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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165195
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】構造部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221024BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20221024BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
E04B1/94 H
E04B1/30 Z
E04B1/58 508T
E04B1/58 506T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070445
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】エキ田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】熊川 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 瑛一
(72)【発明者】
【氏名】間中 護
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA06
2E001GA12
2E001GA63
2E001GA66
2E001HA01
2E001HA03
2E001HA32
2E001HB02
2E001HC01
2E001LA11
2E001LA15
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB12
2E125AB16
2E125AC16
2E125AC24
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG23
2E125BB02
2E125BB05
2E125BB11
2E125BB12
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF06
2E125BF08
2E125CA05
2E125CA14
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】第1の荷重支持部と第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材と、第2の荷重支持部と第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材とを接合する接合構造において、第2の荷重支持部の加工手間、加工コストを削減できる構造部材の接合構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る構造部材の接合構造は、第1の荷重支持部(金属質柱10)と、第1の荷重支持部の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部11とを有した第1の構造部材1と、第2の荷重支持部(木質梁20)と、第2の荷重支持部の表面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部21とを有した第2の構造部材2と、第1の構造部材と第2の構造部材とを接合する接合手段3とを備え、接合手段3は、一端側が第1の耐火被覆部11を介さずに第1の荷重支持部(金属質柱10)に接合され、他端側が第2の耐火被覆部21を介して第2の荷重支持部(木質梁20)に接合されたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の荷重支持部と、第1の荷重支持部の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材と、
第2の荷重支持部と、第2の荷重支持部の表面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材と、
第1の構造部材と第2の構造部材とを接合する接合手段とを備え、
第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であり、
接合手段は、一端側が第1の耐火被覆部を介さずに第1の荷重支持部に接合され、他端側が第2の耐火被覆部を介して第2の荷重支持部に接合されたことを特徴とする構造部材の接合構造。
【請求項2】
互いに対向する第1の荷重支持部と第2の耐火被覆部との間を離間させたことを特徴とする請求項1に記載の構造部材の接合構造。
【請求項3】
第1の荷重支持部は金属質柱又は金属質梁であり、第2の荷重支持部は木質梁であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造部材の接合構造。
【請求項4】
接合手段は、
接合板と、固定手段とを備え、
接合板は、
木質梁の梁端部の一方の側面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部の表面に沿って設けられた一方接合板と、
