IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノリタケカンパニーリミテドの特許一覧

<>
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図1
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図2
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図3
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図4
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図5
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図6
  • 特開-加熱炉用搬送ローラ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165189
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】加熱炉用搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20221024BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20221024BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20221024BHJP
   C23C 4/10 20160101ALI20221024BHJP
【FI】
F16C13/00 A
F27B9/24 R
F27D3/12 Z
C23C4/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070435
(22)【出願日】2021-04-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】松本 清志
(72)【発明者】
【氏名】植原 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】大橋 昌立
【テーマコード(参考)】
3J103
4K031
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA24
3J103AA51
3J103AA63
3J103AA72
3J103BA15
3J103CA05
3J103CA62
3J103CA78
3J103DA05
3J103EA06
3J103FA12
3J103GA02
3J103GA32
3J103HA03
3J103HA04
3J103HA32
3J103HA33
3J103HA51
3J103HA54
4K031AA01
4K031AB09
4K031CB41
4K031CB42
4K031CB45
4K031CB46
4K031DA04
4K050AA02
4K050BA02
4K050CG05
4K055AA06
4K055HA07
4K055HA21
4K055HA25
4K055HA27
(57)【要約】
【課題】加熱炉内で加熱された被加熱物との反応が抑制され、耐久性に優れた加熱炉用搬送ローラを提供する。
【解決手段】搬送ローラ30は、管状に形成され、かつ、金属材料から形成された外側管状部材32と、外側管状部材32の内部に設けられ、かつ、管状に形成され、かつ、セラミック材料から形成された内側管状部材36と、外側管状部材32の外周面に沿ってリング状に形成され、かつ、金属材料から形成され、かつ、被加熱物5を支持する複数の環状突起40と、環状突起40のうち被加熱物5と接触する部分に形成され、かつ、セラミック成分を含むセラミック皮膜から構成された保護部材45と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内に配置され、かつ、前記加熱炉内で加熱された被加熱物を支持し、かつ、前記被加熱物を搬送する加熱炉用搬送ローラであって、
管状に形成され、かつ、金属材料から形成された外側管状部材と、
前記外側管状部材の内部に設けられ、かつ、管状に形成され、かつ、セラミック材料から形成された内側管状部材と、
前記外側管状部材の外周面に沿ってリング状に形成され、かつ、金属材料から形成され、かつ、前記被加熱物を支持する複数の環状突起と、
前記環状突起のうち前記被加熱物と接触する部分に形成され、かつ、セラミック成分を含むセラミック皮膜から構成された保護部材と、を備えている、加熱炉用搬送ローラ。
