(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165241
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】プレカット階段、その施工方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
E04F11/02 100
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070515
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 修一郎
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC45
2E301CD04
2E301DD11
2E301DD84
2E301DD91
2E301EE00
(57)【要約】
【課題】階段昇降方向に連続して施工される複数の側板5~11と、側板5~11の内面に端部が固定支持される複数の踏板14及び蹴込板16とを備えたプレカット階段において、その構成部材を完全にプレカットしても、階段施工現場で構成部材の施工位置が容易かつ素早く判別できるようにして、プレカット階段の施工の容易化及び迅速化を図る。
【解決手段】プレカット階段としての廻り階段Sの側板5~11の内面に、踏板14の端部を嵌合する踏板溝20と、踏板溝20に連続し、蹴込板16の端部を嵌合する蹴込板溝21とが形成されている。各側板5~11の内面において、踏板溝20及び蹴込板溝21により区画されかつ階段Sの施工状態で踏板溝20及び蹴込板溝21にそれぞれ嵌合される踏板14及び蹴込板16により階段表側から隠蔽される裏側領域24に、側板5~11の施工位置情報を示す側板施工位置表示記号23が掘り込み加工により設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の昇降方向に連続するように施工される複数の側板と、該複数の側板の内面に端部が固定支持される複数の踏板及び蹴込板とを備え、
上記各側板の内面に、上記踏板の端部を嵌合する踏板溝と、該踏板溝に直交するように連続し、上記蹴込板の端部を嵌合する蹴込板溝とが掘り込み加工により形成されているプレカット階段であって、
上記各側板の内面側において、上記踏板溝及び蹴込板溝により区画されかつ階段の施工状態で踏板溝及び蹴込板溝にそれぞれ嵌合される踏板及び蹴込板により階段表側から隠蔽される領域で上記踏板溝及び蹴込板溝の溝内面を含む裏側領域に、該側板の施工位置情報を示す側板施工位置表示記号が掘り込み加工により形成されていることを特徴とするプレカット階段。
【請求項2】
請求項1のプレカット階段において、
プレカット階段は、廻り階段部と、該廻り階段部に接続された直階段部とを有する廻り階段であることを特徴とするプレカット階段。
【請求項3】
請求項1又は2のプレカット階段において、
踏板の裏面に、該踏板の施工位置情報を示す踏板施工位置表示記号が設けられ、蹴込板の裏面に、該蹴込板の施工位置情報を示す蹴込板施工位置表示記号が設けられていることを特徴とするプレカット階段。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つのプレカット階段を施工する方法であって、
複数の側板に形成された側板施工位置表示記号と同じ施工位置表示記号を有する側板が記載された階段の施工図面を用意しておき、
施工時に各側板の側板施工位置表示記号を上記施工図面の側板の施工位置表示記号と照合して該側板を施工することを特徴とするプレカット階段の施工方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つのプレカット階段を製造する方法であって、
側板における側板位置情報表示記号を、少なくとも側板に対する踏板溝及び蹴込板溝の加工と同時に形成することを特徴とするプレカット階段の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレカット階段、その施工方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内装建材を施工する場合、その施工現場での部材の加工を極力少なくするために、施工部材を予め工場で目的の形状や大きさにプレカットすることが多用されており、この工場でプレカットされる部材により施工される階段はプレカット階段と呼ばれている。
【0003】
このプレカット階段は、予め工場において、階段の側板(側桁とも呼ばれる)、踏板、蹴込板等を板材からカットするとともに、その側板に対し踏板及び蹴込板をそれぞれ嵌合する踏板溝及び蹴込板溝も掘り込みを加工しておき、階段の施工現場では、少しのカットをするだけで階段を施工できるようにしたものである。
【0004】
しかし、その反面、プレカット階段においては、その構成部材の種類や数が多く、特に廻り階段にあっては顕著であり、施工現場での調整が難しくなるのは避けられない。
【0005】
