IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 兼子電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-樹脂成形品 図1
  • 特開-樹脂成形品 図2
  • 特開-樹脂成形品 図3
  • 特開-樹脂成形品 図4
  • 特開-樹脂成形品 図5
  • 特開-樹脂成形品 図6
  • 特開-樹脂成形品 図7
  • 特開-樹脂成形品 図8
  • 特開-樹脂成形品 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165470
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20221025BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B65D25/20 Q BRL
B29C51/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070803
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】592256140
【氏名又は名称】兼子電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】兼子 敏
【テーマコード(参考)】
3E062
4F208
【Fターム(参考)】
3E062AA01
3E062AA03
3E062AC02
3E062BA08
3E062DA05
3E062DA07
4F208AC03
4F208AG07
4F208AG21
4F208AG28
4F208AH58
4F208MA01
4F208MA02
4F208MB01
4F208MC01
4F208MC03
4F208MH06
(57)【要約】
【課題】樹脂資源の再利用に適合する樹脂成形品を提供すること。
【解決手段】合成樹脂により成形された容器は、本体と、シート状の印刷物を本体に係止するための係止部10と、を備えており、係止部10は、その外形に沿った切り込み5aを本体に入れることにより形成されている。係止部10は係止片11および補強リブ13を備えている。係止片11の先端12を持ち上げると、係止片11は塑性変形して上方に屈曲し、係止片11と本体との間に隙間が形成され、その隙間に挿入された印刷物の周縁が係止片11および本体によって係止される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂により成形された本体と、
シート状の印刷物を前記本体に係止するための係止部と、を備えており、
前記係止部は、その外形に沿った切り込みを前記本体に入れることにより形成されており、かつ、自身を変形させることにより、自身と前記本体との間に前記印刷物の周縁を挿入可能な隙間を形成可能であり、
前記隙間を形成している前記係止部および前記本体が、前記隙間に挿入された前記印刷物の周縁を係止するように構成されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記係止部には、当該係止部を補強するための補強リブが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記本体のうち、前記切り込みが形成された部分の周縁の少なくとも一部が、強度を高めるために圧縮されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記係止部の周縁の少なくとも一部が、強度を高めるために圧縮されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記本体には、前記印刷物を配置する領域のうち、前記印刷物の相対向する側縁に沿って前記係止部が設けられており、各係止部によって前記印刷物の相対向する側縁が係止されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項6】
前記本体のうち、前記係止部によって係止されている前記印刷物がスライド可能な方向には、前記印刷物の移動を制限するための制限部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
熱可塑性樹脂を原料として真空成形または圧空成形により成形されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ラベルなどの印刷物が設けられる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の樹脂成形品として、例えば、鶏卵容器などの食品包装容器、日用品などをパック詰めするためのブリスターパック、部品が保持されたキャリアテープを捲回するためのキャリアテープ用リール、部品などを運搬する工業用トレーなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-51627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カーボンニュートラルの目標を達成するための取り組みが国際的に行われており、その一環として、樹脂資源(プラスチック資源)の再利用が推進されている。
