(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165453
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】離型層形成用組成物および離型フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20221025BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20221025BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070775
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸男
【テーマコード(参考)】
4F006
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB20
4F006AB39
4F006AB65
4F006AB66
4F006BA11
4F006BA12
4F006CA08
4F006EA05
(57)【要約】
【課題】光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能な離型層形成用組成物および離型フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】メラミン化合物(A)、ポリビニルアセタール(B)、酸触媒(C)、および水酸基含有変性シリコーン樹脂(D)を含有する離型層形成用組成物、および該離型層形成用組成物を樹脂フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、その後加熱することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン化合物(A)、ポリビニルアセタール(B)、酸触媒(C)、および水酸基含有変性シリコーン樹脂(D)を含有する離型層形成用組成物。
【請求項2】
前記請求項1記載の離型層形成用組成物を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、その後加熱することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能な離型層形成用組成物および離型フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、樹脂フィルム上に離型層を有する。離型フィルムは、例えば特開2019-194337号公報、特開2014-54811号公報等に開示されるように、保護フィルムが有する粘着剤層の表面を使用時まで保護するセパレーターとして使用されたり、特開2002-192510号公報に開示されるように、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等のセラミックグリーンシートを作製するキャリアフィルムとして使用されたり、特開2005-342981号公報、特開2020-131440号公報等に開示されるように、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を離型フィルム上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を巻き取る、いわゆるキャスト製膜用のキャリアフィルムに使用されたり、さらには特開2014-65207号公報、特開2018-528449号公報、特開2019-112505号公報に開示されるように、光硬化樹脂を離型フィルム上に塗布後、光照射で硬化して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を離型フィルムから剥離して使用する、光硬化樹脂成膜用のキャリアフィルムに使用されたりしている。
【0003】
離型フィルムが有する離型層としては、優れた離型性を示すことから、シリコーン化合物を含有する離型層が一般的に利用される。しかし、上述した光硬化樹脂成膜用のキャリアフィルム用途では、該離型層上において光硬化樹脂の硬化反応を繰り返すことにより離型フィルムの離型性が低下する場合があり、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムが求められていた。
【0004】
離型性に優れた離型層を有する離型フィルムとして、例えば特開2020-23690号公報(特許文献1)には、メチル化メラミン樹脂、水酸基含有有機変性シリコーン、酸触媒、および導電性高分子化合物を含有する水系帯電防止離型コーティング剤組成物により形成された離型層を有する離型フィルムが開示され、特開2017-78161号公報(特許文献2)には、メチル化メラミン樹脂、分子量100~3000のポリオール、酸触媒、および水酸基含有変性シリコーン樹脂を含有する熱硬化性離型コーティング剤により形成された離型層を有する離型フィルムが開示され、特開2018-104661号公報(特許文献3)にはメチル化メラミン樹脂、水酸基含有変性シリコーン樹脂および/またはシリコーン変性水酸基含有アクリル樹脂、および酸触媒を含有する熱硬化離型コーティング剤組成物により形成された離型層を有する離型フィルムが開示されている。しかし、上記した光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性については、さらなる改善が求められていた。
【0005】
特開2012-171230号公報(特許文献4)には、製造が容易で離型性に優れ、高温プレス時の被着体への離型層の移行が抑制され、被着体の汚染や廃棄時の環境負荷が少なく、さらに耐水性が向上した離型シートとして、基材上に酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコールおよびメラミン化合物を含有する離型用シートが開示され、特開2019-137005号公報(特許文献5)には、寸法安定性の高い非シリコーン系離型フィルムとして、基材フィルム上に炭素数8以上のアルキル基を有するポリビニル樹脂とメラミン系架橋剤を含有する組成物の硬化物により形成された離型層を有する離型フィルムが開示されている。しかし、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性については、さらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-23690号公報
【特許文献2】特開2017-78161号公報
【特許文献3】特開2018-104661号公報
【特許文献4】特開2012-171230号公報
【特許文献5】特開2019-137005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能な離型層形成用組成物および離型フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の発明によって達成される。
