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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165127
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】車椅子の固定構造
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/08 20060101AFI20221024BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20221024BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61G3/08
B60P3/00 A
B62B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070356
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】大和 誠歩
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA03
3D050DD01
3D050DD03
3D050EE08
(57)【要約】
【課題】衝突時の車椅子の損傷を抑制し易い車椅子の固定構造を提供する。
【解決手段】車両のリアフロアに搭載される車椅子と、前記リアフロアに設けられているストッパー部と、を備え、前記車椅子は、前記車椅子の幅方向に延びるアンカーバーを有し、前記ストッパー部は、前記アンカーバーと当接又は係合し、前記アンカーバーは、前記リアフロアの上に搭載された状態の前記車椅子を側方視した際、前記車椅子の後輪の外周縁の内側、かつ前記後輪の車軸よりも下方に設けられている、車椅子の固定構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリアフロアに搭載される車椅子と、
前記リアフロアに設けられているストッパー部と、を備え、
前記車椅子は、前記車椅子の幅方向に延びるアンカーバーを有し、
前記ストッパー部は、前記アンカーバーと当接又は係合し、
前記アンカーバーは、前記リアフロアの上に搭載された状態の前記車椅子を側方視した際、前記車椅子の後輪の外周縁の内側、かつ前記後輪の車軸よりも下方に設けられている、
車椅子の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車椅子固定構造は、車椅子のアンカーバーを引っ掛けるフック装置を備える。車椅子のアンカーバーは、特許文献1の図16に示すように、車椅子の後輪である主輪と前輪である補助輪との間に設けられている。このアンカーバーは、車椅子の幅方向に沿って設けられている。フック装置は、フックプレートを有する。フックプレートの後端は、車室フロアに対して上下方向に揺動自在に支持されている。フックプレートの後端には、アンカーバーと係止されるフック部が設けられている。このフック部にアンカーバーが係止されることで、車椅子が車室フロアに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-134243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車椅子固定構造では、車両の衝突時、アンカーバーが車椅子の回動中心となる。車椅子のアンカーバーが前輪と後輪との間に設けられていることで、車両の前面衝突時、車椅子の前輪に大きな荷重が作用し易い。車椅子の前輪は、上述したように補助輪である。車椅子の後輪は、上述したように主輪である。補助輪のサイズ及び機械的強度は、主輪に比較して小さい。そのため、車両の前面衝突時、車椅子の前輪が損傷するおそれがある。その上、車椅子のアンカーバーが前輪と後輪との間に設けられていることで、車室内外のいずれにおいても車椅子が段差を乗り越える際、アンカーバーが段差に引っかかるおそれもある。
【0005】
本発明の目的の一つは、衝突時の車椅子の損傷を抑制し易い車椅子の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車椅子の固定構造は、
車両のリアフロアに搭載される車椅子と、
前記リアフロアに設けられているストッパー部と、を備え、
