(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165177
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】電池温度管理システム
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20221024BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221024BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221024BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20221024BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20221024BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20221024BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20221024BHJP
B60K 11/08 20060101ALI20221024BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20221024BHJP
【FI】
B60K11/06
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6556
H01M10/6566
H01M10/633
B60K11/08
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070418
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】三国 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
(72)【発明者】
【氏名】増田 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】小池 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】種平 貴文
(72)【発明者】
【氏名】山口 寛一
(72)【発明者】
【氏名】谷中 克年
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC11
3D038AC14
3D038AC16
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC01
3D235CC15
3D235CC32
3D235DD02
3D235DD33
3D235FF25
3D235FF42
3D235HH07
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】車両のコンパートメント内に搭載された電池を高効率に温度管理することができる電池温度管理システムを提供する。
【解決手段】プロペラファン12は、コンパートメント1aの空気取入部1dの直後に配されており、ブレードのピッチ角が変更可能である。第1熱交換器15は、内部の熱媒体と空気との間で熱交換させる。第1熱交換器15での熱交換により、空気が加温される。送気ダクト17は、開口17aがプロペラファン12の回転径方向外側に配され、開口17bが第1熱交換器15の直後に配され、開口17cが電池18の直前に配されている。コントローラは、電池18の冷却時に、新気を開口17aから開口17cへの通気路に導く第1ピッチ角と、電池18の加温時に、第1熱交換器15で加温された空気を開口17bから開口17cへの通気路に導く第2ピッチ角と、にプロペラファン12のピッチ角を切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のコンパートメントに搭載された電池の温度を管理する電池温度管理システムであって、
前記コンパートメントは、前記車両の外方から空気を取り入れる空気取入部を有し、
該電池温度管理システムは、
前記コンパートメント内における前記空気取入部に隣接した位置に搭載され、ブレードのピッチ角を変更可能なプロペラファンと、
前記空気取入部に対して前記プロペラファンを挟んだ反対側に当該プロペラファンに隣接して配置され、内部を流通する熱媒体と前記空気との間で熱交換させる熱交換器と、
前記コンパートメント内における前記プロペラファンおよび前記熱交換器よりも前記空気取入部から離れた位置に配置された前記電池と、
前記プロペラファンの回転径方向外側の径外側位置から前記電池が配された位置まで前記空気を導く第1通気路と、
前記熱交換器を通過した前記空気の出口位置から前記電池が配された位置まで前記空気を導く第2通気路と、
前記プロペラファンにおける前記ブレードのピッチ角を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記電池の冷却時に、前記プロペラファンの回転駆動により前記空気取入部から取り入れられた前記空気を前記第1通気路に送る第1ピッチ角と、
前記電池の加温時に、前記第1ピッチ角よりも小さいピッチ角であって、前記熱交換器での熱交換により加温された前記空気を前記第2通気路に送る第2ピッチ角と、
に前記ブレードのピッチ角を切り替える、
電池温度管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池温度管理システムにおいて、
前記第1通気路と前記第2通気路とは、それぞれにおける前記空気の流れ方向の中間部分で接続されており、当該中間部分よりも下流側の部分が共通の通気路をもって構成されている、
電池温度管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電池温度管理システムにおいて、
前記第1通気路における前記径外側位置と前記中間部分との間の位置に設けられた、当該第1通気路を開閉する第1ドアと、
前記第2通気路における前記出口位置と前記中間部分との間の位置に設けられた、当該第2通気路を開閉する第2ドアと、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1ドアの開閉制御および前記第2ドアの開閉制御も実行するものであって、
前記電池の冷却時には、前記第1ドアを開状態にし、前記第2ドアを閉状態にし、
前記電池の加温時には、前記第1ドアを閉状態にし、前記第2ドアを開状態にする、
電池温度管理システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電池温度管理システムにおいて、
前記熱交換器を第1熱交換器とする場合に、
前記第1熱交換器に隣接して配置され、内部を流通する熱媒体と前記空気との間で熱交換させる第2熱交換器をさらに備え、
前記第2熱交換器での熱交換により加温される前記空気の温度は、前記第1熱交換器での熱交換により加温される前記空気の温度よりも低い、
