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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165284
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20221024BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221024BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02J7/00 P
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070586
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA05
5G503BB02
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BB09
5H730AS05
5H730BB13
5H730CC12
5H730CC16
5H730FD01
5H730FF01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】
高電圧電源を降圧して低電圧の車載機器を駆動する低電圧電源を得る車両用電源装置において、高電圧蓄電手段の電圧が変化しても、安定した低電圧電源を得ること。
【解決手段】
蓄電素子を直列に接続して形成した高圧電源から、所定の蓄電素子グループを選択的に低電圧電気負荷と接続することで、高電圧から低電圧へと電力変換を行う構成において、各蓄電素子グループの電圧は、蓄電素子の電圧が最低の時に、低電圧電気負荷手段の定格作動電圧より僅かに高くなるような蓄電素子数を設定するとともに、スイッチング手段の出力側へ整流手段と、インダクタ及びコンデンサから成る平滑回路を設け、スイッチング手段のON時間とOFF時間(デッドタイム)の比率を制御することによって、前記蓄電素子の電圧(SOC)の変化に影響されることなく、安定した電圧の低電圧電源を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧で作動する電気負荷手段と、
複数の蓄電素子を直列に接続して高電圧の直流電源を得る高電圧電源と、
高電圧電源の電圧を降圧して低電圧の直流電源を得る降圧手段と、
を備える車両用電源装置であって、
低電圧の直流電源の電圧値は、前記電気負荷手段の定格作動電圧とし、
前記降圧手段は、スイッチング手段を具備しており、
前記スイッチング手段は、前記直列に接続された複数の蓄電素子の各ノードにおいて、該蓄電素子の電圧値が使用範囲の最低値である時に、前記電気負荷手段の定格作動電圧と略等しい電圧となるように、単一の/或いは複数のノードを選択するように作用し、
前記降圧手段は、前記スイッチング手段と接続した整流手段と、
該整流手段と並列に接続した、インダクタとコンデンサによる公知の平滑回路を具備しており、
該コンデンサの両端を低電圧の直流電源として、前記電気負荷手段へ供給するが如く構成し、
前記高電圧電源の電圧値を前記低電圧の直流電源の電圧に対してN倍(Nは自然数)とするとともに、前記蓄電素子の個数をN×n(nは自然数)とし、
前記降圧手段は制御手段を具備しており、
該制御手段は前記スイッチング手段が前記複数の蓄電素子の中から選択する単一の/或いは複数のノードの部位を周期的に変化させるように作用するとともに、
前記スイッチング手段が選択するノードの部位を変更する際に、全てのノードと前記整流手段との間の接続が切り離される所謂デッドタイムを設けるとともに、
前記単一の/或いは複数のノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用すること、
を特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記単一の/或いは複数のノードの電圧値に応じて、該ノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用することを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記高電圧電源の電圧値に応じて、前記ノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用することを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記制御手段は前記低電圧の直流電源の電圧値と、前記電気負荷手段の定格作動電圧、との差が最小となるが如く、前記ノードを選択的に接続している時間と、前記デッドタイム、との比率をフィードバック制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電源装置であって、特に走行駆動等に用いる高圧蓄電手段と、走行駆動用以外の電気負荷へ供給する低電圧電源とを具備するとともに、該高圧蓄電手段から降圧手段を介して前記低電圧電源を得るがごとく構成したものである。
