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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165129
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/08 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A61G3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070358
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】大和 誠歩
(57)【要約】
【課題】車椅子の種類によらず車椅子をリアフロアに固定できる車両を提供する。
【解決手段】車椅子を搭載するリアフロアを備える車両であって、前記車椅子に備わるフレームの一部に当接又は係合し、前記リアフロアにおける前記車椅子の前方への移動を規制するストッパー部と、前記リアフロアにおける前記車椅子の前方への移動を規制するアンカーベルトとを着脱自在に支持するアンカー部を備える車両。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子を搭載するリアフロアを備える車両であって、
前記車椅子に備わるフレームの一部に当接又は係合し、前記リアフロアにおける前記車椅子の前方への移動を規制するストッパー部と、
前記リアフロアにおける前記車椅子の前方への移動を規制するアンカーベルトとを着脱自在に支持するアンカー部を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を搭載可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を搭載可能な車両として、例えば特許文献1に記載される車両が挙げられる。特許文献1の車両は、車椅子を固定するフック装置を備える。フック装置は、車両フロアに設けられており、車椅子のアンカーバーに係合する。アンカーバーは、車椅子のフレームの一部であって、車椅子の幅方向に延びる。特許文献1では、アンカーバーは、車椅子の後輪である主輪と前輪である補助輪との間に設けられている。フック装置は、フックプレートを有する。フックプレートの前端部を回動軸として、フックプレートの後端部が車室フロアに対して上下方向に揺動自在に支持されている。このフックプレートの後端部には、アンカーバーと係止されるフック部が設けられている。
【0003】
特許文献1では、車椅子を前進させてアンカーバーがフックプレートの後端に当たると、アンカーバーがフックプレートの後端部を押し上げる。更に車椅子が前進すると、フックプレートの後端部が下方向に揺動し、アンカーバーがフックプレートのフック部に係止される。このように、特許文献1では、車椅子を前進させるだけで車椅子が車室フロアに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-134243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンカーバーを備えない車椅子も存在する。そのため、車椅子の種類によらず車椅子をリアフロアに固定できる車両が求められている。
【0006】
本発明の目的の一つは、車椅子の種類によらず車椅子をリアフロアに固定できる車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両は、車椅子を搭載するリアフロアを備える車両であって、前記車椅子に備わるフレームの一部に当接又は係合し、前記リアフロアにおける前記車椅子の前方への移動を規制するストッパー部と、前記リアフロアにおける前記車椅子の前方への移動を規制するアンカーベルトとを着脱自在に支持するアンカー部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、種々のタイプの車椅子の固定に簡易に対応できる。例えば、アンカーバーを備える車椅子が車両に搭載される場合、アンカー部にストッパー部が取り付けられる。アンカーバーがストッパー部に当接又は係合されることで、車椅子の前進が防止される。従って、上記車両では、アンカーバーを備える車椅子をリアフロアに固定できる。アンカーバーを備えない車椅子が車両に搭載される場合、アンカー部にアンカーベルトが取り付けられる。アンカーベルトは、ベルトとフックとを備える車椅子の固定具である。アンカーベルトのフックを車椅子の後方側から車椅子のフレームに引っ掛けることで、車椅子の前進が防止される。従って、上記車両では、アンカーバーを備えない車椅子であってもリアフロアに固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る車両においてストッパー部によって車椅子を固定した状態を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態に係る車両に搭載される車椅子の概略斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る車両に備わるストッパー部の模式図である。