前記車椅子は、前記車椅子の幅方向に延びるアンカーバーを有し、
前記ストッパー部は、前記アンカーバーと当接又は係合し、
前記アンカーバーは、前記リアフロアの上に搭載された状態の前記車椅子を側方視した際、前記車椅子の後輪の外周縁の内側、かつ前記後輪の車軸よりも下方に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
上記車椅子の固定構造は、アンカーバーが車椅子の後輪の外周縁の内側、かつ後輪の車軸よりも下方に設けられていることで、アンカーバーが車椅子の前輪と後輪との間に設けられている上記特許文献1の車椅子固定構造に比較して、車両の前面衝突時の荷重を車椅子の後輪にも作用させ易い。即ち、上記車椅子の固定構造は、前面衝突時、車椅子の前輪に大きな荷重が作用することを抑制し易い。そのため、上記車椅子の固定構造は、前面衝突時、車椅子の前輪の損傷を抑制し易い。よって、上記車椅子の固定構造は、車椅子の前輪を補強するための部材を別途設ける必要がない。その上、上記車椅子の固定構造は、アンカーバーが車椅子の後輪の外周縁の内側に設けられていることで、アンカーバーが車椅子の前輪と後輪との間に設けられている上記特許文献1とは異なり、アンカーバーよりも先に後輪を段差に接触させられる。後輪が段差を乗り越えると、アンカーバーは後輪の外周縁の内側にあることで段差に接触することがない。そのため、上記車椅子の固定構造は、車椅子が段差を乗り越える際、アンカーバーが段差に引っ掛かり難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車椅子の固定構造を車両の左方向から見た側面図である。
図2図2は、実施形態に係る車椅子の固定構造に備わる車椅子の概略を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る車椅子の固定構造に備わるストッパー部の概略を示す模式図である。
図4図4は、実施形態に係る車椅子の固定構造に備わるスライド機構の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から図4を参照して、本発明の車椅子の固定構造の実施形態を説明する。図中の「FR」は実施形態に係る車椅子の固定構造1を備える車両100の前方、「RR」は車両100の後方、「UP」は車両100の上方、「LWR」は車両100の下方を示す。
【0010】
《実施形態》
〔車椅子の固定構造〕
図1に示す実施形態に係る車椅子の固定構造1は、車椅子10を備える。車椅子10は、車両100のリアフロア110に搭載される。本形態の車椅子の固定構造1の特徴の一つは、以下の要件(A)及び要件(B)を満たすことにある。
(A)車椅子10は、図1及び図2に示すように、特定の位置に設けられるアンカーバー14を有する。
(B)車椅子の固定構造1は、図1に示すように、リアフロア110に設けられているストッパー部3を備える。ストッパー部3は、アンカーバー14と当接又は係合する。
以下、各構成を詳細に説明する。本形態では、車椅子の固定構造1が更に電動ウインチ2を備える場合を例に説明する。
【0011】
[車椅子]
車椅子10は、左右のフレーム11と左右の前輪12と左右の後輪13とアンカーバー14とを備える。図1,2では、説明の便宜上、後輪13のスポークの図示を省略している。両フレーム11には、図2に示すように、シート151、バックサポート152、レッグサポート153、フットサポート154、ハンドル155が設けられる。両フレーム11には、図示しないアームサポートも設けられる。
【0012】
各フレーム11は、図1に示すように、前片11f、後片11r、上片11u、及び下片11dを有する。前片11fは、車椅子10の前方側に設けられている。前片11fは、上下方向に延びている。後片11rは、車椅子10の後方側に設けられている。後片11rは、上下方向に延びている。上片11uは、車椅子10の上方側に設けられている。上片11uは、前後方向に延びている。下片11dは、車椅子10の下方側に設けられている。下片11dは、前後方向に延びている。上片11uは、前片11fと後片11rとにつながっている。下片11dは、前片11fと後片11rとにつながっている。前片11fの下方に、前輪12が接続されている。前輪12は、補助輪である。後片11rの途中に、後輪13の車軸131が接続されている。図2では、説明の便宜上、後輪13の車軸の図示を省略している。後輪13は、駆動輪である。
