(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165357
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】切断装置およびコンクリートブロックの切り出し方法
(51)【国際特許分類】
B28D 1/08 20060101AFI20221024BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20221024BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20221024BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B28D1/08
E04G23/08 D
G21F9/30 535F
B24B27/06 H
B24B27/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070729
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516121833
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】平 治
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和茂
(72)【発明者】
【氏名】平田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】日野 和徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 凌
【テーマコード(参考)】
2E176
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD22
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB03
3C069BC01
3C069CA07
3C069EA01
3C158AA05
3C158AA14
3C158AA16
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB03
3C158DA03
(57)【要約】
【課題】コンクリートブロックを短工期で切り出し可能な切断装置を提供すること。
【解決手段】切断装置1は、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤ10と、ワイヤ10を案内するクロスプーリワイヤガイドユニット11Bと、ワイヤ10を回転させる駆動装置12と、を備える。クロスプーリワイヤガイドユニット11Bは、所定方向に延びる支持ビーム20と、支持ビーム20の先端側に設けられて前記ワイヤが掛けられた第1ガイドプーリ41および第2ガイドプーリ42と、を備える。第1ガイドプーリ41は、支持ビーム20の中心軸Cに交差する方向を回転軸Tとして回転自在な略円錐形状である。第2ガイドプーリ42は、支持ビーム20の中心軸Cおよび第1ガイドプーリ41の回転軸Tに交差する方向を回転軸Uとして回転自在な円盤形状であり、かつ、一部が第1ガイドプーリ41の内部に配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを切断する切断装置であって、
ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤと、前記ワイヤを案内するワイヤガイドユニットと、前記ワイヤを回転させる駆動装置と、を備え、
前記ワイヤガイドユニットは、所定方向に延びる支持ビームと、
前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部と、
前記支持ビームの先端側に設けられて前記ワイヤが掛けられた第1プーリおよび第2プーリと、を備え、
前記第1プーリは、前記支持ビームの中心軸に交差する方向を回転軸として回転自在な略円錐形状であり、
前記第2プーリは、前記支持ビームの中心軸および前記第1プーリの回転軸に交差する方向を回転軸として回転自在な円盤形状であり、かつ、一部が前記第1プーリの内部に配置されることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記ワイヤを案内する第2のワイヤガイドユニットをさらに備え、
前記第2のワイヤガイドユニットは、所定方向に延びる支持ビームと、
前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部と、
前記支持ビームの先端に設けられて前記支持ビームの延出方向を回転軸として回転自在な回転部と、
