(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165218
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20221024BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221024BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20221024BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221024BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221024BHJP
C08K 5/16 20060101ALI20221024BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/16
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070483
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】権藤 聡
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
3D131BB06
3D131BB09
3D131BB10
3D131BB11
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC061
4J002AC082
4J002DA036
4J002DJ017
4J002EQ028
4J002ER018
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が改善されたゴム組成物及びタイヤを提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むゴム組成物。
(式中、A
11は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種である。)
(式中、A
21は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
21は、2価の炭化水素基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むゴム組成物。
【化1】
(式中、A
11は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種である。)
【化2】
(式中、A
21は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
21は、2価の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記シリカ及び前記カーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカ含有率が50質量%未満である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、30~80質量部である請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記式(1)及び(2)で表される化合物の総量は、前記ゴム成分100質量部に対して、30.0質量部以下である請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が50~90質量%、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が5~40質量%である請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が5~30質量%である請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
を含む
【請求項7】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が135m2/g以上のカーボンブラックを含む請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記極性基は、ヒドロキシ基、アミノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記R11及び前記R12が水素原子及びアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラックの含有量と、前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量とが下記式を満たす請求項1~9のいずれかに記載のゴム組成物。
カーボンブラックの含有量/総スチレン量>4.0
【請求項11】
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量と、前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量とが下記式を満たす請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
シリカの含有量/総スチレン量<7.0
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物で構成されたトレッドを有するタイヤ。
【請求項13】
重荷重用タイヤである請求項12記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには種々の性能が要求され、例えば、トラック、バスなどに使用される重荷重用タイヤには、耐摩耗性能、耐チッピング性能などの性能が要求され、改善が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が改善されたゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むゴム組成物に関する。
【化1】
(式中、A
11は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種である。)
【化2】
(式中、A
21は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
21は、2価の炭化水素基である。)
【0005】
前記シリカ及び前記カーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカ含有率が50質量%未満である請求項1記載のゴム組成物。
【0006】
前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、30~80質量部であることが好ましい。
【0007】
前記式(1)及び(2)で表される化合物の総量は、前記ゴム成分100質量部に対して、30.0質量部以下であることが好ましい。
【0008】
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が50~90質量%、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が5~40質量%であることが好ましい。
【0009】
前記ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が5~30質量%であることが好ましい。
【0010】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が135m2/g以上のカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0011】
前記極性基は、ヒドロキシ基、アミノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0012】
前記R11及び前記R12が水素原子及びアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
前記ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラックの含有量と、前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量とが下記式を満たすことが好ましい。
カーボンブラックの含有量/総スチレン量>4.0
【0014】
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量と、前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量とが下記式を満たすことが好ましい。
シリカの含有量/総スチレン量<7.0
【0015】
本発明は、前記ゴム組成物で構成されたトレッドを有するタイヤに関する。
【0016】
前記タイヤは、重荷重用タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、前記式(1)~(2)で表される化合物の少なくとも1種とを含むゴム組成物であるので、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、前記式(1)~(2)で表される化合物の少なくとも1種とを含む。これにより、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が改善される。