そのため、従来、特許文献1に示されるように、廻り階段をプレカット階段で構成する場合に、複数の側板の接続端部を、階段が組み立てられた状態で建築物のモジュールの中心に一致するように垂直に形成することで、廻り階段をユニット化して建築物から独立させ、施工現場での加工調整を不要にすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、階段、特に廻り階段では、上記のように構成部材が細かく分かれており、形状が互いに少し異なるだけで似かよった部材も多く、それら複数種類の部材を完全にプレカット部材にしてしまうと、部材数が増えてしまい、施工現場ではどの部材をどの位置に施工するのかを素早く見分けることが難くなり、それに手間取ると却って施工が面倒になる問題が生じる。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プレカット階段の構成部材に工夫を加えることで、その構成部材を完全にプレカットしたとしても、階段の施工現場で構成部材の施工位置が容易にかつ素早く判別できるようにして、プレカット階段の施工の容易化及び迅速化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、この発明では、予め工場でプレカットされる階段の複数の側板には、施工後の階段において表から見えずに隠れる部分があることに着目し、その部分に当該側板の施工位置情報の表示記号を形成しておくようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、階段の昇降方向に連続するように施工される複数の側板(側桁とも言う)と、該複数の側板の内面に端部が固定支持される複数の踏板及び蹴込板とを備え、上記各側板の内面に、上記踏板の端部を嵌合する踏板溝と、該踏板溝に直交するように連続し、上記蹴込板の端部を嵌合する蹴込板溝とが掘り込み加工により形成されているプレカット階段が対象である。
【0011】
そして、上記各側板の内面側において、上記踏板溝及び蹴込板溝により区画されかつ階段の施工状態で踏板溝及び蹴込板溝にそれぞれ嵌合される踏板及び蹴込板により階段表側から隠蔽される領域で上記踏板溝及び蹴込板溝の溝内面を含む裏側領域に、該側板の施工位置情報を示す側板施工位置表示記号が掘り込み加工により形成されていることを特徴とする。上記「階段表側」とは、階段においてその上を歩く利用者側を言い、「裏側」とはその反対側を言うものとする。
【0012】
この第1の発明では、予め工場において階段の複数の側板がプレカットされ、各側板の内面に踏板溝及び蹴込板溝も掘り込み加工される。また、複数の側板内面側の裏側領域に当該側板の階段における施工位置情報表示記号が掘り込み加工により設けられる。このプレカット階段の施工現場で、複数の側板を階段昇降方向に並べて施工するときに、プレカット階段の部材の梱包を解いてそれら部材がばらばらになっても、各側板の施工位置は内面側の裏側領域にある施工位置情報表示記号に基づいて容易に判別し、側板が複数であっても各々の施工位置を素早く識別することができ、施工位置に迷うことがなくなる。その結果、プレカット階段の施工を容易に行うことができ、その施工時間も短縮することができる。
【0013】
また、上記各側板の施工位置情報表示記号は、踏板溝及び蹴込板溝で区画されかつ階段の施工状態で踏板溝及び蹴込板溝にそれぞれ嵌合される踏板及び蹴込板により階段表側から隠蔽される裏側領域に設けられ、この裏側領域は踏板溝及び蹴込板溝の溝内面も含んでいる。このことで、施工された階段において、各側板の施工位置情報表示記号は階段表側から隠蔽され、階段の表側に露出することがなく、階段に美感上の違和感が生じたり、その意匠性が阻害されたりすることはない。
【0014】
また、側板内面側の側板施工位置表示記号は、踏板溝及び蹴込板溝と同様の掘り込み加工により形成されているので、工場において、各側板の内面に踏板溝及び蹴込板溝を加工するのと同時に、それらの溝と同じ内面側の裏側領域に施工位置表示記号を掘り込み加工することができる。このように、側板に対し施工位置表示記号を、踏板溝及び蹴込板溝の加工と同時に同じ内面側に掘り込み加工することで、例えばNC加工装置で自動的に加工ができるようになり、製造工程での工数や手間を削減できるだけでなく、施工位置表示記号を加工する際の人的ミスをも減らすことができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明のプレカット階段において、そのプレカット階段は、廻り階段部と、該廻り階段部に接続された直階段部とを有する廻り階段であることを特徴とする。
【0016】
この第2の発明では、プレカット階段は廻り階段部及び直階段部を有する廻り階段である。その廻り階段部及び直階段部の側板の形状は互いに異なり、また廻り階段部でも複数の側板の形状が少しずつ異なっている。こうして廻り階段は、廻り階段部及び直階段部において、形状の異なる複数の側板で構成されているので、その形状だけで側板の施工位置を素早く識別することが困難となる。しかし、このように形状の異なる複数の側板を有する廻り階段であっても、その施工位置を側板内面側に設けられている側板施工位置表示記号から容易に判別でき、施工位置に迷うことがなく、廻り階段の施工を容易に短時間で行うことができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明のプレカット階段において、踏板の裏面(下面)に、該踏板の施工位置情報を示す踏板施工位置表示記号が設けられ、蹴込板の裏面に、該蹴込板の施工位置情報を示す蹴込板施工位置表示記号が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この第3の発明では、踏板の裏面(下面)に、その施工位置情報を示す踏板施工位置表示記号が、また蹴込板の裏面にその施工位置情報を示す蹴込板施工位置表示記号がそれぞれ設けられているので、複数の踏板及び蹴込板についても各々の施工位置を施工位置表示記号により容易に識別することができ、プレカット階段の施工をより一層容易に短時間で行うことができる。
【0019】
