(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165471
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】エレベータ用調速機及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 5/04 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B66B5/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070804
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA13
3F304DA22
3F304EA18
(57)【要約】
【課題】 弾性部の弾性変形量が大きくなったときに、加力部によって直線移動部に移動方向へ加えられる力が大きくなり過ぎることを抑制することができるエレベータ用調速機を提供する。
【解決手段】 エレベータ用調速機は、錘が公転することに伴って錘が遠心力によって公転軸から離れるように、ガバナ車と錘とを接続する接続部と、公転軸に近づく方向へ錘に力を加えるために、接続部に力を加える加力部と、を備え、接続部は、錘が公転軸から離れることに伴って移動方向へ移動する直線移動部を備え、加力部は、直線移動部に弾性復元力を加え、錘が公転軸から離れるにつれて弾性変形量が大きくなる弾性部と、弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、弾性部の弾性復元力の大きさに対する、直線移動部に移動方向へ加える力の大きさの比率を小さくする力抑制手段と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごが走行することに伴って回転するガバナ車と、
前記ガバナ車が回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナ車と前記錘とを接続する接続部と、
前記公転軸に近づく方向へ前記錘に力を加えるために、前記接続部に力を加える加力部と、を備え、
前記接続部は、前記錘が前記公転軸から離れることに伴って移動方向へ移動する直線移動部を備え、
前記加力部は、
前記直線移動部に弾性復元力を加え、前記錘が前記公転軸から離れるにつれて弾性変形量が大きくなる弾性部と、
前記弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、前記弾性部の弾性復元力の大きさに対する、前記直線移動部に前記移動方向へ加える力の大きさの比率を小さくする力抑制手段と、を備える、エレベータ用調速機。
【請求項2】
前記弾性部は、前記直線移動部に変形方向への弾性復元力を加えるために、前記変形方向へ弾性変形可能に構成され、
前記力抑制手段は、接続軸を軸にして、前記弾性部を前記直線移動部に対して回転可能に接続し、
前記接続軸方向視における前記移動方向と前記変形方向との交差角度は、前記弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、大きくなる、請求項1に記載のエレベータ用調速機。
【請求項3】
前記接続軸方向視における前記移動方向と前記変形方向との交差角度が90°より小さくなるように、前記直線移動部に対する前記弾性部の回転を規制する規制部をさらに備える、請求項2に記載のエレベータ用調速機。
【請求項4】
前記錘が設定位置まで移動したことを検出する検出部をさらに備え、
前記加力部が前記直線移動部に前記移動方向へ加える力は、前記錘が前記設定位置まで前記公転軸から離れるにつれて、大きくなる、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータ用調速機。
【請求項5】
前記接続部は、前記公転軸を軸にして回転可能で且つ前記公転軸方向へ移動可能な軸移動部と、第1端部が前記錘に回転可能に接続され且つ第2端部が前記軸移動部に回転可能に接続される錘リンクと、を備える、請求項1~4の何れか1項に記載のエレベータ調速機。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のエレベータ用調速機を備える、エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータ用調速機及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータ調速機は、ガバナ車と、ガバナ車が回転することに伴って公転軸を中心に公転する錘と、錘が公転することに伴って錘が遠心力によって公転軸から離れるように、ガバナ車と錘とを接続する接続部とを備えている(例えば、特許文献1及び2)。そして、例えば、錘が設定位置まで移動することによって、ガバナの回転速度が設定速度に達したことを検出することができる。
【0003】
ところで、接続部は、錘が公転軸から離れることに伴って移動方向へ移動する直線移動部を備え、エレベータ調速機は、弾性部を有する加力部を備えている。弾性部は、公転軸に近づく方向へ錘に力を加えるように、弾性復元力からなる力を直線移動部に加えている。そして、錘が回転軸から離れるにつれて、弾性部の弾性変形量が大きくなるため、弾性部が直線移動部に加える力も、大きくなる。
【0004】
これにより、錘が設定位置付近に位置しているときに、加力部によって直線移動部に加えられる力が大きくなり過ぎる場合がある。斯かる場合には、例えば、ガバナ車の回転速度に対して、設定位置付近における錘の移動量が小さくなる。したがって、例えば、検出部で検出するガバナ車の回転速度の精度が低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012-533495号公報
【特許文献2】特開2003-112870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、課題は、弾性部の弾性変形量が大きくなったときに、加力部によって直線移動部に移動方向へ加えられる力が大きくなり過ぎることを抑制することができるエレベータ用調速機及びエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
