(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165352
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】プレキャストPC部材の緊張方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20221024BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20221024BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20221024BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D19/12
E01D22/00 Z
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070720
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】福島 万貴
(72)【発明者】
【氏名】大西 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】細居 清剛
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】2つのPC部材の間に設置されるPC部材であっても緊張することが可能となるプレキャストPC部材の緊張方法を提供する。
【解決手段】プレキャスト部材にプレストレスを付与するためのプレキャストPC部材の緊張方法であって、プレキャスト部材である第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20に貫通された第2緊張材23と、を接続し、第1床版10の第1緊張材12の他端部14と、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置される第3床版20に貫通された第3緊張材32と、を接続する接続工程と、第1緊張材12を緊張する緊張工程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材にプレストレスを付与するためのプレキャストPC部材の緊張方法であって、
プレキャスト部材である第1部材に貫通された第1緊張材の一端部を第2部材に貫通された第2緊張材に接続するとともに、当該第1緊張材の他端部を前記第1部材を挟んで前記第2部材の反対側に配置される第3部材に貫通された第3緊張材に接続する接続工程と、
前記第1緊張材を緊張する緊張工程と、を備えること
を特徴とするプレキャストPC部材の緊張方法。
【請求項2】
前記緊張工程では、前記第1緊張材の一端部と前記第2緊張材の端部との間、又は、前記第1緊張材の他端部と前記第3緊張材の端部との間、に設けられる緊張装置により前記第1緊張材を緊張すること
を特徴とする請求項1記載のプレキャストPC部材の緊張方法。
【請求項3】
前記緊張工程では、
前記第1緊張材の一端部と前記第2緊張材の端部との間に設けられる第2接続具により前記第1緊張材を緊張すること、
又は、前記第1緊張材の他端部と前記第3緊張材の端部との間に設けられる第2接続具により前記第1緊張材を緊張すること
を特徴とする請求項1記載のプレキャストPC部材の緊張方法。
【請求項4】
前記緊張工程の後に、前記第1緊張材が貫通されるとともに前記第2床版及び前記第3床版から離間される本体部と、前記本体部から前記第1緊張材の延伸方向の両側を切り欠いた残部である延設部と、を有する前記第1床版における前記第1緊張材の端部を挟んで前記延設部の反対側に、プレキャスト板を設置するプレキャスト板設置工程を更に備えること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のプレキャストPC部材の緊張方法。
【請求項5】
第2床版と第3床版の間に設置された既設PC部材を撤去する撤去工程を更に備え、
前記接続工程では、前記既設PC部材を撤去した箇所に前記第1床版を設置すること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のプレキャストPC部材の緊張方法。
【請求項6】
前記撤去工程では、
前記既設PC部材に貫通された既設緊張材の一端部と前記既設緊張材の一端部に接続されていた前記第2部材の前記第2緊張材との接続を解除し、
前記既設緊張材の他端部と前記既設緊張材の他端部に接続されていた前記第3部材の前記第3緊張材との接続を解除し、
前記既設PC部材を撤去すること
を特徴とする請求項5記載のプレキャストPC部材の緊張方法。
【請求項7】
前記撤去工程では、
前記第2部材の前記第2緊張材と、前記第2緊張材に接続されていた前記既設PC部材に貫通された一の既設緊張材の一端部と、の接続を解除し、
前記第3部材の前記第3緊張材と、前記第3緊張材に接続されていた前記既設PC部材に貫通された当該一の既設緊張材とは異なる他の既設緊張材の他端部と、の接続を解除し、
前記既設PC部材を撤去すること
を特徴とする請求項5記載のPC床版の取替方法。
【請求項8】
前記撤去工程は、
前記第2部材と前記第3部材の間に設置された前記既設PC部材における前記第2部材側の端部と前記第3部材側の端部とを斫り、前記第2部材、前記第3部材、及び前記既設PC部材に貫通された既設緊張材を露出させる斫り工程と、
第1保持装置を用いて前記第2部材に貫通される前記既設緊張材の緊張力を保持させて前記第2緊張材とし、第2保持装置を用いて前記第3部材に貫通される前記既設緊張材の緊張力を保持させて前記第3緊張材とする保持工程と、
前記第1保持装置と前記第2保持装置との間の前記既設緊張材を切断する切断工程と、を有すること
を特徴とする請求項5記載のプレキャストPC部材の緊張方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリートにプレストレスが付与されるプレキャストPC部材の緊張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等の更新工事において、通行止めの期間を大幅に短縮できることから、橋梁の既存の床版を予め工場等で製造した鉄筋コンクリート製のプレキャスト床版に更新することが行われている。また、耐久性の向上や床版厚を薄くして死荷重を低減できることから、PC鋼材や連続繊維補強材などの緊張材を用いて予めプレストレスが導入されたプレキャストPC床版も一般的となってきている。
【0003】
図33に示すように、PC部材の一例としてのPC床版90を緊張する場合、複数のコンクリート製の躯体91に貫通された緊張材92の両端部に、躯体91と定着させるための定着具95を設け、一方の定着具95側から緊張材92を緊張する。そして、この一方の定着具95が設けられる躯体91に隣接して新たな躯体91を設置し、一方の定着具95が設けられる躯体91と新たに設置した躯体91に緊張材92とは異なる他の緊張材97と定着具98を設けた上で、緊張材97を緊張する。このように、定着具95が設けられる躯体91には、他の緊張材97の定着具98も設けられる。このため、緊張材92が貫通される躯体91が損傷してしまうと、定着具95、95間全体を取り換える必要がある。しかしながら、定着具95を取り外すには、定着具95と定着具98とが設けられた躯体91を撤去しなければならず、取り替える必要の無い健全な躯体91も撤去することになる。このように、従来のPC床版90の緊張方法では、PC床版90を挟んで両側に緊張材97により緊張されるPC部材を設置した後においては、新たな緊張材により緊張されるPC床版を緊張することができない、という事情があった。
【0004】
従来、既設PC構造物において、中間定着部を設けず、橋梁補修工事における桁下等の狭い作業空間においてPC鋼材を再定着する技術として、特許文献1が開示されている。
【0005】
特許文献1の再定着方法は、張力が付与された複数の鋼線からなるPC鋼材により躯体部分に圧縮力が付与された既設PC構造物において、PC鋼材を切断する位置近傍のコンクリートをはつるとともに、既設定着部を撤去することにより、予め算出された長さのPC鋼材を露出させる露出ステップと、露出されたPC鋼材の端面に、複数の鋼線の間隔を拡張させるための支圧板台座およびそれに支持される支圧板を設置する設置ステップと、設置ステップにより形成された空間にシングルジャッキを設置して、PC鋼材を1本毎に緊張して定着する緊張定着ステップとを含む。
【0006】
しかしながら、特許文献1の開示技術は、あくまで既設のPC鋼材を再定着するためのものであり、2つの既設のPC部材の間に設置されるPC部材を新たな緊張材により緊張するものではない。2つのPC部材の間に設置されるPC部材であっても緊張できる技術が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、2つのPC部材の間に設置されるPC部材であっても緊張することが可能となるプレキャストPC部材の緊張方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプレキャストPC部材の緊張方法は、プレキャスト部材にプレストレスを付与するためのプレキャストPC部材の緊張方法であって、プレキャスト部材である第1部材に貫通された第1緊張材の一端部を第2部材に貫通された第2緊張材に接続するとともに、当該第1緊張材の他端部を前記第1部材を挟んで前記第2部材の反対側に配置される第3部材に貫通された第3緊張材に接続する接続工程と、前記第1緊張材を緊張する緊張工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つのPC部材の間に設置されるPC部材であっても緊張することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法で用いられる第1床版を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法のフローチャートを示す。
