(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165222
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法、その方法の実施に用いられるラミネートロールおよびラミネートシステム
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20221024BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20221024BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20221024BHJP
B32B 1/00 20060101ALI20221024BHJP
B32B 15/06 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H05K3/18 D
H05K3/18 K
H05K3/00 Z
B29C63/02
B32B1/00 Z
B32B15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070489
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 浩平
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AK64B
4F100AN02B
4F100AR00B
4F100BA02
4F100DA16
4F100JK07B
4F100YY00B
4F211AD03
4F211AD20
4F211AG03
4F211AH36
4F211SA07
4F211SC07
4F211SD01
4F211SP04
4F211SP36
4F211SW50
5E343AA12
5E343BB24
5E343CC62
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD63
5E343DD75
5E343ER16
5E343ER18
5E343FF07
5E343FF09
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】ラミネートの際にシード層とドライフィルムとの密着性を向上させ、シード層とドライフィルムの間に捕捉された気泡が残留することによる導体層へのボイドショートの発生を防止する。
【解決手段】樹脂絶縁層の表面にシード層が形成されたプリント配線板をラミネートロールに搬送し、ラミネートロールを用いてシード層上にドライフィルムを貼り付け、シード層上に貼り付けられているドライフィルムを所定の大きさに切断し、シード層上に貼り付けられているドライフィルムに圧力と熱を加え、写真技術を用いドライフィルムからめっきレジストを形成し、めっきレジストから露出するシード層上に電解めっき膜を形成し、めっきレジストを除去し、電解めっき膜から露出するシード層を除去することを含むプリント配線板の製造方法であって、ラミネートロールが金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料を備えているプリント配線板の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂絶縁層を備えたプリント配線板を準備することと、
前記樹脂絶縁層の表面にシード層を形成することと、
前記シード層が形成されたプリント配線板をラミネートロールに搬送することと、
前記ラミネートロールを用いて前記シード層上にドライフィルムを貼り付けることと、
前記シード層上に貼り付けられている前記ドライフィルムを所定の大きさに切断することと、
前記シード層上に貼り付けられている前記ドライフィルムに圧力と熱を加えることと、
写真技術を用いて前記ドライフィルムからめっきレジストを形成することと、
前記めっきレジストから露出する前記シード層上に前記電解めっき膜を形成することと、
前記めっきレジストを除去することと、
前記電解めっき膜から露出する前記シード層を除去することと、を含むプリント配線板の製造方法であって、
前記ラミネートロールが金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えている。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記薄型弾性材料の厚みが1.0~1.8mmである。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記シード層を形成することの前に、前記樹脂絶縁層の表面が粗化される。
【請求項4】
請求項3記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記粗化された後の前記樹脂絶縁層の表面の算術平均粗さRaが0.2μm以下である。
【請求項5】
