特開 2022-165099 空気浄化具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022165099

(43)【公開日】2022-10-31

(54)【発明の名称】空気浄化具

(51)【国際特許分類】

   A61L 9/01 20060101AFI20221024BHJP

   A41G 1/00 20060101ALI20221024BHJP

【ＦＩ】

A61L9/01 B

A41G1/00 R

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021070304

(22)【出願日】2021-04-19

(71)【出願人】

【識別番号】392014760

【氏名又は名称】新光機器株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001977

【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】蕗澤 武夫

【テーマコード（参考）】

4C180

【Ｆターム（参考）】

4C180AA02

4C180AA07

4C180AA19

4C180CC01

4C180CC11

4C180EA02Y

4C180EA06X

4C180EA07X

4C180EA08X

4C180EA27Y

(57)【要約】

【課題】従来よりも安価に製造することができ、しかも抗菌・抗ウイルス作用の持続性に優れた新規な空気浄化具を提供する。
【解決手段】強度と通気性を持つネットにより容器１０を形成し、この容器の内部に銅素材をフライス盤や旋盤で切削した際に発生する削り屑２０を充填し、この容器の上面に装飾体３０を配置した。容器１０を角型とし、その上端に端部を下方に屈曲させたクロスバー１１を載せ、このクロスバーに装飾体３０の取付孔１３を形成した構造とすることができる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

強度と通気性を持つネットにより容器を形成し、この容器の内部に銅素材を切削した際に発生する削り屑を充填し、この容器の上面に装飾体を配置したことを特徴とする空気浄化具。

【請求項2】

ネットをステンレスネットとしたことを特徴とする請求項１に記載の空気浄化具。

【請求項3】

容器を角型とし、その上端に端部を下方に屈曲させたクロスバーを載せ、このクロスバーに装飾体の取付孔を形成したことを特徴とする請求項１または２に記載の空気浄化具。

【請求項4】

削り屑が、銅素材をフライス盤または旋盤で切削した際に発生する削り屑であることを特徴とする請求項１から３の何れかに記載の空気浄化具。

【請求項5】

削り屑が、圧縮された状態で容器内に充填されていることを特徴とする請求項４に記載の空気浄化具。

【請求項6】

装飾体が造花であり、その中心軸をクロスバーの取付孔に挿入したことを特徴とする請求項３に記載の空気浄化具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した室内用の空気浄化具に関するものである。

【背景技術】

【0002】

銅に抗菌・抗ウイルス作用があることは、従来から広く知られている。そのメカニズムは、銅イオンがウイルスのエンベローブ膜に穴を開けたり、銅イオンによって生成されたフリーラジカルが遺伝物質を分解するためであろうと考えられている。また米国の国立衛生研究所（NHI）の研究チームによれば、新型コロナウイルスの残存時間はプラスチックやステンレスの表面では７２時間、段ボールの表面では２４時間であるのに対して、銅の表面では４時間であるとのことであり、銅が新型コロナウイルスに対しても抗ウイルス作用を持つことが確認されている。

【0003】

このような抗菌・抗ウイルス作用を利用した抗菌材料も従来から提案されており、特許文献１には粒子径を１ｎｍから１μｍとした非常に微細な銅合金粉末を物品の表面に分散させることが記載されている。また特許文献２には、銅合金糸を含む複合繊維を用いた抗菌性布帛が記載されている。また特許文献３には、ポルトランドセメントに銅粉末を混合した抗菌組成物が開示されている。しかしこれらの従来の抗菌・抗ウイルス材は表面積を増大させるために銅を微細な粉末または微細な繊維に加工しており、そのために多額の製造コストがかかるという問題があった。

【0004】

また特許文献３には、抗菌材を吹き付けるか抗菌材を練り込んだ樹脂や繊維で造花を作成し、室内に置くことにより消臭効果や抗菌効果とともに、室内装飾品として美的効果を発揮させることが記載されている。しかしその消臭効果や抗菌効果は時間の経過とともに次第に低下して行くことが避けられない。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２０１９－６５３７５号公報

