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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165299
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】墓施設、及び、墓販売システム
(51)【国際特許分類】
   E04H 13/00 20060101AFI20221024BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20221024BHJP
【FI】
E04H13/00 B
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070614
(22)【出願日】2021-04-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】520064300
【氏名又は名称】有限会社矢田石材店
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】矢田 敏起
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC14
(57)【要約】
【課題】墓の移転や墓じまいを容易に行うことができる墓施設、及び、この墓施設における墓の販売に係る墓販売システムを提供する。
【解決手段】墓施設1は、複数の区画の1区画ごとに形成される土台2と、納骨室を内部に有する基礎部11と、基礎部11の載置面に載置可能に形成される竿石部12とを備える墓3、4と、からなる。墓3、4は、それぞれ同一の形状及び大きさに形成された基礎部11を採用し、載置面に対し竿石部12を着脱可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の区画の1区画ごとに形成される土台と、
該土台上に複数設置され納骨室をそれぞれの内部に有する基礎部と、該基礎部それぞれの載置面に載置可能に形成される竿石部と、を備える複数の墓と、
を備え、
該墓は、それぞれ同一の形状及び大きさに形成された前記基礎部を採用し、且つ、前記載置面に対し前記竿石部を着脱可能に構成される
ことを特徴とする墓施設。
【請求項2】
前記基礎部は、前記土台の長手方向に沿う第1列と、該第1列に沿う第2列と、に沿って並べられ、
前記竿石部は、前記第1列と前記第2列とで高さが異なるものを採用する
ことを特徴とする請求項1に記載の墓施設。
【請求項3】
前記土台は、該土台の長手方向における一端側と他端側それぞれに所定のスペースを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の墓施設。
【請求項4】
前記第1列における前記墓と、前記第2列における前記墓とは、それぞれの正面部が前記第1列と前記第2列それぞれの並び方向に直交する方向を向くとともに、それぞれの背面部が対向するように配置される
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の墓施設。
【請求項5】
前記基礎部又は前記土台上には、前記墓それぞれに対応する花立を挿入可能な挿入孔が設けられ、
該挿入孔は、挿入口を閉塞する蓋部が着脱可能に形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の墓施設。
【請求項6】
それぞれの前記墓は、該墓を他の墓と識別可能な識別部を備える
ことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の墓施設。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6に記載の墓施設の前記墓を販売する墓販売者の端末と、
前記墓販売者の端末とネットワークを介して通信可能に接続される前記墓を購入する墓購入者の端末と、
を備え、
該墓購入者の端末にて、予め建立された複数の前記墓から前記墓購入者が所望の墓を選択するとともに、該墓の購入の申し込みと、前記竿石部に彫刻する内容と、を前記墓販売者の端末へ通知し、
該墓販売者の端末にて、前記竿石部に彫刻する内容に基づく該竿石部への彫刻の完了と、前記墓の開眼及び納骨を執り行う日時と、を前記墓購入者の端末へ通知し、
さらに、該墓購入者の端末にて、前記墓の承継者がいなくなった場合、該墓に納骨されている遺骨を合祀し永代供養することを予め依頼する
ことを特徴とする墓販売システム。
【請求項8】
前記墓購入者の端末にて、前記墓の購入を申し込む前に、前記墓購入者が所望の墓を選択し該墓を所定の期間取り置き可能な仮申し込みを前記墓販売者の端末に通知する
