(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165340
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】集魚装置及び集魚装置を用いた漁法
(51)【国際特許分類】
A01K 79/00 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A01K79/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070700
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】520356021
【氏名又は名称】川島 弘江
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 弘江
【テーマコード(参考)】
2B105
【Fターム(参考)】
2B105AD01
2B105AG15
2B105AJ01
2B105LA19
(57)【要約】
【課題】
本発明は、魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発する集魚装置及び集魚装置を用いた漁法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、水中で魚を集魚する集魚装置であって、魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発する音波発生手段を備える、集魚装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で魚を集魚する集魚装置であって、
魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発する音波発生手段を備える、集魚装置。
【請求項2】
フロートと接続するための接続手段を備える、請求項1に記載の集魚装置。
【請求項3】
集魚装置が水中に位置するか否かを判定する水没判定手段を備える、請求項1又は2に記載の集魚装置。
【請求項4】
音波発生手段が、水没判定手段により集魚装置が水中に位置すると判定された場合にのみ音波を発する、請求項3に記載の集魚装置。
【請求項5】
水中で魚を集魚する集魚装置を使用した漁法であって、
集魚装置により、水中で、集魚装置の近傍に魚を誘引する音波を発する音波発生ステップと、
音波発生ステップにより発せられた音波によって集魚装置の近傍に誘引された魚を釣り上げる漁獲ステップとを有する漁法。
【請求項6】
集魚装置と船舶が接続されており、音波発生ステップを、船舶の航行中に実行する、請求項5に記載の漁法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集魚装置及び集魚装置を用いた漁法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、漁業における漁獲量を増やすため、魚の行動を決定する要因が研究され、漁業に活用されている。近年では、特定の音波に対する魚の行動を利用して、魚を集魚して漁獲する漁法が考案されている。例えば、特許文献1には、魚が忌避する周波数の音波を発生させるスピーカを船舶に取り付け、魚を網に追い込んで漁獲する漁法が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1の漁法においては、魚が忌避する周波数の音波によって、網に魚を追い立てることにより、魚同士の衝突により魚体に傷がつき、漁獲した魚の品質が劣化し、商品価値が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発する集魚装置及び集魚装置を用いた漁法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、
[1]水中で魚を集魚する集魚装置であって、魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発する音波発生手段を備える、集魚装置;
[2]フロートと接続するための接続手段を備える、前記[1]に記載の集魚装置;
[3]集魚装置が水中に位置するか否かを判定する水没判定手段を備える、前記[1]又は[2]に記載の集魚装置;
[4]音波発生手段が、水没判定手段により集魚装置が水中に位置すると判定された場合にのみ音波を発する、前記[3]に記載の集魚装置;
[5]水中で魚を集魚する集魚装置を使用した漁法であって、集魚装置により、水中で、集魚装置の近傍に魚を誘引する音波を発する音波発生ステップと、音波発生ステップにより発せられた音波によって集魚装置の近傍に誘引された魚を釣り上げる漁獲ステップとを有する漁法;
