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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165316
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】TRPV1活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/235 20060101AFI20221024BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20221024BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20221024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221024BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221024BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61K31/235
A23L27/20 D
A23L33/12
A61P43/00 111
A61P43/00 107
A61P3/00
A61P3/10
A61K8/37
A61Q13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070646
(22)【出願日】2021-04-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】後藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和輝
(72)【発明者】
【氏名】川原崎 聡子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 春弥
(72)【発明者】
【氏名】井上 和生
(72)【発明者】
【氏名】河田 照雄
(72)【発明者】
【氏名】周 蘭西
(72)【発明者】
【氏名】釼持 久典
(72)【発明者】
【氏名】村西 修一
(72)【発明者】
【氏名】金子 秀
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD09
4B018ME01
4B018ME03
4B018MF02
4B047LG08
4B047LP02
4C083AB172
4C083AB312
4C083AB352
4C083AC022
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC662
4C083AC712
4C083AD202
4C083BB41
4C083CC04
4C083CC25
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD30
4C083KK01
4C083KK02
4C083KK12
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB03
4C206DB57
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB22
4C206ZC01
4C206ZC21
4C206ZC35
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】新たなTRPV1活性化剤、当該活性化剤を有効成分とする、エネルギー消費促進や熱産生促進等の作用を有する香料組成物、及びこれらを使用した香粧品や飲食品等を提供すること。
【解決手段】メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、TRPV1活性化剤、前記TRPV1活性化剤を含有する、経口組成物又は香粧品、並びに、前記TRPV1活性化剤を原料として用いる、ダイエット用、冷え性改善用、又は耐糖能改善用の経口組成物又は香粧品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、TRPV1活性化剤。
【請求項2】
メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、褐色脂肪細胞活性化剤。
【請求項3】
メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、エネルギー消費促進剤。
【請求項4】
メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、体熱産生促進剤。
【請求項5】
メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、耐糖能改善剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の剤を含有する、香料組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の剤又は請求項6に記載の香料組成物を含有する、経口組成物。
【請求項8】
ダイエット、冷え性改善、又は耐糖能改善のために摂取される、請求項7に記載の経口組成物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の剤又は請求項6に記載の香料組成物を、原料として用いる、ダイエット用、冷え性改善用、又は耐糖能改善用の経口組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の剤又は請求項6に記載の香料組成物を含有する、香粧品。
【請求項11】
ダイエット、冷え性改善、又は耐糖能改善のために使用される、請求項10に記載の香粧品。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の剤又は請求項6に記載の香料組成物を、原料として用いる、ダイエット用、冷え性改善用、又は耐糖能改善用の香粧品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なTRPV1の活性化剤、及びこれを利用した経口組成物、香粧品等に関する。
【背景技術】
【0002】
カプサイシン受容体TRPV1は、一過性受容体電位型イオンチャンネル(transient receptor potential ion channel)に属するタンパク質の1種であり、カルシウムイオン透過性の高い非選択的陽イオンチャネルである。その発現は中枢から末梢組織に至るまで広範囲に渡り、末梢組織では感覚神経や迷走神経、胃、脂肪組織などで発現している(非特許文献1)。神経細胞において、カプサイシンやアリシン、ピペリンなどがTRPV1を介した軸索へのカルシウムイオンの流入を促進し、脱分極を起こすことで活性電位を生じさせる(非特許文献2~4)。
【0003】
TRPV1活性化による活動電位の発生は、副腎髄質などからのカテコラミン放出の増加につながり、β3-アドレナリン受容体(β3-AR)を介したUCP1(uncoupling protein 1)の発現誘導が起こり、エネルギー消費が誘発される(非特許文献1)。UCP1は、褐色脂肪細胞のミトコンドリアに特異的な分子脱共役タンパク質であり、これが活性化されると、脂肪を分解して熱が産生されてエネルギーが消費される。すなわち、UCP1の活性化により、褐色脂肪細胞で熱産生が誘導される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Christie et al., Frontiers in Endocrinology, 2018, vol.9, Article 420
【非特許文献2】Caterina et al., NATURE, 1997, vol.389, p.816-824.
【非特許文献3】Salazar et al., Nature Neuroscience, 2008, vol.11(3), p.255-261.
【非特許文献4】Okumura, et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2010, vol.74(5), p.1068-1072.