ことを特徴とする請求項7に記載の墓販売システム。
【請求項9】
前記墓販売者の端末にて、前記竿石部への彫刻を開始する前に、前記竿石部に彫刻する内容の見本を前記墓購入者の端末に通知し、
前記墓購入者の端末にて、前記竿石部に彫刻する内容と前記見本とが一致するか否かを前記墓販売者の端末に通知する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の墓販売システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墓施設、及び、この墓施設における墓の販売に係る墓販売システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、墓の形態には、公営墓地、寺院墓地、民間霊園の墓地(永代使用権)を個人、夫婦、家族単位で購入し、承継者が、墓地や霊園の管理費を支払うことによって墓地の永代使用権が維持されてきた。
【0003】
墓石は、納骨室を有する基礎部と、この基礎部の上面に載置され、例えば、家名、戒名、没年月日、俗名、享年等の文字や、家紋等の図形が彫刻される竿石部と、を備える構成であることが一般的である。このような墓石は、複数の石材を積層するものではなく一体成形したり(特許文献1参照)、複数の石材を固定部材にて固定する(特許文献2参照)ことにより、耐震性を付与したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-101442号公報
【特許文献2】実用新案登録第3192153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、墓地の永代使用権者が遠方に転居するようなとき、墓も転居先付近へ移転させたい場合がある。しかし、転居先において新しく墓地を購入したとしても、新しく購入した墓地の基礎部の規格が、既に購入した竿石部と合致せず、新たな墓石を購入する必要があった。したがって、墓の移転に掛かるコストが嵩んでしまうという問題点があった。
【0006】
なお、上記特許文献1、2のような技術を適用した墓石の場合、基礎部から竿石部を離脱させることが困難であった。したがって、竿石部のみ移転させることが難しいという問題点があった。
【0007】
また、近年、少子化により、承継者がいない等の理由によって先祖代々の墓が無縁墓になってしまう場合があった。このような無縁墓については、解体、撤去し、更地にしたうえで、永代使用権を墓地の管理者に返還する所謂「墓じまい」が行われるが、承継者がいないような場合、この墓じまいを行うことが困難であるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、墓の移転や墓じまいを容易に行うことができる墓施設、及び、この墓施設における墓の販売に係る墓販売システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の墓施設は、複数の区画の1区画ごとに形成される土台と、該土台上に複数設置され納骨室をそれぞれの内部に有する基礎部と、該基礎部それぞれの載置面に載置可能に形成される竿石部と、を備える複数の墓と、を備え、該墓は、それぞれ同一の形状及び大きさに形成された前記基礎部を採用し、且つ、前記載置面に対し前記竿石部を着脱可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
上記(1)のような特徴を有する本発明によれば、墓の基礎部は、それぞれ同一の形状及び大きさに形成されたものが採用され、基礎部の載置面に対し竿石部が着脱可能であることから、複数の墓地、霊園に予め墓を完成させ、これを販売(建て売り)することにより、例えば、墓を移転させたい場合、竿石部を基礎部から離脱させ、他の墓地、霊園に設けられた墓施設における基礎部に載置させることにより、竿石部の入れ替えが可能となる。また、承継者がいない等の理由により墓じまいをする場合、竿石部のみ撤去し、残った基礎部を再利用して新たな墓として販売することが可能となる。
【0011】
(2)請求項2記載の本発明の墓施設は、上記(1)に記載の発明において、前記基礎部は、前記土台の長手方向に沿う第1列と、該第1列に沿う第2列と、に沿って並べられ、前記竿石部は、前記第1列と前記第2列とで高さが異なるものを採用することを特徴とする。
【0012】
上記(2)のような特徴を有する本発明によれば、竿石部は、第1列と第2列のいずれか一方が高く、第1列と第2列のいずれか他方が低くなることにより、地震等によって仮に竿石部が倒れたとしても竿石部が損傷し難くなる(竿石部は、基礎部の載置面と接着されているため、地震等によって容易に倒れないように設けられている)。
【0013】