しかし、前述したような従来の樹脂成形品は、内容物の説明などが記載された印刷物が貼り付けられており、そのまま廃棄すると、印刷物が不純物になるため、樹脂資源の再利用に適合しないという問題がある。特許文献1には、鶏卵容器にラベルを貼り付ける鶏卵容器用ラベル貼付装置が記載されている。
なお、印刷物が貼り付けられている部分を切り取り、残った部分を樹脂資源にする方法も考えられるが、切り取るための道具を必要とし、手間も掛かるため、そのような方法は普及し難い。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の問題を解決するために創出されたものであって、樹脂資源の再利用に適合する樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
上述した目的を達成するため、本願の第1発明に係る樹脂成形品(1)は、
合成樹脂により成形された本体(1a:図1)と、
シート状の印刷物(40)を本体(1a)に係止するための係止部(10)と、を備えており、
係止部(10)は、その外形に沿った切り込み(5a:図2)を本体(10)に入れることにより形成されており、かつ、自身(10)を変形させることにより、自身(10)と本体(1a)との間に印刷物(40)の周縁(41~43)を挿入可能な隙間(5c:図3)を形成可能であり、
隙間(5c)を形成している係止部(10)および本体(1a)が、隙間(5c)に挿入された印刷物(40)の周縁(41~43)を係止するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
(第2発明)
本願の第2発明に係る樹脂成形品は、前述した第1発明に係る樹脂成形品(1)において、
係止部(10)には、当該係止部(10)を補強するための補強リブ(13:図2)が形成されていることを特徴とする。
【0008】
(第3発明)
本願の第3発明に係る樹脂成形品は、前述した第1発明または第2発明に係る樹脂成形品(1)において、
本体(1a)のうち、切り込み(5a:図5)が形成された部分の周縁の少なくとも一部(5d)が、強度を高めるために圧縮されていることを特徴とする。
【0009】
(第4発明)
本願の第4発明に係る樹脂成形品は、前述した第1発明ないし第3発明のいずれかに係る樹脂成形品(1)において、
係止部(10)の周縁の少なくとも一部(11a:図6)が、強度を高めるために圧縮されていることを特徴とする。
【0010】
(第5発明)
本願の第5発明に係る樹脂成形品は、前述した第1発明ないし第4発明のいずれかに係る樹脂成形品(1)において、
本体(1a)には、印刷物(40)を配置する領域のうち、印刷物(40)の相対向する側縁(41,41)に沿って係止部(10)が設けられており、各係止部(10)によって印刷物(40)の相対向する側縁(41,41)が係止されることを特徴とする。
【0011】
(第6発明)
本願の第6発明に係る樹脂成形品は、前述した第1発明ないし第5発明のいずれかに係る樹脂成形品(1)において、
本体(1a)のうち、係止部(10)によって係止されている印刷物(40)がスライド可能な方向には、印刷物(40)の移動を制限するための制限部(20(図7),30(図8))が設けられていることを特徴とする。
【0012】
(第7発明)
本願の第7発明に係る樹脂成形品は、前述した第1発明ないし第6発明のいずれかに係る樹脂成形品(1)において、
熱可塑性樹脂を原料として真空成形または圧空成形により成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
(第1発明の効果)
本願の第1発明に係る樹脂成形品は、本体に備えられた係止部と本体との間に形成された隙間に印刷物の周縁を挿入することにより、隙間を形成している係止部および本体が、隙間に挿入された印刷物の周縁を係止することができる。
従って、印刷物を本体に貼り付ける必要がなく、樹脂成形品を廃棄する場合は、印刷物を容易に取り除くことができるため、樹脂成形品を樹脂資源の再利用に供することができる。
また、従来のように、印刷物が貼り付けられている部分を切り取る必要がなく、樹脂成形品全体を樹脂資源の再利用に供することができるため、樹脂資源の無駄を少なくすることもできる。
【0014】
(第2発明の効果)
本願の第2発明に係る樹脂成形品は、係止部には、当該係止部を補強するための補強リブが形成されているため、係止部の強度低下により、係止力が低下し、印刷物が配置位置からずれてしまわないようにすることができる。
【0015】
(第3発明の効果)