木質梁の梁端部の一方の側面と対向する他方の側面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部の表面に沿って設けられた他方接合板とを備え、
固定手段は、
一方接合板の一端側又は他方接合板の一端側を第1の荷重支持部に固定する第1固定手段と、
一方接合板の他端側及び他方接合板の他端側を第2の構造部材に固定する第2固定手段とを備え、
第2固定手段は、
木質梁の梁端部の一方の側面を覆う第2の耐火被覆部の表面と木質梁の梁端部の他方の側面を覆う第2の耐火被覆部の表面との間の梁端部及び第2の耐火被覆部を貫通するように第2の構造部材に形成された構造部材側貫通孔と、一方接合板の他端側及び他方接合板の他端側に形成された接合板側貫通孔とを連通させて構成された軸材通し用貫通孔と、
軸材通し用貫通孔を貫通するように設けられた軸材と、
木質梁の梁端部の一方の側面を覆う第2の耐火被覆部を貫通した軸材の一端側及び一方接合板の他端側に締結された締結部材と、
木質梁の梁端部の他方の側面を覆う第2の耐火被覆部を貫通した軸材の他端側及び他方接合板の他端側に締結された締結部材とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の構造部材の接合構造。
【請求項5】
第2の耐火被覆部が石こうボードを含む1層以上の耐火被覆層により構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の構造部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の荷重支持部と当該第1の荷重支持部の表面を覆う第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材と、第2の荷重支持部と当該第2の荷重支持部の表面を覆う第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材とを接合するための、構造部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製の第1構造部材と、荷重を支持する木製の心材と当該心材の周囲を取り囲む燃え止まり層とを備えた第2構造部材と、燃え止まり層を介さずに心材に固定され、第1構造部材と第2構造部材とを接合し、第1構造部材から心材へ及び心材から第1構造部材へ力を伝える接合部材と、第1構造部材を覆い、当該第1構造部材から心材へ伝達される熱を心材が燃焼しない温度にする被覆層とを有する構造部材の接合構造が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5990425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造部材の接合構造では、接合部材が、燃え止まり層を介さずに心材に固定されて、第1構造部材と第2構造部材とを接合し、第1構造部材から心材へ及び心材から第1構造部材へ力を伝えるように構成されている。
つまり、特許文献1では、心材(木質柱)と梁(金属質梁(H形鋼))とを接合するための接合部材としてのガセットプレート(接合板)を、固定手段としてのボルト及びナットを使用して心材に固定した構造である。
このように、接合部材を、燃え止まり層を介さずに心材に固定して、かつ、心材の表面全体に燃え止まり層及び燃え代層を確実に設けられるようにするために、特許文献1においては、接合部材を心材に固定するための固定手段としてのボルトの一端部及びナットが心材の表面に突出しないようにする構成として、心材の表面に当該固定手段を収容するための凹部を形成するようにしている。
即ち、特許文献1に開示された構造部材の接合構造によれば、接合部材を、燃え止まり層を介さずに心材に固定する構造としているため、第2構造部材の荷重支持部としての心材の表面に、固定手段を収容する凹部を形成するための座繰り加工が必要となり、加工手間、加工コストが増えるという課題があった。
本発明は、上述した課題に鑑みて、第1の荷重支持部と当該第1の荷重支持部の表面を覆う第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材と、第2の荷重支持部と当該第2の荷重支持部の表面を覆う第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材とを接合する接合構造において、第2の荷重支持部の加工手間、加工コストを削減できる構造部材の接合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る構造部材の接合構造は、第1の荷重支持部と、第1の荷重支持部の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材と、第2の荷重支持部と、第2の荷重支持部の表面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材と、第1の構造部材と第2の構造部材とを接合する接合手段とを備え、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であり、接合手段は、一端側が第1の耐火被覆部を介さずに第1の荷重支持部に接合され、他端側が第2の耐火被覆部を介して第2の荷重支持部に接合されたことを特徴とする。
また、互いに対向する第1の荷重支持部と第2の耐火被覆部との間を離間させたことを特徴とする。