(3)請求項3記載の本発明の墓施設は、上記(1)又は(2)に記載の発明において、前記土台は、該土台の長手方向における一端側と他端側それぞれに所定のスペースを有することを特徴とする。
【0014】
上記(3)のような特徴を有する本発明によれば、土台が所定のスペースを有することにより、当該スペースに、例えば、花等の植物を植えることができる。このように、土台に、花等が植えられることにより、墓地、霊園を花や緑に囲まれたものとすることができる。
【0015】
(4)請求項4記載の本発明の墓施設は、上記(1)、(2)又は(3)に記載の発明において、前記第1列における前記墓と、前記第2列における前記墓とは、それぞれの正面部が前記第1列と前記第2列それぞれの並び方向に直交する方向を向くとともに、それぞれの背面部が対向するように配置されることを特徴とする。
【0016】
上記(4)のような特徴を有する本発明によれば、第1列における墓と、第2列における墓とは、それぞれの正面部が第1列と第2列それぞれの並び方向に直交する方向を向くとともに、それぞれの背面部が対向するように配置されることから、第1列における墓と第2列における墓のいずれか一方の正面部が、第1列における墓と第2列における墓のいずれか他方に隠れてしまうことが無くなる。したがって、第1列、第2列いずれの墓であっても参拝者は、墓前での墓参りができる。
【0017】
(5)請求項5記載の本発明の墓施設は、上記(1)、(2)、(3)又は(4)に記載の発明において、前記基礎部又は前記土台上には、前記墓それぞれに対応する花立を挿入可能な挿入孔が設けられ、該挿入孔は、挿入口を閉塞する蓋部が着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0018】
上記(5)のような特徴を有する本発明によれば、挿入孔の挿入口に蓋部を取り付けておけば、墓の販売中であっても挿入孔への異物の侵入を防ぐことができる。
【0019】
(6)請求項6記載の本発明の墓施設は、請求項(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)に記載の発明において、それぞれの前記墓は、該墓を他の墓と識別可能な識別部を備えることを特徴とする。
【0020】
上記(6)のような特徴を有する本発明によれば、墓地、霊園の管理者は、識別部により、墓を識別することができる。したがって、墓の識別部と、当該墓に納骨される故人の情報とを紐付けておくことにより、例えば、同じ墓施設において、竿石部に同一の家名が彫刻された墓が隣接していたとしても、墓地、霊園の管理者は、墓を取り違えることなく管理することができる。
【0021】
(7)上記課題を解決するためになされた請求項7記載の本発明の墓販売システムは、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の墓施設の前記墓を販売する墓販売者の端末と、前記墓販売者の端末とネットワークを介して通信可能に接続される前記墓を購入する墓購入者の端末と、を備え、該墓購入者の端末にて、予め建立された複数の前記墓から前記墓購入者が所望の墓を選択するとともに、該墓の購入の申し込みと、前記竿石部に彫刻する内容と、を前記墓販売者の端末へ通知し、該墓販売者の端末にて、前記竿石部に彫刻する内容に基づく該竿石部への彫刻の完了と、前記墓の開眼及び納骨を執り行う日時と、を前記墓購入者の端末へ通知し、さらに、該墓購入者の端末にて、前記墓の承継者がいなくなった場合、該墓に納骨されている遺骨を合祀し永代供養することを予め依頼することを特徴とする。
【0022】
上記(7)のような特徴を有する本発明によれば、墓購入者は、予め建立された複数の墓から所望の墓を選択し墓の購入の申し込みができ、竿石部への彫刻が完了し次第、墓の開眼及び納骨を執り行うことができる。したがって、故人の火葬が執り行われた後、遺族は、簡易且つ迅速に故人の遺骨を納骨することができる。
また、本発明によれば、墓購入者は、墓の承継者がいなくなった場合、墓に納骨されている遺骨を合祀し永代供養することを予め依頼することができる。したがって、墓購入者が、墓の承継者がいなくなった場合における遺骨の合祀及び永代供養を予め依頼することにより、承継者がいない等の理由による墓じまいを円滑に行うことができる。
【0023】
(8)請求項8記載の本発明の墓販売システムは、請求項(7)に記載の発明において、前記墓購入者の端末にて、前記墓の購入を申し込む前に、前記墓購入者が所望の墓を選択し該墓を所定の期間取り置き可能な仮申し込みを前記墓販売者の端末に通知することを特徴とする。
【0024】
上記(8)のような特徴を有する本発明によれば、墓購入者は、仮申し込みをすることにより、所望の墓を選択し墓を所定の期間取り置きすることができる。したがって、墓購入者は、時間をかけて墓の購入を検討することができる。