【0019】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
耐チッピング性能向上を目的として、重荷重用タイヤのトレッドなどの部材に、カーボンブラックとシリカを併用することや、イソプレン系ゴムとSBRをブレンドすることが検討されているが、一般的に、シリカをそのようなブレンドゴムに配合すると、イソプレン系ゴム中にシリカが偏在しやすくなることが知られている。そこで、イソプレン系ゴム、SBR、カーボンブラック、シリカを含む配合に、前記式(1)~(2)で表される化合物を配合することで、該化合物中の極性基を持つ環状構造の置換基(A11、A21)がカーボンブラックと相互作用しつつ、-NH-NR11R12、-NH=NR21で示される構造がゴムとの親和性を高めると考えられる。その結果、シリカよりもカーボンブラックが優先的にゴム中に分散されることとなり、続いて起こるカップリング反応などによってゴム中へシリカが分散する際、イソプレン系ゴム中へのシリカの遍在が阻害され、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、前記ゴム組成物では、このようにフィラー分散が向上することから、耐チッピング性能に加えて耐摩耗性能も向上し、これらの総合性能が向上すると推察される。
また、イソプレン系ゴムとSBRを含むゴム成分と共に、カーボンブラック、シリカ、前記式(1)~(2)で表される化合物を併用することにより、これらの成分が相乗的に作用し、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が相乗的に改善される。特に、カーボンブラックと、前記式(1)~(2)で表される化合物との併用により、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が相乗的に改善される。
【0020】
上記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びSBRを含有するゴム成分を含む。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0021】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0022】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
SBRのスチレン量は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、更に好ましくは15.0質量%以上、特に好ましくは20.0質量%以上であり、また、好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは40.0質量%以下、更に好ましくは35.0質量%以下、特に好ましくは30.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のスチレン量は、1H-NMR測定により算出される。
【0024】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0025】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ、カーボンブラック等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記官能基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0028】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0029】
上記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、SBR以外の他のゴム成分を含んでもよい。
他のゴム成分として、例えば、これらの以外の他のジエン系ゴムが挙げられる。他のジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRが好ましい。これにより、効果が更に好適に得られる。
【0030】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
BRのシス量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0032】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0033】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0034】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、120m2/g以上が更に好ましく、135m2/g以上が特に好ましくい。また、上記N2SAは、250m2/g以下が好ましく、200m2/g以下がより好ましく、160m2/g以下が更に好ましく、150m2/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0037】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
前記のとおり、前記式(1)~(2)の化合物を配合することでゴム中でのカーボンブラックの分散性が向上することから、カーボンブラックのN2SAを所定範囲に調整する、特にN2SA135m2/g以上のような比較的高比表面積のカーボンブラックを配合した場合にも、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、例えば、比較的高比表面積のカーボンブラックを配合した場合にも、発熱性に大きな懸念なく耐摩耗性能が向上し、耐チッピング性能及び耐摩耗性能の総合性能が向上すると推察される。
【0038】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0039】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
前記のとおり、前記式(1)~(2)で配合することでゴム中でのカーボンブラックの分散性が向上することから、カーボンブラック量を所定範囲に調整する、特に比較的多量の30~80質量部配合した場合にも、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、例えば、カーボンブラック量が30~80質量部である場合にも、発熱性に大きな懸念なく耐摩耗性能が向上し、耐チッピング性能及び耐摩耗性能の総合性能が向上すると推察される。
【0041】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0042】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0043】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上、特に好ましくは170m2/g以上である。また、該N2SAは、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0044】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0045】
シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカ含有率は、好ましくは85質量%未満、より好ましくは50質量%未満、更に好ましくは35質量%未満、特に好ましくは20質量%以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
前記シリカ含有率を所定未満に調整する、特に50質量%未満に調整することで、シリカ含有率が低いため、カップリング反応によってゴム中へシリカが分散する際に、イソプレン系ゴム中へのシリカの遍在が阻害され、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、例えば、前記シリカ含有率を50質量%未満に調整した場合、カーボンブラック量がシリカ量よりも多量でも発熱性に大きな懸念なく耐摩耗性能が向上し、耐チッピング性能及び耐摩耗性能の総合性能が向上すると推察される。
【0047】
前記ゴム組成物は、シリカを含有する場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0049】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、また、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
前記ゴム組成物は、カーボンブラック、シリカ以外の他のフィラー(充填材)を含んでもよい。他のフィラー(充填材)としては、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー;難分散性フィラー等が挙げられる。
【0051】
ゴム成分100質量部に対する充填剤の総量は、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
前記ゴム組成物は、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0053】
【化3】
(式中、A
11は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種である。)
【0054】
【化4】
(式中、A
21は、少なくとも1つの極性基を有する1価の環状炭化水素基である。R
21は、2価の炭化水素基である。)
