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  • 特開-加圧防排煙設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165223
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】加圧防排煙設備
(51)【国際特許分類】
   A62B 13/00 20060101AFI20221024BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20221024BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A62B13/00 B
F24F13/14 J
F24F7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070490
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一
【テーマコード(参考)】
2E185
3L058
3L081
【Fターム(参考)】
2E185CC62
2E185DA13
3L058BK01
3L058BK07
3L081AA04
(57)【要約】

【課題】 低コストで的確に圧力調節を行う加圧防排煙設備を提供する。
【解決手段】 各階の給気対象空間14と給気対象空間14に隣接する空間12との間に、給気対象空間14側へ開く防火扉15が設置された複数階の建築物10に用いる加圧防排煙設備1において、加圧防排煙設備1は、屋外の空気を送風する給気ファン21と、給気ファン21から送風される空気を通すメイン給気ダクト23と、各階の給気対象空間14に設置される給気口24と、メイン給気ダクト23と給気口24を連結するサブ給気ダクト23aと、給気ファン21から送風される空気の圧力を調節する圧力調節装置22と、を備え、圧力調節装置22は、メイン給気ダクト21に設置されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階の給気対象空間と前記給気対象空間に隣接する空間との間に、前記給気対象空間側へ開く防火扉が設置された複数階の建築物に用いる加圧防排煙設備において、
屋外の空気を送風する給気ファンと、
前記給気ファンから送風される空気を通すメイン給気ダクトと、
前記各階の給気対象空間に設置される給気口と、
前記メイン給気ダクトと給気口を連結するサブ給気ダクトと、
前記給気ファンから送風される空気の圧力を調節する圧力調節装置と、
を備え、
前記圧力調節装置は、前記メイン給気ダクトに設置される
ことを特徴とする加圧防排煙設備。
【請求項2】
前記圧力調節装置は、前記メイン給気ダクトに1つ設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の加圧防排煙設備。
【請求項3】
前記サブ給気ダクトに設置される空気流量調節部材を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルターユニット。
【請求項4】
前記圧力調節装置は、屋外に設置される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のフィルターユニット。
【請求項5】
前記圧力調節装置は、鉛直方向において、屋外の前記メイン給気ダクトの下方に設置される
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルターユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難階段付室又は非常用エレベータ乗降ロビー等に外気を供給して空気圧力を高める加圧防排煙設備に関する。
【背景技術】
【0002】
火災時の避難及び消防活動のために付室に給気することで付室内の圧力を高め、煙の侵入を防止する加圧防排煙設備がある。加圧防排煙設備は、防排煙を達成することができるが、付室と付室に隣接する廊下又は居室等の空間との間の内開きの扉が閉鎖された状態で給気されると、付室の圧力が高くなるため、扉が開きにくくなり、避難及び消防活動に支障が出る恐れがある。
【0003】
従来、扉を円滑に開放できるようにするため、付室と隣接する空間との間に圧力調節装置を設置する技術があった。従来の圧力調節装置は、大型で付室と隣接する空間との間の壁面に設置するため、扉の周囲に広い設置スペースが必要であった。
【0004】
広い設置スペースの問題を解決するため、付室と隣接する空間との間の扉にダンパーを装備したものが開示されている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、通常、ダンパーは閉鎖され、付室と隣接する空間との圧力差が設定した圧力差を超えた場合に、ダンパーが開放され、圧力差を一定以下に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-161246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたダンパーは、各階の付室と隣接する空間との間の扉全てに装備する必要がある。したがって、扉自体が高コスト化することとなる。また、ダンパーが開放すると、付室から隣接する空間へ空気が流れることとなり、隣接する空間が出火している場合には、空気を供給することとなり、火勢を増長させることとなる。
【0007】