【非特許文献5】Masamoto et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2009, vol.73(5), p.1021-1027.
【非特許文献6】Kawabata et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2009, vol.73(12), p.2690-2697.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たなTRPV1活性化剤、当該活性化剤を有効成分とする、エネルギー消費促進や熱産生促進等の作用を有する香料組成物、及びこれらを使用した香粧品や経口組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、TRPV1安定発現細胞を用いたCa2+イメージングを用いたスクリーニングにより、メンチル 3-ヒドロキシブチレート(Menthyl 3-hydroxybutyrate)がTRPV1を活性化する作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、TRPV1活性化剤。
[2] メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、褐色脂肪細胞活性化剤。
[3] メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、エネルギー消費促進剤。
[4] メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、体熱産生促進剤。
[5] メンチル 3-ヒドロキシブチレートを有効成分とする、耐糖能改善剤。
[6] 前記[1]~[5]のいずれかの剤を含有する、香料組成物。
[7] 前記[1]~[5]のいずれかの剤又は前記[6]の香料組成物を含有する、経口組成物。
[8] ダイエット、冷え性改善、又は耐糖能改善のために摂取される、前記[7]の経口組成物。
[9] 前記[1]~[5]のいずれかの剤又は前記[6]の香料組成物を、原料として用いる、ダイエット用、冷え性改善用、又は耐糖能改善用の経口組成物の製造方法。
[10] 前記[1]~[5]のいずれかの剤又は前記[6]の香料組成物を含有する、香粧品。
[11] ダイエット、冷え性改善、又は耐糖能改善のために使用される、前記[10]の香粧品。
[12] 前記[1]~[5]のいずれかの剤又は前記[6]の香料組成物を、原料として用いる、ダイエット用、冷え性改善用、又は耐糖能改善用の香粧品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るTRPV1活性化剤は、褐色脂肪細胞等の様々な細胞で、カルシウムイオンの流入により活動電位を生じさせる。このため、本発明により、TRPV1の活性化が誘発する褐色脂肪細胞活性化、エネルギー消費促進、体熱産生促進、及び耐糖能改善の効果を有する香料組成物、香粧品、及び経口組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1において、M3HBを添加したrTRPV1-HEK細胞(A)及びHEK293A細胞(B)の蛍光強度の経時的変化を示した図である。
図2】実施例2において、M3HB溶液又はVehicle溶液を単回経口投与したWTマウス(A)とKOマウス(B)の直腸温の経時的変化を示した図である。
図3】実施例3において、普通食Vehicle投与群(NV)、普通食M3HB投与群(NM)、高脂肪食Vehicle投与群(HV)、及び高脂肪食M3HB投与群(HM)の体重の経時的変化を測定した結果を示した図である。
図4】実施例3において、長期投与後の各群のBAT中のUCP1タンパク質の相対量(NV群のUCP1タンパク質量を100%とする)の測定結果を示した図である。
図5】実施例3において、長期投与後の各群の総脂質量(A)とTG量(B)の測定結果を示した図である。
図6】実施例3において、各群の明期と暗期と全期間(46時間)の平均酸素消費量の測定結果を示した図である。
図7】実施例3において、各群の明期と暗期と全期間(46時間)の行動量の測定結果を示した図である。
図8】実施例3のOGTTにおいて、各群のマウスの血漿グルコース濃度(A)及び血漿インスリン濃度(B)の経時的変化を示した図である。
図9】実施例3のOGTTにおいて、各群のマウスのHOMA-IR(A)及びHOMA-β(B)の測定結果を示した図である。
図10】実施例3のITTにおいて、各群のマウスの血糖値の経時的変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
【0011】
本発明に係るTRPV1活性化剤は、メンチル 3-ヒドロキシブチレート(M3HB)を有効成分とする。M3HBは、いずれも立体異性体を有するメントールと3-ヒドロキシ酪酸のエステルであり、M3HBにはそれぞれの異性体の組み合わせによって複数の立体異性体が存在する。本発明において用いられるM3HBは、メントールと3-ヒドロキシ酪酸のエステルであればよく、特に立体異性体の種類による制限はなく、いずれの立体異性体も使用することができる。一般には、l-体又はd-体とl-体の混合物であるメントールと、光学活性体又はラセミ体の3-ヒドロキシ酪酸とのエステルを用いることができ、好ましくはl-メントールとラセミ体の3-ヒドロキシ酪酸のエステル(l-Menthyl (R,S)-3-hydroxybutyrate)を用いることができる。M3HBは、化学的に合成することもできるが、試薬等としても市販されており、株式会社盛香堂石田商店、A2B Chem LLC、MuseChem等から適宜購入して使用することができる。M3HBは、後記実施例に示すように、M3HBは、TRPV1安定発現細胞において、カルシウムイオンの流入量を増大させる一方で、TRPV1を発現していない細胞ではカルシウムイオンの流入量に影響しない。この実験結果が示すように、M3HBは、TRPV1を活性化して、カルシウムイオンの細胞内への流入量を増大させる。
【0012】
TRPV1の活性化により、褐色脂肪細胞が活性化され、エネルギー消費が促進される。このため、M3HBを摂取することにより、体熱産生が促進される。さらに、M3HBを長期間摂取することにより、体重の増加が抑制される。さらに、エネルギー消費促進により、脂質代謝も向上するため、M3HBの長期間摂取により、肥満抑制や脂肪肝抑制の効果が期待できる。このため、M3HBは、褐色脂肪細胞活性化剤、エネルギー消費促進剤、及び体熱産生促進剤の有効成分として有用である。
【0013】
また、M3HBは、そのエネルギー消費促進効果から、食事性のインスリン抵抗性の改善や耐糖能の改善効果も有する。このため、M3HBは、耐糖能改善剤の有効成分として有用である。
【0014】
M3HBを有効成分とするTRPV1活性化剤、褐色脂肪細胞活性化剤、エネルギー消費促進剤、体熱産生促進剤、及び耐糖能改善剤は、いずれもそのまま香粧品や経口組成物に含有させてもよく、他の香料素材と組み合わせた香料組成物としてもよい。当該他の香料素材としては、天然香料素材であってもよく、合成香料素材であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0015】
M3HBを含有する香料組成物がM3HB以外の他の成分を含有する場合、当該他の成分としては、M3HBの効果を損わない限り、特に限定されるものではない。例えば、当該香料組成物が含有するM3HB以外としては、例えば、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第III部香粧品用香料」(2001年6月15日発行、日本国特許庁)等に記載された香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料)、各種植物エキス等が例示され、それぞれ本発明の効果を損なわない量で配合することができる。
【0016】
香料原料としては、具体的には、オイゲノール、オクタノール、オクタナール、オクタン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケトン類、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l-メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8-シネオール、脂肪酸類、脂肪族高級アルコール類、脂肪族高級アルデヒド類、脂肪族高級炭化水素類、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、チオエーテル類、チオール類、デカナール、デカノール、デカン酸エチル、テルピネオール、リモネン、ピネン、