[6]集魚装置と船舶が接続されており、音波発生ステップを、船舶の航行中に実行する、前記[5]に記載の漁法;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発する集魚装置及び集魚装置を用いた漁法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる集魚装置の模式的な構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる集魚装置の水中における姿勢及び集魚装置から発する音波の主な進行方向を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる集魚装置の使用例を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる集魚装置の使用例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる集魚装置の使用例を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかる集魚装置における音波発生処理のフローチャートを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を用いて本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0010】
(集魚装置)
以下、本発明の集魚装置について説明する。集魚装置は、魚を集魚装置の近傍に誘引する音波を発し、音波が届く範囲内にいる魚を、集魚装置の近傍へ集魚することができる。
【0011】
魚には、水中の音波に反応する習性があり、例えば、魚の天敵となる生物の鳴き声等の音波に対しては、音源から遠ざかろうとし、魚が餌とする生物が泳ぐ際に生じる音等の音波に対しては、音源に近寄ろうとする。魚を集魚装置の近傍に誘引する音波とは、魚が音源に近寄ろうとする音波であればよく、例えば、単一の周波数の音波、複合した周波数の音波、周波数を変動しながら発生する音波、魚が餌とする生物が泳ぐ際に生じる音等を録音して再生したもの、及び魚が餌とする生物が泳ぐ際に生じる音等の疑似音等が挙げられる。魚が音源に近寄ろうとする音波の周波数は、魚の種類等によって異なるため、本発明の集魚装置は、集魚したい魚の種類等に応じて、発する音波の周波数を適宜設定できるものとすることが好ましい。本発明の集魚装置を用いて集魚する魚の種類は特に限定されないが、例えば、マグロ等の回遊魚が挙げられる。
【0012】
本発明の集魚装置が発する、魚を集魚装置の近傍に誘因する音波の周波数は、10Hz以上であることが好ましく、50Hz以上であることがより好ましい。本発明の集魚装置が発する、魚を集魚装置の近傍に誘因する音波の周波数は、5kHz以下であることが好ましく、1.5kHz以下であることがより好ましい。
【0013】
集魚装置の近傍とは、集魚装置から所定の範囲内のことをいう。所定の範囲内は、1m以内でも、3m以内でも、5m以内でもよい。また、集魚装置の近傍とは、集魚装置に備えられたスピーカから所定の範囲内のことを表すこととしてもよい。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集魚装置の模式的な構成を示す図である。
【0015】
図示するように、集魚装置1は、外装2、センサ3、バッテリ4、制御部5、スピーカ6、ワイヤ接続部7、フロート接続部8、及び放音部9を備えている。
図1に示す集魚装置1は、円錐台の底面に、該底面と同じ形状の平面を有する球欠を組み合わせた形状をしている。集魚装置1の形状は、
図1に示す形状に限定されず、例えば、球状としてもよく、円柱状としてもよい。
【0016】
ワイヤ接続部7にワイヤを接続したうえで、流れのない水中に、集魚装置1を静止状態となるまで放置した場合において、水平面に平行な方向を集魚装置1の水平方向と定義し、水平面に垂直な方向を垂直方向と定義する。
【0017】
図1に示す集魚装置1は、円錐台の底面に、該底面と同じ形状の平面を有する球欠を組み合わせた形状であるが、このような集魚装置1においては、円錐台の底面に垂直な方向が、前記垂直方向となり、円錐台の底面に平行な方向が前記水平方向となる。
【0018】
集魚装置1は、放音部9を備える側に、重心を有する。これにより、ワイヤ接続部7にワイヤを接続したうえで、流れのない水中に、集魚装置1を静止状態となるまで放置した場合に、集魚装置1の放音部9は、最も水面から遠くに位置することとなる。つまり、放音部9は、水中において最も下側に位置することになる。スピーカ6から音波を発生した場合は、放音部9を介して、水底へ向かって水平方向へ広がりながら音波が伝わる。
