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  • 特開-保湿フィルタ及び保湿マスク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165448
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】保湿フィルタ及び保湿マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20221025BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20221025BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20221025BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
D04B1/00 B
D04B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070764
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】505297633
【氏名又は名称】株式会社コーポレーションパールスター
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】新宅 光男
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴央
【テーマコード(参考)】
2E185
4L002
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA09
2E185CB15
2E185CC32
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC07
4L002BA01
4L002BB01
4L002EA00
4L002EA03
4L002FA00
(57)【要約】
【課題】市販のマスクに貼着して使用することができ、マスク内を所定の湿度雰囲気にするとともに脱着可能で再使用可能な保湿フィルタ及びこれを用いた保湿マスクを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る保湿マスクは、耳かけを有するマスク本体と、そのマスク本体の顔面側に貼着される止めバンドと、その止めバンドに貼着されて前記マスク本体の顔面側を覆う保湿フィルタとを有する保湿マスクであって、前記保湿フィルタは、両端部にまくれを有する筒状の編地からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳かけを有するマスク本体と、そのマスク本体の顔面側に貼着される止めバンドと、その止めバンドに貼着されて前記マスク本体の顔面側を覆う保湿フィルタとを有する保湿マスクであって、
前記保湿フィルタは、両端部にまくれを有する筒状の編地からなる保湿マスク。
【請求項2】
保湿フィルタは、ポリエステルナノファイバ糸から編成される表層と、ポリエステル繊維糸から編成される裏層の二層構造を有してなることを特徴とする請求項1に記載の保湿マスク。
【請求項3】
止めバンドは、マスク本体に係止するオス面を備えたマスク帯と保湿フィルタに係止するオス面を備えた保湿フィルタ帯が表裏一体に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の保湿マスク。
ここでオス面とは、一般に、面ファスナのループに係止するフックを備える面をいう。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の保湿マスクに使用される止めバンドであって、マスク帯と保湿フィルタ帯の両端部、または両端部及び中央部が縫製されて表裏一体になり、マスク本体側に着色された縫糸が表れてなる止めバンド。
【請求項5】
浄水に浸して加水され、請求項1~3の何れか一項に記載の保湿マスクに着脱して再使用される保湿フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱着可能で再使用可能な保湿フィルタ及びこれを用いた保湿マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、風邪、花粉症又はアレルギー性鼻炎に対する予防対策として利用されている。また、この1~2年は新型コロナウィルス対策として注目され、世界中の多くの人によって使用されている。新型コロナウィルス感染症拡大初期にマスクが不足し、従来から一般に使用されてきたガーゼマスクが大量に使用された。しかし、不織布製のサージカルマスクが新型コロナウィルス感染症対策として優れているとされ、昨今サージカルマスクが一般的に使用されている。この一方、マスクは、風邪等の疾病対策のみならず、さらに保湿効果等を目的とした機能性マスクの開発が進められてきた。