【0017】
ミルセン、タピノーレン、テルペン系炭化水素類、γ-ノナラクトン、バニリン、パラメチルアセトフェノン、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ピペロナール、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、フェノールエーテル類、フェノール類、フルフラール及びその誘導体、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、l-ペリラアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、d-ボルネオール、マルトール、N-メチルアントラニル酸メチル、メチルβ-ナフチルケトン、dl-メントール、l-メントール、酪酸、
【0018】
酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル、ラクトン類、リナロオール等の合成或いは天然由来の香料の他、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどシトラス系精油類、アップル、バナナ、グレープ、メロン、ピーチ、パイナップル、ストロベリー、カシスなどフルーツ系の精油或いは回収フレーバー、ミルク、クリーム、バター、チーズ、ヨーグルトなど乳系の抽出香料、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ココアなど嗜好品系の回収フレーバー、ペパーミント、スペアミントなどミント系の精油、アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アンゼリカ、ウイキョウ、ウコン、オレガノ、オールスパイス、オレンジノピール、カショウ、カッシア、カモミル、カラシナ、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェー、クチナシ、
【0019】
クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケイパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サッサフラス、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シナモン、シャロット、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、スペアミント、セイヨウワサビ、セロリー、ソーレル、タイム、タマネギ、タマリンド、タラゴン、チャイブ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニンジン、ニンニク、バジル、パセリ、ハッカ、バニラ、パプリカ、ヒソップ、フェネグリーク、ペパーミント、ホースミント、ホースラディッシュ、マジョラム、ミョウガ、ラベンダー、リンデン、レモンバーム、ローズ、ローズマリー、ローレル、ワサビなどから得られる香辛料抽出物、アイスランドモス、アカヤジオウ、アケビ、アサ、アサフェチダ、アジアンタム、
【0020】
アジョワン、アズキ、アスパラサスリネアリス、アップルミント、アーティチョーク、アニス、アボカド、アマチャ、アマチャズル、アミガサユリ、アミリス、アーモンド、アリタソウ、アルカンナ、アルテミシア、アルニカ、アルファルファ、アロエ、アンゴスツラ、アンゴラウィード、アンズ、アンズタケ、アンゼリカ、アンバー、アンバーグリス、アンブレット、イカ、イカリソウ、イースト、イタドリ、イチゴ、イチジク、イチョウ、イノコヅチ、イランイラン、イワオウギ、インペラトリア、インモルテル、ウィンターグリーン、ウォータークレス、ウコギ、ウコン、ウスバサイシン、ウッドラフ、ウニ、ウメ、ウーロンチャ、エゴマ、エノキダケ、エビ、エビスグサ、エリゲロン、エルダー、エレウテロコック、エレカンペン、エレミ、エンゴサク、
【0021】
エンジュ、エンダイブ、欧州アザミ、オウレン、オオバコ、オカゼリ、オキアミ、オーク、オークモス、オケラ、オスマンサス、オポポナックス、オミナエシ、オモダカ、オランダセンニチ、オリガナム、オリス、オリバナム、オリーブ、オールスパイス、オレンジ、オレンジフラワー、カイ、カイニンソウ、カカオ、カキ、カサイ、カシューナッツ、カスカラ、カスカリラ、カストリウム、カタクリ、カツオブシ、カッシー、カッシャフィスチュラ、カテキュ、カニ、カーネーション、カノコソウ、カモミル、カヤプテ、カラシ、カラスウリ、カラスビシャク、ガラナ、カラムス、ガランガ、カーラント、カリッサ、カリン、カルダモン、ガルバナム、カレー、カワミドリ、カンゾウ、ガンビア、カンラン、キウィーフルーツ、キカイガラタケ、キキョウ、キク、
【0022】
キクラゲ、キササゲ、ギシギシ、キダチアロエ、キナ、キハダ、キバナオウギ、ギボウシ、ギムネマシルベスタ、キャットニップ、キャラウェー、キャロップ、キュウリ、キラヤ、キンミズヒキ、グァバ、グァヤク、クコ、クサスギカズラ、クサボケ、クズ、クスノキ、クスノハガシワ、グーズベリー、クチナシ、クベバ、クマコケモモ、グミ、クミン、グラウンドアイビー、クララ、クラリセージ、クランベリー、クリ、クルミ、クリーム、グレインオブパラダイス、クレタディタニー、グレープフルーツ、クローバー、クローブ、クロモジ、クワ、クワッシャ、ケイパー、ゲットウ、ケード、ケブラコ、ゲルマンダー、ケンチュール、ケンポナシ、ゲンノショウコ、コウジ、コウダケ、コウチャ、コウホネ、コカ、コガネバナ、コクトウ、コクルイ、ココナッツ、
【0023】
ゴシュユ、コショウ、コスタス、コストマリー、コパイパ、コーヒー、コブシ、ゴボウ、ゴマ、コーラ、コリアンダー、コルツフート、ゴールデンロッド、コロンボ、コンサイ、コンズランゴ、コンフリー、サイプレス、魚、サクラ、サクランボ、ザクロ、サケカス、ササ、ササクサ、サーチ、サッサフラス、サフラン、サポジラ、サボテン、サラシナショウマ、サルサパリラ、サルシファイ、サルノコシカケ、サンザシ、サンシュユ、サンショウ、サンタハーブ、サンダラック、サンダルウッド、サンダルレッド、シイタケ、ジェネ、シソ、シダー、シトラス、シトロネラ、シヌス、シベット、シマルーバ、シメジ、シャクヤク、ジャスミン、ジャノヒゲ、ジャボランジ、シャロット、シュクシャ、ジュニパーベリー、ショウガ、ショウユ、ショウユカス、
【0024】
ジョウリュウシュ、ショウロ、シロタモギタケ、ジンセン、シンナモン、酢、スイカ、スイセン、スギ、スターアニス、スターフルーツ、スチラックス、スッポン、スッポンタケ、ズドラベッツ、スネークルート、スパイクナード、スプルース、スペアミント、スベリヒユ、スローベリー、セイボリー、セキショウ、セージ、ゼドアリー、セネガ、ゼラニウム、セロリー、センキュウ、センタウリア、センゲン、セントジョーンズウォルト、センナ、ソース、ダイオウ、ダイズ、タイム、タケノコ、タコ、タデ、ダバナ、タマゴ、タマゴタケ、タマネギ、タマリンド、ダミアナ、タモギタケ、タラゴン、タラノキ、タンジー、タンジェリン、タンポポ、チェリモラ、チェリーローレル、チェリーワイルド、チガヤ、チコリ、チーズ、チチタケ、チャイブ、チャービル、チャンパカ、チュベローズ、チョウセンゴミシ、チラータ、ツクシ、ツケモノ、ツタ、
【0025】
ツバキ、ツユクサ、ツリガネニンジン、ツルドクダミ、ディアタング、ティスル、ディタニー、ディル、デーツ、テンダイウヤク、テンマ、トウガラシ、トウキ、ドウショクブツタンパクシツ、ドウショクブツユ、トウミツ、トウモロコシ、ドクダミ、トチュウ、ドッググラス、トマト、ドラゴンブラッド、ドリアン、トリュフ、トルーバルサム、トンカ、ナギナタコウジュ、ナシ、ナスターシャム、ナッツ、ナットウ、ナツメ、ナツメグ、ナデシコ、ナメコ、ナラタケ、ニアウリ、ニュウサンキンバイヨウエキ、ニンジン、ニンニク、ネズミモチ、ネットル、ネムノキ、ノットグラス、バイオレット、パイナップル、ハイビスカス、麦芽、ハコベ、バジル、ハス、ハスカップ、パースカップ、パセリ、バター、バターオイル、バターミルク、バーチ、ハチミツ、パチュリー、
【0026】