【請求項2】
前記セラミック皮膜は、セラミック溶射皮膜である、請求項1に記載の加熱炉用搬送ローラ。
【請求項3】
前記セラミック成分は、ジルコニアである、請求項1または2に記載の加熱炉用搬送ローラ。
【請求項4】
前記環状突起の外周面にR加工が施されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱炉用搬送ローラ。
【請求項5】
前記被加熱物は、アルミニウム成分を含む表面処理が施された鋼板である、請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱炉用搬送ローラ。
【請求項6】
前記被加熱物を加熱する前記加熱炉と、
請求項1から5のいずれか一項に記載の複数の加熱炉用搬送ローラと、を備え、
複数の前記加熱炉用搬送ローラは、前記被加熱物の搬送方向に並列するように前記加熱炉内に配置され、
前記搬送方向に隣り合う前記加熱炉用搬送ローラを第1搬送ローラおよび第2搬送ローラとしたとき、前記第1搬送ローラの前記環状突起と前記第2搬送ローラの前記環状突起とは、前記加熱炉用搬送ローラの長手方向に関して偏倚して配置されている、加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉用搬送ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加熱物を加熱して熱処理を施す加熱炉内において、加熱された被加熱物を搬送する搬送ローラが用いられている。被加熱物を加熱するときには加熱炉内の温度は比較的高くなるため(例えば500℃程度~1000℃程度)、加熱炉内に配置される搬送ローラは、耐熱衝撃性および耐熱変形性に優れた材料から構成されているとよい。例えば、特許文献1には、相対的に耐熱衝撃性の高い材料から構成された外側管状部材と、相対的に耐熱変形性の高い材料から構成された内側管状部材とが、耐熱性断熱材から構成された中間部材を介して一体的に形成された搬送ローラが開示されている。また、特許文献2には、耐熱合金製の金属管から構成されたローラ本体と、ローラ本体の外周面に形成された耐熱合金製の支持突起とを備えた搬送ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-127617号公報
【特許文献2】国際公開第2019/193895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱された被加熱物が搬送ローラによって搬送されるとき、被加熱物の材質によっては、金属材料から形成された搬送ローラと被加熱物とが反応してしまい搬送ローラに不具合(例えば耐久性の低下)が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、加熱炉内で加熱された被加熱物との反応が抑制され、耐久性に優れた加熱炉用搬送ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される一態様の加熱炉用搬送ローラは、加熱炉内に配置され、かつ、前記加熱炉内で加熱された被加熱物を支持し、かつ、前記被加熱物を搬送する。前記加熱炉用搬送ローラは、管状に形成され、かつ、金属材料から形成された外側管状部材と、前記外側管状部材の内部に設けられ、かつ、管状に形成され、かつ、セラミック材料から形成された内側管状部材と、前記外側管状部材の外周面に沿ってリング状に形成され、かつ、金属材料から形成され、かつ、前記被加熱物を支持する複数の環状突起と、前記環状突起のうち前記被加熱物と接触する部分に形成され、かつ、セラミック成分を含むセラミック皮膜から構成された保護部材と、を備えている。
【0007】
かかる加熱炉用搬送ローラによれば、内側管状部材は、耐熱変形性に優れたセラミック材料から形成されているため、加熱炉内の高温化においても加熱炉搬送ローラの耐久性が保持される。ここで、セラミック材料は、金属(例えばアルミニウム)との反応性が高いため、被加熱物が金属材料を含む場合には被加熱物と内側管状部材とが接触することで内側管状部材が劣化してしまう虞がある。しかしながら、内側管状部材は金属材料から形成された外側管状部材の内部に設けられているため、内側管状部材と被加熱物とは直接接触しない。また、外側管状部材の外周面に沿ってリング状に形成された複数の環状突起が、被加熱物を支持するため、被加熱物と外側管状部材とが直接接触することを抑制することができる。即ち、被加熱物と加熱炉用搬送ローラとの接触面積を大きく低減した状態で、被加熱物を搬送することができる。さらに、環状突起のうち被加熱物と接触する部分には、セラミック皮膜から構成された保護部材が設けられている。ここで、セラミック皮膜は、耐熱性に優れるため、高温に加熱された被加熱物を支持することができる。また、セラミック皮膜には金属が付着しにくいため、例えば被加熱物から金属が溶融したとしても、環状突起には金属が付着しにくくなると共に、仮に付着しても容易に剥がし取ることができてメンテナンス性に優れる。