前記回転部に設けられて前記回転部の回転軸上でかつ前記回転軸に交差する方向を回転軸として回転自在なプーリと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切断装置を用いて、コンクリート構造物から略直方体形状のコンクリートブロックを切り出すコンクリートブロックの切り出し方法であって、
前記コンクリート構造物の表面の矩形状を成す4箇所に4つのガイド穴を形成するガイド穴形成工程と、
前記ガイド穴に、前記ワイヤを掛け回した前記切断装置のワイヤガイドユニットを挿入し、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記ワイヤで前記ガイド穴同士の間のコンクリートを少なくとも二面同時に切断する作業を行って、前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうち三面を切断する第1切断工程と、
前記コンクリートブロックの背面を切断する第2切断工程と、
前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうちの残りを切断する第3切断工程と、を備えることを特徴とするコンクリートブロックの切り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを切断する切断装置、および、この切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子炉を廃炉にする際、原子炉を囲む生体遮蔽壁を解体する必要がある。この遮蔽壁は、壁厚の大きな鉄筋コンクリート構造体であるため、この遮蔽壁から略直方体形状のコンクリートブロックを順に切り出して撤去することが提案されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1、2には、被切断構造物から略直方体形状のコンクリートブロックを切り出す方法が示されている。具体的には、まず、被切断構造物に4つのガイドホールを削孔し、このうち2つのガイドホールにワイヤガイドユニットを挿入して、エンドレスの切断用ワイヤを掛け回し、その後、ワイヤを回転させることで、ガイドホール同士の間の面を切断する。この作業を繰り返すことで、コンクリートブロックの下面、両側面、背面、上面の順に切断する。
特許文献1、2のワイヤガイドユニットでは、一度の切断作業で一面しか切断できないため、ワイヤガイドユニットの盛り替え回数が多くなり、コンクリートブロックの切り出し作業に時間がかかる、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-148393号公報
【特許文献2】特開平9-127295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンクリートブロックを短工期で切り出し可能な切断装置、および、この切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、コンクリート構造物からコンクリートブロックを切り出すための切断装置として、ワイヤガイドユニットの支持ビームの先端に、コンクリートブロックの二面(水平面および鉛直面)を同時に切断可能なクロスプーリを設けることで、ワイヤガイドユニットの盛り替え回数を削減して、短時間でコンクリートブロックを取り出すことができる点に着眼し、本発明に至った。
第1の発明の切断装置は、コンクリートを切断する切断装置(例えば、後述の切断装置1)であって、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤ(例えば、後述のワイヤ10)と、前記ワイヤを案内するワイヤガイドユニット(例えば、後述のクロスプーリワイヤガイドユニット11B)と、前記ワイヤを回転させる駆動装置(例えば、後述の駆動装置12)と、を備え、前記ワイヤガイドユニットは、所定方向に延びる支持ビーム(例えば、後述の支持ビーム20)と、前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部(例えば、後述の支持部21)と、前記支持ビームの先端側に設けられて前記ワイヤが掛けられた第1プーリ(例えば、後述の第1ガイドプーリ41)および第2プーリ(例えば、後述の第2ガイドプーリ42)と、を備え、前記第1プーリは、前記支持ビームの中心軸(例えば、後述の中心軸C)に交差する方向を回転軸(例えば、後述の回転軸T)として回転自在な略円錐形状であり、前記第2プーリは、前記支持ビームの中心軸および前記第1プーリの回転軸に交差する方向を回転軸(例えば、後述の回転軸U)として回転自在な円盤形状であり、かつ、一部が前記第1プーリの内部に配置されることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、切断装置を、環状のワイヤ、ワイヤガイドユニット、および駆動装置を含んで構成した。よって、コンクリート構造物にガイド穴を形成し、このガイド穴にワイヤガイドユニットを挿入し、この状態で、駆動装置によりワイヤを回転させることで、ワイヤでガイド穴同士の間のコンクリートを切断できる。