ハッカ、バックビーン、ハッコウシュ、ハッコウニュウ、ハッコウミエキ、パッションフルーツ、ハツタケ、バッファローベリー、ハトムギ、ハナスゲ、バナナ、バニラ、ハネーサックル、パパイヤ、バーベリー、ハマゴウ、ハマスゲ、ハマナス、ハマボウフウ、ハマメリス、バラ、パルマローザ、バンレイシ、ヒキオコシ、ヒシ、ピスタチオ、ヒソップ、ヒッコリー、ピーナッツ、ヒノキ、ヒバ、ピプシシワ、ヒメハギ、ヒヤシンス、ヒラタケ、ビワ、ビンロウ、フェイジョア、フェネグリーク、フェンネル、フジバカマ、フジモドキ、フスマ、フーゼルユ、プチグレイン、ブチュ、ブドウ、ブドウサケカス、フトモモ、ブナ、ブナハリタケ、ブラックキャラウェイ、ブラックベリー、プラム、ブリオニア、プリックリーアッシュ、プリムローズ、プルネラ、
【0027】
ブルーベリー、ブレッドフルーツ、ヘイ、ベイ、ヘーゼルナッツ、ベチバー、ベーテル、ベニバナ、ペニーロイヤル、ペパーミント、ヘビ、ペピーノ、ペプトン、ベルガモット、ベルガモットミント、ペルーバルサム、ベルベナ、ベロニカ、ベンゾイン、ボアドローズ、ホアハウンド、ホウ、ホウキタケ、ホウショウ、ボウフウ、ホエイ、ホオノキ、ホースミント、ホースラディッシュ、ボタン、ホップ、ポピー、ポプラ、ポポー、ホホバ、ホヤ、ボルドー、ボロニア、マイタケ、マグウォルト、マシュマロー、マジョラム、マスティック、マソイ、マタタビ、マチコ、マツ、マツオウジ、マッシュルーム、マツタケ、マツブサ、マツホド、マテチャ、マメ、マリーゴールド、マルバダイオウ、マルメロ、マレイン、マロー、マンゴー、マンゴスチン、ミカン、ミシマサイコ、
【0028】
ミソ、ミツマタ、ミツロウ、ミート、ミモザ、ミュゲ、ミョウガ、ミルク、ミルテ、ミルフォイル、ミルラ、ミロバラン、ムギチャ、ムスク、ムラサキ、メスキート、メドウスィート、メハジキ、メープル、メリッサ、メリロット、メロン、モウセンゴケ、モニリアバイヨウエキ、モミノキ、モモ、モロヘイヤ、ヤクチ、ヤマモモ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユッカ、ユリ、ヨウサイ、ヨロイグサ、ライオンズフート、ライチ、ライフエバラスティングフラワー、ライム、ライラック、ラカンカ、ラカンショウ、ラズベリー、ラタニア、ラディッシュ、ラブダナム、ラベンダー、ラングウォルト、ラングモス、ランブータン、リキュール、リーク、リツェア、リナロエ、リュウガン、リョウフンソウ、リョクチャ、リンゴ、リンデン、リンドウ、ルー、ルリジサ、レセダ、レモン、レンギョウ、レンゲ、レンブ、ローズマリー、ロベージ、ローレル、ロンゴザ、ワサビ、ワタフジウツギ、ワームウッド、ワームシード、ワラビ、ワレモコウなどから得られる天然香料などが例示され、適宜選択して使用される。
【0029】
他の香料や香料素材に添加して香料組成物とする場合、M3HBの含有量依存的に、TRPV1活性化等の効果は高くなる。より十分な改善効果が得られることから、香料組成物における本発明に係るTRPV1活性化剤等の含有量は、組成物全量に対して、M3HBの含有量が1ppm以上であることが好ましい。
【0030】
本発明に係る香料組成物は、M3HBと他の香料素材以外にも、各種の添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、例えば、水;アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の有機溶剤;デキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等の賦形剤;油脂;乳化剤;増粘剤;防腐剤;着色料;酸味料;調味料等が挙げられる。これらの添加剤は、香料組成物に一般的に使用されているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0031】
当該香料組成物は、様々な剤型とすることができる。例えば、水溶性又は油溶性の液剤であってもよく、ペースト状であってもよく、パウダー状、カプセル、錠剤であってもよい。各種の剤型は、公知の方法で製造できる。
【0032】
本発明に係るTRPV1活性化剤等の剤やこれらを含有する香料組成物を、香粧品、経口組成物等に含有させることにより、M3HBによるTRPV1活性化等の各種作用機能を、当該香粧品や経口組成物に付与することができる。例えば、本発明に係るTRPV1活性化剤等の剤やこれらを含有する香料組成物を原料として、ダイエットを目的として摂取等される経口組成物や香粧品を製造することができる。また、本発明に係るTRPV1活性化剤等の剤やこれらを含有する香料組成物を原料として、冷え性改善を目的として摂取等される経口組成物や香粧品を製造することができる。
【0033】
M3HBによるTRPV1活性化等の各種作用機能は、M3HBが動物の体内のTRPV1を発現している細胞に導入されることによって発揮される。M3HBは、経口投与のみならず、経皮吸収や吸引による経鼻吸収によっても動物に摂取させることができる。このため、本発明に係るTRPV1活性化剤等の剤やこれらを含有する香料組成物は、経口投与により使用される経口組成物のみならず、皮膚に接触させたり、香りを吸引させたりして使用する香粧品に含有させることによっても、M3HBによるTRPV1活性化等の各種作用機能を、当該香粧品や経口組成物に付与することができる。
【0034】
すなわち、本発明に係るTRPV1活性化剤等や香料組成物を含有させる香粧品や経口組成物等は、特に限定されるものではなく、香粧品一般や経口組成物一般に広く使用できる。具体例としては下記のものが挙げられる。
【0035】
経口組成物の例としては、飲食品や、経口摂取される医薬品、医薬部外品、飼料等が挙げられる。飲食品には、栄養補給や嗜好性の点から食されるものに加えて、健康の保持増進に資する、いわゆる健康食品も含まれる。飲食品としては、飲料、菓子類、サプリメント、パン類、油脂及び油脂加工食品、乳、乳製品、風味調味料、粉末飲料や粉末スープ等の加工食品などが挙げられる。また、医薬部外品としては、口腔衛生剤などが挙げられる。飼料としては、ウシ、ブタ、ニワトリなどの畜産動物、イヌ、ネコ、インコ、メダカ、キンギョ等の愛玩動物、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギなどの実験動物などの各種動物に、栄養補給等で摂取させるものが挙げられる。より具体的には下記のものを挙げることができる。
【0036】
飲料の例としては、茶飲料(緑茶、紅茶、ウーロン茶など)、コーヒー、ココア、ハーブティー、清涼飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、炭酸飲料、プロテイン飲料、酢飲料、野菜ジュース、豆乳、ノンアルコール飲料(ノンアルコールビール、ノンアルコールチューハイなど)、酒類(ビール、ビールテイスト飲料、チューハイなど)、コラーゲン入り飲料等の美容系ドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。
菓子類の例としては、ゼリー、プリン、ババロア、ムース、ケーキ、キャンディー、ビスケット、クッキー、プロテインバー、チョコレート、ガム、ラムネ菓子、タブレット、アイスクリーム、シャーベット、アイスキャンディー、饅頭、羊羹等が挙げられ、特に、キャンディー、ガム、ラムネ菓子、タブレット等の口腔内に存在する時間が比較的長い菓子類に好適である。
油脂及び油脂加工食品の例としては、食用油脂(動物性油脂、植物性油脂)、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング、ハードバター等、さらに、即席(フライ)麺類、とうふの油揚(油揚、生揚、がんもどき)、揚かまぼこ、てんぷら、フライ、スナック類(ポテトチップス、揚あられ類、かりんとう、ドーナッツ)、調理冷凍食品(冷凍コロッケ、エビフライ等)等が挙げられる。
乳、乳製品等の例としては、乳として生乳、牛乳、加工乳等、乳製品としてクリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエー、チーズ、アイスクリーム類、ヨーグルト、練乳、粉乳、濃縮乳等などが挙げられる。
加工食品の例としては、スープ、雑炊、リゾット、植物性ミート等が挙げられる。
【0037】
口腔衛生剤の例としては、歯磨、洗口剤、うがい薬、口中清涼剤、口臭防止剤などが挙げられる。
【0038】
香料の例としては、香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料) 及びそれらを含有する香料組成物などが挙げられる。
