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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165472
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20221025BHJP
【FI】
G02B7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070806
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】陸川 和男
(72)【発明者】
【氏名】黒木 太
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AC01
(57)【要約】
【課題】効き量の大きいレンズがレンズ群の中に含まれていても、効き量の大きいレンズが含まれるレンズ群の光学性能を確保することが可能なレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】このレンズ鏡筒は、第1レンズ枠5に対して第2レンズ枠6を光軸方向に移動させて第1レンズ枠5に対する第2レンズ枠6の光軸方向の位置を調整するための第1調整機構14と、第1レンズ枠5に対して第2レンズ枠6を光軸方向に直交する径方向に移動させて第1レンズ枠5に対する第2レンズ枠6の径方向の位置を調整するための第2調整機構15とを備えている。このレンズ鏡筒では、第1レンズ枠5に回動可能に保持される回動枠18によって、第1レンズ枠5に対する第2レンズ枠6の光軸方向の位置が調整され、第1レンズ枠5のネジ穴26dに係合する調整用ネジ22によって、第1レンズ枠5に対する第2レンズ枠6の径方向の位置が調整されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側でレンズを保持する第1レンズ枠と、内周側でレンズを保持する第2レンズ枠と、前記第1レンズ枠に対して前記第2レンズ枠を前記レンズの光軸方向に移動させて前記第1レンズ枠に対する前記第2レンズ枠の前記光軸方向の位置を調整するための第1調整機構と、前記第1レンズ枠に対して前記第2レンズ枠を前記光軸方向に直交する径方向に移動させて前記第1レンズ枠に対する前記第2レンズ枠の前記径方向の位置を調整するための第2調整機構とを備え、
前記第1調整機構は、前記第1レンズ枠の外周側に配置され前記光軸方向を回動の軸方向として前記第1レンズ枠に回動可能に保持されるとともに前記光軸方向を回動の軸方向として回動すると前記第1レンズ枠に対して前記光軸方向に移動する回動枠と、前記第1レンズ枠に対して前記光軸方向の一方側に前記第2レンズ枠を付勢する第1付勢部材とを備え、
前記第1付勢部材による前記第2レンズ枠の付勢方向である前記光軸方向の一方側を第1方向側とし、前記第1方向側の反対側を第2方向側とすると、
前記回動枠は、前記第2レンズ枠の前記第1方向側に配置され、
前記第1付勢部材は、前記回動枠に向かって前記第2レンズ枠を付勢し、
前記第2レンズ枠は、前記回動枠が前記第1レンズ枠に対して回動して前記光軸方向に移動すると、前記第1レンズ枠に対して前記光軸方向に移動し、
前記第2調整機構は、前記第1レンズ枠の周方向に配列され前記径方向の外側から前記第2レンズ枠に接触する複数の調整用ネジを備え、
前記第1レンズ枠には、前記調整用ネジが係合する複数のネジ穴が形成され、
前記第1レンズ枠に対する前記第2レンズ枠の前記光軸方向の位置は、前記回動枠によって調整され、
前記第1レンズ枠に対する前記第2レンズ枠の前記径方向の位置は、前記調整用ネジによって調整されることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第1調整機構は、前記光軸方向において前記回動枠と前記第2レンズ枠との間に配置されるとともに前記周方向に配列される複数のボールを備えることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1レンズ枠は、内周側で前記レンズを保持する主レンズ枠と、前記主レンズ枠に固定されるとともに前記回動枠よりも前記第2方向側に配置される調整用枠とを備え、
前記主レンズ枠は、前記第2レンズ枠の内周側に配置される筒状の主レンズ枠筒部を備え、