図4図4は、実施形態に係る車両に備わるスライド機構の模式図である。
図5図5は、実施形態に係る車両においてアンカーベルトによって車椅子を固定した状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図5を参照して、本発明の車両の実施形態を説明する。図中の「FR」は実施形態に係る車両1の前方、「RR」は車両1の後方、「UP」は車両1の上方、「LWR」は車両1の下方を示す。なお、本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
《実施形態1》
〔車両〕
図1に示す実施形態に係る車両1は、リアフロア9に車椅子10を搭載可能な車両1である。本例の車両1は、車椅子10をしっかりと固定するための構成として、電動ウインチ2とストッパー部3とアンカー部5とを備える。以下、車両1に搭載される車椅子10の構成を説明し、次いで本例の車両1の各構成を詳細に説明する。
【0012】
[車椅子]
車椅子10は、左右のフレーム11と左右の前輪12と左右の後輪13とアンカーバー14とを備える。両フレーム11には、図2に示すように、シート151、バックサポート152、レッグサポート153、フットサポート154、ハンドル155が設けられる。両フレーム11には、図示しないアームサポートも設けられる。後輪13の車軸131とスポークの図示は省略されている。
【0013】
各フレーム11は、図1に示すように、前片11f、後片11r、上片11u、及び下片11dを有する。前片11fは、車椅子10の前方側に設けられている。前片11fは、上下方に延びている。後片11rは、車椅子10の後方側に設けられている。後片11rは、上下方向に延びている。上片11uは、車椅子10の上方側に設けられている。上片11uは、前後方向に延びている。下片11dは、車椅子10の下方側に設けられている。下片11dは、前後方向に延びている。上片11uは、前片11fと後片11rとにつながっている。下片11dは、前片11fと後片11rとにつながっている。前片11fの下方に、前輪12が接続されている。前輪12は、補助輪である。後片11rの途中に、後輪13の車軸131が接続されている。後輪13は、駆動輪である。
【0014】
アンカーバー14は、フレーム11にブラケット14bを介して固定されている。本例のアンカーバー14は、リアフロア9の上に搭載された状態の車椅子10を側方視した際、後輪13の内側、かつ後輪13の車軸131よりも下方に設けられている。後輪13の内側とは、後輪13のゴムタイヤの外周縁の内側をいう。アンカーバー14は、車椅子10のフレーム11に対して着脱自在であってもよい。
【0015】
本例の車両1に搭載される車椅子10は、後述する図5に示されるように、アンカーバーを備えない車椅子10でも良い。
【0016】
[電動ウインチ]
本例の車両1に備わる電動ウインチ2は、図1に示すように、車椅子10を車両1の前方へ引っ張る装置である。本例の車両1では、リアフロア9の前方側における左側と右側とにそれぞれ電動ウインチ2がひとつずつ設けられている。電動ウインチ2は、公知の構成が利用できる。電動ウインチ2は、例えば、巻取装置21とロック機構とベルト22とフック23とを備える。ロック機構の図示は省略している。
【0017】
巻取装置21は、ベルト22を巻き取る。巻取装置21によるベルト22の巻き取りは、図示しないリモートコントローラーで操作できる。ロック機構は、ベルト22が繰り出されることを防止する。ロック機構は、例えば、ラチェット機構が利用できる。このロック機構は、上記リモートコントローラーによって解除できる。具体的には、上記リモートコントローラーによって解除操作された際、一旦ベルト22を巻き取る方向に巻取装置21が回転することで、ラチェット機構の歯止めと歯車との係止が解除されて、歯止めが歯車から離れる。そのため、ベルト22の繰り出しが可能になる。ベルト22は、巻取装置21につながっている。フック23は、ベルト22の先端に設けられている。フック23は、フレーム11に引っ掛けられる。そのため、車椅子10を車両1の前方に引っ張る電動ウインチ2は、車椅子10の後退を防止する役割も担っている。
【0018】
[ストッパー部]