【0039】
香粧品の範囲としては、薬機法上の化粧料、医薬品、医薬部外品を含む。具体的な例としては、フレグランス製品(香水、オードパルファム、ボディーコロンなど)、スキンケア化粧料(化粧水、乳液、クリーム、口紅、ファンデーション、洗顔料、石鹸、ボディーシャンプー、ボディーケア製品、入浴剤、制汗デオドラント剤など)、ヘアケア化粧料(シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアートリートメント、ヘアトニック、育毛剤、ヘアカラーリング剤、ヘアスタイリング剤、パーマネント剤など)、衣類用洗剤、衣類用柔軟剤、衣類用仕上げ剤、ファブリックミスト、各種洗浄剤(繊維用、皮革用、硬質表面用、住居用、家庭用、トイレ用、お風呂用など)、芳香消臭剤、線香、アロマディフューザー、香りつきトイレットペーパー、ワックス剤のような家庭用製品が挙げられる。
【0040】
本発明に係るTRPV1活性化剤等は、香料組成物、香粧品、経口組成物等の製造過程で、適宜添加することができる。各種製品に含有させるM3HBを含む剤や香料組成物の量は、当該製品を使用した場合にM3HBのエネルギー消費促進等の効果を奏することができる量であれば、特に限定されるものではない。例えば、香粧品に含有させる場合には、製品全体に対するM3HBの含有量が、1ppb~99.9質量%となるように添加することができる。また、飲食品や口腔衛生剤等の経口組成物に含有させる場合には、製品全体に対するM3HBの含有量が、1ppb~5質量%となるように添加することができる。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に記載がない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0042】
[マウスの飼育]
以降の実験において、特に記載のない限り、実験に用いたマウスは、温度23±1℃、湿度50~60%、明暗12時間周期(明期7:00~19:00)の飼育条件下で飼育した。飼育期間中は、週1回、水道水及びチップを交換した。餌は、通常MF(マウス用マルチフィーダー:オリエンタル酵母工業社製)を用いた。野生型(WT)マウスとしては、C57BL/6マウス(清水実験材料から供給)を用いた。
【0043】
[実施例1]
TRPV1アゴニストとして作用する香気物質を、カルシウムイメージングによって選抜した。TRPV1アゴニストの候補化合物として、34種類の香気物質を測定に用いた。
【0044】
カルシウムイメージングは、蛍光強度の変化によって細胞内カルシウムイオンを測定する方法である。Ca2+蛍光プローブとして用いるFluo-4AM(励起波長:495nm、蛍光波長:518nm、Ca錯体解離定数(Kd):345nmol/L)は、細胞内に取り込まれると、アセトキシメチル基が細胞内のエステラーゼによって加水分解されることでFluo-4となる。Fluo-4は水溶性が高く、細胞膜を透過しにくくなり、細胞内に留まる。これにより、細胞内にカルシウムイオンが流入すると、細胞内のFluo-4とカルシウムイオンが錯体を形成して、蛍光を発する。
【0045】
実験には、TRPV1を強制的に安定発現させたrTRPV1-HEK細胞と、TRPV1非発現HEK細胞であるHEK293A細胞を用いた。rTRPV1-HEK細胞は、哺乳類の発現ベクターであるpcDNA3にラットTRPV1遺伝子を導入したものを、ヒト胎児腎細胞由来培養細胞であるHEK293細胞(Human Embryonic Kidney Cell 293)にトランスフェクトした細胞である。
【0046】
rTRPV1-HEK細胞を、細胞培養用カバーガラスを密着させた35mmディッシュに4×10細胞/ディッシュで播種し、1日インキュベートした。翌日、各ディッシュに、Fluo-4 AMを終濃度2.5μMとなるように添加し、約1時間培養した。その後、各香気物質を100又は300μM、カプサイシンを500nMとなるように添加したRecording bufferを、順次、それぞれ30秒間流し、次いで、イオノマイシンを5μMとなるように添加したRecording bufferを10秒間流した。一連の処理の間、各細胞の蛍光強度の変化を、共焦点レーザー顕微鏡にて経時的に測定した。カプサイシンはTRPV1アゴニストであり、イオノマイシンはカルシウムイメージングで汎用されている細胞内カルシウムイオン導入剤である。
【0047】
34種全てにおいて、カプサイシン処理とイオノマイシン処理時に、蛍光強度の増大が確認されたことから、TRPV1がいずれの細胞においても正常に機能していることが示された。これら34化合物の中で、100μMと300μMのどちらでも蛍光強度の増大が認められ、かつ300μMでの蛍光強度が100μMよりも明らかに大きい化合物として、M3HBが選抜された。図1(A)に、M3HBを添加したrTRPV1-HEK細胞の蛍光強度の経時的変化を示す。
【0048】
rTRPV1-HEK細胞におけるカルシウムイメージングで見られた蛍光強度の変化は、TRPV1を介した細胞内へのカルシウムイオン流入のほかにも、TRPV1以外の輸送体を介した流入や小胞体からの放出による可能性も考えられる。そこで、TRPV1を発現していないHEK293A細胞を用いて同様にカルシウムイメージングを行い、TRPV1依存的に細胞内へのカルシウムイオン流入が促進されているかを調べた。図1(B)に、M3HBを添加したHEK293A細胞の蛍光強度の経時的変化を示す。図1(B)に示すように、M3HB添加及びカプサイシン添加時には細胞内の蛍光強度は増大せず、イオノマイシン処理時にのみ蛍光強度の増大が確認された。これらの結果から、M3HBは、TRPV1活性化作用を有するTRPV1アゴニストであることがわかった。
【0049】
[実施例2]
カプサイシンやカプシノイドをマウスに単回投与すると、TRPV1依存的に熱産生を亢進し、褐色脂肪組織(Brown adipose tissue:BAT)温度や体表面温度が上昇することが示されている(非特許文献5及び6)。そこで、M3HBをマウスに単回経口投与して、保温条件下で深部体温の指標として直腸温変化を測定することにより、M3HBが熱産生やエネルギー代謝亢進に寄与するかを調べた。
【0050】
WTマウス(5~7週齢、雄)又はTRPV1ノックアウト(TRPV1 KO)マウス(5~8週齢、雄)に、イソフルラン麻酔下で、M3HB溶液(M3HBとして100mg/kg体重当たり、溶媒:10% Tween80含有生理食塩水)、又は、Vehicle溶液(10% Tween80含有生理食塩水、5mL/kg体重当たり)を経口投与し、直腸温を測定した。測定には、熱電対温度センサー(Physitemp RT-3)を用いた。
【0051】
具体的には、投与日当日、マウスを10時から絶食させた。14時から麻酔ビンの中にマウスを入れて、イソフルランでマウスに麻酔をかけた。次いで、ヒートブロック(38.0℃)上でイソフルラン麻酔(空気圧:0.5L/分、20℃、イソフルラン濃度:1.5%(空気中濃度))をかけながら、温度プローブを肛門に挿入した後、更にマウスの上に緩衝シートと布をかけて保温した。ヒートブロック上で投与前の体温が5分間以上一定値を示すことを確認した後、M3HB溶液又はVehicle溶液を経口投与した。投与直後から経口投与後60分まで、温度プローブにより直腸温(深部体温)を測定し、1分ごとの値を記録した。
【0052】
WTマウスの測定結果を図2(A)に、TRPV1 KOマウスの測定結果を図2(B)に、それぞれ示す。WTマウスでは、M3HB投与群では、経口投与後20分経過時点以降、Vehicle投与群に対して有意な温度上昇が継続的に確認された(図2(A))。一方で、TRPV1 KOマウスでは、M3HB投与群とVehicle投与群で有意な体温変化は認められなかった(図2(B))。これらの結果から、M3HBが、TRPV1依存的に直腸温の上昇を引き起こすことがわかった。このように、M3HB摂取により熱産生が引き起こされることから、M3HBは、冷え性改善のための経口組成物や香粧品の添加剤として有用である。
【0053】
[実施例3]
実施例2においてM3HB単回投与により深部体温上昇が見られたが、これがUCP1活性化による熱産生の亢進によるものである場合、エネルギー代謝が亢進していると考えられた。そこで、M3HBを長期投与した場合に、TRPV1活性化によりエネルギー代謝が亢進し、食事誘発性肥満(DIO)の抑制が見られるかを調べた。