【0055】
前記式(1)のA11は、1価の環状炭化水素基であり、かつ該1価の環状炭化水素基が少なくとも1つの極性基を有するものである。
【0056】
ここで、本明細書において、「環状炭化水素基」とは、環状構造を含む炭化水素基をいい、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環状構造として脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。ただし、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環状構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいい、単環の芳香族炭化水素基及び多環の芳香族炭化水素基の両方を含む。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。「環員数」とは、環状構造を構成する原子数を意味し、多環の場合は、この多環を構成する原子数を意味する。
【0057】
A11における1価の環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。A11において、脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常6以下であり、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。また、脂肪族環基の炭素数は、通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、15以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0058】
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としてはシクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
A11において、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上が好ましく、また、通常10以下であり、5以下が好ましい。芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。芳香族環基の炭素数は、通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0060】
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。また、芳香族環としては、芳香族複素環基における芳香族複素環も挙げられ、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
A11は、少なくとも1つの極性基を有するものであるが、極性基の種類は特に限定されず、例えば、アミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、アミド基(-CONH2)、ヒドラゾ基(-NH-NH-R;Rはアルキル基又はアリール基)、アゾ基(-N=N-R;Rはアルキル基又はアリール基)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基(-CO-R;Rはアルキル基又はアリール基)、エポキシ基、オキシカルボニル基(-CO-O-R;Rはアルキル基又はアリール基)、アルコキシシリル基、アルキルアミノ基、ニトロ基等が挙げられる。ここで、ヒドラゾ基、アゾ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アルコキシシリル基、及びアルキルアミノ基が有するアルキル基は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。ヒドラゾ基、アゾ基、カルボニル基、及びオキシカルボニル基が有するアリール基は、炭素数が6~10であることが好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの極性基のなかでも、効果がより良好に得られる観点から、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0062】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
前記式(1)~(2)で表される化合物中の極性基を持つ環状構造の置換基(A11、A21)の極性基として、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基などを選択することで、カーボンブラックとの相互作用がより向上し、その結果、シリカよりもカーボンブラックが優先的にゴム中に分散されることとなり、イソプレン系ゴム中へのシリカの遍在がより阻害され、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、前記ゴム組成物では、このようにフィラー分散が向上することから、耐チッピング性能に加えて耐摩耗性能も向上し、これらの総合性能がより向上すると推察される。
【0063】
前記式(1)のR11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基(-CO-R;Rはアルキル基又はアリール基)、アミド基(-CONH2)、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であるが、R11及びR12で表されるアルキル基及びアシル基が有するアルキル基は、炭素数が1~6であることが好ましく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基は、炭素数が5~10であることが好ましく、具体的には、例えば、シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデカニル等が挙げられる。R11及びR12で表されるアリール基及びアシル基が有するアリール基は、炭素数が6~10であることが好ましく、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、R11及びR12は、水素原子、アルキル基であることが好ましく、いずれも水素原子であることがより好ましい。
【0064】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
前記式(1)~(2)で表される化合物のR11、R12、NR21として、水素原子、アルキル基などを選択することで、-NH-NR11R12、-NH=NR21で示される構造がゴムとの親和性をより高め、その結果、シリカよりもカーボンブラックが優先的にゴム中に分散されることとなり、イソプレン系ゴム中へのシリカの遍在がより阻害され、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、前記ゴム組成物では、このようにフィラー分散が向上することから、耐チッピング性能に加えて耐摩耗性能も向上し、これらの総合性能がより向上すると推察される。
【0065】
前記式(2)のA21は、1価の環状炭化水素基であり、かつ該1価の環状炭化水素基が少なくとも1つの極性基を有するものである。
【0066】
A21における1価の環状炭化水素基としては、例えば、前記A11における1価の環状炭化水素基と同様のものが好適である。
【0067】
A21は、少なくとも1つの極性基を有するものであるが、極性基の種類は特に限定されず、例えば、前記A11における極性基と同様のものが好適である。
【0068】
前記式(2)のR21は、2価の炭化水素基であるが、該2価の炭化水素基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含むものでもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられる。R21の2価の炭化水素基としては、例えば、2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、シクロアルキレン基、アリーレン基などが挙げられる。
【0069】
R21の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。該2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基は、炭素数が1~30が好ましく、炭素数が1~12がより好ましく、炭素数が1~8が更に好ましく、炭素数が1~5が特に好ましい。
【0070】
R21のシクロアルキレン基は、炭素数が5~10であることが好ましい。具体的には、シクロヘプチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基等が挙げられる。
【0071】
R21のアリーレン基は、炭素数が炭素数5~10であることが好ましい。例えば、シクロペンタジエニル基等が挙げられる。
【0072】
前記式(1)、(2)で表される化合物のなかでも、効果がより良好に得られる観点から、前記式(1)で表される化合物が好ましく、下記式(1-1)で表される化合物がより好ましい。
【0073】
【化5】
(式中、R
111~R
116は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1種である。)
【0074】
前記式(1-1)のR111~R116は、効果がより良好に得られる観点から、水素原子、ヒドロキシ基が好ましい。R111~R114の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。また、R115~R116の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