電池温度管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電池温度管理システムにおいて、
前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器に対して車幅方向左右の一方側に配置され、
前記電池は、前記車両の前後方向における前記第1熱交換器および前記第2熱交換器よりも後方において、車幅方向の前記一方側にオフセット配置され、
前記第1通気路における少なくとも前記径外側位置から前記中間部分までの区間は、前記第1熱交換器よりも車幅方向の前記一方側を通り延設されている、
電池温度管理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の電池温度管理システムにおいて、
前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器に対して車幅方向左右の一方側に配置され、
前記電池は、前記車両の前後方向における前記第1熱交換器および前記第2熱交換器よりも後方において、車幅方向左右における前記一方側とは反対の他方側にオフセット配置され、
前記第1通気路における少なくとも前記径外側位置から前記中間部分までの区間は、前記第2熱交換器よりも車幅方向の前記他方側を通り延設され、
前記第2通気路における前記出口位置から前記中間部分までの区間は、前記第2熱交換器の後方を通り延設されている、
電池温度管理システム。
【請求項7】
請求項4に記載の電池温度管理システムにおいて、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とは、前記車両の前後方向に並んだ状態で配置され、
前記第2通気路は、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器で加温された前記空気を取り入れる開口であって、前記車両の前後方向における前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の後方で、前方を向くように形成された加温空気取入口を有する、
電池温度管理システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の電池温度管理システムにおいて、
前記プロペラファンと前記熱交換器との間に設けられ、前記プロペラファンから前記熱交換器への前記空気の流通路を開閉可能なシャッタ部材をさらに備え、
前記コントローラは、
前記シャッタ部材の開閉制御も実行するものであって、
前記電池の冷却時には、前記シャッタ部材を閉状態にし、
前記電池の加温時には、前記シャッタ部材を開状態にする、
電池温度管理システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の電池温度管理システムにおいて、
前記電池は、非水電解質電池である、
電池温度管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池温度管理システムに関し、特に車両のコンパートメントに搭載される電池の温度管理を行う電池温度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、エンジンの始動や補器の駆動のために電池が搭載されている。電池は、エンジンやモータを冷却するための熱交換器(ラジエータ)などとともに車両のコンパートメント内に搭載されている。
【0003】
電池は、電気化学反応により電力を生成するため、電池の温度が所定温度域内となるように温度管理することが重要となる。仮に電池の温度が所定温度域から外れてしまった場合には、性能の低下や寿命の劣化といった問題を生じる。
【0004】
電池の温度が所定温度を超えないように冷却するための手段としては、同じコンパートメント内に搭載された熱交換器を冷却するためのファンによる送風を用いることが考えられる。熱交換器を冷却するためのファンについての構成が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
なお、特許文献1に開示の車両では、ファンとして可変ピッチプロペラファンが用いられている。特許文献1に開示の車両では、ファンにおけるブレードのピッチ角を変化させることで、熱交換器を通してコンパートメント内に外気を導入する状態と、熱交換器を通してコンパートメント内から外方に空気を導出する状態とが切り替え可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、ハイブリッド電気自動車が広く普及し、また、車両で電力を消費する機器が増加している。このため、車両においては、電池への負荷が増大している。よって、車両においては、さらに効率的に電池の温度管理を行うことが求められているが、上記特許文献1に開示の技術を始めとする従来技術では、このような要望に十分には応えることができない。
【0008】
なお、車両に搭載される電池としては、従来から鉛電池が採用されてきたが、近年では、エネルギー効率が鉛電池に比べて高いリチウムイオン電池等の非水電解質電池への置き換えが検討されている。非水電解質電池は、エネルギー効率が鉛電池よりも高いため、小型・軽量化を図ることができ、車両全体の小型・軽量化や車両設計の自由度を高くすることができる。ただし、非水電解質電池では、性能および寿命の観点から、電池の温度が所定温度域内で維持されるように温度管理することが鉛電池よりも重要となる。
【0009】
ここで、電池の温度管理のために専用のファンやヒータなどの温調設備を設けることも考えられるが、車両の製造コストの上昇やコンパートメントのサイズ増大などに繋がるため、採用することは困難である。
【0010】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、車両のコンパートメント内に搭載された電池を高効率に温度管理することができる電池温度管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る電池温度管理システムは、車両のコンパートメントに搭載された電池の温度管理を行うシステムである。前記コンパートメントは、前記車両の外方から空気を取り入れる空気取入部を有する。
【0012】
本態様に係る電池温度管理システムは、プロペラファンと、熱交換器と、前記電池と、第1通気路と、第2通気路と、コントローラとを備える。前記プロペラファンは、前記コンパートメント内における前記空気取入部に隣接した位置に搭載され、ブレードのピッチ角を変更可能である。前記熱交換器は、前記空気取入部に対して前記プロペラファンを挟んだ反対側に当該プロペラファンに隣接して配置され、内部を流通する熱媒体と前記空気との間で熱交換させる。前記電池は、前記コンパートメント内における前記プロペラファンおよび前記熱交換器よりも前記空気取入部から離れた位置に配置さている。前記第1通気路は、前記プロペラファンの回転径方向外側の径外側位置から前記電池が配された位置まで前記空気を導く。前記第2通気路は、前記熱交換器を通過した前記空気の出口位置から前記電池が配された位置まで前記空気を導く。前記コントローラは、前記プロペラファンにおける前記ブレードのピッチ角を制御する。