【
図3】
図3(a)は、第1床版設置工程において第1接続具を設置する状態を示す断面図であり、
図3(b)は、第1床版設置工程において第1緊張材に第1定着具を設置した状態を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は、第1床版設置工程において第2床版と第3床版の間に第1床版を設置した状態を示す断面図であり、
図4(b)は、第2床版接続工程において第2床版に接続された第1床版を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、第3床版接続工程において第1接続具の接続用外套スリーブを第1緊張材に設置する状態を示す断面図であり、
図5(b)は、第3床版接続工程において接続用ボルトを接続する状態を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第3床版接続工程において第1緊張材の他端部に第2定着具を設置する状態を示す断面図であり、
図6(b)は、第3床版接続工程において第2定着具と第2接続具を接続した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、緊張工程において第2定着具にネジブッシングと緊張用スリーブを設置する状態を示す断面図であり、
図7(b)は、緊張工程においてコ字チェアとカーブチェアを設置する状態を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、緊張工程においてコ字チェアとカーブチェアをボルトで接続した状態を示す断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)の第1緊張材の他端部を主に示す平面図である。
【
図9】
図9(a)は、緊張工程においてストレートチェアを設置する状態を示す断面図であり、
図9(b)は、緊張工程においてカーブチェアにストレートチェアを接続した状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、緊張工程において緊張装置を用いて第1緊張材を緊張した状態を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)は、緊張工程が完了した後の第1床版を示す断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)の第1緊張材の他端部を主に示す平面図である。
【
図12】
図12は、プレキャスト板設置工程を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法で用いられる第1床版、第2床版及び第3床版を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法のフローチャートを示す。
【
図15】
図15(a)は、第1床版設置工程と、第2床版接続工程の完了後の第1床版を示す断面図であり、
図15(b)は、第3床版接続工程において第2接続具の第1スリーブと第2スリーブを設置する状態を示す断面図である。
【
図16】
図16(a)は、第3床版接続工程において第1スリーブと第2スリーブをプラグで繋いだ状態を示す断面図であり、
図16(b)は、緊張工程においてプラグにより第1緊張材を緊張した状態を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法のフローチャートを示す。
【
図18】
図18(a)は、第1床版設置工程の開始時における第2床版を示す断面図であり、
図18(b)は、第1床版設置工程において第3定着具に第1接続具を設置した状態を示す断面図である。
【
図19】
図19(a)は、第1床版設置工程において第2床版に隣接して設置した第1床版を示す断面図であり、
図19(b)は、第2床版接続工程において第1緊張材を第2床版に接続した状態を示す断面図である。
【
図20】
図20(a)は、第3床版設置工程において第1床版に隣接して設置した第3床版を示す断面図であり、
図20(b)は、第3床版接続工程において第3床版に第2緊張材を設置した状態を示す断面図である。
【
図21】
図21(a)は、第3床版接続工程において第1緊張材を第3床版に接続した状態を示す断面図であり、
図21(b)は、緊張工程において第1緊張材と第3緊張材を緊張した状態を示す断面図である。
【
図22】
図22は、第4実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法のフローチャートを示す。
【
図23】
図23(a)は、撤去工程において既設の第1緊張材の接続を解除する状態を示す断面図であり、
図23(b)は、撤去工程において既設の第1床版を撤去した状態を示す断面図である。
【
図24】
図24は、第4実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法で用いられる第1床版を示す断面図である。
【
図25】
図25は、第5実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法のフローチャートを示す。
【
図26】
図26(a)は、撤去工程の開始時における第1床版を示す断面図であり、
図26(b)は、斫り工程において斫られた既設PC床版を示す断面図である。
【
図27】
図27(a)は、保持工程において既設緊張材に第1保持装置と第2保持装置を設置した状態を示す断面図であり、
図27(b)は、保持工程において緊張力を保持した状態の既設緊張材を示す断面図である。
【
図28】
図28(a)は、保持工程において第1保持装置と第2保持装置を既設緊張材に保持した状態を示す断面図であり、
図28(b)は、切断工程において切断された既設緊張材が保持装置により保持された状態を示す断面図である。
【
図29】
図29(a)は、第1床版設置工程において第1床版を設置した状態を示す断面図であり、
図29(b)は、第2床版接続工程において第1緊張材を第2床版に接続し、第3床版接続工程において第1緊張材を第3床版に接続した状態を示す断面図である。
【
図30】
図30(a)は、緊張工程において第1緊張材と第1緊張材とを緊張した状態を示す断面図であり、
図30(b)は、緊張工程において第1保持装置と第2保持装置とを撤去した状態を示す断面図である。
【
図31】
図31は、第6実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法のフローチャートを示す。
【
図32】
図32(a)は、撤去工程において第1緊張材の接続を解除する状態を示す断面図であり、
図32(b)は、撤去工程において第1床版を撤去した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、上下方向を上下方向Zとし、上下方向Zと交差、例えば直交する1つの平面方向を延伸方向Xとし、上下方向Z及び延伸方向Xのそれぞれと交差、例えば直交する別の平面方向を幅方向Yとする。延伸方向Xは、一方側を第1延伸方向X1とし、他方側を第2延伸方向X2とする。また、各図において、共通する部分については、共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法>
先ず、第1実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法に用いられる第1床版10について、説明する。プレキャストPC部材である第1部材として、第1床版10を例示して説明する。
【0014】
図1に示すように、第1床版10は、プレキャスト床版であり、第2床版20と第3床版30との間に設けられる。第1床版10は、延伸方向Xに沿う断面でT字状に形成され、プレストレスを付与するための第1緊張材12を有する。第1床版10は、第1緊張材12が貫通される本体部11と、本体部11の延伸方向Xの両側を切り欠いた残部となる延設部18、19とを有する。本体部11は、第2床版20及び第3床版30から離間される。
【0015】
延設部18は、本体部11の上端の第2床版20側に形成される。第1床版10は、第1緊張材12の一端部13を挟んで、延設部18の反対側にプレキャスト板71が設置される。プレキャスト板71は、本体部11の第1延伸方向X1の端面から第2床版20まで延びる板材であり、本体部11の下端に設けられる。プレキャスト板71は、内部に幅方向Yに延びる横締め部材73が配置される。
【0016】
延設部19は、本体部11の上端の第3床版30側に形成される。第1床版10は、第1緊張材12の他端部14を挟んで、延設部19の反対側にプレキャスト板72が設置される。プレキャスト板72は、本体部11の第2延伸方向X2の端面から第3床版30まで延びる板材であり、本体部11の下端に設けられる。プレキャスト板72は、内部に幅方向Yに延びる横締め部材74が配置される。
【0017】
第1緊張材12は、例えばPC鋼より線が用いられ、延伸方向Xに直線状に延びる。第1緊張材12は、周囲にシース管17が設けられ、シース管17には、グラウト材が充填される。なお、第1緊張材12は、炭素繊維や樹脂繊維などの連続繊維補強材を緊張材として用いることもできる。
【0018】