エレベータ用調速機は、かごが走行することに伴って回転するガバナ車と、前記ガバナ車が回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナ車と前記錘とを接続する接続部と、前記公転軸に近づく方向へ前記錘に力を加えるために、前記接続部に力を加える加力部と、を備え、前記接続部は、前記錘が前記公転軸から離れることに伴って移動方向へ移動する直線移動部を備え、前記加力部は、前記直線移動部に弾性復元力を加え、前記錘が前記公転軸から離れるにつれて弾性変形量が大きくなる弾性部と、前記弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、前記弾性部の弾性復元力の大きさに対する、前記直線移動部に前記移動方向へ加える力の大きさの比率を小さくする力抑制手段と、を備える。
【0008】
また、エレベータ用調速機においては、前記弾性部は、前記直線移動部に変形方向への弾性復元力を加えるために、前記変形方向へ弾性変形可能に構成され、前記力抑制手段は、接続軸を軸にして、前記弾性部を前記直線移動部に対して回転可能に接続し、前記接続軸方向視における前記移動方向と前記変形方向との交差角度は、前記弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、大きくなる、という構成でもよい。
【0009】
また、エレベータ用調速機は、前記接続軸方向視における前記移動方向と前記変形方向との交差角度が90°より小さくなるように、前記直線移動部に対する前記弾性部の回転を規制する規制部をさらに備える、という構成でもよい。
【0010】
また、エレベータ用調速機は、前記錘が設定位置まで移動したことを検出する検出部をさらに備え、前記加力部が前記直線移動部に前記移動方向へ加える力は、前記錘が前記設定位置まで前記公転軸から離れるにつれて、大きくなる、という構成でもよい。
【0011】
また、エレベータ用調速機においては、前記接続部は、前記公転軸を軸にして回転可能で且つ前記公転軸方向へ移動可能な軸移動部と、第1端部が前記錘に回転可能に接続され且つ第2端部が前記軸移動部に回転可能に接続される第1錘リンクと、を備える、という構成でもよい。
【0012】
また、エレベータは、前記のエレベータ用調速機を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエレベータの概要図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る調速機の正面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る調速機の一部を断面で示す要部正面図であって、錘が初期位置に位置する状態を示す図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る調速機の一部を断面で示す要部正面図であって、錘が設定位置に位置する状態を示す図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る調速機の要部正面図であって、錘が初期位置に位置する状態に作用する力を示す図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る調速機の要部正面図であって、錘が設定位置に位置する状態に作用する力を示す図である。
【
図7】
図7は、錘の位置と、弾性部による弾性復元力及び加力部による力との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、錘の位置と、直線移動部に作用する錘の遠心力及び加力部による力との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態に係る調速機の要部正面図である。
【
図10】
図10は、さらに他の実施形態に係る調速機の要部正面図である。
【
図11】
図11は、さらに他の実施形態に係る調速機の要部正面図である。
【
図12】
図12は、さらに他の実施形態に係る調速機の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、エレベータ及びエレベータ用調速機における一実施形態について、
図1~
図8を参照しながら説明する。なお、各図(
図9~
図12も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0015】
図1に示すように、エレベータ31は、例えば、人が乗るためのかご32と、かご32に接続されるかごロープ33と、かごロープ33に接続される釣合錘34と、かごロープ33を駆動してかご32を走行させる巻上機35とを備えていてもよい。また、エレベータ31は、例えば、かご32を案内するかごレール36と、釣合錘34を案内する錘レール37と、エレベータ31の各部を制御する処理部38とを備えていてもよい。
【0016】
本実施形態に係るエレベータ31においては、巻上機35は、昇降路X1の上部に設けられる機械室X2の内部に配置されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、巻上機35は、昇降路X1内に配置されている、という構成でもよい。
【0017】
また、本実施形態においては、かごロープ33の一端がかご32に固定され、かごロープ33の他端が釣合錘34に固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ33の両端がそれぞれ昇降路X1の上部又は下部に固定され、かごロープ33がかご32のシーブ及び釣合錘34のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ33がかご32及び釣合錘34にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0018】