【0008】
好ましい一態様の加熱炉用搬送ローラによると、前記セラミック皮膜は、セラミック溶射皮膜である。溶射によって形成されたセラミック溶射皮膜は、耐熱性および耐腐食性により優れるため、環状突起を効果的に保護することができ、環状突起の耐久性が高められる。
【0009】
好ましい一態様の加熱炉用搬送ローラによると、前記セラミック成分は、ジルコニアである。これにより、環状突起を効果的に保護することができ、環状突起の耐久性がより高められる。
【0010】
好ましい一態様の加熱炉用搬送ローラによると、前記環状突起の外周面にR加工が施されている。これにより、環状突起と被加熱物との接触面積をより小さくすることができるため、被加熱物と加熱炉用搬送ローラとの反応をより低減することができる。
【0011】
好ましい一態様の加熱炉用搬送ローラによると、前記被加熱物は、アルミニウム成分を含む表面処理が施された鋼板である。アルミニウム成分を含む表面処理が施された鋼板が加熱炉内において高温に晒されると、アルミニウム成分が溶融することがある。ここで、アルミニウムは、セラミック材料から形成された内側管状部材との反応性が高いが、内側管状部材は外側管状部材の内部に設けられており、内側管状部材と被加熱物とは直接接触しないため、内側管状部材の劣化を防止することができる。
【0012】
ここに開示される加熱システムは、前記被加熱物を加熱する前記加熱炉と、複数の前記加熱炉用搬送ローラと、を備え、複数の前記加熱炉用搬送ローラは、前記被加熱物の搬送方向に並列するように前記加熱炉内に配置され、前記搬送方向に隣り合う前記加熱炉用搬送ローラを第1搬送ローラおよび第2搬送ローラとしたとき、前記第1搬送ローラの前記環状突起と前記第2搬送ローラの前記環状突起とは、前記加熱炉用搬送ローラの長手方向に関して偏倚して配置されている。かかる構成によると、搬送方向に並列する加熱炉用搬送ローラ同士の間隔を小さくすることができるため、加熱炉内により多くの加熱炉用搬送ローラを配置したり、或いは、加熱炉の搬送方向の長さをより短くしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る連続焼成炉を模式的に示す縦断面図である。
図2】一実施形態に係る連続焼成炉を模式的に示す横断面図である。
図3】一実施形態に係る搬送ローラの一部を拡大した斜視図である。
図4】一実施形態に係る搬送ローラに被加熱物が支持された状態を示す正面図である。
図5】一実施形態に係る連続焼成炉内に配置された複数の搬送ローラの一部を示す平面図である。
図6】一実施形態に係る搬送ローラを支持する第1支持部材の拡大図である。
図7】一実施形態に係る搬送ローラを支持する第2支持部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0015】
図1は、連続焼成炉10を模式的に示す縦断面図である。図2は、連続焼成炉10を模式的に示す横断面図である。連続焼成炉10は、加熱炉の一例である。連続焼成炉10は、被加熱物5を加熱する。連続焼成炉10は、いわゆるローラハースキルンである。図1および図2に示すように、連続焼成炉10は、炉体11と、複数の搬送ローラ30と、搬送ローラ30を支持する支持機構50と、ヒータ90と、を備えている。
【0016】
被加熱物5は、例えば、鋼板である。鋼板は、例えば、プレスによる高張力鋼板の打ち抜き工程によって形成される。鋼板には、例えば、アルミニウム成分を含む表面処理が施されている。鋼板には、例えば、アルミニウム成分とケイ素成分とを含む皮膜(AlSi皮膜)が形成されている。鋼板としては、例えば、Arcelor Mittal社製のUsibor(登録商標)が挙げられる。被加熱物5は、搬送ローラ30上に載置される。
【0017】
図1に示すように、炉体11は、トンネル型に形成されており、内部に被加熱物5が搬送される搬送空間12を有する。炉体11の一方側の端部(ここでは前端)には、搬送空間12と連通し、かつ、被加熱物5を搬入するための入口13が設けられている。炉体11の他方側の端部(ここでは後端)には、搬送空間12と連通し、かつ、被加熱物5を搬出するための出口14が設けられている。被加熱物5は、搬送空間12内を入口13から出口14に向かって搬送される。被加熱物5が搬送される方向が搬送方向Xであり、炉体11の長手方向(ここでは前後方向)と一致する。
【0018】