前記調整用枠は、前記第2レンズ枠の外周側に配置されるとともに前記ネジ穴が形成される筒状の第1調整用枠筒部と、前記第2レンズ枠の内周側に配置されるとともに前記主レンズ枠筒部に固定される筒状の第2調整用枠筒部と、前記第1調整用枠筒部の前記第1方向側端と前記第2調整用枠筒部の前記第1方向側端とを繋ぐとともに前記光軸方向において前記回動枠と前記第2レンズ枠との間に配置される円環状かつ平板状の調整用枠円環部とを備えることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記主レンズ枠は、前記主レンズ枠筒部の前記第1方向側端に繋がるとともに前記回動枠の前記第1方向側に配置される円環状かつ平板状の主レンズ枠円環部を備え、
前記第1調整機構は、前記光軸方向において前記回動枠と前記調整用枠との間に配置され前記主レンズ枠円環部に向かって前記回動枠を付勢する第2付勢部材を備えることを特徴とする請求項3記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第1レンズ枠に前記回動枠を固定するための固定用ネジを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1レンズ枠と前記回動枠とはヘリコイド係合していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第2レンズ枠の外周面には、前記調整用ネジの先端部が配置されるV溝が形成され、
前記調整用ネジの先端部は、前記V溝の側面に接触していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1レンズ枠および前記第2レンズ枠の外周側に配置される直進筒およびカム筒を備え、
前記直進筒には、前記光軸方向を長手方向とする直線状の直進溝が形成され、
前記カム筒には、カム溝が形成され、
前記第1レンズ枠には、前記直進溝および前記カム溝に係合するカムフォロアが取り付けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記回動枠の外周面には、複数の歯によって構成される歯車部が形成され、
前記歯車部は、前記径方向において前記直進筒および前記カム筒の少なくともいずれか一方と重なり、
前記調整用ネジは、前記径方向において前記直進筒および前記カム筒の少なくともいずれか一方と重なり、
前記径方向において前記歯車部と重なる前記直進筒および前記カム筒の少なくともいずれか一方には、前記歯車部を回すための治具の一部分を通過させる第1貫通穴が前記径方向で貫通するように形成され、
前記径方向において前記調整用ネジと重なる前記直進筒および前記カム筒の少なくともいずれか一方には、前記調整用ネジを回すための工具の一部分を通過させる第2貫通穴が前記径方向で貫通するように形成されていることを特徴とする請求項8記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記回動枠の外周側に配置される筒状の第1筒部材を備え、
前記回動枠の外周面には、複数の歯によって構成される歯車部が形成され、
前記第1筒部材には、前記歯車部を回すための治具の一部分を通過させる第1貫通穴が形成され、
前記第1貫通穴は、前記径方向で前記第1筒部材を貫通していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記径方向における前記調整用ネジの外側に配置される筒状の第2筒部材を備え、
前記第2筒部材には、前記調整用ネジを回すための工具の一部分を通過させる第2貫通穴が形成され、
前記第2貫通穴は、前記径方向で前記第2筒部材を貫通していることを特徴とする請求項1から7のいずれかまたは10に記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ本体に取り付けられて使用されるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ本体に取り付けられて使用されるレンズ鏡筒が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ鏡筒の内部には、フォーカスレンズ群を含むフォーカス機構と、ズームレンズ群を含むズーム機構とが配置されている。また、このレンズ鏡筒の内部には、マスターレンズ群が配置されている。マスターレンズ群は、撮影倍率を切り替えるためのエクステンダ群を備えている。エクステンダ群は、前部レンズ群と後部レンズ群とを備えている。前部レンズ群は、前部レンズ枠に支持されている。後部レンズ群は、後部レンズ枠に支持されている。
【0003】
特許文献1に記載のレンズ鏡筒では、前部レンズ枠の内周側に、ネジ部が形成されている。後部レンズ枠の外周には、前部レンズ枠のネジ部と螺合するネジ部と、調整用歯車とが形成されている。このレンズ鏡筒では、調整用歯車を回して前部レンズ枠のネジ部と後部レンズ枠のネジ部との螺合量を変えることで、前部レンズ群に対する後部レンズ群の光軸方向の位置を調整することが可能になっている。また、前部レンズ群に対する後部レンズ群の光軸方向の位置を調整することでエクステンダ群の光学性能(光学特性)を調整することが可能になっている。
