IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トップの特許一覧

特開2022-165346コネクタアダプタおよびコネクタシステム
<>
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図1
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図2
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図3
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図4
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図5
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図6
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図7
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図8
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図9
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図10
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図11
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図12
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図13
  • 特開-コネクタアダプタおよびコネクタシステム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165346
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】コネクタアダプタおよびコネクタシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A61M39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070707
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
(72)【発明者】
【氏名】熱海 賢治
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066CC01
4C066JJ03
4C066JJ05
4C066JJ10
(57)【要約】
【課題】移送物の漏出をより確実に防止することが可能なコネクタアダプタおよびコネクタシステムを提供する。
【解決手段】コネクタアダプタ10は、一対の機器の一方に接続される一側接続端12bと、一側接続端12bに後端側が接続され、先端側に開口14bを有する針管14と、先端側の第1位置P1および後端側の第2位置P2の間を針管14に対して移動可能に設けられる移動部15と、第1位置P1において開口14bを覆って閉塞すると共に第2位置P2において針管14が自身を貫通した状態となることで開口14bを露出させるように移動部15に設けられる閉塞部16と、閉塞部16よりも後端側において針管14を外周側から囲むことで針管14の径方向の変位を制限するように移動部15に設けられる変位制限部17と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の機器の一方に接続される一側接続端と、
前記一側接続端に後端側が接続され、先端側に開口を有する針管と、
先端側の第1位置および後端側の第2位置の間を前記針管に対して移動可能に設けられる移動部と、
前記第1位置において前記開口を覆って閉塞すると共に前記第2位置において前記針管が自身を貫通した状態となることで前記開口を露出させるように前記移動部に設けられる閉塞部と、
前記閉塞部よりも後端側において前記針管を外周側から囲むことで前記針管の径方向の変位を制限するように前記移動部に設けられる変位制限部と、を備えることを特徴とするコネクタアダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタアダプタにおいて、
前記変位制限部は、前記閉塞部よりも硬質の材料から構成されることを特徴とするコネクタアダプタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコネクタアダプタにおいて、
前記閉塞部は、前記針管が穿刺されることで前記開口を閉塞するように構成されることを特徴とするコネクタアダプタ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のコネクタアダプタにおいて、
前記移動部に設けられ、前記閉塞部の先端面の周縁に繋がる側面を外周側から囲むことで前記閉塞部の変形を制限する変形制限部を備えることを特徴とするコネクタアダプタ。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のコネクタアダプタと、
前記一対の機器の他方に接続される他側接続端が接続される本体、および前記本体に設けられて前記他側接続端を閉塞する栓部を有する栓アダプタと、を備え、
前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動して前記針管が前記栓部を貫通することで、前記一側接続端と前記他側接続端が連通するコネクタシステムにおいて、
前記移動部は、前記閉塞部の先端面の周縁に繋がる側面を外周側から囲むことで前記閉塞部の変形を制限する変形制限部を有し、
前記栓部は、前記本体から突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記閉塞部に向けて押圧されることで外周側に膨出するように変形する形状に構成されることを特徴とするコネクタシステム。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のコネクタアダプタと、
前記一対の機器の他方に接続される他側接続端が接続される本体、および前記本体に設けられて前記他側接続端を閉塞する栓部を有する栓アダプタと、を備え、
前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動して前記針管が前記栓部を貫通することで、前記一側接続端と前記他側接続端が連通するコネクタシステムにおいて、
前記本体は、前記栓部の前記コネクタアダプタ側の端面の周縁に繋がる側面を外周側から囲むことで前記栓部の変形を制限する変形制限部を有し、
前記閉塞部は、前記移動部から突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記栓部に向けて押圧されることで外周側に膨出するように変形する形状に構成されることを特徴とするコネクタシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のコネクタシステムにおいて、
前記コネクタアダプタは、前記移動部を先端側に向けて付勢する付勢部を有し、
前記付勢部のバネ定数は、前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動する場合に、前記針管が前記閉塞部を貫通していない状態で前記突出部の変形により膨出した部分が前記移動部と前記本体の間で圧縮されるように設定されることを特徴とするコネクタシステム。
【請求項8】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のコネクタアダプタと、
他の機器に接続される他側接続端が接続される本体、および前記本体に設けられて前記他側接続端を閉塞する栓部を有する栓アダプタと、を備え、
前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動して前記針管が前記栓部を貫通することで、前記一側接続端と前記他側接続端が連通するコネクタシステムにおいて、
前記コネクタアダプタは、前記本体に係止する係止フック、および前記係止フックよりも先端側に設けられて前記本体を外周側から囲むことで前記本体を案内するガイドを有し、
前記本体は、前記係止フックが係止する段差部を有し、
前記ガイドは、軸方向の長さが前記本体の前記コネクタアダプタ側の端面から前記段差部までの距離以上に構成されることを特徴とするコネクタシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のコネクタシステムにおいて、
前記ガイドは、前記移動部が前記第1位置にある状態で前記閉塞部と前記栓部を接触させた場合に前記段差部を囲む位置に設けられることを特徴とするコネクタシステム。
