(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165205
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】作業用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/24 20060101AFI20221024BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B60N2/24
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070465
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】相良 聡也
(72)【発明者】
【氏名】麻生川 克憲
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 卓
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CA19
3B087CE10
3B087DA10
(57)【要約】
【課題】車室内で着座した状態における作業性を向上させる作業用シートを提供する。
【解決手段】作業用シートでは、支持部材の、座面部とは反対側の端部は、車両用シートのシートクッションの下方に位置する車体フロアのうち、平面視で車両用シートと重なる領域に載置可能、若しくは、車両用シートのフレームに係合可能に構成されている。支持部材の端部が車体フロアの当該領域に載置されまたはフレームに係合し、かつ、係脱部がストライカに係合したとき、座面部が、シートクッション上またはその上方の位置に位置決めされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアに設けられた車両用シートに着脱可能に位置決めされる作業用シートであって、
座面部と背もたれ部とを含む座席部と、
前記座席部から後方に延出する、前記車両用シートまたは前記車体フロアに配設されたストライカと係脱可能に構成された係脱部を有する係脱部材と、
前記座面部から下方に延伸する下方延伸部を含む支持部材と、
を備え、
前記支持部材の、前記座面部とは反対側の端部は、前記車両用シートのシートクッションの下方に位置する前記車体フロアのうち、平面視で前記車両用シートと重なる領域に載置可能、若しくは、前記車両用シートのフレームに係合可能に構成されており、
前記支持部材の端部が前記車体フロアの前記領域に載置されまたは前記フレームに係合し、かつ、前記係脱部が前記ストライカに係合したとき、前記座面部が、前記シートクッション上またはその上方の位置に位置決めされる、作業用シート。
【請求項2】
前記下方延伸部は上下方向における長さを調整する機構を備える、請求項1に記載の作業用シート。
【請求項3】
前記係脱部材は、前記座席部の幅方向において離間する一対の係脱部材を含み、
前記座席部の幅方向における、前記一対の係脱部材同士の間隔を調整する機構を備える、請求項1又は2に記載の作業用シート。
【請求項4】
前記座席部の幅方向における、前記一対の係脱部材同士の中心と、前記座席部の中心と、が一致するように調整する機構を備える、請求項3に記載の作業用シート。
【請求項5】
前記背もたれ部は前記座面部に対して倒伏可能に配設され、
前記係脱部材は、前記座席部に設けられた前記座席部の前後方向に延在するガイド部材に沿って摺動可能に配設され、
前記下方延伸部は、取手部を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の作業用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、大人用シートのクッション上に配置する本体と、本体の後部に取り付けられた1対のISOFIXラッチと、大人用シートのクッションの前縁を越え、かつ、車両の床に当接するように、本体の前方部付近に取り付けられた脚支柱と、子供用キャリアを本体に係合するための係合機構と、を備えた、ISOFIXループを装備した車両の大人用シートに使用される、子供用キャリアを装着可能な、安全支持体構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シート上に着脱可能に位置決めされるシートを、当該シートの座面部から下方に向けて鉛直に延伸させた支持部材を車体フロアに当接させて支持した場合、当該シートに着座した乗員が踵を後方に引く動作が、車体フロアに当接する支持部材により規制されるおそれが有った。