第1緊張材12は、第1延伸方向X1側の端部である一端部13と、第2延伸方向X2側の端部である他端部14と、を有する。第1緊張材12の一端部13と、第1緊張材12の他端部14は、第1床版10の本体部11から突出される。
【0019】
第1緊張材12の一端部13には、第1定着具150が定着される。第1定着具150は、スリーブ151と、ウェッジ152と、押さえワッシャ153と、ボルト154と、を有する。
【0020】
スリーブ151は、第1緊張材12の一端部13の周囲に設けられ、筒状に形成される。スリーブ151は、内面が傾斜面で形成され、内側にウェッジ152が設けられる。ウェッジ152は、スリーブ151の内側に配置され、外形が楔状に形成される。押さえワッシャ153は、ウェッジ152の端面に設けられ、ボルト154が貫通され、貫通されたボルト154が、スリーブ151に螺合される。これにより、第1定着具150は、第1緊張材12に定着される。
【0021】
第1緊張材12の一端部13は、第1接続具155により第2緊張材22に接続される。第1接続具155は、第1定着具150と、後述する第3定着具25と、を接続するものである。第1接続具155は、例えば筒状に形成される外套スリーブが用いられ、第1定着具150のスリーブ151に接続される。
【0022】
第1緊張材12の他端部14には、第2定着具160が定着される。第2定着具160は、スリーブ161と、ウェッジ162と、定着部材163と、を有する。
【0023】
スリーブ161は、第1緊張材12の周囲に設けられ、筒状に形成される。スリーブ161は、内面が傾斜面で形成され、内側にウェッジ162が設けられる。ウェッジ162は、スリーブ161の内側に配置され、外形が楔状に形成される。定着部材163は、例えばリングナットが用いられ、スリーブ161の周囲に設けられる。第2定着具160は、緊張装置を用いて定着部材163を回転させることにより、第1緊張材12に定着される。
【0024】
第1緊張材12の他端部14は、第2接続具165により第3緊張材32に接続される。第2接続具165は、第2定着具160と、後述する第4定着具35と、を接続するものである。第2接続具165は、ネジブッシング166と、接続用外套スリーブ167と、接続用ボルト168と、を有する。
【0025】
ネジブッシング166は、外面側に第4定着具35のスリーブ351が接続され、内面側に接続用ボルト168が接続される。接続用外套スリーブ167は、箱型に形成され、一端部に第2定着具160が設けられ、他端部に第4定着具35が設けられる。接続用ボルト168は、ネジブッシング166と接続用外套スリーブ167とを接続する。
【0026】
第2床版20は、PC床版であり、プレストレスを付与するための第2緊張材22を有する。第2緊張材22は、第1緊張材12とは別の緊張材であり、例えばPC鋼より線が用いられる。第2緊張材22は、炭素繊維や樹脂繊維などの連続繊維補強材を緊張材として用いることもできる。第2緊張材22の端部には、第3定着具25が設けられる。第2床版20は、プレキャスト床版であってもよい。第2部材として第2床版20を例示しているが、第2部材は、プレストレスが付与されるPC部材であれば、PC床版でなくてもよい。
【0027】
第3定着具25は、第2緊張材22を第2床版20に定着するものである。第3定着具25は、第1接続具155により、第1定着具150に接続される。第3定着具25は、スリーブ251と、ウェッジ252と、を有する。
【0028】
スリーブ251は、第2緊張材22の周囲に設けられ、筒状に形成される。スリーブ251は、内面が傾斜面で形成され、内側にウェッジ252が設けられる。ウェッジ252は、スリーブ251の内側に配置され、外形が楔状に形成される。
【0029】
第3床版30は、PC床版であり、プレストレスを付与するための第3緊張材32を有する。第3緊張材32は、第1緊張材12とは別の緊張材であり、例えばPC鋼より線が用いられる。第3緊張材32は、炭素繊維や樹脂繊維などの連続繊維補強材を緊張材として用いることもできる。第3緊張材32の端部には、第4定着具35が設けられる。第3床版30は、プレキャスト床版であってもよい。第3部材として第3床版30を例示しているが、第3部材は、プレストレスが付与されるPC部材であれば、PC床版でなくてもよい。
【0030】
第4定着具35は、第3緊張材32を第3床版30に定着するものである。第4定着具35は、第2接続具165により、第2定着具160に接続される。第4定着具35は、スリーブ351と、ウェッジ352と、定着部材353と、を有する。
【0031】
スリーブ351は、第3緊張材32の周囲に設けられ、筒状に形成される。スリーブ351は、内面が傾斜面で形成され、内側にウェッジ352が設けられる。スリーブ351は、一端部の内面にネジブッシング166が設けられ、他端部の外面に定着部材353が設けられる。ウェッジ352は、スリーブ351の内側に配置され、外形が楔状に形成される。定着部材353は、リングナット、シム等が用いられ、第3床版30に接触される。
【0032】
<プレキャストPC部材の緊張方法S100>
次に、第1実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S100の手順を説明する。プレキャストPC部材の緊張方法S100は、プレキャスト床版である第1床版10にプレストレスを付与して接合するものである。
【0033】
図2に示すように、プレキャストPC部材の緊張方法S100は、プレキャスト床版である第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20に貫通された第2緊張材22と、を接続し、第1床版10の第1緊張材12の他端部14と、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30に貫通された第3緊張材32と、を接続する接続工程S110と、第1緊張材12を緊張する緊張工程S150と、を備える。
【0034】
<接続工程S110>
接続工程S110は、第2床版20と第3床版30との間に第1床版10を設置する第1床版設置工程S120と、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22を第1接続具155により接続する第2床版接続工程S130と、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32とを第2接続具165により接続する第3床版接続工程S140と、を有する。
【0035】
<第1床版設置工程S120>
図3(a)に示すように、第1床版設置工程S120は、第2床版20が設置された状態から開始する。第2床版20は、第2緊張材22によりプレストレスが付与されており、第2緊張材22の端部には、第3定着具25が定着されている。第2床版20にプレストレスが付与された後、第2緊張材22は、第3定着具25を挟んで第2床版20の反対側に突出した部分が、所定の長さに切断されている。
【0036】
このとき、第1床版設置工程S120では、第2床版20から延伸方向Xに離間させて第3床版30が設けられている。第3床版30は、第3緊張材32によりプレストレスが付与されており、第3緊張材32の端部には、第4定着具35が定着されている。第3緊張材32は、プレストレスが付与された後に、第4定着具35を挟んで第3床版30の反対側に突出した部分が、所定の長さに切断されている。
【0037】
第1床版設置工程S120では、第2緊張材22に設けられた第3定着具25に、第1接続具155を設置する。
【0038】
次に、
図3(b)に示すように、第1床版設置工程S120では、第1床版10の本体部11に第1緊張材12を貫通させ、貫通させた第1緊張材12の一端部13に、第1定着具150を設置する。
【0039】
次に、
図4(a)に示すように、第1床版設置工程S120では、第2床版20と第3床版30との間に、第1床版10をクレーン等で吊り下ろして設置する。
【0040】
<第2床版接続工程S130>
次に、
図4(b)に示すように、第2床版接続工程S130では、第1接続具155と第1緊張材12の一端部13に設置された第1定着具150と、を接続することにより、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続する。
【0041】
<第3床版接続工程S140>
次に、第3床版接続工程S140では、第4定着具35のスリーブ351に、ネジブッシング166を接続する。
【0042】
次に、
図5(a)に示すように、第3床版接続工程S140では、接続用外套スリーブ167の一端部に第1緊張材12を挿通する。
【0043】
次に、
図5(b)に示すように、第3床版接続工程S140では、ネジブッシング166と接続用外套スリーブ167とを接続用ボルト168により接続する。
【0044】
次に、
図6(a)に示すように、第3床版接続工程S140では、第1緊張材12の他端部14に第2定着具160を設置する。第3床版接続工程S140では、第1緊張材12の他端部14の周囲に、定着部材163が設けられたスリーブ161を設置する。
【0045】
次に、
図6(b)に示すように、第3床版接続工程S140では、第1緊張材12の他端部14に設置した第2定着具160と、第2接続具165と、を接続する。第3床版接続工程S140では、定着部材163が設けられたスリーブ161を接続用外套スリーブ167の一端部に配置し、スリーブ161の内部にウェッジ162を配置する。このように、第3床版接続工程S140では、第2定着具160と第4定着具35とを第2接続具165により接続する。
【0046】
<緊張工程S150>
