(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165450
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221025BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221025BHJP
【FI】
A01B69/00 303G
A01B69/00 303J
A01B69/00 303C
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070767
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】山根 聡太
(72)【発明者】
【氏名】足立 周一
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA03
2B043BB01
2B043BB03
2B043DC03
2B043EA13
2B043EB04
2B043EB08
2B043EB09
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB22
2B043EB29
2B043EC12
2B043ED05
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
5H301AA03
5H301BB01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】走行機体の側方近傍の障害物も確実に検出できる作業車両を提供する。
【解決手段】走行機体1と、走行機体1の後部に連結される作業機6と、障害物を検出する作業機障害物センサ18、19と、を備え、作業機障害物センサ18、19は、作業機6の車幅方向両端部に設けられ、作業機6の前方、且つ走行機体1の側方を検出領域として障害物を検出する。これにより、走行機体1の側方近傍の障害物も確実に検出することが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体の後部に連結される作業機と、
障害物を検出する障害物センサと、を備え、
前記障害物センサは、前記作業機の車幅方向両端部に設けられ、前記作業機の前方、且つ前記走行機体の側方を検出領域として障害物を検出することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記障害物センサは、前記作業機の車幅方向両端部に、上下方向に並んで複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記障害物センサの検出信号に基づいて障害物の有無を判定する制御部を更に備え、
前記作業機は、前記走行機体の後部に昇降可能に連結され、
前記制御部は、前記作業機の昇降位置に応じて使用する前記障害物センサを切り換えることを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記障害物センサは、前記作業機の車幅方向両端部に設けられるセンサブラケットに取り付けられ、
前記センサブラケットは、上下方向に並ぶ複数のセンサ取付位置を備え、下側のセンサ取付位置には、前記障害物センサを覆うカバーが設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動走行を行うにあたり、機体前方などの障害物を検出する障害物センサを備える作業車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の作業車両では、走行機体の側方(特に、後輪の側方)に存在する障害物を検出できない。なお、走行機体のリヤフェンダに斜め下方に向けて障害物センサを設ければ、機体側方の障害物を検出することが可能となるが、トラクタのように大型の後輪を備える作業車両では、走行機体の側方近傍を検出領域とすることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体と、前記走行機体の後部に連結される作業機と、障害物を検出する障害物センサと、を備え、前記障害物センサは、前記作業機の車幅方向両端部に設けられ、前記作業機の前方、且つ前記走行機体の側方を検出領域として障害物を検出することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両であって、前記障害物センサは、前記作業機の車幅方向両端部に、上下方向に並んで複数設けられることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