【0013】
そして、前記コントローラは、前記電池の冷却時に、前記プロペラファンの回転駆動により前記空気取入部から取り入れられた前記空気を前記第1通気路に送る第1ピッチ角と、前記電池の加温時に、前記第1ピッチ角よりも小さいピッチ角であって、前記熱交換器での熱交換により加温された前記空気を前記第2通気路に送る第2ピッチ角と、前記ブレードのピッチ角を切り替える。
【0014】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、コントローラがプロペラファンにおけるブレードのピッチ角を第1ピッチ角とすることにより、第1通気路を通して新気を電池に送って当該電池を冷却することができ、ピッチ角を第2ピッチ角とすることにより、第2通気路を通して加温された空気を電池に送って当該電池を加温することができる。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、コンパートメント内に搭載された電池を冷却することも加温することもでき、電池の性能の低下および寿命の劣化を効果的に抑制することができる。
【0015】
なお、上記態様に係る電池温度管理システムでは、熱交換器に隣接配置されたプロペラファンとして可変ピッチプロペラファンを用い、第1通気路および第2通気路を設けているだけであり、電池の温度管理のための別途のファンやヒータなどを設けていないので、電池の温度管理を実行するための製造コストの上昇および電力消費を抑えることができる。
【0016】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記第1通気路と前記第2通気路とは、それぞれにおける前記空気の流れ方向の中間部分で接続されており、当該中間部分よりも下流側の部分が共通の通気路をもって構成されている、とすることも可能である。
【0017】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、第1通気路と第2通気路とが上記中間部分よりも下流側の部分が共通の通気路をもって構成されている。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、コンパートメント内における第1通気路および第2通気路の占有領域を小さく抑えることができ、車両の小型・軽量化を図ることができるとともに、設計における高い自由度を確保することができる。
【0018】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記第1通気路における前記径外側位置と前記中間部分との間の位置に設けられた、当該第1通気路を開閉する第1ドアと、前記第2通気路における前記出口位置と前記中間部分との間の位置に設けられた、当該第2通気路を開閉する第2ドアと、をさらに備え、前記コントローラは、前記第1ドアの開閉制御および前記第2ドアの開閉制御も実行するものであって、前記電池の冷却時には、前記第1ドアを開状態にし、前記第2ドアを閉状態にし、前記電池の加温時には、前記第1ドアを閉状態にし、前記第2ドアを開状態にする、とすることも可能である。
【0019】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、第1通気路の上記位置に第1ドアを設け、第2通気路の上記位置に第2ドアを設け、電池の冷却時と電池の加温時とで、第1ドアおよび第2ドアの開閉制御を実行することとしている。よって、電池の冷却時には第2通気路を通して加温された空気が電池に向けて送られるのを確実に防ぐことができ、電池の加温時には第1通気路を通して新気が電池に向けて送られるのを確実に防ぐことができる。これより、上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池の温度管理をより確実に行うことができる。
【0020】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記熱交換器を第1熱交換器とする場合に、前記第1熱交換器に隣接して配置され、内部を流通する熱媒体と前記空気との間で熱交換させる第2熱交換器をさらに備え、前記第2熱交換器での熱交換により加温される前記空気の温度は、前記第1熱交換器での熱交換により加温される前記空気の温度よりも低い、とすることも可能である。
【0021】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、第2熱交換器もコンパートメント内に搭載されているが、電池の加温には熱交換により高い温度まで空気が加温される第1熱交換器で加温された空気を電池に送ることとしている。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池の加温をより確実に行うことができる。
【0022】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器に対して車幅方向左右の一方側に配置され、前記電池は、前記車両の前後方向における前記第1熱交換器および前記第2熱交換器よりも後方において、車幅方向の前記一方側にオフセット配置され、前記第1通気路における少なくとも前記径外側位置から前記中間部分までの区間は、前記第1熱交換器よりも車幅方向の前記一方側を通り延設されている、とすることも可能である。
【0023】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池がオフセット配置された側と、第2熱交換器に対して第1熱交換器が配置された側とを、上記一方側に揃えられている。また、第1通気路における少なくとも上記区間が第1熱交換器の上記一方側を通過するように配設されている。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、第2通気路における上記出口部分から上記中間部分までの区間の長さを短くすることが可能であり、第1熱交換器での熱交換により加温された空気を電池に送る際の温度低下を抑えることができるとともに、コンパートメント内における第2通気路における上記出口部分から上記中間部分までの区間が占有する領域を小さく抑えることができる。
【0024】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器に対して車幅方向左右の一方側に配置され、前記電池は、前記車両の前後方向における前記第1熱交換器および前記第2熱交換器よりも後方において、車幅方向左右における前記一方側とは反対の他方側にオフセット配置され、前記第1通気路における少なくとも前記径外側位置から前記中間部分までの区間は、前記第2熱交換器よりも車幅方向の前記他方側を通り延設され、前記第2通気路における前記出口位置から前記中間部分までの区間は、前記第2熱交換器の後方を通り延設されている、とすることも可能である。