また、第1の荷重支持部は金属質柱又は金属質梁であり、第2の荷重支持部は木質梁であることを特徴とする。
また、接合手段は、接合板と、固定手段とを備え、接合板は、木質梁の梁端部の一方の側面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部の表面に沿って設けられた一方接合板と、木質梁の梁端部の一方の側面と対向する他方の側面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部の表面に沿って設けられた他方接合板とを備え、固定手段は、一方接合板の一端側又は他方接合板の一端側を第1の荷重支持部に固定する第1固定手段と、一方接合板の他端側及び他方接合板の他端側を第2の構造部材に固定する第2固定手段とを備え、第2固定手段は、木質梁の梁端部の一方の側面を覆う第2の耐火被覆部の表面と木質梁の梁端部の他方の側面を覆う第2の耐火被覆部の表面との間の梁端部及び第2の耐火被覆部を貫通するように第2の構造部材に形成された構造部材側貫通孔と、一方接合板の他端側及び他方接合板の他端側に形成された接合板側貫通孔とを連通させて構成された軸材通し用貫通孔と、軸材通し用貫通孔を貫通するように設けられた軸材と、木質梁の梁端部の一方の側面を覆う第2の耐火被覆部を貫通した軸材の一端側及び一方接合板の他端側に締結された締結部材と、木質梁の梁端部の他方の側面を覆う第2の耐火被覆部を貫通した軸材の他端側及び他方接合板の他端側に締結された締結部材とを備えたことを特徴とする。
また、第2の耐火被覆部が石こうボードを含む1層以上の耐火被覆層により構成されたことを特徴とする。
本発明に係る構造部材の接合構造によれば、第2の荷重支持部の加工手間、加工コストを削減できるようになる。
第1の荷重支持部と第2の荷重支持部と間の熱の伝達を、より効果的に抑制できるようになる。
さらに、耐火性能、施工性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の荷重支持部としての金属質柱を有した第1の構造部材と第2の荷重支持部としての木質梁を有した第2の構造部材との接合構造を示す斜視図(実施形態1)。
図2】第1の構造部材と第2の構造部材との接合構造を示す横断面図(実施形態1)。
図3図2のA-A断面図(縦断面図)(実施形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る構造部材の接合構造は、図1乃至図3に示すように、第1の荷重支持部と当該第1の荷重支持部の表面を覆う第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材1と、第2の荷重支持部と当該第2の荷重支持部の表面を覆う第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材2と、第1の構造部材1と第2の構造部材2とを接合する接合手段3とを備え、接合手段3は、一端側が第1の耐火被覆部を介さずに第1の荷重支持部に接合され、他端側が第2の耐火被覆部を介して第2の荷重支持部に接合された接合構造とした。
また、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であり、実施形態1に係る構造部材の接合構造では、荷重を支持する第1の荷重支持部としての例えば断面ロ字状の鋼管柱等の中空の金属質柱10と荷重を支持する第2の荷重支持部としての例えば木質梁20とが接合手段3により接合される。
【0008】
第1の構造部材1は、第1の荷重支持部としての金属質柱10と、当該金属質柱10の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部11とを備えた構成とした。
【0009】
第1の耐火被覆部11は、例えば金属質柱10の表面を覆うように設けられた石こうボード等の耐火板による耐火被覆層、あるいは、ロックウールとセメントとを混ぜ合わせた耐火被覆材を金属質柱10の表面に吹き付けて形成された耐火被覆層等により構成される。
尚、第1の耐火被覆部11を石こうボード等の耐火板による耐火被覆層で構成した場合には、第1の耐火被覆部11の表面には、表面仕上げ材を設けることが好ましいが、当該表面仕上げ材は設けなくても良い。
【0010】
第2の構造部材2は、第2の荷重支持部としての木質梁20と、当該木質梁20の表面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部21とを備えた構成とした。
【0011】
木質梁20は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された梁である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0012】
木質梁20の梁端部20e,20eには、一方の側面22X、及び、当該一方の側面22Xと対向する他方の側面22Yに亘って貫通する梁貫通孔26が形成されている。
当該梁貫通孔26は、後述する軸材としてのボルト6を貫通させるための貫通孔である。当該梁貫通孔26は、梁端部20eの梁成方向に沿って所定の間隔を隔てて複数形成されている。
また、木質梁20の上端面25の上には、上階の床スラブFが形成される。
【0013】
第2の耐火被覆部21は、木質梁20の両方の側面、即ち、一方の側面22Xと他方の側面22Yと下面23と梁端面24とを覆う耐火被覆層により構成される。