そのため、車室内で着座した状態における作業性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、車室内で着座した状態における作業性を向上させる作業用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる作業用シートでは、支持部材の、座面部とは反対側の端部は、車両用シートのシートクッションの下方に位置する車体フロアのうち、平面視で車両用シートと重なる領域に載置可能、若しくは、車両用シートのフレームに係合可能に構成されている。支持部材の端部が車体フロアの当該領域に載置されまたはフレームに係合し、かつ、係脱部がストライカに係合したとき、座面部が、シートクッション上またはその上方の位置に位置決めされる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車室内で着座した状態における作業性を向上させる作業用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る作業用シートの部分側面図であり、作業用シートが車両用シートに位置決めされ、乗員が着座した状態を示す図である。
【
図2】実施形態に係る作業用シートの部分斜視下面図である。
【
図3】実施形態に係る作業用シートの部分側面図であり、作業用シートが車両用シートに位置決めされ、乗員が着座した状態を示す図である。
【
図4A】実施形態に係る作業用シートの支持部材の長さ調整機構を説明するための模式的断面図であって、支持部材の上下方向の長さを所定の長さにした状態を示す図である。
【
図4B】実施形態に係る作業用シートの支持部材の長さ調整機構を説明するための模式的断面図であって、支持部材の上下方向の長さを、
図4Aに示す長さよりも長くした状態を示す図である。
【
図5A】実施形態に係る作業用シートの、係脱部材間隔調整機構を説明するための模式的部分下面図であって、所定の間隔で一対の係脱部材を配設した状態を示す図である。
【
図5B】実施形態に係る作業用シートの、係脱部材間隔調整機構を説明するための模式的部分下面図であって、一対の係脱部材同士の間隔を
図5Aに示す間隔よりも広げた状態を示す図である。
【
図6A】実施形態に係る作業用シートを折畳む手順を説明するための図であって、作業用シートの折畳む前の状態を示す図である。
【
図6B】実施形態に係る作業用シートを折畳む手順を説明するための図であって、作業用シートの折畳んだ後の状態を示す図である。
【
図6C】実施形態に係る作業用シートの運搬時の状態を示す図であって、作業用シートの座面部の前方側端部を上方に向けた状態を示す図である。
【
図6D】実施形態に係る作業用シートの収納状態を示す図であって、作業用シートを車両用シートの後方に収納した状態を示す図である。
【
図7】実施形態の変形例に係る作業用シートの部分側面図であり、作業用シートが車両用シートに位置決めされ、乗員が着座した状態を示す図である。
【
図8】実施形態に係る作業用シートの作用を説明するための図であって、作業用シートを配設する車両シートの模式的正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態にかかる作業用シートについて説明する。なお、各図中のFR,RRは、作業用シート前後方向前方、後方をそれぞれ示し、UP,DNは、作業用シート上下方向上方、下方をそれぞれ示し、LH,RHは、作業用シート左右方向左方、右方をそれぞれ示す。なお、以下の説明では、作業用シート前後方向前方、後方、作業用シート上下方向上方、下方、作業用シート左右方向左方、右方を、それぞれ単に「前方」「後方」「上方」「下方」「左方」「右方」と称する。また、座席部幅方向とは、車両用シートの幅方向と平行な方向である。座席部幅方向における座席部中心側を向く方向を座席部幅方向内側といい、座席部幅方向内側とは反対を向く方向を座席部幅方向外側という。また、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態にかかる作業用シートは、例えば、図示しない車両としての乗用車の車室内後部において、車体フロアに配設された車両用シートである後部座席に、着脱可能に位置決めして用いることができる。車両用シートに作業用シートを位置決めする際には、車両用シートの向きと作業用シートの向きとを揃えて位置決めする。換言すれば、作業用シートの前方、後方、上方、下方、左方、及び右方の各々は、車両用シートの前方、後方、上方、下方、左方、及び右方に対応する。