【0025】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池が上記他方側にオフセット配置されているのに対して、第2熱交換器に対して第1熱交換器が上記一方側に配置されている。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、第1熱交換器で加温された空気が、コンパートメント内の空間を通って不所望に(例えば、電池冷却時に)電池へと送られるのを抑制することができる。これより、上記態様に係る電池温度管理システムでは、より確実に電池の温度管理を行うことができる。
【0026】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とは、前記車両の前後方向に並んだ状態で配置され、前記第2通気路は、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器で加温された前記空気を取り入れる開口であって、前記車両の前後方向における前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の後方で、前方を向くように形成された加温空気取入口を有する、とすることも可能である。
【0027】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、第1熱交換器と第2熱交換器とが車両の前後方向に並んだ状態で配置され、これら第1熱交換器および第2熱交換器の後方に第2通気路の加温空気取入口が配置されている。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池の加温時に、第1熱交換器と第2熱交換器との両方で加温された空気を電池に送ることができ、電池をより効果的に加温することができる。
【0028】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記プロペラファンと前記熱交換器との間に設けられ、前記プロペラファンから前記熱交換器への前記空気の流通路を開閉可能なシャッタ部材をさらに備え、前記コントローラは、前記シャッタ部材の開閉制御も実行するものであって、前記電池の冷却時には、前記シャッタ部材を閉状態にし、前記電池の加温時には、前記シャッタ部材を開状態にする、とすることも可能である。
【0029】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、プロペラファンと熱交換器との間にシャッタ部材が介設されている。よって、上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池の冷却時にシャッタ装置を閉状態とすることで、より確実に第1通気路へ新気を送り込むことができ、電池を効果的に冷却することができる。
【0030】
上記態様に係る電池温度管理システムにおいて、前記電池は、非水電解質電池である、とすることも可能である。
【0031】
上記態様に係る電池温度管理システムでは、電池として非水電解質電池を採用する。非水電解質電池は、性能および寿命の観点から鉛電池よりも電池温度の管理を厳格に行う必要がある。このように温度管理がより重要である非水電解質電池を採用する上記態様に係る電池温度管理システムでも、上記のような構成をもって電池の温度管理を実行できるので、電池の性能低下や寿命劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
上記の各態様に係る電池温度管理システムでは、車両のコンパートメント内に搭載された電池を高効率に温度管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池温度管理システムが適用された車両の一部構造を示す平面図である。
【
図2】(a)は電池温度管理システムにおけるプロペラファンの構成を示す斜視図、(b)はブレードのピッチ角が第1ピッチ角である場合の当該ブレードの姿勢を示す側面図、(c)はブレードのピッチ角が第2ピッチ角である場合の当該ブレードの姿勢を示す側面図である。
【
図3】コンデンサとエバポレータとの接続形態、第1熱交換器とエンジンとの接続形態、および第2熱交換器とモータとの接続形態を示す模式図である。
【
図5】電池温度管理システムにおける制御に係る構成を示すブロック図である。
【
図6】コントローラが実行する電池温度管理方法を示すフローチャートである。
【
図7】電池を冷却する場合のシステムの状態を示す平面図である。
【
図8】電池を加温する場合のシステムの状態を示す平面図である。
【
図9】電池を冷却も加温もしない場合のシステムの状態を示す平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る電池温度管理システムの一部構成を示す平面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る電池温度管理システムの一部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0035】
以下の説明で用いる図において、「Fr」は車両前方、「Re」は車両後方、「Le」は車両左方(車幅方向の左方)、「Ri」は車両右方(車幅方向の右方)をそれぞれ示す。
【0036】
[第1実施形態]
1.電池温度管理システム101が適用された車両1の構成
本発明の第1実施形態に係る電池温度管理システム101が適用された車両1の構成について、
図1から
図3を用いて説明する。なお、
図1は、車両1の前部を模式的に図示したものであって、各部のレイアウトやサイズなどについては実際とは異なる部分がある。
【0037】
図1に示すように、車両1は、前部にコンパートメント1aを有する。また、車両1は、コンパートメント1aに対してダッシュパネル1cを挟んだ後方に車室1bを有する。コンパートメント1aは、前部に空気取入部1dを有する。コンパートメント1aには、空気取入部1dを通して車両1の前方(外方)から空気(新気)が取り入れられる。車室1bには、空調用のエバポレータ19が配されている。
【0038】
コンパートメント1a内の空気取入部1dの後方には、回転軸Ax12周りに回転可能なプロペラファン12が配されている。プロペラファン12の後方には、グリルシャッタ(シャッタ部材)13、コンデンサ14、および第1熱交換器15が順に配されている。また、第1熱交換器16の左方には、当該第1熱交換器15に隣接して第2熱交換器16が配されている。
【0039】
さらに、コンパートメント1a内には、第1熱交換器15および第2熱交換器16が配された位置よりも後方に、エンジン10、モータ11、および電池18が配されている。エンジン10およびモータ11は、車両1が走行するための駆動力を発生する。即ち、車両1は、ハイブリッド電気自動車(HEV)である。
【0040】
ここで、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、電池18としてリチウムイオン電池等の非水電解質電池が採用されている。非水電解質電池は、鉛電池に比べてエネルギー密度が高く、小型・軽量化を図ることができる。電池18は、コンパートメント1a内において、右方にオフセット配置(コンパートメント1aにおける車幅方向の中心よりも右方に寄った状態で配置)されている。
【0041】
