(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165325
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】多孔質ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20221024BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221024BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08J9/26 CFG
C08G73/10
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070657
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】三島 慧
【テーマコード(参考)】
4F074
4J043
【Fターム(参考)】
4F074AA39
4F074AA74
4F074AA76
4F074BC15
4F074CB03
4F074CB16
4F074CB17
4F074CB27
4F074CC04X
4F074CC04Z
4F074CC10X
4F074CC27Y
4F074CC28X
4F074CC29X
4F074CC44Y
4F074DA02
4F074DA24
4F074DA47
4F074DA54
4J043PA05
4J043PA08
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB04
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB121
4J043UB161
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043ZA42
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】誘電正接が低い多孔質ポリイミドフィルムを提供すること。
【解決手段】多孔質ポリイミドフィルムは、ジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物である。ジアミン成分は、下記式(1)で示される芳香族ジアミンを含有する。
【化1】
(式中、Yは、単結合、-COO-、-S-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-CO-、-NH-および-NHCO-からなる群から選択される少なくとも1つを示す。)空孔率が、50%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物であり、
前記ジアミン成分は、下記式(1)で示される芳香族ジアミンを含有し、
空孔率が、50%以上である、多孔質ポリイミドフィルム。
【化1】
(式中、Yは、単結合、-COO-、-S-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-CO-、-NH-および-NHCO-からなる群から選択される少なくとも1つを示す。)
【請求項2】
10GHzにおける誘電正接が、0.0028以下である、請求項1に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記空孔率が、95%以下である、請求項1または2に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物である多孔質ポリイミドフィルムが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1の実施例では、ジアミン成分が、フェニレンジアミン(PDA)およびオキシジアニリン(ODA)を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質ポリイミドフィルムには、低い誘電正接が求められる。しかし、特許文献1に記載の多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接を低くするには、限界がある。
【0005】
本発明は、誘電正接が低い多孔質ポリイミドフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、ジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物であり、前記ジアミン成分は、下記式(1)で示される芳香族ジアミンを含有し、空孔率が50%以上である、多孔質ポリイミドフィルムを含む。
【0007】
【化1】
(式中、Yは、単結合、-COO-、-S-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-CO-、-NH-および-NHCO-からなる群から選択される少なくとも1つを示す。)
【0008】
本発明(2)は、10GHzにおける誘電正接が、0.0028以下である、(1)に記載の多孔質ポリイミドフィルムを含む。
【0009】