このとき、ワイヤガイドユニットに、回転軸が互いに交差する第1プーリおよび第2プーリ(クロスプーリ)を設けたので、ワイヤが直交する方向に移動するから、ワイヤでガイド穴同士の間のコンクリートを少なくとも二面同時に切断できる。例えば、コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうち少なくとも二面を同時に切断できる。よって、ワイヤガイドユニットの盛り替え回数を削減して、コンクリートブロックの切り出し作業にかかる時間を低減できる。
【0007】
第2の発明の切断装置は、前記ワイヤを案内する第2のワイヤガイドユニット(例えば、後述の自在プーリワイヤガイドユニット11A)をさらに備え、前記第2のワイヤガイドユニットは、所定方向に延びる支持ビーム(例えば、後述の支持ビーム20)と、前記支持ビームの外周面から外側に向かって放射状に延びる支持部(例えば、後述の支持部21)と、前記支持ビームの先端に設けられて前記支持ビームの延出方向を回転軸として回転自在な回転部(例えば、後述の回転部24)と、前記回転部に設けられて前記回転部の回転軸(例えば、後述の回転軸Q)上でかつ前記回転軸に交差する方向を回転軸(例えば、後述の回転軸P)として回転自在なプーリ(例えば、後述のガイドプーリ23)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ガイド穴に第2のワイヤガイドユニットを挿入し、この状態で、駆動装置によりワイヤを回転させることで、ワイヤでガイド穴同士の間のコンクリートを一面切断できる。例えば、コンクリートブロックの背面を切断できる。
【0009】
第3の発明のコンクリートブロックの切り出し方法は、上述の切断装置を用いて、コンクリート構造物(例えば、後述の鉄筋コンクリート壁2)から略直方体形状のコンクリートブロック(例えば、後述のコンクリートブロック3)を切り出すコンクリートブロックの切り出し方法であって、前記コンクリート構造物の表面の矩形状を成す4箇所に4つのガイド穴(例えば、後述のガイド穴5A~5D)を形成するガイド穴形成工程(例えば、後述のステップS1)と、前記ガイド穴に、前記ワイヤを掛け回した前記切断装置のワイヤガイドユニット(例えば、後述のクロスプーリワイヤガイドユニット11B)を挿入し、前記切断装置の駆動装置を駆動して前記ワイヤを回転させることで、前記ワイヤで前記ガイド穴同士の間のコンクリートを少なくとも二面同時に切断する作業を行って、前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面(例えば、後述の両側面3A、3B、上面3C)のうち三面を切断する第1切断工程(例えば、後述のステップS2)と、前記コンクリートブロックの背面(例えば、後述の背面3D)を切断する第2切断工程(例えば、後述のステップS3)と、前記コンクリートブロックの両側面、上面、および下面のうちの残り(例えば、後述の下面3E)を切断する第3切断工程(例えば、後述のステップS4)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、コンクリート構造物にワイヤガイドユニットを挿入するためのガイド穴を4つ設けるだけで、これらガイド穴を利用して、切断装置により略直方体形状のコンクリートブロックの両側面、上面、背面、および下面を切断して、コンクリート構造物からコンクリートブロックを取り出すことができる。このとき、ワイヤでガイド穴同士の間のコンクリートを少なくとも二面同時に切断できるので、ワイヤガイドユニットの盛り替え回数を削減して、コンクリートブロックの切り出し作業にかかる時間を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンクリートブロックを短工期で切り出し可能な切断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切断装置の構成を示す模式図である。
【
図2】切断装置の自在プーリワイヤガイドユニットの先端部分の側面図である。
【
図3】
図2の自在プーリワイヤガイドユニットのA-A断面図およびB-B矢視図である。
【
図4】切断装置のクロスプーリワイヤガイドユニットの平面図である。
【
図5】クロスプーリワイヤガイドユニットの側面図である。
【
図6】
図5のクロスプーリワイヤガイドユニットのC-C断面図である。
【
図7】切断装置を用いたコンクリートブロックの切り出し方法のフローチャートである。
【
図8】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その1)である。
【