【0025】
(9)請求項9記載の本発明の墓販売システムは、請求項(7)又は(8)に記載の発明において、前記墓販売者の端末にて、前記竿石部への彫刻を開始する前に、前記竿石部に彫刻する内容の見本を前記墓購入者の端末に通知し、前記墓購入者の端末にて、前記竿石部に彫刻する内容と前記見本とが一致するか否かを前記墓販売者の端末に通知することを特徴とする。
【0026】
上記(9)のような特徴を有する本発明によれば、竿石部への彫刻を開始する前に、墓購入者が竿石部に彫刻する内容の見本を確認することができる。したがって、竿石部に彫刻する内容の誤記を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、墓の移転や墓じまいを容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る墓施設の実施例1を示す斜視図である。
図2図1における墓施設の平面図である。
図3図1における矢印Aの指示する方向から視た墓施設の側面図である。
図4図1における墓の斜視図である。
図5】本発明に係る墓販売システムの実施例を簡略的に示す概略構成図である。
図6】本発明に係る墓販売システムの処理(墓販売システムによる墓の販売、購入の手順)を示すフロー図である。
図7】本発明に係る墓施設の実施例2を示す図であり、(a)は墓施設における墓の斜視図、(b)は(a)におけるB-B間断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1図6を参照しながら、本発明に係る墓施設、及び、墓施設の墓石販売システムの実施例1について、また、図7を参照しながら、本発明に係る墓施設の実施例2について、それぞれ説明する。
【実施例0030】
図1は本発明に係る墓施設の実施例1を示す斜視図、図2図1における墓施設の平面図、図3図1における矢印Aの指示する方向から視た墓施設の側面図、図4図1における墓の斜視図、図5は本発明に係る墓販売システムの実施例を簡略的に示す概略構成図、図6は本発明に係る墓販売システムの処理(墓販売システムによる墓の販売、購入の手順)を示すフロー図である。
【0031】
図1において、引用符号1は、本発明に係る墓施設の実施例1を示している。墓施設1は、墓地、霊園等における複数の区画の1区画ごとに配置されるものであり、図1に図示するように、土台2と、複数の墓3、4と、を備えている。図5において、引用符号21は、墓施設1の墓3、4を販売するための墓販売システムを示している。以下、まず、墓施設1の各構成について説明し、しかる後、墓販売システム21について説明する。
【0032】
まず、墓施設1を構成する土台2について説明する。
図1図3に図示する土台2は、墓地、霊園等における複数の区画の1区画ごとに形成され、且つ、図2に図示するように、平面視長方形に形成されている。土台2は、この土台2の一対の長辺部を構成する一方の長辺壁5及び他方の長辺壁6と、土台2の一対の短辺部を構成する一方の短辺壁7及び他方の短辺壁8と、を備えている。
【0033】
一方の長辺壁5と他方の長辺壁6とは、この上面に複数の識別部16が設けられている。識別部16は、墓3、4の数に応じて設けられ、土台2の長手方向(図1及び図2においては矢印Xの指示する方向を言う。以下、同じ)に沿って所定の間隔をあけて配置されている。具体的には、土台2の長手方向において、各識別部16の位置と、墓3、4の各正面部18の位置とが略一致するように配置されている(図2参照)。識別部16は、特に図示しないが、板状の部材に、例えば、識別番号(墓3、4に付与され、墓3、4を識別可能な番号)が表示されているものである。
【0034】
土台2の内側には、土が詰められており、この上面9に複数の墓3、4が設けられている。土台2の上面9は、土台2の長手方向における一端側と他端側にそれぞれに所定のスペース10を有している。所定のスペース10は、花等の植物を植える部分として備えられている。
【0035】
つぎに、墓施設1を構成する墓3、4について説明する。
図1に図示する墓3は、所謂洋型の墓であり、図1に図示する墓4は、所謂和型の墓である。図1及び図2に図示するように、墓3は、土台2の長手方向に沿う列(以下、本実施例では、「第1列」と言う)に沿って所定の間隔をあけて複数(本実施例では、7基)並べられている。また、図1及び図2に図示するように、墓4は、土台2の短手方向(図1及び図2においては矢印Yの指示する方向)において隣り合い、土台2の長手方向に沿う列(以下、本実施例では、「第2列」と言う)に沿って所定の間隔をあけて複数(本実施例では、7基)並べられている。
【0036】
