。(c)において、コントローラは、蓄電池1(1A、1B)を満充電させるための充電パターン(プログラム)を作成する。具体的には、
図2(a)のような充電パターンであるが、蓄電池に対する充電の順番、各蓄電池に対する充電電流と充電時間、個別充電する期間と同時充電する期間の設定である。
【0037】
(d)において、蓄電池1(1A、1B)のSOC値やその他の情報がモニターに表示される。例えば、蓄電池ごとのSOC値や満充電の予想時間、あるいは太陽電池のような再生エネルギーから充電される場合は発電量の表示である。ただし、このモニターは必須というわけではない。(e)において、コントローラは、蓄電池1(1A、1B)のうち、いずれか一方だけを個別に充電するか(第一充電期間)、あるいは、両方の蓄電池を同時に充電するか(第二充電期間)を作成された充電パターンに従い進行させる。蓄電池1Aもしくは蓄電池1Bだけを充電する場合は(f)に進み、同時に充電する場合は(m)に進む。
【0038】
(f)において、コントローラは、蓄電池1(1A、1B)のうち、いずれの蓄電池を充電させるか決定する。そして、蓄電池1Aから充電を開始する場合は(g)に進み、コントローラは蓄電池1Aの充電を開始するためのスイッチ2Aをオンさせるとともに、蓄電池1Bのためのスイッチ2Bをオフさせる。(h)において、コントローラは、蓄電池1AのSOC値を検出して、設定された所定の充電値に到達していない場合は、引き続き、蓄電池1aを充電させるために(i)に進む。一方、蓄電池1aのSOCが所定値に到達した場合は(j)に進む。(i)において、充電パターンの修正の有無を検出するとともに、修正の必要が生じたい場合は(c)に戻ることとなり、修正を必要としない場合は(g)に戻って、引き続き蓄電池1aの充電を継続する。以後、充電量が所定値に到達するか、あるいは、充電パターンの修正が発生しない限り(g)⇒(h)⇒(i)を繰り返すことになる。この状態は
図2(a)における期間T11に相当する。
【0039】
次に、(j)において、コントローラは蓄電池1Bの充電を開始するためのスイッチ2Bをオンさせるとともに、蓄電池1Aのためのスイッチ2Aをオフさせる。以後、蓄電池1Aにおけるループと同じ内容にて、(j)⇒(k)⇒(l)を繰り返す。この状態は
図2(a)における期間T12に相当する。
【0040】
(k)において、蓄電池1Bの充電が終了した場合は、(m)に進む。すなわち、(m)では、コントローラは、蓄電池1Aと蓄電池1Bの両方を同時に充電させることとなる。
(n)において、コントローラは、蓄電池1A、蓄電池1Bの双方のSOCを検出・把握するとともに、所定量に到達していない場合は(o)に進む。そして、充電パターンの変更が生じたい場合には(c)に戻るとともに、変更が生じない場合は(p)に進むこととなる。(p)において、基準値を変更することなく充電動作を継続する場合は(m)に戻り、以後、(m)⇒(n)⇒(o)⇒(p)を繰り返すことになる。この状態は
図2(a)における期間T2に相当する。
【0041】
一方、(p)において、充電電流量を調整する場合は、基準値(供給量)を変更させて(e)に戻り、同時充電をする場合は(m)に進む。この状態は、
図2(a)における期間T2から期間T3への移行、あるいは期間T3から期間T4への移行を意味するものである。なお、
図2に示す形態とは異なる、再び、個別の充電が必要となる場合は、(f)に進むこととなる。(n)において、両蓄電が満充電されたことが確認されると充電動作は終了する。
【0042】
図7は本発明に係る蓄電池システムの他の実施形態を示す。
図2に示す実施形態は定電流充電に関するものであるが、本実施形態は定電流定電圧充電に関するものである。
図1に示す回路構成を基に、コントローラ3による蓄電池1(1A、1B)に対する充電制御を時間経過とともに示すものであり、(a)は本発明に係る蓄電池システムによる制御を示し、(b)は比較のために、従来の蓄電池システムによる制御をそれぞれ示す。(a)(b)ともに、横軸は時間を示し、縦軸は充電電流値を示す。
【0043】
まず、便宜的に、
図1に示した回路図を併用しながら比較例(b)から説明する。(1)コントローラ3はスイッチ2Aをオンすることで蓄電池1Aの充電を開始する。このとき、スイッチ2Bはオフとして蓄電池1Bに対する充電は行わない。この充電は、いずれかの蓄電池から開始するものであるが、前記のように、コントローラ3の充電パターン決定部33により決定される。(2)蓄電池1Aに流入する電流値は、充電初期は定電流充電を行い、その後、定電圧充電に切り替える。例えば、
図7においては、定電流充電を3時間行い、その後、定電圧充電を15.5時間行うこととなる。これにより、蓄電池1Aの満充電が完了する。(3)次に、コントローラ3は、蓄電池1Aのスイッチ2Aをオフするとともに、蓄電池1Bのスイッチ2Bをオンすることで、蓄電池1Bに対して同様の充電を行う。蓄電池1Bも蓄電池1Aと同様に、充電初期は定電流充電を行い、その後、定電圧充電に切り替える。図においては、説明の便宜上、定電流充電の充電時間および定電圧充電の充電時間は、蓄電池1Aおよび蓄電池1Bで同一として扱っているが、両蓄電池のSOCやSOHが異なれば、これらの時間が相違することになる。(4)