また、踏板施工位置表示記号は踏板の裏面(下面)に、また蹴込板施工位置表示記号は蹴込板の裏面にそれぞれ設けられているので、施工された階段において、それらの施工位置情報表示記号が階段表側から隠蔽され、階段の美感上の違和感や意匠性の低下が生じることはない。
【0020】
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つのプレカット階段を施工する方法であって、この施工方法は、複数の側板に形成された側板施工位置表示記号と同じ施工位置表示記号を有する側板が記載された階段の施工図面を用意しておき、施工時に各側板の側板施工位置表示記号を上記施工図面の側板の施工位置表示記号と照合して該側板を施工することを特徴とする。
【0021】
この第4の発明では、階段の施工図面に複数の側板の施工位置表示記号と同じ施工位置表示記号を有する側板が記載されているので、この施工図面に記載された側板の側板施工位置表示記号と実際の複数の側板の側板施工位置表示記号とを照合し、1つ1つの側板について階段全体での施工位置を施工図面上の側板施工位置表示記号で確認しながら、その側板を施工位置に正確に施工することができ、階段の施工効率が良くなり、施工を容易かつ迅速に行うことができる。
【0022】
第5の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つのプレカット階段を製造する方法であって、この製造方法は、側板における側板位置情報表示記号を、少なくとも側板に対する踏板溝及び蹴込板溝の加工と同時に形成することを特徴とする。
【0023】
この第5の発明では、工場において、階段の各側板の内面側に踏板溝及び蹴込板溝を加工するのと同時に、それらの溝と同じ内面側に側板施工位置表示記号を加工することができる。このように、側板に対し施工位置表示記号を、踏板溝及び蹴込板溝と同時にかつ同じ内面側に加工することで、製造工程での手間を削減できるだけでなく、施工位置表示記号を設ける際の人的ミスをも減らして正確な施工位置表示記号を確保することができ、施工作業の信頼性向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によると、プレカット階段を構成する側板の内面側において、踏板溝及び蹴込板溝により区画されかつ階段の施工状態で踏板及び蹴込板により階段表側から隠蔽される裏側領域に、該側板の施工位置情報を示す側板施工位置表示記号を踏板溝及び蹴込板溝の加工と同様の掘り込み加工により設けたことにより、複数の側板の施工位置を施工位置情報表示記号に基づいて素早く識別することができ、プレカット階段の施工の容易化及び施工時間の短縮化を図ることができる。また、施工された階段において、各側板の施工位置情報表示記号が階段表側から隠蔽されるので、階段の美感上の違和感の発生を防止し、意匠性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプレカット階段としての廻り階段を示す平面図である。
【
図2】
図2は、廻り階段の階段セットのうちの側板の組み合わせを示す平面図である。
【
図3】
図3は、廻り階段の側板、踏板及び蹴込板の施工位置表示記号を例示する図である。
【
図4】
図4は、側板施工位置表示記号を有する側板を記載した廻り階段の施工図面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係るプレカット階段としての廻り階段Sを示す。この廻り階段Sは建物の上下階の間に施工されて、上側から見て時計回り方向に上がる右廻り上がり階段となっている。
【0028】
廻り階段Sは、下端部が下の階の床部に位置する例えば3段の下側直階段部S1と、この下側直階段部S1の上端部に下端部が接続され、上階に向かって180°に折れ曲がるように廻る例えば6段の廻り階段部S2と、この廻り階段部S2の上端部に下端部が接続され、上端部が上階の床部に接続される例えば3段の上側直階段部S3とを備えている。廻り階段Sの全体の段数は例えば12段で、13段目は上階の床部となっている。
図1中、階段Sの下段からの段数を丸数字で示し、直線の矢印は階段Sの上がり方向を示している。また、説明では、階段Sにおいて最下段及び最上段が位置する側を「前」とし、その反対側を「後」とし、「左」及び「右」とは前側から後側を見た状態の左右側をそれぞれ言うものとする。さらに、廻り階段Sの廻り方向の中心側を「内側」と言い、その反対側を「外側」という。
【0029】
図1において、1は廻り階段Sの内側中心部(廻り階段Sの廻り方向中心部)に位置する木製の芯柱で、この芯柱1の左右両側には2本の木製前柱2,2が芯柱1との間に一定の間隔(例えば柱中心間で910mm)を空けて直列に並ぶように立設されている。また、芯柱1及び左右の前柱2,2の真後ろの位置にはそれぞれ3本の木製後柱3,3,…が左右方向に一定の間隔(例えば柱中心間で910mm)を空けて直列に並ぶように立設されている。すなわち、芯柱1及び左右の前柱2,2の3本と3本の後柱3,3,…とはそれぞれ前後に対応した位置にあり、それらの前後間隔は、芯柱1と各前柱2との間、及び後柱3,3,…間の左右方向の間隔と同じ(例えば柱中心間で910mm)とされている。これら6本の柱1~3に囲まれた部分が断面矩形状の階段空間となっており、この階段空間に廻り階段部S2が配置されるように廻り階段Sが施工されている。芯柱1、各前柱2及び各後柱3はいずれも例えば一辺が105mmの断面正方形状の管柱である。
【0030】
