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特開2022-165173PIN入力を活用した生体認証機能を有するICカード
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  • 特開-PIN入力を活用した生体認証機能を有するICカード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165173
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】PIN入力を活用した生体認証機能を有するICカード
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/34 20130101AFI20221024BHJP
   G06F 21/32 20130101ALI20221024BHJP
【FI】
G06F21/34
G06F21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070414
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 康豊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 之治
(57)【要約】
【課題】現行システムの外部インターフェースをそのまま活用し、生体認証機能付きICカード所有者が本人確認をPIN入力で行うか生体情報認証で行うかを自由に選択できる手段を提供する。
【解決手段】利用に際して認証手段の選択手段を備えた生体認証機能付きICカードであって、カードがセットされた決済端末からの本人確認のためのPIN照会コマンドに際し、決済端末に入力されたPINが予め指定したPINとして設定できない特定の番号であった場合には、カード上の生体情報取得手段によって取得された生体情報とカードに格納されたカード所有者の生体情報を照合することで本人確認を行う手段と、決済端末に入力されたPINが前記特定の番号以外であった場合には、そのまま既存のPIN照合手順を用いて入力されたPINとカードに格納されたPINとを照合することで本人確認を行う手段とを有することを特徴とする生体認証機能付きICカード。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体認証機能付きICカードの利用に際して認証手段の選択手段を備えた生体認証機能付きICカードであって、
前記ICカードがセットされたICカード決済端末からの本人確認のためのPIN照会コマンドに際して、
前記ICカード決済端末に入力されたPINが、予め指定したPINとして設定できない特定の番号であった場合には、該ICカードに具備された生体情報取得手段によって取得された生体情報と該カードに格納された該カード所有者の生体情報を照合することで本人確認を行う手段と、
前記ICカード決済端末に入力されたPINが、予め指定したPINとして設定できない特定の番号以外であった場合には、そのまま既存のPIN照合手順を用いて前記入力されたPINと該カードに格納されたPINとを照合することで本人確認を行う手段とを有することを特徴とする生体認証機能付きICカード。
【請求項2】
前記生体認証機能が指紋認証機能であることを特徴とする請求項1に記載の生体認証機能付きICカード。
【請求項3】
前記予め指定したPINとして設定できない特定の番号が「0000」であることを特徴とする請求項1または2に記載の生体認証機能付きICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体認証機能付きICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、デビットカード、クレジットカードなどのICカードの利用における本人確認は、主に4桁から6桁の数字からなる暗証番号(以下PIN:Personal Identification Number)によるものが主流であるため、番号を記憶することの煩雑さや番号を盗用される危険性に課題があった。
【0003】
それに対して利用者固有の生体情報、例えば指紋など、を取得する機能を有したICカードによって、カード利用時の本人確認についての利便性と安全性を高める技術が提案されている(下記特許文献1)。
【0004】
しかし前記特許文献1の技術においては、店舗窓口等に設置されている決済端末は従来のPINによる本人確認のシステムにも対応しているため、PINと生体情報の両方の認証手順を踏まねばならない場合があり、その煩雑さが課題であった。
【0005】
それに対して、決済端末でのPINによる本人確認を省略し、手順の煩雑さを回避する技術も提案されている。(下記特許文献2)。
【0006】
しかし前記特許文献2の技術においては、生体情報による認証手順が必須のものとなっており、そのための専用機器も必要であることから、認証や決済を含めた全体のシステムを改修しなければならず、手間とコストがかかる。この初期投資の障壁から、生体情報認証による利用の普及が進まないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-133491号公報
【特許文献2】特開2007-323229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前記のような課題に対処するためになされたものであって、現行のシステムの外部インターフェースをそのまま活用し、生体認証機能付きICカード所有者が本人確認をPIN入力で行うか、生体情報認証で行うかを自由に選択できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、生体認証機能付きICカードの利用に際して認証手段の選択手段を備えた生体認証機能付きICカードであって、