(1)メラミン化合物(A)、ポリビニルアセタール(B)、酸触媒(C)、および水酸基含有変性シリコーン樹脂(D)を含有する離型層形成用組成物。
(2)上記(1)記載の離型層形成用組成物を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、その後加熱することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能な離型層形成用組成物および離型フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明における離型層形成用組成物が含有するメラミン化合物(A)としては、メラミンおよびその誘導体として公知の化合物を用いることができ、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られ、1分子中にトリアジン環、及びメチロール基および/またはアルコキシメチル基をそれぞれ1つ以上有しているメラミン化合物が好ましい。中でも、下記一般式1で表される化合物が離型層形成用組成物の硬化性に優れるため好ましい。
【0012】
【0013】
一般式1中、R1~R6はそれぞれ独立して水素原子、メチロール基(-CH2OH)、メトキシメチル基(-CH2OCH3)、エトキシメチル基(-CH2OCH2CH3)、n-ブトキシメチル基(-CH2OCH2CH2CH2CH3)およびイソブトキシメチル基(-CH2OCH2CH(CH3)2)を表す。またR1~R6の少なくとも一つはメトキシメチル基であることが望ましい。
【0014】
(A)成分の中でも、R1~R6が水素原子およびメトキシメチル基であるイミノ基型メチル化メラミン化合物、R1~R6がメチロール基およびメトキシメチル基であるメチロール基型メチル化メラミン化合物、R1~R6が全てメトキシメチル基である完全アルキル化型メチル化メラミン化合物が、離型性および光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が優れた離型層を有する離型フィルムが得られることから好ましく、R1~R6が全てメトキシメチル基である完全アルキル化型メチル化メラミン化合物が特に好ましい。
【0015】
(A)成分は市販されており、例えば完全アルキル化型メチル化メラミン化合物としては、オルネクスジャパン(株)製サイメル(登録商標)300、サイメル303LF、サイメル350、(株)三和ケミカル製ニカラック(登録商標)MW-22、ニカラックMW-30、ニカラックMW-30M、ニカラックMW-30MLF等、イミノ基型メチル化メラミン化合物としては、オルネクスジャパン(株)製サイメル325N、サイメル327、サイメル703、(株)三和ケミカル製ニカラックMZ-351、ニカラックMX-730等、メチロール基型メチル化メラミン化合物としては、オルネクスジャパン(株)製サイメル370N、(株)三和ケミカル製ニカラックMS-11、ニカラックMS-12LF等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0016】
本発明において離型層形成用組成物は上記(A)成分を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0017】
本発明における離型層形成用組成物が含有するポリビニルアセタール(B)とは、アセタール基を有するポリビニルアルコールを意味し、該ポリビニルアセタールの製造方法としてはポリビニルアルコールにアルデヒド化合物を反応させてアセタール化する方法が例示できる。
【0018】
アセタール化に用いるアルデヒド化合物は特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、オクチルアルデヒド、デシルアルデヒド等の炭素数1~10のアルデヒド化合物を用いることが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒドが特に好ましい。すなわち、本発明のポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラールが特に好ましい。アルデヒド化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
(B)成分の重量平均分子量は特に限定されないが、5000~250000であることが好ましく、より好ましくは7500~200000であり、特に好ましくは10000~150000である。
【0020】
(B)成分の水酸基含有率は、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能であることから、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、一般的に40モル%以下である。なお、(B)成分の水酸基含有率とは、全単量体単位100モル%中におけるビニルアルコール単量体単位の含有率を意味し、例えばJIS K 6728:1977「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により求めることができる。
【0021】
(B)成分のアセタール化度は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能であることから、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が特に好ましい。下限は特に限定されないが、一般的に60モル%以上である。なお、(B)成分のアセタール化度とは、ポリビニルアセタールの全単量体単位100モル%中におけるアセタール化されたビニルアルコール単量体単位の含有率を意味する。アセタール化度は、JIS K 6728:1977「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により求めることができる。
【0022】
上記(B)成分は市販されており、例えば積水化学工業(株)製エスレック(登録商標)BL-10(重量平均分子量15000、水酸基含有率28モル%、アセタール化度70モル%)、BL-1(重量平均分子量19000、水酸基含有率36モル%、アセタール化度63モル%)、BL-5Z(重量平均分子量32000、水酸基含有率21モル%、アセタール化度77モル%)、BH-S(重量平均分子量66000、水酸基含有率23モル%、アセタール化度72モル%)等、イーストマンケミカルジャパン(株)製Butvar(登録商標)B-76(重量平均分子量105000、水酸基含有率12モル%、アセタール化度88モル%)、B-98(重量平均分子量55000、水酸基含有率19モル%、アセタール化度80モル%)等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0023】
本発明において離型層形成用組成物は上記(B)成分を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0024】
