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特開2022-165356収集路形成部材及びこれを用いた貯水構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165356
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】収集路形成部材及びこれを用いた貯水構造体
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20221024BHJP
   E03B 3/03 20060101ALI20221024BHJP
   E03B 3/02 20060101ALI20221024BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03F1/00 Z
E03B3/03 B
E03B3/02 Z
E03B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070726
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】390033112
【氏名又は名称】積水テクノ成型株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森 俊明
(72)【発明者】
【氏名】森本 徳宏
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA01
2D063AA11
(57)【要約】
【課題】 本発明は、雨水と共に積層構造物内に流れ込んだゴミや落ち葉などの異物を容易に除去し、雨水の流通路の容積を確保して、雨水の地下浸透を長期間に亘って安定的に維持することができる収集路形成部材及びこれを用いた貯水構造体を提供する。
【解決手段】 本発明の収集路形成部材は、地面を掘削して形成された貯水槽内に上下方向に積層されて積層構造体を形成し且つベース部及び上記ベース部材に形成された柱部を有する積層部材に取り付けられて積層構造体内に異物を収集するための異物収集路を形成する収集路形成部材であって、上記積層部材の柱部間に配設されて上記異物収集路を構成する溝部と、上記溝部の開口端部に一体的に設けられて上記積層部材の柱部に取り付けられる水受け部とを有することを特徴とする。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削して形成された貯水槽内に上下方向に積層されて積層構造体を形成し且つベース部及び上記ベース部材に形成された柱部を有する積層部材に取り付けられて積層構造体内に異物を収集するための異物収集路を形成する収集路形成部材であって、
上記積層部材の柱部間に配設されて上記異物収集路を構成する溝部と、上記溝部の開口端部に一体的に設けられて上記積層部材の柱部に取り付けられる水受け部とを有することを特徴とする収集路形成部材。
【請求項2】
水受け部は、積層部材の柱部を挿通させる柱部挿通口を有していることを特徴とする請求項1に記載の収集路形成部材。
【請求項3】
溝部は、断面円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の収集路形成部材。
【請求項4】
水受け部は、溝部に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の収集路形成部材。
【請求項5】
収集路形成部材は、複数個の収集路形成部材をそれらの溝部の長さ方向に接続することによって異物収集路を形成し、互いに隣接する溝部の端部同士が重ね合わせられて接続可能に構成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の収集路形成部材。
【請求項6】
地面を掘削して形成された貯水槽内に配設され、且つ、ベース部及び上記ベース部材に形成された柱部を有する積層部材を上下方向に積層させて構築された積層構造体と、
上記積層部材の柱部間に配設されて上記異物収集路を構成する溝部と、上記溝部の開口端部に一体的に設けられて上記積層部材に取り付けられる水受け部とを有する収集路形成部材とを備えたことを特徴とする貯水構造体。
【請求項7】
貯水構造体が雨水浸透トレンチであることを特徴とする請求項6に記載の貯水構造体。
【請求項8】