【0019】
集魚装置1は、集魚装置1の電源のオン/オフを制御する電源スイッチ(図示せず)を備えていてもよい。電源スイッチを備える箇所は、例えば、外装2の外側の表面上が挙げられる。集魚装置1の使用者が電源スイッチを操作して、集魚装置1の電源をオンにすることで、バッテリ4から、センサ3、制御部5、及びスピーカ6へ電力の供給が開始され、集魚装置1の電源をオフにすることで、該電力の供給が終了する。
【0020】
集魚装置1は、決まった周波数の音波のみを発するものとしてもよく、集魚装置1の使用者が、集魚装置1から発する音波の周波数を設定できるものとしてもよい。
【0021】
集魚装置1は、集魚装置1から発する音波の周波数等を設定する操作を受け付けるための操作部(図示せず)を備えることが好ましい。操作部は、制御部5と電気的に接続されていることが好ましい。そして、操作部により受け付けられた設定に関する情報は、制御部5に送信され、記憶されることとしてもよい。操作部が設置される場所は、特に限定されないが、集魚装置1の使用者が操作しやすいように、外装2の外側の表面上に設置することが好ましい。また、操作部には、開閉可能な防水カバーを設けてもよい。操作部としては、例えば、ダイヤル、ボタン、スイッチ、タッチパネル等が挙げられるが、特に限定されない。操作部は、現在の設定が表示される表示画面を備えていてもよい。
【0022】
操作部により設定できる内容は、特に限定されないが、例えば、集魚装置1から発する音波の周波数や音量等が挙げられる。また、操作部により、集魚装置1で集魚したい魚の種類を設定できるものとしてもよい。この場合、集魚したい魚の種類ごとに、適切な音波の周波数、音量等の値がセットとして用意されており、魚の種類を選択することにより一括で設定できるものとしてもよい。
【0023】
外装2は、外装2の内部に、センサ3、バッテリ4、制御部5、及びスピーカ6を収容可能なものであり、外装2の内部に水が入らない防水構造を有する。外装2の外側の表面上には、ワイヤ接続部7及びフロート接続部8が備えられている。外装2の面のうち、垂直方向の下側の面は、放音部9で構成されている。
【0024】
外装2の材質は、水中で使用できるように、防水及び耐圧性能を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、アクリル樹脂等の合成樹脂が挙げられる。また、外装2の耐圧性能は、特に限定されず、集魚装置1が使用される水深の水圧に耐えることができればよい。
【0025】
外装2の外側の表面上には、バッテリ4を充電するための電力供給コネクタ(図示せず)を設けることが好ましい。外装2に電力供給コネクタを設ける場合、電力供給コネクタには開閉可能な防水カバーを設けることが好ましい。また、外装2の外側の表面上には、外装2の内部に収容されたセンサ3、バッテリ4、制御部5、及びスピーカ6のメンテナンスを行うための開閉部(図示せず)を設けることが好ましい。外装2に開閉部を設ける場合、開閉部から外装2の内部へ浸水することが無いよう、防水構造であればよく、例えば、外装2と開閉部との間にパッキンなどのシール部材を設けることが好ましい。
【0026】
センサ3は、集魚装置1の状態及び/又は集魚装置1の周囲の環境に関する情報を取得できるものであればよく、特に限定されない。センサ3は、例えば、集魚装置1の位置の情報を取得するGPSセンサ、集魚装置1の周辺の水温の情報を取得する温度センサ、集魚装置1が水中に位置することを検知する水没センサ等が挙げられる。水没センサは、集魚装置1が水中に位置するか否かを検知できればよく、特に限定されないが、例えば、静電容量の変化を検知する方式のセンサでもよく、水圧を検知する方式のセンサでもよい。
図1において、センサ3は外装2の内部に設置されているが、センサ3は外装2の外側の表面上に設置されていてもよい。
【0027】
バッテリ4は、センサ3、制御部5、及びスピーカ6に電力を供給することが可能であればよく、特に限定されない。バッテリ4の種類としては、例えば、充電式のリチウムイオン電池等があげられる。また、バッテリ4は、複数台設置されていてもよい。また、バッテリ4は、バッテリ4の充放電の状況に関する情報を制御部5に出力可能であってもよい。
【0028】
制御部5は、CPU、RAM、ストレージ部、サウンド処理部等から構成され、それぞれ内部バスにより接続されている。また、制御部5は、内部タイマを備えていてもよい。制御部5は、格納された所定のプログラムを実行し、センサ3、及びスピーカ6等の制御を実行する。制御部5は、センサ3、バッテリ4、及びスピーカ6のそれぞれと電気的に接続されている。