本発明(2)は、前記空孔率が、95%以下である、(1)または(2)に記載の多孔質ポリイミドフィルムを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多孔質ポリイミドフィルムでは、ジアミン成分が式(1)で示される芳香族ジアミンを含有し、空孔率が50%以上であるので、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接が、低い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の多孔質ポリイミドフィルムの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<多孔質ポリイミドフィルム>
本発明の多孔質ポリイミドフィルムを説明する。多孔質ポリイミドフィルムは、厚みを有する。多孔質ポリイミドフィルムは、面方向に延びる。面方向は、厚み方向に直交する。
【0013】
多孔質ポリイミドフィルムは、多孔体(発泡体)である。多孔質ポリイミドフィルムは、例えば、独立気泡構造および/または連続気泡構造を有する。
【0014】
<空孔率>
多孔質ポリイミドフィルムの空孔率は、50%以上である。
【0015】
多孔質ポリイミドフィルムの空孔率が50%未満であれば、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接を十分に低くできない。具体的には、多孔質ポリイミドフィルムの空孔率が50%未満であれば、たとえ、原料であるジアミン成分が後述する特定の芳香族芳香族ジアミンを含有しても、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接を十分に低くできない。
【0016】
多孔質ポリイミドフィルムの空孔率は、好ましくは、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、75%以上である。
【0017】
多孔質ポリイミドフィルムの空孔率は、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下、より好ましくは、85%以下、さらに好ましくは、75%以下、とりわけ好ましくは、70%以下でもある。多孔質ポリイミドフィルムの空孔率が上記した上限以下であれば、多孔質ポリイミドフィルムの機械強度を確保して、取扱性に優れる。
【0018】
多孔質ポリイミドフィルムの空孔率は、下記式への誘電率の挿入によって求められる。
【0019】
多孔質ポリイミドフィルムの誘電率=空気の誘電率×空孔率+ポリイミド樹脂の誘電率×(1-空孔率)
【0020】
上記式に挿入される多孔質ポリイミドフィルムの誘電率は、共振器によって周波数10GHzで測定される。また、誘電率は、温度22℃、相対湿度50%で測定される。
【0021】
<空孔率以外の物性>
多孔質ポリイミドフィルムの平均孔径は、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、4μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、2μm以上である。平均孔径は、断面SEM写真の画像解析により測定される。
【0022】
10GHzにおける多孔質ポリイミドフィルムの誘電率は、限定されない。10GHzにおける多孔質ポリイミドフィルムの誘電率は、例えば、2.50以下、好ましくは、2.00以下、より好ましくは、1.80以下、さらに好ましくは、1.75以下、とりわけ好ましくは、1.70以下、最も好ましくは、1.60以下である。また、10GHzにおける多孔質ポリイミドフィルムの誘電率は、1.00超過である。多孔質ポリイミドフィルムの誘電率は、共振器を用いて測定される。
【0023】
10GHzにおける多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接は、例えば、0.0028以下、好ましくは、0.0025以下、より好ましくは、0.0020以下、さらに好ましくは、0.0018以下、とりわけ好ましくは、0.0017以下、最も好ましくは、0.0016以下である。多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接が上記した上限以下であれば、低い誘電正接を有する多孔質ポリイミドフィルムとして、例えば、第五世代(5G)の規格の無線通信、および/または、高速フレキシブルプリント基板(FPC)に好適に用いられる。
【0024】
また、10GHzにおける多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接は、0.0000超過である。多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接は、共振器を用いて測定される。
【0025】
多孔質ポリイミドフィルムの厚みは、限定されない。多孔質ポリイミドフィルムの厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0026】
<多孔質ポリイミドフィルムの原料>
本発明の多孔質ポリイミドフィルムは、ジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物である。言い換えれば、多孔質ポリイミドフィルムの原料は、ジアミン成分と、酸二無水物成分とを含有する。
【0027】
<ジアミン成分>
ジアミン成分は、芳香族ジアミンを含有する。芳香族ジアミンは、下記式(1)で示される。