【0011】
本実施形態にかかる作業用シート1は、
図1及び
図3に示すように、座席部10、係脱部材40、及び支持部材50を備える。
【0012】
座席部10は、作業用シート1における、乗員Pが着座するための領域である。座席部10は、乗員が作業用シート1に着座したときに乗員を下方から支持する座面である座面部12と、乗員を後方から支持する背もたれ部15と、を含む。また、座席部10の前方、後方、上方、下方、左方、及び右方の各々は、作業用シート1の前方、後方、上方、下方、左方、及び右方に対応する。
【0013】
座面部12は、上下方向に扁平な略直方体形状の部材であり、作業用シート1が車両用シート100に位置決めされたとき、車両用シート100のシートクッション102の上、又はその上方の位置に位置決めされる。座面部12は、例えばウレタンフォーム等の芯材を布織物等の外装材で覆って構成されてもよい。ウレタンフォームとしては、例えば、JIS K 6400-3:2011に記載の試験方法により求められた反発弾性が15%以上50%未満のモールドウレタンや、50%以上の高弾性モールドウレタンを用いることができる。また、ポリエステル等の繊維をメッシュ状に織って構成した生地を図示しないフレーム部材に所定の張力で張り付け構成してもよい。
【0014】
このような座面部12によれば、作業用シート1を車両用シート100に位置決めし乗員Pが作業用シート1に着座した状態(以下、着座状態という)において、座面部12と乗員Pとの接触面積を大きくし、座面部12との接触面から乗員Pに入力される圧力、即ち体圧を分散することができる。また、着座状態において、座面部12に対して乗員Pが過度に沈み込むのを抑制し、乗員Pの姿勢をより安定させることができる。
【0015】
座面部12の上下方向における厚みは特に限定されるものではなく、作業用シート1を設置する車両用シートの、座面部の座面と車体フロアとの間の距離であるヒール段差の値によって適宜設定することができる。また、座面部12の形状は図示の例に限定されない。例えば、平面視で略円形又は略楕円形の形状としてもよく、前後方向視で下方に向けて凸状の円弧形状となるように、座面部12全体を湾曲させてもよい。
【0016】
背もたれ部15は座面部12の後方側端部から上方に延在する壁状の部材であり、作業用シート1が車両用シート100に位置決めされたとき、車両用シート100のシートバック105と前後方向において対向するように配置される。なお、図に例示するように、背もたれ部15は、座面部12の後方側端部に設けられたヒンジ等の支軸を介して、座面部12に対して倒伏可能に支持されてもよい。
【0017】
また、背もたれ部15は座席部10幅方向と平行な軸方向視において、前方に向けて凸となる円弧形状に湾曲し、着座状態において、乗員Pの骨盤上部、又は腰椎等を後方から支持するように構成される。例えばある実施形態では、背もたれ部15は乗員Pの第3腰椎乃至第5腰椎の少なくとも一部を後方から支持してもよい。また、ある実施形態では、背もたれ部15は、座面部から上方に15cm乃至25cmの高さにおいて、乗員Pの第3腰椎乃至第5腰椎、及び骨盤上部に対応する背面に当接し、後方から支持してもよい。このようにする事で、着座状態における乗員Pの骨盤及び脊椎が直立した姿勢となるように、乗員Pの腰部をより確実に支持することができる。
【0018】
なお、背もたれ部15は、例えば、ポリエステル等の繊維をメッシュ状に織って構成した生地を図示しないフレーム部材に所定の張力で張り付け構成してもよい。
【0019】
このような座面部12及び背もたれ部15を含む座席部10を備えるため、作業用シート1は、着座状態において、乗員Pが直立姿勢を取ることによる疲労を抑制し、着座状態における作業性を向上させることができる。
【0020】
作業用シート1は例えば樹脂等からなる肘掛部17を備えてもよい。図示した例では、肘掛部17の後方側端部は、背もたれ部15の後方側に設けられたブラケット等の固定具に配置されたヒンジに軸支される。そのため、肘掛部17は当該ヒンジを支軸として所定の角度範囲で回転可能に、背もたれ部15に支持されることとなる。このため、例えば、着座状態である乗員Pが車両から降りる際、又は乗員Pが着座状態になるために車両に乗る際に、肘掛部17を上方に回動させることができる。そのようにすることで、乗員Pはより容易に乗降動作を取ることができる。従って、車両に対する乗員Pの乗降のしやすさである乗降性を向上させることができる。