【0075】
前記式(1)、(2)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば、(1S,2S)-2,3-Dihydro-1,5-dihydroxy-1H-indene-2-carboxylic acid hydrazide、(1S,2R)-2,3-Dihydro-1-hydroxy-1H-indene-2-carboxylic acid hydrazide、(1S,2S)-2,3-Dihydro-1-hydroxy-1H-indene-2-carboxylic acid hydrazide、(1S,2R)-2,3-Dihydro-2-hydroxy-1H-indene-1-carboxylic acid hydrazide、1,2,3,4-Tetrahydro-1-oxo-2-naphthalenecarboxylic acid hydrazide、(1S,2R)-1,2,3,4-Tetrahydro-1,6-dihydroxy-2-naphthalenecarboxylic acid hydrazide、1H-Pyrazole-1-carboxylic acid, 2,2-dimethylhydrazideなどが挙げられる。
【0076】
また、前記式(1)、(2)で表される化合物としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、3,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、3,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、3,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、5,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3,4-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3,5-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4,5-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド等も挙げられる。
これらの式(1)、(2)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記式(1)、(2)で表される化合物は、公知の方法で合成でき、例えば、特表2019-508407号公報に記載の方法で製造できる。
【0078】
前記式(1)、(2)で表される化合物は市販品も使用可能であり、例えば、東京化成工業(株)、富士フイルム和光純薬(株)等の製品を使用できる。
【0079】
前記式(1)、(2)で表される化合物の総量(合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは30.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、特に好ましくは2.0質量部以下、最も好ましくは1.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0080】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
前記式(1)、(2)で表される化合物の総量を所定範囲に調整する、特に30.0質量部以下に調整することで、材料の混合時のスリップを防止でき、各ゴム相にカーボンブラック、シリカが均一に分散してポリマーと結合することが可能となると考えられる。従って、例えば、前記式(1)、(2)で表される化合物の総量を30.0質量部以下に調整した場合、耐チッピング性能及び耐摩耗性能の総合性能が向上すると推察される。
【0081】
上記ゴム組成物は、可塑剤を含有してもよい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、液体可塑剤(25℃で液体(液状)の可塑剤)及び固体可塑剤(25℃で固体の可塑剤)を含む概念である。具体的には、ゴム組成物からアセトンを用いて抽出されるような成分などである。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
可塑剤(液体可塑剤及び固体可塑剤の合計含有量)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0083】
液体可塑剤としては、オイル、液状ポリマー(ジエン系、オレフィン系、エステル系等)、液状樹脂、テレビン油等の天然物由来の精油、エステル系可塑剤、等が挙げられる。固形可塑剤としては、25℃で固形(固体)のタイヤ業界で通常用いられるような固体樹脂類、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、液体可塑剤としては、オイル、液状ポリマー、及び液状樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、オイルがより好ましく、プロセスオイルが更に好ましい。
【0084】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。
【0085】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0086】
液状樹脂としては、例えば、25℃で液状のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C5C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0087】
上記液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0088】
液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、25℃で液状の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0089】
液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0090】
液体可塑剤(好ましくはオイル)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0091】
固体可塑剤としては、タイヤ配合物として、通常用いられる固体樹脂類(レジン)を使用できる。具体的には、テルペン系樹脂、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のレジンが挙げられる。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。
【0092】
レジンとしては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0093】
レジンの軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、レジン(樹脂)の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0094】
固体可塑剤(好ましくはレジン)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0097】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0098】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0099】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0100】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0102】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0103】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0104】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0105】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤がより好ましい。
【0106】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0107】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0108】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0110】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0111】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物)等を例示できる。これら各成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
【0112】
前記ゴム組成物は、より効果が得られる観点から、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部)と、ゴム成分中の総スチレン量(質量%)とが、下記式を満たすことが望ましい。