廻り階段Sは、側桁とも呼ばれる例えば7枚(複数枚)の側板5~11と、例えば12枚(複数枚)の踏板14,14,…と、例えば13枚(複数枚)の蹴込板16,16,…とを少なくとも備え、これらは例えば合板、LVL、単板積層材、PB、OSB、集成材、CLT、MDF等の木質材、又は前記複数の木質材の組合せで構成されている。
【0031】
上記7枚の側板5~11は、
図2に示すように、いずれも例えば厚さ22.5mm、幅350mmの厚板材からなり、各々の板材表裏面を鉛直方向に配置した状態で階段Sの昇降方向に斜めに連続するように施工されている。7枚の側板5~11は上記芯柱1、2本の前柱2,2及び3本の後柱3,3,…にビス等により固定されることで、踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…を構造的に支持するための支持部材とされている。
【0032】
具体的には、左前柱2の右側面と下の階の床部との間には下側直階段部S1の外側板5(
図2(a)参照)が、また芯柱1の左側面と下の階の床部との間には同じ下側直階段部S1の内側板6(
図2(b)参照)がそれぞれ互いに左右に対向するように平行に配置されている。
【0033】
また、左前柱2の右側面と左後柱3の右側面との間には、両柱2,3間に亘って前後方向に延びる廻り階段部下側板7(
図2(c)参照)が配置され、この廻り階段部下側板7の前端部は上記下側直階段部S1の外側板5の後端部に略突き合わされた状態で連続している。
【0034】
さらに、3本の後柱3,3,…の前側面には、それらに亘って左右方向に延びる廻り階段部中側板8(
図2(d)参照)が配置され、この廻り階段部中側板8の左端部は上記廻り階段部下側板7の後端部右側面に突き合わされている。
【0035】
また、右前柱2及び右後柱3の左側面には、両柱2,3間に亘って前後方向に延びる廻り階段部上側板9(
図2(e)参照)が配置され、この廻り階段部上側板9の後端部は上記廻り階段部中側板8の右端部前側面に突き合わされている。
【0036】
また、右前柱2の左側面と上階の床部との間には上側直階段部S3の外側板10(
図2(f)参照)が、また上記芯柱1の右側面と上階の床部との間には同じ上側直階段部S3の内側板11(
図2(g)参照)がそれぞれ互いに左右に対向するように平行に配置されている。
【0037】
尚、
図1には示していないが、上記左側に位置する前柱2及び後柱3の間には、両柱2,3間に亘って前後方向に延びる左側壁下地材が、また後側の3本の柱3,3,…間には、それらの柱3,3,…間に亘って左右方向に延びる後側壁下地材が、さらに右側に位置する前柱2及び後柱3の間には、両柱2,3間に亘って前後方向に延びる右側壁下地材がそれぞれ配置されて固定されており、これらの壁下地材は、石膏ボード等からなっていて廻り階段Sの壁部を構成している。
【0038】
上記複数枚の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…は、いずれも少なくとも一方の端部が上記7枚(複数枚)の側板5~11の内面つまり階段幅方向中央側の面に固定支持されている。具体的には、下側直階段部S1では、外側板5及び内側板6の間に1段目~3段目の3枚の踏板14,14,…と3枚の蹴込板16,16,…とが架け渡されて固定支持されている。また、同様に、上側直階段部S3にあっては、その外側板10及び内側板11の間に10段目~12段目の3枚の踏板14,14,…と4枚の蹴込板16,16,…とが架け渡されて固定支持されている。
【0039】
また、廻り階段部S2にあっては、下側板7、中側板8及び上側板9に6枚の踏板14,14,…及び同数の蹴込板16,16,…の外端部(一端部)が固定支持され、6枚の踏板14,14,…の内端部(他端部)は芯柱1の周囲に高さ位置を異ならせて固定支持されている。このことで、廻り階段部S2では、4段目~9段目の6枚の踏板14,14,…が所定の角度間隔(基本的に30°)をあけて平面視で180°の角度範囲に亘り施工され、それらの踏板14,14,…は下段から上段に向かって順に高くなっている。
【0040】
上記踏板14,14,…はいずれも例えば厚さ36mmの厚板材であり、
図1に概略形状を示すように、1段目~3段目、10段目~12段目の踏板14,14,…は細長の長方形の板材であるが、4段目、6段目、7段目及び9段目の踏板14,14,…は三角形(直角三角形)の板材であり、5段目及び8段目の踏板14,14は略菱形の板材である。
【0041】
また、蹴込板16,16,…は例えば厚さ5.5mm、幅225mmの薄板材であり、長さの異なる細長の長方形板状である。
【0042】
そして、図示しないが、各踏板14の裏面(下面)には、階段昇降方向の下降側の先端部近くの位置に蹴込板嵌合溝が掘り込み加工により形成されており、この蹴込板嵌合溝に下側の蹴込板16の上端部が嵌合され、その蹴込板16の下端部は下段側の踏板14の背面にビスや釘等で固定される。踏板14の先端部から蹴込板16(蹴込板嵌合溝)の位置までの寸法は「鼻の出」と呼ばれ、例えば30mmである。
【0043】
図2は上記各側板5~11の内面を示しており、この内面には、上記各踏板14の端部を嵌合する複数の踏板溝20,20,…と、この踏板溝20,20,…に直交するように連続し、上記各蹴込板16の端部を嵌合する複数の蹴込板溝21,21,…とが形成されている。各踏板溝20及び各蹴込板溝21は、いずれも例えばNC加工装置(数値制御加工装置)による板材内面に対するNC掘り込み加工により形成されている。
【0044】
踏板溝20について説明すると、
図2(a)は下側直階段部S1の外側板5を、また