ストッパー部3は、アンカーバー14の前進を防止する。アンカーバー14の前進が防止されることで、車椅子10の前進が防止される。ストッパー部3は、後述するスライド機構4(図3)を介してリアフロア9に設けられている。ストッパー部3は、リアフロア9上に常時突出した状態となるように設けられていてもよいし、リアフロア9上に出し入れ自在に設けられていてもよい。
【0019】
本例のストッパー部3は、図3に示されるように、基部31と本体部32とを備える。本例の基部31は、スライダー41に対して着脱自在に構成されている。基部31は、本体部32を支持する部材である。スライダー41に対する基部31を着脱自在にする構成は特に限定されない。例えば、基部31をスライダー41にねじ止めする構成が挙げられる。その他、基部31の下部に設けられるタン(tongue)と、スライダー41に設けられるロック機構とで、スライダー41に対して基部31が着脱自在に構成されていても良い。
【0020】
本例の本体部32は、側方視で概略逆L字型、上面視で概略U字型となっている。本体部32は、左右一対の縦片32Aと、左右一対の横片32Bと、一つのクロス片32Cとを備える。図3では、車両1の左側の縦片32A及び横片32Bのみが見えている。縦片32Aは、基部31から上方に延びる棒状体である。横片32Bは、縦片32Aの上端から車両1の後方に延びる棒状体である。縦片32Aと横片32Bとのつなぎ目は丸みを帯びている。縦片32Aと横片32Bとの内角部分が、アンカーバー14を当て止めする当止部30を構成する。クロス片32Cは、車幅方向の離れた位置に配置される二つの横片32B,32Bの後端同士をつなぐ棒状体である。クロス片32Cは、左右の横片32B,32Bをつなぐことで本体部32を補強している。
【0021】
ここで、本体部32の形状は、アンカーバー14を当接、又は係合できる構成であれば特に限定されない。例えば、回動角度が90°以下に制限されたフラップ式の本体部32や、回動可能に構成されたフック式の本体部32などが挙げられる。フック式の本体部32はアンカーバー14が係合する係合凹部を有することが好ましい。本体部32が係合凹部を有する場合、電動ウインチ2はなくてもかまわない。これらの構成は回動軸を備える比較的複雑な機構を備える。これに対して、本例の本体部32は回動軸などを備えない簡単な構成であるため、ストッパー部3のコストや取付作業の容易さの点で本例の車両1は生産性に優れる。
【0022】
[スライド機構]
本例の車両1は、ストッパー部3の車両前後方向の位置を変化させるスライド機構4を備えている。スライド機構4は必須ではない。その場合、ストッパー部3はリアフロア9に対して移動しないように固定される。
【0023】
スライド機構4は、ストッパー部3を車両1の前後方向にスライド自在に支持する。スライド機構4は、リアフロア9に設けられている。スライド機構4は、スライダー41とレール42とワイヤー43と巻取機構44とロック機構45とロック解除機構46とを備える。図3では、説明の便宜上、巻取機構44とロック機構45の図示は簡略化している。なお、スライド機構4は、ワイヤー43の代わりにベルトを備えていてもよい。
【0024】
スライダー41は、レール42に対してスライドする。このスライダー41にストッパー部3の基部31が着脱自在に接続されている。レール42は、車両1の前後方向に沿って設けられている。ワイヤー43は、スライダー41と巻取機構44とを接続している。巻取機構44は、ワイヤー43を巻き取る。巻取機構44は、公知の構成が利用できる。巻取機構44は、図示を省略するものの、例えば、プーリーと巻取バネとを備える構成が採用できる。ロック機構45は、ワイヤー43が繰り出されることを防止する。そのため、ロック機構45は、スライダー41の前進を防止できる。ロック機構45は、図示を省略するものの、例えば、ラチェット機構が利用できる。ロック解除機構46は、ロック機構45のロックを解除する。この解除により、ワイヤー43の繰り出しが可能になる。ロック解除機構46は、ラチェット機構の歯止めと歯車との係止を解除して、歯止めを歯車から離す。このロック解除機構46により、スライダー41が前進可能になる。巻取機構44の代わりに、バネ張力を利用した引き戻し構造などを採用することもできる。
【0025】
[アンカー部]
上述した本例のスライダー41は、アンカー部5を兼ねている。アンカー部5は、ストッパー部3と、図5に示されるアンカーベルト6とを着脱自在に支持する構成である。図5には、図4のストッパー部3がスライダー41から取り外され、アンカーベルト6がスライダー41に取り付けられた状態が示されている。
【0026】