【請求項10】
請求項8または9に記載のコネクタシステムにおいて、
前記ガイドは、前記本体と軸方向に当接することで前記コネクタアダプタの先端側に向けての移動を制限するストッパを有することを特徴とするコネクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送物が移送される一対の機器の間に介在して使用されるコネクタアダプタおよびコネクタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体等に投与される薬物等には、投与前に希釈や溶解等の調整作業を必要とするものがある。この調整作業は、例えば薬物が収容されたバイアル瓶内にシリンジから液体を注入して薬物を希釈または溶解し、これにより調整された薬液をシリンジ内に吸引してシリンジから輸液ライン等に薬液を注入するといった手順で行われる。
【0003】
バイアル瓶や輸液ライン等へのシリンジの接続は、一般にシリンジの針管を直接バイアル瓶等のゴム栓に穿刺することで行われるが、例えば抗がん剤等、漏出した場合に周囲の人体に危険を及ぼす薬物等の調整においては、閉鎖式のコネクタシステムが使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなコネクタシステムは、シリンジに接続されるコネクタアダプタと、バイアル瓶や輸液ライン等に接続される栓アダプタと、から構成されている。このうち、コネクタアダプタは、栓アダプタとの接続用の針管およびこの針管の先端部の開口を閉塞する閉塞部を有している。また、栓アダプタは、コネクタアダプタとの接続端を閉塞する栓部を有している。そして、コネクタアダプタと栓アダプタの接続は、閉塞部と栓部が接触した状態で針管が両者を貫通することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-535636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のコネクタシステムでは、針管の栓部への穿刺時や栓部からの抜去時に閉塞部と栓部の間の密閉性が損なわれ、薬液等の移送物が漏出する場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑み、移送物の漏出をより確実に防止することが可能なコネクタアダプタおよびコネクタシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタアダプタは、一対の機器の一方に接続される一側接続端と、前記一側接続端に後端側が接続され、先端側に開口を有する針管と、先端側の第1位置および後端側の第2位置の間を前記針管に対して移動可能に設けられる移動部と、前記第1位置において前記開口を覆って閉塞すると共に前記第2位置において前記針管が自身を貫通した状態となることで前記開口を露出させるように前記移動部に設けられる閉塞部と、前記閉塞部よりも後端側において前記針管を外周側から囲むことで前記針管の径方向の変位を制限するように前記移動部に設けられる変位制限部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のコネクタアダプタによれば、針管を変位制限部に挿通した状態で閉塞部内に挿入して配置することが可能となるため、針管の軸心を移動部の軸心と略一致させることができる。
【0010】
針管が傾いたり、湾曲したりして針管の軸心が移動部の軸心からずれていた場合、移動部の移動に伴って針管と移動部の相対位置が変化することで、閉塞部から針管に曲げ力が付加されると共に閉塞部はこの反力を受けることとなり、閉塞部に不要な変形が生じて針管と閉塞部の間の密閉性が損なわれることがある。また、閉塞部から突出した針管が穿刺される接続相手の栓部にも針管から力が付加されることとなるため、栓部の不要な変形により閉塞部と栓部の間、または針管と栓部の間の密閉性が損なわれることがある。
【0011】
これに対し、本発明のコネクタアダプタによれば、変位制限部によって針管の軸心を移動部の軸心と略一致させることで、閉塞部および接続相手の栓部に不要な力が付加されるのを防止することが可能となるため、移送物の漏出をより確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明のコネクタアダプタにおいて、前記変位制限部は、前記閉塞部よりも硬質の材料から構成されることが好ましい。
【0013】
これによれば、針管の径方向の変位を確実に制限することができる。また、針管の後端側に軸心のずれが生じたような場合にも、このずれを変位制限部で矯正することが可能となるため、閉塞部および接続相手の栓部に不要な力が付加されないようにすることができる。
【0014】
また、本発明のコネクタアダプタにおいて、前記閉塞部は、前記針管が穿刺されることで前記開口を閉塞するように構成されることが好ましい。
【0015】
これによれば、針管と閉塞部の密着性を高め、針管の先端部の開口を確実に閉塞することができる。
【0016】
また、本発明のコネクタアダプタにおいて、前記移動部に設けられ、前記閉塞部の先端面の周縁に繋がる側面を外周側から囲むことで前記閉塞部の変形を制限する変形制限部を備えることが好ましい。
【0017】
これによれば、例えば接続相手の栓部からの押圧力が斜めに付加されたような場合にも、閉塞部が栓部から逃げるように変形するのを防止することが可能となるため、閉塞部と栓部を適切な範囲で密着させ、両者の間の密閉性を高めることができる。
【0018】
また、本発明の一態様のコネクタシステムは、前記コネクタアダプタと、前記一対の機器の他方に接続される他側接続端が接続される本体、および前記本体に設けられて前記他側接続端を閉塞する栓部を有する栓アダプタと、を備え、前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動して前記針管が前記栓部を貫通することで、前記一側接続端と前記他側接続端が連通するコネクタシステムにおいて、前記移動部は、前記閉塞部の先端面の周縁に繋がる側面を外周側から囲むことで前記閉塞部の変形を制限する変形制限部を有し、前記栓部は、前記本体から突出する突出部を有し、前記突出部は、前記閉塞部に向けて押圧されることで外周側に膨出するように変形する形状に構成されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様のコネクタシステムは、前記コネクタアダプタと、前記一対の機器の他方に接続される他側接続端が接続される本体、および前記本体に設けられて前記他側接続端を閉塞する栓部を有する栓アダプタと、を備え、前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動して前記針管が前記栓部を貫通することで、前記一側接続端と前記他側接続端が連通するコネクタシステムにおいて、前記本体は、前記栓部の前記コネクタアダプタ側の端面の周縁に繋がる側面を外周側から囲むことで前記栓部の変形を制限する変形制限部を有し、前記閉塞部は、前記移動部から突出する突出部を有し、前記突出部は、前記栓部に向けて押圧されることで外周側に膨出するように変形する形状に構成されることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
本発明の一態様のコネクタシステムによれば、閉塞部と栓部の突出部を密着させるだけでなく、突出部の変形により生じた膨出部分を移動部と栓アダプタの本体の間に挟んで圧縮することが可能となるため、閉塞部と栓部の間の密閉性を高めることができる。
【0021】
また、本発明の一態様のコネクタシステムにおいて、前記コネクタアダプタは、前記移動部を先端側に向けて付勢する付勢部を有し、前記付勢部のバネ定数は、前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動する場合に、前記針管が前記閉塞部を貫通していない状態で前記突出部の変形により膨出した部分が前記移動部と前記本体の間で圧縮されるように設定されることが好ましい。
【0022】
これによれば、閉塞部と栓部の間の密閉性が高められた後に針管を栓部に穿刺することが可能となるため、移送物の漏出をより確実に防止することができる。
【0023】
また、本発明の別態様のコネクタシステムは、前記コネクタアダプタと、前記一対の機器の他方に接続される他側接続端が接続される本体、および前記本体に設けられて前記他側接続端を閉塞する栓部を有する栓アダプタと、を備え、前記閉塞部と前記栓部が接触した状態で前記移動部が前記第1位置から前記第2位置まで移動して前記針管が前記栓部を貫通することで、前記一側接続端と前記他側接続端が連通するコネクタシステムにおいて、前記コネクタアダプタは、前記本体に係止する係止フック、および前記係止フックよりも先端側に設けられて前記本体を外周側から囲むことで前記本体を案内するガイドを有し、前記本体は、前記係止フックが係止する段差部を有し、前記ガイドは、軸方向の長さが前記本体の前記コネクタアダプタ側の端面から前記段差部までの距離以上に構成されることを特徴とする。