カーボンブラックの含有量/総スチレン量>4.0
カーボンブラックの含有量/総スチレン量は、好ましくは6.0以上、より好ましくは8.0以上、更に好ましくは9.0以上、特に好ましくは10.0以上である。上限は、好ましくは20.0以下、より好ましくは17.0以下、更に好ましくは15.0以下、特に好ましくは13.0以下である。上記範囲内とすることで、ゴム中のスチレン部による立体障害の影響を受けずに分散することが可能なカーボンブラックの割合が増え、カーボンブラックをイソプレン系ゴム相へ分配させやすくすることが可能となると考えられる。
【0113】
前記ゴム組成物は、より効果が得られる観点から、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部)と、ゴム成分中の総スチレン量(質量%)とが、下記式を満たすことが望ましい。
シリカの含有量/総スチレン量<7.0
シリカの含有量/総スチレン量は、好ましくは6.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。下限は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.4以上である。上記範囲内とすることで、ゴム成分中のスチレン部以外の二重結合部へシリカが行きわたりやすくなり、シリカによる補強効果が得られやすくなると考えられる。
【0114】
ゴム成分中の総スチレン量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは4.0質量%以上、特に好ましくは4.5質量%以上であり、また、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは8.0質量%以下、特に好ましくは6.0質量%以下である。上記範囲内であると、カーボンのイソプレン系ゴム層への分配をさせやすくすると同時にシリカによる補強性も得られやすくなると考えられる。
【0115】
ここで、ゴム成分中の総スチレン量は、ゴム成分全量中に含まれるスチレン部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のスチレン量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量:40質量%のSBRが85質量%、スチレン量:25質量%のSBRが5質量%、スチレン量:0質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総スチレン量は、35.25質量%(=85×40/100+5×25/100+10×0/100)である。
【0116】
なお、各ゴム成分中のスチレン量は、核磁気共鳴(NMR)法によって測定できる。
また、ゴム成分中の総スチレン量について、本明細書の実施例では、上述の計算式に沿って算出しているが、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py-GC/MS)等により、タイヤから分析してもよい。
【0117】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0118】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0119】
上記ゴム組成物は、例えば、タイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)使用でき、なかでも、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられる。
【0120】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどのタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0121】
上記タイヤとしては、特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等が挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
【0122】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、重荷重用タイヤ(トラック・バス用タイヤなど)、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として使用できる。なかでも、重荷重用タイヤに好適に使用できる。なお、重荷重用タイヤとは、最大負荷能力が1400kg以上のものを指す。ここで、最大負荷能力とはそのタイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定める最大負荷能力であり、例えば、JATMA規格(日本自動車タイヤ協会規格)であれば、ロードインデックス(LI)に基づく最大負荷能力、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”LOAD CAPACITY”である。
【実施例0123】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0124】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR:住友化学工業(株)製のSBR1502(スチレン含有量23.5質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR360L(シス1,4結合量98%)
カーボンブラック1:東海カーボン(株)製のシースト6(N220、N2SA119m2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のVULCAN10H(N134、N2SA144m2/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(N2SA175m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi-266
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤RD:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
化合物A:(1S,2S)-2,3-Dihydro-1,5-dihydroxy-1H-indene-2-carboxylic acid hydrazide(下記製造例)
化合物B:東京化成工業(株)製の3,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
5%オイル硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)
加硫促進剤:三新化学工業社製「サンセラーNS-G」
【0125】
(製造例)
特表2019-508407号公報に記載の方法に準拠することにより、(1S,2S)-2,3-Dihydro-1,5-dihydroxy-1H-indene-2-carboxylic acid hydrazideの合成が可能である。
【0126】
表1~2に基づいてシミュレーションを行った。結果を表1~2に示す。
製造条件および試験条件は以下のとおりである。
【0127】
(製造条件)
(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で4分間混練りし、次に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、その後、シミュレーション上で、未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で12分間プレス加硫し、11R22.5のサイズのタイヤにした。
【0128】
(耐摩耗性能の試験条件)
シミュレーション上で得たタイヤについて、以下の条件で実車にて評価した。
タイヤをトラックに装着した状態で、時速80kmで5万km走行した際の摩耗量を算出し、基準比較例を100とした時の指数で表示した(耐摩耗性能指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れることを示す。
なお、表1における基準例は比較例1-4、表2における基準例は比較例2-4である。
【0129】
(耐チッピング性能の試験条件)
シミュレーション上で得たタイヤについて、以下の条件で実車にて評価した。
タイヤをトラックに装着した状態で、悪路路面を時速60kmで5万km走行した際の耐チッピング性能を求め、基準比較例を100とした時の指数で表示した(耐チッピング性能指数)。指数が大きいほど、耐チッピング性能に優れることを示す。
なお、表1における基準例は比較例1-4、表2における基準例は比較例2-4である。
【0130】
【0131】
【0132】
各表には、イソプレン系ゴム及びSBRを含むゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、前記式(1)~(2)で表される化合物の少なくとも1種とを含む実施例では、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能(耐摩耗性能、耐チッピング性能の2つの指数の総和で表す)が改善される。また、比較例1-6、1-1、1-5及び実施例1-2などから、カーボンブラックと、前記式(1)~(2)で表される化合物との併用により、耐摩耗性能及び耐チッピング性能の総合性能が相乗的に改善されることが示されている。