図9】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その2)である。
【
図10】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その3)である。
【
図11】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その4)である。
【
図12】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その5)である。
【
図13】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その6)である。
【
図14】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その7)である。
【
図15】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その8)である。
【
図16】コンクリートブロックの切り出し方法の説明図(その9)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ワイヤガイドユニットの支持ビームの先端に、コンクリートブロックの直交する二面(水平面および鉛直面)を同時に切断可能なクロスプーリ(第1プーリおよび第2プーリ)を設けたコンクリートの切断装置、およびその切断装置を使用したコンクリートブロックの切り出し方法である。具体的には、第1プーリは、支持ビームの中心軸に交差する方向を回転軸として回転自在な略円錐形状であり、第2プーリは、支持ビームの中心軸および第1プーリの回転軸に交差する方向を回転軸として回転自在な円盤形状であり、かつ、一部が前記第1プーリの内部に配置される。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明は、コンクリートブロック3の切り出しに用いられる切断装置1と、この切断装置1を用いて、コンクリート構造物としての鉄筋コンクリート壁2から略直方体形状のコンクリートブロック3を切り出す方法である(
図8参照)。
図1は、切断装置1の構成を示す模式図である。
切断装置1は、鉄筋コンクリート壁2を切断するものである。この切断装置1は、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれた環状のワイヤ10と、ワイヤ10を案内する自在プーリワイヤガイドユニット11Aおよびクロスプーリワイヤガイドユニット11Bと、ワイヤ10を一方向に回転させる駆動装置12と、を備えており、ワイヤ10の冷却に水を使用しない無水ワイヤソーである。
【0014】
図2は、自在プーリワイヤガイドユニット11Aの先端部分の側面図である。
図3(a)は、
図2の自在プーリワイヤガイドユニット11AのA-A断面図であり、
図3(b)は、
図2の自在プーリワイヤガイドユニット11AのB-B矢視図である。
この自在プーリワイヤガイドユニット11Aは、後述のガイド穴5A~5Dに挿入可能である。
自在プーリワイヤガイドユニット11Aは、所定方向に延びる支持ビーム20と、支持ビーム20のガイド穴5A~5Dに対する姿勢を保持する支持部21と、支持ビーム20の先端部に回転自在に設けられた回転部24と、回転部24に回転自在に設けられてワイヤ10が掛け回されたガイドプーリ23と、回転部24に設けられてワイヤ10をガイドプーリ23に案内するガイドプーリ25と、回転部24に設けられてガイドプーリ23から延びるワイヤ10を案内する一対のガイドプーリ26と、を備える。
【0015】
支持ビーム20の中心軸Cは、ガイド穴5A~5Dの中心軸に略平行となっている。
支持部21は、支持ビーム20の先端部から外側に向かって放射状に延びており、ガイド穴5A~5Dの内面に突っ張ることで、支持ビーム20のガイド穴5A~5Dに対する姿勢を保持する。
回転部24の回転軸Qは、支持ビーム20の延出方向に略平行となっている。具体的には、回転部24の回転軸Qは、ガイド穴5A~5Dの中心軸上にある。ワイヤ10は、この回転部24の回転軸Q上に配置されている。
ガイドプーリ23は、ワイヤ10の進行方向を略90°変えるものである。このガイドプーリ23の回転軸Pは、回転部24の回転軸Q上でかつ回転軸Qに交差している。
ガイドプーリ25は、回転部24の回転軸Qを通るワイヤ10をガイドプーリ23に案内するものである。このガイドプーリ25の回転軸Rは、回転部24の回転軸Qに交差している。また、このガイドプーリ25は、ワイヤ10が掛けられる溝が回転部24の回転軸Q上に位置するように配置されている。
ガイドプーリ26は、ガイドプーリ23を通るワイヤ10がガイドプーリ23の溝から外れるのを防止するものである。このガイドプーリ26の回転軸Sは、回転部24の回転軸Qに略平行である。また、ガイドプーリ26は、ガイドプーリ23を通ったワイヤ10を両側から挟み込む位置に配置されている。