【0029】
また、集魚装置1は、集魚装置1の使用者が操作する他の端末と通信接続が可能な通信インタフェース(図示せず)を備えていてもよい。制御部5は、通信インタフェースと電気的に接続され、通信インタフェースの制御を行うものとしてもよい。通信インタフェースは、他の端末と相互に信号又は情報の送受信が可能なものであればよく、特に限定されない。通信インタフェースは、独立した電源を備えていてもよく、バッテリ4から電力を供給されるものでもよい。他の端末は、通信インタフェースと相互に信号又は情報の送受信が可能なものであればよく、特に限定されないが、音波の周波数の設定等の操作を入力する操作入力部、設定された音波の周波数等の情報を表示する表示部を備えることが好ましい。
【0030】
ここで、制御部5、前記通信インタフェース、及び前記他の端末の間の信号又は情報の流れについて、一例として、集魚装置1の使用者が、前記他の端末及び前記通信インタフェースを通じて、制御部5へ音波の周波数の設定を行う場合をあげて説明する。この場合、集魚装置1の使用者は、前記他の端末上で音波の周波数を設定する操作をし、前記他の端末が前記通信インタフェースへ音波の周波数の設定に関する情報を送信し、前記通信インタフェースが受信した情報を基に、制御部5が音波の周波数の設定を受け付けることで、制御部5へ音波の周波数の設定を行うことができる。
【0031】
制御部5は、バッテリ4の充放電の状況に関する情報をバッテリ4から受け取れるものであってもよい。制御部5は、バッテリ4の残量を示す値が所定の閾値より小さい、又は、所定の閾値以下である場合に、前記通信インタフェースから前記他の端末へその旨を通知させることができるものとしてもよい。
【0032】
制御部5は、スピーカ6の制御を行う。制御部5が行うスピーカ6の制御としては、特に限定されないが、スピーカ6から発生させる音波の周波数の制御、スピーカ6に音波を発生させるか否かの制御、スピーカ6から発生させる音波の音量の制御等が可能なものとしてもよい。
【0033】
制御部5は、スピーカ6から発生させる音波の周波数を制御できるものとしてもよい。この場合、制御部5は、集魚装置1の使用者からの操作により、スピーカ6から発生させる音波の周波数を設定される。そして、制御部5のCPUは、設定された周波数の音波のサウンド出力の指示をサウンド処理部に出力し、サウンド処理部がサウンド信号をスピーカへ出力する。
【0034】
制御部5に音波の周波数の設定をする方法としては、例えば、集魚装置1の使用者が、集魚装置1を水中に投下する前に、前記操作部を操作して音波の周波数を設定するものとしてもよい。また、集魚装置1の使用者が、前記他の端末から前記通信インタフェースを通じて制御部5へ設定の情報を送信することで、音波の周波数の設定を随時変更できるものとしてもよい。この場合、集魚装置1の使用者は、集魚装置1を水中に投下する前後のどちらであっても、音波の周波数の設定を行うことができる。
【0035】
集魚装置1の使用者は、スピーカ6から発生させる音波の周波数を、集魚装置1を使用する水中の状況、集魚したい魚の種類、集魚装置1を使用する漁法の種類等に合わせて適宜設定できる。スピーカ6から発生させる音波の周波数は、特に限定されず、例えば、一定の周波数の音波を発生させ続けてもよく、時間と共に周波数を変化させてもよい。また、集魚装置1の使用者が、前記他の端末から前記通信インタフェースを通じて制御部5へ設定の情報を送信することで、音波の周波数の設定を随時変更できるものとしてもよい。音波の周波数の設定を随時変更することで、水中の状況の変化等に臨機応変に対応し、効果的に集魚を行うことができる。
【0036】
制御部5は、スピーカ6に、複数の周波数の音波を同時に発生させるよう制御するものとしてもよく、スピーカ6に発生させる音波の周波数を一定の速度で変化させる、いわゆる周波数のスイープを行うよう制御するものとしてもよい。これらにより、集魚装置1は、1つの周波数の音波を発するだけでは集魚することが出来ない種類の魚を集魚することや、1つの周波数の音波を発した場合よりも多くの魚を集魚することが可能となる。
【0037】
制御部5は、センサ3により、集魚装置1が水中に位置することが検知された場合にのみ、スピーカ6に音波を発生させるよう制御するものとしてもよい。
【0038】
制御部5がスピーカ6に音波を発生させるか否かを制御する方法としては、スピーカ6の電源のオン/オフを制御する方法や、スピーカ6の電源がオンの時に、音波を発生しない状態である消音状態となるように制御する方法が挙げられる。制御部5が、スピーカ6の電源がオンの時に、スピーカ6を前記消音状態にする方法としては、例えば、スピーカ6の可変抵抗器の抵抗を大きくすることで、バッテリ4からスピーカ6に流れる電流の量を調整し、スピーカ6から発生させる音波の音量をゼロにする方法等が挙げられる。