【0054】
<M3HBの長期投与と体重測定>
WT(3週齢、雄)を1週間の馴らし飼の後、普通食(ND)群(MF、オリエンタル酵母工業社製)又は高脂肪食(HFD)群(60kcal% High fat diet、RESEARCH DIETS社製)に分け、それぞれの群を更にVehicle投与群(10% Tween80含有生理食塩水、5mL/kg体重当たり)及びM3HB投与群(M3HBとして100mg/kg体重当たり、溶媒:10% Tween80含有生理食塩水)に分け、毎日、各投与液を経口投与すると共に体重測定を行った(各群:n=8)。投与開始から16週間目には解剖を行い、各種組織重量を測定した。
【0055】
図3に、各群(NV:普通食Vehicle投与群、NM:普通食M3HB投与群、HV:高脂肪食Vehicle投与群、HM:高脂肪食M3HB投与群)の体重の経時的変化を測定した結果を示す。図3に示すように、長期投与5週目から、高脂肪食Vehicle投与群と高脂肪食M3HB投与群の間で、体重増加量に有意な差が確認された。これらの結果から、M3HBは体重の増加抑制能を有しており、M3HBを含有する香料組成物は、ダイエットを目的とする経口組成物や香粧品への添加剤として有用であることが示唆された。
【0056】
<M3HBの長期投与後の組織の重量、1日当たりのエネルギー摂取量、飼料転換効率>
解剖時点での体重、各組織重量、16週にわたる1日当たりのエネルギー摂取量(飼料摂取量)、及び、摂取カロリーあたりの体重増加率を表す飼料転換効率の測定結果を表1に示す。表中、数値は各群のマウス(n=8)の平均値±SEMを示す。「*」はp<0.05、「**」はp<0.01(いずれも、HV vs HM)を表す。
【0057】
【表1】
【0058】
体重増加抑制には、エネルギー消費のほか、摂食量や排泄量も関わる。16週間の摂食量測定の結果、高脂肪食M3HB投与群は高脂肪食Vehicle投与群よりも有意に少なかった(表1)。このことから、高脂肪食M3HB投与群における体重増加抑制には、摂食量の減少も一部寄与していることが考えられた。
一方で、摂取カロリーあたりの体重増加率を表す飼料転換効率も、高脂肪食M3HB投与群は高脂肪食Vehicle投与群よりも有意に低かった(表1)。これは、M3HB投与によってエネルギー消費が亢進したことを示唆していた。
また、普通食Vehicle投与群と普通食M3HB投与群の間では、摂食量及び飼料転換効率に差はなかった。高脂肪食では摂食中枢に障害を来して過食になることも知られていることから、高脂肪食M3HB投与群ではM3HBの作用によって、この摂食調節が正常に保たれている可能性も考えられた。
これらの結果から、M3HBを長期投与することにより、TRPV1活性化によりエネルギー代謝が亢進し、食事誘発性肥満(DIO)が抑制されることが示され、M3HBを含有する飲食品やM3HBを含有する香粧品は、ダイエットを目的として継続的に使用される経口組成物や香粧品として好適であることがわかった。
【0059】
<BAT及びiWATの脂質代謝>
組織切片の顕微鏡画像から、高脂肪食M3HB投与群では、高脂肪食Vehicle投与群と比較して、BATやiWATの脂肪滴が小さくなっている様子が確認された。脂質代謝に関わる酵素であるAtglやHslの発現が、BATとiWATのいずれにおいても、高脂肪食M3HB投与群は高脂肪食Vehicle投与群に対して有意に上昇していた。これらの結果から、高脂肪食M3HB投与群ではこうした酵素発現の亢進によって脂質の蓄積が抑制されたと考えられた。
【0060】
各群のマウスから回収されたBATからタンパク質を抽出し、ウェスタンブロットによりUCP1の発現量を調べた。各組織からのタンパク質の抽出は、以下の通りにして行った。まず、組織をタンパク質抽出用サンプルバッファー(0.078M Tris-HCl(pH6.8)、6.25%(質量/容量) スクロース、1×タンパク質分解酵素阻害剤)中で細断した後、ホモジナイザーで破砕した。次いで、得られた懸濁物にラウリル硫酸ナトリウムを添加して転倒混和した後、30分間室温で静置した。その後、当該懸濁物中の細胞を、バイオラプター(30秒間ON→30秒間OFF×2)で破砕した。この破砕物を遠心分離(25℃、15,000rpm、30分間)し、中間層(透明な液体の部分)をタンパク質抽出物として新しい1.5mL容チューブに回収した。回収されたタンパク質抽出物をSDS-PAGEにかけてタンパク質を分離した後、抗UCP1抗体と抗β-アクチン抗体を用いてウェスタンブロットを行い、ン各サンプル中のβ-アクチン量で補正したUCP1量([UCP1量]/[β-アクチン量])の相対量(NV群の[UCP1量]/[β-アクチン量]を100%とする)を調べた。結果を図4に示す。図4に示すように、高脂肪食M3HB投与群では、高脂肪食Vehicle投与群と比較して、BATにおけるUCP1タンパク質の発現量が増加する傾向が観察された。このことから、高脂肪食M3HB投与群におけるDIO抑制の一部に、BATにおけるUCP1活性の亢進が寄与していることが示唆された。
【0061】
<肝臓の総脂質量とトリグリセリド(TG)量>
各群のマウスの肝臓の総脂質量とTG量を測定した。測定には、トリグリセリド Eテストワコー(Wako社製)を用いた。具体的には、まず、氷上で解凍した肝臓サンプル約50mgを、脂質抽出液(ヘキサン:2-プロパノール=3:2(容量比))1.5mLとステンレスビーズ(5mm)を入れた破砕用チューブに採取した。当該破砕用チューブ内でステンレスビーズにより肝臓組織を破砕(3200rpm、30秒間×5回)した後、室温で約30分間振盪し、その後当該破砕用チューブを遠心分離(4℃、10000×g、20分間)にかけ、上清1.2mLを風袋重量測定済の1.5mL容チューブに分取した。1.5mL容チューブに分取した上清は、50℃で約1時間、遠心エバポレーションをした。当該破砕用チューブ内の残渣には、前記脂質抽出液0.6mLを添加し、破砕機(3200rpm、30秒間×5回)で1回懸濁させ、室温で約1時間振盪させた後、遠心分離(4℃、10000×g、10分間)にかけて、上清0.55mLを、前記1.5mL容チューブに入れ、内部に調製された懸濁液と混合し、50℃で約1時間遠心エバポレーションした。得られた残渣に、脂質溶解液(10% TritonX-100含有2-プロパノール)1mLを添加して、ボルテックスで懸濁した後、BioRuptorでソニケーション(High power、30秒間×5回)し、さらにボルテックスで懸濁したものを、肝臓抽出サンプルとした。各群の肝臓抽出サンプル中のTG量を、TG発色液を添加して、37℃で20分間振盪した後、マイクロプレートリーダーで 595nmの吸光度を測定した。この吸光度値と、濃度既知のTG溶液を同様にして測定した吸光度値から作成した検量線に基づいて、各肝臓抽出サンプルのTG量を測定した。さらに、風袋重量及びエバポレーション後の重量から、総脂質量を算出した。
【0062】
各群の総脂質量の測定結果を図5(A)に、TG量の測定結果を図5(B)に、それぞれ示す。図5に示すように、長期間の高脂肪食負荷によって、高脂肪食Vehicle投与群では脂肪肝が確認されたのに対して、高脂肪食M3HB投与群では脂肪肝の発症抑制、肝臓中脂質の減少、及びTG量の減少傾向が確認された。これらの結果から、M3HBは脂質代謝を促進し、M3HBを長期間摂取することにより、DIOの発症が抑制でき、脂肪肝や高脂血症の発症も抑制できることが確認された。
【0063】
<酸素消費量の測定>
さらに、M3HB投与によってエネルギー代謝が亢進されるかどうかについて、酸素消費量を指標に調べた。具体的には、各群のマウスに対して、投与15~16週目に測定チャンバーでの馴らし飼を1週間行った後、流路開放型のカロリーメーター(「オキシマックス等流量システム」、バイオリサーチセンター)により、酸素消費量と二酸化炭素排出量を各個体について2日間測定した。オキシマックス等流量システムにより、テストチャンバー内の%O値と%CO値を定期的に測定し、O消費量(VO)、二酸化炭素排出量 (VCO)、呼吸商、及び消費カロリーを算出した。
【0064】