【0003】
例えば、以下のような機能性マスクが提案されている。特許文献1に、着用時に着用者の鼻と口とを覆うマスク本体部と、前記マスク本体部の左右両端に設けられた一対の耳掛け部と、を備えたマスクと、前記マスク本体部に水蒸気発生体と、を備えた蒸気温熱マスクであって、前記水蒸気発生体は、水蒸気発生部を備えるマスク本体部に対して所定の面積を有するとともに、所定の通気度を有する蒸気温熱マスクが提案されている。この蒸気温熱マスクは、マスク内の絶対湿度を高め、喉や鼻の粘膜の潤い感を向上させることができるので、鼻づまり等による不快感を低減することで呼吸を楽にし、粘膜線毛輸送機能を高め、異物排出機能を促進する効果が得られるとされる。
【0004】
特許文献2に、保水液を保持できるマスク用の吸収性シートであって、前記吸収性シートが、マスクへの装着使用時において、横方向の同一行上に2つ以下の通気孔が配置形設された複数の通気孔行を備えていることを特徴とする吸収性シートが提案されている。この吸収性シートは、マスク本体の中に容易に挿入することができ、マスクの装着使用時、その左右両側縁部と頬部との密着性が高いので、長時間水分を保持・供給することが可能なため、これを備えたマスクは使用者の口腔及び/又は鼻腔の乾燥防止に有用であるとされる。
【0005】
特許文献3に、着用者に対面するマスク本体部の面に着脱可能に設けられる保湿体であって、前記マスク本体部に着脱可能に貼付される貼付面を備えた貼付体と、前記貼付面の裏面側に配置され、水分を吸水した吸水体とを有する保湿体が提案されている。この保湿体は、マスク着用者に直接ふれないようにマスク本体の所定の位置に取り付けることができ、着用者に不快感を与えるのを防止することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-11547号公報
【特許文献2】特開2018-172807号公報
【特許文献3】実用新案登録第3209423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~3に記載の水蒸気発生体、吸収性シート又は保湿体をマスクに収納し又は貼着したマスクは、風邪等の予防対策のみならずマスク使用者の口腔や鼻腔の乾燥防止又は潤い感を向上させる等の効果があり好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の水蒸気発生体、または特許文献2に記載の吸収性シートに係る発明は、それらを収納するための特別のマスクを要するという問題がある。また、特許文献3に記載の保持体を貼着したマスクは、簡易な構造で着用者の不快感を防止できるが、上記吸収性シートや保湿体を収納したマスクに比較してその機能が劣る恐れがある。
【0008】
健康に害を及ぼすウイルスやバクテリア等は、相対湿度が40~60%において感染力が低下もしくは不活性化し、健康に過ごせる最適湿度であるとされる(米国暖房冷凍空調学会 ASHRAE)。新型コロナウィルス感染症が未だ終息しない中において、さらに好適な機能性マスクが求められている。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点又は要請に鑑み、市販のマスクに貼着して使用することができ、マスク内を所定の湿度雰囲気にするとともに脱着可能で再使用可能な保湿フィルタ及びこれを用いた保湿マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る保湿マスクは、耳かけを有するマスク本体と、そのマスク本体の顔面側に貼着される止めバンドと、その止めバンドに貼着されて前記マスク本体の顔面側を覆う保湿フィルタとを有する保湿マスクであって、前記保湿フィルタは、両端部にまくれを有する筒状の編地からなる。
【0011】
上記発明において、保湿フィルタは、ポリエステルナノファイバ糸から編成される表層と、ポリエステル繊維糸から編成される裏層の二層構造を有してなるのがよい。
【0012】
また、止めバンドは、マスク本体に係止するオス面を備えたマスク帯と保湿フィルタに係止するオス面を備えた保湿フィルタ帯が表裏一体に形成されてなるものとすることができる。ここでオス面とは、一般に、面ファスナのループに係止するフックを備える面をいう。
【0013】