図2(b)は同直階段部S1の内側板6をそれぞれ示している。これら外側板5及び内側板6の内面には、1段目ないし4段目用の4つの踏板溝20,20,…が板幅方向に対し傾斜しかつ板長さ方向に位置ずれした状態で互いに平行に形成されている。各踏板溝20の一端部は閉塞されて閉塞端部とされ、各踏板溝20の他端部は側板5,6の木口面に開放されており、側板5,6が斜めに施工されたときに、踏板溝20,20,…は水平方向に配置される。
【0045】
また、
図2(c)は廻り階段部下側板7を、また
図2(d)は同廻り階段部中側板8を、さらに
図2(e)は廻り階段部上側板9をそれぞれ示している。廻り階段部下側板7には、4段目及び5段目用の2つの踏板溝20,20が、また廻り階段部中側板8には、5段目ないし8段目用の4つの踏板溝20,20,…が、さらに廻り階段部上側板9には、8段目及び9段目用の2つの踏板溝20,20がそれぞれ板幅方向に傾斜しかつ板長さ方向に位置ずれした状態で互いに平行に形成されている。これらの側板7~9において、大半の踏板溝20,20,…の一端部は閉塞されて閉塞端部とされているが、残り一部の踏板溝20,20,…の一端部は木口面に開放されている。各踏板溝20の他端部は側板7~9の木口面に開放されており、側板7~9が斜めに施工されたときに、踏板溝20,20,…が水平方向に平行に配置される。
【0046】
さらに、
図2(f)は上側直階段部S3の外側板10を、また
図2(g)は同直階段部S3の内側板11をそれぞれ示しており、これら外側板10及び内側板11には、10段目ないし13段目用の4つの踏板溝20,20,…が板幅方向に対し傾斜しかつ板長さ方向に位置ずれした状態で互いに平行に掘り込み加工により形成されている。各踏板溝20の一端部は閉塞されて閉塞端部とされ(外側板10における10段目用の踏板溝20は木口面に開放されている)、他端部は側板10,11の木口面に開放されており、側板10,11が斜めに施工されたときに、踏板溝20,20,…が水平に配置される。
【0047】
以上の7枚の側板5~11における踏板溝20,20,…の掘り込み深さはいずれも同じで例えば10mmである。また、各踏板溝20は、閉塞端部側の溝幅が踏板14の厚さ(例えば36mm)よりも僅かに大きく、反対側の開放端部の溝幅が閉塞端部側よりも大きい略楔形状となっている。そして、各踏板溝20に踏板14の端部を固定するときには、側板5~11が斜めに施工された状態で、各踏板14が踏板溝20にその開放端部から閉塞端部に向かって嵌合され、踏板14の先端部が閉塞端部に達した状態で、踏板14の下面と踏板溝20の下溝側面との間にクサビ(図示せず)が打ち込まれることで、踏板14の端部が側板5~11に固定される。
【0048】
さらに、階段昇降方向の上下に隣接する踏板溝20,20間の間隔は、同様に上下に隣り合う踏板14,14間の高さ(蹴上げ寸法)に相当し、例えば200mmとされている。
【0049】
一方、蹴込板溝21について説明すると、各側板5~11の内面に複数の蹴込板溝21,21,…が形成され、各蹴込板溝21は、隣接する踏板溝20,20間に各踏板溝20と直交するように設けられている。各蹴込板溝21の一端部(上端部)は、施工時に上側になる一方の踏板溝20において閉塞端部から上記鼻の出の寸法(例えば30mm)だけ離れた位置に連通し、他端部(下端部)は、同様に下側になる他方の踏板溝20を通って側板5~11の木口面(下端部)に開放されている。側板5~11が斜めに施工されたときに、それらの蹴込板溝21,21,…はいずれも垂直方向に配置される。
【0050】
各蹴込板溝21の掘り込み深さは、踏板溝20と同じで例えば10mmであり、溝底部が踏板溝20の溝底部と面一になっている。また、各蹴込板溝21は一定の溝幅の細溝であり、その溝幅は蹴込板16の厚さ(5.5mm)よりも僅かに大きくなっている。そして、蹴込板溝21に蹴込板16を固定するときには、側板5~11が斜めに施工された状態で、蹴込板16は蹴込板溝21にその開放端部(下端部)から一方(上側)の踏板溝20に向かって嵌合され、蹴込板16の上端部が踏板溝20に達した状態で、該踏板溝20に嵌合されている踏板14下面の上記蹴込板嵌合溝に嵌入され、蹴込板16の下端部が下側の踏板14の裏面にビスや釘等により固定されることで、蹴込板16が上下の踏板14,14間に固定されるようになっている。
【0051】
図2(a)の外側板5と
図2(b)の内側板6とは、踏板溝20,20,…及び蹴込板溝21,21,…が面合わせ状態で一致するように略対称に形成されている。また、
図2(f)の外側板10と
図2(g)の内側板11とは、踏板溝20,20,…及び蹴込板溝21,21,…が面合わせ状態で一致するように略対称に形成されている。
【0052】
上記7枚の側板5~11の全体形状の切断加工、その踏板溝20,20,…及び蹴込板溝21,21,…の掘り込み加工と、12枚の踏板14,14,…の全体形状の切断加工、その蹴込板嵌合溝の掘り込み加工と、13枚の蹴込板16,16,…の全体形状の切断加工とはいずれも工場で行われており、このことで廻り階段Sはプレカット階段とされている。それら側板5~11、踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…は1つの階段毎に組み合わせられて階段セットとして梱包されており、階段セットは階段の施工現場に搬入されて廻り階段Sに組み立てられる。
図2は、上記階段セットのうち、側板5~11のみの組み合わせを示していることとなる。
【0053】
そして、