【0024】
本発明の別態様のコネクタシステムによれば、栓部が設けられることで必然的に大径となる栓アダプタの本体の先端側の部分を有効活用してコネクタアダプタに対して栓アダプタを適切な位置および姿勢に案内すると共に、コネクタアダプタを栓アダプタに係止させることができる。これにより、コネクタアダプタおよび栓アダプタの適切な接続を容易に行うことが可能となるため、移送物の漏出をより確実に防止することができる。
【0025】
また、本発明の別態様のコネクタシステムにおいて、前記ガイドは、前記移動部が前記第1位置にある状態で前記閉塞部と前記栓部を接触させた場合に前記段差部を囲む位置に設けられることが好ましい。
【0026】
これによれば、ガイド内に栓アダプタを挿入するだけで閉塞部と栓部を適切な状態で接触させることが可能となるため、移送物の漏出をより確実に防止することができる。
【0027】
また、本発明の別態様のコネクタシステムにおいて、前記ガイドは、前記本体と軸方向に当接することで前記コネクタアダプタの先端側に向けての移動を制限するストッパを有することが好ましい。
【0028】
これによれば、係止フックおよびストッパによってコネクタアダプタおよび栓アダプタの相対位置の変化を防止し、両者の接続状態を安定的に維持することが可能となるため、移送物の漏出をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のコネクタアダプタおよびコネクタシステムによれば、移送物の漏出をより確実に防止することが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】Aは、本発明の一実施形態であるコネクタシステムの正面図である。Bは、コネクタシステムの右側面図である。
図2】コネクタアダプタを分解して示した正面図である。
図3】Aは、コネクタアダプタの平面図である。Bは、コネクタアダプタの底面図である。
図4】コネクタアダプタの図1AにおけるI-I線部分断面図である。
図5】コネクタアダプタの図1BにおけるII-II線断面図である。
図6】Aは、移動部の平面図である。Bは、移動部の正面図である。Cは、移動部の底面図である。
図7】Aは、変位制限部の平面図である。Bは、変位制限部の正面図である。Cは、図7AのIII-III線断面図である。
図8】栓アダプタを分解して示した正面図である。
図9】Aは、栓アダプタの平面図である。Bは、栓アダプタの底面図である。
図10】栓アダプタの図1BにおけるII-II線断面図である。
図11】A~Fは、栓アダプタの変形例を示した図である。
図12】コネクタアダプタと栓アダプタの接続を示した断面図である。
図13】コネクタアダプタと栓アダプタの接続を示した断面図である。
図14】コネクタアダプタと栓アダプタの接続を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0032】
図1Aは、本発明の一実施形態であるコネクタシステム1の正面図であり、図1Bは、コネクタシステム1の右側面図である。コネクタシステム1は、例えばシリンジとバイアル瓶等の一対の機器の間に介在して使用されるものであり、一対の機器の間で移送される薬液等の移送物の外部への漏出を防止するものである。コネクタシステム1は、一対の機器の一方に接続されるコネクタアダプタ10と、他方に接続される栓アダプタ20と、から構成されている。
【0033】
図2は、コネクタアダプタ10を分解して示した正面図である。また、図3Aは、コネクタアダプタ10の平面図であり、図3Bは、コネクタアダプタ10の底面図である。また、図4は、コネクタアダプタ10の図1AにおけるI-I線部分断面図である。また、図5は、コネクタアダプタ10の図1BにおけるII-II線断面図である。本実施形態のコネクタアダプタ10は、シリンジの筒先等に設けられたオスルアーコネクタに接続されて使用されるものである。
【0034】
コネクタアダプタ10は、外筒11と、外筒11の後端側(図の上側)に配置された針基12および針基押え13と、針基12に固定された針管14と、外筒11の内部に軸方向に移動(相対移動)自在に配置される移動部15と、移動部15の先端側(図の下側)に設けられる閉塞部16と、移動部15の後端側に設けられる変位制限部17と、外筒11の内部に配置されて移動部15を先端側に向けて付勢する付勢部18と、から構成されている。なお、図4では、外筒11および針基押え13のみを断面で示している。
【0035】
外筒11は、各部を支持すると共に使用者に把持される部分である。外筒11は、例えばポリカーボネートやアクリル等の適宜の樹脂からなり、後端部が拡径された段付き円筒状に構成されている。外筒11の先端側には、左側面側および右側面側の互いに相反する位置に2つの切り欠き11aが設けられており、この切り欠き11aに対応する位置には係止部11bが左右対になって設けられている。
【0036】
係止部11bは、栓アダプタ20に係止することでコネクタアダプタ10の栓アダプタ20からの脱落を防止するものである。係止部11bは、切り欠き11aの後端寄りの位置に設けられたフランジ状のアーム11cに支持されており、主にこのアーム11cが撓むように弾性変形することで揺動するように構成されている。係止部11bの先端部には外筒11の軸心側に向けて突出する係止フック11b1が設けられている。また、係止部11bの外周側には、アーム11cよりも後端側に向けて延出する矩形板状の操作部11b2が設けられている。
【0037】
操作部11b2の外側面には、6つの滑り止め突起11b3が設けられている。この突起11b3は、軸心に直交する方向に延びるリブ状に構成されており、軸方向に沿って略等間隔で配列されている。本実施形態では、突起11b3の突出量を後端側に位置するもの程大きくすることで、使用者の揺動操作を容易化している。
【0038】
また、本実施形態では、係止フック11b1の外筒11の軸心側の先端部に、外筒11の先端側に向けて軸心から漸次離隔するように傾斜した傾斜面11b4を設けることで、係止フック11b1が栓アダプタ20の先端部と軸方向に当接して押圧された際に、一対の係止部11bが自然に押し開かれるようにし、使用者の揺動操作が補助されるようにしている。
【0039】
外筒11の切り欠き11aよりも先端側の部分は、栓アダプタ20の軸心をコネクタアダプタ10の軸心と略一致させるように案内する円筒状のガイド11dとなっている。ガイド11dの内周面は先端側が後端側より拡径されており、後端側の小径部11d1と先端側の大径部11d2から構成されている。そして、小径部11d1および大径部11d2の間の段差部(段差面)11d3は、栓アダプタ20の一部と当接することで、栓アダプタ20に対するコネクタアダプタ10の先端側に向けての移動を制限するストッパとして機能するようになっている。
【0040】
ガイド11dはまた、移動部15を保護するための保護キャップ(図示省略)が取り付けられる部分となっている。この保護キャップは、ガイド11dの先端側の開口のみを閉塞するものであってもよいし、ガイド11dの先端側の開口と共に切り欠き11aを適宜に閉塞するように構成されるものであってもよい。本実施形態では、ガイド11dをシンプルな円筒状に構成することで、汎用のキャップを使用することを可能としている。
【0041】
外筒11の後端部には、内外径が拡径された拡径部11eが設けられている。拡径部11eの外周面の左側面側および右側面側には針基押え13に係止する係止突起11e1がそれぞれ設けられている。また、拡径部11eの正面側および背面側は、矩形状に大きく切り欠かれており、その内部には、コの字状(門形状)の係止片11e2が設けられている。この係止片11e2は、針基押え13が係止される部分であると共に、軸心側に向かって突出した頂部によって針基12の後端側への移動を制限するように構成されている。
【0042】
また、拡径部11eの内側の段差部(段差面)11e3には、4つの台形状(楔状)の回り止め突起11e4が周方向に沿って配列されている。この回り止め突起11e4は、針基12の外筒11に対する平面視で(後端側から見て)時計回りの回転を制限し、平面視で反時計回りの回転を許容するように構成されている。
【0043】
外筒11の切り欠き11aと拡径部11eの間における外周面の正面側および背面側には、5つの滑り止め突起11fが設けられている。この滑り止め突起11fは、周方向に延びるリブ状に構成されており、軸方向に沿って配列されている。本実施形態では、最も先端側および最も後端側の滑り止め突起11fの周方向長さおよび突出量を他のものよりも大きくすることで、使用者が外筒11を把持して行う栓アダプタ20への接続操作および栓アダプタ20からの分離操作を容易化している。
【0044】
針基12は、針管14を支持すると共にシリンジ等の備えるオスルアーコネクタに接続される部分である。針基12は、例えばポリカーボネートやアクリル等の適宜の樹脂からなり、針管14が固定(接続)される先端側の針管固定部12aと、オスルアーコネクタが接続される後端側の一側接続端12bと、針管固定部12aの後端部から外周側に向けて延出するフランジ部12cと、から構成されている。