【0039】
制御部5は、スピーカ6から発生させる音波の音量を制御するものとしてもよい。制御部5がスピーカ6から発生させる音波の音量を制御することで、例えば、スピーカ6から発生する音量を、集魚装置1を使用する水中の状況、集魚したい魚の種類、集魚装置1を使用する漁法の種類等に適した音量にすることができる。スピーカ6から発生させる音波の音量は、集魚装置1の使用者が、集魚装置1を水中に投下する前に、前記操作部を操作して設定するものとしてもよく、また、集魚装置1の使用者が、前記他の端末及び前記通信インタフェースを通じて、制御部5へ設定の情報を送信することで、随時設定できるものとしてもよい。音量を随時設定できることで、水中の状況の変化等に臨機応変に対応し、効果的に集魚を行うことができる。
【0040】
スピーカ6は、魚を集魚装置1の近傍に誘引する音波を発生させるためのものである。スピーカ6は、制御部5のサウンド処理部から出力されたサウンド信号に基づいた音波を発生することが可能であればよく、特に限定されない。集魚装置1は、サウンド処理部からスピーカ6へ出力されたサウンド信号を増幅させるアンプ(図示せず)を備えていてもよい。アンプは、スピーカ6と別に備えられていてもよく、スピーカ6が内蔵するものであってもよい。また、スピーカ6は、複数台設置されていてもよい。
【0041】
スピーカ6は、外装2の内部の、放音部9の近傍に設置されていてもよく、放音部9に沿って設置されていてもよい。
【0042】
また、スピーカ6は防水及び耐圧性能を持つものであってもよい。この場合、スピーカ6は、外装2の内部に設置されていてもよく、外装2の垂直方向の下側の面に、放音部9に替えて設置されていてもよい。
【0043】
ワイヤ接続部7は、船舶とつながったワイヤ類と、集魚装置1を接続することができればよく、ワイヤ接続部7の形状及びワイヤ接続部7とワイヤ類の接続方法は特に限定されない。以下、ワイヤ類とは、船舶及び/又はフロートと集魚装置1とを接続して保持可能なものであれば特に限定されず、例えば、金属製のワイヤ、釣り糸、延縄漁で用いる幹縄と接続された縄等があげられる。ワイヤ類は、集魚装置1と接続するための外れ止め金具付きのフックを備えていてもよい。
【0044】
図1において、ワイヤ接続部7は、外装2の表面から突出した形状で図示されているが、外装2の表面から突出することなく備わっていてもよい。例えば、
図1のように、ワイヤ接続部7が外装2から突出した取り付け部材である場合、船舶と接続されたワイヤ類に備わったフックを取り付け部材に取り付けることで、ワイヤ類と集魚装置1を容易に接続することができる。
【0045】
フロート接続部8は、フロートとつながったワイヤ類と、集魚装置1を接続することができればよく、フロート接続部8の形状及びフロート接続部8とワイヤ類の接続方法は特に限定されない。
【0046】
図1において、フロート接続部8は、外装2の表面から突出した形状で図示されているが、外装2の表面から突出することなく備わっていてもよい。例えば、
図1のように、フロート接続部8が外装から突出した取り付け部材である場合、フロートと接続されたワイヤ類に備わったフックを取り付け部材に取り付けることで、ワイヤと集魚装置1を容易に接続することができる。
【0047】
放音部9は、外装2の一部であり、外装2の面のうち、垂直方向の下部の面である。放音部9は、スピーカ6で発生した音波を、水中に発することができればよく、その形状は特に限定されないが、例えば、平面状でもよく、垂直方向の下側に凸な曲面状でもよい。垂直方向の下側に凸な曲面状である場合、集魚装置1は振動部9からほぼ半球状に音波を発することができ、平面状の場合よりも広範囲に音波を発することができる。
【0048】
放音部9の材質は、特に限定されないが、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、アクリル樹脂等の合成樹脂が挙げられる。外装2の一部である放音部9の厚さは、特に限定されないが、外装2の他の面の厚さよりも薄いことが好ましい。これにより、放音部9から水中に音波が伝わりやすくなる。
【0049】
放音部9とスピーカ6の間には空間があってもよく、放音部9とスピーカ6は密着していてもよい。また、放音部9とスピーカ6の間には、スピーカ6から発生した音波を、放音部9に効率よく伝達するための伝達部材(図示せず)を備えていてもよい。伝達部材の材質は、特に限定されないが、例えば、硬質樹脂、ステンレス等が挙げられる。