図2に示すように、上記複数枚の側板5~11には、いずれも各側板5~11の施工位置情報を示す側板施工位置表示記号23が各踏板溝20及び蹴込板溝21の加工と同じ掘り込み加工により設けられている。具体的には、側板施工位置表示記号23は、各側板5~11の内面側において、踏板溝20,20,…及び蹴込板溝21,21,…により区画されかつ階段Sの施工状態で各踏板溝20及び各蹴込板溝21にそれぞれ嵌合される踏板14及び蹴込板16により階段表側から隠蔽される裏側領域24に形成されている。裏側領域24は、側板5~11の内面(表面)だけでなく、踏板溝20及び蹴込板溝21の溝内面(溝底面及び溝内の周囲側面)を含む領域であり、
図2では、この各側板5~11の裏側領域24を多数の点集合部分で示している。
図2は、側板5~11の内面(表面)に側板施工位置表示記号23が踏板溝20及び蹴込板溝21の加工と同様に掘り込み加工により形成されている実施形態を示している。また、側板施工位置表示記号23の加工位置は、側板5~11の内面の最下段側の位置とされている。この側板5~11の内面に形成される側板施工位置表示記号23は、その掘り込み加工の深さが踏板溝20及び蹴込板溝21の溝深さと同じかそれよりも浅い深さとするのが好ましい。尚、側板施工位置表示記号23は、上記裏側領域24であれば位置を問わず、どこでもよく、踏板溝20及び蹴込板溝21の溝内面であってもよい。踏板溝20及び蹴込板溝21の溝内面に側板施工位置表示記号23を掘り込み加工する場合には、溝底面に掘り込むのが容易であり好ましい。
【0054】
上記各側板5~11内面に対する側板施工位置表示記号23の掘り込み加工は、踏板溝20及び蹴込板溝21の加工と同時に同じNC加工装置により行うか、或いは踏板溝20及び蹴込板溝21のNC加工装置とは別のNC加工装置や他の加工装置により行うか、さらには側板5~11の切断加工、並びに踏板溝20及び蹴込板溝21の掘り込み加工と同時に同じNC加工装置により行うかのいずれかが選択される。
【0055】
また、図示しないが、上記複数枚の踏板14,14,…の裏面(下面)には、該踏板14,14,…の施工位置情報を示す踏板施工位置表示記号が、また蹴込板16,16,…の裏面には、該蹴込板16,16,…の施工位置情報を示す蹴込板施工位置表示記号がそれぞれ掘り込み加工により形成されている。踏板施工位置表示記号及び蹴込板施工位置表示記号の掘り込み深さは、踏板14及び蹴込板16の例えば強度に影響を与えない程度の深さ(例えば0.5mm程度)にするのが好ましい。また、踏板施工位置表示記号は踏板14の裏面であれば、また蹴込板施工位置表示記号も蹴込板16の裏面であれば、それぞれいずれも位置を問わない。
【0056】
この踏板14に対する施工位置表示記号の掘り込み加工についても、踏板14の切断加工と、その蹴込板嵌合溝の掘り込み加工と同時に行われるか、別の加工装置を用いて行われる。同様に、蹴込板16に対する施工位置表示記号も、蹴込板16の切断加工と同時に或いは別の加工装置により行われる。
【0057】
上記側板施工位置表示記号23、踏板施工位置表示記号及び蹴込板施工位置表示記号は、その各部材の階段Sでの施工位置を識別できるようにしたものであり、この実施形態では、例えば
図3に示す記号を採用している。すなわち、廻り階段Sの下側直階段部S1は各部材の記号として「A」を、また廻り階段部S2は同「B」を、さらに上側直階段部S3は同「C」をそれぞれ付ける。
【0058】
そして、下側直階段部S1の外側板5及び内側板6の施工位置表示記号23,23は共に同じ「A」としている。これら外側板5及び内側板6の施工位置表示記号23,23が同じ記号であっても、踏板溝20や蹴込板溝21の向きの違いから外側板5及び内側板6のどちらであるかは容易に判明するので、同じ記号でも支障が生じないためである。勿論、外側板5及び内側板6に異なる施工位置表示記号23を形成して識別できるようにしてもよい。上側直階段部S3の外側板10及び内側板11の施工位置表示記号も、同様の理由で共に同じ「C」としている。
【0059】
また、廻り階段部S2の下側板7、中側板8及び上側板9の3枚が同じ施工位置表示記号「B」としているのも上記と同じ理由であり、同じ施工位置表示記号「B」であっても、3枚の側板7~9の踏板溝20や蹴込板溝21の向きの差異からそれらの施工位置が判明する。
【0060】
これに対し、踏板14の裏面に形成される踏板施工位置表示記号、及び蹴込板16の裏面に形成される蹴込板施工位置表示記号は、下側直階段部S1にあっては「A」を、また廻り階段部S2にあっては同「B」を、さらに上側直階段部S3にあっては同「C」をそれぞれ付けた上で、その後に各階段部S1~S3毎に下段からの順番を付ける。つまり、下側直階段部S1の3枚の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…の表示記号は下段から「A1」~「A3」であり、廻り階段部S2の6枚の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…の表示記号は下段から「B1」~「B6」とし、上側直階段部S3の3枚の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…の表示記号は下段から「C1」~「C3」としている。
【0061】
尚、
図3に示す表示記号の付け方は1つの例示であり、各部材の施工位置を識別できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0062】
図4は、上記廻り階段Sの全体と、7枚の側板5~11の施工位置とを記載した施工図面30を示している。この施工図面30は、上記階段セットに同梱されて階段Sの施工現場に搬入される。
【0063】
上記施工図面30には、階段Sの全体を示す階段平面