また、本実施形態に係るエレベータ31は、ロープ式の駆動方式である、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ31は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよく、また、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。
【0019】
また、エレベータ31は、例えば、かご32に接続される無端環状のガバナロープ39と、かご32の速度を検出するために、ガバナロープ39が巻き掛けられるエレベータ用調速機(以下、単に「調速機」ともいう)1と、ガバナロープ39に張力を付与するために、ガバナロープ39に吊り下げられる張り車40とを備えていてもよい。
【0020】
巻上機35は、例えば、かごロープ33が巻き掛けられる綱車35aと、綱車35aを回転させる駆動源35bと、綱車35aを制動する制動部35cとを備えていてもよい。また、かご32は、例えば、かごレール36を挟むことによってかご32を停止させる停止部32aと、調速機1の動作を停止部32aへ伝達する伝達部32bとを備えていてもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、調速機1は、例えば、ガバナロープ39を把持する把持部1aを備えていてもよい。そして、例えば、かご32の速度が設定速度を超えた場合に、把持部1aがガバナロープ39を把持し、ガバナロープ39の走行が停止されることによって、かご32の停止部32aは、作動する、という構成でもよい。
【0022】
図2及び
図3に示すように、調速機1は、例えば、躯体(機械室X2、昇降路X1)に固定される本体部2と、ガバナロープ39が巻き掛けられて回転軸A1を軸にして回転可能なガバナ車3と、ガバナ車3が回転することに伴って、公転軸A2を軸にして公転する錘4,4と、ガバナ車3と錘4,4とを接続する接続部5とを備えていてもよい。特に限定されないが、本実施形態においては、ガバナ車3の回転軸A1と錘4の公転軸A2とは、同じである。
【0023】
接続部5は、例えば、錘4が公転することに伴って錘4が遠心力によって公転軸A2から離れるように、ガバナ車3と錘4,4とを接続していてもよい。例えば、かご32が設定速度で走行しているときに、錘4が移動して設定位置に位置する、という構成でもよい。それに対して、調速機1は、例えば、公転軸A2に近づく方向へ錘4に力を加えるために、接続部5に力を加える加力部6と、錘4が設定位置まで移動したことを検出する検出部7とを備えていてもよい。
【0024】
なお、検出部7の構成は、特に限定されない。例えば、本実施形態のように、検出部7は、接続部5と把持部1aとを接続するリンク機構であり、検出部7は、錘4が設定位置まで移動した場合に、把持部1aを動作させる、という構成でもよい。
【0025】
例えば、検出部7は、把持部1aに接続されるリンク機構であり、検出部7は、錘4が設定位置まで移動した場合に、錘4が所定のリンクと当たることによって、把持部1aを動作させる、という構成でもよい。また、例えば、検出部7は、把持部1aに接続されるリンク機構であり、検出部7は、錘4が設定位置まで移動した場合に、所定のリンクが把持部1aとの係合を解除することによって、把持部1aを動作させる、という構成でもよい。
【0026】
なお、検出部7の検出の構成は、把持部1aを動作させる、という構成だけでなく、例えば、外部(例えば、処理部38)へ信号を出力する、という構成も含まれる。例えば、検出部7は、センサ(例えば、接触センサ、光電センサ)であり、検出部7は、錘4が設定位置まで移動した場合に、外部(例えば、処理部38)へ信号を出力する、という構成でもよい。
【0027】
図3及び
図4に示すように、接続部5は、例えば、公転軸A2を軸にして回転可能で且つ公転軸A2方向へ移動可能な軸移動部8と、錘4と軸移動部8とを接続する第1錘リンク9と、錘4とガバナ車3とを接続する第2錘リンク10とを備えていてもよい。なお、
図3は、錘4が初期位置(例えば、ガバナ車3の回転が停止し、錘4が公転軸A2に最も近づいた位置)に位置する状態を示しており、
図4は、錘4が設定位置に位置する状態を示している。
【0028】
例えば、第1錘リンク9の第1端部は、第1接続軸A3を軸にして、錘4に回転可能に接続され、第1錘リンク9の第2端部は、第1接続軸A3と平行な第2接続軸A4を軸にして、軸移動部8に回転可能に接続されていてもよい。また、例えば、第2錘リンク10の第1端部は、第1接続軸A3を軸にして、錘4に回転可能に接続され、第2錘リンク10の第2端部は、第1接続軸A3と平行な第3接続軸A5を軸にして、ガバナ車3に回転可能に接続されていてもよい。
【0029】
接続部5は、例えば、錘4が公転軸A2から離れることに伴って、移動方向D4へ移動する直線移動部11と、直線移動部11を移動方向D4へ案内する案内部12とを備えていてもよい。なお、案内部12は、例えば、本実施形態のように、直線移動部11に接することによって、直線移動部11を案内してもよく、また、例えば、他の部材に接することによって、直線移動部11を案内してもよい。
【0030】
また、特に限定されないが、例えば、本実施形態のように、直線移動部11の移動方向D4は、錘4の公転軸A2方向と平行となっていてもよい。そして、例えば、軸移動部8と直線移動部11とは、一体となって、移動方向D4(公転軸A2方向)へ移動する、という構成でもよい。
【0031】
具体的には、軸移動部8は、直線移動部11に対して回転可能となるように、直線移動部11に接続されていてもよい。例えば、本実施形態のように、直線移動部11は、内筒であり、軸移動部8は、当該内筒に回転可能に接続される外筒である、という構成でもよく、また、例えば、直線移動部11は、外筒であり、軸移動部8は、当該外筒に回転可能に接続される内筒である、という構成でもよい。
【0032】
加力部6は、例えば、本実施形態のように、直線移動部11に弾性復元力を加える弾性部13と、弾性部13の弾性復元力の大きさに対する、直線移動部11に移動方向D4へ加える力の大きさの比率を小さくする力抑制手段14とを備えていることが好ましい。また、本体部2は、例えば、本実施形態のように、加力部6に接続されるベース部2aを備えていてもよい。
【0033】