貯水構造体が雨水貯留構造体であることを特徴とする請求項6に記載の貯水構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収集路形成部材及びこれを用いた貯水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局所的な豪雨(ゲリラ豪雨)などによって短時間に大量の降雨が発生した時に、雨水は下水道に流入するが、下水道の雨水排除能力を上回る事態が発生し、浸水被害が発生している。
【0003】
このような事態への対策の一つとして雨水浸透トレンチが挙げられる。雨水浸透トレンチは、地面に掘削して形成された貯水槽内に、雨水を誘導する合成樹脂製管を配設し、この合成樹脂製管の周囲に砕石を充填することによって構築され、トレンチを通じて雨水を地下浸透させている。
【0004】
特許文献1には、複数個を連結することで浸透トレンチを構成可能な連結ユニットであって、内側に貯留領域を区画すると共にその貯留領域から外部への通水を確保するための通水部が設けられた枠体と、その枠体内に設けられて前記貯留領域と連通可能な導水管部とを備え、当該ユニットに隣接配置される他のユニットに対して直列連結可能に構成されており、複数ユニットの直列連結時には各導水管部により浸透トレンチ内に一連の導水経路を構築可能である浸透トレンチ用連結ユニットが提案されている。
【0005】
特許文献2には、雨水貯留浸透施設用構造体と、通水溝部材とを含む雨水貯留浸透施設用組立体であって、前記構造体は、長手方向に伸びる内部空間を有しており、前記通水溝部材は、半割り筒状であって、前記内部空間を前記長手方向に沿って貫通している雨水貯留浸透施設用組立体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-183294号公報
【特許文献2】特開2009-24453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トレンチには、マンション、戸建て住宅などの建造物の屋根の他、道路、公園などの様々な場所で生じた雨水が流れ込み、流れ込む雨水には、ゴミや落ち葉などの異物が含まれている。
【0008】
従って、雨水に含まれているゴミや落ち葉などの異物が、浸透トレンチ用連結ユニットや雨水貯留浸透施設用組立体内に経時的に堆積し、雨水の流通路の容積が小さくなり、雨水の地下浸透の効率が低下すると共に、異物の堆積が多くなり過ぎると、トレンチに流れ込んだ雨水が逆流する虞れがある。
【0009】
しかしながら、特許文献1の浸透トレンチ用連結ユニット及び特許文献2の雨水貯留浸透施設用組立体は、これらの内部に堆積した異物を容易に除去することができず、メンテナンス性が低いという問題点を有する。
【0010】
本発明は、雨水と共に積層構造物内に流れ込んだゴミや落ち葉などの異物を容易に除去し、雨水の流通路の容積を確保して、雨水の地下浸透を長期間に亘って安定的に維持することができる収集路形成部材及びこれを用いた貯水構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の収集路形成部材は、
地面を掘削して形成された貯水槽内に上下方向に積層されて積層構造体を形成し且つベース部及び上記ベース部材に形成された柱部を有する積層部材に取り付けられて積層構造体内に異物を収集するための異物収集路を形成する収集路形成部材であって、
上記積層部材の柱部間に配設されて上記異物収集路を構成する溝部と、上記溝部の開口端部に一体的に設けられて上記積層部材の柱部に取り付けられる水受け部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の貯水構造体は、
地面を掘削して形成された貯水槽内に配設され、且つ、ベース部及び上記ベース部材に形成された柱部を有する積層部材を上下方向に積層させて構築された積層構造体と、
上記積層部材の柱部間に配設されて上記異物収集路を構成する溝部と、上記溝部の開口端部に一体的に設けられて上記積層部材に取り付けられる水受け部とを有する収集路形成部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の収集路形成部材は、ベース部に形成された柱部に取り付けることによって、積層構造体内に異物を収集するための異物収集路を容易に形成することができ、積層構造体内に堆積したゴミや落ち葉などの異物を異物収集路に集積させた上で、異物収集路に沿って積層構造体外に容易に除去することができ、貯水構造体のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0014】
本発明の収集路形成部材は、ベース部に形成された柱部に取り付けることによって積層構造体内に容易に配設することができ、特別な積層部材を用意する必要なく、汎用の積層部材にあっても容易に適用して積層構造体内に異物収集路を簡単に設けることができる。
【0015】