【0013】
アンカーバー14は、車椅子10の幅方向に延びている。アンカーバー14は、リアフロア110の上に搭載された状態の車椅子10を側方視した際、後輪13の外周縁の内側、かつ後輪13の車軸131よりも下方に設けられている。後輪13の外周縁とは、後輪13のリムの外周に取り付けられたゴムタイヤの外周縁をいう。
【0014】
アンカーバー14は、車両100の前面衝突時、回動中心となる。アンカーバー14が後輪13の外周縁の内側、かつ後輪13の車軸131よりも下方に設けられている本形態の場合と、アンカーバー14が前輪12と後輪13との間に設けられている従来の場合とを比較する。車椅子10の重心Gは、リアフロア110の上に搭載された状態の車椅子10を側方視した際、後輪13の外周縁の内部であって、車軸131よりも前方上方に位置する。上記従来の場合、前面衝突時、車椅子の前輪は下方へ、後輪は上方への変移しようとし、車椅子の重心が前方上方へ回動する。そのため、車椅子の前輪がリアフロアに押し付けられ、後輪はリアフロアに押し付けられない。よって、車椅子の前輪に大きな荷重が作用する。一方、上記本形態の場合、前面衝突時、上記従来の場合に比較して前輪12だけでなく後輪13も下方へ変移しようとし、車椅子10の重心Gが前方下方へ回動する。そのため、前輪12と後輪13は共にリアフロア110に押し付けられる。よって、前輪12と後輪13とに荷重を分散させ易い。
【0015】
上記荷重を分散させ易くするために、アンカーバー14は、車軸131よりも下方の領域のうち、第一仮想線V1と第二仮想線V2とで囲まれる領域に設けられていることが好ましい。第一仮想線V1は、車軸131を通る直線であって、基準仮想線V0とのなす角が+αとなる直線である。第二仮想線V2は、車軸131を通る直線であって、基準仮想線V0とのなす角が-αとなる直線である。基準仮想線V0は、車軸131を通って鉛直方向に沿う直線である。基準仮想線V0上を0°とする。第一仮想線V1は、基準仮想線V0よりも車両100の前方側に位置する。即ち、プラス角は、基準仮想線V0よりも車両100の前方側の角度をいう。第二仮想線V2は、基準仮想線V0よりも車両100の後方側に位置する。即ち、マイナス角は、基準仮想線V0よりも車両100の後方側の角度をいう。上記角度αは、例えば、60°が挙げられる。上記角度αは、45°が好ましく、更に30°が好ましく、特に15°が好ましい。
【0016】
上記荷重を分散させ易くするために、アンカーバー14は、基準仮想線V0上、又は基準仮想線V0と上記角度αが15°である第二仮想線V2との間の領域に設けられていることが特に好ましい。本形態のアンカーバー14は、基準仮想線V0付近に設けられている。本形態のアンカーバー14は、水平面の上に搭載された状態の車椅子10を側方視した際、基準仮想線V0よりも後方に設けられている。アンカーバー14は、フットサポート154のかかとよりも下方に位置していることが好ましい。
【0017】
本形態のアンカーバー14は、図2に示すように、フレーム11にブラケット14bを介して固定されている。図1では説明の便宜上、ブラケット14bの図示を省略している。ブラケット14bは、後片11rと下片11dの接続箇所から下方に延びている。ブラケット14bの下端同士をつなぐように、アンカーバー14が固定されている。フレーム11とブラケット14bとの固定手法、及びブラケット14bとアンカーバー14との固定手法は、溶接など適宜選択できる。本形態とは異なり、アンカーバー14は、フレーム11に直接固定されていてもよい。例えば、後片11rを下片11dよりも下方に伸ばし、その先端同士をつなぐようにアンカーバー14が固定されていてもよい。
【0018】
[電動ウインチ]
電動ウインチ2は、図1に示すように、車椅子10を車両100の前方へ引っ張る。そのため、電動ウインチ2は、車椅子10の後退を防止できる。電動ウインチ2の数は2つである。2つの電動ウインチ2は、リアフロア110の前方側の左右に設けられている。各電動ウインチ2は、公知の構成が利用できる。各電動ウインチ2は、例えば、巻取装置21とロック機構とベルト22とフック23とを備える。ロック機構の図示は省略している。
【0019】