当該第2の耐火被覆部21は、例えば一層以上の石こうボード等の耐火部材により構成すればよい。
当該第2の耐火被覆部21は、具体的には、例えば、石こうボードと石こうボードとの間に断熱性(耐火性)を有した板(以下、耐熱耐火パネルという)を設けた積層構造の耐火被覆層とした。即ち、木質梁20の互いに対向する両方の梁側面22X,22Y、木質梁20の下面23、及び、木質梁20の梁端面24,24に、所定厚さの石こうボードを取付けた1層目の被覆層を形成するとともに、当該1層目の被覆層の表面に断熱耐火パネルを取付けた2層目の被覆層を形成し、当該2層目の被覆層の表面に所定厚さの石こうボードを取付けた3層目の被覆層を形成した耐火被覆構造、つまり、3層構造の耐火被覆層により構成された耐火被覆部とした。
尚、第2の耐火被覆部21の表面には、表面仕上げ材を設けることが好ましいが、表面仕上げ材は設けなくても良い。
また、第2の耐火被覆部21は、必ずしも3層構造である必要はなく、2層構造、単層構造、多層構造であってもかまわない。
即ち、第2の耐火被覆部21を、石こうボードを含む1層以上の耐火被覆層により構成したことにより、耐火性能、施工性を向上できる。
【0014】
接合手段3は、接合板と、固定手段とを備える。
接合板は、木質梁20の梁端部20eの一方の側面22Xを覆うように設けられた第2の耐火被覆部21の表面に板面が接触するように設置された一方接合板4と、木質梁20の梁端部20eの他方の側面22Yを覆うように設けられた第2の耐火被覆部21の表面に板面が接触するように設置された他方接合板5とを備える。
固定手段は、一方接合板4の一端側41又は他方接合板5の一端側51を金属質柱10(第1の荷重支持部)に固定する第1固定手段と、一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52を第2の構造部材2に固定する第2固定手段とを備える。
【0015】
一方接合板4は、例えば縦方向(木質梁20の梁成に沿った方向(梁成方向))に長く当該縦方向と直交する横方向(梁の延長方向)に沿った断面がL字状の鋼板により形成される。
同様に、他方接合板5は、例えば縦方向に長く当該縦方向と直交する横方向に沿った断面がL字状の鋼板により形成される。
言い換えれば、一方接合板4及び他方接合板5は、木質梁20の梁成に沿った縦方向に長い長方形の平鋼板の一方の長辺側の部分を当該一方の長辺と平行な折曲線に沿って折り曲げて、当該折り曲げられた一方の長辺側の部分の板面と他方の長辺側の部分の板面との成す角度が直角又は略直角になるように形成されたL形鋼板により構成される。
【0016】
一方接合板4は、一端側41となる一方の長辺側の部分の板面と金属質柱10の一側面12とを接触させた状態で、第1固定手段としての溶接によって、金属質柱10に固定される。
尚、金属質柱10の一側面12とは、木質梁20の梁端面24と対向する面である。
同様に、他方接合板5は、一端側51となる一方の長辺側の部分の板面と金属質柱10の一側面12とを接触させた状態で、第1固定手段としての溶接によって、金属質柱10に固定される。
また、一方接合板4は、他端側42となる他方の長辺側の部分の板面が、木質梁20の梁端部20eの一方の側面22Xを覆うように設けられた第2の耐火被覆部21の表面に沿って対向するように設けられて、当該他端側42となる他方の長辺側の部分の板面と当該第2の耐火被覆部21の表面とが接触状態となるように、第2固定手段によって、第2の構造部材2の梁端部20e側に固定される。
同様に、他方接合板5は、他端側52となる他方の長辺側の部分の板面が、木質梁20の梁端部20eの一方の側面22Yを覆うように設けられた第2の耐火被覆部21の表面に沿って対向するように設けられて、当該他端側52となる他方の長辺側の部分の板面と当該第2の耐火被覆部21の表面とが接触状態となるように、第2固定手段によって、第2の構造部材2の梁端部20e側に固定される。
【0017】
第2固定手段は、第2の構造部材2に形成された構造部材側貫通孔と一方接合板4の他端側42に形成された接合板側貫通孔66と他方接合板5の他端側42に形成された接合板側貫通孔66とで構成された軸材通し用貫通孔としてのボルト通し用貫通孔と、ボルト通し用貫通孔を貫通させた軸材としてのボルト6と、一方接合板4の他端側42の接合板側貫通孔66を貫通させて外方に突出させたボルト6の一端側61及び一方接合板4の他端側42に締結された締結部材としてのナット45と、他方接合板5の他端側52の接合板側貫通孔66を貫通させて外方に突出させたボルト6の他端側62及び他方接合板5の他端側52に締結された締結部材としてのナット55とを備えて構成される。
尚、ナット45、ナット55としては、ダブルナットを用いることが好ましい。
【0018】
構造部材側貫通孔は、木質梁20の梁端部20eの一方の側面22Xと他方の側面22Yとに亘って貫通するように形成された梁貫通孔26と、木質梁20の梁端部20eの一方の側面22Xを覆う第2の耐火被覆部21を貫通するように形成された被覆部貫通孔21aと、木質梁20の梁端部20eの他方の側面22Yを覆う第2の耐火被覆部21を貫通するように形成された被覆部貫通孔21aとが連通するように設けられて構成される。
そして、当該構造部材側貫通孔と、一方接合板4の他端側41の板を貫通するように形成された接合板側貫通孔66と、他方接合板5の他端側51の板を貫通するように形成された接合板側貫通孔66とを連通させることにより、ボルト通し用貫通孔が構成される。