本発明の収集路形成部材は、積層構造体を構築する積層部材とは別体に形成されているので、積層部材とは別に保管可能となり、保管スペースを小さくすることができる。
【0016】
更に、収集路形成部材の施工現場までの輸送を積層部材とは別々に行なうことができるので、輸送する積層部材及び収集路形成部材の全体の体積を低減化することができ、輸送作業の簡易化と輸送コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】貯水構造体を示した断面図である。
図2】貯水構造体を示した斜視図である。
図3】積層部材を示した斜視図である。
図4】収集路形成部材を示した斜視図である。
図5】収集路形成部材を示した断面図である。
図6】積層部材に収集路形成部材を取り付ける要領を示した斜視図である。
図7】積層部材に収集路形成部材を取り付けた状態を示した斜視図である。
図8】積層構造体の一部を示した正面図である。
図9】積層部材の他の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の収集路形成部材及びこれを用いた貯水構造体の一例を図面を参照しながら説明する。収集路形成部材は、貯水構造体の構築に用いられる。貯水構造体は、集水した雨水の貯留空間として地中に構築される雨水貯留構造体と、集水した雨水を地中で一時的に貯留しつつ、地中に緩やかに排出して分散浸透させる雨水浸透トレンチとを含む。なお、雨水貯留構造体は、集水した雨水を貯留しつつ、下水道や河川などに徐々に排出させる雨水貯留構造体も含まれる。
【0019】
雨水浸透トレンチは、雨水の有効利用の目的、雨水が河川や地下雨水管路網に急激に流入することにより発生する都市型浸水災害を防止する目的、又は、地下水を涵養し地盤沈下を抑止する目的で、地中に構築されている。
【0020】
収集路形成部材は、積層構造体内に異物収集路を形成するために用いられる。積層構造体Aは、図1及び図2に示したように、地面に掘削して形成された貯水槽B内に積層部材Cを上下方向に、必要に応じて前後方向及び/又は左右方向に積層させて構築される。なお、前後方向とは、後述する異物収集路の長さ方向をいい、左右方向とは、異物収集路に対して直交する方向をいう。
【0021】
積層部材Cは、図3に示したように、平面長方形状で且つ所定厚み(好ましくは一定厚み)を有するベース部11と、このベース部11の上面に立設された複数個の柱部12とを有している。
【0022】
積層部材Cのベース部11は、平面矩形状の枠体111と、この枠体111内を区画している格子状の桟部材112とを有し、桟部材112の各区画112aには、上下方向に貫通した通水孔112bが形成されている。
【0023】
積層部材Cの柱部12は、ベース部11の上面に複数個、互いに独立して、ベース部11の幅方向及び長さ方向に所定間隔を存して一体的に形成されている。柱部12は、四角錐台(截頭四角錐)状に形成されている。柱部12の前後面は、その左右方向の中央部が上下方向に一部切り欠かれて溝部121、121が形成されていると共に、柱部12の左右側面は、その前後方向の中央部が上下方向の全長に亘って切り欠かれて溝部122、122が形成されており、柱部12の強度の向上が図られていると共に、積層構造体内の雨水の流通容量の増加が図られている。更に、柱部12の上面の前後方向の端部には、突出部123、123が形成されており、これらの突出部123、123は、積層部材C上に積層される別の積層部材Cのベース部11の下面における桟部材112の区画112a内に着脱自在に嵌合し、複数個の積層部材C,C・・・を安定的に上下方向に積層可能に形成されている。なお、柱部12にも上下方向に貫通する通水孔124が形成されてもよい。
【0024】
図6及び図7に示したように、収集路形成部材Dは、積層部材の柱部12、12間に形成された空間部に配設される。収集路形成部材Dは、前後方向に長い断面半円弧状に形成された溝部2と、この溝部2の左右開口端のそれぞれに一体的に形成された水受け部3とを有する。
【0025】
収集路形成部材Dの溝部2は、その前後方向の全長に亘って断面半円弧状(断面下向き凸円弧状)に形成されており、溝部2上に、水受け部3から流下したゴミや落ち葉などの異物(以下、単に「異物」ということがある)を堆積、収集させるように構成されている。図4では、溝部2には、上下方向に貫通した透水孔は形成されていないが、異物を透過させない程度の大きさを有する透水孔が上下方向に貫通させて形成されていてもよい。
【0026】