巻取装置21は、ベルト22を巻き取る。巻取装置21によるベルト22の巻き取りは、図示しないリモートコントローラーで操作できる。ロック機構は、ベルト22が繰り出されることを防止する。ロック機構は、例えば、ラチェット機構が利用できる。このロック機構は、上記リモートコントローラーによって解除できる。具体的には、上記リモートコントローラーによって解除操作された際、一旦ベルト22を巻き取る方向に巻取装置21が回転することで、ラチェット機構の歯止めと歯車との係止が解除されて、歯止めが歯車から離れる。そのため、ベルト22の繰り出しが可能になる。ベルト22は、巻取装置21につながっている。フック23は、ベルト22の先端に設けられている。フック23は、フレーム11に引っ掛けられる。
【0020】
[ストッパー部]
ストッパー部3は、アンカーバー14の前進を防止する。アンカーバー14の前進が防止されることで、車椅子10の前進が防止される。ストッパー部3は、リアフロア110に設けられている。リアフロア110に設けられているとは、リアフロア110に直接取り付けられている場合と、他の部材を介して間接的に取り付けられている場合とを含む。本形態では、ストッパー部3は、後述するスライド機構4を介して間接的にリアフロア110に取り付けられている。本形態とは異なり、ストッパー部3は、リアフロア110に直接取り付けられている場合、リアフロア110に対して移動しないように固定される。
【0021】
ストッパー部3は、図3に示すように、当接部30を有する。当接部30は、図3(d)に示すように、前進してきたアンカーバー14と当接する。この当接によって、車椅子10の前進が規制される。本形態のストッパー部3は、図3(a)に示すように、前方側から後方側に向かって順に、基部31、第一回動部32、第一本体部33、第二回動部34、及び第二本体部35を備える。本形態では、第一本体部33が当接部30を有する。
【0022】
基部31は、本形態では、図4を参照して後述するスライダー41に接続されている。基部31は、本形態とは異なり、リアフロア110に直接取り付けられていてもよい。第一回動部32は、基部31に対して第一本体部33を上下方向に回動自在に接続している。第一本体部33は、平板状に構成されている。第一本体部33の下面に当接部30が設けられている。第一回動部32による第一本体部33の回動範囲は、例えば、図3(a)に示す第一位置と図3(d)に示す第二位置との間である。第一位置とは、基部31の上面に平行な位置である。第二位置とは、第一本体部33と基部31の上面とのなす角が90°未満となる位置である。第二位置は、上記なす角が60°以下、更に45°以下、特に30°以下となる位置であることが好ましい。
【0023】
第二回動部34は、第一本体部33に対して第二本体部35を上下方向に回動自在に接続している。第二本体部35は、屈曲した板状に構成されている。第二本体部35の下面は、前後方向の途中から後端に向かって上方へ傾斜する傾斜面351を有する。この傾斜面351は、アンカーバー14を第一本体部33の当接部30にガイドする。第二回動部34による第二本体部35の回動範囲は、図3(a)に示す第一位置と図3(d)に示す第二位置との間である。第一位置は、第一本体部33の上面と第二本体部35の上面とが面一となる位置である。第二位置は、第一本体部33の当接部30にアンカーバー14が当接した際、第二本体部35の後端が前端よりも下方になる位置である。
【0024】
アンカーバー14の当接前の状態において、傾斜面351の後端の高さは、アンカーバー14の高さよりも高い。傾斜面351の後端の高さ、即ち第二本体部35の後端の高さは、フットサポート154のかかとの高さよりも低いことが好ましい。フットサポート154はアンカーバー14よりも前方に位置する。そのため、アンカーバー14が当接部30に当接する前に、フットサポート154がストッパー部3の上方を通過する必要がある。第二本体部35の後端の高さがフットサポート154のかかとの高さよりも低ければ、フットサポート154がストッパー部3に引っ掛からないように車椅子10の前方側を上方に持ち上げなくてもよい。そのため、アンカーバー14の当接部30への当接作業が行い易い。
【0025】
[スライド機構]
本形態の車椅子の固定構造1は、図4に示すスライド機構4を備えていることが好ましいものの、このスライド機構4を備えていなくてもよい。スライド機構4は、ストッパー部3を車両100の前後方向にスライド自在に支持する。スライド機構4は、リアフロア110に設けられている。本形態のスライド機構4は、スライダー41とレール42とワイヤー43と巻取機構44とロック機構45とロック解除機構46とを備える。図4では、説明の便宜上、巻取機構44とロック機構45の図示は簡略化している。なお、スライド機構4は、ワイヤー43の代わりにベルトを備えていてもよい。