コンパートメント1a内には、プロペラファン12の右方から第1熱交換器15の右方を通り、電池18の直前まで延びる送気ダクト17が設けられている。送気ダクト17は、プロペラファン12の回転径方向外側の位置(径外側位置)に開口17aを有し、第1熱交換器15の後方の位置(出口位置)に開口17bを有し、電池18の前方の位置に開口17cを有する。
【0042】
なお、
図1に示すコンパートメント1a内に搭載の部材のうち、プロペラファン12、グリルシャッタ13、第1熱交換器15、第2熱交換器16、送気ダクト17、および電池18が、本実施形態に係る電池温度管理システム101に属する部材である。
【0043】
図2(a)に示すように、プロペラファン12は、略円筒形状を有するハブ12aと、ハブ12aの径方向外側に取り付けられた複数のブレード12bとを有する。また、図示を省略しているが、プロペラファン12は、ハブ12aを回転駆動させるファンモータも有する。プロペラファン12は、ファンモータの駆動により、回転軸Ax
12周りに回転する(Rot)。
【0044】
ここで、本実施形態に係る電池温度管理システム101で採用するプロペラファン12は、ブレード12bのピッチ角が変更できる構成を有する。具体的には、
図2(b)に示すように、ブレード12bは、ブレード12bの幅中心線(仮想線)L
Pが回転面L
SRに対して第1ピッチ角θ1をなす姿勢と、
図12(c)に示すように、ブレード12bの幅中心線(仮想線)LPが回転面L
SRに対して第2ピッチ角θ2をなす姿勢との間で変更可能となっている。ブレード12bのピッチ角の変更は、図示を省略するリンク機構およびアクチュエータなどによりなされる。
【0045】
なお、
図2(b)、(c)に示すように、第2ピッチ角θ2は、第1ピッチ角θ1よりも小さい角度である。
【0046】
図2(b)に示すように、ブレード12bのピッチ角を第1ピッチ角θ1とした状態でプロペラファン12を回転駆動Rotすると、車両1の前方から取り入れられた空気(新気)は、矢印A1で示すように、プロペラファン12の回転径方向外向きに導出される。
【0047】
一方、
図2(c)に示すように、ブレード12bのピッチ角を第2ピッチ角θ2とした状態でプロペラファン12を回転駆動Rotすると、車両1の前方から取り入れた空気は、矢印A2で示すように、プロペラファン12の後方に向けて導出される。
【0048】
図3に示すように、コンデンサ14は、エバポレータ19に循環路L3で接続されている。循環路L3には熱媒体が封入されている。第1熱交換器15は、エンジン10と循環路L1で接続されており、第2熱交換器16は、モータ11と循環路L2で接続されている。エンジン10の駆動時に発生する熱は、循環路L1を循環する冷却液を介して第1熱交換器15で空気と熱交換される。熱交換により加温された空気は、矢印B1で示すように後方に排出される。
【0049】
モータ11の駆動時に発生する熱は、循環路L2を循環する熱媒体を介して空気と熱交換される。熱交換により加温された空気は、矢印B2で示すように後方に排出される。なお、第1熱交換15での熱交換により加温される空気の温度は、第2熱交換器16での熱交換により加温される空気の温度よりも高い。
【0050】
2.送気ダクト17の構成
コンパートメント1a内に配設された送気ダクト17の構成について、
図4を用いて説明する。
【0051】
図4に示すように、送気ダクト17は、第1ダクト部17dと、第2ダクト部17eと、第3ダクト部17gとが、接続部(中間部分)17fで互いに接続された構造を有する。第1ダクト部17dは、プロペラファン12の回転径方向外側の開口17aと接続部17fとを繋ぐように形成されている。第2ダクト部17eは、第1熱交換器15の後方の開口17bと接続部17fとを繋ぐように形成されている。第3ダクト部17gは、接続部17fと電池18の直前の開口17cとを繋ぐように形成されている。
【0052】
第1ダクト部17dと第3ダクト部17gとで構成される通気路が第1通気路であり、第2ダクト部17eと第3ダクト部17gとで構成される通気路が第2通気路である。そして、第3ダクト部17gは、第1通気路と第2通気路との共通の通気路である。
【0053】
送気ダクト17には、それぞれが通気路を開閉可能な2つのドア20,21が設けられている。2つのドア20,21の内の一方である第1ドア20は、第1ダクト部17dにおける開口17a近傍に設けられている。もう一つのドアである第2ドア21は、第2ダクト部17eにおける接続部17f近傍に設けられている。詳しくは後述するが、第1ドア20を開状態とし、第2ドア21を閉状態とした場合には、開口17aと開口17cとを繋ぐ第1通気路が開設され、開口17bと開口17cとを繋ぐ第2通気路が閉じられる。これにより、開口17aから取り込まれた空気C1が開口17cから排出される(矢印C3)。これに対して、第1ドア20を閉状態とし、第2ドア21を開状態とした場合には、開口17bと開口17cとを繋ぐ第2通気路が開設され、第1通気路が閉じられる。これにより、開口17bから取り込まれた空気C2が開口17cから排出される(矢印C3)。
【0054】
なお、本実施形態に係る電池温度管理システム101は、第1ドア20および第2ドア21も構成要件として含む。
【0055】
3.電池温度管理システム101の制御に係る構成
本実施形態に係る電池温度管理システム101の制御に係る構成について、
図5を用いて説明する。
【0056】
図5に示すように、電池温度管理システム101は、コントローラ22と、電池温度検出部23と、ファンモータ24と、ピッチ角変更アクチュエータ25と、第1ドア開閉アクチュエータ26と、第2ドア開閉アクチュエータ27と、シャッタ開閉アクチュエータ28とをさらに備える。コントローラ22は、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有し構成されている。コントローラ22は、電池温度検出部23から取得した電池18の温度情報を基に、メモリに予め格納されたファームウェアを実行することにより、ファンモータ24および各種アクチュエータ25~28を駆動制御する。
【0057】
4.電池温度管理システム101のコントローラ22が実行する電池18の温度管理方法
本実施形態に係る電池温度管理システム101のコントローラ22が実行する電池18の温度管理方法について、
図6から
図9を用いて説明する。
【0058】
図6に示すように、コントローラ22は、電池温度検出部23から電池温度Tbに関する情報を取得する(ステップS1)。なお、コントローラ22による電池温度Tbに関する情報取得は、車両1がキーオン状態の間は連続的または断続的に継続してなされる。
【0059】
次に、コントローラ22は、取得した電池温度Tbが予め設定された所定温度Tth1よりも高いか否かを判断する(ステップS2)。なお、上記所定温度Tth1は、例えば、65℃とすることができる。
【0060】
コントローラ22は、電池温度Tbが所定温度Tth1よりも高いと判断した場合には(ステップS2:YES)、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第1ピッチ角θ1とするようにピッチ角変更アクチュエータ25に指令を発し(ステップS3)、グリルシャッタ13を閉状態とするようにシャッタ開閉アクチュエータ28に指令を発する(ステップS4)。そして、コントローラ22は、第1ドア20を開状態、第2ドア21を閉状態とするようにドア開閉アクチュエータ26,27に指令を発し(ステップS5)、プロペラファン12を回転駆動するようにファンモータ24に指令を発する(ステップS6)。