なお、弾性部13の個数は、特に限定されないが、例えば、本実施形態のように、弾性部13の個数は、二つとしてもよい。また、錘4の個数は、特に限定されないが、例えば、本実施形態のように、錘4の個数は、二つとしてもよい。
【0034】
弾性部13は、例えば、変形方向D5へ弾性変形可能に構成されていてもよい。そして、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、弾性部13の弾性変形量は、大きくなっていてもよい。これにより、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、弾性部13の弾性復元力は、大きくなる。
【0035】
なお、弾性部13の構成は、特に限定されない。弾性部13は、例えば、本実施形のように、変形方向D5が軸心方向である弦巻バネとしてもよい。また、本実施形態においては、弾性部13は、収縮するように弾性変形する、という構成であるが、弾性部13は、伸長するように弾性変形する、という構成でもよい。
【0036】
力抑制手段14は、例えば、本実施形態のように、弾性部13の第1端を保持する第1保持部15と、弾性部13の第2端を保持する第2保持部16とを備えていてもよい。そして、弾性部13は、例えば、第4接続軸A6を軸にして、直線移動部11に対して回転可能に接続されていてもよい。
【0037】
具体的には、本実施形態のように、第1保持部15は、第4接続軸A6を軸にして、直線移動部11に接続され、第2保持部16は、第4接続軸A6と平行である第5接続軸A7を軸にして、本体部2のベース部2aに接続されている、という構成でもよい。これにより、直線移動部11が移動方向D4へ移動することに伴って、弾性部13は、第4接続軸A6を軸にして、回転する。
【0038】
また、例えば、本実施形態のように、弾性部13が変形方向D5へ弾性変形可能に構成されていることに対して、力抑制手段14は、弾性部13が変形方向D5と異なる方向へ変更することを抑制させる変形抑制部17を備えることが好ましい。これにより、例えば、弾性部13の弾性復元力が直線移動部11に加えられる方向を、正確に変形方向D5とすることができる。
【0039】
変形抑制部17の構成は、特に限定されない。例えば、本実施形態のように、変形抑制部17は、一方の保持部(本実施形態においては、第1保持部)15に固定され、他方の保持部(本実施形態においては、第2保持部)16に接することによって当該保持部16を変形方向D5へ案内する、という構成でもよい。
【0040】
また、調速機1は、錘4が公転軸A2から離れることを規制する第1規制部18と、錘4が公転軸A2に近づくことを規制する第2規制部19とを備えることが好ましい。これにより、錘4の移動が規制されるため、直線移動部11の移動方向D4の移動が規制され、さらに、直線移動部11に対する弾性部13の回転が規制される。
【0041】
規制部18,19の構成は、特に限定されないが、例えば、本実施形態のように、規制部18,19は、それぞれ直線移動部11と当たることによって、錘4の移動を規制する、という構成でもよい。なお、特に限定されないが、錘4が設定位置に位置する場合に、第1規制部18が直線移動部11と離れていてもよい。これにより、錘4が設定位置よりも公転軸A2からさらに離れた場合に、第1規制部18は、錘4の移動を規制する。
【0042】
本実施形態に係るエレベータ31及び調速機1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る調速機1の動作について、
図5~
図8を参照しながら説明する。
【0043】
図5に示すように、ガバナ車3が回転して錘4が公転した場合に、錘4に遠心力が働くため、軸移動部8を経由して、直線移動部11に、リンク方向D6の遠心力F1が加えられる。なお、リンク方向D6とは、第2接続軸A4方向視において、第1接続軸A3と第2接続軸A4とを結ぶ方向である。
【0044】
そして、直線移動部11が移動方向D4へ移動可能であるため、直線移動部11に加えられた遠心力F1のうち、移動方向D4の成分の力F2が、直線移動部11を移動させる力(以下、「動作力」ともいう)F2となる。そして、動作力F2は、遠心力F1と、第1角度θ1の余弦(COSθ1)との積となる。なお、第1角度θ1は、第2接続軸A4方向視における、移動方向D4とリンク方向D6との交差角度θ1である。
【0045】
一方で、錘4が初期位置に位置している場合にも、弾性部13が弾性変形しているため、直線移動部11に、変形方向D5の弾性復元力F3が加えられている。なお、変形方向D5は、第4接続軸A6方向視において、第4接続軸A6と第5接続軸A7とを結ぶ方向である。
【0046】
そして、直線移動部11が移動方向D4へ移動可能であるため、直線移動部11に加えられた弾性復元力F3のうち、移動方向D4の成分の力F4が、直線移動部11を移動させる力、即ち、動作力F2に対する抗力F4となる。そして、抗力F4は、弾性復元力F3と、第2角度θ2の余弦(COSθ2)との積となる。なお、第2角度θ2は、第4接続軸A6方向視における、移動方向D4と変形方向D5との交差角度θ2である。
【0047】
したがって、ガバナ車3が回転し、錘4が公転しても、抗力F4が動作力F2よりも大きい場合には、直線移動部11が本体部2に対して移動せず、錘4も公転軸A2から離れずに初期位置に位置したままとなる。このとき、第2規制部19が直線移動部11を止めており、第2角度θ2は、0°よりも大きくなっている。なお、
図5の錘4の位置及び各力F1~F4の大きさは、抗力F4の大きさと動作力F2の大きさとが同じで(抗力F4と動作力F2とが釣り合って)且つ錘4が初期位置に位置している状態を示している。
【0048】
そして、ガバナ車3がさらに速く回転して錘4がさらに速く公転することによって、動作力F2が抗力F4よりも大きくなった場合には、
図6に示すように、直線移動部11が本体部2に対して移動方向D4へ移動し、錘4は、公転軸A2から離れるように、移動する。このとき、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、第1角度θ1は、大きくなる。
【0049】