離型層形成用組成物中の(B)成分の含有量は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が優れた離型層を有する離型フィルムが得られることから、(A)成分100質量部に対して1~100質量部が好ましく、より好ましくは5~70質量部であり、さらに好ましくは10~50質量部である。
【0025】
本発明における離型層形成用組成物が含有する酸触媒(C)としては、公知の無機酸や有機酸、およびそれらの塩や水和物を用いることができる。無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸が例示でき、有機酸としてはギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等が例示できるが、これらに限定されない。(A)成分として完全アルキル化型メチル化メラミン化合物を用いる場合、(C)成分として脂肪族スルホン酸あるいは芳香族スルホン酸を用いることが好ましい。これにより低温での硬化性に優れた離型層形成用組成物とすることができる。さらに、(A)成分や(B)成分との相溶性に優れることから、(C)成分としては芳香族スルホン酸が特に好ましい。
【0026】
本発明において離型層形成用組成物は上記(C)成分を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0027】
離型層形成用組成物中の(C)成分の含有量は特に限定されないが、低温での離型層形成用組成物の硬化性に優れることから、(A)成分100質量部に対して0.5~25質量部が好ましく、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0028】
本発明における離型層形成用組成物が含有する水酸基含有変性シリコーン樹脂(D)とは、主鎖または側鎖にポリオルガノシロキサン骨格を有し、かつ水酸基を含有する樹脂を意味する。具体的には、水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン樹脂、水酸基含有ポリエステル変性シリコーン樹脂、水酸基含有ポリエーテルポリエステル変性シリコーン樹脂、アルコール変性シリコーン樹脂が例示できるが、これらに限定されない。
【0029】
(D)成分は市販されており、例えばJNC(株)製サイラプレーン(登録商標)FM-0411、FM-0425、FM-DA11、FM-DA26、FM-4411、およびFM-4425(水酸基含有変性シリコーン樹脂)等、信越化学工業(株)製X-22-4039、X-22-4015、X-22-170BX、X-22-170DX、KF-6000、KF-6001、KF-6002、およびKF-6003(以上、アルコール変性シリコーン樹脂)、並びにX-22-4952、X-22-4272、およびKF-6123(以上、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン樹脂)等、ビックケミー・ジャパン(株)製BYK(登録商標)-370(水酸基含有ポリエステル変性シリコーン樹脂)、BYK-375(水酸基含有ポリエーテルポリエステル変性シリコーン樹脂)、BYK-377(水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン樹脂)、BYK-SILCLEAN(登録商標)3700(水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂)、BYK-SILCLEAN3720(水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン樹脂)等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0030】
本発明において離型層形成用組成物は上記(D)成分を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0031】
離型層形成用組成物中の(D)成分の含有量は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能であることから、(A)成分100質量部に対して1~50質量部が好ましく、より好ましくは10~45質量部である。
【0032】
本発明における離型層形成用組成物は、上記した(A)~(D)の各成分以外に、溶剤を含有していてもよい。かかる溶剤としては特に限定されず、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、水等の公知の溶媒から、(A)~(D)の各成分を溶解可能な溶剤を用いることができる。
【0033】
本発明において離型層形成用組成物は上記溶剤を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0034】
離型層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に限定されず、後述する塗布方法に適した粘度、固形分濃度になるように含有量を調節することができる。
【0035】
離型層形成用組成物は、上記した成分以外に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、ポリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール等)、樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等)等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0036】
本発明において離型層形成用組成物を塗布する樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、セロファン、ナイロン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂等の各種公知の樹脂のフィルムが例示できる。樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、2~300μmであることが、本発明で得られる離型フィルムの柔軟性および取り扱い性が優れることから好ましく、より好ましくは3~200μmであり、特に好ましくは4~100μmである。樹脂フィルムはその表面の少なくとも一方の面に、易接着層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層等の公知の層を有していてもよく、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等の公知の表面改質処理が施されていてもよい。
【0037】