【背景技術】
【0002】
上記電源装置として、本出願人の提案に係る車両用電源装置が公知である(特許文献1)。これによると、蓄電素子を直列に接続して形成した高圧電源から、所定の蓄電素子グループを選択的に低電圧電気負荷と接続することで、高電圧から低電圧へと電力変換を行う構成において、該蓄電素子グループを高速で切り替えることによってスイッチング手段のスイッチング損失を略ゼロにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-26973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用高圧蓄電手段の蓄電素子としては一般的に、リチウムイオン二次電池が採用される。この場合、電池のSOC(State Of Charge)の使用範囲は30%から80%程度とされている。それに応じて、リチウムイオン二次電池の単セル電圧は2.6V程度から3.6V程度まで変化するから、上記蓄電素子グループの単セル個数を4とした場合のグループ電圧は2.6V×4=10.4Vから3.6V×4=14.4Vまで変化する。加えて、低電圧電気負荷の消費電流と蓄電素子の内部抵抗との掛け算によって発生する電圧降下を伴うことが知られている。
【0005】
車両の低電圧電気負荷として、白熱電球を用いた灯火装置、あるいはDCモータによるワイパー機構等があり、それら低電圧電気負荷は作動電圧によって灯火の明るさ変化、ワイパーの作動速度変化の如く、作動状態が変化する。特許文献1の車両用電源装置は高電圧蓄電手段の電圧、及び低電圧電気負荷の消費電流が変化すると、それに応動して低電圧電源の電圧が変化することから低電圧電気負荷の作動状態が安定しないといった課題があった。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、車両に搭載され高圧電源から降圧手段を介して低電圧電源を得る車両用電源装置において簡単な構成で、高圧電源を構成する蓄電素子の電圧、及び低電圧電気負荷の消費電流が変化しても安定した低電圧を得ることが可能な車両用電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明による車両用電源装置は、低電圧で作動する電気負荷手段と、複数の蓄電素子を直列に接続して高電圧の直流電源を得る高電圧電源と、高電圧電源の電圧を降圧して低電圧の直流電源を得る降圧手段と、を備える車両用電源装置であって、低電圧の直流電源の電圧値は、前記電気負荷手段の定格作動電圧とした。
【0008】
前記降圧手段は、スイッチング手段を具備しており、前記直列に接続された複数の蓄電素子の各ノードにおいて、該蓄電素子の電圧値が使用範囲の最低値である時に、前記電気負荷手段の定格作動電圧と略等しい電圧となるように、単一の/或いは複数のノードを前記スイッチング手段によって選択するように構成した。
【0009】
前記降圧手段は、前記スイッチング手段と接続した整流手段と、該整流手段と並列に接続した、インダクタとコンデンサによる公知の平滑回路を具備しており、該コンデンサの両端を低電圧の直流電源として、前記電気負荷手段へ供給するが如く構成した。
【0010】
前記複数の蓄電素子を直列に接続して高電圧の直流電源を得る高電圧電源は、該高電圧電源の電圧を前記低電圧の直流電源の電圧に対してN倍(Nは自然数)とするとともに、蓄電素子の個数をN×n(nは自然数)として構成した。
【0011】
前記降圧手段は制御手段を具備しており、該制御手段は前記スイッチング手段が前記複数の蓄電素子の中から選択する単一の/或いは複数のノードの部位を周期的に変化させるように作用する。
【0012】
前記制御手段は、前記スイッチング手段が選択するノードの部位を変更する際に、全てのノードと前記整流手段との間の接続が切り離される所謂デッドタイムを設けるが如く作用する。
【0013】
前記制御手段は、前記単一の/或いは複数のノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用するものとした。
【0014】
請求項2の発明による車両用電源装置は、前記制御手段は、前記単一の/或いは複数のノードの電圧値に応じて、該ノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用するものとした。