前記ICカードがセットされたICカード決済端末からの本人確認のためのPIN照会コマンドに際して、
前記ICカード決済端末に入力されたPINが、予め指定したPINとして設定できない特定の番号であった場合には、該ICカードに具備された生体情報取得手段によって取得された生体情報と該カードに格納された該カード所有者の生体情報を照合することで本人確認を行う手段と、
前記ICカード決済端末に入力されたPINが、予め指定したPINとして設定できない特定の番号以外であった場合には、そのまま既存のPIN照合手順を用いて前記入力されたPINと該カードに格納されたPINとを照合することで本人確認を行う手段とを有することを特徴とする生体認証機能付きICカードである。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、前記生体認証機能が指紋認証機能であることを特徴とする請求項1に記載の生体認証機能付きICカードである。
【0011】
また請求項3に記載の発明は、前記予め指定したPINとして設定できない特定の番号が「0000」であることを特徴とする請求項1または2に記載の生体認証機能付きICカードである。
【発明の効果】
【0012】
本人確認は、PIN認証または生体認証の別に関わらずICカード決済端末側から見て、PINを入力してICカードから認証成否の回答を得る手順のみであることから、決済端末や決済システム側には何ら変更を加えることなく認証の手順を進めることができ、生体認証の初期導入コストを抑えることが可能となる。
【0013】
利用者は、状況に応じてPIN認証または生体認証のいずれか片方を選択することができ、生体認証が行い難い状況、例えば生体情報として指紋を用いる際に手袋を外さなければならない状況や、手荒れのため指紋が読み取り難い状況などにおいてはPIN認証を選ぶことができるため、利用者の利便性が向上する。
【0014】
以上の特徴から、本人認証手順の利便性が向上し、生体情報認証によるICカードの利用普及促進が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における生体情報登録シーンのイメージ図。
図2】本実施形態における生体情報登録手順のフロー図。
図3】本実施形態で用いるICカードの構成概略図。
図4】本実施形態におけるICカードのICカード決済端末への接続イメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の一実施形態を示す。
【0017】
本発明に供されるICカード100は、例えば図3に示すように、認証に必要な情報を記憶する記憶部110と、生体情報を取得する取得部120と、認証プロセスやデータの処理を行う処理部130と、決済端末などの上位ホストとのデータ通信を行う通信部140からなる。
【0018】
前記処理部130は中央演算処理装置(CPU)であって、ICチップのハードウエア層上にOSを備え、記憶部110に記憶された各種アプレットを、記憶部110、通信部140、取得部120を統合制御して実行する機能を有する。
【0019】
前記記憶部110は各種アプレットのコードや演算処理に必要となるデータまたは結果を記憶する機能を有し、主として高速かつ頻繁な書き換えに対応するRandom Access Memory(RAM)、未給電の状態でもデータを保持し、書き換えの可能なフラッシュメモリなどのElectrically Erasable Programmable Read-Only Memory(EEPROM)、また恒久的に書き換える必要の無いデータを保持するRead Only Memory(ROM)などの
記憶デバイスからなる。
【0020】
前記取得部120は、生体情報、例えば指紋のセンサデバイスであって、利用者の指を一次元センサの場合は接触走査、二次元センサの場合は接触保持することによって、その指紋のパターン特徴を抽出する機能を有するものである。また生体情報はこれに限らず、静脈パターン、虹彩パターンなど、利用者固有のもので、カードに具備されたセンサで取得可能なものであればいずれでも構わない。
【0021】
また図示していないが、ICカードまたは認証プロセスの状態を示す表示部を備えても良い。前記表示部は、単色または複数色の発光デバイス、例えばLEDによって、利用者に視覚情報を与えるものである。表示色、表示時間、表示の変動、その他の視覚的に識別できる情報の組み合わせの遷移によって、利用者にICカードの状態とその変化を知らせる機能を有する。
【0022】
ICカード発行者は利用者300に固有のPINを予め記憶部110に記憶させたICカード100を利用者300に渡し、利用者300はこのICカード100をアクティベートするために、ICカード100に生体情報を登録する。
【0023】
前記アクティベートの手順については説明を省略するが、本発明において該ICカード100は、前記PIN情報および前記生体情報のいずれもが登録された状態、すなわち該PIN情報および該生体情報のいずれもが前記記憶部110に格納された状態のものを用いる。
【0024】
図1に本発明における該ICカード利用シーンのイメージを示す。ICカード利用者300は該カード100をICカード決済端末200にセットする(S1001)。次にICカード決済端末200からのPIN入力要求に応じて、利用者300に固有のPINをICカード決済端末200に入力する(S2005)。或いはPINの代わりに「0000」をICカード決済端末200に入力(S3001)した後、ICカード100に具備された生体情報取得機能である取得部120に対して、利用者300に固有の生体情報を提供する(S3006)。以上が大きな流れとなる。
【0025】
以下に前記ICカード利用シーンにおける手順についてステップS1001からS3010にかけて、図2をもとに詳しく説明する。
【0026】
ステップS1001:カード100を受け取った利用者300は、該カード100を用いて決済を行う際に窓口または店舗のICカード決済端末200に該ICカード100をセットする。
【0027】