【0050】
集魚装置1は、外装2、センサ3、バッテリ4、制御部5、スピーカ6、ワイヤ接続部7、フロート接続部8、及び放音部9以外のものを備えることとしてもよい。例えば、集魚装置1は、集魚装置1の水深を調整する水深調整装置(図示せず)を備えていてもよい。水深調整装置は、集魚装置1の水深を調整できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、集魚装置1内部の空気を放出することで、集魚装置1の水深を深くすることができるものでもよい。水深調整装置は、制御部5と信号や情報のやり取りが出来るものでもよく、また、制御部5により制御されるものでもよい。水深調整装置は、独立した電源を備えていてもよく、また、バッテリ4から電力を供給されるものでもよい。
【0051】
水深調整装置による水深の調整は、集魚装置1の使用者が、前記他の端末及び前記通信インタフェースを通じて、制御部5へ集魚装置1の水深を深くする指示の情報を送信することで、随時実行できるものとしてもよい。これにより、集魚装置1が現在位置する水深では、希望する集魚の効果が得られない場合等に、より深い位置へ集魚装置1を沈下させ、より深い位置に生息する魚を集魚することができる。
【0052】
(集魚装置の水中における姿勢)
以下に集魚装置の水中における姿勢の一例を、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集魚装置の水中における姿勢及び集魚装置から発する音波の主な進行方向を示す概略図である。
図2において、集魚装置1は、船舶11とワイヤ類10で接続されている。
図2において、集魚装置1の放音部9は、垂直方向の下側に膨らんだ曲面状であり、集魚装置1から発せられる音波13は、集魚装置1の放音部9から、主に放音部9が向いている方向に半球状に広がって水中を伝わっていく。
図2において、矢印は船舶11の進行方向を表している。
【0053】
図2(A)においては、集魚装置1は、静止中の船舶11とワイヤ類10で接続されている。船舶11が静止している場合、集魚装置1の姿勢は、集魚装置1の上部が水面12を向き、集魚装置1の下部が水底を向いた姿勢で安定する。船舶11が静止している場合、集魚装置1から発せられる音波13は、主に水底の方向に半球状に広がって水中を伝わっていく。
【0054】
図2(B)においては、集魚装置1は、矢印の方向に航行中の船舶11とワイヤ類10で接続されている。以下、船舶11の進行方向を前方、船舶11の進行方向と反対の方向を後方とする。
図2(B)のように、船舶11が航行している場合、集魚装置1の姿勢は、集魚装置1の放音部9が後方を向くものとなる。集魚装置1の垂直方向は、必ずしも水平面と平行とはならず、例えば、集魚装置1の放音部9は、後方かつ水底の方向を向いてもよい。
図2(B)の場合、集魚装置1から発せられる音波は、主に後方かつ水底の方向に半球状に広がって水中を伝わっていく。
【0055】
図2(B)の場合、集魚装置1の垂直方向と水平面がなす角度は、船舶11の航行速度、船舶11とワイヤ類10の接続角度、集魚装置1と船舶11とを接続するワイヤ類の長さ等で調整可能である。
【0056】
図2(C)においては、集魚装置1は、矢印の方向に航行中の船舶11とワイヤ類10で接続され、また、フロート11とワイヤ類10で接続されている。フロート11は、水面12に浮かんでいる。フロート11は、集魚装置1とワイヤ類10で接続され、集魚装置1の水深、及び集魚装置1の水中での姿勢を調整できるものであればよく、特に限定されない。ここで水深とは、水面から集魚装置1が位置する地点までの鉛直距離を指す。集魚装置1とフロート11を接続することで、フロート11を用いない場合に比べ、船舶11の静止中及び/又は航行中における、集魚装置1の水深及び水中での姿勢を、集魚装置1の使用者が意図する水深及び姿勢により近く保つことができる。
【0057】
図2(C)のように、集魚装置1を航行中の船舶11と接続し、また集魚装置1をフロート11と接続する場合、集魚装置1の姿勢は、集魚装置1の放音部9が後方を向くものとなる。
図2(C)の場合、集魚装置1から発せられる音波13は、主に後方に半球状に広がって水中を伝わっていく。
【0058】
図2(C)の場合、集魚装置1の垂直方向と水平面がなす角度は、船舶11の航行速度、船舶11とワイヤ類10の接続角度、集魚装置1と船舶11とを接続するワイヤ類10の長さ、フロート11の浮力、集魚装置1とフロート11とを接続するワイヤ類10の長さ等で調整可能である。例えば、
図2(C)においては、集魚装置1の垂直方向が、水平面と平行に描かれているが、必ずしも水平面と平行でなくともよい。
【0059】