【0026】
スライダー41は、レール42に対してスライドする。このスライダー41にストッパー部3の基部31が接続されている。レール42は、車両100の前後方向に沿って設けられている。ワイヤー43は、スライダー41と巻取機構44とを接続している。巻取機構44は、ワイヤー43を巻き取る。巻取機構44は、公知の構成が利用できる。巻取機構44の内部構造は、図示を省略するものの、例えば、プーリーと巻取バネとを備える構成が採用できる。ロック機構45は、ワイヤー43が繰り出されることを防止する。そのため、ロック機構45は、スライダー41の前進を防止できる。ロック機構45は、図示を省略するものの、例えば、ラチェット機構が利用できる。ロック解除機構46は、ロック機構45のロックを解除する。この解除により、ワイヤー43の繰り出しが可能になる。ロック解除機構46は、ラチェット機構の歯止めと歯車との係止を解除して、歯止めを歯車から離す。このロック解除機構46により、スライダー41が前進可能になる。巻取機構44の代わりに、バネ張力を利用した引き出し構造などを採用することもできる。
【0027】
[車椅子の固定の手順]
電動ウインチ2によって前方へ引っ張られることで荷室内に入った車椅子10が前進すると、図3(a)に示すように、アンカーバー14がストッパー部3の傾斜面351に接触する。アンカーバー14が更に前進すると、図3(b)に示すように、第一回動部32を回動軸として第一本体部33及び第二本体部35が上方へ回動する。アンカーバー14が更に前進して図3(c)に示すようにアンカーバー14が第二回動部34よりも前進すると、第二回動部34を回動軸として第二本体部35が下方へ回動する。アンカーバー14が更に前進すると、図3(d)に示すように、アンカーバー14が当接部30に当接する。第二本体部35は、更に下方へ回動する。第二本体部35が下方へ回動することで、ストッパー部3が第二回動部34を備えていない場合に比較して、アンカーバー14が当接部30に当接した状態において、ストッパー部3の高さを低くし易い。
【0028】
車椅子10の固定位置を調整したい場合、次の手順を経る。図4に示すロック解除機構46を動作させることで、ロック機構45のロックを解除する。車椅子10を前進させることで、アンカーバー14によって当接部30を前方側に向かって押す。車椅子10の固定位置が所望の位置となるまで、スライダー41を前進させる。車椅子10の固定位置が所望の位置になったら、ロック解除機構46の動作を解除させることで、ロック機構45のロックが掛かり、スライダー41の前進を停止させることができる。
【0029】
[車椅子の固定解除の手順]
リモートコントローラーの解除操作によって電動ウインチ2のロック機構のロックを解除する。アンカーバー14は当接部30に当接しているだけなので、車椅子10を後方へ移動させるだけでよい。
【0030】
仮に、リモートコントローラーの不作動などにより、解除操作によってロックが解除されない場合、次の手順を経る。スライド機構4のロック解除機構46を動作させて、車椅子10を前進させる。車椅子10の前進によってベルト22を弛めることができるので、フック23を車椅子10のフレーム11から外すことができる。そして、車椅子10を後退させる。
【0031】
〔作用効果〕
車椅子の固定構造1は、アンカーバー14が車椅子10の後輪13の外周縁の内側、かつ後輪13の車軸131の鉛直下方付近に設けられていることで、アンカーバー14が車椅子10の前輪12と後輪13との間に設けられている場合に比較して、車両100の前面衝突時の荷重を車椅子10の後輪13にも作用させ易い。即ち、車椅子の固定構造1は、前面衝突時、車椅子10の前輪12に大きな荷重が作用することを抑制し易い。そのため、車椅子の固定構造1は、前面衝突時、前輪12の損傷を抑制し易い。よって、車椅子の固定構造1は、前輪12を補強するための部材を別途設ける必要がない。その上、車椅子の固定構造1は、アンカーバー14が後輪13の外周縁の内側に設けられていることで、アンカーバー14よりも先に後輪13を段差に接触させられる。後輪13が段差を乗り越えると、アンカーバー14は後輪13の外周縁の内側にあることで段差に接触することがない。そのため、車椅子の固定構造1は、車椅子10が段差を乗り越える際、アンカーバー14が段差に引っ掛かり難い。