これにより、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、遠心力F1の大きさに対する動作力F2の大きさの比率は、小さくなる。したがって、錘4が公転軸A2から離れているとき、例えば、錘4が設定位置付近に位置するとき、遠心力F1の大きさに対する動作力F2の大きさの比率を、大きくすることができない。なお、
図6の錘4の位置及び各力F1~F4の大きさは、錘4が設定位置に位置している状態を示している。
【0050】
一方で、直線移動部11が本体部2に対して移動方向D4へ移動することに伴って、第1保持部15と第2保持部16との距離は、変化する。そして、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、第1保持部15と第2保持部16との距離は、小さくなる。これにより、弾性部13の弾性変形量が大きくなるため、弾性復元力F3は、大きくなる。
【0051】
それに対して、直線移動部11が本体部2に対して移動方向D4へ移動することに伴って、弾性部13は、第4接続軸A6を軸にして、直線移動部11に対して回転する。そして、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、第2角度θ2は、大きくなる。これにより、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、弾性復元力F3の大きさに対する抗力F4の大きさの比率を、小さくすることができる。
【0052】
したがって、
図7に示すように、錘4が初期位置から設定位置へ移動するにつれて、弾性復元力F3の大きさに対する抗力F4の大きさの比率を、小さくすることができる。その結果、弾性部13の弾性変形量が大きくなったときに、例えば、錘4が設定位置付近に位置するときに、弾性復元力F3が大きくなるにも関わらす、抗力F4が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0053】
このように、錘4が初期位置から設定位置へ移動するにつれて、遠心力F1の大きさに対する動作力F2の大きさの比率が小さくなることに対して、弾性復元力F3の大きさに対する抗力F4の大きさの比率は、小さくなっている。これにより、
図8に示すように、比較例の調速機の抗力F5と比較して、錘4が設定位置付近に位置するときに、動作力F2の大きさに対して抗力F4の大きさを十分に小さくすることができる。
【0054】
したがって、例えば、錘4が設定位置付近に位置しているときに、ガバナ車3の回転速度の変化に対する、錘4が公転軸A2に対して移動する距離が小さくなることを抑制することができる。その結果、例えば、検出部7で検出するガバナ車3の回転速度(即ち、かご32の走行速度)の精度を向上させることができる。
【0055】
なお、比較例に係る調速機は、力抑制手段14を備えておらず、直線移動部11の移動方向D4と弾性部13の変形方向D5とが同じ(即ち、弾性復元力の大きさと抗力F5の大きさとが同じ)であり、且つ、錘4が初期位置に位置するときの抗力F5の大きさが、本実施形態に係る調速機1と同じである、という構成である。
【0056】
また、
図8に示すように、錘4が初期位置から設定位置へ移動するにつれて、動作力F2が大きくなっていることに対して、抗力F4も大きくなっている、という構成が好ましい。即ち、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、動作力F2が大きくなっていることに対して、抗力F4も大きくなっている、という構成が好ましい。これにより、錘4が設定位置付近に位置するときに、動作力F2に対して抗力F4が小さくなり過ぎることを抑制することができる。
【0057】
なお、仮に、錘4が設定位置よりも公転軸A2からさらに離れた場合に、第1規制部18が直線移動部11の移動を停止するため、直線移動部11に対する弾性部13の回転が規制される。これにより、第2角度θ2が90°以上になることを防止することができるため、弾性復元力F3が公転軸A2に近づく方向へ錘4に力を加えることになることを防止することができる。即ち、弾性復元力F3を、常に、動作力F2に対する抗力F4とすることができる。
【0058】
以上より、本実施形態に係るエレベータ31は、前記のエレベータ用調速機1を備える。
【0059】
そして、本実施形態のように、エレベータ用調速機1は、かご32が走行することに伴って回転するガバナ車3と、前記ガバナ車3が回転することに伴って、公転軸A2を軸にして公転する錘4と、前記錘4が公転することに伴って前記錘4が遠心力F1によって前記公転軸A2から離れるように、前記ガバナ車3と前記錘4とを接続する接続部5と、前記公転軸A2に近づく方向へ前記錘4に力を加えるために、前記接続部5に力を加える加力部6と、を備え、前記接続部5は、前記錘4が前記公転軸A2から離れることに伴って移動方向D4へ移動する直線移動部11を備え、前記加力部6は、前記直線移動部11に弾性復元力F3を加え、前記錘4が前記公転軸A2から離れるにつれて弾性変形量が大きくなる弾性部13と、前記弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、前記弾性部13の弾性復元力F3の大きさに対する、前記直線移動部11に前記移動方向D4へ加える力F4の大きさの比率を小さくする力抑制手段14と、を備える、という構成が好ましい。
【0060】
斯かる構成によれば、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、弾性部13の弾性変形量が大きくなるため、弾性部13の弾性復元力F3が大きくなる。そして、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、弾性部13の弾性復元力F3の大きさに対する、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4の大きさの比率は、小さくなる。これにより、弾性部13の弾性変形量が大きくなったときに、加力部6によって直線移動部11に移動方向D4へ加えられる力F4が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態のように、エレベータ用調速機1においては、前記弾性部13は、前記直線移動部11に変形方向D5への弾性復元力F3を加えるために、前記変形方向D5へ弾性変形可能に構成され、前記力抑制手段14は、接続軸(本実施形態においては、第4接続軸)A6を軸にして、前記弾性部13を前記直線移動部11に対して回転可能に接続し、前記接続軸A6方向視における前記移動方向D4と前記変形方向D5との交差角度(本実施形態においては、第2角度)θ2は、前記弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、大きくなる、という構成が好ましい。