【特許文献2】特開２０１９－１４３２７２号公報

【特許文献3】実用新案登録第３１３５４６６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、従来よりも安価に製造することができ、しかも抗菌・抗ウイルス作用の持続性に優れた新規な空気浄化具を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明者は銅製品の加工を業とするものであり、銅素材を旋盤やフライス盤で切削する際に発生する大量の削り屑に着目した。この削り屑はこれまで廃棄物として処分されていたのであるが、これを利用すればきわめて安価に銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した空気浄化具を製造できることに思い至った。

【0008】

本発明は上記の知見に基づいてなされたものであって、強度と通気性を持つネットにより容器を形成し、この容器の内部に銅素材を切削した際に発生する削り屑を充填し、この容器の上面に装飾体を配置したことを特徴とするものである。

【0009】

なお、ネットをステンレスネットとすることができる。また、容器を角型とし、その上端に端部を下方に屈曲させたクロスバーを載せ、このクロスバーに装飾体の取付孔を形成した構造とすることができる。また、削り屑を、銅素材をフライス盤または旋盤で切削した際に発生する削り屑とすることができる。また、これらの削り屑を、圧縮された状態で容器内に充填してもよい。さらに、装飾体が造花であり、その中心軸をクロスバーの取付孔に挿入することができる。

【発明の効果】

【0010】

本発明の空気浄化具は、従来は廃棄物として処分されていた銅素材を切削した際に発生する削り屑を原料としているため、極めて安価に製造することができる。この削り屑は細かいため大きい表面積を持つ。しかもこの削り屑を、強度と通気性を持つネットにより構成された容器の内部に充填したことにより、空気を流通させながら削り屑の飛散を防止し、室内に設置した場合にも銅の微細片が散乱することがない。

【0011】

本発明の空気浄化具を室内に置けば、室内の空気中に浮遊する細菌やウイルスが銅素材の削り屑の表面に接触したとき、銅イオンによる抗菌・抗ウイルス作用によりその活性を低下させることができる。また銅には抗黴効果や、消臭機能もあるため、室内に発生する黴を抑制したり、室内を消臭することもできる。しかも本発明の空気浄化具はその効果が半永久的に持続し、低下することがない。さらに、本発明の空気浄化具は容器の上面に装飾体を配置したものであるから、室内の装飾品としての機能も有するものであり、室内の装飾を兼ねた空気浄化具として、実用的価値が高いものである。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】第１の実施形態を示す外観斜視図である。

【図2】第２の実施形態を示す外観斜視図である。

【図3】装飾体を取り除いた平面図である。

【図4】クロスバーを移動させた状態を示す平面図である。

【図5】第３の実施形態を示す平面図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下に本発明の実施形態を説明する。
図１は本発明の第１の実施形態を示す外観斜視図であり、１０は強度と通気性を持つネットにより形成された容器である。このネットの材質は特に限定されるものではないが、強度や剛性の観点から、金属製であることが好ましく、実施形態では錆びるおそれのないステンレスネットである。実施形態ではこのステンレスネットを用いて側面と底面を形成し、一辺が１０～１５ｃｍの立方体状の容器１０とした。なお、容器１０の上面は開放されており、底面は必ずしもネットとする必要はない。このように１０の内部に、銅の削り屑２０が充填されている。

【0014】

本発明の空気浄化具は、容器１０の側面を通じて室内の空気を銅の削り屑２０と接触させることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルスを銅表面で捕捉し、細菌やウイルスの活性を低下させるものである。このためネットの目開きは空気の流通を妨げない程度に大きくすることが好ましいのであるが、銅の削り屑２０が飛び出さない程度に細かくしておくものとする。

【0015】

銅素材をフライス盤で切削する際に発生する削り屑２０は、切削条件および銅素材の種類によって様々であるがほぼ細片状のものである。必要に応じて篩分けを行い、ほぼ一定サイズのものを容器１０に充填することが好ましい。なお、旋盤で切削した際に発生する削り屑２０は細かい螺旋状であり、螺旋の内部空間が大きいので空気との接触面積が増加する利点がある。これらの削り屑２０はそのまま容器１０内に入れてもよいが、プレスマシンにより一定形状に圧縮しておき、容器１０への収まりを良くしておくこともできる。この時のプレス圧は削り屑２０が削り屑としての形状を保ったまま相互に密着する程度とすることが好ましく、削り屑同士が完全に押し潰されて密着した状態になると、表面積が減少するとともに通気性も損なわれるので好ましくない。よって圧縮比は１/３～２/３程度とすることが好ましい。