図4は、該ICカード100を前記ICカード決済端末200にセットする状況の一例を示すもので、指紋センサによる取得部120を備えた接触型のICカード100をICカード決済端末200のカードスロットに矢印の向きに挿入して決済処理を進めるシーンを表している。該ICカード決済端末200はPINなど必要な情報の入力を受け付けるキーボード201を備えている。ICカード100は必ずしもこの図に示したように接触型である必要はなく、非接触型のICカードとICカード決済端末であっても構わない。
【0028】
ステップS1002:ICカード決済端末200はICカード100がセットされたことを感知すると、該ICカード100に対して給電を開始し、リセットコマンドを通信部140へ送信してICカード100を活性化させるとともに、通常のPIN認証手順に基づいた処理手順を開始する。
【0029】
ステップS1003:ICカード決済端末200は、利用者300にPINの入力を要求する。
【0030】
ステップS2004:利用者300は本人確認をPIN認証で行うか生体情報認証で行うかを選択し、前記ICカード決済端末200に具備された前記キーボード201を介して、PIN認証で行う場合にはPINを入力し(S2005)、生体情報認証で行う場合には前記予め指定したPINとして設定できない特定の番号を入力する(S3001)。
【0031】
「0000」はセキュリティ上の問題から、PINとして設定できない値であることから、利用者300のPINには成り得ないため、以降の説明では「0000」を前記予め指定したPINとして設定できない特定の番号とする。
【0032】
ステップS2006:PINの入力を受け付けたICカード決済端末200は、入力されたPINが利用者300固有のものであるかどうかを確認するため、ICカード100に対してPINのVerifyコマンドを送信する。
【0033】
ステップS2007:通信部140を経て前記PINのVerifyコマンドを受信した処理部130は、ICカード決済端末200から受け取ったPINが「0000」以外であった場合にはPIN認証手順であるステップS2008へ、「0000」であった場合には生体情報認証手順であるステップS3002へそれぞれ進む。
【0034】
以下ステップS2008からS2010と、S3009、S3010がPIN認証の手順となる。
【0035】
ステップS2008:処理部130は、記憶部110に対してICカード300に格納されているPINを要求する。
ステップS2009:記憶部110は格納されているPINを処理部130へ回答する。
【0036】
ステップS2010:処理部130はVerifyコマンドでICカード決済端末200から受け取ったPINと、記憶部110から受け取ったPINを比較し、それらが互いに合致していた場合は通信部140を介して、ICカード決済端末200に対してPIN照合の正常終了を通知する(S3010)。PINが合致しなかった場合はICカード決済端末200に対して通信部140を介してPINの照合失敗を通知する(S3009)。
【0037】
以下ステップS3002からS3008と、S3009、S3010がが生体情報認証の手順となる。
【0038】
ステップS3002:処理部130は取得部120に対して生体情報取得のための読み取り待機状態の要求を出し、取得部120は読み取り待機状態となる(S3003)。
【0039】
ステップS3004:また処理部130は、記憶部110に対してICカード300に格納されている登録生体情報を要求する。
ステップS3005:記憶部110は格納されている登録生体情報を処理部130へ回答する。
【0040】
ステップS3006:利用者300は、ICカード100の取得部120に対して生体情報を提供する。例えば指紋二次元センサの場合、指を該センサに接触保持する。
【0041】
ステップS3007:取得部120はステップS3006で取得した利用者300の生体
情報を処理部130へ通知する。
【0042】
ステップS3008:処理部130は記憶部110から受け取った前記登録生体情報と、取得部120から受け取った前記生体情報を比較し、それらが互いに合致していた場合は通信部140を介して、ICカード決済端末200に対してPIN照合の正常終了を通知する(S3010)。生体情報が合致しなかった場合はICカード決済端末200に対して通信部140を介してPIN照合の失敗という結果として認証の失敗を通知する(S3009)。
【0043】
以上のようにすることで、PIN認証または生体情報認証いずれの場合においても、従来のPIN認証の手順と同様に、決済端末200側からは送信したPINのVerifyコマンドに対する成功または失敗の回答をICカード100から得るに留まることから、決済端末や決済ステム側には何ら変更を加えることなく認証の手順を進めることが可能となる。
【0044】
なお生体情報取得から照合までのステップS3002からS3008までの手順においては、生体情報の読み取りが完了するまで、通常のPIN認証に比べて時間のかかる場合も想定される。この場合、一定時間ごとに決済端末200に対して通信部140を介して処理延長要求を送信することで、タイムアウトエラーを回避することができる。この通信についても従来の決済システムを改修することなく対応することが可能である。
【0045】
また図示していないが、ICカードの状態表示部を有するICカードの場合には、前記ステップS3003の読み取り待機で該表示部を遷移させ、またステップS3007の生体情報取得完了でも遷移させるなどして、利用者300に生体情報取得の状況を通知しても良い。例えば読取り待機時に消灯していた該表示部を点灯させ、読取り完了時には点灯していた該表示部を一定時間点滅させた後に消灯するなどの手順が適用できる。
【符号の説明】
【0046】
100 生体情報取得機能付きICカード
110 記憶部
120 取得部
130 処理部
140 通信部
200 ICカード決済端末
201 キーボード
300 利用者
図1
図2
図3
図4