樹脂絶縁層の表面にシード層が形成されたプリント配線板の両面又は片方にドライフィルムを連続して張り付けるために用いられるラミネートロールであって、
前記ラミネートロールが金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えている。
【請求項6】
請求項5記載のラミネートロールであって、
前記薄型弾性材料の厚みが1.0~1.8mmである。
【請求項7】
樹脂絶縁層の表面に形成されたシード層上にラミネートロールでドライフィルムを貼り付けるラミネート装置と、
前記ドライフィルムに熱と圧力を加える加圧装置とを備えるラミネートシステムであって、
前記ラミネートロールが請求項5又は6に記載のラミネートロールである。
【請求項8】
請求項7に記載のラミネートシステムであって、
前記加圧装置は、前記ドライフィルムを貼り付けた前記樹脂絶縁層を収容する加圧容器と、
前記加圧容器内に配置されている熱源と、
前記加圧容器内に配置されている圧力源と、を有する。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のラミネートシステムであって、
前記熱源は、前記ドライフィルムを貼り付けた前記樹脂絶縁層の上部に配置されている上熱板と、前記ドライフィルムを貼り付けた前記樹脂絶縁層の下部に配置されている下熱板とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用の樹脂絶縁層の表面上にドライフィルムをラミネートするプリント配線板の製造方法、その方法の実施に用いられるラミネートロールおよびラミネートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、銅張積層板にドライフィルムをラミネートするドライフィルムラミネート装置を開示する。特許文献1の
図2によれば、特許文献1のドライフィルムラミネート装置は、ラミネートロールとポストヒートロールと冷却部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セミアディティブ法で導体回路を形成することが広く採用されている。セミアディティブ法は、ドライフィルムをシード層上にラミネートすることと、露光と現像によりドライフィルムからめっきレジストを形成することと、めっきレジストから露出するシード層上に電解めっき膜を形成することを含む。
【0005】
このようなプロセスを含むセミアディティブ法を用いて、導体回路を100%の歩留まりで製造することは難しい。不良の原因の一つはショートである。そして、ショートの原因の一つは、シード層とその上のドライフィルムとの密着不良に起因するボイドと考えられる。
図4(A)に、下層の導体層1cを覆う樹脂絶縁層1aの表面に形成したシード層1bとその上にラミネートしたドライフィルム2間のボイドVの例が示される。
図4(A)の例では、ドライフィルム2から形成しためっきレジストから露出するシード層1b上に電解めっき膜を形成するとき、シード層1bとドライフィルム2間のボイドV内にも電解めっき膜が析出する。そのため、互いに隣接する導体回路がボイドV内の電解めっき膜で繋がる。この一方、
図4(B)の例では、シード層1bとドライフィルム2間にボイドVが存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、
樹脂絶縁層を備えたプリント配線板を準備することと、
前記樹脂絶縁層の表面にシード層を形成することと、
前記シード層が形成されたプリント配線板をラミネートロールに搬送することと、
前記ラミネートロールを用いて前記シード層上にドライフィルムを貼り付けることと、
前記シード層上に貼り付けられている前記ドライフィルムを所定の大きさに切断することと、
前記シード層上に貼り付けられている前記ドライフィルムに圧力と熱を加えることと、
写真技術を用いて前記ドライフィルムからめっきレジストを形成することと、
前記めっきレジストから露出する前記シード層上に前記電解めっき膜を形成することと、
前記めっきレジストを除去することと、
前記電解めっき膜から露出する前記シード層を除去することと、を含むプリント配線板の製造方法であって、
前記ラミネートロールが金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えている。
【0007】
また、本発明に係るラミネートロールは、樹脂絶縁層の表面にシード層が形成されたプリント配線板の両面又は片方にドライフィルムを連続して張り付けるために用いられるラミネートロールであって、前記ラミネートロールが金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えている。
【0008】