次に、直線状に延伸された第1緊張材12を、第1緊張材12の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる緊張装置76により第1緊張材12の延伸方向に対して傾斜した方向から緊張する緊張工程S150を行う。
【0047】
緊張工程S150では、第2定着具160に、緊張用接続具78を設置する。緊張用接続具78は、ネジブッシング781と、緊張用スリーブ782と、コ字チェア783と、カーブチェア784と、ストレートチェア785と、固定用ボルト786と、引き寄せグリップ787と、引き寄せ用より線789、緊張用PC鋼より線788と、を有する。
【0048】
図7(a)に示すように、緊張工程S150では、接続用外套スリーブ167にネジブッシング781を挿入し、挿入したネジブッシング781をスリーブ161に接続する。そして、緊張工程S150では、接続用外套スリーブ167に緊張用スリーブ782を挿入し、挿入した緊張用スリーブ782をネジブッシング781に接続する。緊張工程S150では、緊張用スリーブ782に、第1緊張材12の他端部14が入る穴が設けられており、スリーブ161の外周に設けられたネジにネジブッシング781をねじ込んで固定する。
【0049】
次に、
図7(b)に示すように、緊張工程S150では、緊張用PC鋼より線788を緊張用スリーブ782に装着する。また、緊張用スリーブ782にコ字チェア783を設置し、コ字チェア783にカーブチェア784を設置する。
【0050】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、緊張工程S150では、平面視コ字状に形成されるコ字チェア783の内側に、第2定着具160と、ネジブッシング781と、緊張用スリーブ782と、を配置させる。カーブチェア784は、第1緊張材12を所定の角度に傾斜する方向に緊張するためのものであり、固定用ボルト786によりコ字チェア783と接続される。これにより、カーブチェア784が、コ字チェア783に対してずれるのを防止することができる。そして、緊張工程S150では、引き寄せグリップ787をカーブチェア784に接続し、引き寄せ用より線789を装着する。
【0051】
次に、
図9(a)に示すように、緊張工程S150では、緊張用PC鋼より線788にストレートチェア785を挿入する。
【0052】
次に、
図9(b)に示すように、緊張工程S150では、ストレートチェア785を挟んでコ字チェア783の反対側に緊張具75を設置し、設置した緊張具75を用いて引き寄せ用より線789を緊張し、ストレートチェア785をカーブチェア784に引き寄せる。そして、ストレートチェア785とカーブチェア784とを固定用ボルト786により締結する。その後、ストレートチェア785から緊張具75を取り外す。
【0053】
次に、
図10に示すように、緊張工程S150では、緊張装置76を用いて、第1緊張材12を緊張する。緊張装置76は、緊張用ジャッキ761と、プリングヘッド762と、を有する。緊張用ジャッキ761は、ストレートチェア785に接続される。プリングヘッド762は、緊張用ジャッキ761を挟んでストレートチェア785の反対側に設置される。
【0054】
緊張工程S150では、ストレートチェア785を挟んでコ字チェア783の反対側に設置した緊張装置76を用いて、第1緊張材12をこれの延伸方向に対して傾斜した方向に緊張する。これにより、直線状に延伸された第1緊張材12を、第1緊張材12の延伸方向に対して傾斜した方向から緊張することができる。
【0055】
緊張工程S150では、第1緊張材12を緊張する際に定着部材163を回転させることにより、第2定着具160を第1緊張材12に定着させる。
図11(a)及び(b)に示すように、第1緊張材12を緊張することにより、第1緊張材12が伸び、ウェッジ162がスリーブ161へ食い込み、接続用外套スリーブ167が伸びるため、スリーブ161と接続用外套スリーブ167との間にギャップLが生じて、第2定着具160が第1緊張材12に定着される。
【0056】
プレキャストPC部材の緊張方法S100は、緊張工程S150の後に、更にプレキャスト板設置工程S160と、グラウト材充填工程S170と、を行ってもよい。
【0057】
<プレキャスト板設置工程S160>
図12に示すように、プレキャスト板設置工程S160では、第1緊張材12が配置されるとともに第2床版20及び第3床版30から離間される本体部11と、本体部11の延伸方向Xの両側を切り欠いた残部である延設部18、19と、を有する第1床版10の第1緊張材12の端部を挟んで延設部18、19の反対側に、プレキャスト板71、72を設置する。
【0058】
<グラウト材充填工程S170>
グラウト材充填工程S170では、第1緊張材12の周囲に配置されるシース管17の内部に、グラウト材を充填する。シース管17は、第1床版10の外面に形成された注入口に繋がる注入用ホースが設けられる。グラウト材を充填する際には、第1床版10の下面にある注入口にニップルを設け、グラウト材を注入用ホースからシース管17の内部に充填する。グラウト材を充填した後に、ニップルを撤去し、注入口に樹脂モルタル等の充填材を充填することにより、注入口を閉蓋する。
【0059】
本発明では、プレキャスト板設置工程S160の後に、グラウト材充填工程S170を行ってもよいし、グラウト材充填工程S170の後に、プレキャスト板設置工程S160を行ってもよい。
【0060】
以上により、プレキャストPC部材の緊張方法S100が完了する。
【0061】
本実施形態によれば、プレキャスト床版である第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13を、第2床版20に貫通された第2緊張材22に接続し、第1床版10の第1緊張材12の他端部14を、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30に貫通された第3緊張材32に接続する接続工程S110と、第1緊張材12を緊張する緊張工程S150と、を備える。これにより、第1床版10は、第1緊張材12によりプレストレスが付与される。すなわち、第1床版10は、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22との接続を解除し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32の接続との接続を解除することにより、第1床版10のプレストレスのみを解除することができる。このため、取り替えが必要な第1床版10のみを、新たな第1床版10に取り換えることが可能となる。
【0062】
本実施形態によれば、接続工程S110では、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32に接続する。これにより、第2床版20と、第3床版30との間に新たに設置する第1床版10にプレストレスを付与して接合することができる。このため、従来のプレストレス床版のように一方向に順次接合するだけではなく、2つの既設床版に挟まれた床版に対しても緊張材12を緊張することができる。このように、二方向から施工ができるため、施工の自由度を向上させることができる。
【0063】
加えて、本実施形態によれば、接続工程S110では、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32に接続する。これにより、両端が接続された第1緊張材12により第1床版10にプレストレスを付与することができ、第1緊張材12を緊張する回数を減らすことができる。このため、施工を短時間で行うことが可能となる。
【0064】
本実施形態によれば、緊張工程S150では、直線状に延伸された第1緊張材12を、第1緊張材12の延伸方向Xに対して傾斜した方向から緊張する。これにより、第1緊張材12に緊張力を付与するために必要な空間が狭隘であっても、第1緊張材12を緊張することができる。このため、空間的な施工の制限を受けにくく、施工の自由度を向上させることができる。
【0065】
本実施形態によれば、緊張工程S150では、第1緊張材12の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる緊張装置76により第1緊張材12を緊張する。これにより、第1緊張材12を直線状に保持された状態で緊張させることができる。このため、第1緊張材12を湾曲させる場合よりも、第1床版10にプレストレスを効率良く付与できる。また、第1緊張材12を湾曲させる場合よりも、第1床版10の厚みを低減させることができる。
【0066】
本実施形態では、第1緊張材の他端部14と第3緊張材32の端部との間、に設けられる緊張装置76により第1緊張材12を緊張したが、本発明では、一端部13での接合態様と他端部14での接合態様を逆にし、第1緊張材12の一端部13と第2緊張材22の端部との間に設けられる緊張装置76により第1緊張材12を緊張してもよい。このときであっても、上述の作用効果を発揮させることが可能となる。
【0067】
本実施形態によれば、第1緊張材12が貫通されるとともに第2床版20及び第3床版30から離間される本体部11と、本体部11の両側を切り欠いた残部である延設部18、19と、を有する第1床版10の第1緊張材12の両端部13、14を挟んで延設部18、19の反対側に、プレキャスト板71、72を設置するプレキャスト板設置工程S160を更に備える。これにより、第1緊張材12の一端部13が延設部18とプレキャスト板71とにより保護される。また、第1緊張材12の他端部14が延設部19とプレキャスト板72とにより保護される。このため、第1緊張材12の一端部13及び他端部14が腐食等により劣化するのを抑制し、第1緊張材12の耐久性を向上させることが可能となる。