【0004】
また、特許文献1に記載のレンズ鏡筒では、エクステンダ群の外周側に配置される連結環に開口部が形成されており、連結環の開口部から治具を挿入して後部レンズ枠の調整用歯車に係合させることが可能になっている。すなわち、このレンズ鏡筒では、連結環の開口部から挿入される治具によって調整用歯車を回して前部レンズ枠のネジ部と後部レンズ枠のネジ部との螺合量を変えることになっている。そのため、このレンズ鏡筒では、レンズ鏡筒の内部にエクステンダ群が配置された状態で、エクステンダ群の光学性能を調整することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5479650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、レンズ鏡筒の内部に配置されるズーム機構を小型化することを検討しており、ズーム機構を小型化するために、ズームレンズ群の中に効き量の大きいレンズを含めることを検討している。また、本願発明者は、たとえば、この効き量の大きいレンズの光軸方向の位置を調整することで、ズームレンズ群の光学性能を確保することを検討している。しかしながら、効き量の大きいレンズの光軸方向の位置を調整しても、ズームレンズ群の光学的な性能を確保することが困難になる場合があることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、効き量の大きいレンズがレンズ群の中に含まれていても、効き量の大きいレンズが含まれるレンズ群の光学性能を確保することが可能なレンズ鏡筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ鏡筒は、内周側でレンズを保持する第1レンズ枠と、内周側でレンズを保持する第2レンズ枠と、第1レンズ枠に対して第2レンズ枠をレンズの光軸方向に移動させて第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置を調整するための第1調整機構と、第1レンズ枠に対して第2レンズ枠を光軸方向に直交する径方向に移動させて第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の径方向の位置を調整するための第2調整機構とを備え、第1調整機構は、第1レンズ枠の外周側に配置され光軸方向を回動の軸方向として第1レンズ枠に回動可能に保持されるとともに光軸方向を回動の軸方向として回動すると第1レンズ枠に対して光軸方向に移動する回動枠と、第1レンズ枠に対して光軸方向の一方側に第2レンズ枠を付勢する第1付勢部材とを備え、第1付勢部材による第2レンズ枠の付勢方向である光軸方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、回動枠は、第2レンズ枠の第1方向側に配置され、第1付勢部材は、回動枠に向かって第2レンズ枠を付勢し、第2レンズ枠は、回動枠が第1レンズ枠に対して回動して光軸方向に移動すると、第1レンズ枠に対して光軸方向に移動し、第2調整機構は、第1レンズ枠の周方向に配列され径方向の外側から第2レンズ枠に接触する複数の調整用ネジを備え、第1レンズ枠には、調整用ネジが係合する複数のネジ穴が形成され、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置は、回動枠によって調整され、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の径方向の位置は、調整用ネジによって調整されることを特徴とする。
【0009】
本発明のレンズ鏡筒は、第1レンズ枠に対して第2レンズ枠をレンズの光軸方向に移動させて第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置を調整するための第1調整機構と、第1レンズ枠に対して第2レンズ枠を光軸方向に直交する径方向に移動させて第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の径方向の位置を調整するための第2調整機構とを備えており、第2レンズ枠に保持されるレンズの光軸方向の位置と径方向の位置とが調整可能になっている。