【0061】
コントローラ22がステップS3~S6を実行することにより、電池温度管理システム101では、
図7に示すように、プロペラファン12の回転駆動により車両1の前方から取り入れられた新気が第1ダクト部17dから第3ダクト部17gを通り電池18に向けて送気される(矢印D1~D3)。なお、この場合に、グリルシャッタ13は閉状態とされているので、プロペラファン12の回転駆動による新気は高効率に送気ダクト17の開口17aへと導かれる。
【0062】
また、
図7に示す電池18の冷却時には、第2ドア21が閉状態とされているので、第1熱交換器15で加温された空気が第3ダクト部17gを通り電池18に導かれるのが防止される。
【0063】
図6に戻って、コントローラ22は、電池温度Tbが所定温度Tth1以下であると判断した場合には(ステップS2:NO)、電池温度Tbが予め設定された所定温度Tth2よりも低いか否かを判断する(ステップS7)。なお、上記所定温度Tth2は、例えば、0℃とすることができる。
【0064】
コントローラ22は、電池温度Tbが所定温度Tth2よりも低いと判断した場合には(ステップS7:YES)、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第2ピッチ角θ2とするようにピッチ角変更アクチュエータ25に指令を発し(ステップS8)、グリルシャッタ13を開状態とするようにシャッタ開閉アクチュエータ28に指令を発する(ステップS9)。そして、コントローラ22は、第1ドア20を閉状態、第2ドア21を開状態とするようにドア開閉アクチュエータ26,27に指令を発し(ステップS10)、プロペラファン12を回転駆動させるようにファンモータ24に指令を発する(ステップS6)。
【0065】
コントローラ22がステップS8~S10およびステップS6を実行することにより、電池温度管理システム101では、
図8に示すように、プロペラファン12の回転駆動により車両1の前方から取り入れられた新気が第1熱交換器15および第2熱交換器16で加温される。そして、第1熱交換器15で加温された空気は、第2ダクト部17eから第3ダクト部17gを通り電池18に向けて送気される(矢印E1~E3)。なお、
図8に示す電池18の加温時には、第1ドア20が閉状態とされているので、車両1の前方から取り込まれた新気が第1ダクト部17dから第3ダクト部17gを通り電池18に導かれるのが防止される。
【0066】
図6に戻って、コントローラ22は、電池温度Tbが所定温度Tth2以上であると判断した場合には(ステップS7:NO)、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第2ピッチ角θ2とするようにピッチ角変更アクチュエータ25に指令を発し(ステップS11)、グリルシャッタ13を開状態とするようにシャッタ開閉アクチュエータ28に指令を発する(ステップS12)。そして、コントローラ22は、第1ドア20も第2ドア21も閉状態とするようにドア開閉アクチュエータ26,27に指令を発し(ステップS13)、プロペラファン12の回転駆動を停止するようにファンモータ24に指令を発する(ステップS14)。
【0067】
コントローラ22がステップS11~S14を実行することにより、電池温度管理システム101では、
図9に示すように、第1ドア20および第2ドア21がともに閉状態であることにより送気ダクト17を通じての電池18への送気は行われない。即ち、
図9に示す状態は、電池18を冷却することも加温することも必要ではない状態ということになる。
【0068】
なお、本実施形態では、電池18の温度Tbに基づく制御だけを取り出して説明しているが、エンジン10やモータ11の温度が所定温度を超える場合には、プロペラファン12を回転駆動することもある。
【0069】
5.効果
本実施形態に係る電池温度管理システム101では、コントローラ22がプロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第1ピッチ角θ1に設定することにより、第1通気路(第1ダクト部17dと第3ダクト部17gとで構成される通気路)を通して新気を電池18に送って当該電池18を冷却することができ、ピッチ角を第2ピッチ角θ2に設定することにより、第2通気路(第2ダクト部17eと第3ダクト部17gとで構成される通気路)を通して加温された空気を電池18に送って当該電池18を加温することができる。よって、電池温度管理システム101では、コンパートメント1a内に搭載された電池18を冷却することも加温することもでき、電池18の性能の低下および寿命の劣化を効果的に抑制することができる。
【0070】
なお、電池温度管理システム101では、第1熱交換器15に隣接配置されたプロペラファン12として可変ピッチプロペラファンを用い、第1通気路および第2通気路を設けているだけであり、電池18の温度管理のための別途のファンやヒータなどを設けていないので、電池18の温度管理を実行するための製造コストの上昇および電力消費を抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、第3ダクト部17gを共通の通気路として第1通気路と第2通気路とが構成されている。よって、電池温度管理システム101では、コンパートメント1a内における第1通気路および第2通気路の占有領域を小さく抑えることができ、車両1の小型・軽量化を図ることができるとともに、設計における高い自由度を確保することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、第1ダクト部17dに第1ドア20を設け、第2ダクト部17eに第2ドア21を設け、第1ドア20および第2ドア21の開閉制御を実行して電池18を冷却または加温することとしている。よって、電池18の冷却時には第2ダクト部17eおよび第3ダクト部17gを通して加温された空気が電池18に向けて送られるのを確実に防ぐことができ、電池18の加温時には第1ダクト部17dおよび第3ダクト部17gを通して新気が電池18に向けて送られるのを確実に防ぐことができる。これより、電池温度管理システムでは、電池18の温度管理をより確実に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、第2熱交換器16もコンパートメント1a内に搭載されているが、電池18の加温にはより温度が高い第1熱交換器15での熱交換により加温された空気を電池に送ることとしている。よって、電池温度管理システム101では、電池18の加温をより効果的に行うことができる。
【0074】