【0016】
図4は、クロスプーリワイヤガイドユニット11Bの平面図である。
図5は、
図4のクロスプーリワイヤガイドユニット11Bの側面図である。
図6は、
図5のクロスプーリワイヤガイドユニット11BのC-C断面図である。
このクロスプーリワイヤガイドユニット11Bは、後述のガイド穴5A~5Dに挿入可能である。
クロスプーリワイヤガイドユニット11Bは、所定方向に延びる支持ビーム20と、支持ビーム20のガイド穴5A~5Dに対する姿勢を保持する支持部21と、支持ビーム20に回転自在に設けられてワイヤ10が掛け回された第1プーリ(コーン形状プーリ)としての第1ガイドプーリ41、第2プーリ(ディスク形状プーリ)としての第2ガイドプーリ42、第3ガイドプーリ43、第4ガイドプーリ44、第5ガイドプーリ45、および第6ガイドプーリ46と、を備える。
【0017】
支持ビーム20の中心軸Cは、ガイド穴5A~5Dの中心軸に略平行となっている。
第1ガイドプーリ41は、略円錐形状であり、支持ビーム20の先端側に設けられている。この第1ガイドプーリ41の回転軸Tは、支持ビーム20の中心軸Cに交差している。
第2ガイドプーリ42は、円盤形状であり、一部が円錐形状の第1ガイドプーリ41の内部に配置されている。この第2ガイドプーリ42の回転軸Uは、支持ビーム20の中心軸Cおよび第1ガイドプーリ41の回転軸Tに交差している。
第3ガイドプーリ43および第4ガイドプーリ44は、円盤形状であり、これら第3ガイドプーリ43および第4ガイドプーリ44の回転軸V、Wは、第2ガイドプーリ42の回転軸Uに略平行となっている。
第5ガイドプーリ45および第6ガイドプーリ46は、円盤形状であり、これら第5ガイドプーリ45および第6ガイドプーリ46の回転軸X、Yは、第1ガイドプーリ41の回転軸Tに略平行となっている。
【0018】
以上のクロスプーリワイヤガイドユニット11Bでは、ワイヤ10は、第1ガイドプーリ41、第5ガイドプーリ45、第6ガイドプーリ46、第4ガイドプーリ44、第3ガイドプーリ43、第2ガイドプーリ42の順に掛けられている。これにより、
図4に示すように、平面視で、第1ガイドプーリ41に掛けられたワイヤ10は、中心軸Cに対する角度θ
1を約0°~約90°の範囲で自在に変更可能である。また、
図5に示すように、側面視で、第2ガイドプーリ42に掛けられたワイヤ10は、中心軸Cに対する角度θ
2を約0°~約90°の範囲で自在に変更可能である。さらに、
図6に示すように、中心軸Cに沿った方向から視ると、第1ガイドプーリ41に掛けられたワイヤ10と、第2ガイドプーリ42に掛けられたワイヤ10とは、所定の角度(例えば略90°)が保持される。
【0019】
以下、切断装置1を用いて、鉄筋コンクリート壁2から直方体形状のコンクリートブロック3を切り出す方法について、
図7のフローチャートを参照しながら説明する。
具体的には、
図8に示すように、コンクリートブロック3は、側面3A、3B、上面3C、背面3D、下面3Eを備えている。
ステップS1では、
図9に示すように、鉄筋コンクリート壁2の表面4の矩形状を成す4箇所にマーキングして削孔し、4つのガイド穴5A、5B、5C、5Dを形成する。
【0020】
ステップS2では、コンクリートブロック3の側面3A、3Bおよび上面3Cを同時に切断する。具体的には、
図10に示すように、上側の2つのガイド穴5C、5Dのそれぞれに、ワイヤ10を掛け回したクロスプーリワイヤガイドユニット11Bを挿入する。また、下側の2つのガイド穴5A、5Bのそれぞれに、ワイヤ10を掛け回した自在プーリワイヤガイドユニット11Aを挿入する。
なお、
図10~
図16では、理解を容易にするため、ワイヤガイドユニット11A、11Bの構成ついて、全てを表示せず、第1ガイドプーリ41、第2ガイドプーリ42、およびガイドプーリ23を主に表示する。
この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、
図11に示すように、ワイヤ10でガイド穴5A~5D同士の間のコンクリートを切断して、
図12に示すように、コンクリートブロック3の側面3A、3Bおよび上面3Cを切断する。このとき、鉄筋コンクリート壁2の正面側から視ると、切断面である側面3A、3Bおよび上面3Cは、略コの字形状となる。
【0021】
ステップS3では、コンクリートブロックの側面3A、3Bおよび上面3Cの切断が完了したので、コンクリートブロック3の背面3Dを切断する。具体的には、まず、ガイド穴5C、5Dに挿入したクロスプーリワイヤガイドユニット11Bを取り出す。これにより、
図13(a)に示すように、上側の隣り合う2つのガイド穴5C、5Dの奥にワイヤ10を掛け回す。