さらに、本発明に係るラミネートシステムは、樹脂絶縁層の表面に形成されたシード層上にラミネートロールでドライフィルムを貼り付けるラミネート装置と、前記ドライフィルムに熱と圧力を加える加圧装置とを備えるラミネートシステムであって、前記ラミネートロールが金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えているラミネートロールである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を実施するための、本発明の一実施形態に係るラミネートシステムを説明するための断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を実施するための、本発明の一実施形態に係るラミネートシステムが備えているラミネートロールを示すもので、(A)は側面断面図であり、(B)は正面断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を実施するための、本発明の他の一実施形態に係るラミネートシステムを説明するための側面図である。
【
図4】(A)は、シード層とドライフィルム間にボイドが存在する状態を説明するための断面図であり、(B)は、シード層とドライフィルム間にボイドが存在しない状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、
樹脂絶縁層を備えたプリント配線板を準備することと、
前記樹脂絶縁層の表面にシード層を形成することと、
前記シード層が形成されたプリント配線板をラミネートロールに搬送することと、
前記ラミネートロールを用いて前記シード層上にドライフィルムを貼り付けることと、
前記シード層上に貼り付けられている前記ドライフィルムを所定の大きさに切断することと、
前記シード層上に貼り付けられている前記ドライフィルムに圧力と熱を加えることと、
写真技術を用いて前記ドライフィルムからめっきレジストを形成することと、
前記めっきレジストから露出する前記シード層上に前記電解めっき膜を形成することと、
前記めっきレジストを除去することと、
前記電解めっき膜から露出する前記シード層を除去することと、を含む。上記プリント配線板の製造方法に用いられるラミネートロールは、金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えている。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を実施するための、本発明の一実施形態に係るラミネートシステムを説明するための断面図である。
図1中符号1は、例えばコア基板の両面に絶縁層と導体層とを交互に積層したビルドアップ型のプリント配線板を示す。このプリント配線板1の両面にはその一部を拡大して示すように、下層の導体層を被覆する絶縁層を構成する樹脂絶縁層1aが存在する。
【0012】
樹脂絶縁層1aとしては、例えば絶縁樹脂フィルムを用いることができ、特に近年の高周波信号の伝送ロス低減の要求に対応するためには、表面粗度の低い絶縁樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0013】
プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面上には、後に電解銅めっきで導体層を形成する際に給電層となるシード層1bが形成されている。この実施形態のプリント配線板の製造方法では、樹脂絶縁層1aの表面にシード層1bを形成する前に、樹脂絶縁層1aの表面が粗化される。その粗化後の樹脂絶縁層1aの表面の算術平均粗さRaは、0.01~0.2μmとされる。樹脂絶縁層1aの表面の算術平均粗さRaが0.2μm以下であれば、製造されるプリント配線板の高周波信号の伝送ロスを低減することができるため好ましい。樹脂絶縁層1aの表面上のシード層1bは、例えば無電解銅めっきで形成される。
【0014】
次いで、この実施形態のプリント配線板の製造方法では、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上に、後に電解めっきで導体層を形成する際にめっきレジストとなる感光性のドライフィルム2をラミネートするために、
図1に示す実施形態のラミネートシステムを用いる。
【0015】
この実施形態のラミネートシステムは、例えば二本のフィルムロールから繰り出された二枚のドライフィルム2の間に、例えば矩形等の所定形状に形成もしくは切断されたシート状のプリント配線板1を配置した状態で、それらのドライフィルム2とプリント配線板1とを一対のラミネートロール3aで挟んで送り、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上にドライフィルム2を熱圧着させて貼り付けるラミネート装置3と、そのプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けられたドライフィルム2を所定の大きさに切断する図示しない通常のカッターと、を備えている。
【0016】
ここで、ラミネート装置3は、金属芯3cとその外周部分にライニングされた薄型弾性材料3bから構成されるラミネートロール3aを備えている。
図2(A)は、ラミネートシステムが備えているラミネートロール3aの側面断面図であり、