【0021】
また、作業用シート1は座席部10の左方及び右方の各々に1つずつ、一対の肘掛部を含んでもよい。さらに、一対の肘掛部は、座席部10の後方側に配設され座席部10幅方向に延在する、例えば金属等からなる円柱形状の長尺部材を介して連結されてもよい。これにより、一対の肘掛部のうち一方を回動させると、それに連動して他方も回動することとなる。換言すれば、肘掛部17は、連動して回動可能に背もたれ部15に支持される一対の肘掛部を含んでもよい。このようにすることで、例えば、着座状態である乗員Pが車両から降りる際、又は乗員Pが着座状態になるために車両に乗る際に、当該一対の肘掛部の一方を上方に回動させると、他方も連動して上方に回動することとなる。そのため、乗降性をより向上させることができる。
【0022】
図2に示すように、座面部12の下面には、座席部10の前後方向に延在するガイド部材20が配設される。また、図示した例では、ガイド部材20は一対のガイド部材20a,20bを含む。一対のガイド部材20a,20bは、例えば金属又は硬質樹脂等からなる中空角柱形状のパイプである。また、ガイド部材20aの前方側及び後方側にはそれぞれ、座席部10幅方向内側に向けて延出する、ボルト状の延出部25a及び円柱状の延出部25bが配設される。また、ガイド部材20bはガイド部材20aから座席部10幅方向において離間して配設されている。ガイド部材20bの前方側及び後方側にはそれぞれ、座席部10幅方向内側に向けて延出する、ボルト状の延出部25c及び円柱状の延出部25dが配設される。そして、延出部25aと延出部25cとは座席部10幅方向において対向し、延出部25bと延出部25dとは座席部10幅方向において対向するように配設される。
【0023】
延出部25a,25bは座面部12の底面に設けられたブラケット等の固定具に遊嵌されている。より具体的には、延出部25a,25bは各々、当該固定具に設けられた座席部10幅方向に貫通する開口部に摺動可能に挿入されている。このため、ガイド部材20aは座席部10幅方向に摺動可能に支持される。同様に、延出部25c,25dは座面部12の底面に設けられた固定具に遊嵌され、ガイド部材20bは座席部10幅方向に摺動可能に支持される。
【0024】
ガイド部材20aとガイド部材20bとの間には、座席部10幅方向に延在する中空円筒状の連結部材30が配設される。連結部材30の内周面にはネジ山が形成され、ガイド部材20aの延出部25a、及びガイド部材20bの延出部25cと螺合可能に構成されている。
図2に示す例では、連結部材30の右側で延出部25aと連結部材30とが螺合し、左側で延出部25cと連結部材30とが螺合している。また連結部材30の座席部10幅方向における略中央部には、それ以外の部分の外径よりも大きな外径を有するダイヤル部31が形成される。ダイヤル部31の外周面にはローレット加工等の滑り止め加工が施されていてもよい。
【0025】
ここで、連結部材30をその延在する方向と平行な中心軸周りに回転することにより、延出部25a、及び延出部25cが連動して連結部材30に対して出入りするように構成されている。例えば、連結部材30を当該中心軸周りにおいて一側に向けて回転したときには、延出部25a及び延出部25cが座席部10幅方向内側に向けて移動し、他側に向けて回転したときには、延出部25a及び延出部25cが座席部10幅方向外側に向けて移動するように構成されている。このような構成にするには、例えば、延出部25aを正ネジとし、延出部25cを逆ネジとし、連結部材30の一側内周面には延出部25aのネジ山に対応するネジ山を形成し、他側内周面には延出部25cのネジ山に対応するネジ山を形成して、連結部材30の一側に延出部25aを螺合し、他側に延出部25cを螺合すればよい。
【0026】
このように延出部25a又は延出部25cの連結部材30に対する出入りを調整することにより、座席部10幅方向における一対のガイド部材20a,20b同士の間隔を調整することができる。例えば
図5Aに示す状態において、ダイヤル部31を矢印A方向に回転操作し、延出部25a及び延出部25cを座席部10幅方向外側に向けて移動させることにより、
図5Bに示すように、一対のガイド部材20a,20b同士の間隔を広げることができる。また、延出部25a、及び延出部25cは連動して連結部材30に出入りするため、座席部10幅方向において、一対のガイド部材20a,20bの各々と座席部10の中心との間隔を等しく保ちながら、一対のガイド部材20a,20b同士の間隔を調整することができる。
【0027】