収集路形成部材Dは、複数個の収集路形成部材D,D・・・を前後方向に直列的に接続させて用いられる。収集路形成部材Dの溝部2の後端部には、後方に接続させた収集路形成部材Dの溝部2の前端部に突設した接続片21を受止し且つ上面が凹円弧状面に形成された接続受け部22が形成されている。なお、接続片21の基端部には、接続片21を必要に応じて切断可能とするための弱体部211が形成されている。
【0027】
即ち、直列的に接続された複数個の収集路形成部材D、Dにおいて、後方に配設した収集路形成部材Dの溝部2の接続片21を、前方に配設した収集路形成部材Dの溝部2の接続受け部22上に載置した状態とすることによって、前後方向に直列的に配設された収集路形成部材D、Dの溝部2、2同士が長さ方向に隙間なく且つ上面が略面一となるように連続的に接続され、積層構造体A内に異物収集路Eが形成されるように構成されている。
【0028】
収集路形成部材Dの溝部2における左右開口端のそれぞれには水受け部3、3が一体的に形成されている。水受け部3は、左右方向の端部から溝部2に向かって斜め下方に傾斜した平面長方形状の板状体に形成されており、前後端部を除いた全長を溝部2の左右開口端に接続一体化させている。
【0029】
水受け部3には、上下面間に亘って貫通する通水孔31が多数、形成されている。通水孔31は、雨水が流通可能である一方、雨水に含まれている異物の殆どが流通できない程度の大きさに形成されている。
【0030】
更に、水受け部3には、積層部材Cの柱部12が挿通可能な柱部挿通口32が複数、形成されている。柱部挿通口32は、収集路形成部材Dを積層部材Cの柱部12、12間の空間部内に配設した状態において、積層部材Cの柱部12に対応する位置に形成される。
【0031】
柱部挿通口32の形状は、積層部材Cの柱部12を柱部挿通口32に挿通させて、収集路形成部材Dを積層部材C上に配設した状態において、水受け部3の上面(下面)に沿った柱部12の断面形状に合致した形状又は僅かに大きな形状に形成されている。従って、収集路形成部材Dを積層部材C上に配設した状態において、水受け部3の柱部挿通口32と、これに対向する積層部材Cの柱部12の外周面との間には、雨水に含まれている異物の殆どが通過できない程度の隙間しか形成されないように構成されている。
【0032】
そして、水受け部3の前後端部は、溝部2の前後端部には接続されておらず、溝部の前後端部のそれぞれから外方に所定間隔を存して配設され且つ内面が円弧状面に形成されて接続管体Fを受止する管体受止部33、33と、この管体受止部33、33の下端から下方に向かって形成された脚部34、34とに形成され、収集路形成部材Dを積層部材Cの柱部12、12間上に配設した状態において、水受け部3の脚部34がベース部11の上面に載置された状態となるように構成されている。
【0033】
水受け部3の管体受止部33と溝部2との対向面間には、接続管体Fを挿入可能な隙間が形成されている。そして、前後方向に配設した収集路形成部材D、D間において、後方の収集路形成部材Dにおける溝部2の接続片21を、前方の収集路形成部材Dにおける溝部2の接続受け部22に受止させた状態にして、収集路形成部材D、Dを前後方向に接続すると、前後の収集路形成部材D、Dの管体受止部33、33とこれに対向する溝部2、2との間に、接続管体Fを配設するための管体収納空間部Gが形成されるように構成されている。この管体収納空間部G内に配設された接続管体Fによって、収集路形成部材Dの溝部2を接続して形成された異物収集路E上に堆積させた異物が、収集路形成部材D、D間から下方に脱落しないようにすることができる。なお、管体収納空間部G内に配設された接続管体Fは、管体受止部33の端部に形成された段部33aによって前後方向の移動が規制されている。
【0034】
又、図7及び図8に示したように、水受け部3の上面における左右方向の端部の前後部には、前後方向に長い突出部35、35が上方に向かって突設されており、上方に載置した積層部材Cのベース部11の下面に突出部35、35が当接し、貯水槽内の積層構造体A内に雨水が流れ込んだ状態において、収集路形成部材Dが必要以上に浮き上がらないように構成されている。
【0035】
次に、収集路形成部材Dを用いて貯水構造を施工する要領を説明する。先ず、集水枡Hと下水道などをつなぐ経路に沿って地面を掘削し、所定幅、所定長さ及び所定深さを有する貯水槽Bを形成する。貯水槽Bの長さ方向の両端部に筒状の集水枡H、Hを配設、固定する。
【0036】
次に、貯水槽B内の集水枡H、H間の空間部の底面部及び四方側面部に沿って透水シート(図示せず)を配設する。そして、図1及び図2に示したように、貯水槽Bの底面上に透水シートを介して積層部材Cを前後方向に隙間なく敷設する。この状態においては、積層部材Cのベース部11が貯水槽Bの底面上に隙間なく敷設されており、このベース部11上に形成された柱部12が左右方向及び前後方向に所定間隔を存して配設された状態となっている。なお、図1では、複数個の積層部材Cを前後方向に直列的に接続した状態にて敷設した場合を示したが、1個の積層部材Cのみが敷設されてもよいし、左右方向に複数列に積層部材Cが敷設されてもよい。又、貯水槽B内に敷設される積層部材Dは、長さの異なる複数種類の積層部材が用いられてもよい。