図2(B)正面断面図である。
図2に示されるように、ラミネートロール3aは、金属芯3cとその外周部分にライニングされた薄型弾性材料3bから構成されている。金属芯3cとしては、例えばスチール製円筒ロールの中心部分に赤外線ヒータ管を内蔵した円筒ロールであってもよい。また、外周部分にライニングされた薄型弾性材料3bとしては、弾性材料から構成されていればよく、例えば、耐熱シリコンゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)、アクリルゴム等を挙げることができる。薄型弾性材料3bの中でも耐熱性、耐久性及び加工性の観点から、エチレンプロピレンゴム(EPM)が好ましい。なお、エチレンプロピレンゴム(EPM)は、第三成分としてエチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン(DCPC)、1,4-ヘキサジエン(1,4HD)を含んでいてもよい。
【0017】
ラミネートロール3aを構成する金属芯3cの外周部分にライニングされた薄型弾性材料3bの厚みは、均一である。薄型弾性材料3bの厚みは、1.0~1.8mmであることが好ましい。薄型弾性材料3bの厚みが1.0mm以上であれば、きわめて低速度により、プリント配線板1をラミネートロール3aに搬送しても、耐屈曲亀裂性に優れるため好ましい。また、薄型弾性材料3bの厚みが1.8mm以下であれば、ラミネートロール3aによるラミネート圧をドライフィルム2に直接伝達することができ、低粗面のプリント配線板1とドライフィルム2の密着性を向上させることにより、プリント配線板1を構成するシード層1bとドライフィルム2との間に存在する巻き込まれた気泡を押し出すことができるため好ましい。このように、本発明のプリント配線板の製造方法は、ラミネートロール3aを構成する金属芯3cの外周部にライニングされた薄型弾性材料3bの厚みを1.0~1.8mmに設定することにより、ドライフィルム2へのラミネート圧をアップすることができる。その結果、本発明のプリント配線板の製造方法は、プリント配線板1とドライフィルム2との密着性を向上することができるとともに、プリント配線板の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡をドライフィルム2の外部に追い出すことができる。
【0018】
ラミネートロール3aのロール表面硬度は、JIS K 6253に規定されるゴム硬さIRHDで10~90であることが好ましい。ラミネートロール3aのロール表面硬度が10以上であれば、ラミネートロール3aの表面が破損することなく、連続してプリント配線板1のシード層1b上にドライフィルム2を貼り付けることができるため好ましい。一方、ラミネートロール3aのロール表面硬度が90以下であれば、プリント配線板1のシード層1b上にドライフィルム2を貼り付ける際に気泡を巻き込むことがなく好ましい。
【0019】
ラミネートロール3aの引張強度は、50~200(kgf/cm2)であることが好ましい。ラミネートロール3aの引張強度が50(kgf/cm2)以上であれば、ラミネートロール3aのロール表面が破損することなく、低速度により連続ラミネートをすることができるため好ましい。また、ラミネートロール3aの引張強度が200(kgf/cm2)以下であれば、プリント配線板1のシード層1b上にドライフィルム2を貼り付ける際に気泡を巻き込むことがなく好ましい。
【0020】
さらに、ラミネート装置3は、ラミネートロール3aを互いに逆向きに回転駆動する図示しない駆動機構を備える。ラミネート装置3は、それらのラミネートロール3aの間に挟み込んだ二枚のドライフィルム2とプリント配線板1とを、
図1では右方向へ一定の搬送速度で送りながら加熱および加圧する。
【0021】
ここで、プリント配線板1のラミネートロール3aへの搬送速度は、プリント配線板1にドライフィルム2をラミネートする際に採用する搬送速度よりもきわめて小さく、低速度で行われる。すなわち、プリント配線板1のラミネートロール3aへの搬送速度は、1.0~10.0m/minであることが好ましく、1.5~5.0m/minであることがより好ましい。プリント配線板1のラミネートロール3aへの搬送速度が1.0m/min以上であれば、ラミネートロール3aの薄型弾性材料により、低粗面のプリント配線板1のシード層とその上のドライフィルム2との密着性を向上させることができるため好ましい。また、プリント配線板1のラミネートロール3aへの搬送速度が10.0m/min以下であれば、表面粗度が低い樹脂絶縁層1aを備えたプリント配線板であっても、プリント配線板1のシード層1b上にドライフィルム2を貼り付ける際に巻き込まれた気泡を押し出すことができるため好ましい。
【0022】