図2(C)のようにフロート11を使用することで、
図2(B)のようにフロート11を使用しない場合に比べ、集魚装置1の垂直方向を水平面とより平行に近い状態に保つことができる。これにより、集魚装置1の放音部9から発する音波13が主に伝わる方向を、より水平面と平行に近い後方にすることができる。
【0060】
(集魚装置を使用した漁法)
以下に集魚装置を用いた漁法の一例を、
図2~5を用いて説明する。
【0061】
図3は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集魚装置の使用例を示す概略図である。
図3では、集魚装置を延縄漁に用いた場合の使用例を示している。
図3における延縄漁では、幹縄21、枝縄22、釣り針23、及び水面12に浮かぶ幹縄用浮き24を備える延縄を、水中に設置して魚25を釣り上げる。また、
図3における延縄漁において、集魚装置1は、幹縄21とワイヤ類10で接続され、延縄の近くに魚25を集魚するために使用される。幹縄21は、船舶11と接続されている。幹縄21には、一定間隔で枝縄22が取り付けられており、各枝縄22の先端には、釣り針23が取り付けられている。釣り針23は、集魚装置1の近傍に位置する。釣り針23には、特に図示しないが、餌又は疑似餌が取り付けられている。幹縄21と幹縄用浮き24を接続することにより、幹縄21及び幹縄21に接続された枝縄22等の位置する水深を調整することができる。
【0062】
図3においては、集魚装置1は、幹縄21と一定間隔で接続されている。これにより、集魚装置1は、すべての釣り針23の周囲に、集魚に有効な音量で音波を伝えることができる。
図3においては、集魚装置1は、釣り針23よりも浅い位置にあるが、集魚装置1の位置する水深は、漁獲したい魚25の種類、漁を行う水中の状況等によって適宜調整できる。
【0063】
図3においては、集魚装置1から発せられる音波13は、
図2(A)に示されているように、主に水底の方向に半球状に広がって水中を伝わっていく。
図3における延縄漁において、集魚装置1が主に水底の方向に音波を発するようにして使用されることにより、延縄の位置する水深よりも深い位置にいる魚25に向けて、魚25を誘引する音波を届けることができ、音波に誘引された魚25が延縄の位置まで浮上してくるため、漁獲量を向上させることができる。また、集魚装置1から発せられる音波は、
図2(A)に示されている音波13のように、集魚装置1の放音部9から半球状に発せられるため、延縄及び集魚装置1の真下以外の位置にいる魚25も、延縄の付近に広く誘引することができる。
【0064】
図4は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集魚装置の使用例を示す概略図である。
図4では、集魚装置を一本釣り等の曳き釣りと呼ばれる漁法に用いた場合の使用例を示している。
図4における曳き釣りは、船舶11から釣り針23と接続された釣り糸26を水中に入れて魚25を釣り上げる漁法であり、船舶11を航行させながら行われる。また、
図4における曳き釣りでは、集魚装置1は、船舶11とワイヤ類10で接続されており、釣り針23の近くに魚25を集魚するために使用される。釣り針23は、集魚装置1の近傍に位置する。釣り針23には、特に図示しないが、餌又は疑似餌が取り付けられている。
図4において、矢印は船舶11の進行方向を表している。
【0065】
図4においては、集魚装置1は、釣り針23よりも浅い位置にあるが、漁獲したい魚25の種類、漁を行う水中の状況等によって適宜調整できる。
【0066】
図4においては、集魚装置1から発せられる音波は、
図2(B)に示されている音波13のように、主に後方かつ水底の方向に半球状に広がって水中を伝わっていく。
【0067】
図4に示す漁法が適した場面としては、例えば、漁獲したい魚25の習性として、餌となる魚等を追いかける習性を持ち、また、餌を捕食する時の水深よりも、それ以外の生息時には深い位置にいる習性を持つ場合等が挙げられるが、特に限定されない。
【0068】
図5は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集魚装置の使用例を示す概略図である。
図5では、集魚装置を一本釣り等の曳き釣りと呼ばれる漁法に用いた場合の使用例を示している。
図5における曳き釣りは、船舶11から釣り針23と接続された釣り糸26を水中に入れて魚25を釣り上げる漁法であり、船舶11を航行させながら行われる。また、
図5における曳き釣りでは、集魚装置1は、船舶11及びフロート14とそれぞれワイヤ類10で接続されており、釣り針23の近くに魚25を集魚するために使用される。釣り針23は、集魚装置1の近傍に位置する。釣り針23には、特に図示しないが、餌又は疑似餌が取り付けられている。