の作業車両であって、前記障害物センサの検出信号に基づいて障害物の有無を判定する制御部を更に備え、前記作業機は、前記走行機体の後部に昇降可能に連結され、前記制御部は、前記作業機の昇降位置に応じて使用する前記障害物センサを切り換えることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の作業車両であって、前記障害物センサは、前記作業機の車幅方向両端部に設けられるセンサブラケットに取り付けられ、前記センサブラケットは、上下方向に並ぶ複数のセンサ取付位置を備え、下側のセンサ取付位置には、前記障害物センサを覆うカバーが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、障害物センサは、作業機の車幅方向両端部に設けられ、作業機の前方、且つ走行機体の側方を検出領域として障害物を検出するので、走行機体の側方近傍の障害物も確実に検出できる。
また、請求項2の発明によれば、障害物センサは、作業機の車幅方向両端部に、上下方向に並んで複数設けられるので、障害物センサの検出領域を上下方向に拡張できる。
また、請求項3の発明によれば、障害物センサの検出信号に基づいて障害物の有無を判定する制御部は、作業機の昇降位置に応じて使用する障害物センサを切り換えるので、障害物の判定精度が向上するとともに、雑草や畦を障害物と判定する可能性を低減できる。
また、請求項4の発明によれば、障害物センサは、作業機の車幅方向両端部に設けられるセンサブラケットに取り付けられ、センサブラケットは、上下方向に並ぶ複数のセンサ取付位置を備え、下側のセンサ取付位置には、障害物センサを覆うカバーが設けられるので、1つのセンサブラケットに複数の障害物センサを取り付けられるだけでなく、下側のセンサ取付位置に取り付けられる障害物センサをカバーによって泥などから保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体側面図である。
【
図2】障害物センサの取付位置を示すトラクタの要部斜視図である。
【
図3】(a)はフェンダ障害物センサの検出範囲を示すトラクタの平面図、(b)はフェンダ障害物センサの検出範囲を示すトラクタの側面図である。
【
図4】(a)は作業機障害物センサの検出範囲を示すトラクタの平面図、(b)は作業機上昇時における下側作業機障害物センサの検出範囲を示すトラクタの側面図、(c)は作業機下降時における上側作業機障害物センサの検出範囲を示すトラクタの側面図である。
【
図5】(a)は作業機障害物センサの取付部を前方から視た要部分解斜視図、(b)は作業機障害物センサの取付部を後方から視た要部分解斜視図である。
【
図6】トラクタの制御構成を示すブロック図である。
【
図7】障害物検出制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、1はトラクタT(作業車両)の走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速するミッションケース3と、ミッションケース3から出力される動力で回転駆動する前輪4及び後輪5と、走行機体1の後部に昇降可能に連結される作業機6と、エンジン搭載部2の後方に設けられ、運転部(図示せず)を覆うキャビン7と、キャビン7の左右両側方に設けられ、後輪5の上方を覆うフェンダ8と、を備える。
【0009】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の作業機6は、ロータリ耕耘作業機であり、走行機体1の後部に昇降リンク機構9を介して連結される作業機フレーム10と、作業機フレーム10に回転可能に支持され、複数の耕耘爪11aを備えるロータリ耕耘軸11と、ロータリ耕耘軸11の上方を覆うメインカバー12と、メインカバー12の後端部に上下揺動可能に取り付けられるリヤカバー13と、走行機体1から伝動される作業動力でロータリ耕耘軸11を回転駆動させる作業動力伝達機構(図示せず)と、を備える。
【0010】
図3の(a)及び
図4の(a)に示すように、作業機6の車幅方向の寸法は、走行機体1の車幅方向の寸法よりも大きくなっている。換言すると、作業機6の車幅方向両端部は、正面視において、走行機体1の左右両側部よりも外側方に突出している。
【0011】
図2及び
図5の(a)に示すように、作業機6の車幅方向両端部の前面側には、キャスタスタンド(図示せず)が着脱可能に装着されるスタンドブラケット14が設けられている。スタンドブラケット14は、作業機フレーム10に対し、複数のボルト15を介して締結されている。キャスタスタンドは、走行機体1から分離された作業機6を移動可能に支持するキャスタ付きのスタンド装置であり、パイプ状の連結部をスタンドブラケット14の係合溝14aに係合させた状態で、ピン14bを挿通することによって、スタンドブラケット14に装着される。