プリント配線板の製造方法において、ラミネートロール3aを用いてシード層1b上にドライフィルム2を貼り付けることは、0.1~1.0MPaのラミネート圧力で行われる。すなわち、ラミネートロール3aによるドライフィルムへの加圧は0.1~1.0MPa、好ましくは、0.6~0.8MPaで行われることが好ましい。ラミネートロール3aによるドライフィルムへの加圧が0.1MPa以上であれば、ラミネートロール3aによる貼り付けの際に樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡がドライフィルム2の外部に押し出されるため好ましい。また、ラミネートロール3aによるドライフィルム2への加圧が1.0MPa以下であれば、ラミネート装置3への機械的負荷を軽減することができるため好ましい。
【0023】
図1に示されるように、この実施形態のラミネートシステムはさらに、上記所定の大きさに切断されたドライフィルム2が両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けられたプリント配線板1を、加熱した状態で加圧する加圧装置4を備えている。
【0024】
ここで、加圧装置4は、上記所定の大きさに切断された、ドライフィルム2を両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けられたプリント配線板1を、気密状態で収容する開閉可能な加圧容器4aと、加圧気体供給源4bから加圧気体注入口4cを経て加圧容器4a内に注入される圧力源としての加圧気体Gと、ドライフィルム2を貼り付けられたプリント配線板1を加圧容器4a内で加熱する熱源としての、上熱板4dおよび下熱板4e並びにそれら上熱板4dおよび下熱板4eで加熱された加圧気体Gと、上熱板4dの周縁部と下熱板4eの周縁部との間に介挿されて上熱板4dと下熱板4eとの間に上下方向に間隔を空けるスペーサ4fと、を有する。
【0025】
上熱板4dと下熱板4eは、各々例えば図示しない電気ヒータを内蔵している。加圧気体Gは、加圧容器4aの圧縮空気注入口4cから上熱板4dと下熱板4eとの間に図中矢印で示すように送り込まれる。加圧気体Gは、例えば圧縮空気である。加圧気体供給源4bは、例えば圧縮空気供給ラインやエアコンプレッサ等である。
【0026】
上記実施形態のラミネートシステムを用いたプリント配線板の製造方法は、先ず、ラミネート装置3の、表面温度を例えば70℃~140℃の範囲内の最適温度に調整した一対のラミネートロール3aで、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上にドライフィルム2を熱圧着させて貼り付ける。
【0027】
次いで、そのプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けたドライフィルム2を、ラミネート装置3の上記カッターで所定の大きさに切断する。
【0028】
次いで、加圧装置4の加圧容器4a内に配置した上熱板4dと下熱板4eとの間に、製品のプリント配線板の製造途中の途中基板としての、所定の大きさのドライフィルム2を貼り付けたプリント配線板1を、上記スペーサ4fによって周囲に空間を空けた状態で配置する。そしてその加圧容器4aを、例えば通常のプレス装置のテーブルT上にそのプレス装置のスライドSで保持して加圧気体Gの圧力で開かないようにして、所定の大きさのドライフィルム2を貼り付けたプリント配線板1を加圧容器4a内に気密状態で収容する。
【0029】
次いで、そのプリント配線板1の両面に貼り付けた所定の大きさのドライフィルム2の全体に、周囲に空間を空けた状態で、加圧気体供給源4bに接続した加圧気体注入口4cから供給する加圧気体Gによって同時に圧力を加えるとともに、上熱板4dおよび下熱板4eとそれら上熱板4dおよび下熱板4eで加熱された加圧気体Gとによって同時に熱を加える。この加圧および加熱によって、先のラミネートロール3aでの貼り付けの際に樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に残存する微量の気泡がドライフィルム2内に溶解するものと推定される。
【0030】
次いで、そのプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けたドライフィルム2から、写真技術である露光と現像によりめっきレジストを形成する。めっきレジストは、プリント配線板1に形成される導体回路に対応する開口を有する。次いで、そのめっきレジストの開口から露出するシード層1b上に電解めっき膜を形成する。その後、めっきレジストを除去し、さらに、電解めっき膜で覆われずに露出するシード層1bを除去する。これによりプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面上にシード層1bおよび電解めっき膜からなる導体回路が形成される。
【0031】
(実施例1)