【0045】
針管固定部12aは、外径が先端側に向けてやや縮径する円筒状に構成されている。針管固定部12aの内部には、針管14の後端部が先端側から挿入され、適宜の接着剤で固定されている。そして、針管14の内部は、流通路12a1を介して一側接続端12bの内部と連通している。
【0046】
一側接続端12bは、例えばISO80369-7等の規格に準拠したメスルアーコネクタから構成され、針管14が接続される針基12と一体的に設けられ(接続され)ている。一側接続端12bは、円筒状に構成されており、内周面にオスルアーコネクタのオスルアーテーパ部と嵌合するメスルアーテーパ部12b1が設けられ、外周面にオスルアーコネクタの雌ネジと羅合する雄ネジ12b2が設けられている。
【0047】
フランジ部12cは、外径が外筒11の拡径部11eの内径よりもやや小さい円盤状に構成されている。針基12は、外筒11の後端側から係止片11e2を弾性変形させて外筒11内に挿入され、フランジ部12cが拡径部11e内に収容された状態で配置されている。従って、フランジ部12cの先端側面12c1が拡径部11eの段差部11e3と当接することで、針基12の先端側に向けての移動が制限され、フランジ部12cの後端側面12c2が係止片11e2および針基押え13と当接することで、針基12の後端側に向けての移動が制限されるようになっている。
【0048】
また、フランジ部12cの先端側面12c1には、4つの台形状(楔状)の回り止め突起12c3が周方向に沿って配列されている。この回り止め突起12c3は、段差部11e3に設けられた回り止め突起11e4との組み合わせでラチェット機構を構成するものである。
【0049】
すなわち、使用者は、針基12を先端側に向けて押圧することで針基12が外筒11に対して平面視で時計回りに回転するのを防止することができ、オスルアーコネクタの雌ネジを一側接続端12bの雄ネジ12b2に容易に羅合させることが可能となっている。一方、針基12が先端側に向けて押圧された状態でも、針基12の外筒11に対する平面視で反時計回りの回転は許容されるため、オスルアーコネクタが一側接続端12bに接続された状態で外筒11等に不用意な力が加えられた場合にも、オスルアーコネクタと一側接続端12bの接続は緩みにくくなっている。
【0050】
針基押え13は、例えばポリカーボネートやアクリル等の適宜の樹脂からなり、外筒11の拡径部11eを外周側から囲む外周壁13aと、拡径部11eの内側に入り込む内周壁13bと、外周壁13aおよび内周壁13bの後端部を繋ぐリング状の底壁13cと、から構成されている。
【0051】
針基押え13の正面側および背面側には、後端側から矩形状に切り欠かれた切り欠き部13dが設けられている。そして、切り欠き部13dの内部には、矩形板状の係止片13eが設けられており、拡径部11eの係止片11e2は、この係止片13eの内側面に設けられた突起に係止するようになっている。
【0052】
外周壁13aの左側面側および右側面側には、拡径部11eの係止突起11e1が係止する係止孔13fが設けられている。また、外周壁13aの内周面には、係止突起11e1の一部を収容することで針基押え13を外筒11に対して周方向に位置決めすると共に、係止突起11e1を係止孔13fに案内するための案内溝13gが設けられている。
【0053】
また、内周壁13bは、軸方向長さが外周壁13aよりも短くなっており、先端面13b1が針基12のフランジ部12cの後端側面12c2と当接することで、拡径部11eの係止片11e2と共に、針基12の後端側に向けての移動を制限するように構成されている。
【0054】
針管14は、栓アダプタ20に穿刺されることでコネクタアダプタ10および栓アダプタ20を接続する部分であり、例えばステンレス鋼等の適宜の金属からなる管状の部材から構成されている。針管14の先端部の針先14aは閉塞された円錐状に構成されている。従って、針管14には、一側接続端12bと連通する先端側の開口として側孔14bが針先14aからやや後端側の位置に設けられている。本実施形態では、側孔14bを楕円形状に構成すると共に、周縁部に適宜の丸みを設けることで栓アダプタ20への穿刺時または抜去時の引っ掛かりを抑制するようにしている。
【0055】
移動部15は、外筒11の内部において先端側の第1位置P1および後端側の第2位置P2の間を針管14に対して移動(相対移動)可能に配置されている。なお、図5は、移動部15が第1位置P1にある場合を示している。
【0056】
図6Aは、移動部15の平面図であり、図6Bは、移動部15の正面図であり、図6Cは、移動部15の底面図である。移動部15は、例えばポリカーボネートやアクリル等の適宜の樹脂からなり、段付き円筒状の移動部本体15aと、有底円筒状の移動部キャップ15bを組み合わせて構成されている。移動部15は、自身の軸心を外筒11の軸心と略一致させた状態で配置されており、自身の軸心に沿って移動可能となっている。
【0057】
移動部本体15aは、有底円筒状の摺動部15a1と、摺動部15a1から先端側に向けて突出する円筒状の篏合部15a2から構成されている。摺動部15a1の外周面には、外筒11の内周面と接触して摺動する8つの摺動突起15a3が設けられている。この摺動突起15a3は、周方向に延びる蒲鉾形状に構成されており、摺動部15a1の先端側および後端側にそれぞれ4つずつ、千鳥状に配列されている。本実施形態では、このように摺動突起15a3を設けることで摺動抵抗を低減し、移動部15を外筒11に対してスムーズに移動させることを可能としている。
【0058】
摺動部15a1の底部15a4は、先端側に設けられており、篏合部15a2はこの底部15a4に突設されている。また、底部15a4の中央部には、篏合部15a2の内径よりも小径の円形断面の貫通孔15a5が設けられており、この貫通孔15a5の外周部分は先端側に向けて円筒状に突出している。摺動部15a1の先端側にはまた、移動部キャップ15bの4つの係止片15b1の先端部が係止する4つの係止孔15a6が設けられている。
【0059】
篏合部15a2は、移動部キャップ15bが外篏される部分である。篏合部15a2の外周面には、係止片15b1の内側部分を収容することで、移動部キャップ15bを移動部本体15aに対して周方向に位置決めすると共に、係止片15b1の先端部を係止孔15a6に案内するための4つの案内溝15a7が設けられている。
【0060】
移動部キャップ15bは、円筒状の筒部15b2と、筒部15b2の先端側に設けられた底部15b3と、から構成されている。筒部15b2には後端側から矩形状に切り欠かれた4つの切り欠き部15b4が設けられており、係止片15b1は、この切り欠き部15b4から後端側に向けて突出するように設けられている。また、係止片15b1の先端部は外周側に向けて突出したフック状に構成されている。移動部キャップ15bの底部15b3の中央部には、円形断面の貫通孔15b5が設けられており、この貫通孔15a5の外周部分は先端側に向けて円筒状に突出している。
【0061】
移動部キャップ15bは、筒部15b2が移動部本体15aの篏合部15a2に外嵌されると共に、係止片15b1が係止孔15a6に係止することで、移動部本体15aに取り付けられている。そして、移動部本体15aおよび移動部キャップ15bにより形成される先端側の内部空間は、閉塞部16を収容する空間となっている。
【0062】
なお、図4に示されるように、外筒11の内周面の正面側および背面側には、摺動部15a1と当接することで、移動部15の第1位置P1よりも先端側への移動を防止するストッパとして機能する当接片11gが設けられている。
【0063】
閉塞部16は、針管14の先端部が穿刺されることで側孔14bを覆って閉塞する部分である。本実施形態では、中実の閉塞部16に針管14を穿刺するようにすることで、針管14と閉塞部16の密着性を高め、側孔14bが確実に閉塞されるようにしている。
【0064】
閉塞部16は、例えばシリコーンゴムや熱可塑性エラストマー等、移動部15よりも軟質な適宜の弾性材料からなる段付き円柱状の部材であり、大径の円柱状の中間円柱部16aと、中間円柱部16aから先端側に向けて突出する小径の円柱状の先端側円柱部16bと、中間円柱部16aから後端側に向けて突出する小径の円柱状の後端側円柱部16cと、から構成されている。
【0065】
中間円柱部16aの軸方向の中間部分には、外径を部分的に縮径した縮径部16a1が設けられている。そして、縮径部16a1における外径は、篏合部15a2および移動部キャップ15bの内径より小さく設定され、縮径部16a1よりも先端側および後端側の外径は、篏合部15a2および移動部キャップ15bの内径より大きく設定されている。本実施形態では、中間円柱部16aをこのように構成することで、移動部15と閉塞部16の密着性と組立性を両立させるようにしている。
【0066】
中間円柱部16aの先端面16a2には、中央部に先端側円柱部16bが突設されると共に、周縁部に円筒状の先端側周壁部16a3が突設されている。同様に、中間円柱部16aの後端面16a4には、中央部に後端側円柱部16cが突設されると共に、周縁部に円筒状の後端側周壁部16a5が突設されている。