【0012】
トラクタTは、自動走行や遠隔操作を行うために、機体周囲の障害物を検出する複数の障害物センサ16~19を備える。複数の障害物センサ16~19には、走行機体1の前端部に設けられるフロント障害物センサ16と、左右のフェンダ8に設けられるフェンダ障害物センサ17と、作業機6に設けられる作業機障害物センサ18、19と、が含まれる。なお、本実施形態の障害物センサ16~19には、超音波を検出媒体とする超音波センサが用いられるが、電波や光を検出媒体とするセンサを用いてもよい。
【0013】
フロント障害物センサ16は、フロントセンサブラケット20を介して走行機体1の前端部に取り付けられる。フロント障害物センサ16は、走行機体1の前端部から機体前方に向けて超音波を発信するとともに、その反射波を受信し、該受信波に基づいて、機体前方に存在する障害物の有無や障害物までの距離を検出する。
【0014】
フェンダ障害物センサ17は、フェンダセンサブラケット21を介して左右のフェンダ8に取り付けられる。
図3に示すように、フェンダ障害物センサ17は、フェンダ8の前端部から斜め下方に向けて超音波を発信するとともに、その反射波を受信し、該受信波に基づいて、機体中間部側方に存在する障害物の有無や障害物までの距離を検出する。
【0015】
作業機障害物センサ18、19は、作業機センサブラケット22を介して作業機6の車幅方向両端部に取り付けられる。
図4に示すように、作業機障害物センサ18、19は、作業機6の前方、且つ走行機体1の側方に向けて超音波を発信するとともに、その反射波を受信し、該受信波に基づいて、機体後部側方に存在する障害物の有無や障害物までの距離を検出する。
【0016】
このような作業機障害物センサ18、19によれば、作業機6の車幅方向両端部に設けられ、作業機6の前方、且つ走行機体1の側方を検出領域として障害物を検出するので、走行機体1の側方近傍の障害物、特に、後輪5の側方近傍の障害物を確実に検出することが可能になる。
【0017】
作業機障害物センサ18、19には、作業機6の車幅方向両端部に、上下方向に並んで設けられる上側作業機障害物センサ18及び下側作業機障害物センサ19が含まれる。このような作業機障害物センサ18、19によれば、単一のセンサ構成に比べて検出領域を拡張でき、特に、検出領域を上下方向に拡張することが可能になる。
【0018】
図5に示すように、作業機センサブラケット22は、作業機フレーム10に固定される固定部22aと、上下方向に並ぶ上側センサ取付部22b及び下側センサ取付部22cと、を備える。固定部22aは、前述したスタンドブラケット14を作業機フレーム10に固定する複数のボルト15を介して作業機フレーム10に固定される。つまり、固定部22aは、作業機フレーム10に対し、複数のボルト15を介してスタンドブラケット14と共締めされるので、部品点数の増加や構造の複雑化を回避できるだけでなく、必要に応じて作業機センサブラケット22を容易に着脱することができる。
【0019】
上側センサ取付部22bは、上下方向に並ぶ複数のセンサ取付孔22dを備えており、作業機6の作業高さと障害物検出高さとの関係に基づいて、いずれかのセンサ取付孔22dを選択して上側作業機障害物センサ18が取り付けられる。
【0020】
下側センサ取付部22cは、一つのセンサ取付溝22eを備えており、ここに下側作業機障害物センサ19が取り付けられる。作業機センサブラケット22の下部には、下側センサ取付部22cに取り付けられた下側作業機障害物センサ19を覆うカバー22fが設けられる。このような作業機センサブラケット22によれば、1つの作業機センサブラケット22に複数の作業機障害物センサ18、19を取り付けられるだけでなく、下側センサ取付部22cに取り付けられる下側作業機障害物センサ19をカバー22fによって泥などから保護できる。
【0021】
本実施形態では、上側作業機障害物センサ18及び下側作業機障害物センサ19を同時に使用することなく、作業機6の昇降位置に応じていずれかの作業機障害物センサ18、19を使用する。具体的に説明すると、
図4の(b)のように、作業機6を上昇させた非作業走行時には、下側作業機障害物センサ19を使用して機体後部側方の障害物検出を行い、作業機6を下降させた作業走行時には、上側作業機障害物センサ18を使用して機体後部側方の障害物検出を行う。このような構成によれば、作業機障害物センサ18、19の位置及び向きを作業機6の昇降位置に対して最適化できるので、作業機6の昇降位置に拘らず適切な高さの検出領域を実現できるだけでなく、検出領域が低くなり過ぎて雑草や畦を障害物と判定する可能性も低減できる。