また、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、電池18が車幅方向右側にオフセット配置され、第2熱交換器16に対して第1熱交換器15が車幅方向右側に隣接配置されている。また、コンパートメント1a内においては、第1ダクト部17dが第1熱交換器15に対して車幅方向の右側を通過するように配設されている。よって、電池温度管理システム101では、第1ダクト部17dに接続部17fで接続される第2ダクト部17eの長さを短くすることが可能であり、第1熱交換器15で加温された空気を電池18に送る際の温度低下を抑えることができるとともに、コンパートメント1a内における第2ダクト部17eが占有する領域を小さく抑えることができる。
【0075】
また、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、プロペラファン12と第1熱交換器15および第2熱交換器16との間にグリルシャッタ13が介設されている。よって、電池温度管理システム101では、電池冷却状時において、グリルシャッタ13を閉状態とすることで、より確実にプロペラファン12から第1ダクト部17dへ新気を送り込むことができ、電池18を効果的に冷却することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、電池18として非水電解質電池を採用する。非水電解質電池は、性能および寿命の観点から鉛電池よりも電池温度の管理を厳格に行う必要がある。このように温度管理がより重要である非水電解質電池を採用する場合においても、上記のような構成をもって電池18の温度管理を実行できるので、電池18の性能低下や寿命劣化を抑制することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る電池温度管理システム101では、車両1のコンパートメント1a内に搭載された電池18を高効率に温度管理することができる。
【0078】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る電池温度管理システム102の構成について、
図10を用いて説明する。なお、
図10では、上記第1実施形態に係る電池温度管理システム101と同じ構成を有する部分については同一の符号を付している。また、
図10では、本実施形態に係る電池温度管理システム102の構成の一部を抜き出して図示しており、図示を省略する構成については、上記第1実施形態と同じである。
【0079】
図10に示すように、本実施形態に係る電池温度管理システム102は、コンパートメント2a内において、プロペラファン12と、コンデンサ14と、第1熱交換器35と、第2熱交換器36と、送気ダクト37と、電池18とを備える。なお、本実施形態に係る電池温度管理システム102では、プロペラファン12とコンデンサ14との間にグリルシャッタは設けられていない。
【0080】
第1熱交換器35は、上記第1実施形態の第1熱交換器15と同様に、図示を省略しているエンジン10と循環路L1で接続されている。また、第2熱交換器36は、上記第1実施形態の第2熱交換器16と同様に、図示を省略しているモータ11と循環路L2で接続されている。よって、第1熱交換器35での熱交換で加温された空気の温度は、第2熱交換器36での熱交換で加温された空気の温度よりも高い。
【0081】
図10に示すように、第1熱交換器35は、第2熱交換器36に対して車幅方向の左方に隣接配置されている。
【0082】
送気ダクト37は、第1ダクト部37dと、第2ダクト部37eと、第3ダクト部37gとが接続部(中間部分)37fで互いに接続されている。即ち、本実施形態に係る電池温度管理システム102でも、第1ダクト部37dと第3ダクト部37gとで構成される通気路が第1通気路であり、第2ダクト部37eと第3ダクト部37gとで構成される通気路が第2通気路であって、第3ダクト部37gが第1通気路と第2通気路との共通の通気路である。第1ダクト部37dには、開口37aの近傍に第1ドア20が設けられ、第2ダクト部37eには、接続部37fの近傍に第2ドア21が設けられている。
【0083】
なお、本実施形態に係る電池温度管理システム102では、第1熱交換器35と第2熱交換器36との車幅方向での配置が上記第1実施形態とは逆となっている。このため、送気ダクト37における第2ダクト部37eは、第2熱交換器36の後方を車幅方向に延びるように配設されている。
【0084】
本実施形態に係る電池温度管理システム102でも、電池18を冷却する場合には、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第1ピッチ角θ1とし、第1ドア20を開状態、第2ドア21を閉状態とすることにより、プロペラファン12の回転駆動により新気が開口37aから第1ダクト部37dに導入され(矢印F1)、第3ダクト部37gを通り開口37cから電池18に向けて排出される(矢印F3)。
【0085】
一方、電池18を加温する場合には、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第2ピッチ角θ2とし、第1ドア20を閉状態、第2ドア21を開状態とすることにより、プロペラファン12の回転駆動により新気が第1熱交換器35で加温され、加温された空気が開口37bから第2ダクト部37eに導入され(矢印F2)、第3ダクト部37gを通り開口37cから電池18に向けて排出される(矢印F3)。
【0086】
本実施形態に係る電池温度管理システム102でも、上記第1実施形態に係る電池温度管理システム101と基本的に同じ効果を得ることができる。ただし、本実施形態に係る電池温度管理システム102では、車幅方向における第1熱交換器35と第2熱交換器36との配置形態が上記第1実施形態とは異なるため、次のような効果を得ることができる。
【0087】
本実施形態に係る電池温度管理システム102では、電池18が上記第1実施形態と同様に車幅方向右側にオフセット配置されているのに対して、第1熱交換器35が第2熱交換器36の車幅方向左側に隣接配置されている。よって、本実施形態に係る電池温度管理システム102では、電池18の冷却時等において、第1熱交換器35で加温された空気が、コンパートメント2a内の空間を通って不所望に電池18へと送気されるのを抑制することができる。これより、本実施形態に係る電池温度管理システム102では、より確実に電池18の温度管理を行うことができる。
【0088】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る電池温度管理システム103の構成について、
図11を用いて説明する。なお、
図11でも、上記第1実施形態に係る電池温度管理システム101と同じ構成を有する部分については同一の符号を付している。また、
図11でも、本実施形態に係る電池温度管理システム103の構成の一部を抜き出して図示しており、図示を省略する構成については、上記第1実施形態と同じである。
【0089】
図11に示すように、本実施形態に係る電池温度管理システム103は、コンパートメント3a内において、プロペラファン12と、コンデンサ14と、第1熱交換器45と、第2熱交換器46と、送気ダクト47と、電池18とを備える。なお、本実施形態に係る電池温度管理システム103でも、上記第2実施形態に係る電池温度管理システム102と同様に、プロペラファン12とコンデンサ14との間にグリルシャッタは設けられていない。