アンカーベルト6は、基部61と、連結ベルト62と、連結金具63と、二つのベルト64と、二つのフック65とを備える。基部61は、スライダー41に対して着脱自在に構成されている。スライダー41に対して基部61を着脱自在にする構成は、スライダー41に対してストッパー部3の基部31を着脱自在にする構成と同じである。
【0027】
連結ベルト62は、基部61に連結金具63を連結する。連結金具63は略三角形状の環状金具である。連結金具63の一辺に連結ベルト62が取り付けられている。連結金具63の残りの二辺のそれぞれにベルト64が取り付けられている。各ベルト64の先端にはフック65が取り付けられている。ベルト64は一つでも構わない。その場合、ベルト64が基部61に設けられていても良い。
【0028】
[車椅子の第一の固定手順]
アンカーバー14を備える車椅子10をリアフロア9に固定する手順を図1に基づいて説明する。まず、車椅子10のフレーム11に電動ウインチ2のフック23を引っ掛ける。巻取装置21を動作させると、車椅子10が車室内を前進する。車椅子10のアンカーバー14がストッパー部3に当て止めされると、車椅子10の前進が停止する。車椅子10は、電動ウインチ2とストッパー部3とによって前後から引っ張られた状態になるので、車椅子10がリアフロア9にしっかりと固定される。このように、本例の車両1では、アンカーバー14を備える車椅子10を電動ウインチ2で引っ張るだけで、車椅子10をリアフロア9に固定できる。
【0029】
ここで、リアフロア9における車椅子10の固定位置を調整したい場合、次の手順を経る。図3に示すロック解除機構46を動作させ、ロック機構45のロックを解除する。その状態で車椅子10を前進させると、アンカーバー14がストッパー部3を前方側に向かって押す。車椅子10が所望の位置に移動したら、ロック解除機構46の動作を解除させることで、ロック機構45のロックが掛かり、スライダー41の前進を停止させることができる。
【0030】
[車椅子の固定解除の手順]
リモートコントローラーの解除操作によって電動ウインチ2のロック機構のロックを解除する。アンカーバー14はストッパー部3の当止部30に当て止めされているだけなので、車椅子10を後方へ移動させるだけで、車椅子10を車両1から降ろすことができる。
【0031】
ここで、リモートコントローラーの解除操作によって電動ウインチ2のロック機構のロックが解除されない場合、次の手順を経る。スライド機構4のロック解除機構46を動作させて、車椅子10を前進させる。車椅子10の前進によってベルト22(図1)を弛めることができるので、フック23(図1)を車椅子10のフレーム11から外すことができる。そして、車椅子10を後退させることで、車椅子10を車両1から降ろすことができる。
【0032】
[車椅子の第二の固定手順]
アンカーバー14を備えない車椅子10をリアフロア9に固定する手順を図5に基づいて説明する。まず、図3に示されるストッパー部3をアンカー部5から取り外し、図4に示されるアンカーベルト6をアンカー部5に取り付ける。電動ウインチ2によって車椅子10を引っ張り、車椅子10をリアフロア9に乗せる。アンカーベルト6のフック65を下片11dと後片11rとのつなぎ目に引っ掛ける。そして、アンカーベルト6に張力がかかった状態となるまで、電動ウインチ2で更に車椅子10を引っ張る。車椅子10は、電動ウインチ2とアンカーベルト6とによって前後から引っ張られた状態になるので、車椅子10がリアフロア9にしっかりと固定される。
【0033】
本例の車両1では、ストッパー部3とアンカーベルト6とが付け替え自在に構成されている。上記第一の固定手順と第二の固定手順に示されるように、車椅子10の種類によってストッパー部3とアンカーベルト6とを付け替えることで、車椅子10の種類によらず車椅子10をしっかりとリアフロア9に固定することができる。従って、本例の車両1によれば、種々のタイプの車椅子10の固定に簡易に対応できる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
10 車椅子
11 フレーム、11d 下片、11f 前片、11r 後片、11u 上片
12 前輪、13 後輪、131 車軸
14 アンカーバー、14b ブラケット
151 シート、152 バックサポート、153 レッグサポート
154 フットサポート、155 ハンドル
2 電動ウインチ
21 巻取装置、22 ベルト、23 フック
3 ストッパー部
30 当止部、31 基部、32 本体部、32A 縦片、32B 横片、32C クロス片
4 スライド機構
41 スライダー、42 レール、43 ワイヤー、44 巻取機構
45 ロック機構、46 ロック解除機構
5 アンカー部
6 アンカーベルト
61 基部、62 連結ベルト、63 連結金具、64 ベルト、65 フック
9 リアフロア
図1
図2
図3
図4
図5