【0015】
請求項3の発明による車両用電源装置は、前記制御手段は、高電圧電源の電圧値に応じて、該ノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用するものとした。
【0016】
請求項4の発明による車両用電源装置は、前記制御手段は前記低電圧の直流電源の電圧値と、前記電気負荷手段の定格作動電圧、との差が最小となるが如く、前記ノードを選択的に接続している時間と、前記デッドタイム、との比率をフィードバック制御するように構成した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、前記蓄電素子の電圧値が使用範囲の最低である場合に、前記スイッチング手段によって選択的に接続された単一の/或いは複数のノードの電圧値が前記電気負荷手段の定格電圧値と略等しくしたから、該蓄電素子の電圧が最低値である場合にも、電気負荷手段の定格作動電圧以上の低電圧電源電圧を得ることができる。
【0018】
さらに、請求項1の発明によれば、前記制御手段は、前記単一の/或いは複数のノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させて、整流素子とインダクタ、及びコンデンサからなる平滑回路を介して低電圧の直流電源を得るように構成したから、前記蓄電素子の電圧に関わらず任意の電圧値とした、低電圧の直流電源を得ることができる。
【0019】
さらに、請求項1の発明によれば、前記蓄電素子の電圧値が使用範囲の最低である場合に、前記スイッチング手段によって選択的に接続された単一の/或いは複数のノードの電圧値を前記電気負荷手段の定格電圧値と略等しくしたから、該スイッチング手段の入出力間電位差を最小にすることができるので、公知のスイッチング損失を最小にできるという効果がある。
【0020】
請求項2の発明によれば、前記制御手段は、前記単一の/或いは複数のノードの電圧値に応じて、該ノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用するものとしたから前記蓄電素子の電圧値が高くなった場合には、スイッチング手段は前記ノードを選択的に接続している時間と接続していない時間(デッドタイム)との比率を小さくして降圧動作させることで、蓄電素子の電圧に関わらず、低電圧の直流電源の電圧値を一定に保つことが可能になる。
【0021】
請求項3の発明によれば、前記制御手段は、高電圧電源の電圧値に応じて、該ノードを選択的に接続している時間と前記デッドタイムとの比率を変化させるように作用するものとしたから該電圧値が高くなった場合には、スイッチング手段は前記ノードを選択的に接続している時間と接続していない時間(デッドタイム)との比率を小さくして降圧動作させることで、高電圧電源の電圧値に関わらず、低電圧の直流電源の電圧値を一定に保つことが可能になる。
【0022】
請求項4の発明によれば、前記制御手段は前記低電圧の直流電源の電圧値と、前記電気負荷手段の定格作動電圧、との差が最小となるが如く、前記ノードを選択的に接続している時間と、前記デッドタイム、との比率をフィードバック制御するように構成したから低電圧の直流電源の電圧精度を高く維持することができる。
【0023】
以上から、本発明の車両用電源装置は、灯火類の照度変化やモータアクチュエータ等の作動力、又は速度変化を起こすことなく各種低電圧電気負荷手段を安定に作動させることができるといった優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の車両用電源装置の基本的な構成を表す図である
図2】本発明の車両用電源装置の動作を説明するタイミングチャートである
図3】グループ電圧とスイッチング手段のデューティーを表す図である
図4】一般的な降圧手段の構成を表す図である
図5】一般的降圧手段の電力損失と本発明の電力損失を比較した図である
図6】本発明の車両用電源装置の他の実施態様を表す図である
【実施例0025】
以下、各図を参照しながら本発明の車両用電源装置の実施態様について説明する。
【0026】
図1は、本発明にかかる基本的な実施態様であり、車両用電源装置1は、車両に搭載してエンジンによって駆動される充電手段10と、充電手段10によって充電される二次電池からなる蓄電素子20a~20oと、スイッチング手段30~35、制御手段40、定格電圧12Vで作動する電気負荷手段50、両端をスイッチング手段30~35と接続した整流手段60、及び整流手段60と並列に接続され、インダクタ70及びコンデンサ80からなる平滑回路を構成して低電圧の直流電源として電圧Voを電気負荷手段50へ供給するように作用する。
【0027】