【0016】

本発明で用いる銅素材は純銅であっても銅合金であってもよい。例えばアルミナ分散強化銅、銀含有銅、ベリリウム含有銅、クロムジルコニウム含有銅、コバルト含有銅など様々な銅合金の削り屑２０を利用することができる。これらの銅素材は工業材料として広く用いられているものであり、その削り屑２０の発生量も多いため、容易に入手できるものである。合金成分は抗菌・抗ウイルス作用を持つものではないが、銅の抗菌・抗ウイルス作用を阻害することはない。

【0017】

容器１０内に充填された削り屑２０は相互間に無数の空隙を持つため、銅表面と空気との接触面積は非常に大きくなる。しかも削り屑２０の内部に形成される空間の形状は複雑に入り組んでいるので、マスクと同様に空気中に浮遊する細菌やウイルスを確実に銅表面で捕捉することができる。このため、空気中に浮遊する細菌やウイルスの活性を低下させる効果も大きくなる。しかもこのような削り屑２０は銅粉末や銅繊維のように空中に飛散することがなく、誤って吸い込むこともない。なお銅は鍋やフライパンなどにも使用されている安全な金属であるから、誤って幼児が触ったり舐めたりしても、人体への悪影響はない。

【0018】

容器１０の内部に銅の削り屑２０を充填しただけであっても室内の空気を浄化する効果は発揮されるが、本発明ではこの容器１０の上面に装飾体３０を配置して室内装飾品としている。この実施形態では、四角形の容器１０の対向する２辺の間にクロスバー１１を掛け渡している。このクロスバー１１はステンレスなどの金属板の端部１２を下方に屈曲させたものであり、容器１０の変形を防止する機能もある。

【0019】

図示のように、クロスバー１１には装飾体３０を挿入するための多数の取付孔１３が形成されている。クロスバー１１の位置は図３のように容器１０の中止位置としてもよく、あるいは図４のように任意に位置にスライドさせてもよい。

【0020】

図１では装飾体３０として造花を用い、造花の中心軸３１をクロスバー１１の取付孔１３に挿入した。しかし図２に示すように、造花の中心軸３１をクロスバー１１がない部位から削り屑２０のすきまに差し込むこともできる。このように容器１０の上面に造花を配置すれば、鉢に花を植えたような外観とすることができる。しかし装飾体３０は必ずしも造花に限定されるものではなく、人形、万国旗など、適宜変更が可能である。

【0021】

なお容器１０の形状は上記の実施形態のように角型とするほか、図５に示したように円筒形とすることもできる。

【0022】

このように構成された本発明の空気浄化具は部屋の片隅に置かれることを想定しているが、吊り紐を付けて吊り下げることも可能である。また空気を流通させることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルスを銅表面で捕捉し、細菌やウイルスの活性を低下させる効果が高まるため、窓際などの空気の流通場所に配置することが望ましい。更に扇風機や小型のファンをその近傍に配置して空気の接触効果を更に高めることもできる。

【0023】

以上に説明したように、本発明の空気浄化具はこれまで廃棄物として処分されていた銅素材の削り屑を利用したものであるから製作コストが安価であり、しかも優れた抗菌・抗ウイルス効果や抗黴、消臭効果を得ることができる。また本発明の空気浄化具は銅の持つ抗菌・抗ウイルス効果を利用しているためその効果は反永久的に持続するものである。さらに本発明の空気浄化具は上面に装飾体３０を配置したことにより、室内装飾品として用いるに適したものである。

【符号の説明】

【0024】

１０ 容器
１１ クロスバー
１２ 端部
１３ 取付孔
２０ 削り屑
３０ 装飾体
３１ 中心軸

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】