【0022】
図6に示すように、走行機体1は、各種の制御を行う制御部50を備える。制御部50の入力側には、前述した障害物センサ16~19の他に、GPS信号に基づいて走行機体1の位置を検出するGPS51と、リモコン52からの遠隔操作信号を受信するリモコン受信部53と、車速を検出する車速センサ54と、自動走行制御を入切する自動操作入切スイッチ55と、作業機6の昇降高さを検出する昇降高さセンサ56と、が接続されている。
【0023】
また、制御部50の出力側には、自動走行制御や遠隔操作制御においてメインクラッチを操作するためのクラッチバルブ57と、自動走行制御や遠隔操作制御において作業動力を入切するためのPTOクラッチバルブ58と、警報音を出力するホーン59と、走行機体1の状態を外部に示す表示灯60と、自動走行制御や遠隔操作制御において変速スイッチを操作するための変速油圧バルブ61と、自動走行制御や遠隔操作制御においてエンジン回転数を変更するためのインジェクションポンプ62と、自動走行制御や遠隔操作制御においてエンジンを緊急停止させるためのエンジン停止リレー63と、が接続されている。
【0024】
制御部50は、自動走行制御や遠隔操作制御を行うにあたり、障害物センサ16~19の検出信号に基づいて障害物の有無などを判定し、警報や機体停止などの対応動作を行わせる障害物検出制御を実行する。以下、
図7を参照して障害物検出制御の処理手順を説明する。
【0025】
図7に示すように、制御部50は、自動走行制御がONであるか否かを判断し(S1)、この判断結果がNOの場合は、上位ルーチンに復帰する一方、判断結果がYESの場合は、作業機6が所定高さ以上であるか否かを判断する(S2)。制御部50は、ステップS2の判断結果がYESの場合は、下側作業機障害物センサ19の検出信号を取得し(S3)、判断結果がNOの場合は、上側作業機障害物センサ18の検出信号を取得する(S4)。
【0026】
つぎに、制御部50は、障害物検知時間(障害物有りと判定した継続時間)を第1所定時間及び第2所定時間(第1所定時間<第2所定時間)と比較し(S5、S6)、障害物検知時間が第1所定時間未満の場合は(S5:NO)、上位ルーチンに復帰し、また、障害物検知時間が第1所定時間以上で、且つ第2所定時間未満の場合は(S5:YES、S6:NO)、ホーン59や表示灯60で警報を行い(S7)、また、障害物検知時間が第1所定時間以上で、且つ第2所定時間以上の場合は(S5:YES、S6:YES)、エンジン停止リレー63をONにして走行機体1を停止させる(S8)。
【0027】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1と、走行機体1の後部に連結される作業機6と、障害物を検出する作業機障害物センサ18、19と、を備え、作業機障害物センサ18、19は、作業機6の車幅方向両端部に設けられ、作業機6の前方、且つ走行機体1の側方を検出領域として障害物を検出するので、走行機体1の側方近傍の障害物も確実に検出できる。
【0028】
また、作業機障害物センサ18、19は、作業機6の車幅方向両端部に、上下方向に並んで複数設けられるので、作業機障害物センサ18、19の検出領域を上下方向に拡張できる。
【0029】
また、作業機障害物センサ18、19の検出信号に基づいて障害物の有無を判定する制御部50を更に備え、作業機6は、走行機体1の後部に昇降可能に連結され、制御部50は、作業機6の昇降位置に応じて使用する作業機障害物センサ18、19を切り換えるので、障害物の判定精度が向上するとともに、雑草や畦を障害物と判定する可能性を低減できる。
【0030】
また、作業機障害物センサ18、19は、作業機6の車幅方向両端部に設けられる作業機センサブラケット22に取り付けられ、作業機センサブラケット22は、上下方向に並ぶ複数のセンサ取付位置を備え、下側のセンサ取付位置には、下側作業機障害物センサ19を覆うカバー22fが設けられるので、1つの作業機センサブラケット22に複数の作業機障害物センサ18。19を取り付けられるだけでなく、下側のセンサ取付位置に取り付けられる下側作業機障害物センサ19をカバー22fによって泥などから保護できる。
【符号の説明】
【0031】
1 走行機体
6 作業機
18 上側作業機障害物センサ
19 下側作業機障害物センサ
22 作業機センサブラケット
22a 固定部
22b 上側センサ取付部
22c 下側センサ取付部
22d センサ取付孔
22e センサ取付溝
22f カバー
50 制御部
55 自動操作入切スイッチ
56 作業機高さセンサ