本発明は、低コストで的確に圧力調節を行う加圧防排煙設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる加圧防排煙設備は、各階の給気対象空間と前記給気対象空間に隣接する空間との間に、前記給気対象空間側へ開く防火扉が設置された複数階の建築物に用いる加圧防排煙設備において、屋外の空気を送風する給気ファンと、前記給気ファンから送風される空気を通すメイン給気ダクトと、前記各階の給気対象空間に設置される給気口と、前記メイン給気ダクトと給気口を連結するサブ給気ダクトと、前記給気ファンから送風される空気の圧力を調節する圧力調節装置と、を備え、前記圧力調節装置は、前記メイン給気ダクトに設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる加圧防排煙設備によれば、低コストで的確に圧力調節を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】建築物に適用した本実施形態の加圧防排煙設備の一例を示す。
図2】建築物に適用した本実施形態の加圧防排煙設備の他の例を示す。
図3】建築物に適用した本実施形態の加圧防排煙設備の圧力調節装置の設置例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明にかかる一実施形態の加圧防排煙設備1を説明する。
【0012】
図1は、建築物に適用した本実施形態の加圧防排煙設備の一例を示す。
【0013】
本実施形態の加圧防排煙設備1は、ビル等の建築物10に設置される。建築物10は、人が居住する居室11と、図示しないエレベータ又は階段等から居室へ移動するための廊下12と、上下階を行き来するための階段室13と、廊下12と階段室13の間の付室14と、を備える。廊下12と付室14の間には防火扉15が設置される。居室11及び廊下12等の上方には、天井16が形成される。
【0014】
建築物10は、給気部20を備える。給気部20は、屋外の新鮮な空気を送風する給気ファン21と、給気ファン21から送風される空気の圧力を調節する圧力調節装置22と、圧力調節装置22で圧力を調節された空気を通すメイン給気ダクト23と、メイン給気ダクト23に連結され各階の付室14に設置される給気口24と、を有する。各階のメイン給気ダクト23と給気口24の間は、サブ給気ダクト23aで連結される。
【0015】
建築物10は、排気部30を備える。排気部30は、各階の居室11、廊下12等の天井16に連結される排気ダクト31と、排気ダクト31を通った排気を屋外へ送風する排気ファン32と、を有する。
【0016】
なお、本実施形態では、給気対象空間として付室14を例とする建築物10を示したが、非常用エレベータ乗降ロビー等、給気口24が設置される空間を給気対象空間とする。また、本実施形態では、給気対象空間に隣接する空間として廊下12を例とする建築物10を示したが、給気対象空間と防火扉15を挟んで隣接している箇所は、給気対象空間に隣接する空間とすればよい。例えば、居室が給気対象空間と防火扉15を挟んで隣接している建築物の場合、居室は給気対象空間に隣接する空間とする。
【0017】
例えば、居室11で火災が発生すると、排気ファン32を作動させ、排気ダクト31を通じて排煙する。加えて、給気ファン21を作動させ、メイン給気ダクト23及び給気口24を通じて付室14に外気を送風する。
【0018】
給気ファン21から送風される空気は、圧力調節装置22で圧力を調節される。本実施形態の圧力調節装置22は、メイン給気ダクト23のいずれかの場所に設置される。防火扉15の開放力を建築基準法告示で規定されている100N以下に調節するため、従来の各付室に設置された圧力調節装置22は、付室14と廊下12等の隣接する空間の間の圧力差が60Pa以下となるように調節していた。
【0019】
本実施形態の場合、1つの圧力調節装置22で各階の付室14の圧力を調節するため、メイン給気ダクト23及び給気口24で圧力損失が発生するおそれがある。そのため、本実施形態の圧力調節装置22は、メイン給気ダクト23及び給気口24での圧力損失を考慮した上で、付室14と廊下12等の隣接する空間の間の圧力差が約60Paとなるように、故意に調節圧力を大きめに設定すると好ましい。
【0020】
例えば、以下の仕様の場合について、開口面積0.5m2の圧力調節装置22の調節圧力を約70Paにすると、メイン給気ダクト23及び給気口24で圧力損失が発生し、実際には付室14と廊下12等の隣接する空間の間の圧力差が60Pa以下となる。
【0021】
仕様
・付室扉サイズ:2,100mm×900mm
・給気ファン風量(屋外相当に開放された機械室に設置):11,800CMH(m3/h)
・メイン給気ダクトサイズ:600mm×600mm
・給気口サイズ:1,000mm×350mm
・圧力調節装置:開口面積0.5m2
【0022】
このように、付室14と廊下12等の隣接する空間の間の圧力差が60Pa以下に保持されることで、廊下12から避難する人の防火扉15の開放力を建築基準法告示で規定されている100N以下に保持することができる。したがって、廊下12から避難する人の防火扉15の開放障害を防止することができる。
【0023】
このように、本実施形態の加圧防排煙設備1は、圧力調節装置22をメイン給気ダクトに設置することで各階の付室14の圧力を調節するので、各階の付室と隣接する空間との間の扉に圧力調節装置を装備する必要がない。つまり、各階の付室と隣接する空間との間の扉は、通常の扉を使用することができる。したがって、本実施形態の加圧防排煙設備1は、従来のように各階の扉に圧力調節装置を設置するよりも、低コストとすることができる。特に、設置する圧力調節装置22を1つのみとすることで、さらに低コストとすることができる。