図1及び図2に図示するように、第1列における墓3と、第2列における墓4とは、それぞれの正面部18が第1列と第2列それぞれの並び方向に直交する方向を向くとともに、それぞれの背面部19が対向するように配置されている。
【0037】
図3に図示する墓3、4は、それぞれ、基礎部11と、竿石部12と、香炉13と、を備えている。図3に図示するように、墓3の竿石部12と、墓4の竿石部12とは、高さ方向(図1及び図3においては矢印Zの指示する方向)における高さが異なっている。墓3、4は、それぞれ、同一の形状、同一の大きさに形成された基礎部11を採用している。本実施例では、墓3の竿石部12は、墓4の竿石部12と比べて、高さ方向における高さが低くなるように形成されている。墓3、4は、基本的な構成が同一であるため、本実施例では、以下、墓3の各構成について説明する。
【0038】
基礎部11は、土台2の上面9に設置されるものであり、納骨室15(図4参照)を内部に有している。納骨室15は、故人の遺骨を納骨する空間である。基礎部11は、納骨室15を有する部分が土台2の土中に埋設されるように配置されている。また、図4に図示する基礎部11には、一対の挿入孔14が設けられている。挿入孔14は、花立を挿入可能に形成されている。挿入孔14は、特に図示しないが、挿入孔14の挿入口を閉塞する蓋部が着脱可能に形成されている。
【0039】
竿石部12は、家名、戒名、没年月日、俗名、享年等の文字や、家紋等の図形が彫刻されるものであり、基礎部11の載置面17に載置可能に形成されている。竿石部12は、載置面17に対し着脱可能となっている。竿石部12を載置面17に載置する場合は、竿石部12の底面と、載置面17とを接着するものとする。香炉13は、線香を供えるものであり、墓3の正面部18側に配置されている。
【0040】
以上の本実施例に係る墓施設1によれば、墓3、4の基礎部11は、それぞれ同一の形状及び大きさに形成されたものが採用され、基礎部11の載置面17に対し竿石部12が着脱可能であることから、複数の墓地、霊園に予め墓3、4を完成させ、これを販売(建て売り)することにより、例えば、墓3、4を移転させたい場合、竿石部12を基礎部11から離脱させ、他の墓地、霊園に設けられた墓施設1における基礎部11に載置させることにより、竿石部12の入れ替えが可能となる。また、承継者がいない等の理由により墓じまいをする場合、竿石部12のみ撤去し、残った基礎部11を再利用して新たな墓3、4として販売することが可能となる。
【0041】
また、本実施例に係る墓施設1によれば、竿石部12は、第1列と第2列のいずれか一方が高く、第1列と第2列のいずれか他方が低くなることにより、地震等によって仮に竿石部12が倒れたとしても竿石部12が損傷し難くなる。なお、竿石部12は、竿石部12の底面と、基礎部11の載置面17とが接着されているため、地震等によって容易に倒れないように設けられている。
【0042】
また、本実施例に係る墓施設1によれば、土台2が所定のスペース10を有することにより、当該スペース10に、例えば、花等の植物を植えることができる。このように、土台2に、花等が植えられることにより、墓地、霊園を花や緑に囲まれたものとすることができる。
【0043】
また、本実施例に係る墓施設1によれば、第1列における墓3と、第2列における墓4とは、それぞれの正面部18が第1列と第2列それぞれの並び方向に直交する方向を向くとともに、それぞれの背面部19が対向するように配置されることから、第1列における墓3と第2列における墓4のいずれか一方の正面部18が、第1列における墓3と第2列における墓4のいずれか他方に隠れてしまうことが無くなる。したがって、第1列、第2列いずれの墓3、4であっても参拝者は、墓前での墓参り(正面部18を向いての墓参り)ができる。
【0044】
また、本実施例に係る墓施設1によれば、挿入孔14の挿入口に蓋部を取り付けておけば、墓3、4の販売中であっても挿入孔14への異物の侵入を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施例に係る墓施設1によれば、墓地、霊園の管理者は、識別部16により、墓3、4を識別することができる。したがって、墓3、4の識別部16と、当該墓3、4に納骨される故人の情報とを紐付けておくことにより、例えば、同じ墓施設1において、竿石部12に同一の家名が彫刻された墓3、4が隣接していたとしても、墓地、霊園の管理者は、墓3、4を取り違えることなく管理することができる。
【0046】
つぎに、墓施設1の墓3、4を販売するための墓販売システム21について説明する。
図5に図示する墓販売システム21は、墓3、4を販売する墓販売者の端末22と、墓販売者の端末22とネットワーク23を介して通信可能に接続される墓3、4を購入する墓購入者の端末24と、を備えている。
【0047】