構造部材側貫通孔は、木質梁20の梁端部20eの側面22X,22Yにおける梁成方向(縦方向)に沿って所定の間隔を隔てて複数形成される。
また、接合板側貫通孔66は、一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52の板の縦方向(梁成方向)に沿って、構造部材側貫通孔間の所定の間隔と同じ所定間隔を隔てて複数形成される。
尚、構造部材側貫通孔は、ボルト6の径寸法に対応した径寸法の断面円形孔に形成される。
また、接合板側貫通孔66は、一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52の板の横方向(梁の延長方向)に長い長径で長孔に形成される。当該接合板側貫通孔66の短径寸法は、ボルトの径寸法に対応した径寸法に形成される。
このように、接合板側貫通孔66を梁の延長方向に長くなる長孔に形成したため、対応する第2の構造部材2の構造部材側貫通孔の中心と一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52の接合板側貫通孔66,66の中心とが梁の延長方向にずれたとしても、当該構造部材側貫通孔と接合板側貫通孔66,66とを連通させたボルト通し用貫通孔を容易に形成できるようになるため、第2の構造部材2の梁端部20e側と一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52との接合作業を容易に行えるようになる。
【0019】
以上説明した構成の接合構造の施工手順の一例について説明する。
まず、木質梁20の互いに対向する両方の梁側面22X,22Y、木質梁20の下面23、及び、木質梁20の梁端面24,24に、第2の耐火被覆部21が設けられて、構造部材側貫通孔(梁貫通孔26及び被覆部貫通孔21a,21a)が形成されるように作製された第2の構造部材2を用意しておく。
そして、木質梁20の梁端面24と対向させる金属質柱10の一側面12に、一方接合板4の一端側41と、他方接合板5の一端側51とを、第1固定手段としての溶接により固定する。この場合、一方接合板4の他端側42の板面と他方接合板5の他端側52の板面との間の対向間隔寸法が、第2の構造部材2の一方の側面と他方の側面との間の間隔寸法に対応した寸法になるように固定する。
次に、金属質柱10の露出した表面に第1の耐火被覆部11を形成する。
そして、第2の構造部材2の梁端部20e側を、一方接合板4の他端側42の板面と他方接合板5の他端側52の板面との間に設置して、一方接合板4の他端側42の接合板側貫通孔66と第2の構造部材2の構造部材側貫通孔と他方接合板5の他端側52の接合板側貫通孔66とを連通させた複数のボルト通し用貫通孔を形成した後、各ボルト通し用貫通孔に、それぞれ、ボルト6,6…を貫通させる。
その後、一方接合板4の他端側42の接合板側貫通孔66を貫通させて外方に突出させたボルト6の一端側61にナット45を螺着するとともに、他方接合板5の他端側52の接合板側貫通孔66を貫通させて外方に突出させたボルト6の他端側62にナット55を螺着して、当該ナット45及びナット55を締結することにより、一方接合板4の他端側42が第2の構造部材2の梁端部20e側に固定されるとともに、他方接合板5の他端側52を第2の構造部材2の梁端部20e側に固定される。
換言すれば、ナット45は、木質梁20の梁端部20eの一方の側面22Xを覆う第2の耐火被覆部21を貫通した軸材としてのボルト6の一端側61及び一方接合板4の他端側42に締結された締結部材として機能する。同様に、ナット55は、木質梁20の梁端部20eの他方の側面22Yを覆う第2の耐火被覆部21を貫通した軸材としてのボルト6の他端側62及び他方接合板5の他端側52に締結された締結部材として機能する。
以上により、第1の構造部材1と第2の構造部材2とが接合手段3により接合される。
そして、上階の床スラブFを形成するための図外のコンクリート打設用の型枠を設置して、当該型枠の上、及び、木質梁20の上端面25の上にコンクリートを打設することにより、上階の床スラブFを形成する。
尚、上述した施工手順の順番は、あくまでも一例であり、施工手順は上述した順番でなくとも構わない。
例えば、予め一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52を第2の構造部材2の梁端部20e側に取付けておいてから、一方接合板4の一端側41及び他方接合板5の一端側51を、金属質柱10の一側面12に溶接して固定するようにしてもよい。
尚、図示は省略したが、木質梁20の互いに対向する両方の梁側面22X,22Yに設けられた第2の耐火被覆部21の表面に露出することになる、一方接合板4の他端側42,他方接合板5の他端側52、ボルト6の両端側(一端側61,他端側62)、ナット45,55の表面にも、第1の耐火被覆部11を形成する。
【0020】
実施形態1に係る接合構造によれば、一方接合板4の一端側41及び他方接合板5の一端側51が第1の耐火被覆部11を介さずに金属質柱10に接合されて、かつ、一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52が第2の耐火被覆部21を介して木質梁20に接合された接合構造としたので、第2の荷重支持部としての木質梁20の梁端部20eの表面に、固定手段としてのボルト6の一端側61,他端側62及びナット45,55を収容するための凹部を形成する必要がなくなり、このため、第2の荷重支持部としての木質梁20の表面に当該凹部を形成するための座繰り加工を不要とでき、加工手間、加工コストを削減できる。