【0068】
加えて、本実施形態によれば、延設部18、19が本体部11の上端に形成されるため、第2床版20と第3床版30の間に第1床版10を設置するとき、クレーン等で第1床版10を吊り下ろして行うことができる。このため、クレーン等で吊下げられた状態の第1床版10を水平方向にスライドさせることなく設置できるため、より安全性の高い施工を行うことが可能となる。
【0069】
本実施形態によれば、第1緊張材12の周囲に配置されるシース管17に、グラウト材を充填するグラウト材充填工程S170を更に備える。これにより、第1緊張材12をシース管17の内部で安定させることができる。このため、第1緊張材12により付与されるプレストレスをより長期間保持することが可能となる。
【0070】
<第2実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法S200>
次に、第2実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S200について説明する。本実施形態では、第2接続具265が用いられる。
【0071】
図13に示すように、第2接続具265は、第1スリーブ266と、第2スリーブ267と、プラグ268とを有する。第1スリーブ266は、第2定着具160に接続される。第2スリーブ267は、第4定着具35に接続され、第1スリーブ266から離間される。プラグ268は、第1スリーブ266と第2スリーブ267とを繋ぐ。プラグ268を回転させることで、第1スリーブ266と第2スリーブ267との離間距離を調整することができる。
【0072】
<第2実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法>
次に、第2実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S200の手順について説明する。
【0073】
図14に示すように、プレキャストPC部材の緊張方法S200は、プレキャスト床版である第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20に貫通された第2緊張材22と、を接続し、第1床版10の第1緊張材12の他端部14と、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30に貫通された第3緊張材32と、を接続する接続工程S210と、第1緊張材12を緊張する緊張工程S250と、を備える。
【0074】
<接続工程S210>
接続工程S210は、第1床版設置工程S120と、第2床版接続工程S130と、第3床版接続工程S240と、を有する。第1床版設置工程S120と、第2床版接続工程S130とは、第1実施形態と同様のため、省略する。
【0075】
<第3床版接続工程S240>
図15(a)に示すように、第1床版設置工程S120と、第2床版接続工程S130の完了後、第1緊張材12の一端部13は、第2床版20の第2緊張材22に接続されている。
【0076】
図15(b)に示すように、第3床版接続工程S240では、第2定着具160と第4定着具35とを第2接続具265により接続する。第3床版接続工程S240では、第2定着具160に第1スリーブ266を接続し、第4定着具35に第2スリーブ267を接続する。
【0077】
次に、
図16(a)に示すように、第3床版接続工程S240では、第1スリーブ266と、第2スリーブ267と、をプラグ268により繋ぐ。このように、第3床版接続工程S240では、第1緊張材12の他端部14と、第3床版30の第3緊張材32と、を第2接続具265により接続する。
【0078】
<緊張工程S250>
次に、
図16(b)に示すように、第1緊張材12の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる第2接続具165により第1緊張材12を緊張する緊張工程S250を行う。緊張工程S250では、プラグ268を回転させることにより、第1スリーブ266と第2スリーブ267との離間距離を短くし、第1緊張材12を緊張する。
【0079】
プレキャストPC部材の緊張方法S200は、緊張工程S250の後に、更にプレキャスト板設置工程S160と、グラウト材充填工程S170と、を行ってもよい。
【0080】
本実施形態によれば、接続工程S210では、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32に接続する。これにより、第2床版20と、第3床版30との間に新たに設置する第1床版10にプレストレスを付与して接合することができる。このため、従来のプレストレス床版のように一方向に順次接合するだけではなく、2つの既設床版に挟まれた床版に対しても緊張材12を緊張することができる。このように、二方向から施工ができるため、施工の自由度を向上させることができる。
【0081】
本実施形態によれば、接続工程S210では、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32に接続する。これにより、第1緊張材12を緊張する回数を減らすことができる。このため、施工を短時間で行うことが可能となる。
【0082】
本実施形態によれば、第1緊張材12の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる第2接続具165により第1緊張材12を緊張する。このとき、プレキャストPC床版自体に緊張力の反力をとることなくプラグ268を回転させることにより緊張でき、緊張力の保持が可能となる。
【0083】
また、本実施形態によれば、緊張工程S250では、第1緊張材12の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる第2接続具165により第1緊張材12を緊張する。これにより、第1緊張材12を直線状に保持された状態で緊張させることができる。このため、第1床版10にプレストレスを効率良く付与できる。また、第1緊張材12を湾曲させる場合よりも、第1床版10の厚みを低減させることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、緊張工程S250では、第1緊張材12の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる第2接続具165により第1緊張材12を緊張する。これにより、第1緊張材12の緊張とその解除を大掛かりな緊張装置を用いずに行うことができる。このため、第1緊張材12の緊張作業やその解除作業をより短時間で行うことができる。
【0085】
本実施形態では、第1緊張材の他端部14と第3緊張材32の端部との間に設けられる第2接続具165により第1緊張材12を緊張したが、本発明では、一端部13での接合態様と他端部14での接合態様を逆にし、第1緊張材12の一端部13と第2緊張材22の端部との間に設けられる第2接続具165により第1緊張材12を緊張してもよい。このときであっても、上述の作用効果を発揮させることが可能となる。
【0086】
<第3実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法>
次に、第3実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S300について説明する。
【0087】
図17に示すように、プレキャストPC部材の緊張方法S300は、プレキャスト床版である第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20に貫通された第2緊張材22と、を接続し、第1床版10の第1緊張材12の他端部14と、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30の第3緊張材32と、を接続する接続工程S310と、第1緊張材12を緊張する緊張工程S350と、を備える。
【0088】
<接続工程S310>
接続工程S310は、第2床版20に隣接して第1床版10を設置する第1床版設置工程S320と、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを第1接続具155により接続する第2床版接続工程S330と、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に、第1床版10に隣接して第3床版30を設置する第3床版設置工程S331と、第1緊張材12の他端部14と第3床版30との第3緊張材32を第2接続具165により接続する第3床版接続工程S340と、を有する。
【0089】
<第1床版設置工程S320>
図18(a)に示すように、第1床版設置工程S320は、第2床版20が設置された状態から開始する。第2床版20は、第2緊張材22によりプレストレスが付与されており、第2緊張材22の端部には、第3定着具25が定着されている。第2床版20にプレストレスが付与された後、第2緊張材22は、第3定着具25を挟んで第2床版20の反対側に突出した部分が、所定の長さに切断されている。
【0090】
図18(b)に示すように、第1床版設置工程S320では、第2緊張材22に設けられた第3定着具25に、第1接続具155を設置する。
【0091】
次に、
図19(a)に示すように、第1床版設置工程S320では、第1床版10の本体部11に第1緊張材12を貫通させ、貫通された第1緊張材12の一端部13に、第1定着具150を設置し、第1緊張材12の他端部14に、第2定着具160を設置する。
【0092】
次に、第1床版設置工程S320では、第2床版20に隣接して第1床版10を配置する。