この発明の実施例のプリント配線板の製造方法では、ラミネートロールの薄型弾性材料として、エチレンプロピレンゴムを採択し、その厚みを1.5mmとした。また、プリント配線板のラミネートロールへの搬送速度を1.5~5.0m/minに設定した。樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上にドライフィルム2をラミネートする際のラミネート圧を0.6~0.8MPa、ラミネート温度を100~120℃に設定し、シード層1b上にドライフィルム2を常圧状態にてラミネートした。そして、加圧容器4a内で、ドライフィルム2を表面粗度の低い両面の樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上に貼り付けたプリント配線板1を製造する。次に、上記プリント配線板1の周囲雰囲気の温度を上熱板4dと下熱板4eにより45℃以上75℃以下に加熱するとともに、周囲雰囲気の圧力を加圧気体注入口4cからの加圧気体Gにより0.2MPa以上0.6MPa以下に加圧した。なお、加圧時間は、20秒~30秒とした。
【0032】
実施例のプリント配線板の製造方法により得られたプリント配線板を評価した。ドライフィルムがラミネートされたプリント配線板の評価をシード層1bとドライフィルム2との密着性、ボイド発生の有無により行ったところ、この実施例のプリント配線板の製造方法によれば、ラミネートロール3aでの貼り付けの際に樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡によるボイドが消滅することが判明した。
【0033】
(比較例1)
その一方、比較例のプリント配線板の製造方法では、ラミネートロールが備えている薄型弾性材料の厚みを1.0~1.8mmの範囲外とした。この比較例のプリント配線板の製造方法では、ラミネートロール3aでの貼り付けの際に樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡によるボイドがドライフィルム2の貼り付け後に存在し、さらに加圧装置4での加圧および加熱後においても残留した。
【0034】
この実施例でのボイドの消失と比較例でのボイドの残留との相違は、ラミネートロールが備えている薄型弾性材料の厚みを1.0~1.8mmに設定することによって、プリント配線板とドライフィルムとの密着性が向上するとともに、プリント配線板の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡がドライフィルム2の外部に追い出されるものと推定される。
【0035】
従って、この実施形態のプリント配線板の製造方法によれば、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上へのドライフィルム2の貼り付けの際にシード層1bとドライフィルム2との密着性を向上させ、樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡がその後にボイドを形成するのを有効に防止することができる。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を実施するための、本発明の他の一実施形態に係るラミネートシステムを説明するための側面図であり、
図3中、
図1と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0037】
すなわち、符号1は、例えばコア基板の両面に絶縁層と導体層とを交互に積層したビルドアップ型のプリント配線板を示す。このプリント配線板1の両面にはその一部を拡大して示すように、下層の導体層を被覆する絶縁層を構成する樹脂絶縁層1aが存在し、それらの樹脂絶縁層1aの表面には、後に電解銅めっきで導体層を形成する際に給電層となるシード層1bが形成されている。
【0038】
樹脂絶縁層1aとしては、例えば絶縁樹脂フィルムを用いることができ、特に近年の高周波信号の伝送ロス低減の要求に対応するためには、表面粗度の低い絶縁樹脂フィルムを用いることが望ましい。樹脂絶縁層1aの表面の算術平均粗さRaは、0.01~0.2μmであることが望ましい。樹脂絶縁層1aの表面の算術平均粗さRaが0.2μmであれば、製造されるプリント配線板の高周波信号の伝送ロスを低減することができるため好ましい。
【0039】
この実施形態のプリント配線板の製造方法では、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上に、後に電解銅めっきで導体層を形成する際にめっきレジストとなる感光性のドライフィルム2をラミネートするために、
図3に示す実施形態のラミネートシステムを用いる。
【0040】
この実施形態のラミネートシステムは、先の実施形態のラミネートシステムと同様、二枚のドライフィルム2の間にプリント配線板1を配置した状態で、それらのドライフィルム2とプリント配線板1とを一対のラミネートロール3aで挟んで送り、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面に形成されたシード層1b上にドライフィルム2を熱圧着させて貼り付けるラミネート装置3と、そのプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けられたドライフィルム2を所定の大きさに切断する図示しない通常のカッターと、を備えている。