本願の第3発明に係る樹脂成形品は、本体のうち、切り込みが形成された部分の周縁の少なくとも一部が、強度を高めるために圧縮されているため、切り込みが形成された部分の周縁の強度低下により、係止力が低下し、印刷物が配置位置からずれてしまわないようにすることができる。
【0016】
(第4発明の効果)
本願の第4発明に係る樹脂成形品は、係止部の周縁の少なくとも一部が、強度を高めるために圧縮されているため、係止部の周縁の強度低下により、係止力が低下し、印刷物が配置位置からずれてしまわないようにすることができる。
【0017】
(第5発明の効果)
本願の第5発明に係る樹脂成形品は、印刷物を配置する領域のうち、印刷物の相対向する側縁に沿って係止部が設けられており、各係止部によって印刷物の相対向する側縁が係止されるため、印刷物を安定した状態で係止することができる。
【0018】
(第6発明の効果)
本願の第6発明に係る樹脂成形品は、本体のうち、係止部によって係止されている印刷物がスライド可能な方向には、印刷物の移動を制限するための制限部が設けられているため、樹脂成形品が振動した場合であっても、印刷物の配置位置がずれないようにすることができる。
【0019】
(第7発明の効果)
本願の第7発明に係る樹脂成形品は、熱可塑性樹脂を原料として真空成形または圧空成形により成形されているため、真空成形または圧空成形により成形され、組立て前の展開された状態の樹脂成形品に対して、係止部を形成するための切り込みを入れ易いので、樹脂成形品の製造効率を高めることができる。
【0020】
上述したように、本願発明によれば、樹脂資源の再利用に供することができる樹脂成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る容器の斜視図である。
図2図1に示す容器に備えられた係止部の説明図であり、(A)は係止部の平面図、(B)は(A)のA-A矢視断面図、(C)は(A)のB-B矢視断面図である。
図3図2(B)に示す係止部および本体によって印刷物の周縁が係止された状態を示す説明図である。
図4】印刷物を係止する手順を示す説明図であり、(A)は印刷物のスライド方向を示す説明図、(B)は印刷物が係止された状態を示す説明図である。
図5】本体の切り込みが入った周縁に形成された圧縮部の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のC-C矢視断面図である。
図6】係止部の周縁に形成された圧縮部の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のD-D矢視断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る容器の説明図であり、(A)は制限部が形成された本体の一部を省略して示す平面図、(B)は(A)のE-E矢視断面図である。
図8】制限部の変更例が形成された本体の一部を省略して示す平面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るキャリアテープ用リールの説明図であり、(A)は平面図、(B)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〈第1実施形態〉
本発明の樹脂成形品の第1実施形態として、合成樹脂により形成された容器について図を参照しつつ説明する。本実施形態では、容器の一例として、鶏卵を包装するための容器を例にして説明する。
[本体の構造]
図1に示すように、本実施形態に係る容器1は、本体1aと、本体1aに形成された複数の係止部10とを備えている。本体1aは、本体下部2と、本体上部3とを備えている。本体下部2は、複数の鶏卵を個別に保持可能に形成されている。本体上部3は、本体下部2に保持された各鶏卵の上方を覆って保護する役割をしている。本体上部3は、本体下部2に対して平行な上壁5を備えている。本体下部2の開口周縁から下鍔部2aが外方に張出し形成されており、本体上部3の開口周縁から上鍔部3aが外方に張出し形成されている。上鍔部3aおよび下鍔部2aは相互に接触しており、その接触している部分のうち、右側に形成されている部分は、複数の接合部6によって相互に接合されている。
また、上鍔部3aおよび下鍔部2aが相互に接触している部分のうち、左側、つまり、各接合部6と反対側には、回動部4が形成されている。本体上部3は、回動部4を回動軸にして開閉可能に構成されている。容器1は、熱可塑性樹脂製シートを真空成形または圧空成形することにより成形されており、本体上部3および本体下部2は、連続成形されている。また、容器1は、回動部4を境界にして折り曲げ可能に構成されており、回動部4を回動軸にして本体上部3を回動することにより、本体上部3が本体下部2を覆った状態になり、上鍔部3aおよび下鍔部2aが相互に接触した状態になる。そして、鶏卵を本体下部2に収容した後、本体上部3を本体下部2に被せ、各接合部6を形成することにより、鶏卵が包装された状態になる。各接合部6は、上鍔部3aおよび下鍔部2aの一方に形成された凹部に、他方に形成された凸部を嵌合することにより、あるいは、熱溶着により形成される。各接合部6は、一旦、接合状態が解除されると、再度接合することが困難であるため、改竄防止の役割をしている。