【0062】
斯かる構成によれば、弾性部13が変形方向D5へ弾性変形することによって、直線移動部11に、変形方向D5への弾性復元力F3が加えられる。これにより、弾性復元力F3のうち移動方向D4の成分の力F4が、弾性部13によって直線移動部11に移動方向D4へ加えられる力となる。
【0063】
そして、弾性部13は、接続軸A6を軸にして直線移動部11に対して回転可能に接続されており、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、接続軸A6方向視における移動方向D4と変形方向D5との交差角度θ2は、大きくなる。これにより、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、弾性部13の弾性復元力F3の大きさに対する、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4の大きさの比率を、小さくすることができる。
【0064】
また、本実施形態のように、エレベータ用調速機1は、前記接続軸A6方向視における前記移動方向D4と前記変形方向D5との交差角度θ2が90°より小さくなるように、前記直線移動部11に対する前記弾性部13の回転を規制する規制部(本実施形態においては、第1規制部)18をさらに備える、という構成が好ましい。
【0065】
斯かる構成によれば、直線移動部11に対する弾性部13の回転が規制されるため、接続軸A6方向視における移動方向D4と変形方向D5との交差角度θ2が90°より小さくなる。これにより、弾性部13の弾性復元力F3によって錘4に加えられる力の方向が公転軸A2に近づく方向になることを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態のように、エレベータ用調速機1は、前記錘4が設定位置まで移動したことを検出する検出部7をさらに備え、前記加力部6が前記直線移動部11に前記移動方向D4へ加える力F4は、前記錘4が前記設定位置まで前記公転軸A2から離れるにつれて、大きくなる、という構成が好ましい。
【0067】
斯かる構成によれば、錘4が設定位置まで公転軸A2から離れるにつれて、錘4に働く遠心力F1が大きくなるため、錘4が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F2は、大きくなる。それに対して、錘4が設定位置まで公転軸A2から離れるにつれて、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4は、大きくなっている。これにより、錘4が設定位置付近に位置するときに、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4が小さくなり過ぎることを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態のように、エレベータ用調速機1においては、前記接続部5は、前記公転軸A2を軸にして回転可能で且つ前記公転軸A2方向へ移動可能な軸移動部8と、第1端部が前記錘4に回転可能に接続され且つ第2端部が前記軸移動部8に回転可能に接続される錘リンク(本実施形態においては、第1錘リンク)9と、を備える、という構成が好ましい。
【0069】
斯かる構成によれば、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、錘リンク9が延びる方向D6と公転軸A2方向との交差角度θ1が、大きくなる。これにより、錘4の遠心力F1の大きさに対する、錘4が軸移動部8に公転軸A2方向へ加える力F2の大きさの比率は、小さくなる。これにより、錘4が設定位置付近に位置するとき、錘4の遠心力F1の大きさに対する、錘4が軸移動部8に公転軸A2方向へ加える力F2の大きさの比率を、大きくすることができない。
【0070】
それに対して、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、弾性部13の弾性復元力F3の大きさに対する、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4の大きさの比率は、小さくなっている。これにより、錘4が設定位置付近に位置するとき、錘4が軸移動部8に公転軸A2方向へ加える力F2に対して、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0071】
なお、エレベータ31及びエレベータ用調速機1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ31及びエレベータ用調速機1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0072】
(1)上記実施形態に係るエレベータ用調速機1においては、力抑制手段14は、第4接続軸A6を軸にして、弾性部13を直線移動部11に対して回転可能に接続し、第2角度θ2は、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、大きくなる、という構成である。しかしながら、エレベータ用調速機1は、斯かる構成に限られない。
【0073】
例えば、
図9に示すように、力抑制手段14は、錘4に対して公転軸A2に近づく方向へ力を加える磁石20,21を備え、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、磁石20,21が錘4に加える力は、大きくなる、という構成でもよい。特に限定されないが、斯かる構成の一例について、以下に、