上記保湿フィルタ帯又は止めバンドは、それぞれ市販の不織布製マスクに使用することができるのでそれ自体が補修、補充等の用に供されるようにするのがよい。このとき、止めバンドは、いずれの貼着面であるか明示されるように、マスク帯と保湿フィルタ帯の両端部、または両端部及び中央部が縫製されて表裏一体になり、マスク本体側に着色された縫糸が表れてなるものがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る保湿マスクは、市販のマスクのマスク本体に止めバンドを介して加水した状態の保湿フィルタを貼着して使用される。その貼着された保湿フィルタは、確実にマスク本体に保持されるが容易に剥離され、洗濯することができ、再使用が可能である。また、保湿フィルタとこれを保持する止めバンドのオス面は柔軟であり、両者の剥離時にマスク本体から止めバンドを剥離する場合のような剥離音がしない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る保湿マスクの構成を示す説明図である。
図2図1に記載の保湿フィルタの構成を示す説明図である。
図3図1に記載の止めバンドの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る保湿マスクの構成を示す。図2、3は、それぞれ保湿フィルタ、止めバンドの構成を示す。本保湿マスク10は、耳かけを有するマスク本体11と、そのマスク本体11の顔面側に貼着される止めバンド15と、その止めバンド15に貼着されてマスク本体11の顔面側を覆う保湿フィルタ13とを有する。そして、保湿フィルタ13は、両端部にまくれ132を有する筒状の編地からなる。
【0017】
マスク本体11は、不織布製の耳かけを備える市販のマスクを使用することができる。山形の頂部を有するいわゆる立体型マスクは鼻梁部分に隙間を生ずるので好ましくない。また、止めバンド15の貼着性の観点から、ポリウレタンフォーム製のマスクや布製のマスクは好ましくない。本保湿マスク10のマスク本体11は、消耗型で必要に応じて廃棄され、新たなマスク本体11を使用することができる。一方、保湿フィルタ13と止めバンド15は、洗濯が可能で再使用される。
【0018】
保湿フィルタ13は、口及び鼻孔周辺を覆うに充分の大きさを有している。例えば、その幅はマスク本体11と同等で、長さはマスク本体11の長さの60~70%とすることができる。この保湿フィルタ13は、筒状の編地からなり、二層構造をしている。そして、図2に示すように、筒状の編地の開口部135(135A、135B)にはまくれ132(132A、132B)を有する。まくれ132は、編地の端部で筒の外側に巻き込まれるように渦巻状に形成されている。この筒状の編地は、平編で編成するのがよい。平編の編地は、その編出し、編み終わり又は編み端にまくれが生じ易い。このため、衣服においては、この端部を平編以外の編成方法を使用してまくれがないように処理されるのが通常である。しかし、本発明においては、このまくれを利用する。まくれ132は、柔軟で弾力を有し、丁度顔の両側面に位置するように設けられる。かかる構成の保湿マスク10は、これを着用したときに保湿フィルタ13の本体部131が鼻部及び口部を充分に覆うとともに顔面左右に隙間を作らずに密着し、フィット感に優れる。なお、上記まくれ132の大きさは外径で2~4mm程度とすることができる。
【0019】
保湿フィルタ13の編地は、ポリエステルナノファイバ糸から編成される表層と、ポリエステル繊維糸から編成される裏層の二層構造を有している。本保湿フィルタ13の編地は、ポリエステルナノファイバ糸の特性とポリエステル繊維糸の特性とを合わせて有する。このため、保湿フィルタ13は、通気性に優れ、呼気及び吸気に対して濾材として優れた機能を有するとともに高い抱水力を有している。
【0020】
保湿フィルタ13の編地に使用されるポリエステルナノファイバ糸は、ポリエステルナノファイバのフィラメント数が2,000~60,000本、総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)が35~500dtexであるものを使用することができる。ポリエステルナノファイバは、これを形成するポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどであり、単繊維径(単繊維の直径)が200~2,000nm、より好ましくは250~800nmであるものがよい。ポリエステルナノファイバ糸による編地は、摩擦抵抗が高いのですべり難く、グリップ性に優れる。また、この編地は、クーリング性能や抱水力が高く、水分や汗を速やかに抱水・拡散し易いという特徴を有する。本保湿フィルタ13は、筒状の編地からなるので、重ねると常にポリエステルナノファイバ糸からなる表層が二重になったシート状の保湿フィルタ13になる。これにより、本保湿マスク10は、マスク本体11及び保湿フィルタ13を通して吸・呼気が行われる。
【0021】
保湿フィルタ13の裏層に使用されるポリエステル繊維は、優れた強度、伸度を持っており、衣料用合成繊維の中では耐熱性が高い。また、水分を吸いにくい(公定水分率 0.4%)ので乾きが早く、ヤング率が高く、ハリ・コシがあり、濡れても特性が変化しにくいので、シワになりにくく寸法安定性に優れる。