図2に示すように、炉体11は、搬送空間12を囲う炉壁15を有している。炉壁15は、断熱材によって構成されている。炉壁15は、所定の形状に成形されたセラミックファイバーボードが重ねられているとよい。セラミックファイバーボードは、例えば、いわゆるバルクファイバーに無機フィラーと無機・有機結合材とが添加されて板状に成形された板材である。炉壁15は、搬送空間12の上方に位置する上壁15Aと、搬送空間12の下方に位置する下壁15Bと、搬送空間12の幅方向の片側(ここでは左方)に設けられた第1側壁15Cと、搬送空間12の幅方向の片側(ここでは右方)に設けられた第2側壁15Dとを有している。第1側壁15Cおよび第2側壁15Dには、搬送ローラ30が挿通される貫通孔16がそれぞれ形成されている。貫通孔16は、搬送ローラ30の外径よりも少し大きい内径を有している。第1側壁15Cと第2側壁15Dには、搬送ローラ30が架け渡されている。炉壁15の厚さは、搬送空間12の熱が十分に断熱される程度の所要の厚さに設定されている。
【0019】
図1に示すように、炉体11の搬送空間12には、複数のヒータ90が配置されている。ヒータ90は、搬送空間12において被加熱物5を加熱する部材である。複数のヒータ90は、搬送方向Xに沿って搬送空間12の上方および下方に所定の間隔を空けて並べられている。上方のヒータ90と下方のヒータ90との間に、複数の搬送ローラ30が配置されている。本実施形態では、ヒータ90は円柱形状であり、第1側壁15Cおよび第2側壁15Dを貫通している。ヒータ90としては、加熱温度等に応じて種々のヒータを用いることができ、例えば、セラミック製のヒータを用いることができる。なお、図2では、ヒータ90の図示を省略している。
【0020】
図1に示すように、搬送ローラ30は、連続焼成炉10の炉体11内に配置されている。搬送ローラ30は、加熱炉用搬送ローラの一例である。搬送ローラ30は、連続焼成炉10内で加熱された被加熱物5を支持する。搬送ローラ30は、被加熱物5を搬送する。図6に示すように、搬送ローラ30は、外側管状部材32と、外側管状部材32の内部に設けられた内側管状部材36と、外側管状部材32の外周面に沿って設けられた複数の環状突起40(図3参照)と、環状突起40に形成された保護部材45(図3参照)と、を有している。搬送ローラ30は、二重構造である。外側管状部材32は、管状に形成されている。外側管状部材32は、金属材料から形成されている。金属材料としては、例えば、耐熱性および耐腐食性を有するステンレス鋼(例えばSUS310S)やクロムモリブデン鋼等が挙げられる。内側管状部材36は、管状に形成されている。内側管状部材36は、セラミック材料から形成されている。セラミック材料としては、例えば、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ等が挙げられる。内側管状部材36の外径は、外側管状部材32の内径より小さい。内側管状部材36と外側管状部材32とは離間して配置され、内側管状部材36と外側管状部材32との間には空気層が形成されている。外側管状部材32および内側管状部材36の長手方向(ここでは左右方向)の長さは、第1側壁15Cおよび第2側壁15Dを貫通して、炉体11の外部に突出する長さに設定されている。内側管状部材36の左端部は、外側管状部材32の左端部より左方に位置する。即ち、内側管状部材36の左端部は、外側管状部材32から突出している。一方、図7に示すように、内側管状部材36の右端部は、外側管状部材32の右端部より右方に位置する。即ち、内側管状部材36の右端部は、外側管状部材32内に位置する。なお、少なくとも搬送空間12内では、内側管状部材36は、外側管状部材32の内部に位置する。
【0021】
図3に示すように、環状突起40は、外側管状部材32の外周面に沿ってリング状に形成されている。環状突起40は、金属材料から形成されている。金属材料としては、例えば、耐熱性および耐腐食性を有するステンレス鋼(例えばSUS310S)やクロムモリブデン鋼等が挙げられる。環状突起40は、被加熱物5(図1参照)を支持する。環状突起40の外周面40Aは、被加熱物5を支持する。環状突起40の外周面40AにはR加工が施されている。即ち、環状突起40の外周面40Aのうち被加熱物5と接触する部分は曲面である。環状突起40の側面40Bは、被加熱物5と接触しない。1つの外側管状部材32には、複数の環状突起40が設けられている。環状突起40は、左右方向に所定の間隔を空けて並ぶ。環状突起40は、例えば、溶接によって外側管状部材32に固定されている。
【0022】