【0023】
上壁5には、印刷物40を係止するための係止部10が複数設けられている。印刷物40は、紙、樹脂、あるいは、紙および樹脂の混合材料などにより長方形に形成されており、長手方向の相対向する一対の側縁41,42と、短手方向の相対向する側縁43,44とを有する。印刷物40には、容器1に包装されている鶏卵の大きさ、内容物の名称(本例では鶏卵)、原産地、選別包装者、賞味期限、保存方法、使用方法などの説明が記載されている。各係止部10は、上壁5のうち、印刷物40を配置すべき領域に配置された印刷物40の相対向する一対の側縁41,42を係止する位置に設けられている。図1に示す例では、相対向する一対の係止部10が、前後に所定間隔を置いて、計4組設けられており、4つの係止部10によって長手方向の側縁41を係止し、4つの係止部10によって長手方向の側縁42を係止するように構成されている。
【0024】
[係止部の構造]
図2に示すように、係止部10は、係止片11と、補強リブ13とを備えている。係止片11は、本体1aの上壁5に、係止片11の外形と同じ形状の切り込み5aを、上壁5を貫通するように入れることにより、舌状に形成されている。上壁5のうち、係止片11を形成する部分は、熱可塑性樹脂により薄肉の板状(シート状)に形成されており、塑性変形可能な状態になっている。このため、図3に示すように、係止片11は、その先端12を上方に持ち上げることにより、先端12と反対側の屈曲部14を基点として屈曲し、上壁5から上方に浮いた状態になる。そして、上壁5から上方に浮いた状態になった係止片11と上壁5との間には、印刷物40の側縁43を挿入可能な隙間5cが形成され、その隙間5cを形成している係止片11と上壁5(本体1a)とによって係止された状態になる。また、係止片11の下部には、係止片11と同じ形状の開口部5bが形成される。
【0025】
図2に示すように、係止片11の上面には、係止片11を補強するための補強リブ13が形成されている。補強リブ13は、係止片11の先端12の中央と、屈曲部14の中央とを結ぶ線L1に沿って形成されており、その先端13aは、係止片11の略中央に位置し、後端13bは、屈曲部14を超える位置まで延出されている。補強リブ13は、平面視長孔状であり、上方に膨出した形状に形成されている。係止片11は、補強リブ13が形成されることにより、剛性が高くなり、強度が向上している。また、補強リブ13が形成されていない場合に係止片11の先端12を持ち上げると、屈曲部14を基点として屈曲するが、塑性変形であるため、係止片11の弾性が小さく、屈曲前の姿勢に戻り難い。換言すると、係止片11の腰が弱いため(剛性が低いため)、屈曲前の姿勢に戻り難い。
しかし、補強リブ13を形成することにより強度が向上した係止片11は、腰が強いため、弾性が大きく、屈曲前の姿勢に戻り易い。これにより、係止片11と上壁5とによって印刷物40の側縁43を係止する力(係止力)が強くなるため、印刷物40が係止位置からずれ難くなる。
【0026】
[印刷物の着脱方法]
図4は、図1に示した計4組の係止部10のうち、上壁5の前方の配置された2組の係止部10を示している。以下の説明では、最も前方に配置された一対の係止部10を一組目の係止部10という。先ず、係止部10の係止片11の先端12を持ち上げ、係止片11と上壁5との間に隙間5cを形成する(図3)。この作業を各係止部10について行う。
そして、図4(A)に示すように、印刷物40の短手方向の側縁43を上壁5の上面に沿って左方(太い矢印で示す方向)へスライドさせ、印刷物40の長手方向の相対向する側縁41,42を、一組目の係止部10と上壁5との間に形成されている各隙間5c(図3)に挿通する。これにより、印刷物40のスライド方向が定まり、安定した状態でスライドさせることができる状態になる。
【0027】
そしてさらに、印刷物40を左方に移動させると、長手方向の相対向する側縁41,42が、二組目の係止部10(図の左側)と上壁5との間に形成されている各隙間5c(図3)に挿通される(図4(B))。そして、印刷物40の長手方向の相対向する側縁41,42を三組目および四組目の係止部10と上壁5との間に形成されている各隙間5cに挿通する(図1)。
これにより、印刷物40の長手方向の相対向する側縁41,42が、計四組の係止部10と上壁5とによって係止され、印刷物40が、上壁5に設定された領域に取付けられた状態になる。また、各隙間5cは、印刷物40によって閉塞された状態になるため、各隙間5cから塵芥などの異物が容器1に入るおそれがない。
また、容器1を廃棄するときは、印刷物40を前方または後方へスライドすることにより、容易に上壁5から取外すことができる。