そのため、本願発明者の検討によると、本発明では、第1レンズ枠および第2レンズ枠に保持されるレンズ群の中に効き量の大きいレンズが含まれていても、効き量の大きいレンズを第2レンズ枠に保持させることで、効き量の大きいレンズが含まれるレンズ群の光学性能を確保することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、第1レンズ枠の外周側で第1レンズ枠に回動可能に保持される回動枠によって、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置が調整され、第1レンズ枠のネジ穴に係合する調整用ネジによって、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の径方向の位置が調整されており、第2レンズ枠の光軸方向の位置と径方向の位置とが独立して調整可能となっている。そのため、本発明では、第2レンズ枠の位置の調整を容易に行うことが可能になる。
【0011】
本発明において、第1調整機構は、光軸方向において回動枠と第2レンズ枠との間に配置されるとともに周方向に配列される複数のボールを備えることが好ましい。このように構成すると、回動枠が回動するときの、第2レンズ枠に対する回動枠の摺動抵抗を軽減することが可能になる。したがって、第1レンズ枠に対して回動枠を円滑に回動させることが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、第1レンズ枠は、内周側でレンズを保持する主レンズ枠と、主レンズ枠に固定されるとともに回動枠よりも第2方向側に配置される調整用枠とを備え、主レンズ枠は、第2レンズ枠の内周側に配置される筒状の主レンズ枠筒部を備え、調整用枠は、第2レンズ枠の外周側に配置されるとともにネジ穴が形成される筒状の第1調整用枠筒部と、第2レンズ枠の内周側に配置されるとともに主レンズ枠筒部に固定される筒状の第2調整用枠筒部と、第1調整用枠筒部の第1方向側端と第2調整用枠筒部の第1方向側端とを繋ぐとともに光軸方向において回動枠と第2レンズ枠との間に配置される円環状かつ平板状の調整用枠円環部とを備えている。
【0013】
本発明において、主レンズ枠は、主レンズ枠筒部の第1方向側端に繋がるとともに回動枠の第1方向側に配置される円環状かつ平板状の主レンズ枠円環部を備え、第1調整機構は、光軸方向において回動枠と調整用枠との間に配置され主レンズ枠円環部に向かって回動枠を付勢する第2付勢部材を備えることが好ましい。このように構成すると、第1レンズ枠に対する回動枠の、光軸方向のがたつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、レンズ鏡筒は、第1レンズ枠に回動枠を固定するための固定用ネジを備えることが好ましい。このように構成すると、第2レンズ枠の光軸方向の位置を調整した後、回動枠が回動しないように、回動枠を確実に固定することが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、第1レンズ枠と回動枠とはヘリコイド係合している。この場合には、比較的簡易な構成で、第1レンズ枠に対して回動枠を回動させたときに、第1レンズ枠に対して回動枠を光軸方向へ移動させることが可能になる。
【0016】
本発明において、たとえば、第2レンズ枠の外周面には、調整用ネジの先端部が配置されるV溝が形成され、調整用ネジの先端部は、V溝の側面に接触している。この場合には、第2レンズ枠の光軸方向への移動を調整用ネジによって規制することが可能になる。
【0017】
本発明において、レンズ鏡筒は、たとえば、第1レンズ枠および第2レンズ枠の外周側に配置される直進筒およびカム筒を備え、直進筒には、光軸方向を長手方向とする直線状の直進溝が形成され、カム筒には、カム溝が形成され、第1レンズ枠には、直進溝およびカム溝に係合するカムフォロアが取り付けられている。
【0018】
本発明において、回動枠の外周面には、複数の歯によって構成される歯車部が形成され、歯車部は、径方向において直進筒およびカム筒の少なくともいずれか一方と重なり、調整用ネジは、径方向において直進筒およびカム筒の少なくともいずれか一方と重なり、径方向において歯車部と重なる直進筒およびカム筒の少なくともいずれか一方には、歯車部を回すための治具の一部分を通過させる第1貫通穴が径方向で貫通するように形成され、径方向において調整用ネジと重なる直進筒およびカム筒の少なくともいずれか一方には、調整用ネジを回すための工具の一部分を通過させる第2貫通穴が径方向で貫通するように形成されていることが好ましい。
【0019】