なお、
図2に例示すように、一対のガイド部材20a,20bの間には、中空円筒状のパイプ32が介在してもよい。パイプ32の座席部10幅方向両端にはそれぞれ、ガイド部材20aの延出部25b、及びガイド部材20bの延出部25dが摺動可能に挿入される。
【0028】
ガイド部材20には、係脱部材40がガイド部材20に沿って摺動可能に配設される。換言すれば、係脱部材40の外壁部とガイド部材20の内壁部とが摺動可能に、係脱部材40がガイド部材20に挿入される。図示した例では、係脱部材40は、座席部10から後方に延出する角柱形状の長尺部材であり、座席部10幅方向において離間する一対の係脱部材40a,40bを含む。係脱部材40aはガイド部材20aに挿入され、係脱部材40bはガイド部材20bに挿入される。
【0029】
係脱部材40は後方側端部に係脱部42を備える。図示した例では、係脱部42は、車両用シート100のシートクッション102とシートバック105との間に配設された、金属製の円柱部材を屈曲して形成された略U字型のストライカ109と係脱可能なラッチである。そして、係脱部42とストライカ109とを係合することにより、作業用シート1は車両用シート100に位置決めされた状態、即ち位置決め状態となる。係脱部42がラッチである場合には、作業用シート1を車両用シート100に固定し、より確実に位置決めすることができる。なお、ストライカ109は、例えば、図示しない子供用安全シートを車両用シート100に取り付けるためのシステムであるISOFIXに用いられる固定具である。
【0030】
なお、係脱部42はラッチに限定されない。ある実施形態では、係脱部材40の後方側端部に係脱部42としての切欠き部が形成されていてもよい。当該切欠き部は、例えば、係脱部材40の下面において、座席部10幅方向における係脱部材40の一側から他側にかけて延在する溝部である。当該溝部の座席部10幅方向と平行な軸方向視における断面形状には、円形、矩形、台形、多角形等の形状を適宜適用することができる。当該切欠き部はストライカ109に係脱可能である。例えば、ストライカ109に対して上方から当該切欠き部を係合させることで、作業用シート1の前後方向の移動を規制し、位置決め状態にすることができる。係脱部42が切欠き部である場合には、作業用シート1を車両用シート100により容易に位置決めすることができる。
【0031】
なお、ストライカ109は車体フロア110に配設されていてもよい。より具体的には、車体フロア110のうち、シートクッション102の後方の領域にストライカ109を配設してもよい。
【0032】
上記のように、一対のガイド部材20a,20bは、座席部10幅方向における互いの間隔を調整可能である。また、一対のガイド部材20a,20bの各々と座席部10の中心との間隔を等しく保ちながら、一対のガイド部材20a,20b同士の間隔を調整することができる。従って、作業用シート1は、座席部10幅方向における、一対の係脱部材40a,40b同士の間隔を調整する機構である係脱部材間隔調整機構を備える。また、係脱部材間隔調整機構は、座席部10幅方向における、一対の係脱部材40a,40b同士の中心と、座席部10の中心と、が一致するように調整することが可能な機構である。
【0033】
なお、係脱部材間隔調整機構は図に例示した構造に限定されない。例えば、ある実施形態では、延出部25a及び延出部25cの外周面、並びに連結部材30の内周面にネジ山を設けなくてもよい。その場合には、連結部材30に、その延在方向と長手方向が一致する長穴を設け、延出部25a及び延出部25cにネジ穴を設けてもよい。そして、当該長穴を介してボルトと当該ネジ穴とを締結し、ボルト頭部と連結部材30との間に摩擦力を生じさせることで、延出部25a及び延出部25cの座席部10幅方向への移動を拘束することができる。また、一対の係脱部材40a,40b同士の間隔を調整する場合には、当該ボルトの締結を緩め、延出部25a及び延出部25cの連結部材30に対する出入りを適宜調整し、再度当該ボルトを締めて固定すればよい。
【0034】
支持部材50は座面部12支持する部材であり、座面部12から下方に延伸する下方延伸部52を含む。また、
図2に例示するように、下方延伸部52の下端部から後方に延伸する後方延伸部59を有してもよい。図示した例では、座面部12の底面前方側から下方に、前後方向視で略矩形の形状を有する、例えば金属製の板状部材である下方延伸部52が延伸する。また、下方延伸部52の下端部から後方に、平面視で略矩形の形状を有する、例えば金属製の板状部材である後方延伸部59が延伸する。なお、