つぎに、墓販売システム21の処理(墓販売システム21による墓3、4の販売、購入の手順)について説明する。
まず、図6のステップS101において、墓購入者は、墓購入者の端末24にて、予め建立された墓3、4(図1参照)から墓購入者が所望の墓3、4を選択する。墓3、4を選択する場合(S101:YES)は、図6のステップS102へ進み、墓3、4を選択しない場合(S101:NO)は、手順を終了する(S112)。
【0048】
図6のステップS102において、墓購入者は、墓購入者の端末24にて、選択した墓3、4を所定の期間(例えば、2週間)取り置き可能な「仮申し込み」を墓販売者の端末22に通知する。仮申し込みを行う場合(S102:YES)は、図6のステップS103へ進み、仮申し込みを行わない場合(S102:NO)は、手順を終了する(S112)。なお、仮申し込みを行わず、墓3、4の購入の申し込みを行う場合は、墓購入者は、ステップS102をスキップし、図6のステップS103に進む。
【0049】
図6のステップS103において、墓購入者は、墓購入者の端末24にて、選択した(仮申し込みした)墓3、4の購入の申し込みを行うか否かを墓販売者の端末22に通知する。墓3、4の購入の申し込みを行う場合(S103:YES)は、図6のステップS104へ進み、墓3、4の購入の申し込みを行わない場合(S103:NO)は、手順を終了する(S112)。
【0050】
墓購入者は、上記の通り、墓3、4の購入の申し込みを行う際、墓購入者の端末24にて、将来、墓3、4の承継者がいなくなった場合、墓3、4に納骨されている遺骨を合祀し永代供養することを予め依頼することができる。なお、上記合祀、永代供養の依頼は、墓3、4の購入の申し込み時に限定されるものではない。
【0051】
図6のステップS104において、墓購入者は、墓購入者の端末24にて、竿石部12(図1参照)に彫刻する内容(家名、戒名、没年月日、俗名、享年等)を墓販売者の端末22に通知する。しかる後、図6のステップS105へ進む。
【0052】
図6のステップS105において、墓販売者は、墓販売者の端末22にて、竿石部12に彫刻する内容を受信し、しかる後、図6のステップS106において、墓販売者は、墓販売者の端末22にて、竿石部12への彫刻を開始する前に、竿石部12に彫刻する内容の見本を墓購入者の端末24に通知する。
【0053】
図6のステップS107において、墓購入者は、墓購入者の端末24にて、竿石部12に彫刻する内容の見本を受信し、しかる後、図6のステップS108において、竿石部12に彫刻する内容と、図6のステップS107において受信した見本とが一致するか否かを墓販売者の端末22に通知する。竿石部12に彫刻する内容と、見本とが一致する場合(S108:YES)は、図6のステップS109へ進み、竿石部12に彫刻する内容と、見本とが一致していない場合(S108:NO)は、墓販売者は、見本を修正した後、図6のステップS106において、墓販売者の端末22にて、見本(修正版)を墓購入者の端末24に通知する。
【0054】
図6のステップS109において、墓販売者は、墓販売者の端末22にて、竿石部12に彫刻する内容と、見本とが一致する旨を受信し、竿石部12への彫刻を開始する。しかる後、図6のステップS110において、彫刻が完了した旨、及び、墓3、4の開眼及び納骨を執り行う日時を墓購入者の端末24に通知する。
【0055】
図6のステップS111において、墓購入者は、墓購入者の端末24にて、彫刻が完了した旨、及び、墓3、4の開眼及び納骨を執り行う日時を受信する。なお、特に図示しないが、墓販売者が墓販売者の端末22にて、墓3、4の開眼及び納骨を執り行う日時の候補を墓購入者の端末24に通知し、墓購入者が墓購入者の端末24にて、上記日時の候補から所望の日時を選択し、墓販売者の端末22に通知することにより日時を決定するようにしてもよいものとする。以上で、墓販売システム21の処理(墓販売システム21による墓3、4の販売、購入の手順)が終了する(S112)。
【0056】
以上の本実施例に係る墓販売システム21によれば、墓購入者は、予め建立された複数の墓3、4から所望の墓3、4を選択し墓3、4の購入の申し込みができ、竿石部12への彫刻が完了し次第、墓3、4の開眼及び納骨を執り行うことができる。したがって、故人の火葬が執り行われた後、遺族は、簡易且つ迅速に故人の遺骨を納骨することができる。また、本実施例に係る墓販売システム21によれば、墓購入者は、墓3、4の承継者がいなくなった場合、墓3、4に納骨されている遺骨を合祀し永代供養することを予め依頼することができる。したがって、墓購入者が、墓の承継者がいなくなった場合における骨の合祀及び永代供養を予め依頼することにより、承継者がいない等の理由による墓じまいを円滑に行うことができる。
【0057】