即ち、第1の荷重支持部としての金属質柱10と当該金属質柱10の表面を覆う第1の耐火被覆部11とを有した第1の構造部材1と、第2の荷重支持部としての木質梁20と当該木質梁20の表面を覆う第2の耐火被覆部21とを有した第2の構造部材2とを接合する接合構造において、木質梁20の加工手間、加工コストを削減できる接合構造を提供できるようになった。
また、一方接合板4の一端側41及び他方接合板5の一端側51と金属質柱10との接合作業、一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52と第2の構造部材2と接合作業が容易になる。
【0021】
実施形態2
実施形態1では、第1の荷重支持部としての金属質柱10と第2の荷重支持部としての木質梁20との接合構造を例示したが、例えば金属質柱10に接合された図外の第1の荷重支持部としての金属質梁と当該金属質梁の表面を覆う第1の耐火被覆部とを有した第1の構造部材と、第2の荷重支持部としての木質梁と当該木質梁の表面を覆う第2の耐火被覆部とを有した第2の構造部材とを接合する接合構造においても、実施形態1と同様に構成できる。
この場合、一方接合板4の一端側41と他方接合板5の一端側51とを、例えば、第1の荷重支持部としての金属質梁を形成するH形鋼のウェブに溶接で固定するとともに、実施形態1と同様に、一方接合板4の他端側42及び他方接合板5の他端側52を第2の構造部材の梁端部側に固定すればよい。
以上説明した実施形態2に係る第1の構造部材と第2の構造部材との接合構造であっても、実施形態1と同様な効果が得られる。
【0022】
尚、上記では、一方接合板4及び他方接合板5として、L形鋼板を使用した例を示したが、一方接合板4及び他方接合板5としては、L形鋼板以外の、例えば、断面T字のT形鋼板、平鋼板等を使用しても良い。
【0023】
また、上記では、第1固定手段として、溶接を使用した例を示したが、第1固定手段としては、一方接合板の一端側41と金属質柱10や金属質梁とを固定するボルト及びナット、あるいは、他方接合板の一端側51と金属質柱10や金属質梁とを固定するボルト及びナットを用いてもよい。
【0024】
また、上記では、互いに対向する第1の荷重支持部10と第2の耐火被覆部21との間、例えば、図2図3に示すように、互いに対向する金属質柱10の一側面12と木質梁20の梁端面24に設けられた第2の耐火被覆部21との間の間隔Sを第1の耐火被覆部11の厚さに対応させた間隔に設定した構成を例示したが、当該間隔Sを耐火被覆部11の厚さよりも大きい間隔にして、第2の耐火被覆部21と第1の耐火被覆部11との間に空間を設けるようにしてもよい。
即ち、互いに対向する第1の荷重支持部と第2の耐火被覆部21との間を離間させた構造とすればよく、この場合、互いに対向する第1の荷重支持部と第2の耐火被覆部21との間の間隔Sを、耐火被覆部11を介して離間させた構成、あるいは、互いに対向する第1の荷重支持部と第2の耐火被覆部21との間隔Sを、耐火被覆部11と空間とで形成した構成としてもよい。
このようにすれば、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部と間の熱の伝達を、より効果的に抑制できるようになる。
【0025】
また、各実施形態では、第1の荷重支持部が金属質柱10又は金属質梁であり、第2の荷重支持部が木質梁20である場合を例にして説明したが、本発明の接合構造は、第1の荷重支持部が金属質梁であり、第2の構造部材の第2の荷重支持部が木質柱又は木質梁である場合であっても適用可能である。
この場合、例えば、木質柱又は木質梁の表面を覆う第2の耐火被覆部の表面側に一方接合板及び他方接合板の他端側を配置して、木質柱又は木質梁及びこれら接合板の他端側に形成されたボルト通し用貫通孔に貫通させたボルトの一端側及び他端側にナットを締結して一方接合板及び他方接合板の他端側を第2の構造部材に固定するとともに、一方接合板及び他方接合板の一端側を金属質梁を形成するH形鋼のウェブに溶接等で固定した接合構造とすればよい。
【0026】
尚、上記では、第1の荷重支持部及び第2の荷重支持部のうちの、一方が金属質の荷重支持部、他方が木質の荷重支持部の場合を例示したが、第1の荷重支持部及び第2の荷重支持部は、金属質や木質以外の荷重支持部であってもよい。例えば、第1の荷重支持部及び第2の荷重支持部のうちの、一方が金属質の荷重支持部、他方がコンクリートの荷重支持部であってもよい。
即ち、本発明の接合構造では、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であればよい。
【0027】
また、本発明は、柱、梁以外の構造部材の接合構造にも適用可能である。
例えば、柱と耐震壁との接合構造、柱と床との接合構造、耐震壁と床との接合構造等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 第1の構造部材、2 第2の構造部材、3 接合手段、4 一方接合板、
5 他方接合板、6 ボルト(軸材)、10 金属質柱(第1の荷重支持部)、
11 第1の耐火被覆部、20 木質梁(第2の荷重支持部)、20e 梁端部、
21 第2の耐火被覆部、45,55 ナット(締結部材)。
図1
図2
図3