図7に示すように、後方延伸部59は、その後端部から上方に延伸する上方延伸部65と、上方延伸部65の上端部から後方に延伸する第2後方延伸部66とからなる係合部67を含んでもよい。
【0035】
下方延伸部52は、その上下方向における長さを調整する機構である長さ調整機構を備えてもよい。
図4A及び
図4Bに示す長さ調整機構の一例では、下方延伸部52は第1下方延伸部52aと、第2下方延伸部52bとを含む。第1下方延伸部52aと第2下方延伸部52bとは、前後方向において接触するように配設される。第1下方延伸部52aには、前後方向に向けて略円形に開口した穴部53が形成され、第2下方延伸部52bには、前後方向に向けて上下方向を長手方向とする長円形に開口した長穴部54が形成されている。そして、穴部53及び長穴部54にボルト55を通し、第1下方延伸部52aの後方側に設けられたナット56と締結することにより、第1下方延伸部52aと第2下方延伸部52bとの間に摩擦力を生じさせ、両者を一体に固定する。
【0036】
例えば、
図4Aに例示した状態から下方延伸部52の長さを長くしたい場合には、ボルト55とナット56との締結を緩め、第2下方延伸部52bを下方に摺動させた後、ボルト55とナット56とを締結し、第1下方延伸部52aと第2下方延伸部52bとを一体に固定すればよい。これにより、
図4Bに示すように、下方延伸部52の長さを長く調整した状態にすることができる。
【0037】
なお、ボルト55の頭部と第2下方延伸部52bとの間に座金57が配設されてもよい。これにより、ボルト55とナット56とを締結する際に、第2下方延伸部52bに対してより確実に面圧を入力することができる。さらに、第1下方延伸部52aの下端部と、後方延伸部59との間には、バネ58が上下方向に圧縮された状態で配設されてもよい。これにより、バネ58の反発力が第1下方延伸部52a及び後方延伸部59に入力されることとなる。そのため、ボルト55を緩めた際に他の操作を行うことなく、第2下方延伸部52bを下方に摺動させ、下方延伸部52の上下方向寸法を長く調整することができる。
【0038】
なお、
図2に示した例では、支持部材50は座席部10幅方向において離間する2つの支持部材50を含むが、これに限定されない。支持部材50は1つでもよく、3つ以上であってもよい。また、支持部材50の座席部10幅方向における位置は、座席部10の幅寸法に応じて適宜設定することができる。
【0039】
支持部材50は取手部60を有していてもよい。
図2に示す例では、座席部10幅方向に延在する円柱状の取手部60が、2つの支持部材50の下方延伸部52及び後方延伸部59に接して固定される。また、取手部60は例えば金属、硬質樹脂等から構成することができる。なお、図示した例では、取手部60は支持部材50の座席部10幅方向外側端部まで延在するが、これより長く、又は短くてもよい。
【0040】
図1又は
図3に示す例では、車体フロア110のうち、車両用シート100の真下に位置する領域が隆起して隆起部111が形成されている。また、隆起部111の上に車両用シート100のシートクッション102が配設されている。図示した例では、位置決め状態において支持部材50の後方延伸部59は隆起部111に載置される。より具体的には、少なくとも、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部である後方延伸部59の後方端部は、シートクッション102の真下に位置する隆起部111に載置される。換言すれば、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部は、車両用シート100のシートクッション102の下方に位置する車体フロア110のうち、平面視で当該車両用シート100と重なる領域に載置可能である。なお、ある実施形態では、支持部材50の当該端部は、車体フロア110のうち、平面視でシートクッション102と重なる領域に載置可能であってもよい。このようにすることで、作業用シート1の座面部12を隆起部111に対して支持することができる。なお、支持部材50の下方延伸部52の上下寸法を長く調整することにより、
図3に示すように、座面部12の前方端部が後方端部に比べて上方に位置する状態、即ち前上がりの状態にして作業用シート1を位置決めしてもよい。このとき、座席部10とシートクッション102との間には隙間が介在しており、作業用シート1は係脱部材40及び支持部材50により支持されることとなる。
【0041】
また、