【0028】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態に係る容器1は、本体1aに備えられた係止片11と、本体1aの上壁5との間に形成された隙間5cに印刷物40の相対向する側縁41,42を挿入することにより、隙間5cを形成している係止片11および上壁5が、隙間5cに挿入された印刷物40の相対向する側縁41,42を係止することができる。
従って、印刷物40を本体1aに貼り付ける必要がなく、容器1を廃棄する場合は、印刷物40を容易に取り除くことができるため、容器1を樹脂資源の再利用に供することができる。
また、従来のように、印刷物40が貼り付けられている部分を切り取る必要がなく、容器1全体を樹脂資源の再利用に供することができるため、樹脂資源の無駄を少なくすることもできる。
【0029】
(2)さらに、前述した実施形態に係る容器1は、係止片11を補強するための補強リブ13が係止片11に形成されているため、係止片11の強度低下により、係止力が低下し、印刷物40が配置位置からずれてしまわないようにすることができる。
(3)さらに、係止片11を補強するための補強リブ13が形成されているため、塑性変形した係止片11が屈曲前の姿勢に戻ろうとする力が強くなり、隙間5cを極力小さくすることができるので、隙間5cから塵芥や異物が容器1に入り難いようにすることができる。
【0030】
(4)さらに、前述した実施形態に係る容器1は、印刷物40を配置する領域のうち、印刷物40の相対向する側縁41,42に沿って係止部10が設けられており、各係止部10によって印刷物40の相対向する側縁41,42が係止されるため、印刷物40を安定した状態で係止することができる。
(5)さらに、前述した実施形態に係る容器1は、熱可塑性樹脂を原料として真空成形または圧空成形により成形されているため、真空成形または圧空成形により成形され、組立て前の展開された状態の容器1に対して、係止片11を形成するための切り込み5aを入れ易いので、容器1の製造効率を高めることができる。
【0031】
〈第1変更例〉
図5に示すように、上壁5のうち、切り込み5aの周縁を圧縮することにより、その周縁に圧縮部5d(ハッチング部分)を形成することもできる。圧縮部5dは、熱可塑性樹脂を圧縮することにより、樹脂の密度が高くなり、圧縮前よりも硬くなっている。このように圧縮部5dを形成することにより、上壁5のうち、切り込み5aの周縁の強度を高めることができるため、その周縁の強度低下により、係止力が低下し、印刷物40が配置位置からずれてしまわないようにすることができる。なお、上壁5のうち、切り込み5aの周縁の一部に圧縮部5dを形成しても良い。例えば、上壁5のうち、切り込み5aの各基端の近傍のみに形成しても良い。
【0032】
〈第2変更例〉
図6に示すように、係止片11のうち、切り込み5aの周縁を圧縮することにより、その周縁に圧縮部11a(ハッチング部分)を形成することもできる。圧縮部11aは、熱可塑性樹脂を圧縮することにより、樹脂の密度が高くなり、圧縮前よりも硬くなっている。このように圧縮部11aを形成することにより、係止片11のうち、切り込み5aの周縁の強度を高めることができるため、その周縁の強度低下により、係止力が低下し、印刷物40が配置位置からずれてしまわないようにすることができる。なお、係止片11のうち、切り込み5aの周縁の一部に圧縮部11aを形成しても良い。例えば、係止片11のうち、切り込み5aの各基端の近傍のみに形成しても良い。
【0033】
〈第2実施形態〉
本発明の第2実施形態に係る容器について図7を参照しつつ説明する。
図7(A)に示すように、本体1aのうち、係止部10によって係止されている印刷物40がスライド可能な方向には、印刷物40の移動を制限するための制限部20,20が設けられている。図7(B)に示すように、各制限部20は、それぞれ平面視円形で、側面視半球状に形成されている。換言すると、各制限部20は、上壁5の一部を上方へ半球状に膨出させた形状にそれぞれ形成されている。
上述したように、本発明の第2実施形態に係る容器は、本体1aのうち、係止部10によって係止されている印刷物40がスライド可能な方向には、印刷物40の移動を制限するための制限部20,20が設けられているため、容器1が輸送時などに振動した場合であっても、印刷物40の配置位置がずれないようにすることができる。
なお、制限部20の個数は、1個または3個以上でも良い。また、制限部20の形状は、四角柱、三角柱、円柱などでも良く、直線状のリブでも良い。
【0034】
〈変更例〉
図8に示すように、印刷物40の相対向する角部を係止する制限部30,30を上壁5に形成することもできる。各制限部30は、それぞれ係止片11のように、上壁5を制限部30の外径に沿って切り込みを入れることにより舌状に形成されている。制限部30は、係止片11と同様に先端を持ち上げることにより塑性変形して上方に屈曲し、制限部30と上壁5との間に、印刷物40の角部44,45を挿入可能な隙間が形成される。また、各制限部30の基端31,32のうち、印刷物40のスライド方向に存在する基端31は、印刷物40の角部44よりも内側に配置されているため、角部44が上記の隙間を通過できないようになっている。