図30aが
図4の右側に記載され、この階段平面
図30aの他に、施工位置表示記号「A」,「B」,「C」が付けられた7枚の側板5~11を示す側板平面
図30bが
図4の左側上部に記載されている。側板平面
図30bに付けられている側板施工位置表示記号は、実際の側板5~11に掘り込み加工される施工位置表示記号23と同じ位置に同じ形状の記号で記載されている。
図4の左側下部に記載されている図は、側板の一部に必要な施工を説明した拡大図である。
【0064】
尚、施工図面30には、施工位置表示記号が付けられた側板5~11の側板平面
図30bに加え、施工位置表示記号が付けられた踏板及び蹴込板の裏面を示す平面図を併せて記載してもよい。
【0065】
上記廻り階段Sの施工方法について説明する。施工現場に搬入された階段セットには、少なくとも7枚の側板5~11、12枚の踏板14,14,…及び13枚の蹴込板16,16,…が施工図面30と共に梱包されており、この階段セットを開梱して、その中から、まず、側板5~11を取り出して階段空間の柱1~3にビス等により固定する施工を行う。
【0066】
具体的には、下側直階段部S1の外側板5を左前柱2と下の階の床部との間に固定し、内側板6を芯柱1と同床部との間に固定する。また、上側直階段部S3の外側板10を右前柱2と上階の床部との間に固定し、内側板11を芯柱1と上階床部との間に固定する。さらに、廻り階段部S2の下側板7を左前柱2と左後柱3との間に固定し、中側板8を3本の後柱3,3,…間に固定し、上側板9を右後柱3と右前柱2との間に固定する。
【0067】
そのとき、7枚の側板5~11の各々の内面に廻り階段Sでの施工位置表示記号23が掘り込み加工によって形成されているので、これら複数の側板5~11を階段昇降方向に並べて施工するときに、階段セットの梱包を解いた状態で側板5~11がばらばらになっていても、各側板5~11の施工位置は内面にある施工位置情報表示記号23を見れば直ぐに判別し、側板5~11が複数であっても各々の施工位置を素早く識別することができ、施工位置に迷うことはない。
【0068】
すなわち、特に、廻り階段部S2に直階段部S1,S3が接続される廻り階段Sでは、廻り階段部S2と直階段部S1,S3との間で側板5~11の形状は互いに異なり、また廻り階段部S2の中でも複数の側板7~9の形状が少しずつ異なっている。こうして廻り階段Sは、廻り階段部S2及び直階段部S1,S3において、形状の異なる複数の側板5~11を有するので、その形状だけで側板5~11の施工位置の素早く識別することが困難となる。しかし、このように形状の異なる複数の側板5~11を有する廻り階段Sであっても、その施工位置を側板5~11内面に設けられている施工位置表示記号23から容易に判別でき、施工位置に迷いが生じない。そのため、廻り階段Sがプレカット階段であっても、その施工を容易に行うことができることになり、その施工時間も短縮することができる。
【0069】
しかも、階段セットに同梱されている施工図面30にも、上記施工位置表示記号が形成された複数枚の側板5~11と同一の側板平面
図30bが記載され、つまり施工位置表示記号23の記入のある複数枚の側板5~11がそのまま平面図として記載されているので、この施工図面30に記載された側板平面
図30bと、側板施工位置表示記号23が加工された実際の側板5~11とを照合し、1つ1つの側板5~11について階段S全体での施工位置を確認しながら、その側板5~11を施工位置に正確に施工できるようになる。このことで、階段Sの施工効率が良くなり、施工をさらに容易かつ迅速に行うことができ、施工作業の信頼性も向上する。
【0070】
このようにして複数枚の側板5~11が施工されたとき、各側板5~11において踏板溝20,20,…は水平に配置され、全ての側板5~11に亘り複数の踏板溝20,20,…が一定の高さの差(蹴上げ寸法)を空けて階段昇降方向に並び、各踏板溝20,20,…の閉塞端部は階段昇降方向下側に、また開放端部は同上側にそれぞれ位置する。
【0071】
次に、踏板14,14,…を施工する。下側直階段部S1では、階段幅方向に対向する外側板5及び内側板6の複数の踏板溝20,20,…に開放端部側からそれぞれ踏板14,14,…の両端部を閉塞端部まで嵌入し、各踏板溝20の開放端部からその下溝側面と踏板14の下面との間にクサビを打ち込んで各踏板14を固定する。上側直階段部S3でも、階段幅方向に対向する外側板10及び内側板11に踏板14,14,…を上記と同様にして固定する。
【0072】
また、廻り階段部S2では、その下側板7、中側板8及び上側板9の複数の踏板溝20,20,…に開放端部側からそれぞれ踏板14,14,…の外端部(一端部)を閉塞端部まで嵌入し、各踏板溝20の開放端部からその下溝側面と各踏板14の下面との間にクサビを打ち込んで踏板14の外端部を固定する。複数の踏板14,14,…の内端部(他端部)はいずれも芯柱1の異なる高さ位置に固定する。
【0073】
この後、蹴込板16,16,…を施工する。下側直階段部S1では、階段幅方向に対向する外側板5及び内側板6の複数の蹴込板溝21,21,…に下側の開放端部側からそれぞれ複数枚の蹴込板16,16,…の両端部を上端の閉塞端部まで嵌入し、各蹴込板16の上端部は上側の踏板14の蹴込板嵌合溝に嵌合し、下端部は下側の踏板14の裏面にビスや釘等によって固定する。上側直階段部S3でも、階段幅方向に対向する外側板10及び内側板11の間に複数枚の蹴込板16,16を固定する。
【0074】