充電手段10は、車両電装品に必要な電力を供給する為、図示しないエンジンによって駆動されるとともに、車両の減速時には駆動系を介して減速時の運動エネルギーを回生して前記蓄電素子20a~20oを充電するが如く作用する。
【0028】
蓄電素子20a~20oの各ノードは、例えば公称電圧略3Vのリチウムイオン電池であり、該蓄電素子20aから20oの全ノードを直列に接続して、前記電気負荷手段50の定格作動電圧12Vに対する倍数Nを3として、合計36V以上とした高圧電源が形成される。また、該高圧電源は図示しない車載されたモータ、インバータ等から成る電気駆動制御システムへ供給して、エンジンの駆動トルクをアシストするように作用する。これによって、車両の加速時には、前記減速時に回生したエネルギーを再利用して走行できるから車両の走行燃費向上を図ることが可能になる。
【0029】
前記蓄電素子20a~20oは、20aから20eのノードを第一のグループとして、
20fから20jのノードを第二のグループとして、20kから20oのノードを第三の
グループとして、それぞれ各グループの両端部とスイッチング手段30~35とを接続し
てある。尚、蓄電素子20a~20oの総個数は、前記倍数N=3に各グループ内の個数
n=5を掛け合わせて、合計はN×n=15個となっている。
【0030】
車両用高圧蓄電手段の蓄電素子としては一般的に、リチウムイオン二次電池が採用される。この場合、電池のSOC(State Of Charge)の使用範囲は30%から80%程度とされている。それに応じて、リチウムイオン二次電池の単セル電圧は2.6V程度から3.6V程度まで変化するから、上記各グループの単セル個数を5とした場合のグループ電圧は2.6V×5=13Vから3.6V×5=18Vまで変化する。
【0031】
加えて前記蓄電素子は所定の内部抵抗が存在するから、該蓄電素子を流れる電流によっても、上記単セル電圧が低下する。例えば内部抵抗を1mΩとし単セル数を5とした場合、電気負荷手段50を流れる電流が100Aの時、上記グループ電圧の最低値は13V―100A×(1mΩ×5)=12.5Vまで低下する。
【0032】
図1において、40は制御手段であり前記スイッチング手段30から35のON/OF
F状態を制御するように作用する。
【0033】
前記制御手段40は、図1に示す如く、前記スイッチング手段30と32とをONにして整流手段60と前記蓄電素子の第一グループを、図2のTon時間の間の間接続する。この時、前記スイッチング手段31、34、33、35、はOFFとなっている。スイッチング手段30は前記第一グループの正極側とつながっており、スイッチング手段32は前記第一グループの負極側とつながっているから、前記Tonの間、前記整流手段60にカソード側を+として、前記各グループの直流電圧が印加されることになる。
【0034】
尚、前記Tonの時間は例えば50マイクロ秒程度とすることが望ましい。
【0035】
次に制御手段40は、図2に示すデッドタイム時間Tdの間、前記すべてのスイッチング手段30~35をOFFに維持する。該時間Tdを設ける理由は、例えばスイッチング手段30とスイッチング手段31が同時にONする期間があると、該スイッチング手段30とスイッチング手段31と前記蓄電素子20a、20b、20c、20d、20eとで形成される閉回路に過大な電流が流れて、スイッチング手段の破損或いは、各蓄電素子の充電電力を無駄に消費するといった事態を招くからである。
【0036】
制御手段40は、前記第一グループにおいては、スイッチング手段30、32をTonの間ONにして、第一グループの電圧を整流手段60とインダクタ70、及びコンデンサ80へ供給する。続いてTd期間にすべてのスイッチング手段30~35がOFFになると、インダクタ70の電流はコンデンサ80と整流手段60を順方向に流れる。
前記第二グループにおいては、スイッチング手段31、34をTonの間ONにして、第二グループの電圧を整流手段60とインダクタ70、及びコンデンサ80へ供給する。続いてTd期間にすべてのスイッチング手段30~35がOFFになると、インダクタ70の電流はコンデンサ80と整流手段60を順方向に流れる。
前記第三グループにおいては、スイッチング手段33、35をTonの間ONにして、第三グループの電圧を整流手段60とインダクタ70、及びコンデンサ80へ供給する。続いてTd期間にすべてのスイッチング手段30~35がOFFになると、インダクタ70の電流はコンデンサ80と整流手段60を順方向に流れる。以上のように作用して図2のTを1周期として、上記を繰り返す。
【0037】
この結果、低電圧の直流電源としての出力電圧Voは、Vo=前記各グループの電圧×Ton/(Ton+Td)すなわち、Vo=グループ電圧×ONデューティーとなる。
【0038】