なお、印刷物40のスライドを制限することができれば、制限部30の形状は限定されない。また、制限部30を1つのみ設けることもできる。また、制限部30を印刷物40の短手方向の側縁41、つまり、スライド方向に位置する側縁41と対向する位置に設け、その側縁41を制限部30および上壁5によって係止するように構成することもできる。この構成の場合、制限部30に代えて係止部10または係止片11を設けても良い。
【0035】
〈第3実施形態〉
本実施形態では、本発明に係る樹脂成形品の一例として、部品が保持されたキャリアテープを捲回するためのキャリアテープ用リールについて説明する。
図9に示すように、キャリアテープ用リール50は、円板形状に形成された第1側板51および第2側板52を備えている。第1側板51および第2側板52は、少なくともキャリアテープ(図示省略)の幅を隔てて相対向して配置されている。本実施形態では、キャリアテープ用リール50は、PET(ポリエチレンテレフタラート)により形成されている。第1側板51および第2側板52の各中心には、キャリアテープ用リール50の回転軸(図示省略)を挿通するための挿通孔53がそれぞれ貫通形成されている。
【0036】
第1側板51の表面の上部には、係止部10によって印刷物54が係止されており、第1側板51の表面の下部には、係止部10によって印刷物55が係止されている。第1側板51の表面のうち、印刷物54を取り付ける上部の領域には、印刷物54の長手方向の相対向する側縁に沿って二組の係止部10が形成されている。第1側板51の表面のうち、印刷物55を取り付ける下部の領域には、印刷物55の長手方向の相対向する側縁に沿って二組の係止部10が形成されている。各印刷物54,55には、キャリアテープに保持される部品を識別するためのバーコードやQRコード(登録商標)などの情報コードがそれぞれ印刷されている。各印刷物54,55は、それぞれ紙、樹脂、あるいは、紙および樹脂の混合材料によりシート状に形成されており、前述した第1実施形態の印刷物40と同様の係止方法により、各係止部10に係止される。また、各印刷物54,55は、前述した第1実施形態の印刷物40と同様に、取付け時と同じスライド方向またはその逆方向にスライドすることにより、容易に取り外すことができる。
【0037】
上述したキャリアテープ用リール50は、印刷物54,55が占める面積が大きいため、印刷物を貼り付ける方法では、印刷物を剥がしたときの剥がし残しが大きいし、また、印刷物が貼り付けられている方の側板を分離するのも困難であったため、使用済みとなった場合は、印刷物が貼り付けられた状態で廃棄していた。このため、従来のキャリアテープ用リールは、樹脂資源の再利用に供することができなかった。
特に、多種類の部品を扱う工場では、大量のキャリアテープ用リールが廃棄されるため、資源の無駄が大きかった。
しかし、本実施形態のキャリアテープ用リール50によれば、印刷物54,55を貼り付ける必要がなく、キャリアテープ用リール50を廃棄する場合は、印刷物54,55を容易に取り除くことができるため、キャリアテープ用リール50を樹脂資源の再利用に供することができる。
なお、前述した第2実施形態の制限部20、または、その変更例の制限部30をキャリアテープ用リール50に配置した構成にすることもできる。この構成によれば、キャリアテープ用リール50が、キャリアテープに保持された部品を供給するときに回転しても、印刷物54,55の位置がずれるおそれがない。
【0038】
〈他の実施形態〉
(1)本体1aに切り込み5aを入れた後に、屈曲部14に圧縮応力を加えることにより、係止片11が屈曲部14を境界にして上方に屈曲する方法を取り入れることもできる。この方法によれば、真空成形または圧空成形によって容器1が製造された後に各係止片11を屈曲させるという作業を省くことができるため、印刷物を本体1aに取り付ける作業効率を高めることができる。
(2)係止片11の下面に凸部を形成することにより、印刷物との摩擦力を大きくし、印刷物を係止する力を大きくすることもできる。なお、凸部の数は1個でも良いし、複数個でも良い。
(3)補強リブ13の大きさ、数、形状および形成位置などは、係止する対象となる印刷物の厚さおよび材質、樹脂成形品の使用環境などに応じて変更することができる。
(4)本発明は、前述した容器やキャリアテープ用リールの他、日用品などをパック詰めするためのブリスターパック、部品などを運搬する工業用トレーなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 容器
1a 本体
5 上壁
5a 切り込み
10 係止部
11 係止片
13 リブ
14 屈曲部
20,30 制限部
40 印刷物
41~44 側縁
50 キャリアテープ用リール
54,55 印刷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9