【0067】
先端側周壁部16a3および後端側周壁部16a5は、移動部キャップ15bの底部15b3および摺動部15a1の底部15a4と係合するように構成されている。本実施形態では、底部15b3と係合する先端側周壁部16a3を設けることで、針管14の栓アダプタ20への穿刺時に先端側円柱部16bが先端側に移動するように閉塞部16が変形(主に弾性変形)するのを抑制している。また、底部15a4と係合する後端側周壁部16a5を設けることで、針管14の栓アダプタ20からの抜去時に後端側円柱部16cが後端側に移動するように閉塞部16が変形するのを抑制している。
【0068】
先端側円柱部16bは、移動部キャップ15bの底部15b3に設けられた貫通孔15b5内に収容されるように構成されている。先端側円柱部16bの外径は、貫通孔15b5の内径よりもやや大きく設定されており、これにより先端側円柱部16bの外周面16b1は、貫通孔15b5の内周面に適宜に密着するようになっている。
【0069】
また、先端側円柱部16bの突出量は、移動部15内に収容された状態で先端面16b2が底部15b3の先端面15b6よりもやや後端側または先端面15b6と略同一平面状に位置するように構成されている。なお、先端側円柱部16bの先端面16b2および底部15b3の先端面15b6は、軸心に対して略直交する平面状に構成されている。
【0070】
本実施形態では、移動部キャップ15bの底部15b3を先端面16b2の周縁に繋がる側面である外周面16b1を外周側から囲むように構成することで、先端側円柱部16bと栓アダプタ20の接触時および針管14の栓アダプタ20への穿刺時に生じる先端側円柱部16bの変形(主に弾性変形)を制限するようにしている。すなわち、底部15b3は、閉塞部16の変形を制限する変形制限部19として機能するように構成されている。
【0071】
先端側円柱部16bと同様に、後端側円柱部16cは、摺動部15a1の底部15a4に設けられた貫通孔15a5内に収容されるように構成されると共に、外径が貫通孔15a5の内径よりもやや大きく設定されている。これにより、後端側円柱部16cの外周面16c1は、貫通孔15a5の内周面に適宜に密着するようになっている。
【0072】
また、後端側円柱部16cの突出量は、移動部15内に収容された状態で後端面16c2が底部15a4の後端面15a8よりもやや先端側または後端面15a8と略同一平面状に位置するように設定されている。なお、後端側円柱部16cの後端面16c2および底部15a4の後端面15a8は、軸心に対して略直交する平面状に構成されている。
【0073】
すなわち、本実施形態では、摺動部15a1の底部15a4を後端面16c2の周縁に繋がる側面である外周面16c1を外周側から囲むように構成することで、コネクタアダプタ10の組立時に針管14を閉塞部16に穿刺する際に生じる後端側円柱部16cの変形(主に弾性変形)を制限するようにしている。すなわち、底部15a4は、閉塞部16の変形を制限する補助変形制限部19aとして機能するように構成されている。
【0074】
閉塞部16は、移動部15が第1位置P1にある場合に針管14が貫通しない位置に配置されている。そして、移動部15を第2位置P2に向けて移動させることで針管14は閉塞部16を貫通し、これにより側孔14bが露出されるようになっている。
【0075】
なお、本実施形態では、移動部15内に配置される閉塞部16および後述する変位制限部17を対称形に構成することで、閉塞部16および変位制限部17の方向性を無くし、組立性を向上させている。
【0076】
変位制限部17は、針管14の径方向(軸心に垂直な方向)の変位を制限することで、移動部15に対する針管14の軸心のずれを抑制するための部分である。変位制限部17は、移動部本体15aの摺動部15a1内に収容されている。
【0077】
図7Aは、変位制限部17の平面図であり、図7Bは、変位制限部17の正面図であり、図7Cは、図7AのIII-III線断面図である。変位制限部17は、例えばポリプロピレンやポリエチレン等、閉塞部16よりも硬質な適宜の樹脂からなり、小径の円筒状の挿通部17aと、挿通部17aを外周側から囲む大径の円筒状の支持部17bと、挿通部17aと支持部17bを接続する4つの平板状のリブ17cと、から構成されている。
【0078】
挿通部17aは、針管14が挿入される部分である。すなわち、変位制限部17は、挿通部17aによって針管14を外周側から囲むことによって針管14の径方向の変位を制限するように構成されている。
【0079】
挿通部17aの内周面は、内径が軸方向において略一定の等径部17a1と、等径部17a1よりも軸方向の両端側に設けられて両端側に向けて漸次拡径するテーパ部17a2と、から構成されている。このうち、等径部17a1が針管14の径方向の変位を制限する部分であり、テーパ部17a2は、針管14の挿入を容易化するための部分である。
【0080】
等径部17a1の内径D1は、針管14の外径よりもやや大きく設定されている。具体的に本実施形態では、等径部17a1の内径D1を針管14の外径の約110%に設定している。また、本実施形態では、等径部17a1の軸方向長さL1を針管14の外径の約740%に設定している。
【0081】
支持部17bは、外周面17b1が摺動部15a1の内周面と接触することで、摺動部15a1に支持される部分である。支持部17bの外径は、摺動部15a1の内径よりもやや小さく設定されており、支持部17bの軸方向長さは、挿通部17aよりも短く設定されている。また、外周面17b1の軸方向の両端部には、両端側に向けて漸次縮径するテーパ部17b2が設けられている。
【0082】
本実施形態では、支持部17bをこのように構成することで、変位制限部17が移動部15の軸心に対して斜めに固定されるのを防止しつつ、変位制限部17の摺動部15a1内への容易且つスムーズな挿入、すなわち良好な組み立て性を実現している。
【0083】
リブ17cは、周方向において等間隔で配置されており、外径が小径に構成された挿通部17aを補強すると共に、挿通部17aと支持部17bを接続するために設けられている。本実施形態では、このような構成とすることで、変位制限部17の各部の肉厚を調整し、樹脂成形時に生じ得るヒケやボイドといった成形不良を防止するようにしている。これにより、挿通部17aの内径および支持部17bの外径を高精度に成形し、移動部15に対する針管14の軸心のずれを適切に抑制することが可能となる。
【0084】
図5に示されるように、変位制限部17は、閉塞部16よりも後端側、すなわち針管14が穿刺される側に設けられているため、コネクタアダプタ10の組み立て時に針管14は、変位制限部17内に挿通された状態で閉塞部16に穿刺されることとなる。
【0085】
これにより、針管14および針基12の軸心は移動部15の軸心と略一致した状態となるため、移動部15の外筒11内での移動に伴って閉塞部16から針管14等に曲げ力が付加されるようなことはなく、移動部15をスムーズに移動させることが可能となっている。また、閉塞部16および栓アダプタ20が針管14から不要な反力を受けることもないため、閉塞部16等の不要な変形を防止し、密閉性を高めることが可能となっている。
【0086】
なお、等径部17a1の内径D1は、十分な密閉性の確保と、製造コスト、組立性および操作性(移動部15のスムーズな移動)を並立させるためには、針管14の外径の105%以上115%以下であることが好ましく、107%以上113%以下であればより好ましい。同様に、等径部17a1の軸方向長さL1は、針管14の外径の500%以上900%以下であることが好ましく、600%以上800%以下であればより好ましい。
【0087】
また、変位制限部17は、必ずしも閉塞部16よりも硬質な材料から構成される必要はないが、本実施形態では変位制限部17を閉塞部16よりも硬質な材料から構成することで、針管14の径方向の変位を確実に制限することを可能としている。また、変位制限部17を閉塞部16よりも硬質な材料から構成することで、針基12側に軸心のずれが生じたような場合にも、このような傾き等を変位制限部17で矯正することが可能となるため、閉塞部16等に不要な力が付加されるのを確実に防止することができる。
【0088】
付勢部18は、例えばステンレス鋼等の適宜の金属からなる圧縮コイルバネから構成されている。付勢部18は、移動部15の移動部本体15aと針基12のフランジ部12cの間に配置されている。従って、付勢部18は、移動部15を先端側に向けて付勢すると共に、針基12を後端側に向けて付勢するようになっている。
【0089】
付勢部18の自由長は、第1位置P1にある移動部15と最も後端側に位置する針基12のフランジ部12cの間の距離よりもやや長く設定されている。従って、付勢部18の付勢力は常に移動部15および針基12に付加されており、これにより、移動部15が当接片11gに当接して第1位置P1に位置すると共に、針基12が係止片11e2および針基押え13と当接して最も後端側に位置する状態が維持されるようになっている。