【0093】
<第2床版接続工程S330>
図19(b)に示すように、第2床版接続工程S330では、第1接続具155と第1緊張材12の一端部13に設置された第1定着具150と、を接続することにより、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続する。
【0094】
<第3床版設置工程S331>
図20(a)に示すように、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に、第1床版10に隣接して第3床版30を設置する第3床版設置工程S331を行う。
図20(b)に示すように、第3床版設置工程S331では、設置した第3床版30に第3緊張材32を貫通させ、第3緊張材32の端部に第4定着具35を設ける。この時点では、第3床版30は、第3緊張材32によるプレストレスが付与されていないものとなる。
【0095】
<第3床版接続工程S340>
次に、
図21(a)に示すように、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32とを第2接続具165により接続する第3床版接続工程S340を行う。第3床版接続工程S340では、第4定着具35と第2接続具165とを接続し、第2定着具160と第2接続具165とを接続する。これらを第2接続具165に接続する際には、まず第1緊張材12の周囲に第2接続具165を設置し、この第2接続具165を第3床版30側にスライド移動させたうえで、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32とを第2接続具165により接続する。
【0096】
<緊張工程S350>
次に、
図21(b)に示すように、直線状に延伸された第1緊張材12と第3緊張材32とを、第1緊張材12の延伸方向に沿う方向(図中矢印P方向)に向けて図示しない緊張装置を用いて緊張する緊張工程S350を行う。
【0097】
プレキャストPC部材の緊張方法S300は、緊張工程S350の後に、更にプレキャスト板設置工程S160と、グラウト材充填工程S170と、を行ってもよい。
【0098】
以上により、プレキャストPC部材の緊張方法S300が完了する。
【0099】
本実施形態によれば、接続工程S310では、第2床版20に隣接して第1床版10を設置した後に、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続し、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に第3床版30を設置し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32とを接続する。これにより、第2床版20と、第3床版30との間に新たに設置する第1床版10の緊張材12を緊張し、第1床版10にプレストレスを付与して接合することができる。特に、PC床版を第2延伸方向X2に向けて順次延伸させる方法として具現化される。
【0100】
本実施形態によれば、接続工程S310では、第1緊張材12の他端部14を第3床版30に設けられた第3緊張材32に接続し、緊張工程S350では、第1緊張材12と第3緊張材32とを同時に緊張する。これにより、第1床版10と第3床版30とを同時に緊張することができる。このため、第1緊張材12と第3緊張材32の緊張作業を効率良く行うことができる。
【0101】
<第4実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法S400>
次に、第4実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S400について説明する。
【0102】
図22に示すように、プレキャストPC部材の緊張方法S400は、撤去工程S410と、接続工程S110と、緊張工程S150と、を備える。
【0103】
<撤去工程S410>
撤去工程S410では、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版である既設の第1床版10を撤去する。
【0104】
図23(a)に示すように、撤去工程S410では、先ず、プレキャスト板71、72を撤去する。そして、撤去工程S410では、一端部13に設置された第1定着具150と、第2緊張材22の端部に設置された第3定着具25と、を接続していた第1接続具155を撤去し、既設の第1床版10に貫通された既設緊張材である既設の第1緊張材12の一端部13と、既設の第1緊張材12の一端部13に接続されていた第2床版20の第2緊張材22と、の接続を解除する。
【0105】
また、撤去工程S410では、他端部14に設置された第2定着具160と、第3緊張材32の端部に設置された第4定着具35と、を接続していた第2接続具165を撤去し、既設の第1緊張材12の他端部14と、既設の第1緊張材12の他端部14に接続されていた第3床版30の第3緊張材32と、の接続を解除する。
【0106】
その後、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版である既設の第1床版10を撤去し、撤去工程S410が完了する。
【0107】
撤去工程S410の後に、接続工程S110と、緊張工程S150と、を行い、プレキャストPC部材の緊張方法S400が完了する。なお、撤去工程S410の後に、接続工程S210と、緊張工程S250と、を行ってもよい。
【0108】
本実施形態によれば、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版である既設の第1床版10を撤去する撤去工程S410と、既設の第1床版10を撤去した箇所である第2床版20と第3床版30の間に、プレキャスト床版である新たな第1床版10を設置した後に、新たな第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20の第2緊張材22と、を接続し、新たな第1床版10の第1緊張材12の他端部14と、新たな第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30の第3緊張材32と、を接続する接続工程S110と、第1緊張材12を緊張する緊張工程S150と、を備える。
【0109】
既設の第1床版10は、既設の第1緊張材12によりプレストレスが付与されており、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22との接続を解除し、第1緊張材12の他端部14と第3床版30の第3緊張材32との接続を解除することにより、既設の第1床版10のみを撤去することができる。したがって、取り替えが必要な既設の第1床版10のみを、新たな第1床版10に取り換えることが可能となる。
【0110】
また、本実施形態によれば、従来のプレストレス床版のように一方向に順次接合するだけではなく、2つの既設床版に挟まれた床版に対しても緊張材12を緊張することができる。このように、二方向から施工ができるため、施工の自由度を向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、既設PC床版80を撤去する際に、撤去対象となる既設PC床版80と、残置される第2床版20と第3床版30と、を斫る必要がない。このため、既設PC床版80の撤去をより短時間で行うことが可能となる。
【0112】
また、本実施形態によれば、既設PC床版80を撤去して新たな第1床版10に取り替える際に、第1床版10と、第2床版20と、第3床版30とに、現場打ちコンクリートを打設する必要がない。このため、第1床版10と、第2床版20と、第3床版30とをすべてプレキャスト製の床版を用いることができるため、取替作業を短時間で行うことが可能となる。
【0113】
<第5実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法>
次に、第5実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S600について説明する。先ず、第5実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S600で用いられる第1床版10について説明する。
【0114】
図24に示すように、第5実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S600で用いられる第1床版10は、プレストレスを付与するための第1緊張材12と第1緊張材42とを有する。第1床版10は、第1緊張材12と第1緊張材42とが貫通される本体部11と、本体部11の両側を切り欠いた残部である延設部18、19とを有する。
【0115】
第1緊張材12は、延伸方向Xに対して傾斜され、第1緊張材12の一端部13は、第1緊張材12の他端部14よりも上方に配置される。第1緊張材12の一端部13と、第1緊張材12の他端部14は、第1床版10の本体部11から突出される。
【0116】
第1緊張材12の一端部13には、第1定着具150が定着される。第1緊張材12の一端部13は、第1接続具155により第2緊張材22に接続される。
【0117】
第1緊張材12の他端部14には、第5定着具55が定着される。第5定着具55は、第1緊張材12を第1床版10に定着するものである。第5定着具55は、スリーブ551と、ウェッジ552と、定着部材553と、を有する。
【0118】