【0022】
保湿フィルタ13の二層構造の編成は、リバーシブル編みの編成方法を利用することができる。表層にはポリエステルナノファイバ糸より形成されるループが露出しており、面ファスナのメス面を構成することができる。これにより、以下に説明する止めバンド15を形成する保湿フィルタ帯153のオス面153aのフックを上記ループに係止させることができる。そして、保湿フィルタ13をマスク本体11に保持することができる。なお、ポリエステルナノファイバは、マルチファイバとしてあるいは生地重量に対して10~50重量%含まれる混繊糸として使用することができる。また、本保湿フィルタ13は、裁断工程や縫製工程を要せず両端部にまくれ132を有する筒状の編地を一度に編成することができるので、保湿フィルタ13を高効率で生産することができる。
【0023】
止めバンド15は、図1に示すように、マスク本体11の上縁部に貼着するのがよい。止めバンド15は、図3に示すように、マスク本体11に係止するオス面151aを備えたマスク帯151と、保湿フィルタ13に係止するオス面153aを備えた保湿フィルタ帯153が表裏一体に設けられてなる。すなわち、止めバンド15は、マスク本体11とマスク帯151により、また、保湿フィルタ13と保湿フィルタ帯153により面ファスナが形成されている。このため、マスク本体11は、面ファスナのメス面としての機能を有するフックを有しているものが使用され、また、マスク本体11に好適なフックを有するマスク帯151が使用される。そして、保湿フィルタ13を保持する保湿フィルタ帯153は、その保湿フィルタ13の表層のポリエステルナノファイバ糸より形成されるループに好適なフックを有するものが使用される。
【0024】
止めバンド15は、マスク帯151と保湿フィルタ帯153を重ねて両端、または両端及び中央部を縫製し、一体に成形することができる。この縫製は数張り程度の縫目で足り、止めバンド15を洗濯してもマスク帯151と保湿フィルタ帯153が分離することなく、止めバンド15の再使用が可能である。止めバンド15のオス面151aとオス面153aは、表面性状や接着特性が異なるのでそれぞれ区別が可能である。例えば、オス面151aはザラザラしているのに対し、オス面153aは滑らかで柔軟である。マスク本体11から止めバンド15を剥離するときは破裂音がするのに対し、止めバンド15から保湿フィルタ13を剥離するときは剥離音がしない。しかしながら、止めバンド15をマスク本体11に素早く適切に貼着するために目印を設けるのがよい。例えば、オス面151aに着色した縫目156が表れるように縫製することにより目印とすることができる。
【0025】
保湿フィルタ帯153は、綿、羊毛、麻、ビスコース、レーヨン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維糸条からなる編織組織を有する地組織部と、その地組織部に編みこまれ、または織り込まれ、前記地組織部から、その少なくとも一面側に伸び出ている複数の立毛糸からなる立毛部とを有してなる。保湿フィルタ帯153は、立毛部を表面とすると裏面に樹脂層を有するものがよい。樹脂層は、アクリル酸エステル共重合樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂又はポリエステル樹脂等のコーティング、または、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂又はポリスチレン樹脂等のフィルムをラミネートした後、加熱乾燥処理により、形成することができる。樹脂層の厚さは、10~100g/m2がよい。この樹脂層により保湿フィルタ帯153の耐久性を向上することができる。
【0026】
本保湿マスク10は、保湿フィルタ13を浄水に浸して加水したものを、マスク本体11の顔面側を覆うようにマスク本体11に貼着された止めバンド15に貼着して使用される。これにより、本保湿マスク10は、その使用時の雰囲気湿度を、健康に過ごすことができる最適湿度とされる40~60%にすることができる。保湿フィルタ13の加水は、例えば、医師等の使用時において2~3時間間隔で行うことができる。保湿マスク10は、耳かけを片方外しても保湿フィルタ13が脱落することはなく、また、加水のために容易に保湿フィルタ13を脱着することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 保湿マスク
11 マスク本体
13 保湿フィルタ
131 本体部
132、132A、132B まくれ
135、135A、135B 開口部
15 止めバンド
151 マスク帯
153 保湿フィルタ帯
156 縫目
図1
図2
図3