このように構成すると、第1レンズ枠および第2レンズ枠の外周側に直進筒やカム筒が配置されていても、レンズ鏡筒が組み立てられた状態で、治具によって歯車部を回して回動枠を回動させることが可能になるとともに、調整用ネジを工具によって回すことが可能になる。したがって、第1レンズ枠および第2レンズ枠の外周側に直進筒やカム筒が配置されていても、レンズ鏡筒をばらすことなく、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置と径方向の位置とを調整することが可能になり、その結果、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置と径方向の位置とを容易に調整することが可能になる。
【0020】
本発明において、レンズ鏡筒は、回動枠の外周側に配置される筒状の第1筒部材を備え、回動枠の外周面には、複数の歯によって構成される歯車部が形成され、第1筒部材には、歯車部を回すための治具の一部分を通過させる第1貫通穴が形成され、第1貫通穴は、径方向で第1筒部材を貫通していることが好ましい。このように構成すると、回動枠の外周側に第1筒部材が配置されていても、レンズ鏡筒が組み立てられた状態で、治具によって歯車部を回して回動枠を回動させることが可能になる。したがって、回動枠の外周側に第1筒部材が配置されていても、レンズ鏡筒をばらすことなく、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置を調整することが可能になり、その結果、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の光軸方向の位置を容易に調整することが可能になる。
【0021】
本発明において、レンズ鏡筒は、径方向における調整用ネジの外側に配置される筒状の第2筒部材を備え、第2筒部材には、調整用ネジを回すための工具の一部分を通過させる第2貫通穴が形成され、第2貫通穴は、径方向で第2筒部材を貫通していることが好ましい。このように構成すると、径方向における調整用ネジの外側に第2筒部材が配置されていても、レンズ鏡筒が組み立てられた状態で、調整用ネジを工具によって回すことが可能になる。したがって、径方向における調整用ネジの外側に第2筒部材が配置されていても、レンズ鏡筒をばらすことなく、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の径方向の位置を調整することが可能になり、その結果、第1レンズ枠に対する第2レンズ枠の径方向の位置を容易に調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明のレンズ鏡筒では、効き量の大きいレンズがレンズ群の中に含まれていても、効き量の大きいレンズが含まれるレンズ群の光学性能を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ鏡筒の構成を説明するための断面図である。
図2図1に示すレンズ鏡筒の一部分の斜視断面図である。
図3図1のE部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
(レンズ鏡筒の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ鏡筒1の構成を説明するための断面図である。
【0026】
本形態のレンズ鏡筒1は、カメラ本体(図示省略)に取り付けられて使用される。カメラ本体は、C-MOSイメージセンサ等の撮像素子を備えている。レンズ鏡筒1は、全体として略円柱状に形成されている。レンズ鏡筒1は、レンズ鏡筒1の内部に配置されるレンズ2~4と、内周側でレンズ2を保持するレンズ枠5と、内周側でレンズ3を保持するレンズ枠6と、内周側でレンズ4を保持するレンズ枠7と、カメラ本体に固定される筒状の固定筒8とを備えている。本形態のレンズ枠5は、第1レンズ枠であり、レンズ枠6は、第2レンズ枠である。なお、図1では、固定筒8の一部分のみを図示している。
【0027】
レンズ2~4は、レンズ2~4の光軸Lの方向(光軸方向)において、この順番で配置されている。具体的には、光軸方向のうちの、カメラ本体に取り付けられる側(図1等のZ2方向側、結像側)を後ろ側とし、後ろ側の反対側である図1等のZ1方向側(被写体側)を前側とすると、レンズ2~4は、前側から後ろ側に向かってこの順番で配置されている。以下の説明では、光軸方向(前後方向)に直交する方向(光軸直交方向)を「径方向」とする。なお、本明細書における「レンズ」には、1枚のレンズのみならず、複数枚のレンズからなるレンズ群も含まれるものとする。本形態のレンズ2は、複数枚のレンズからなるレンズ群である。一方、レンズ3、4は、1枚のレンズである。
【0028】