スリーブ551は、第1緊張材12の周囲に設けられ、筒状に形成される。スリーブ551は、内面が傾斜面で形成され、内側にウェッジ552が設けられる。スリーブ551は、外面に定着部材553が設けられる。ウェッジ552は、スリーブ551の内側に配置され、外形が楔状に形成される。定着部材553は、リングナット、シム等が用いられ、第1床版10に接触される。
【0119】
第1緊張材42は、例えばPC鋼より線が用いられ、延伸方向Xに対して傾斜される。第1緊張材42の一端部43は、第1緊張材42の他端部44よりも下方に配置される。第1緊張材42は、周囲にシース管47が設けられ、シース管47には、グラウト材が充填される。なお、第1緊張材42は、炭素繊維や樹脂繊維などの連続繊維補強材を緊張材として用いることもできる。
【0120】
第1緊張材42の一端部43には、第6定着具65が定着される。第6定着具65は、第1緊張材42を第1床版10に定着するものである。第6定着具65は、スリーブ651と、ウェッジ652と、定着部材653と、を有する。
【0121】
スリーブ651は、第1緊張材42の周囲に設けられ、筒状に形成される。スリーブ651は、内面が傾斜面で形成され、内側にウェッジ652が設けられる。スリーブ651は、外面に定着部材653が設けられる。ウェッジ652は、スリーブ651の内側に配置され、外形が楔状に形成される。定着部材653は、リングナット、シム等が用いられ、第1床版10に接触される。
【0122】
第1緊張材42の他端部44には、第2定着具160が定着される。第1緊張材42の他端部44は、第2接続具165により第3緊張材32に接続される。
【0123】
次に、第5実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S600の手順について説明する。
【0124】
図25に示すように、プレキャストPC部材の緊張方法S600は、撤去工程S610と、接続工程S510と、緊張工程S550と、を備える。
【0125】
図26(a)に示すように、既設PC床版80は、PC床版であって、プレストレスを付与するための既設緊張材82を有する。既設PC床版80は、第2床版20と第3床版30との間に設置される。既設緊張材82は、第2床版20、第3床版30、及び既設PC床版80に貫通される。
【0126】
<撤去工程S610>
撤去工程S610では、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版80を撤去する。撤去工程S610は、斫り工程S620と、保持工程S630と、切断工程S640と、を有する。
【0127】
<斫り工程S620>
図26(b)に示すように、斫り工程S620では、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版80における第2床版20側の端部と第3床版30側の端部とを斫り、第2床版20、第3床版30、及び既設PC床版80に貫通された既設緊張材82を露出させる。既設PC床版80を斫る際には、ウォータージェットなどの斫り手段を用いて行う。
【0128】
<保持工程S630>
図27(a)に示すように、保持工程S630では、第1保持装置51を用いて第2床版20に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持させて第2緊張材として機能させ、第2保持装置52を用いて第3床版30に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持させて第3緊張材として機能させる。
【0129】
第1保持装置51は、支圧板501と、ロングシム502と、ショートシム503と、中間グリップ504と、双胴ジャッキ505と、を有する。第2保持装置52は、第1保持装置51と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0130】
保持工程S630では、露出させた既設緊張材82に支圧板501を設置し、支圧板501を第2床版20に接触させる。また、保持工程S630では、ロングシム502と、ショートシム503と、中間グリップ504と、を露出させた既設緊張材82に設置する。これにより、第2床版20側の既設緊張材82に第1保持装置51が設置される。第3床版30側についても同様に、露出させた既設緊張材82に、第2保持装置52を設置する。
【0131】
図27(b)に示すように、保持工程S630では、双胴ジャッキ505を中間グリップ504に設置し、双胴ジャッキ505により中間グリップ504に所定の緊張力を付与し、中間グリップ504により第2床版20に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持する。同様に、第3床版30に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持する。これにより、第2床版20に貫通された既設緊張材82は、第2緊張材として機能する。第3床版30に貫通された既設緊張材82は、第3緊張材として機能する。そして、緊張力による緊張材の伸びなどによりロングシム502とショートシム503間に生じた隙間に緊張力を保持する新たなシム506を入れる。
【0132】
図28(a)に示すように、保持工程S630では、第2床版20に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持し、第3床版30に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持した後、双胴ジャッキ505を取り外す。
【0133】
<切断工程S640>
図28(b)に示すように、切断工程S640では、第1保持装置51と第2保持装置52との間の既設緊張材82を切断し、既設PC床版80を撤去する。
【0134】
以上により撤去工程S610が完了する。
【0135】
プレキャストPC部材の緊張方法S600は、撤去工程S610の後に、プレキャスト床版である第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20に貫通された第2緊張材22と、を接続し、第1床版10に貫通された第1緊張材42の他端部44と、第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30に貫通された第3緊張材32と、を接続する接続工程S510と、第1緊張材12の他端部14側から第1緊張材12を緊張し、第1緊張材42の一端部43側から第1緊張材42を緊張する緊張工程S550と、を備える。
【0136】
<接続工程S510>
接続工程S510は、第1床版設置工程S520と、第2床版接続工程S530と、第3床版接続工程S540と、を有する。
【0137】
<第1床版設置工程S520>
図29(a)に示すように、第1床版設置工程S520では、第2緊張材である第2床版20に貫通された既設緊張材82に第3定着具25を設置し、第3定着具25に第1接続具155を設置する。また、第1床版設置工程S520では、第3緊張材である第3床版30に貫通された既設緊張材82に第4定着具35を設置し、第4定着具35に第2接続具165を設置する。
【0138】
そして、第1床版設置工程S520では、第2床版20と第3床版30との間に、第1床版10を配置する。
【0139】
次に、
図29(b)に示すように、第1床版設置工程S520では、第1床版10の本体部11に第1緊張材12を貫通させ、貫通された第1緊張材12の一端部13に、第1定着具150を設置する。また、第1床版設置工程S520では、第1床版10の本体部11に第1緊張材42を貫通させ、貫通された第1緊張材42の他端部44に、第2定着具160を設置する。
【0140】
<第2床版接続工程S530>
次に、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを第1接続具155により接続する第2床版接続工程S530を行う。第2床版接続工程S530では、第1接続具155と第1緊張材12の一端部13に設置された第1定着具150と、を接続することにより、第1緊張材12の一端部13と第2床版20の第2緊張材22とを接続する。第2床版接続工程S530では、第1緊張材12の他端部14に第5定着具55を設置する。
【0141】
<第3床版接続工程S540>
次に、第1緊張材42の他端部44と第3床版30の第3緊張材32とを第2接続具165により接続する第3床版接続工程S540を行う。第3床版接続工程S540では、第2接続具165と第1緊張材42の他端部44に設置された第2定着具160と、を接続することにより、第1緊張材42の他端部44と第3床版30の第3緊張材32とを接続する。第3床版接続工程S540では、第1緊張材42の一端部43に第6定着具65を設置する。
【0142】
<緊張工程S550>
次に、
図30(a)に示すように、緊張工程S550では、第5定着具55に緊張装置77を設置し、緊張装置77により第1緊張材12の他端部14側から第1緊張材12を緊張する。また、緊張工程S550では、第6定着具65に緊張装置77を設置し、緊張装置77により第1緊張材42の一端部43側から第1緊張材42を緊張する。
【0143】
図30(b)に示すように、緊張工程S550では、第1緊張材12と第1緊張材42との緊張が完了した後、第1保持装置51と第2保持装置52とを撤去する。
【0144】
プレキャストPC部材の緊張方法S500は、緊張工程S550の後に、更にプレキャスト板設置工程S160と、グラウト材充填工程S170と、を行ってもよい。
【0145】
以上により、プレキャストPC部材の緊張方法S600が完了する。
【0146】