図7(b)においては、両蓄電池1(1A、1B)を共に満充電するために要した時間は、例えば、37時間(18.5時間×2)に近い値となる。
【0044】
次に、
図7(a)に示す本発明に係る蓄電池システムの充電について説明する。
(1)
図7(b)に示した従来例と同様に、コントローラ3は、スイッチ2Aをオンすることで蓄電池1Aの充電を開始する。このとき、スイッチ2Bはオフとして蓄電池1Bに対して充電しない。そして、期間T1Aiにおいて、蓄電池1Aに対して定電流充電を行い、その後、期間T1Avにおいて定電圧充電を行う。数値例をあげると期間T1Ai+期間T1Avで4時間となる。(2)次に、コントローラ3は、スイッチ2Aをオフするとともに、スイッチ2Bをオンすることで、蓄電池1Bに対する充電を開始する。これも同様に、期間T2Aiにおいて定電流充電を行い、その後、期間T1Avにおいて定電圧充電を行う。数値例をあげると期間T1Ai+期間T1Avで4時間となる。(3)次に、コントローラ3はスイッチ1Aとスイッチ1Bをともにオンすることで両蓄電池を対象に双方同時に定電圧充電を開始する(T2)。数値例をあげると期間T2は14.5時間であり、蓄電池1Aと蓄電池1Bの満充電の合計時間は22.5時間となり、(b)に示した従来例の37時間に比べて格段に短縮していることがわかる。
【0045】
このように、本発明に係る蓄電池システムは、複数の蓄電池を満充電するに際し、初期は高い充電電流値により個別に充電を行うが、SOCが50%以上になった時点から、同時に充電することで短時間での満充電が達成できる。これは、常に、蓄電池のSOCを検出・把握するとともに、蓄電池システムを構成する素子の耐性や許容値を考慮して効率的に実施するものである。これにより、コントローラ、スイッチ素子、各種検出器は、極端にいえば、一つの蓄電池に合わせて設計することが可能となる。
【0046】
いままでの説明は、複数の蓄電池の充電開始時におけるSOCを測定して充電パターンを作成する方法について説明したが、充電動作中において蓄電池を使用した場合は、充電パターンのプログラムを修正して、他の蓄電池との関係で再度効果的なプログラムを作成することになる。
【0047】
本発明に係る蓄電池は鉛蓄電池に代表される二次電池であり、充放電を繰り返して長期期間使用するものであり、鉛蓄電池に限らず、リチウムイオン電池やニッケルカドミニウム蓄電池などが広く採用される。
【0048】
本発明に係る蓄電池は、蓄電池容量が大きいものに適用され、具体的には、10Wh~1000MWhのものに採用される。
【0049】
図8は本発明に係る蓄電システムが太陽電池からの充電である実施形態を示す。(a)は太陽電池の発電量と時間の関係を示し、縦軸は発電量、横軸は時間を示し、時間により発電量が変化する状態を示している。(b)は本発明に係る蓄電システムを使った場合を示すものであり、棒グラフは複数の蓄電池による充電量の総和を示している。この図より、太陽電池による発電量に対応させて、蓄電池システムのコントローラは適宜の蓄電池に対して充電を制御できることがわかる。
【0050】
このように、本発明に係る蓄電システムは、太陽光発電と商用ビルとの関係、あるいは太陽光発電と一般家庭の関係で利用できる。すなわち、不規則に発生する発電を効果的に複数の蓄電池に充電させることができる。また、太陽光発電に限らず、その他の再生エネルギー発電(風力発電、地熱発電など)との組み合わせでも当然に利用できる。
【0051】
本発明に係る蓄電システムは、スマートグリッド、スマートタウンでの蓄電装置、あるいは電気自動車に有効に活用できる。すなわち、複数の蓄電池を有するシステムにおいて、コントローラは、個々の蓄電池のSOCを検知・把握することにより、短時間で効果的に満充電できるプログラムを算出して満充電させることとなる。
【0052】
本発明に係る蓄電池システムは、小型で簡易な構造により、効果的に複数の蓄電池を満充電させることができる。このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを可能にする」に対応して、ターゲット7.1「2030年までに、安価かる信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する」、ターゲット7.2「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」、ターゲット7.3「2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる」、ターゲット7.4「2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する」に大きく貢献するものである。
【0053】
以上、説明したように本発明に係る蓄電地システムは、複数の蓄電池を満充電させる際に、相互のSOCを測定して、相互の充電動作を全体としてコントロールすることで、小型で簡易な構造でありながら短時間に効率的な満充電を達成することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 蓄電地
2 スイッチ素子
3 コントローラ
31 入力部
32 SOC測定部
33 充電パターン決定部
34 送信部
41 電流値
42 電圧値
43 温度値
5 充電器