前記電気負荷手段50の定格作動電圧は一般的に12Vである。従って、上記構成によれば前記蓄電素子の電圧が最低値の場合にも、前記各グループの電圧は12.5Vであるから、前記ONデューティーを96%とすれば、電気負荷手段50の定格作動電圧12V以上を得ることができる。
【0039】
制御手段40は、蓄電素子20a~20oの電圧が上昇した場合に、前記ONデューティーを小さくして低電圧の直流電源としての出力電圧Voを電気負荷手段50の定格作動電圧に維持する。
【0040】
具体的には、図3に示す如く、前記グループ電圧が12.5Vの時、制御手段は前記ONデューティーを96%にし、グループ電圧が18Vの時、制御手段は前記ONデューティーを66.7%にして、グループ電圧の値によらず低電圧の直流電源としての出力電圧Voを12Vに保つ。このように、制御手段はグループ電圧の変化に対してONデューティーを連続的に変化させることで前記Voの値を一定にすることができる。
【0041】
尚、前記制御手段40は前記スイッチング手段30~35が、いずれかのグループを選択した際に前記整流素子60の両端電圧をモニターして、各グループの電圧を計測する。
【0042】
或いは、制御手段40は蓄電素子20aから20oの直列電圧、すなわち高電圧電源の電圧値を入力して、かかる電圧に応じて前記ONデューティーを変化させても良い。
【0043】
以上のように本発明の車両用電源装置は、蓄電素子を直列に接続して形成した高圧電源から、所定の蓄電素子グループを選択的に低電圧電気負荷と接続することで、高電圧から低電圧へと電力変換を行う構成において、各蓄電素子グループ電圧は、蓄電素子の電圧が最低の際に、低電圧電気負荷手段の定格作動電圧より僅かに高くなるような蓄電素子数を設定するとともに、スイッチング手段の出力側へ整流手段と、インダクタ及びコンデンサから成る平滑回路とを設け、スイッチング手段のON時間とOFF時間(デッドタイム)の比率を制御することによって、前記蓄電素子の電圧の変化に影響されることなく、低電圧電源の電圧値を電気負荷手段の定格値と略一致させることを可能にした。
【0044】
ところで、高電圧の直流電源から低電圧の直流電源を得る方法として、図4に示す公知の降圧コンバータを用いるのが一般的である。
【0045】
図4は蓄電素子20a~20oを直列にして構成した高電圧電源を、スイッチング手段S30によって断続し、整流手段60、インダクタ70、コンデンサ80による整流、平滑回路へ供給するとともに、該スイッチング手段S30のON/OFF比を制御することで降圧した低電圧電源の電圧Voを制御するものである。
【0046】
ここで、本発明の降圧手段と、上記降圧コンバータの動作を図5において比較した場合、スイッチング手段に加わる電圧Vと、該スイッチング手段を流れる電流Iと、スイッチング手段の損失V×Iは、上記降圧コンバータでは(a)のように大きな電力損失を発生するのに対し、本発明の降圧手段は前記蓄電素子グループの電圧値を最小限としたから(b)のように電力損失が小さくなり、その結果電力変換効率を高くすることができる。
【0047】
次に本発明の車両用電源装置の他の実施態様について、図6に従って説明する。尚、前記実施態様で引用した図1と同じ符号を用いた構成要素については、作用に違いが無い為、説明を省略する。
【0048】
図6の1は本実施態様における車両用電源装置で、制御手段40は差動増幅器42を具備しており、該差動増幅器42は低電圧の直流電源の電圧Voと基準電圧41とを比較して、その差が小さくなるようにスイッチング手段30~35の、前記ONデューティーを制御する。
【0049】
基準電圧41は、前記電気負荷手段50の定作動格電圧である12Vとしてあるので、蓄電素子20a~20oの電圧の変化に影響されることなく、低電圧電源の電圧値Voを電気負荷手段50の定格値と高精度に一致させることができる。
【0050】
以上のようにして、車両に搭載され高圧電源から降圧手段を介して低電圧電源を得る、車両用電源装置において、簡単な構成で高圧電源を構成する蓄電素子の電圧が変化しても安定した低電圧を得ることが可能な車両用電源装置を構成することができる。
【0051】
本発明の各実施態様においては、実施例として限定的な構成と作用を示しているに過ぎず、例えば整流手段はダイオードであるとして説明したが、該整流手段は公知のMOSFETとした同期整流回路であっても良く、さらに直列蓄電素子の数、蓄電素子の種類、スイッチング手段の素子種類と構成、平滑回路の構成、及び制御手段の動作タイミングは任意の形態をとることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用電源装置
10 充電手段
20a~20o 蓄電手段
30~35 スイッチ手段
40 制御手段
50 電気負荷手段













図1
図2
図3
図4
図5
図6