図9を参照しながら説明する。
【0074】
図9に示すように、加力部6は、例えば、錘4が公転軸A2から離れるにつれて弾性変形量が大きくなる弾性部13と、第1及び第2磁石20,21を有する力抑制手段14とを備えている。そして、例えば、弾性部13は、直線移動部11とガバナ車3との間に配置されており、直線移動部11の移動方向D4と弾性部13の変形方向D5とは、同じとなっている。
【0075】
それに対して、例えば、第1磁石20は、直線移動部11に固定されており、第2磁石21は、移動方向D4で第1磁石20と対面するように、ガバナ車3に固定されている。そして、第1磁石20と第2磁石21との間には、移動方向D4で吸引する磁力が働くように、構成されている。これにより、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力の大きさは、弾性部13の弾性復元力の大きさと、第1及び第2磁石20,21間の磁力の大きさとの差分となる。
【0076】
そして、第1磁石20と第2磁石21との間の距離が小さくなるにつれて、吸引する磁力は、大きくなる。即ち、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、第1磁石20と第2磁石21との間の吸引する磁力は、大きくなる。したがって、弾性部13の弾性変形量が大きくなるにつれて、弾性部13の弾性復元力の大きさに対する、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力の大きさの比率は、小さくなる。
【0077】
(2)また、上記実施形態に係るエレベータ用調速機1においては、直線移動部11の移動方向D4は、錘4の公転軸A2方向と平行である、という構成である。しかしながら、エレベータ用調速機1は、斯かる構成に限られない。例えば、
図10に示すように、直線移動部11の移動方向D4は、錘4の公転軸A2方向と交差する方向である、という構成でもよい。特に限定されないが、斯かる構成の一例について、以下に、
図10を参照しながら説明する。
【0078】
図10に示すように、接続部5は、例えば、軸移動部8と直線移動部11とを接続する接続機構22を備えている。接続機構22は、例えば、軸移動部8と一体となって公転軸A2方向へ移動するように、軸移動部8に回転可能に接続される接続移動部22aと、接続移動部22aに回転可能に接続される第1リンク22bと、第1リンク22bに回転可能に接続され、且つ本体部2に回転可能に接続される回転リンク22cと、回転リンク22cに回転可能に接続され、且つ直線移動部11に回転可能に接続される第2リンク22dとを備えている。
【0079】
これにより、軸移動部8が公転軸A2方向へ移動することに伴って、回転リンク22cが回転するため、直線移動部11は、移動方向D4へ移動する。そして、錘4の遠心力によって軸移動部8に公転軸A2方向へ加えられた力は、接続機構22によって伝達され、直線移動部11に移動方向D4へ加えられる力となる。
【0080】
(3)また、上記実施形態に係るエレベータ用調速機1においては、錘4の公転軸A2方向は、ガバナ車3の回転軸A1方向と平行である、という構成である。しかしながら、エレベータ用調速機1は、斯かる構成に限られない。例えば、
図11に示すように、錘4の公転軸A2方向は、ガバナ車3の回転軸A1方向と交差する方向である、という構成でもよい。
【0081】
(4)また、上記実施形態及び
図9~
図11に係るエレベータ用調速機1においては、接続部5は、公転軸A2を軸にして回転可能で且つ公転軸A2方向へ移動可能な軸移動部8と、第1端部が錘4に回転可能に接続され且つ第2端部が軸移動部8に回転可能に接続される第1錘リンク9とを備えている、という構成である。なお、上記実施形態及び
図9~
図10に係る接続部5は、第1端部が錘4に回転可能に接続され且つ第2端部がガバナ車3に回転可能に接続される第2錘リンク10をさらに備えている。
【0082】
また、
図11に係る接続部5は、ガバナ車3が回転することに伴って公転軸A2を軸にして回転する回転部23と、第1端部が錘4に回転可能に接続され且つ第2端部が回転部23に回転可能に接続される第2錘リンク10をさらに備えている。そして、
図11に係る錘4は、第2錘リンク10と一体となっているリンク部4aと、リンク部4aに固定される錘部4bとを備えている。
【0083】
しかしながら、エレベータ用調速機1は、斯かる構成に限られない。
【0084】
例えば、
図12に示すように、接続部5は、錘4,4が公転軸A2から離れることに伴って移動方向D4へ移動する直線移動部11と、第1端部が第1錘4を固定し、第2端部が第1軸A8を軸にして直線移動部11と回転可能に接続され、中間部が第2軸A9を軸にしてガバナ車3と回転可能に接続される第1リンク24aとを備えている、という構成でもよい。特に限定されないが、斯かる構成の一例について、以下に、
図12を参照しながら説明する。
【0085】
図12に示すように、接続部5は、第1端部が第3軸A10を軸にして第1錘4と回転可能に接続される第2リンク24bと、第1端部が第2錘4を固定し、第2端部が第4軸A11を軸にして第2リンク24bと回転可能に接続され、中間部が第5軸A12を軸にしてガバナ車3と回転可能に接続される第3リンク24cとをさらに備えていてもよい。
【0086】
そして、第1~第5軸A8~A12方向は、それぞれガバナ車3の回転軸A1方向及び錘4の公転軸A2方向と平行である、という構成でもよい。また、第1保持部15は、直線移動部11に回転可能に接続されており、第2保持部16は、ガバナ車3に回転可能に接続されている、という構成でもよい。
【0087】
(5)また、上記実施形態に係るエレベータ用調速機1においては、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4は、錘4が設定位置まで公転軸A2から離れるにつれて、大きくなる、という構成である。しかしながら、エレベータ用調速機1は、斯かる構成に限られない。
【0088】