【0037】
そして、図6及び図7に示したように、積層部材C上に収集路形成部材Dをその水受け部3の柱部挿通口32のそれぞれに積層部材Cの柱部12が挿通した状態に配設する。次に、収集路形成部材Dを配設した積層部材Cの後方に接続している積層部材C上に上述と同様の要領で収集路形成部材Dを配設する。この状態において、前方に配設した収集路形成部材D(D1)の溝部2の接続受け部22上に、後方に配設した収集路形成部材D(D2)の接続片21が受止されて、前後の収集路形成部材D、Dの溝部2、2同士が接続した状態となっている。上記の要領で、前後方向に収集路形成部材Dを直列的に接続することによって、収集路形成部材Dの溝部2が前後方向に直列的に連続して接続して一個の異物収集路Eを形成している。
【0038】
又、前後に接続している収集路形成部材D、D間に形成された管体収納空間部G内に接続管体Fを配設する場合には、前後に配設する収集路形成部材D、D間に接続管体Fを配設した状態で、上述の要領にて、前後の収集路形成部材D1、D2を配設すればよい。
【0039】
しかる後、貯水槽Bの底面上に配設した積層部材C、C・・・上に、別の積層部材C、C・・・を積層し、貯水槽B内に積層部材C、C・・・を上下方向に、必要に応じて左右方向にも積層して積層構造体Aを構築する。最上層の積層部材C、C上には、平板状のパネルが上載された上で、コンクリート板やメッシュ板などの被覆材Kで被覆される。
【0040】
最上層の積層部材C、C・・・上にも収集路形成部材D、D・・・を配設する場合は、最下層の積層部材C、C・・・上に収集路形成部材D、D・・・を配設する場合と同様の要領で施工すればよい。
【0041】
そして、貯水槽Bの長さ方向の両端部内に配設された集水枡Hのそれぞれには、積層構造体Aに対向する壁部の上下部に流入口H1、H2が集水枡Hの内外周壁面間に亘って貫通した状態に貫設されている。
【0042】
集水枡H、Hの下側流入口H1、H1は、最下層の積層部材C上に配設された、複数個の収集路形成部材Dの溝部2が接続して形成された異物収集路Eの長さ方向の開口端に対向した状態に形成されており、異物収集路Eの開口端と集水枡Hの下側流入口H1とが必要に応じて管体Jを介して連結、連通されている。
【0043】
同様に、集水枡H、Hの上側流入口H2、H2は、最上層の積層部材C上に配設された、複数個の収集路形成部材Dの溝部2が接続して形成された異物収集路Eの長さ方向の開口端に対向した状態に形成されており、異物収集路Eの開口端と集水枡Hの上側流入口H2とが必要に応じて管体Jを介して連結、連通されている。
【0044】
このように構成された雨水浸透トレンチとして用いられる貯水構造体Iは、地面に掘削された貯水槽B内に構築された積層構造体A内に、収集路形成部材Dの溝部2によって形成された異物収集路Eが水平方向に指向した状態に配設され、異物収集路Eの長さ方向の両端部は集水枡内に連結、連通した状態となっている。従って、集水枡H内に流れ込んだ雨水は、集水枡Hの流入口H1、H2及び異物収集路Eの長さ方向の両端部を通じて積層構造体A内に流れ込む。
【0045】
集水枡Hの流入口H1、H2から積層構造体A内に流れ込んだ雨水は、貯水槽B内に一時的に貯留されつつ、貯水槽Bの内面に配設された透水シートを透過して地中に緩やかに排出して分散浸透される。
【0046】
集水枡Hの流入口H1、H2を通じて流入した雨水は、積層構造体Aの全体又は一部に貯留された状態となるが、貯水槽Bから地中への雨水の分散浸透に伴って、積層構造体A内の雨水は下方に徐々に移動する。
【0047】
最上層及び最下層を構成している積層部材C以外の中間層を構成している積層部材Cには収集路形成部材Dは配設されていない。積層構造体Aの中間層では、積層部材Cのベース部11の通水孔112b及び柱部12の通水孔124などを通じて積層構造体A内の雨水は下方に向かって円滑に移動する。
【0048】
一方、最上層及び最下層の積層部材C上には、収集路形成部材Dが配設されており、積層部材Cによって形成された空間部は収集路形成部材Dによって上下に仕切られた状態となっている。従って、最上層及び最下層の積層部材Cによって形成された空間部内を雨水が通過する時、雨水は、収集路形成部材Dの水受け部3に形成された通水孔31を主に通じて下方に移動する。
【0049】