【0028】
【化1】
(式中、Yは、単結合、-COO-、-S-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-CO-、-NH-および-NHCO-からなる群から選択される少なくとも1つを示す。)
【0029】
<芳香族ジアミンの種類>
具体的には、ジアミン成分として、Yが単結合である4,4’-ジアミノジフェニル、Yが-COO-である4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、Yが-S-であるビス(4-アミノフェニル)スルフィド、Yが-CH(CH3)-である4,4’-ジアミノジフェニルエタン、Yが-C(CH3)2-である4,4’-ジアミノジフェニルプロタン、YがCO-である4,4’-ジアミノベンゾフェノン、Yが-NH-である4,4’-ジアミノフェニレンアミン、および、Yが-NHCO-である4,4’-ジアミノベンズアニリドが挙げられる。好ましくは、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接をより低くする観点から、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエートが挙げられる。なお、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエートは、単にAPABと略称される場合がある。上記した芳香族ジアミンは、単独使用または併用できる。好ましくは、APABの単独使用が挙げられる。
【0030】
他方、ジアミン成分が、上記した芳香族ジアミンを含有しない場合には、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接を十分に低くできない。具体的には、ジアミン成分が、上記した芳香族ジアミンを含有しない場合には、たとえ、空孔率を50%以上と高くしても、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接を十分に低くできない。
【0031】
ジアミン成分における芳香族ジアミンのモル分率は、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上、より好ましくは、15%以上であり、また、例えば、75モル%以下、好ましくは、60モル%以下、より好ましくは、40モル%以下である。
【0032】
<他のジアミン成分>
他のジアミン成分は、例えば、上記した芳香族ジアミン以外に、第2ジアミン、および、第3ジアミンを含有することができる。
【0033】
<第2ジアミン>
第2ジアミンは、単数の芳香環を含有する。第2ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジメチルベンゼンジアミン、および、エチルメチルベンゼンジアミンが挙げられる。機械強度の観点から、好ましくは、フェニレンジアミンが挙げられる。フェニレンジアミンとしては、例えば、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、および、p-フェニレンジアミンが挙げられる。フェニレンジアミンとして、好ましくは、p-フェニレンジアミンが挙げられる。p-フェニレンジアミンは、単にPDAと略称される場合がある。
【0034】
ジアミン成分における第2ジアミンのモル分率は、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、より好ましくは、30%以上であり、また、例えば、80モル%以下、好ましくは、70モル%以下、より好ましくは、65モル%以下である。
【0035】
<第3ジアミン>
第3ジアミンは、複数の芳香環と、それらの間に配置されるエーテル結合とを含有する。第3ジアミンとしては、例えば、オキシジアニリンが挙げられる。オキシジアニリンとしては、例えば、3,4’-オキシジアニリン、および、4,4’-オキシジアニリンが挙げられる。機械強度の観点から、好ましくは、4,4’-オキシジアニリン(別名:4,4’-ジアミノジフェニルテール)が挙げられる。4,4’-オキシジアニリンは、単にODAと略称される場合がある。
【0036】
ジアミン成分における第3ジアミンのモル分率は、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上であり、また、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。
【0037】
また、第2ジアミンと第3ジアミンとの合計100モル部に対する上記した芳香族ジアミンのモル部は、例えば、5モル部以上、好ましくは、10モル部以上、より好ましくは、20モル部以上であり、また、例えば、100モル部以下、好ましくは、50モル部以下、より好ましくは、30モル部以下である。
【0038】
<酸二無水物成分>
酸二無水物成分は、例えば、芳香環を含む酸二無水物を含有する。芳香環を含む酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、および、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0039】
ベンゼンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物(別称:ピロメロット酸二無水物)が挙げられる。ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物として、例えば、3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および、3,3’,4,4’-ジフェニルエ-テルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、および、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。酸二無水物成分として、機械強度の観点から、好ましくは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、より好ましくは、3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。なお、3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、単にBPDAと略称される場合がある。
【0040】
ジアミン成分のアミノ基(-NH2)のモル量と、酸二無水物成分の酸無水物基(-CO-O-CO-)のモル量とは、例えば、等量である。
【0041】
次に、多孔質ポリイミドフィルム1の製造方法を、
図1を参照して説明する。
【0042】
この方法では、例えば、まず、金属からなる基材フィルム2(括弧書きおよび仮想線)を準備する。基材フィルム2は、面方向に延びる。金属としては、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、および、それらの合金(ステンレス、青銅)が挙げられる。金属として、好ましくは、銅が挙げられる。基材フィルム2の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0043】
次いで、ポリイミド樹脂の前駆体と、多孔化剤と、核剤と、溶媒とを含むワニスを調製し、次いで、ワニスを基材フィルム2の厚み方向の一方面に塗布して塗膜を形成する。ワニスにおける多孔化剤、核剤および溶媒の、種類および配合割合等は、例えば、WO2018/186486号に記載されている。
【0044】
ポリイミド樹脂の前駆体は、上記したジアミン成分と、酸二無水物成分との反応生成物である。ポリイミド樹脂の前駆体を調製するには、上記したジアミン成分と、上記した酸二無水物成分と、溶媒とを配合して、ワニスを調製し、かかるワニスを加熱して、前駆体溶液を調製する。続いて、前駆体溶液に核剤および多孔化剤を配合して、多孔前駆体溶液を調製する。
【0045】
その後、多孔前駆体溶液を基材フィルム2の厚み方向の一方面に塗布して、塗膜を形成する。
【0046】
その後、塗膜を加熱により乾燥することにより、前駆体フィルムを形成する。上記した加熱によって、溶媒の除去が進行しつつ、核剤を核とした、ポリイミド樹脂前駆体と多孔化剤との相分離構造を有する前駆体フィルムが調製される。
【0047】
その後、例えば、超臨界二酸化炭素を溶媒として用いる超臨界抽出法により、多孔化剤を前駆体フィルムから抽出する(引き抜く、あるいは、除去する)。
【0048】
その後、前駆体フィルムを加熱により硬化させて、ポリイミド樹脂からなる多孔質ポリイミドフィルム1を形成する。多孔質ポリイミドフィルム1は、基材フィルム2の厚み方向の一方面に形成される。
【0049】
その後、必要により、
図1の実線のように、基材フィルム2を除去する。例えば、剥離液を用いて、基材フィルム2を溶解する。剥離液としては、例えば、FeCl
3が挙げられる。これにより、多孔質ポリイミドフィルム1を得る。なお、後述する金属層積層板10を製造するときには、上記した基材フィルム2を除去せず、第1金属層3として残す。
【0050】
<用途>
次に、
図1の仮想線と実線とで示すように、多孔質ポリイミドフィルム1を備える金属層積層板10を説明する。この金属層積層板10は、多孔質ポリイミドフィルム1と、仮想線で示す2つの金属層3,4とを備える。
【0051】
多孔質ポリイミドフィルム1は、金属層積層板10に備えられる。つまり、多孔質ポリイミドフィルム1は、次に説明する2つの金属層3,4の積層に用いられる。
【0052】
2つの金属層3,4は、第1金属層3と、第2金属層4とを含む。第1金属層3は、多孔質ポリイミドフィルム1の厚み方向の他方面に配置されている。第1金属層3の材料としては、基材フィルム2で例示した金属が挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。第1金属層3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0053】
第2金属層4は、多孔質ポリイミドフィルム1の厚み方向の一方面に配置されている。なお、第2金属層4は、多孔質ポリイミドフィルム1の厚み方向の一方面に図示しない接着剤層を介して配置されていてもよい。第2金属層4の材料としては、基材フィルム2で例示した金属が挙げられる。第2金属層4の厚みは、第1金属層3の厚みと同様である。
【0054】