【0090】
なお、本実施形態では、コネクタアダプタ10のうち金属製の針管14および付勢部18以外の部分を、光が透過可能な透明または半透明の材料から構成することで、内部の構造を外部から観察することが可能としている。すなわち、本実施形態のコネクタアダプタ10は、使用時に移動部15および付勢部18の動作状態を使用者が目視可能となっており、不具合等が生じた場合にも迅速に確認、対処することが可能となっている。
【0091】
図8は、栓アダプタ20を分解して示した正面図である。また、図9Aは、栓アダプタ20の平面図であり、図9Bは、栓アダプタ20の底面図である。また、図10は、栓アダプタ20の図1BにおけるII-II線断面図である。本実施形態の栓アダプタ20は、バイアル瓶に接続されるバイアルアダプタに設けられたメスルアーコネクタや、輸液ライン等に設けられたメスルアーコネクタに接続されて使用されるものである。なお、バイアルアダプタとは、バイアル瓶内と連通されるバルーン型やベローズ型等の均圧化装置を備え、バイアル瓶内の気体を外部に排出することなくバイアル瓶内への液体の注入を可能とするためのアダプタである。
【0092】
栓アダプタ20は、段付き円筒状の筒体21と、筒体21の先端部(図の上側の端部)に取り付けられるキャップ22と、筒体21の先端部に設けられる栓部23と、から構成されている。また、筒体21およびキャップ22を組み合わせることで、栓アダプタ本体20aが構成されている。
【0093】
筒体21は、例えばポリカーボネートやアクリル等の適宜の樹脂からなり、先端側の栓部装着部21aと、栓部装着部21aの後端側(図の下側)のキャップ装着部21bと、キャップ装着部21bの後端側の被係止部21cと、被係止部21cの後端側のくびれ部21dと、くびれ部21dの後端側の他側接続端21eと、筒体21を軸方向に貫通する流通路21fと、から構成されている。
【0094】
栓部装着部21aは、栓部23の一部が外篏される部分であり、外径が略一定の円筒状に構成されている。また、栓部装着部21aの先端面21a1の周縁部には、横断面が半円形状に構成されて周方向に連続する環状突起21a2が設けられている。また流通路21fの一部を構成する栓部装着部21aの内周面は、先端側に向けて漸次拡径する後端側のテーパ部21a4と、テーパ部21a4の先端側の大径部21a5と、から構成されている。すなわち、流通路21fの先端側の部分は、後端側の部分よりも拡径されている。
【0095】
キャップ装着部21bは、キャップ22が装着される部分であり、外径が栓部装着部21aよりも大径に構成されている。キャップ装着部21bの外周面21b1は、キャップ22の装着を容易化すべく、外径が先端側に向けて僅かに漸次縮径する円筒状に構成されている。また、外周面21b1の左側面側および右側面側の互いに相反する位置には、キャップ22に係止する係止突起21b2が設けられている。
【0096】
被係止部21cは、コネクタアダプタ10の係止部11bが係止する部分であり、外径がキャップ装着部21bよりも大径に構成されている。具体的に被係止部21cは、後端側のくびれ部21dとの段差部(段差面)21c1に係止部11bの係止フック11b1が係止することで、コネクタアダプタ10および栓アダプタ20が互いに離隔する方向に移動するのを防止するように構成されている。本実施形態では、栓部23を設けることで必然的に大径となる栓アダプタ20の先端側部分を有効活用して、被係止部21cを構成している。
【0097】
被係止部21cの外周面21c2は、軸方向において略一定の外径に構成されている。また、被係止部21cの外周面21c2と段差部21c1は、丸み部21c3を介して滑らかに連続している。これにより、係止フック11b1は、外周面21c2から段差部21c1にスムーズに誘導されて係止することが可能となっている。被係止部21cはまた、キャップ22の後端側に向けての移動を制限するストッパとしても機能している。
【0098】
くびれ部21dは、段差部21c1を形成すると共に、筒体21の肉厚を調整して成形不良を防止するための部分である。くびれ部21dは、外径が栓部装着部21aよりも小径の円筒状の中央円筒部21d1と、中央円筒部21d1の外周面に設けられた4つの平板状の補強リブ21d2と、から構成されている。補強リブ21d2は、周方向において等間隔で配置され、軸方向に延びるように構成されている。
【0099】
また、補強リブ21d2の外周側に向けての突出量は、係止フック11b1と干渉しない突出量に設定されている。すなわち、係止フック11b1の係止位置は、周方向において限定されないようになっている。
【0100】
他側接続端21eは、例えばISO80369-7等の規格に準拠したオスルアーコネクタから構成されている。他側接続端21eは、筒体21と一体的に設けられ(接続され)ており、円筒状の挿入部21e1と、被係止部21cよりも大径の有底円筒状のロック部21e2と、から構成されている。挿入部21e1の内周面は、流通路21fの一部を構成しており、外周面には、メスルアーコネクタのメスルアーテーパ部と嵌合するオスルアーテーパ部21e3が設けられている。
【0101】
ロック部21e2の内周面には、メスルアーコネクタの雄ネジと羅合する雌ネジ21e4が設けられている。ロック部21e2の外周面には、外周面を周方向において断続的に窪ませることで形成された、6つの滑り止めリブ21e5が設けられている。また、ロック部21e2の外周面の先端側には、コネクタアダプタ10のガイド11dの段差部11d3と軸方向に当接する傾斜当接面21e6が設けられている。この傾斜当接面21e6は、先端側に向けて漸次縮径するテーパ状に構成されている。
【0102】
キャップ22は、例えばポリカーボネートやアクリル等の適宜の樹脂からなり、円筒状の筒部22aと、筒部22aの先端側に設けられた底部22bと、から構成されている。筒部22aの内周面22a1は、後端側の部分がキャップ装着部21bの外周面21b1に沿うまたは篏合するテーパ状に構成されると共に、先端側の部分が栓部装着部21aとの間に栓部23の一部を適宜に拘束して収容する空間を形成する形状に構成されている。
【0103】
また、筒部22aの外周面22a2は、先端側に向けて漸次縮径するテーパ状に構成されると共に、後端側の最大外径が被係止部21cの外周面21c2の外径と略同一に設定され、被係止部21cの外周面21c2と略連続するように構成されている。すなわち、筒部22aの外周面22a2および被係止部21cの外周面21c2は、コネクタアダプタ10と栓アダプタ20の接続時に、2つの係止フック11b1と当接して一対の係止部11bを押し開く面として構成されている。
【0104】
筒部22aの後端側における左側面側および右側面側の互いに相反する位置には、係止突起21b2が係止する係止孔22a3が設けられている。また、筒部22aの内周面22a1には、係止突起21b2の一部を収容することでキャップ22を筒体21に対して周方向に位置決めすると共に、係止突起21b2を係止孔22a3に案内するための案内溝22a4が設けられている。
【0105】
底部22bの中央部には、栓部23の一部が挿通される円形断面の貫通孔22b1が設けられている。この貫通孔22b1の外周部分は、後端側に向けて円筒状に突出しており、栓部23と係合するように構成されている。また、栓アダプタ本体20aのコネクタアダプタ10側の端面となる底部22bの先端面22b2は、丸み部22b3を介して筒部22aの外周面22a2と滑らかに連続している。
【0106】
栓部23は、流通路21fの先端側の開口を閉塞することで他側接続端21eを閉塞すると共に、コネクタアダプタ10と栓アダプタ20の接続時に針管14が穿刺される部分である。栓部23は、例えばシリコーンゴムや熱可塑性エラストマー等、筒体21およびキャップ22よりも軟質の適宜の弾性材料からなり、円筒状の円筒部23aと、円筒部23aの先端側を閉塞するように設けられた円盤状の円盤部23bと、円盤部23bから先端側に向けて突設された円柱状の円柱部23cと、から構成されている。
【0107】
円筒部23aは、栓部装着部21aが内部に挿入され、栓アダプタ本体20aに支持される部分である。円筒部23aの内径は、栓部装着部21aの外径と略同一に設定されている。また、円筒部23aの外径は、キャップ22の対応する部分の内径と略同一に設定されている。
【0108】
円盤部23bは、栓部装着部21aの先端面21a1と密着して流通路21fを閉塞する部分である。円盤部23bの先端面23b1は、キャップ22の底部22bと係合するように、円筒部23aの先端面23a1よりも後端側に位置している。また、円盤部23bの後端面23b2は、キャップ22に押さえられることで、栓部装着部21aの先端面21a1と密着すると共に、環状突起21a2の食い込みにより弾性変形することで、栓部装着部21aと係合する環状溝23b3が形成されるようになっている。
【0109】
円柱部23cは、円盤部23bの先端面23b1の中央部に突設されており、外径D2が貫通孔22b1の内径よりもやや大きく設定されている。円柱部23cは、キャップ22の貫通孔22b1内に収容される後端側の非突出部23c1と、キャップ22の外部に突出する先端側の突出部23c2と、から構成されている。