図3に示すように、保護部材45は、環状突起40のうち少なくとも被加熱物5と接触する部分に形成されている。本実施形態では、保護部材45は、環状突起40の外周面40Aに形成されている。保護部材45は、環状突起40の側面40Bに形成されていてもよいが、環状突起40の側面40Bのうち少なくとも外側管状部材32と接触する部分には保護部材45は形成されていない。図4に示すように、環状突起40の外周面40Aは、保護部材45を介して間接的に被加熱物5を支持する。保護部材45は、セラミック成分を含むセラミック皮膜から構成されている。セラミック成分としては、例えば、各種金属の酸化物からなるセラミック(酸化物系セラミック)材料であってもよいし、炭化物、ホウ化物、窒化物、アパタイト等の非酸化物からなるセラミック材料であってよい。
【0023】
酸化物系セラミックとして、より具体的には、例えば、アルミナ、ジルコニア、イットリア、クロミア、チタニア、コバルタイト、マグネシア、シリカ、カルシア、セリア、フェライト、スピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、マンガン酸化物、酸化タンタル、酸化テルピウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、アンチモン含有酸化スズ、酸化インジウム、スズ含有酸化インジウム、酸化ジルコニウムアルミネート、酸化ジルコニウムシリケート、酸化ハフニウムアルミネート、酸化ハフニウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化ランタンシリケート、酸化ランタンアルミネート、酸化イットリウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化タンタルシリケート等が挙げられる。保護部材45を構成するセラミック成分としては、例えば、ジルコニアを好適に用いることができる。
【0024】
また、非酸化物系セラミックとしては、例えば、炭化タングステン(WC)、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素などの炭化物、ホウ化タングステン(WB)、ホウ化モリブデン、ホウ化クロム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化チタンなどのホウ化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物、フオルステライト、ステアタイト、コーディライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、サイアロン等の複合化物、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等のリン酸化合物等が挙げられる。
【0025】
セラミック皮膜は、例えば、溶射によって形成されたセラミック溶射皮膜である。溶射方法は特に限定されないが、例えば、大気プラズマ溶射(APS:atmospheric plasma spraying)、減圧プラズマ溶射(LPS:low pressure plasma spraying)、加圧プラズマ溶射(high pressure plasma spraying)等のプラズマ溶射法、酸素支燃型高速フレーム(High Velocity Oxygen Flame:HVOF)溶射法、ウォームスプレー溶射法および空気支燃型(High Velocity Air flame:HVAF)高速フレーム溶射法等の高速フレーム溶射等を好適に利用することができる。また、セラミック皮膜の形成方法は、溶射に限定されず、例えば、化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、スパッタリング、スピンコート、ディッピング、噴霧塗装等であってもよい。
【0026】
図5に示すように、搬送ローラ30は、被加熱物5の搬送方向Xに並列するように配置されている。搬送方向Xに隣り合う搬送ローラ30を第1搬送ローラ30Aおよび第2搬送ローラ30Bとしたとき、第1搬送ローラ30Aの環状突起40と第2搬送ローラ30Bの環状突起40とは、搬送ローラ30の長手方向(ここでは左右方向)に関して偏倚して配置されている。即ち、環状突起40が千鳥状になるように、複数の搬送ローラ30は連続焼成炉10内に配置されている。例えば、第1搬送ローラ30Aの環状突起40の一部と、第2搬送ローラ30Bの環状突起40の一部とが、搬送方向Xに重なっていてもよい。
【0027】