金属層積層板10の製造方法を説明する。まず、製造途中であって、基材フィルム2と、多孔質ポリイミドフィルム1とを備える積層体20の厚み方向の一方面に、第2金属層4を配置する。他方、基材フィルム2は、金属からなるので、第1金属層3としてそのまま残す(第1金属層3に転用する)。これによって、多孔質ポリイミドフィルム1と、それの厚み方向の一方面および他方面にそれぞれ配置される第2金属層4および第1金属層3とを備える金属層積層板10を得る。
【0055】
その後、例えば、エッチングなどによって、第1金属層3と第2金属層4とをパターンに形成する。
【0056】
用途および目的に応じて、上記したパターンの形成前、形成中および/または形成後に、金属層積層板10をプレスする。具体的には、金属層積層板10を熱プレスする
【0057】
この金属層積層板10は、例えば、第五世代(5G)の規格の無線通信、および/または、高速フレキシブルプリント基板(FPC)に用いられる。
【0058】
<一実施形態の作用効果>
上記した多孔質ポリイミドフィルム1では、ジアミン成分が式(1)で示される芳香族ジアミンを含有し、空孔率が50%以上であるので、多孔質ポリイミドフィルムの誘電正接が、低い。
【0059】
多孔質ポリイミドフィルム1の誘電正接が0.0028以下であれば、低い誘電正接を有する多孔質ポリイミドフィルム1として、例えば、第五世代(5G)の規格の無線通信、および/または、高速フレキシブルプリント基板(FPC)に好適に用いられる。
【0060】
また、多孔質ポリイミドフィルム1の空孔率が、95%以下であれば、多孔質ポリイミドフィルムの機械強度が優れる。
【実施例0061】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0062】
<実施例1>
攪拌機および温度計を備える反応装置に、PDA(第2ジアミン)64.88g(0.60モル)、ODA(第3ジアミン)40.05g(0.20モル)、および、APAB(式(1)で示され、Y-が-COO-である芳香族ジアミン)45.65g(0.20モル)を入れ、溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)2300gを加えて、40℃で、20分間攪拌し、PDA、ODAおよびAPABのNMP溶液を調製した。なお、NMP溶液は、ジアミン成分1.00モルを含有する。
【0063】
次いで、上記したNMP溶液に3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)294.2g(1.00モル)を加え、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)18gを加えて80℃に昇温した後、10時間攪拌して、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0064】
ポリイミド前駆体溶液の固形分100質量部に対して、核剤としてのメジアン径1μm以下のPTFE粉末3質量部、多孔化剤としての重量平均分子量が400のポリオキシエチレンジメチルエーテル(日油(株)製グレード:MM400)150質量部、および、2-メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製2Mz-H)4質量部を加えて、多孔前駆体溶液を得た。得られた多孔前駆体溶液を、銅からなる基材フィルム2に塗布して、塗膜を形成した。その後、塗膜を、135℃で15分間乾燥させて、前駆体フィルムを作製した。
【0065】
この前駆体フィルムを60℃にて30MPaに加圧した二酸化炭素に浸漬、4時間流通することで、多孔化剤の抽出除去および残存NMPの相分離、多孔の形成を促進した。その後、二酸化炭素を減圧した。
【0066】
その後、前駆体フィルムを真空下、390℃の温度で約185分間、加熱し、残存成分の除去およびイミド化を促進することで、基材フィルム2の厚み方向の一方面に配置された多孔質ポリイミドフィルム1を得た。その後、基材フィルム2および多孔質ポリイミドフィルム1(積層体20)をFeCl3溶液に浸漬させて、基材フィルム2を除去した。
【0067】
表1に、各成分のg数および質量部数を記載する。表2に、ジアミン成分および酸二無水物成分のモル分率を記載する。
【0068】
<実施例2から実施例6および比較例1から比較例3>
実施例1と同様にして、多孔質ポリイミドフィルム1を製造した。但し、処方を表1および表2に従って変更した。
【0069】
<評価>
実施例2から実施例6および比較例1から比較例3のそれぞれの多孔質ポリイミドフィルム1について、下記の事項を測定した。それらの結果(但し、平均空孔を除く。)を表2に記載する。
【0070】
<誘電率および誘電正接>
多孔質ポリイミドフィルム1の誘電率および誘電正接のそれぞれを、共振器によって周波数10GHzで測定した。誘電率および誘電正接を、温度22℃、相対湿度50%で測定した。
【0071】
<空孔率>
多孔質ポリイミドフィルム1の空孔率を、上記で求めた誘電率を下記式へ挿入して、求めた。
【0072】
多孔質ポリイミドフィルムの誘電率=空気の誘電率×空孔率+ポリイミド樹脂の誘電率×(1-空孔率)
【0073】
<平均空孔>
実施例1および比較例1のそれぞれの多孔質ポリイミドフィルム1の平均孔径を、断面SEM写真の画像解析により測定した。
【0074】
その結果、実施例1の多孔質ポリイミドフィルム1の平均孔径は、3.6μmであった。一方、比較例1の多孔質ポリイミドフィルム1の平均孔径は、5.3μmであった。
【0075】
【0076】