【0110】
非突出部23c1は、貫通孔22b1内において径方向に圧縮され、弾性変形した状態で配置されている。従って、栓部23のうち、円筒部23a、円盤部23bおよび非突出部23c1は、適宜に弾性変形すると共に、栓部装着部21aおよびキャップ22と係合した状態で栓アダプタ本体20a内に収容されている。これにより、針管14が穿刺または抜去される際の栓部23の不要な変形(主に弾性変形)が抑制され、栓部23の密閉性が高められるようになっている。
【0111】
さらに、本実施形態では、栓部装着部21aの大径部21a5(流通路21fの先端)の内径を、円柱部23cの外径および貫通孔22b1の内径よりも小さく設定することで、針管14の穿刺時における円盤部23bおよび円柱部23cが大径部21a5内へ沈み込むように(後端側に向けて移動するように)弾性変形するのを抑制している。これにより、本実施形態における栓部23の密閉性は、より高められている。
【0112】
突出部23c2は、キャップ22の底部22bの先端面22b2から突出する部分であり、コネクタアダプタ10の閉塞部16および移動部15と接触する部分である。突出部23c2の外径(すなわち、円柱部23cの外径)D2は、移動部キャップ15bの貫通孔15b5の内径よりも小さく、且つキャップ22の貫通孔22b1よりも大きく設定されている。突出部23c2の(円柱部23cの)先端面23c3は、軸心に対して略直交する平面状に構成されており、周縁の丸み部23c4を介して外周面23c5と滑らかに連続している。
【0113】
また、本実施形態では、突出部23c2の軸方向長さL2を外径D2の約75%に設定することで、突出部23c2が閉塞部16に向けて押圧されて軸方向に圧縮変形(主に弾性変形)した場合に外周面23c5が外周側に向けて膨出するようにし、これにより閉塞部16との間の密閉性を高めるようにしている。
【0114】
突出部23c2の軸方向長さL2は、栓部23を構成する材料にもよるが、例えば材料がシリコーンゴムである場合、突出部23c2を適切に変形させて密着性を高めるためには、外径D2の50%以上100%以下であることが好ましく、70%以上80%以下であればより好ましい。
【0115】
なお、本実施形態では、コネクタアダプタ10と同様に栓アダプタ20を、光が透過可能な透明または半透明の材料から構成することで、針管14の穿刺状態を使用者が外部から確認することを可能としている。
【0116】
また、本実施形態では、キャップ22の筒部22aの外周面22a2のテーパ角度を約4°に設定しているが、外周面22a2のテーパ角度は、これに限定されるものではなく、その他の角度であってもよい。
【0117】
図11A~Fは、栓アダプタ20の変形例を示した図である。このうち、図11A~Cは、キャップ22の筒部22aの外周面22a2のテーパ角度を約11°に設定した例を示している。また、図11D~Fは、キャップ22の筒部22aの外周面22a2のテーパ角度を約0°(すなわち、軸方向において略一定の外径)に設定した例を示している。
【0118】
なお、図11AおよびDは栓アダプタ20の変形例の平面図であり、図11BおよびEは栓アダプタ20の変形例の正面図であり、図11CおよびFは栓アダプタ20の変形例の右側面図である。また、これらの変形例の底面図は、図9Bと同一となる。
【0119】
図11A~Cに示されるように、筒部22aの外周面22a2のテーパ角度を大きめに設定することで、一対の係止部11bの押し開きに要する力を軽減し、コネクタアダプタ10と栓アダプタ20の接続を容易化することができる。また、図11D~Fに示されるように、筒部22aの外周面22a2を軸方向において略一定の外径に構成することで、接続時にコネクタアダプタ10と栓アダプタ20の軸心をより高精度に一致させ、閉塞部16と栓部23を適切に接触させることができる。
【0120】
上述のように、筒部22aの外周面22a2のテーパ角度は、特に限定されるものではないが、接続の容易性と閉塞部16と栓部23の適切な接触を両立させるためには、0°以上12°以下であることが好ましく、2°以上6°以下であればより好ましい。
【0121】
また、図11A~Cに示されるように、筒部22aの外周面22a2だけでなく、被係止部21cの外周面21c2も先端側に向けて漸次縮径するテーパ状に構成するようにしてもよい。また、係止フック11b1をスムーズに誘導するためには、筒部22aの外周面22a2と被係止部21cの外周面21c2の間に段差を設けないことが好ましいが、係止フック11b1に設けた傾斜面11b4等によって乗り越え可能であれば、段差を設けるようにしてもよい。
【0122】
また、図示は省略するが、図11D~Fに示される例において、キャップ22に大きめの丸み部22b3を設けることで、一対の係止部11bの押し開きに要する力を軽減するようにしてもよいし、筒部22aの外周面22a2の先端側を部分的にテーパ状に構成するようにしてもよい。
【0123】
図12~14は、コネクタアダプタ10と栓アダプタ20の接続を示した断面図であり、図1BのII-II線断面図である。コネクタアダプタ10と栓アダプタ20の接続では、使用者はまず図12に示されるように、コネクタアダプタ10および栓アダプタ20を軸方向において相対的に近接させて、栓アダプタ20の先端側(図の上側)の部分をコネクタアダプタ10のガイド11d内に挿入し、栓部23の突出部23c2の先端面23c3を、閉塞部16の先端側円柱部16bの先端面16b2に接触させる。
【0124】
このとき、栓アダプタ20は、栓アダプタ本体20aの先端側の部分がガイド11dによって適宜に案内され、コネクタアダプタ10に対する軸心のずれが抑制されるため、栓部23の突出部23c2の先端面23c3を、閉塞部16の先端側円柱部16bの先端面16b2に適切に接触させることが可能となっている。
【0125】
すなわち、本実施形態では、栓部23を収容することで必然的に大径となる栓アダプタ本体20aの先端側の部分を有効活用することで、コネクタアダプタ10に対して栓アダプタ20を適切な位置および姿勢に案内するようにしている。
【0126】
本実施形態ではさらに、ガイド11dの軸方向長さL3を、栓アダプタ本体20aにおけるキャップ22の底部22bの先端面22b2から被係止部21cの段差部21c1までの距離L4以上に設定することで、ガイド11dの内周面と栓アダプタ本体20aの間に適度な隙間を確保し、ガイド11d内への栓アダプタ20の容易な挿入を可能としながらも、栓アダプタ20の案内が適切になされるようにしている。
【0127】
本実施形態ではまた、栓部23と閉塞部16を接触させた状態で段差部21c1を囲む位置にガイド11dを設けることで、栓部23と閉塞部16が接触するまで確実に栓アダプタ20を案内することを可能としている。また、ガイド11dの内周面を小径部11d1および大径部11d2から構成し、ガイド11dの内周面の後端側(図の上側)の内径を先端側よりも小さくすることで、栓アダプタ本体20aの先端側の部分をテーパ状に構成しながらも、案内が適切になされるようにしている。
【0128】
栓部23と閉塞部16を接触させたならば、使用者は次に図13に示されるように、一対の係止部11bを押し開きつつ、さらにコネクタアダプタ10および栓アダプタ20を相対的に近接させ、栓アダプタ20によって移動部15を押圧して第1位置P1から第2位置P2に向けて移動させる。
【0129】
このとき、栓部23の突出部23c2は、閉塞部16に向けて押圧されることで、閉塞部16との密着性を高めつつ軸方向に潰れると共に、外周側、すなわち移動部15の変形制限部19とキャップ22の底部22bの先端面22b2の間に膨出するように変形する。なお、本実施形態では、栓部23の円柱部23cを貫通孔22b1よりも大径に構成し、貫通孔22b1内の非突出部23c1を圧縮変形させて円柱部23cに段差を形成することで、栓部23の栓アダプタ本体20a内への沈み込みを抑制し、突出部23c2の外周側への膨出が生じやすいようにしている。
【0130】
一方、閉塞部16の先端側円柱部16bは、変形制限部19によって拘束されることで変形が制限されるようになっているため、例えば押圧力が軸心に対して斜めに付加されたような場合にも、突出部23c2から逃げる(相対位置がずれる)ような変形が生じないようになっている。
【0131】
すなわち、本実施形態では、互いに接触する弾性材料である栓部23の突出部23c2および閉塞部16の先端側円柱部16bの変形の自由度を異ならせることで、両者を適切な範囲で密着させることを可能とし、これにより両者の間の密閉性を高めるようにしている。
【0132】
移動部15の移動に伴って、針管14の穿刺量は徐々に増大することとなる。また、付勢部18の圧縮量が増大することで付勢部18の付勢力も徐々に増大するため、栓部23の突出部23c2の変形量も徐々に増大する。そして、栓部23の突出部23c2は、最終的に変形制限部19とキャップ22の底部22bの先端面22b2の間に膨出した部分が、変形制限部19と栓アダプタ本体20aに挟まれて圧縮された状態となる。