各群の明期(7:00~19:00)と暗期(19:00~7:00)と全期間(46時間)の平均酸素消費量の測定結果を図6に示す。図中、値は、平均値±SEM(n=8)である。また、「*」はp<0.05、「**」はp<0.01(いずれも、HV vs HM)を表す。図6に示すように、普通食Vehicle投与群と普通食M3HB投与群の間では、酸素消費量に差は認められなかったが、高脂肪食投与群の間では、高脂肪食M3HB投与群のほうが高脂肪食Vehicle投与群よりも、全体を通して酸素消費量は増加しており、M3HBの長期間摂取により、有意に酸素消費量が増加していた。また、明期及び全期間の平均において、高脂肪食M3HB投与群では、高脂肪食Vehicle投与群と比較して、有意に酸素消費量の増加傾向が見られ、暗期においても、高脂肪食M3HB投与群のほうが高脂肪食Vehicle投与群よりも酸素消費量が高い傾向が観察された。
【0065】
<自発行動量(Locomotor activity)の測定>
酸素消費量の変化には、熱産生の亢進の他、行動量の変化も影響を与える。そこで、行動量の測定も行うことにより、先に認められた酸素消費量の変化が、行動量の変化によるものであるか、又は、熱産生能の変化によるものであるか、を判断した。
【0066】
具体的には、各群のマウスに対して、投与9~11週目に、行動量を、運動量測定装置(「Actimo-100S」、シンファクトリー社製)を用いて、各個体について2日間測定した。「Actimo-100S」は、赤外線ビームセンサー方式を採用しており、個体間比較ができ精度の高い測定が可能な装置である。20mm間隔の赤外線センサーが動物の移動をカウントし、連続2光輪遮蔽を1カウントにした。測定範囲は30cm×20 cmであり、透明のケージを使用して測定した。データの出力は無電圧接点信号を利用しており、カウント可能なソフトウェアで測定した。同時に8匹の測定が可能で、データ取得装置は、「Actimo-DATA」を用いた。
【0067】
各群の、明期(7:00~19:00)、暗期(19:00~7:00)、及び全期間(46時間)の平均行動量の測定結果を図7に示す。図中、値は、平均値±SEM(n=8)である。また、「*」はp<0.05、「**」はp<0.01(いずれも、HV vs HM)を表す。図7に示すように、普通食投与群と高脂肪食投与群のいずれにおいても、M3HBの長期間摂取による一貫した行動量の変化は確認されなかった。これらの結果から、M3HBの長期投与による酸素消費量の変化は、行動量変化によるものではなく、熱産生量の変化によるものであり、高脂肪食M3HB投与群で見られたDIO抑制及び飼料転換効率の低下は、熱産生の亢進によるものである可能性が高いと示唆された。
【0068】
<インスリン抵抗性の評価(OGTT及びITT)>
DIOによってインスリン抵抗性が惹起される。そこで、高脂肪食Vehicle投与群でインスリン抵抗性が誘発されているか、また、M3HB投与によりインスリン抵抗性の改善が認められるかを、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)やインスリン負荷試験(ITT)により調べた。なお、OGTTではグルコース投与前後における血漿グルコース濃度を測定することにより耐糖能を、インスリン濃度を測定することによりインスリン感受性を、それぞれ調べた。
【0069】
(OGTT)
投与から13週目のマウスを6時間(9:00~15:00)絶食させた後、尾静脈よりヘパリン処理したキャピラリーで採血を行った。この採血時点を0分目とし、直ちにグルコース溶液(150mg/mL)を、グルコース投与量が1.5g/kg体重当たりとなるように経口投与した。最初の採血から15、30、60、90、120分後に、尾静脈よりヘパリン処理したキャピラリーで採血を行った。採取した血液サンプルは、4℃、10,000×gで5分間遠心分離し、血漿を回収した。血漿中のグルコース濃度を市販のグルコース測定キット(「グルコーステスト CII-テストワコー」、FUJIFILM Wako社製)により測定した。また、投与から0、15、30、60分後に採取された血漿については、インスリン濃度を、市販のインスリン測定キット(「超高感度マウスインスリン測定キット」、森永生化学研究所社製)測定した。
【0070】
インスリン抵抗性の指標としてHOMA-IR(homeostasis model assessment insulin resistance)を、インスリン分泌能の指標としてHOMA-β(homeostatic model assessment beta cell function)を、それぞれ用いて算出した。計算式は下記に示す。なお、インスリンの単位は、ヒトと同じ26U/ngとして換算した。
【0071】
[HOMA-IR] = [空腹時インスリン値 (μU/mL)] × [空腹時血糖値(mg/dL)] / 22.5
[HOME-β] = (20×[空腹時インスリン値(μU/mL)] / ([空腹時血糖値](mg/dL) - 3.5)
【0072】
各群のマウスの血漿グルコース濃度の経時的変化を図8(A)に、血漿インスリン濃度の経時的変化を図8(B)に、それぞれ示す。血漿グルコース濃度は、グルコース投与後、高脂肪食Vehicle投与群において大きく増加し、その後も高いまま推移した。これに対して、高脂肪食M3HB投与群では、血糖値上昇後、ベースまで低下した。この時、血漿インスリン濃度は高脂肪食Vehicle投与群で非常に高かったことから、高脂肪食によりインスリン抵抗性が誘発され、血糖値の減少作用が弱いためにインスリン濃度が高くなっていると考えられた。
【0073】
この時の絶食時血糖値及びインスリン濃度から、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRと、インスリン分泌能の指標であるHOMA-βの値を算出した。各群のHOMA-IRの測定結果を図9(A)に、HOMA-βの測定結果を図9(B)に、それぞれ示す。図に示すように、HOMA-IRでは高脂肪食Vehicle投与群と高脂肪食M3HB投与群の間に有意な差が確認された。また、HOMA-βにおいては、高脂肪食Vehicle投与群と高脂肪食M3HB投与群の間に有意差傾向が見られた。HOMA-IRの値から、DIOにより惹起されたインスリン抵抗性が、M3HBの投与により改善したと考えられた。また、HOMA-βから、インスリン分泌能についてもM3HBの投与により改善傾向にあると考えられた。
【0074】
(ITT)
ITTでは、インスリン腹腔内投与前後における血糖値を測定することにより、インスリン感受性を調べた。
投与から14週目のマウスを6時間(9:00~15:00)絶食させた後、血糖値測定器(「ワンタッチウルトラ」、LIFESCAN社製)を用いて、尾静脈より血糖値を測定した。最初の血糖値測定の時点を0分目とし、直ちにインスリン溶液を、投与量が0.75U/kg体重当たりとなるように腹腔内投与した。投与から0、15、30、60、120分後に、尾静脈より「ワンタッチウルトラ」を用いて血糖値を測定した。
【0075】
各群のマウスの血糖値の測定結果を図10に示す。高脂肪食M3HB投与群では、血糖値の低下が、普通食Vehicle投与群と同程度まで改善していることが確認された。OGTTの結果と同様に、ITTの結果からも、HV群ではインスリン抵抗性が誘発されており、M3HB投与によってインスリン抵抗性が改善されることが示唆された。
【0076】
[処方例1](ビールテイスト飲料)
ビール風味香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加した。得られたビール風味香料を、市販されているビールテイスト飲料(糖質0%、プリン体0%)に0.1%添加し、ビールテイスト飲料を調製した。
【0077】
[処方例2](果汁飲料)
下記組成物を混合し、果汁飲料を製造した。グレープフルーツ香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたグレープフルーツ香料を使用した。
【0078】
【表2】
【0079】
[処方例3](紅茶飲料)
80℃の湯400mLに対して、紅茶葉(三井農林社製)7g、L-アスコルビン酸ナ
トリウム0.2gを添加し、5分間抽出を行った。得られた紅茶抽出液に対して固液分離を行った後、水を加えて1,000gとし、さらに炭酸水素ナトリウムを用いてpHを5.5に調整した。紅茶香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加した。得られた紅茶香料を、pH調整後の紅茶抽出液に0.1%質量添加し、紅茶飲料を調製した。
【0080】
[処方例4](コーヒー飲料)