図2に示すように、炉体11の幅方向(ここでは左右方向)の外側には、搬送ローラ30を支持する支持機構50が設けられている。また、炉体11の側方には、炉体11内の雰囲気を維持するためのカバー54が取り付けられている。支持機構50は、カバー54の内側に収容されている。支持機構50は、ベース51と、支柱52と、支持フレーム53と、支持部材58と、を備えている。ベース51は、カバー54の底面部54Aに設けられている。支柱52は、ベース51から上方に向けて延びる。支柱52は複数設けられており、搬送方向Xに沿って所定の間隔を空けて配置されている。支持機構50は、搬送ローラ30の第1端部30Lを支持する第1支持機構50Aと、搬送ローラ30の第2端部30Rを支持する第2支持機構50Bと、を含む。本実施形態では、第1支持機構50Aは搬送ローラ30の従動側の支持機構であり、第2支持機構50Bは搬送ローラ30の駆動側の支持機構である。
【0028】
図2に示すように、支持フレーム53は、支柱52の上端に設けられている。支持フレーム53は、第1支持フレーム53Aと、第2支持フレーム53Bとを含む。第1支持フレーム53Aは、炉体11の第1側壁15Cの外方(ここでは左方)に配置されている。第1支持フレーム53Aには、軸受64(図6参照)が設けられている。第2支持フレーム53Bは、炉体11の第2側壁15Dの外方(ここでは右方)に配置されている。第2支持フレーム53Bには、軸受64(図7参照)が設けられている。
【0029】
図2に示すように、支持部材58は、第1支持部材58Aと,第2支持部材58Bとを含む。図6に示すように、第1支持部材58Aは、軸受64を介して第1支持フレーム53Aに回転可能に支持されている。第1支持部材58Aは、第1側壁15Cを貫通した搬送ローラ30の第1端部30Lを支持している。図7に示すように、第2支持部材58Bは、軸受64を介して第2支持フレーム53Bに回転可能に支持されている。第2支持部材58Bは、第2側壁15Dを貫通した搬送ローラ30の第2端部30Rを支持している。
【0030】
図6に示すように、第1支持部材58Aは、軸受64に支持される第1支持軸59Aと、第1支持軸59Aに接続されたバネ座部60Aと、バネ座部60Aに接続された第1挿入軸61Aと、第1挿入軸61Aの周囲に設けられたコイルばね62Aとを備えている。第1挿入軸61Aは、内側管状部材36に挿入される。コイルばね62Aは、バネ座部60Aおよび内側管状部材36の端部(ここでは左端部)に係止しており、内側管状部材36をバネ座部60Aから離れる方向(ここでは右方)に付勢する。
【0031】
図7に示すように、第2支持部材58Bは、軸受64に支持される第2支持軸59Bと、第2支持軸59Bに接続された台座部60Bと、台座部60Bに接続された第2挿入軸61Bと、第2挿入軸61Bの周囲に設けられた連結部材62Bと、を備えている。第2挿入軸61Bは、内側管状部材36に挿入される。連結部材62Bは、第2挿入軸61Bと一体的に形成されている。連結部材62Bは、内側管状部材36の端部(右端部)と接触する。連結部材62Bは、外側管状部材32に挿入される。連結部材62Bは、外側管状部材32と連結している。このため、第2挿入軸61Bが回転することによって、搬送ローラ30のうち少なくとも外側管状部材32が回転する。第2支持軸59Bの右端部には、スプロケット65が設けられている。スプロケット65には、ローラチェーン66が巻きかけられており、図示しない駆動機構を駆動することによって、スプロケット65に連結された第2支持軸59Bが軸受64周りに回転する。これにより、搬送ローラ30が回転する。
【0032】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。また、ここでの開示は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【0033】
上述した搬送ローラ30は、連続焼成炉10に用いていたが、これに限定されない。搬送ローラ30は、バッチ式加熱炉の搬送ローラとして用いてもよいし、間欠搬送式の加熱炉の搬送ローラとして用いてもよいし、ウォーキングビーム式加熱炉のビーム材として用いてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、環状突起40は、外側管状部材32と別体に設けられており、溶接によって外側管状部材32に固定されていたが、これに限定されない。例えば、環状突起40を肉盛り溶接によって外側管状部材32の外周面に直接形成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
5 被加熱物
10 連続焼成炉(加熱炉)
11 炉体
30 搬送ローラ(加熱炉用搬送ローラ)
32 外側管状部材
36 内側管状部材
40 環状突起
40A 外周面
45 保護部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7