【0090】
第1熱交換器45は、上記第1実施形態の第1熱交換器15と同様に、図示を省略しているエンジン10と循環路L1で接続されている。また、第2熱交換器46は、上記第1実施形態の第2熱交換器16と同様に、図示を省略しているモータ11と循環路L2で接続されている。よって、第1熱交換器45で加温された空気の温度は、第2熱交換器46で加温された空気の温度よりも高い。
【0091】
図11に示すように、本実施形態に係る電池温度管理システム103では、第2熱交換器46が第1熱交換器45の後方に隣接配置されている。
【0092】
送気ダクト47は、第1ダクト部47dと、第2ダクト部47eと、第3ダクト部47gとが接続部47fで互いに接続されている。即ち、本実施形態に係る電池温度管理システム103でも、第1ダクト部47dと第3ダクト部47gとで構成される通気路が第1通気路であり、第2ダクト部47eと第3ダクト部47gとで構成される通気路が第2通気路であり、第3ダクト部47gが第1通気路と第2通気路との共通の通気路である。第1ダクト部47dには、開口47aの近傍に第1ドア20が設けられ、第2ダクト部47eには、接続部(中間部分)47fの近傍に第2ドア21が設けられている。
【0093】
なお、本実施形態に係る電池温度管理システム103では、コンパートメント3a内における第1熱交換器45と第2熱交換器46との配置形態が上記第1実施形態とは異なっているが、第1ダクト部47dおよび第2ダクト部47eの配設形態は、上記第1実施形態と略同じである。
【0094】
本実施形態に係る電池温度管理システム103でも、電池18を冷却する場合には、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第1ピッチ角θ1とし、第1ドア20を開状態、第2ドア21を閉状態とすることにより、プロペラファン12の回転駆動により新気が開口47aから第1ダクト部47dに導入され(矢印G1)、第3ダクト部47gを通り開口47cから電池18に向けて排出される(矢印G3)。
【0095】
一方、電池18を加温する場合には、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第2ピッチ角θ2とし、第1ドア20を閉状態、第2ドア21を開状態とすることにより、プロペラファン12の回転駆動により新気が第2熱交換器46および第1熱交換器45で加温され、両熱交換器45,46で加温された空気が開口47bから第2ダクト部47eに導入され(矢印G2)、第3ダクト部47gを通り開口47cから電池18に向けて排出される(矢印G3)。
【0096】
本実施形態に係る電池温度管理システム103でも、上記第1実施形態に係る電池温度管理システム101と基本的に同じ効果を得ることができる。ただし、本実施形態に係る電池温度管理システム103では、コンパートメント3a内における第1熱交換器45と第2熱交換器46との配置形態が上記第1実施形態とは異なるため、次のような効果を得ることができる。
【0097】
本実施形態に係る電池温度管理システム103では、第1熱交換器45と第2熱交換器46とが車両の前後方向に並んだ状態で配置され、これら第1熱交換器45および第2熱交換器46の後方に第2ダクト部47eの開口(加温空気取入口)47bが配置されている。よって、電池温度管理システム103では、電池18を加温する場合に、第1熱交換器45と第2熱交換器46との両方での熱交換により二重に加温された空気を電池18に送ることができ、電池18をより効果的に加温することができる。
【0098】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、コンパートメント1a~3a内において、2つの熱交換器15,16,35,36,45,46が搭載されていることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。コンパートメント内に少なくとも1つの熱交換器が搭載されていればよい。
【0099】
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、コンパートメント1a~3a内において、車幅方向の右側にオフセットした位置に電池18が配置された構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車幅方向に左側に電池をオフセット配置することもできる。
【0100】
なお、電池を車幅方向の左側にオフセット配置する場合には、送気ダクトについても、熱交換器の左側を通過するように配設することが、ダクト長をできるだけ短くできるので好ましい。
【0101】
また、送気ダクトを第1熱交換器および第2熱交換器の上方や下方を通過するように配設することも可能である。
【0102】
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、第1熱交換器15,35,45がエンジン10に接続され、第2熱交換器16,36,46がモータ11に接続された構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、第1熱交換器を車両走行用のモータに接続し、第2熱交換器を当該モータに供給する電力路中に設けられたインバータに接続することも可能である。
【0103】
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、コンパートメント1a~3a内にエンジン10およびモータ11が搭載されている形態を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではなく、コンパートメント内に車両走行用の駆動源が搭載されていない形態とすることも可能である。
【0104】
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、電池18として非水電解質電池を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、鉛電池や全固体電池などを採用することもできる。
【0105】
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、プロペラファン12におけるブレード12bのピッチ角を第1ピッチ角θ1と第2ピッチ角θ2の2値で制御することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。ブレードのピッチ角を第1ピッチ角と第2ピッチ角との間で連続的に変化させることにすることも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 車両
1a,2a,3a コンパートメント
10 エンジン
11 モータ
12 プロペラファン
12b ブレード
13 グリルシャッタ(シャッタ部材)
15,35,45 第1熱交換器
16,36,46 第2熱交換器
17,37,47 送気ダクト
18 電池
20 第1ドア
21 第2ドア
22 コントローラ
101~103 電池温度管理システム