【0041】
この実施形態のラミネートシステムはさらに、上記所定の大きさに切断されたドライフィルム2が両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けられたプリント配線板1を加熱した状態で加圧する加圧装置4を備えている。
【0042】
ここで、加圧装置4は、上記所定の大きさに切断されたドライフィルム2が両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けられたプリント配線板1を上下から挟持する圧力源としての平坦な二枚のプレス板4gと、それらのプレス板4gを介して、そのドライフィルム2を貼り付けられたプリント配線板1を加熱する熱源としての上熱板4dおよび下熱板4eとを有する。平坦な二枚のプレス板4gは、例えばステンレス製のプレス板である。また上熱板4dおよび下熱板4eは、各々例えば図示しない電気ヒータを内蔵している。
【0043】
上記実施形態のラミネートシステムを用いた、この実施形態のプリント配線板の製造方法は、先ず、ラミネート装置3の、表面温度を例えば100℃~120℃の範囲内の最適温度に調整した一対のラミネートロール3aで、プリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上にドライフィルム2を熱圧着させて貼り付ける。次いで、そのプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けたドライフィルム2を、ラミネート装置3の上記カッターで所定の大きさに切断する。
【0044】
次いで、加圧装置4の二枚のプレス板4gの一方を、加圧装置4の下熱板4eを介して例えばプレス装置のテーブルT上に取り付ける。同時に加圧装置4の二枚のプレス板4gの他方を加圧装置4の上熱板4dを介してそのプレス装置のスライドSに取り付ける。それらのプレス板4gの間に、所定の大きさのドライフィルム2を貼り付けたプリント配線板1を配置する。プレス装置のスライドSで、図中矢印Pで押圧力を示すように上熱板4dを下熱板4eに向けて押圧し、二枚のプレス板4gで、プリント配線板1の両面に貼り付けた所定の大きさのドライフィルム2の全体に同時に圧力を加えるとともに、上熱板4dおよび下熱板4eで二枚のプレス板4gを介して同時に熱を加える。ドライフィルム2に圧力と熱を加えることは、シード層1b上にドライフィルム2を貼り付けることの後に行われる。また、ドライフィルム2に圧力と熱を加えることは、後述のめっきレジストを形成することの前に行われてもよい。
【0045】
その後、先の実施形態のプリント配線板の製造方法と同様に、そのプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上に貼り付けたドライフィルム2から、露光と現像によりめっきレジストを形成する。めっきレジストは、プリント配線板1に形成される導体回路に対応する開口を有する。次いで、そのめっきレジストの開口から露出するシード層1b上に電解銅めっき膜を形成する。その後、めっきレジストを除去し、さらに、電解銅めっき膜で覆われることなく露出しているシード層1bを除去する。これによりプリント配線板1の両面の樹脂絶縁層1aの表面上にシード層1bおよび電解銅めっき膜からなる導体回路が形成される。
【0046】
この実施形態のプリント配線板の製造方法によっても、金属芯とその外周部分にライニングされた薄型弾性材料とを備えているラミネートロール3aによる加圧によって、先のラミネートロール3aでの貼り付けの際に樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡がドライフィルム2の外部に追い出されるものと推定される。それにより、プリント配線板1の表面粗度の低い両面の樹脂絶縁層1aの表面のシード層1b上へのドライフィルム2の貼り付けの際に樹脂絶縁層1aの表面のシード層1bとドライフィルム2との間に捕捉された気泡がその後にボイドを形成するのを有効に防止することができる。
【0047】
以上、図示の実施形態に基づき説明したが、この発明のプリント配線板の製造方法、ラミネートロールおよびラミネートシステムは、上述の実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で適宜変更することができ、例えば、コアレス多層プリント配線板や単層プリント配線板や片面プリント配線板へのドライフィルムのラミネートにも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 プリント配線板
1a 樹脂絶縁層
1b シード層
2 ドライフィルム
3 ラミネート装置
3a ラミネートロール
3b 薄型弾性材料
3c 金属芯
4 加圧装置
4a 加圧容器
4b 加圧気体供給源
4c 加圧気体注入口
4d 上熱板
4e 下熱板
4f スペーサ
4g プレス板
G 加圧気体
P 押圧力
S スライド
T テーブル