【0032】
車椅子の固定構造1は、電動ウインチ2を備えることで、車椅子10の後退を防止できる。車椅子の固定構造1は、ストッパー部3を備えることで、車椅子10の前進を防止できる。そのため、車椅子の固定構造1は、リアフロア110に車椅子10を固定できる。車椅子の固定構造1は、アンカーバー14がストッパー部3の当接部30に当接するだけで、車椅子10の前進を防止できる。よって、車椅子の固定構造1は、車椅子10をリアフロア110に容易にかつ確実に固定できる。その上、車椅子の固定構造1は、アンカーバー14が当接部30に当接しているだけなので、電動ウインチ2のロック機構のロックを解除して車椅子10を後方へ移動させるだけで、車椅子10の固定を解除できる。
【0033】
車椅子の固定構造1は、スライド機構4を備えることで、ストッパー部3の位置を変えられる。即ち、車椅子の固定構造1は、車椅子10の固定箇所を微調整できる。よって、車椅子の固定構造1は、使い勝手が良い。特に、車椅子の固定構造1は、リモートコントローラーの解除操作によって電動ウインチ2のロック機構のロックが解除されない場合であっても、スライド機構4によってフック23を車椅子10のフレーム11から外すことができるため、車椅子10の固定を解除できる。
【0034】
《付記》
以上説明した本発明の実施形態に関連して、更に以下の付記を開示する。
【0035】
〔付記1〕
車両のリアフロアに搭載される車椅子の前記車両の前方への移動を規制するように前記リアフロアに設けられているストッパー部を備え、
前記車椅子は、前記車椅子の幅方向に延びるアンカーバーを有し、
前記アンカーバーは、前記リアフロアの上に搭載された状態の前記車椅子を側方視した際、前記車椅子の後輪の外周縁の内側、かつ前記後輪の車軸よりも下方に設けられており、
前記ストッパー部は、前記アンカーバーと当接又は係合する、
車両構造。
【0036】
上記付記1の車両構造は、上述した本発明の一態様に係る車椅子の固定構造と同様の効果を奏することができる。
【0037】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0038】
例えば、ストッパー部は、係合部を有していてもよい。係合部は、アンカーバーの外周面の上方側から後方側を介して下方側にわたって引っ掛かる。係合部は、湾曲状に構成されることが挙げられる。湾曲状の係合部は、当接部の後方につながるように設けられることが挙げられる。係合部を有する場合、車椅子の固定を解除する際、ストッパー部を上方に引き上げることで、アンカーバーと係合部との係合を解除する。車椅子の固定構造は、ストッパー部が係合部を有する場合、電動ウインチを備えていなくてもよい。
【0039】
ストッパー部は、例えば、L字状の部材で構成されていてもよい。L字状のストッパー部は、上下方向に延びる縦片と縦片の上端から車両の後方に延びる横片とで構成されていることが挙げられる。L字状のストッパー部は、リアフロア上に常時突出した状態となるように設けられていてもよいし、リアフロア上に出し入れ自在に設けられていてもよい。
【0040】
アンカーバーは、車椅子のフレームに対して着脱自在であってもよい。例えば、ねじ止め式又はクイックレバー式のクランプが取り付けられたブラケットが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1 車椅子の固定構造
10 車椅子
11 フレーム
11f 前片、11r 後片、11u 上片、11d 下片
12 前輪、13 後輪、131 車軸
14 アンカーバー、14b ブラケット
151 シート、152 バックサポート、153 レッグサポート
154 フットサポート、155 ハンドル
2 電動ウインチ
21 巻取装置、22 ベルト、23 フック
3 ストッパー部
30 当接部、31 基部
32 第一回動部、33 第一本体部、34 第二回動部
35 第二本体部、351 傾斜面
4 スライド機構
41 スライダー、42 レール、43 ワイヤー
44 巻取機構、45 ロック機構、46 ロック解除機構
100 車両、110 リアフロア
G 重心
V0 基準仮想線、V1 第一仮想線、V2 第二仮想線
α 角度
図1
図2
図3
図4