図5において、矢印は船舶11の進行方向を表している。
【0069】
図5においては、集魚装置1は、釣り針23よりも浅い位置にあるが、漁獲したい魚25の種類、漁を行う水中の水底までの距離等によって適宜調整できる。
【0070】
図5においては、集魚装置1から発せられる音波は、
図2(C)に示されている音波13のように、主に後方に半球状に広がって水中を伝わっていく。
【0071】
図5に示す漁法が適した場面としては、例えば、漁獲したい魚25の習性として、餌となる魚やイカなどを追いかける習性を持ち、また、餌を捕食する時の水深と、それ以外の生息時における水深が近いという習性を持つ場合等が挙げられるが、特に限定されない。
【0072】
図3では延縄漁に、
図4及び
図5では曳き釣りに、集魚装置1を用いた場合の使用例を示しているが、
図3~5に記載されたいずれの漁法も、巻き網漁等のように魚を網に追い込み、魚を網で漁獲する漁法に比べ、漁獲した魚の魚体を傷つけにくく、また、漁獲した魚の品質の劣化を抑えることができる。
【0073】
(音波発生処理)
以下に集魚装置の使用手順の一例を、
図3~
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集魚装置における音波発生処理のフローチャートを表す図である。
図6の音波発生処理を実行する際、
図3~5に示すように、集魚装置1は少なくとも船舶11とワイヤ類10で接続されている。
【0074】
まず、集魚装置1の使用者は、集魚装置1の電源スイッチを操作して電源をオンにし、集魚装置1を水中に投下する。集魚装置1の電源がオンになると、センサ3は集魚装置1が水中に位置するか否かの検知を開始し、制御部5は、センサ3が検知した情報から、集魚装置1が水中に位置するか否かを判定する(ステップS1)。センサ3による集魚装置1が水中に位置するかの検知は、一定の周期で行われるものとしてもよい。該周期は特に限定されないが、例えば、10分の1秒ごとに行われてもよく、1秒ごとに行われてもよい。センサ3による集魚装置1が水中に位置するかの検知は、ステップS1~S5の間、周期的に行われる。
【0075】
ステップS1において、集魚装置1が水中に位置する場合は(ステップS1にてYes)、ステップS2へ移行する。ステップS1において、集魚装置1が水中に位置しない場合は(ステップS1にてNo)、ステップS4へ移行する。
【0076】
ステップS2として、制御部5は、スピーカ6から音波が発生中か否かの判定を行う。音波が発生中の場合(ステップS2にてYes)、ステップS1へ移行する。音波が発生中でない場合(ステップS2にてNo)、制御部5はスピーカ6からの音波の発生を開始させる(ステップS3)。
【0077】
ステップS4として、制御部5は、スピーカ6から音波が発生中か否かの判定を行う。音波が発生中の場合(ステップS4にてYes)、制御部5はスピーカ6からの音波の発生を停止させる(ステップS5)。音波を発生中でない場合(ステップS4にてNo)、ステップS1へ移行する。
【0078】
ステップS1~S5は、集魚装置1の電源がオフになるまで繰り返し実行される。集魚装置1の電源がオフになるとは、集魚装置1の使用者が、集魚装置1の電源スイッチを操作して電源をオフにした場合等が挙げられる。集魚装置1の電源がオフになった場合、音波発生処理は終了する。
【0079】
ステップS3及びステップS5において、制御部5がスピーカ6に音波を発生させる又は音波の発生を停止させる方法としては、スピーカ6の電源のオン/オフを制御する方法や、スピーカ6の電源がオンの時に、音波を発生しない状態である消音状態となるように制御する方法が挙げられる。
【0080】
集魚装置1が、水中に位置する場合に音波を発し、水中に位置しない場合に音波を発しなくなることで、バッテリ4の無駄な消費を抑えることができるため、集魚を長時間行うことが可能となる。また、船舶11の上で集魚装置1の電源を入れた時点では音波を発しないため、例えば、船舶11の上で複数人の作業者によって漁を行う場合、集魚装置1が船舶11の上で大きな音を発することにより、漁の作業者同士のコミュニケーションが困難になるといった事態を防ぐことができ、安全に漁を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 集魚装置
2 外装
3 センサ
4 バッテリ
5 制御部
6 スピーカ
7 ワイヤ接続部
8 フロート接続部
9 放音部
10 ワイヤ類
11 船舶
12 水面
13 音波
14 フロート
21 幹縄
22 枝縄
23 釣り針
24 幹縄用浮き
25 魚
26 釣り糸