【0133】
本実施形態では、このように栓部23の突出部23c2の膨出部分を変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間に挟んで圧縮するようにすることで、栓部23と閉塞部16の間の密閉性をより高めるようにしている。
【0134】
栓部23の突出部23c2を予め閉塞部16の先端側円柱部16bよりも大径に構成した場合、栓部23と閉塞部16が適切に密着していない状態で、突出部23c2の外周部分が変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間で圧縮される可能性がある。これに対し、突出部23c2の変形により膨出した部分を変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間に挟むようにすることで、栓部23と閉塞部16が適切に密着した状態で突出部23c2の一部を変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間で圧縮することができる。これにより、栓部23と閉塞部16の間の密閉性をさらに高めることが可能となる。
【0135】
また、栓部23の突出部23c2の膨出部分を変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間に挟んで圧縮することで、針管14が栓部23に穿刺される際の突出部23c2の変形を制限することができるため、針管14の穿刺時の変形に起因する密閉性の低下を防止することが可能となる。
【0136】
さらに本実施形態では、栓部23の材質および形状に対して付勢部18のバネ定数を適宜に設定することで、針管14が栓部23に到達する前の時点、すなわち針管14が閉塞部16を貫通していない状態で、突出部23c2が十分に変形してその一部が変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間で圧縮されるようにしている。すなわち、針管14は、突出部23c2が閉塞部16と適切に密着し、且つ変形が制限された状態の栓部23に穿刺されるようになっており、針管14内の薬液等の外部への漏出がより確実に防止されるようになっている。
【0137】
また、針管14の軸心は、変位制限部17によって移動部15の軸心と略一致した状態となっており、移動部15と針管14の相対位置が変化しても針管14に曲げ力が付加されるようなことはないため、針先14aは閉塞部16から突出した後も径方向にぶれる(変位する)ようなことはなく、軸心と略一致した状態に維持されるようになっている。
【0138】
従って、針管14が栓部23に到達した後も、針管14から栓部23へ径方向の力が付加されるようなことはなく、針管14から付加される力によって栓部23が変形することで栓部23と閉塞部16の間の密閉性が損なわれるような事態は、生じないようになっている。
【0139】
使用者がコネクタアダプタ10および栓アダプタ20を相対的にさらに近接させ、図14に示されるように、係止部11bの係止フック11b1を被係止部21cの段差部21c1に係止させることで、コネクタアダプタ10および栓アダプタ20の接続が完了する。
【0140】
この状態では、移動部15は第2位置P2に位置し、針管14は栓部23を貫通して側孔14bが流通路21f内に配置される。すなわち、一側接続端12bおよび他側接続端21eが針管14を介して連通され、両者の間で薬液等の移送が可能な状態となる。
【0141】
この状態ではまた、ガイド11dが他側接続端21eのロック部21e2を外周側から囲み、内周面の段差部11d3が他側接続端21eの傾斜当接面21e6に略当接した状態となる。従って、コネクタアダプタ10および栓アダプタ20の軸方向の相対位置は、係止部11bおよび被係止部21cならびにガイド11dおよび他側接続端21eによって略固定され、接続状態が安定的に維持されるようになっている。
【0142】
コネクタアダプタ10および栓アダプタ20を分離する(接続を解除する)場合、使用者は、係止部11bの操作部11b2を押圧して係止部11bおよび被係止部21cの係止を解除した上で、コネクタアダプタ10および栓アダプタ20を軸方向において相対的に離隔させる。
【0143】
このとき、移動部15は、付勢部18の付勢力により、栓部23と閉塞部16の密着性を維持した状態で第2位置P2から第1位置P1に向けて移動することとなる。これにより、針管14は、栓部23と閉塞部16の間の密閉性が維持された状態で、栓部23から離脱し、側孔14bが閉塞部16によって閉塞された状態に復帰する。また、針管14の穿刺により栓部23および閉塞部16に形成された孔は、それぞれの弾性変形の復元力によって閉塞される。すなわち、コネクタアダプタ10および栓アダプタ20の分離時にも、針管14内および栓アダプタ20内からの薬液等の漏出がより確実に防止されるようになっている。
【0144】
特に本実施形態では、上述した付勢部18のバネ定数の設定により、針管14の針先14aが閉塞部16内に位置するまで、突出部23c2の膨出部分が変形制限部19と栓アダプタ本体20aの間で圧縮された状態に維持されるため、最も密閉性が損なわれやすい針管14の栓部23からの抜去時においても、密閉性が確実に維持されるようになっている。
【0145】
なお、変位制限部17は、移動部15と一体的に設けられるものであってもよい。また、複数の変位制限部17を軸方向に沿って配置するようにしてもよい。また、閉塞部16は、針管14の先端部を収容する穴が予め形成されたものであってもよい。また、針管14は、側孔14bを有するものに限定されず、例えば先端側の開口が刃面に設けられたものであってもよい。
【0146】
また、突出部23c2は、非突出部23c1と異なる外径に構成されるものであってもよい。また、突出部23c2は、例えば多角柱状等に構成されるものであってもよい。また、閉塞部16の先端側円柱部16bの先端面16b2および突出部23c2の先端面23c3は、曲面状に構成されるものであってもよい。
【0147】
また、栓部23から突出部23c2を省略し、閉塞部16の先端側円柱部16bを、突出部23c2を有する円柱部23cと同様に構成するようしてもよい。この場合、キャップ22の底部22bが変形制限部19として機能する共に、先端側円柱部16bにおける移動部15から突出した部分が外周側に膨出するように変形するため、栓部23に突出部23c2を設けた態様と同様の効果を奏することができる。
【0148】
また、ガイド11dは、傾斜当接面21e6に当接するストッパとして適宜の突起等を備えるものであってもよいし、先端面が傾斜当接面21e6に当接するように構成されたものであってもよい。
【0149】
また、一側接続端12bは、チューブ等を介して針基12に接続されるものであってもよいし、オスルアーコネクタから構成されるものであってもよいし、ルアーコネクタ以外のコネクタから構成されるものであってもよい。一側接続端12bはまた、チューブやパイプ等が接着されるものであってもよいし、シリンジ等の他の機器と一体的に接続されるものであってもよい。
【0150】
同様に、他側接続端21eは、チューブ等を介して筒体21に接続されるものであってもよいし、メスルアーコネクタから構成されるものであってもよいし、ルアーコネクタ以外のコネクタから構成されるものであってもよい。他側接続端21eはまた、チューブやパイプ等が接着されるものであってもよいし、バイアルアダプタ等の他の機器と一体的に接続されるものであってもよい。
【0151】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のコネクタアダプタおよびコネクタシステムは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、コネクタシステム1の各部の形状および配置は、上述の実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。また、コネクタシステム1の各部の材料は、光を透過しないものであってもよい。
【0152】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0153】
1 コネクタシステム
10 コネクタアダプタ
11b1 係止フック
11d ガイド
11d3 ガイドの段差部
12b 一側接続端
14 針管
14b 側孔
15 移動部
16 閉塞部
16b1 閉塞部の先端側円柱部の外周面
16b2 閉塞部の先端側円柱部の先端面
17 変位制限部
18 付勢部
19 変形制限部
20 栓アダプタ
20a 栓アダプタ本体
21c1 被係止部の段差部
21e 他側接続端
23 栓部
23c2 突出部
22b2 キャップの底部の先端面
P1 第1位置
P2 第2位置
L3 ガイドの軸方向長さ
L4 キャップの底部の先端面から被係止部の段差部までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14