焙煎コーヒー豆60gを市販のコーヒーミルで粉砕し、得られたコーヒー豆粉砕物を90~95℃の熱水でドリップ抽出した後、室温まで冷却して、コーヒー抽出液480gを得た。当該抽出液に重曹を0.6gとイオン交換水を加えて1000gとした。コーヒー香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加した。得られたコーヒー香料を、調整後のコーヒー抽出液に0.1質量%添加し、コーヒー飲料を調製した。
【0081】
[処方例5](野菜ジュース)
下記組成物を混合し、野菜ジュースを製造した。アップル香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたアップル香料を使用した。
【0082】
【表3】
【0083】
[処方例6](豆乳)
下記組成物を混合し、豆乳を製造した。グレープフルーツ香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたグレープフルーツ香料を使用した。
【0084】
【表4】
【0085】
[処方例7](プロテイン飲料)
下記組成物を混合し、プロテイン飲料を製造した。ココア香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたココア香料を使用した。
【0086】
【表5】
【0087】
[処方例8](美容系飲料)
下記組成物を混合し、美容系飲料を製造した。レモン香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたレモン香料を使用した。
【0088】
【表6】
【0089】
[処方例9](ニアウォーター飲料)
下記組成物を混合し、ニアウォーター飲料を製造した。グレープフルーツ香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたグレープフルーツ香料を使用した。
【0090】
【表7】
【0091】
[処方例10](ノンアルコールチューハイ)
下記組成物を混合し、ノンアルコールチューハイを製造した。アップル香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたアップル香料を使用した。
【0092】
【表8】
【0093】
[処方例11](酢飲料)
下記組成物を混合し、酢飲料を製造した。アップル香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたアップル香料を使用した。
【0094】
【表9】
【0095】
[処方例12](スポーツドリンク)
下記組成物を混合し、スポーツドリンクを製造した。グレープフルーツ香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたグレープフルーツ香料を使用した。
【0096】
【表10】
【0097】
[処方例13](乳酸菌飲料)
下記組成物を混合し、乳酸菌飲料を製造した。ヨーグルト香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたヨーグルト香料を使用した。
【0098】
【表11】
【0099】
[処方例14](ゼリー飲料)
下記組成物を混合し、ゼリー飲料を製造した。アップル香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたアップル香料を使用した。
【0100】
【表12】
【0101】
[処方例15](プロテインバー)
下記原料を成形・焼成し、プロテインバーを製造した。チョコレート香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が5質量%となるようにM3HBを添加し、得られたチョコレート香料を使用した。
【0102】
【表13】
【0103】
[処方例16](ガム)
下記原料を均一に練り上げ、成形し、ガムを製造した。ミント香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が10質量%となるようにM3HBを添加し、得られたミント香料を使用した。
【0104】
【表14】
【0105】
[処方例17](タブレット)
下記原料を混合し、成形し、タブレットを製造した。ミント香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が10質量%となるようにM3HBを添加し、得られたミント香料を使用した。
【0106】
【表15】
【0107】
[処方例18](スープ)
下記原料を混合し、スープを製造した。チキン香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたチキン香料を使用した。
【0108】
【表16】
【0109】
[処方例19](植物性ミートハンバーグ)
下記原料を混合し、植物性ミートハンバーグを製造した。ビーフ香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が2質量%となるようにM3HBを添加し、得られたビーフ香料を使用した。
【0110】
【表17】
【0111】
[処方例20](ハードキャンディー)
下記原料を混合し、成形し、ハードキャンディーを製造した。ミント香料(小川香料(株)製)に、M3HB含有量が10質量%となるようにM3HBを添加し、得られたミント香料を使用した。
【0112】
【表18】
【0113】
[処方例21](香水)
表19の処方に従い、香料とエタノールを混合して、香水を製造した。
【0114】
【表19】
【0115】
[処方例22](液体芳香剤)
表20の処方に従い、メチルパラベン、香料、POE硬化ひまし油、エタノール、水を順に混合して、芳香スプレーを製造した。
【0116】
【表20】
【0117】
[処方例23](ローション)
表21の処方に従い、ローションを製造した。まず、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、及びパラオキシ安息香酸メチルをエタノールに溶解させ、水と混合してローション基剤を調製した。次いで、当該ローション基剤に、予め均一混合したPEG-20ソルビタンココエートと香料を添加し、ローションを製造した。
【0118】
【表21】
【0119】
[処方例24](シャンプー)
表22の処方に従い、シャンプーを製造した。まず、水系ベースの成分をビーカーに測り取り、85℃で加温しながら均一に混合させた。調製された水系ベースに、撹拌しながらココイルグルタミン酸Naなどの活性剤を添加して均一に溶解させ、さらに1%クエン酸水及び水を添加して均一に混合させた。最後に、得られた混合物に香料を添加して、シャンプーを製造した。
【0120】
【表22】
【0121】
[処方例25](柔軟剤)
表23の処方に従い、柔軟剤を製造した。まず、A相の成分をビーカー測り取り、80℃で加温しながら均一に混合させた。得られたA相に、80℃で均一に混合させたB相を添加し、ホモミキサーで攪拌した。最後に、得られた混合物に香料を添加して、柔軟剤を製造した。
【0122】
【表23】
【0123】
[処方例26](線香)
表24の処方に従い、線香を製造した。まず、タブノキ粉末を主成分とした線香原料に、香料を混合し、さらに水100gを加えてよく混練した。混練した生地を、直径約2mm、長さ10cmの棒状に成形した後、1週間室温で乾燥させ、線香を製造した。
【0124】
【表24】
【0125】
[処方例27](アロマディフューザー)
表25の処方に従い、香料とエタノールを混合して、アロマディフューザーを製造した。得られたアロマディフューザーを、香り吸い上げ用のスティック付の容器又はディフューザー装置に充填し、アロマディフューザー製品を製造した。
【0126】
【表25】
【0127】
[処方例28](ファブリックミスト)
表26の処方に従い、A相の成分をビーカー測り取り、均一に混合させた後、水を添加して均一に混合させることにより、ファブリックミストを製造した。
【0128】
【表26】
【0129】
[処方例29](粉末状入浴剤)
表27の処方に従い、香料以外の成分を混合した後、香料を加えて、粉末状入浴剤を製造した。
【0130】
【表27】
【0131】
[処方例30](バスオイル)
表28の処方に従い、流動パラフィン、エチルヘキサン酸セチル、オクチルドデカノール、テトラオレイン酸ソルベス-30、及び香料を順に混合して、バスオイルを製造した。
【0132】
【表28】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10