例えば、錘4が初期位置から所定位置の間で位置する場合に、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4は、大きくなり、錘4が当該所定位置から設定位置の間に位置する場合に、錘4が公転軸A2から離れるにつれて、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4は、小さくなる、という構成でもよい。また、例えば、加力部6が直線移動部11に移動方向D4へ加える力F4は、錘4が設定位置まで公転軸A2から離れるにつれて、小さくなる、という構成でもよい。
【0089】
(6)また、上記実施形態に係るエレベータ用調速機1は、躯体(昇降路X1,機械室X2)に設置され、ガバナ車3は、かご32に接続されるガバナロープ39が巻き掛けられることによって、かご32の走行速度に比例した回転速度で回転する、即ち、ガバナロープ式調速機である、という構成である。しかしながら、エレベータ用調速機1は、斯かる構成に限られない。
【0090】
例えば、エレベータ用調速機1は、かご32に設置され、ガバナ車3は、レール(例えば、かごレール36)に接することによって、かご32の走行速度に比例した回転速度で回転する、即ち、ガバナロープレス式調速機である、という構成でもよい。斯かる構成においては、例えば、かご32は、かごレール36に停止する停止部32aを備え、例えば、検出部7は、停止部32aに接続されるリンク機構であって、錘4が設定位置まで移動した場合に、停止部32aを動作させる、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…エレベータ用調速機、1a…把持部、2…本体部、2a…ベース部、3…ガバナ車、4…錘、4a…リンク部、4b…錘部、5…接続部、6…加力部、7…検出部、8…軸移動部、9…第1錘リンク、10…第2錘リンク、11…直線移動部、12…案内部、13…弾性部、14…力抑制手段、15…第1保持部、16…第2保持部、17…変形抑制部、18…第1規制部、19…第2規制部、20…第1磁石、21…第2磁石、22…接続機構、22a…接続移動部、22b…第1リンク、22c…回転リンク、22d…第2リンク、23…回転部、24a…第1リンク、24b…第2リンク、24c…第3リンク、31…エレベータ、32…かご、32a…停止部、32b…伝達部、33…かごロープ、34…釣合錘、35…巻上機、35a…綱車、35b…駆動源、35c…制動部、36…かごレール、37…錘レール、38…処理部、39…ガバナロープ、40…張り車、A1…回転軸、A2…公転軸、A3…第1接続軸、A4…第2接続軸、A5…第3接続軸、A6…第4接続軸、A7…第5接続軸、A8…第1軸、A9…第2軸、A10…第3軸、A11…第4軸、A12…第5軸、D4…移動方向、D5…変形方向、D6…リンク方向、F1…遠心力、F2…動作力、F3…弾性復元力、F4…抗力、X1…昇降路、X2…機械室、θ1…第1角度、θ2…第2角度
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごが走行することに伴って回転するガバナ車と、
前記ガバナ車が回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナ車と前記錘とを接続する接続部と、
前記公転軸に近づく方向へ前記錘に力を加えるために、前記接続部に力を加える加力部と、を備え、
前記接続部は、前記錘が前記公転軸から離れることに伴って直線方向である移動方向へ移動する直線移動部を備え、
前記加力部は、
前記直線移動部に弾性復元力を加え、前記錘が前記公転軸から離れるにつれて弾性変形量が大きくなることによって弾性復元力が大きくなる弾性部と、
前記弾性部の弾性変形量が大きくなることによって弾性復元力が大きくなるにつれて、前記弾性部の弾性復元力の大きさに対する、前記直線移動部に前記移動方向へ加える力の大きさの比率を小さくする力抑制手段と、を備える、エレベータ用調速機。
【請求項2】
かごが走行することに伴って回転するガバナ車と、
前記ガバナ車が回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナ車と前記錘とを接続する接続部と、
前記公転軸に近づく方向へ前記錘に力を加えるために、前記接続部に力を加える加力部と、を備え、
前記接続部は、前記錘が前記公転軸から離れることに伴って移動方向へ移動する直線移動部を備え、
前記加力部は、
前記直線移動部に弾性復元力を加え、前記錘が前記公転軸から離れるにつれて弾性変形量が大きくなる弾性部と、
前記弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、前記弾性部の弾性復元力の大きさに対する、前記直線移動部に前記移動方向へ加える力の大きさの比率を小さくする力抑制手段と、を備える、エレベータ用調速機であって、
前記弾性部は、前記直線移動部に変形方向への弾性復元力を加えるために、前記変形方向へ弾性変形可能に構成され、
前記力抑制手段は、接続軸を軸にして、前記弾性部を前記直線移動部に対して回転可能に接続し、
前記接続軸方向視における前記移動方向と前記変形方向との交差角度は、前記弾性部の弾性変形量が大きくなるにつれて、大きくなる、エレベータ用調速機。
【請求項3】
前記接続軸方向視における前記移動方向と前記変形方向との交差角度が90°より小さくなるように、前記直線移動部に対する前記弾性部の回転を規制する規制部をさらに備える、請求項2に記載のエレベータ用調速機。
【請求項4】
前記錘が設定位置まで移動したことを検出する検出部をさらに備え、
前記加力部が前記直線移動部に前記移動方向へ加える力は、前記錘が前記設定位置まで前記公転軸から離れるにつれて、大きくなる、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータ用調速機。
【請求項5】
前記接続部は、前記公転軸を軸にして回転可能で且つ前記公転軸方向へ移動可能な軸移動部と、第1端部が前記錘に回転可能に接続され且つ第2端部が前記軸移動部に回転可能に接続される錘リンクと、を備える、請求項1~4の何れか1項に記載のエレベータ調速機。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のエレベータ用調速機を備える、エレベータ。