また、廻り階段部S2では、3枚の側板7~9の複数の蹴込板溝21,21,…に下側の開放端部側からそれぞれ複数枚の蹴込板16,16,…の外端部(一端部)を上端の閉塞端部まで嵌入し、各蹴込板16の上端部は上側の踏板14の蹴込板嵌合溝に嵌合し、下端部は下側の踏板14の裏面にビスや釘等により固定する。
【0075】
上記のように、踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…を施工する際、各踏板14には裏面(下面)に、その施工位置情報を示す踏板施工位置表示記号が、また各蹴込板16には裏面にその施工位置情報を示す蹴込板施工位置表示記号がそれぞれ掘り込み加工により設けられているため、複数の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…について各々の施工位置を施工位置表示記号により容易に識別することができ、迷うことがなくなる。しかも、側板5~11と同様に、施工図面30にも、施工位置表示記号が形成された複数枚の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…と同一の図が記載されている場合、この施工図面30に記載された踏板及び蹴込板の図と、施工位置表示記号が加工された実際の踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…とを照合すれば、1つ1つの踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…について階段S全体での施工位置を確認しながら、それら踏板14,14,…及び蹴込板16,16,…を施工位置に正確に施工できるようになる。このことによって、階段Sの施工効率が良くなり、施工をさらに容易かつ迅速に行うことができる。
【0076】
以上のようにして廻り階段Sが施工される。この施工後の廻り階段Sにおいて、上記各側板5~11に加工されている施工位置表示記号23、各踏板14及び各蹴込板16にそれぞれ加工されている施工位置表示記号が、階段Sを昇降する利用者の目に入ると、美観的な違和感が生じたり、意匠性が阻害されたりすることとなる。しかし、各側板5~11の施工位置表示記号23は、側板5~11の内面側において、踏板溝20及び蹴込板溝21により区画される裏側領域24に形成され、この裏側領域24は、階段Sの施工状態で踏板溝20及び蹴込板溝21にそれぞれ嵌合される踏板14及び蹴込板16により階段表側から隠蔽される位置にある。また、各踏板14の施工位置表示記号は、該踏板14の裏面(下面)に加工され、各蹴込板16の施工位置表示記号も該蹴込板16の裏面に形成され、この各踏板14及び各蹴込板16の裏面は、やはり階段Sの施工状態で階段表側から隠蔽される位置にある。そのため、側板5~11の施工位置情報表示記号23や、踏板14及び蹴込板16の施工位置情報表示記号は階段Sの表側から隠蔽されて該表側に露出しない。このことによって、階段Sの美感上の違和感の招来を防ぎ、その意匠性を向上させることができる。
【0077】
また、側板5~11内面の施工位置表示記号23、踏板14及び蹴込板16の裏面の施工位置表示記号は、それら板材に対する掘り込み加工により形成されている。そのため、側板5~11にあっては、予め工場において、その内面に踏板溝20,20,…及び蹴込板溝21,21,…を加工するのと同時に、それらの溝20,21と同一面に施工位置表示記号23を掘り込み加工することができる。このように、側板5~11に対し施工位置表示記号23を、踏板溝20及び蹴込板溝21の加工と同時にかつ同一面に加工することで、例えばNC加工装置で自動的に加工ができ、製造工程での工数や手間を削減できるだけでなく、施工位置表示記号23を加工する際の人的ミスをも減らすことができる。また、踏板14及び蹴込板16にあっても、その板材を加工するのと同時に、施工位置表示記号を掘り込み加工することができ、側板5~11の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、踏板14及び蹴込板16の施工位置表示記号をいずれも掘り込み加工によって形成しているが、印刷等の他の方法によって形成することもできる。しかし、施工位置表示記号の形成をNC加工装置で自動的に行い、製造工程での工数や手間を削減し、人的ミスも減らすことができる点では、掘り込み加工により形成するのが好ましい。
【0079】
また、上記実施形態では、プレカット階段は、180°の1つの廻り階段部S2に下側及び上側の2つの直階段部S1,S3が接続された廻り階段Sの場合であるが、他のタイプの廻り階段でもよく、さらには直階段であってもよい。他のタイプの廻り階段としては、実施形態と同様に180°の1つの廻り階段部に下側及び上側の2つの直階段部が接続された廻り階段であるが、廻り階段部の上下半部の一方が1枚の踏板による踊り場である廻り階段、90°の1つの廻り階段部に下側及び上側の2つの直階段部が接続された廻り階段、上下2つの90°の廻り階段部の間に1つの直階段部が接続された廻り階段、1つの直階段部に90°の1つの廻り階段部が接続された廻り階段等、種々のタイプがある。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、プレカット階段の施工の容易化及び施工時間の短縮化を図り得るので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0081】
S 廻り階段
S1 下側直階段部
S2 廻り階段部
S3 上側直階段部
5~11 側板
14 踏板
16 蹴込板
20 踏板溝
21 蹴込板溝
23 側板施工位置表示記号
24 裏側領域
30 施工図面
30a 階段平面図
30b 側板平面図