本実施形態によれば、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版80を撤去する撤去工程S610と、第2床版20と第3床版30の間にプレキャスト床版である新たな第1床版10を設置した後に、新たな第1床版10に貫通された第1緊張材12の一端部13と、第2床版20に貫通された第2緊張材22とを接続し、新たな第1床版10の第1緊張材42の他端部44と、新たな第1床版10を挟んで第2床版20の反対側に配置された第3床版30に貫通された第3緊張材32と、を接続する接続工程S510と、第1緊張材12の他端部14側から第1緊張材12を緊張し、第1緊張材42の一端部43側から第1緊張材42を緊張する緊張工程S550と、を備える。これにより、既設PC床版80を撤去した箇所に、新たな第1床版10を設置することができる。したがって、取り替えが必要な既設PC床版80のみを、新たな第1床版10に取り換えることが可能となる。
【0147】
本実施形態によれば、撤去工程S610は、第2床版20と第3床版30の間に設置された既設PC床版80における第2床版20側の端部と第3床版30側の端部とを斫り、第2床版20、第3床版30、及び既設PC床版80に貫通された既設緊張材82を露出させる斫り工程S620と、第1保持装置51を用いて第2床版20に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持させて第2緊張材とし、第2保持装置52を用いて第3床版30に貫通される既設緊張材82の緊張力を保持させて第3緊張材とする保持工程S630と、第1保持装置51と第2保持装置52との間の既設緊張材82を切断する切断工程S640と、を有する。これにより、既設緊張材82が第2床版20、第3床版30、及び既設PC床版80に貫通される、従来型のPC床版であっても、既設PC床版80を撤去した箇所に、新たな第1床版10を設置することができる。したがって、取り替えが必要な既設PC床版80のみを、新たな第1床版10に取り換えることが可能となる。
【0148】
また、本実施形態によれば、既設PC床版80を撤去する際に、撤去対象となる既設PC床版80のみを斫り、残置される第2床版20と第3床版30と、を斫る必要がない。このため、既設PC床版80の撤去を短時間で行うことが可能となる。
【0149】
また、本実施形態によれば、既設PC床版80を撤去して新たな第1床版10に取り替える際に、第1床版10と、第2床版20と、第3床版30とに、現場打ちコンクリートを打設する必要がない。このため、第1床版10と、第2床版20と、第3床版30とをすべてプレキャスト製の床版を用いることができるため、取替作業を短時間で行うことが可能となる。
【0150】
また、本実施形態によれば、2つの既設床版に挟まれた床版に対しても緊張材12を緊張することができる。このように、二方向から施工ができるため、施工の自由度を向上させることができる。
【0151】
プレキャストPC部材の緊張方法S600では、接続工程S510に代わり、接続工程S110、S210を行ってもよい。また、プレキャストPC部材の緊張方法S600では、緊張工程S550に代わり、緊張工程S150、S250を行ってもよい。
【0152】
<第6実施形態:プレキャストPC部材の緊張方法>
次に、第6実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S700について説明する。
【0153】
図31に示すように、第6実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S700では、第1床版10を既設PC床版として撤去する撤去工程S710を備える。
【0154】
図32(a)に示すように、撤去工程S710では、第3定着具25と第2床版20との間に第1保持装置51を設置し、第2緊張材22の緊張力を保持する。また、撤去工程S710では、第4定着具35と第3床版30との間に第2保持装置52を設置し、第3緊張材32の緊張力を保持する。
【0155】
撤去工程S710では、既設PC床版である既設の第1床版10に貫通された既設の第1緊張材12の一端部13に設けられた第1定着具150と第1接続具155との接続を解除することにより、既設の第1緊張材12の一端部13と、第2床版20の第2緊張材22と、の接続を解除する。
【0156】
そして、撤去工程S710では、既設の第1床版10に貫通された既設の第1緊張材42の他端部44に設けられた第2定着具160と第2接続具165との接続を解除することにより、既設の第1緊張材42の他端部44と、第3床版30の第3緊張材32と、の接続を解除する。
【0157】
その後、
図32(b)に示すように、撤去工程S710では、既設PC床版である第1床版10を撤去する。
【0158】
本実施形態によれば、既設PC床版80を撤去する際に、撤去対象となる既設PC床版80と、残置される第2床版20と第3床版30と、を斫る必要がない。このため、既設PC床版80の撤去をより短時間で行うことが可能となる。
【0159】
また、本実施形態によれば、既設PC床版80を撤去して新たな第1床版10に取り替える際に、第1床版10と、第2床版20と、第3床版30とに、現場打ちコンクリートを打設する必要がない。このため、第1床版10と、第2床版20と、第3床版30とをすべてプレキャスト製の床版を用いることができるため、取替作業を短時間で行うことが可能となる。
【0160】
第6実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S700では、撤去工程S710の後に、接続工程S510を行ったが、接続工程S510に代わり、接続工程S110、S210を行ってもよい。また、第6実施形態に係るプレキャストPC部材の緊張方法S700では、接続工程S510の後に、緊張工程S550を行ったが、緊張工程S550に代わり、緊張工程S150、S250を行ってもよい。
【0161】
上述した各実施形態において、第1部材としてPC床版である第1床版10を例示して説明したが、第1部材は、プレキャストPC部材であれば、PC床版でなくてもよい。第2部材としてPC床版である第2床版20を例示して説明したが、第2部材は、プレストレスが付与されるPC部材であれば、PC床版でなくてもよい。第3部材としてPC床版である第3床版30を例示して説明したが、第3部材は、プレストレスが付与されるPC部材であれば、PC床版でなくてもよい。PC床版以外には、例えば、PC桁、プレキャスト製のPC梁等を用いることができる。
【0162】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これらの実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0163】
10 :第1床版
11 :本体部
12 :第1緊張材
13 :一端部
14 :他端部
17 :シース管
18 :延設部
19 :延設部
42 :第1緊張材
43 :一端部
44 :他端部
47 :シース管
150 :第1定着具
151 :スリーブ
152 :ウェッジ
153 :押さえワッシャ
154 :ボルト
155 :第1接続具
160 :第2定着具
161 :スリーブ
162 :ウェッジ
163 :定着部材
165 :第2接続具
166 :ネジブッシング
167 :接続用外套スリーブ
168 :接続用ボルト
265 :第2接続具
266 :第1スリーブ
267 :第2スリーブ
268 :プラグ
55 :第5定着具
551 :スリーブ
552 :ウェッジ
553 :定着部材
65 :第6定着具
651 :スリーブ
652 :ウェッジ
653 :定着部材
71 :プレキャスト板
73 :横締め部材
72 :プレキャスト板
74 :横締め部材
20 :第2床版
22 :第2緊張材
25 :第3定着具
251 :スリーブ
252 :ウェッジ
30 :第3床版
32 :第3緊張材
35 :第4定着具
351 :スリーブ
352 :ウェッジ
353 :定着部材
51 :第1保持装置
52 :第2保持装置
75 :緊張具
76 :緊張装置
761 :緊張用ジャッキ
762 :プリングヘッド
77 :緊張装置
78 :緊張用接続具
781 :ネジブッシング
782 :緊張用スリーブ
783 :コ字チェア
784 :カーブチェア
785 :ストレートチェア
786 :固定用ボルト
787 :グリップ
788 :緊張用PC鋼より線
789 :引き寄せ用より線
80 :既設PC床版
82 :既設緊張材
90 :PC床版
91 :躯体
92 :緊張材
95 :定着具
97 :緊張材
98 :定着具
S100 :プレキャストPC部材の緊張方法
S110 :接続工程
S120 :第1床版設置工程
S130 :第2床版接続工程
S140 :第3床版接続工程
S142 :第2定着具接続工程
S150 :緊張工程
S160 :プレキャスト板設置工程
S170 :グラウト材充填工程
S200 :プレキャストPC部材の緊張方法
S210 :接続工程
S240 :第3床版接続工程
S250 :緊張工程
S300 :プレキャストPC部材の緊張方法
S310 :接続工程
S320 :第1床版設置工程
S330 :第2床版接続工程
S331 :第3床版設置工程
S340 :第3床版接続工程
S350 :緊張工程
S400 :プレキャストPC部材の緊張方法
S410 :撤去工程
S600 :プレキャストPC部材の緊張方法
S610 :撤去工程
S620 :斫り工程
S630 :保持工程
S640 :切断工程
S510 :接続工程
S520 :第1床版設置工程
S530 :第2床版接続工程
S540 :第3床版接続工程
S550 :緊張工程
S700 :プレキャストPC部材の緊張方法
S710 :撤去工程
X :延伸方向
X1 :第1延伸方向
X2 :第2延伸方向
Y :幅方向
Z :上下方向