このとき、上側の隣り合う2つのガイド穴5C、5Dの奥に補助具としてのガイドブロック32を取り付けて、これらガイドブロック32にワイヤ10を掛け回す。このガイドブロック32は、
図13(b)にも示すように、上側の2つのガイド穴5C、5Dの内面に嵌合する嵌合面32Aと、ワイヤ10を案内するガイド面32Bと、を備えている。
この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、
図14(a)に示すように、ワイヤ10でコンクリートを切断する。このとき、コンクリートの切断の進行に伴ってワイヤ10の角度が変化するが、自在プーリワイヤガイドユニット11Aの回転部24が回転することで、ガイドプーリ23がワイヤ10の角度の変化に追従する。これにより、
図14(b)に示すように、コンクリートブロック3の背面3Dを切断する。
【0022】
ステップS4では、コンクリートブロックの側面3A、3B、上面3Cおよび背面3Dの切断が完了したので、残る下面3Eを切断する。具体的には、まず、ガイド穴5A、5Bに挿入した自在プーリワイヤガイドユニット11Aを取り出す。これにより、
図15(a)に示すように、下側の隣り合う2つのガイド穴5A、5Bの奥にワイヤ10を掛け回す。この状態で、駆動装置12を駆動してワイヤ10を回転させることで、
図15(b)に示すように、ワイヤ10でガイド穴5A、5B同士の間のコンクリートを切断して、
図16に示すように、コンクリートブロック3の下面3Eを切断する。
ステップS5では、鉄筋コンクリート壁2からコンクリートブロック3を取り出す。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)切断装置1を、環状のワイヤ10、クロスプーリワイヤガイドユニット11B、および駆動装置12を含んで構成した。よって、鉄筋コンクリート壁2にガイド穴5A~5Dを形成し、ガイド穴5A、5Dにクロスプーリワイヤガイドユニット11Bを挿入し、この状態で、駆動装置12によりワイヤ10を回転させることで、ワイヤ10でガイド穴5A~5D同士の間のコンクリートを切断できる。
このとき、クロスプーリワイヤガイドユニット11Bに、回転軸T、Uが互いに交差する第1ガイドプーリ41および第2ガイドプーリ42を設けたので、ワイヤ10が直交する方向に移動するから、ワイヤ10でガイド穴5A~5D同士の間のコンクリートを三面同時に切断できる。具体的には、コンクリートブロック3の両側面3A、3Bおよび上面3Cを同時に切断できる。よって、ワイヤガイドユニットの盛り替え回数を削減して、コンクリートブロック3の切り出し作業にかかる時間を低減できる。
(2)ガイド穴5A~5Dに自在プーリワイヤガイドユニット11Aを挿入し、この状態で、駆動装置12によりワイヤ10を回転させることで、ワイヤ10でガイド穴5A~5D同士の間のコンクリートを一面切断できる。具体的には、コンクリートブロック3の背面3Dを切断できる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態では、上側の2つのガイド穴5C、5Dのそれぞれに、クロスプーリワイヤガイドユニット11Bを挿入し、下側の2つのガイド穴5A、5Bのそれぞれに、自在プーリワイヤガイドユニット11Aを挿入して、駆動装置12を駆動することで、コンクリートブロック3の三面を同時に切断したが、これに限らない。例えば、上側のガイド穴5C、5Dの一方にのみ、クロスプーリワイヤガイドユニット11Bを挿入し、この一方のガイド穴に隣接するガイド穴のそれぞれに、自在プーリワイヤガイドユニット11Aを挿入して、駆動装置12を駆動することで、コンクリートブロック3の隣り合う二面を同時に切断してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…切断装置 2…鉄筋コンクリート壁(コンクリート構造物)
3…コンクリートブロック 3A、3B…側面 3C…上面 3D…背面 3E…下面
4…鉄筋コンクリート壁の表面 5A、5B、5C、5D…ガイド穴
10…ワイヤ 11A…自在プーリワイヤガイドユニット(第2のワイヤガイドユニット)
11B…クロスプーリワイヤガイドユニット(ワイヤガイドユニット) 12…駆動装置
20…支持ビーム C…支持ビームの中心軸 21…支持部
23…ガイドプーリ P…ガイドプーリ23の回転軸
24…回転部 Q…回転部の回転軸
25…ガイドプーリ R…ガイドプーリ25の回転軸
26…ガイドプーリ S…ガイドプーリ26の回転軸
32…ガイドブロック(補助具) 32A…嵌合面 32B…ガイド面
41…第1ガイドプーリ T…第1ガイドプーリの回転軸
42…第2ガイドプーリ U…第2ガイドプーリの回転軸
43…第3ガイドプーリ V…第3ガイドプーリの回転軸
44…第4ガイドプーリ W…第4ガイドプーリの回転軸
45…第5ガイドプーリ X…第5ガイドプーリの回転軸
46 第6ガイドプーリ Y…第6ガイドプーリの回転軸