雨水に含まれている異物は、収集路形成部材Dの水受け部3に形成された通水孔31を通過することはできず、収集路形成部材D上にて滞留した状態となる。そして、積層構造体A内に充満していた雨水量が減少し、雨水の水面付近の水が収集路形成部材Dを通過する時、雨水中に含まれていた異物は、水受け部3の傾斜面に沿って異物収集路E(溝部2)方向に移動し、異物収集路E内に堆積し収集される。
【0050】
このように、積層構造体A内に雨水と共に流入した異物は、収集路形成部材Dの異物収集路E内に堆積、収集されるので、積層構造体A内に分散した状態に異物が残存することを可能な限り低減させて、積層構造体A内の雨水の貯留容積(流路容積)の維持を図ることができる。
【0051】
収集路形成部材D、D間の接続部に接続管体Fを配設している場合には、接続管体Fが異物収集路E上から脱落した異物を受止し、異物が収集路形成部材Dの下方に脱落し、積層構造体A内に分散した状態に異物が残存することを可能な限り低減させて、積層構造体A内の雨水の貯留容積の維持を図ることができる。
【0052】
そして、収集路形成部材D、D・・・の異物収集路E上に収集、堆積した異物は、集水枡Hの流入口H1、H2を利用して除去することができる。例えば、何れか一方の集水枡Hの流入口H1、H2から洗浄水を噴射させて、異物収集路E上に堆積した異物を他方の集水枡Hの流出口H1、H2から除去する方法が挙げられる。異物収集路Eは、その全長に亘って滑らかな湾曲面に形成されているので、異物収集路E上に堆積した異物を洗浄水によって異物収集路E上から集水枡H内に円滑に押出して積層構造体A外に排出することができる。なお、洗浄水の代わりに、何れか一方の集水枡Hの流入口H1、H2から洗浄具を異物収集路E内に挿入し、異物収集路E上に収集した異物を他方の集水枡Hの流出口H1、H2側に押出して積層構造体A外に除去してもよい。
【0053】
又、収集路形成部材D、D・・・の異物収集路E内に、この異物収集路E上に堆積した異物を掻き出すための洗浄具を挿入し、洗浄具によって異物収集路E上の異物の堆積物を手前側に引き寄せて掻き出すことによって、異物収集路E上に収集した異物を積層構造体A外に排出してもよい。
【0054】
以上のように、収集路形成部材D、D・・・によって形成された異物収集路E上に収集した異物は、洗浄水や洗浄具などの洗浄用具を用いて容易に積層構造体A外に排出することができ、貯水構造体Iは、優れたメンテナンス性を有している。
【0055】
上記した貯水構造体Iでは、貯水槽B内における長さ方向の両端部に集水枡H、Hを配設した場合を説明したが、貯水槽B内に集水枡Hを一つのみ配設した場合であってもよい。
【0056】
又、上記で説明した貯水構造体Iが雨水浸透トレンチである場合を説明したが、貯水構造体Iは、集水した雨水の貯留空間として地中に構築される雨水貯留構造体であってもよい。
【0057】
貯水構造体Iが雨水貯留構造体である場合、積層部材Cは、前後左右に複数列及び複数行に隙間なく並設されて積層構造体Aが構成される。なお、積層構造体Aは、その底面部及び四方側面が雨水を透過させない非透水性シートで被覆される。
【0058】
そして、積層構造体Aにおける任意の層(好ましくは、最下層及び/又は最上層)の積層部材Cに上述と同様の要領にて複数個の収集路形成部材を配設し、収集路形成部材の溝部を直列的に接続させることによって異物収集路を形成すればよい。
【0059】
そして、積層構造体Aのうちの何れかの側面の一部に沿った状態に集水枡を配設し、この集水枡に上記と同様に流入口を内外方向に貫通させて形成し、この流入口を収集路形成部材の溝部を直列的に接続させて形成された異物収集路の開口端に連結、連通させて雨水貯留構造体を構築すればよい。
【0060】
又、積層部材Cは、図3に示した構造である必要はない。図3の積層部材では、柱部12を複数個、独立して複数個、ベース上に一体的に形成した場合を示したが、ベース11上に前後方向に柱部12を互いに独立させることなく、長さ方向に連続させた形態であってもよい(図9参照)。このような形態の場合、柱部12の上端部にその長さ方向に断続的に突出部13を形成し、この突出部に収集路形成部材Dの水受け部3の柱部挿通口32を被嵌させ、収集路形成部材Dを積層部材Cに取り付けられればよい。
【符号の説明】
【0061】
2 溝部
11 ベース部
12 柱部
21 接続片
3 水受け部
32 柱部挿通口
33 管体受止部
A 積層構造体
B 貯水槽
C 積層部材
D 収集路形成部材
E 異物収集路
F 接続管体
G 管体収納空間部
H 集水枡
H1 下側流入口
H2 上側流入口
I 貯水構造体
J 管体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9