図7に示す例では、車両用シート100はシートクッション102の下方に脚部115を備え、隆起部111に脚部115を固定することで、車体フロア110に車両用シート100が配設される。また、支持部材50の後方延伸部59は、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部である係合部67を備えており、係合部67は車両用シート100のフレーム107に係合する。換言すれば、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部は、車両用シート100のフレーム107に係合可能に構成される。これにより、作業用シート1の座面部12をフレーム107に対して支持することができる。
【0042】
このようにして、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部が車体フロア110のうち、平面視で車両用シート100と重なる領域に載置され、またはフレーム107に係合し、かつ、係脱部42がストライカ109に係合して車両用シート100に作業用シート1が位置決めされたとき、座面部12が、シートクッション102上またはその上方の位置に位置決めされる。
【0043】
次いで、
図1乃至
図8を参照しながら、実施形態に係る作業用シート1の作用効果を説明する。
【0044】
図1、
図3、又は
図7に示すように、作業用シート1を車両用シート100に位置決めすることによって、乗員Pは車両内部において作業用シート1に着座して、事務作業やVDT作業等の作業を行うことができる。ここで、車両用シート100は、車両による移動の際の快適性向上のために、柔らかくかつ後傾したシートクッション102及びシートバック105を備えている。作業用シート1では、そのような車両用シート100に着座して作業を行う場合に比べ、着座状態において体圧を分散し、座面部12に対する乗員Pの過度な沈み込みを抑制し、乗員Pの姿勢をより安定させるとともに、乗員Pの腰部を後方から支持することができる。そのため、乗員Pが直立姿勢を取ることによる疲労を抑制し、着座状態における作業性を向上させることができる。なお、作業用シート1に着座して作業を行う場合には、車内に別途作業用デスク117を設置してもよい。
【0045】
(1)実施形態に係る作業用シート1は、車体フロア110に設けられた車両用シート100に着脱可能に位置決めされる作業用シート1であって、座面部12と背もたれ部15とを含む座席部10と、座席部10から後方に延出する、車両用シート100または車体フロア110に配設されたストライカ109と係脱可能に構成された係脱部42を有する係脱部材40と、座面部12から下方に延伸する下方延伸部52を含む支持部材50と、を備え、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部は、車両用シート100のシートクッション102の下方に位置する車体フロア110のうち、平面視で車両用シート100と重なる領域に載置可能、若しくは、車両用シート100のフレーム107に係合可能に構成されており、支持部材50の端部が車体フロア110の当該領域に載置されまたはフレーム107に係合し、かつ、係脱部42がストライカ109に係合したとき、座面部12が、シートクッション102上またはその上方の位置に位置決めされる。
【0046】
このため、車室内において、乗員は車両用シート100の上、又は上方に配設された座席部10に座って作業を行うことができる。また、車両用シート100に直接座る場合と比べて、座面部12の座面と車体フロア110との間の距離は大きくなる。即ち、ヒール段差が高くなる。これにより、着座状態での作業性をより向上することができる。さらに、座面部12は、支持部材50の、座面部12とは反対側の端部を車体フロア110のうち、平面視で車両用シート100と重なる領域に載置し、または車両用シート100のフレーム107に係合させることで支持される。そのため、座面部12から下方に向けて鉛直に支持部材50を延伸させ、車体フロア110に接地させる場合に比べて、着座状態における乗員Pの踵後方近傍に支持部材が接地することが無く、踵後方のスペースをより広く確保することができる。これにより、車体フロア110において乗員Pが足を置くことができる領域をより広くし、着座状態での作業性をより向上することができる。従って、車室内で着座した状態における作業性を向上させる作業用シートを提供することができる。
【0047】
(2)実施形態に係る作業用シート1では、下方延伸部52は上下方向における長さを調整する機構を備える。