また、本実施例に係る墓販売システム21によれば、墓購入者は、仮申し込みをすることにより、所望の墓3、4を選択し墓3、4を所定の期間取り置きすることができる。したがって、墓購入者は、時間をかけて墓3、4の購入を検討することができる。
【0058】
また、本実施例に係る墓販売システム21によれば、竿石部12への彫刻を開始する前に、墓購入者が竿石部12に彫刻する内容の見本を確認することができる。したがって、竿石部12に彫刻する内容の誤記を防ぐことができる。
【0059】
つぎに、本実施例に係る墓施設1、及び、墓販売システム21の効果について説明する。
以上、図1図6を参照しながら説明してきたように、本実施例に係る墓施設1、及び、墓販売システム21によれば、墓3、4の移転や墓じまいを容易に行うことができるという効果を奏する。
【実施例0060】
本発明に係る墓施設は、実施例1の他、下記の実施例2を用いてもよいものとする。以下、図7を参照しながら、実施例2について説明する。
図7は本発明に係る墓施設の実施例2を示す図であり、(a)は墓施設における墓の斜視図、(b)は(a)におけるB-B間断面図である。なお、実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図7において、引用符号31は、本発明に係る墓施設の実施例2を示している。また、図7において、引用符号33は、墓施設31における複数の墓33の1つを示している。本実施例における墓施設31は、墓33を備えている点において実施例1における墓施設1(図1参照)と異なっている。墓33は、所謂板型の墓であり、基礎部34と、竿石部35と、を備えている。
【0062】
図7に図示するように、基礎部34は、略箱形に形成され、納骨室36(図7(b)参照)を内部に有している。竿石部35は、納骨室36を閉塞するような蓋形に形成され、基礎部34の上部に対し着脱可能となっている。
【0063】
つぎに、本実施例に係る墓施設31の効果について説明する。
以上、図7を参照しながら説明してきたように、本実施例に係る墓施設31によれば、墓33が実施例1における墓3、4よりも簡易な構成及び構造を備えていることから、墓33の移転や墓じまいを、より容易に行うことができるという効果を奏する(実施例1によっても墓の移転や墓じまいを容易に行うことができることは勿論である)。
【0064】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1、31…墓施設
2…土台
3、4、33…墓
5…一方の長辺壁
6…他方の長辺壁
7…一方の短辺壁
8…他方の短辺壁
9…上面
10…所定のスペース
11、34…基礎部
12、35…竿石部
13…香炉
14…挿入孔
15、36…納骨室
16…識別部
17…載置面
18…正面部
19…背面部
21…墓販売システム
22…墓販売者の端末
23…ネットワーク
24…墓購入者の端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の区画の1区画ごとに形成される土台と、
該土台上に複数設置され納骨室をそれぞれの内部に有する基礎部と、該基礎部それぞれの載置面に載置可能に形成される竿石部と、を備える複数の墓と、
を備え、
該墓は、それぞれ同一の形状及び大きさに形成された前記基礎部を採用し、且つ、前記載置面に対し前記竿石部を着脱可能に構成され
前記基礎部は、前記土台の長手方向に沿う第1列と、該第1列に沿う第2列と、に沿って並べられ、
前記竿石部は、前記第1列と前記第2列とで高さが異なるものを採用し、
前記第1列における前記墓と、前記第2列における前記墓とは、それぞれの正面部が前記第1列と前記第2列それぞれの並び方向に直交する方向を向くとともに、それぞれの背面部が対向するように配置され、
前記第1列における前記墓の竿石部は、前記第2列における前記墓の竿石部に比べて、高さ方向における高さが低くなるように形成されており、
前記第1列における前記墓の竿石部と、前記第2列における前記墓の竿石部とは、前記基礎部の載置面に対して着脱自在に配置され、
前記基礎部は、納骨室を有する部分が土台の土中に埋設されるように配置されていることを特徴とする墓施設。
【請求項2】
前記土台は、該土台の長手方向における一端側と他端側それぞれに所定のスペースを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の墓施設。
【請求項3】
前記基礎部又は前記土台上には、前記墓それぞれに対応する花立を挿入可能な挿入孔が設けられ、
該挿入孔は、挿入を閉塞する蓋部が着脱可能に形成されている
ことを特徴とする請求項1又に記載の墓施設。
【請求項4】
それぞれの前記墓は、該墓を他の墓と識別可能な識別部を備える
ことを特徴とする請求項1、2又に記載の墓施設。