【0024】
また、本実施形態の加圧防排煙設備1を用いることで、付室から隣接する空間へ空気が流れることがなく、隣接する空間が出火している場合でも、火勢を増長させることがない。したがって、本実施形態の加圧防排煙設備1は、的確に排煙及び圧力調節を行うことができる。
【0025】
さらに、圧力調節装置22は、火熱にさらされることがないので、耐火性能を有する必要がない。したがって、本実施形態の加圧防排煙設備1は、従来のように耐火性能を有する圧力調節装置を設置するよりも、低コストとすることができる。
【0026】
図2は、建築物10に適用した本実施形態の加圧防排煙設備1の他の例を示す。
【0027】
本実施形態の加圧防排煙設備1は、各階の給気口24の上流側のサブ給気ダクト23aに弁又はダンパー等の空気流量調節部材25を設置してもよい。空気流量調節部材25は、サブ給気ダクト23aの開口面積を調節する部材であって、給気口24から給気される空気流量を調節することができる。
【0028】
例えば、建築物10の階数が多い場合には、メイン給気ダクト23の圧力損失等によって、高層階ほど圧力が低くなり、低層階と高層階の圧力差が大きくなってしまう。一般に、給気ファン21からの距離が遠いほど、メイン給気ダクト23の圧力損失は大きくなる。そこで、まず給気ファン21から最も距離が遠い付室14の給気口24から給気される空気の圧力を圧力調節装置22で調節する。そして、空気流量調節部材25は、給気ファン21からの距離が近い階ほどサブ給気ダクト23aの開口面積を小さく設定していけばよい。
【0029】
空気流量調節部材25は、竣工後に扉の開放力を測定しながら調節すればよい。また、付室と隣接する空間との間の圧力差を図示しない圧力センサ等によって検知し、図示しない制御装置が、検知した値に応じて空気流量調節部材25を制御してもよい。
【0030】
このように、サブ給気ダクト23aに空気流量調節部材25を設置することで、さらに的確に付室14の圧力調節を行うことができる。
【0031】
図3は、建築物10に適用した本実施形態の加圧防排煙設備1の圧力調節装置22の設置例を示す。
【0032】
本実施形態の加圧防排煙設備1の圧力調節装置22は、屋外に設置する。このように、圧力調節装置22を屋外に設置すると、建築物10内のスペースを効率的に使用することができ、好ましい。しかしながら、屋外に設置した場合、圧力調節装置22は、風雨にさらされ、汚れや錆等によって故障してしまう可能性が高くなる。
【0033】
そこで、本実施形態の圧力調節装置22は、鉛直方向において屋外のメイン給気ダクト23の下方に設置することが好ましい。メイン給気ダクト23の下方に設置することで、圧力調節装置22は、雨及び風の影響を小さくすることができる。また、圧力調節装置22は、メイン給気ダクト23の下部に直接設置すると、メイン給気ダクト23と圧力調節装置22の連結距離が短くなり、圧力調節装置22を低コストで容易に設置することができる。
【0034】
なお、圧力調節装置22は、メイン給気ダクト23の下方でなくてもよく、例えば、庇、ベランダ等の下方であってもよい。また、圧力調節装置22は、専用のケースの内部に設置してもよい。
【0035】
以上、本実施形態の加圧防排煙設備1は、各階の付室14と付室14に隣接する空間12との間に、付室14側へ開く防火扉15が設置された複数階の建築物10に用いる加圧防排煙設備1において、屋外の空気を送風する給気ファン21と、給気ファン21から送風される空気を通すメイン給気ダクト23と、各階の付室14に設置される給気口24と、メイン給気ダクト23と給気口24を連結するサブ給気ダクト23aと、給気ファン21から送風される空気の圧力を調節する圧力調節装置22と、を備え、圧力調節装置22は、メイン給気ダクト21に設置される。したがって、低コストで的確に圧力調節を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態の圧防排煙設備1では、圧力調節装置22は、メイン給気ダクト23に1つ設置される。したがって、従来のように各階の扉に圧力調節装置を設置するよりも、さらに低コストとすることができる。
【0037】
また、本実施形態の圧防排煙設備1は、サブ給気ダクト23aに設置される空気流量調節部材25を備える。したがって、さらに的確に付室14の圧力調節を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態の圧防排煙設備1では、圧力調節装置22は、屋外に設置される。したがって、建築物10内のスペースを効率的に使用することができる。
【0039】
また、本実施形態の圧防排煙設備1では、圧力調節装置22は、鉛直方向において、屋外のメイン給気ダクト23の下方に設置される。したがって、雨及び風の影響を小さくすることができる。
【0040】
なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、当業者であれば、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…加圧防排煙設備
10…建築物、11…居室、12…廊下(隣接する空間)、13…階段室、14…付室(給気対象空間)、15…防火扉、16…天井
20…給気部、21…給気ファン、22…圧力調節装置、23…メイン給気ダクト、23a…サブ給気ダクト、24…給気口、25…空気流量調節部材
30…排気部、31…排気ダクト、32…排気ファン
図1
図2
図3