【0048】
これにより、乗員Pが取りたい姿勢に応じて、座席部10の座面の水平面に対する角度を調整することができる。例えば、乗員Pが直立した姿勢で作業を行いたい場合には、
図1又は
図7に例示するように、座面部12が水平面に対して略平行となるように調整すればよい。また、乗員Pが後傾した姿勢で作業を行いたい場合には、
図3に示すように、座面部12が前上がりになるように調整すればよい。このため、乗員Pは所望の姿勢で作業を行うことができ、着座状態での作業性をより確実に向上することができる。
【0049】
(3)実施形態に係る作業用シート1では、係脱部材40は、座席部10の幅方向において離間する一対の係脱部材40a,40bを含み、座席部10の幅方向における、一対の係脱部材40a,40b同士の間隔を調整する機構を備える。
【0050】
これにより、車両用シート100に設けられたストライカ109同士の間隔に応じて、一対の係脱部材40a,40bを配置することができる。例えば、
図8に示すように、車両の後部座席において、一側後部座席120aに一対のストライカ109a1,109a2が設けられ、他側後部座席120bに一対のストライカ109b1,109b2が設けられている場合には、ストライカ109a1,109a2、又はストライカ109b1,109b2に対して作業用シート1を位置決めするだけでなく、ストライカ109a2及びストライカ109b1に対して作業用シート1を位置決めすることができる。即ち、後部座席中央部に作業用シート1を位置決めすることができる。また、車両用シート100の幅方向において座席部10の位置を調整することができる。これにより乗員Pはより適切な座席位置で作業を行うことができ、着座状態での作業性をより確実に向上することができる。
【0051】
(4)実施形態に係る作業用シート1は、座席部10の幅方向における、一対の係脱部材40a,40b同士の中心と、座席部10の中心と、が一致するように調整する機構を備える。
【0052】
これにより、座席部10幅方向において、座席部10の中心が一対の係脱部材40a,40b同士の中心からずれるのを抑制し、座席部10をより安定して支持することができる。そのため、着座状態での作業性をより確実に向上することができる。
【0053】
(5)実施形態に係る作業用シート1は、背もたれ部15は座面部12に対して倒伏可能に配設され、係脱部材40は、座席部10に設けられた座席部10の前後方向に延在するガイド部材20に沿って摺動可能に配設され、下方延伸部52は、取手部60を有する。
【0054】
これにより、
図6A乃至
図6Bに示すように、作業用シート1を折畳むことができる。即ち、
図6Aに示す作業用シート1が着座可能となるように組み立てられた状態から、背もたれ部15を座面部12に向けて矢印B方向に倒伏させ、係脱部材40をガイド部材20に沿って矢印C方向に摺動させることで座面部12の下方に収納し、肘掛部17を後端部のヒンジを支軸として矢印D方向に所定の角度範囲で回転することにより、
図6Bに示すように作業用シート1が折畳まれた状態にすることができる。また、支持部材50は取手部60を有するため、例えば
図6Cに示すように、座面部12の前方側端部を上方に向けた姿勢で、取手部60を持って持ち運ぶことができ、より容易に作業用シート1を運搬することができる。このようにして折畳まれた作業用シート1は、例えば、
図6Dに示すように、車両用シート100の後方に設けた収納具121に支持部材50を掛けて収納することができる。そのため、乗員Pが作業用シート1を使用しない場合には、ラゲッジスペース等の車内空きスペースに作業用シート1を収納することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、車両の後部座席に作業用シート1を着脱可能に位置決めする場合を例にとって説明したが、例えば助手席等の、車室内前部に配設された車両用シートである前部座席に、実施形態に係る作業用シート1を着脱可能に位置決めしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 作業用シート
10 座席部
12 座面部
15 背もたれ部
20,20a,20b ガイド部材
40,40a,40b 係脱部材
42 係脱部
50 支持部材
52 下方延伸部
60 取手部
100 車両用シート
102 シートクッション
107 フレーム
109,109a1,109a2,109b1,109b2 ストライカ
110 車体フロア