本発明において離型層形成用組成物は樹脂フィルムの一方の面のみに塗布してもよく、樹脂フィルムの両面に塗布してもよい。塗布方法としてはディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング等が例示できるがこれらに限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。離型層形成用組成物の塗布量は特に限定されず、後述するように、加熱後に樹脂フィルム上に形成される離型層が目的の厚みになるように調節すればよい。
【0038】
離型層形成用組成物を樹脂フィルム上に塗布した後は加熱を行う。加熱により(A)成分と(B)成分が硬化し、離型層を形成する。離型層形成用組成物が溶剤を含有する場合、加熱により溶剤が乾燥した後、(A)成分と(B)成分が硬化し、離型層を形成する。加熱方法は特に限定されず、ヒーター、熱媒による加熱、赤外線等のエネルギー線の照射、熱風、電磁誘導加熱等、公知の方法を用いることができる。加熱温度は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型フィルムが得られることから塗布面を80℃以上に加熱することが好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、(A)成分と(B)成分の硬化は150℃以下で十分に進行するため、150℃以下が好ましい。加熱時間は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムが得られることから0.25分間以上が好ましく、0.5分間以上がより好ましく、1分間以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、生産性の観点から10分以下が好ましい。
【0039】
樹脂フィルム上に形成される離型層の厚みは特に限定されないが、0.1~10μmであることが離型層の光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が優れたものになることから好ましく、0.2~8μmがより好ましく、0.3~7μmが特に好ましい。
【0040】
本発明によって得られる離型フィルムは、離型層を有する面と反対側の面に機能層を有していてもよい。かかる機能層としては、易接着層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、導電層(導電性金属酸化物、導電性高分子、網目状金属細線パターン等の公知の導電性材料を含有する層)、粘着剤層(アクリル粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン粘着剤等の公知の粘着剤を含有する層)、偏光層、遮光層、加飾層が例示できるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明によって得られる離型フィルムの用途は限定されず、光硬化樹脂成膜用のキャリアフィルムの用途の他、キャスト製膜用のキャリアフィルム、セラミックグリーンシート成型用キャリアフィルム、保護フィルムやOCA等の粘着フィルムが有する粘着剤層の表面を使用時まで保護するセパレーター、ドライフィルムレジストの感光性樹脂層のキャリアフィルムやカバーフィルム、フォトマスクへのフォトレジスト付着を防ぐためのフォトマスク用保護フィルム、プリプレグ加工用離型フィルム等の用途に好適に用いることができる。
【実施例0042】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<離型層形成用組成物1~16の作製>
(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を、表1に示した質量部(固形分として)用意し、それらを2-ブタノン350質量部および2-プロパノール350質量部の1:1混合溶剤に溶解し、離型層形成用組成物1~16を得た。なお、離型層形成用組成物14の作製には、(B)成分として、ポリビニルアセタールに代えて、ポリカーボネートポリオール((株)クラレ製C-1090、重量平均分子量1000)を使用した。
【0044】
【0045】
<離型フィルム1~16の作製>
表1に示した離型層形成用組成物1~16を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にグラビアコーティングによりそれぞれ均一に塗布し、熱風乾燥機を用いて130℃で2分間加熱して厚み2.0μmの離型層を形成し、離型フィルム1~16を得た。
【0046】
<離型性評価>
23℃50%RHの環境にて、離型フィルム1~16の離型層を有する面にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製、品番No.31B、25mm幅、基材厚み50μm)を2kgのハンドローラーを1往復させて貼合した。ポリエステル粘着テープを貼合した離型フィルムを23℃50%RHの環境で30分間保管後、剥離試験機(イマダ(株)製)を用いて180°の剥離角度、300mm/分の剥離速度でポリエステル粘着テープ側を剥離し、剥離強度(N/25mm)を測定した。剥離強度が0.20N/25mm未満の場合を離型性が優、0.20N/25mm以上0.30N/25mm未満の場合を離型性が良、0.30N/25mm以上0.40N/25mm未満の場合を離型性が可、0.40N/25mm以上の場合を離型性が不可として評価した。結果を表2に示す。なお離型フィルム15は剥離強度測定の過程で離型層がポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がれたため、剥離強度が測定できず、離型性評価は実施不能であった。
【0047】
<光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性評価>
離型フィルム1~16の離型層を有する面に、下記組成の紫外線硬化樹脂塗液を10μmの厚さに塗布し、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで挟んだ。その後、高圧水銀灯を用いて照度200mW/cm2の紫外線を照射し、光量で5000mJ/cm2照射されるまで継続した。最後に、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムごと硬化した紫外線硬化樹脂を剥がした。以上の工程を合計で50回繰り返した。
【0048】
<紫外線硬化樹脂塗液組成>
ウレタンアクリレート 95g
(三菱ケミカル(株)製UV-1700B)
光重合開始剤 5g
(IGM RESINS製Omnirad(登録商標)184)
【0049】
紫外線硬化樹脂の塗布、硬化、剥離を50回繰り返した後、上記した剥離強度評価と同様にして離型フィルム1~16の剥離強度を再測定した。再測定した剥離強度が、初期剥離強度の1倍以上2倍未満の場合を耐久性が優、2倍以上4倍未満の場合を耐久性が良、4倍以上8倍未満の場合を耐久性が可、8倍以上の場合を耐久性が不可として評価した。結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
表2の結果から、本発明の有効性が判る。