レンズ4は、固定筒8に対して前後方向に移動しない固定レンズである。レンズ枠7は、固定筒8に固定されている。一方、レンズ2、3は、固定筒8に対して前後方向に移動可能なズームレンズであり、レンズ2とレンズ3とによってズームレンズ群の一部が構成されている。レンズ枠5、6は、固定筒8に対して前後方向(光軸方向)へ移動可能となっている。図1の光軸Lの上側では、広角端(ワイド端)に配置されたレンズ2、3およびレンズ枠5、6が図示されており、図1の光軸Lの下側では、望遠端(テレ端)に配置されたレンズ2、3およびレンズ枠5、6が図示されている。なお、本形態のレンズ3は、効き量の大きいレンズである。
【0029】
レンズ鏡筒1は、固定筒8に対してレンズ枠5、6を前後方向に移動させるための直進筒11およびカム筒12を備えている。本形態では、レンズ2、3、レンズ枠5、6、直進筒11およびカム筒12等によってズーム機構が構成されている。また、レンズ鏡筒1は、レンズ鏡筒1の製造時等に、レンズ枠5に対してレンズ枠6を前後方向(光軸方向)に移動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置を調整する(具体的には、微調整する)ための第1調整機構14と、レンズ枠5に対してレンズ枠6を径方向に移動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置を調整する(具体的には、微調整する)ための第2調整機構15とを備えている。すなわち、本形態のレンズ3は、レンズ2に対して、前後方向の位置および径方向の位置が微調整される調整レンズである。
【0030】
レンズ枠5は、全体として段付きの略円筒状に形成されている。レンズ枠6は、段付きの略円筒状に形成されている。レンズ枠6は、固定筒8に対してレンズ枠5と一緒に前後方向に移動可能となっている。レンズ枠5、6の具体的な構成については後述する。レンズ枠7は、略円筒状に形成されている。レンズ枠5~7は、レンズ枠5~7の軸心と光軸Lとが一致するように配置されている。以下の説明では、レンズ枠5~7の周方向(光軸Lを中心とする円周方向)を「周方向」とする。
【0031】
レンズ枠7は、固定筒8の内周側に配置されている。レンズ4は、レンズ枠7の後端部に取り付けられている。レンズ枠7の前端部には、径方向でレンズ枠7を貫通する貫通穴7aが形成されている。貫通穴7aは、丸穴である。貫通穴7aは、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。固定筒8には、径方向で固定筒8を貫通する貫通穴8aが形成されている。貫通穴8aは、たとえば、貫通穴7aと同形状の丸穴である。貫通穴8aは、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。また、貫通穴8aは、前後方向および周方向において貫通穴7aと同じ位置に形成されており、径方向で貫通穴7aと重なっている。
【0032】
直進筒11およびカム筒12は、円筒状に形成されている。直進筒11およびカム筒12は、レンズ枠5、6、第1調整機構14および第2調整機構15の外周側に配置されている。直進筒11は、カム筒12の内周側に配置されている。直進筒11の後端部は、固定筒8に固定されている。直進筒11には、前後方向を長手方向とする直線状の直進溝11aが形成されている。直進溝11aは、径方向で直進筒11を貫通している。
【0033】
カム筒12は、直進筒11に対して前後方向を回動の軸方向として回動可能となっている。カム筒12の内周面には、カム溝12aが形成されている。カム溝12aは、たとえば、螺旋状に形成されている。カム溝12aは、カム筒12の内周面に形成される有底の溝部である。直進溝11aおよびカム溝12aには、レンズ枠5に取り付けられる後述のカムフォロア30が係合している。固定筒8に対してカム筒12を回動させると、レンズ枠5、6が前後方向に移動する。
【0034】
直進筒11には、径方向で直進筒11を貫通する貫通穴11b~11dが形成されている。貫通穴11b、11dは、丸穴である。貫通穴11cは、周方向を長辺方向とする長方形状の四角穴である。貫通穴11bは、貫通穴11cよりも後ろ側に形成され、貫通穴11cは、貫通穴11dよりも後ろ側に形成されている。貫通穴11bは、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。貫通穴11cは、1箇所に形成されている。貫通穴11dは、光軸Lを中心とする120°ピッチで3箇所に形成されている。貫通穴11b~11dは、直進溝11aと重ならない位置に形成されている。
【0035】
カム筒12には、径方向でカム筒12を貫通する貫通穴12b~12dが形成されている。貫通穴12bは、たとえば、貫通穴11bと同形状の丸穴であり、貫通穴12dは、貫通穴11dと同形状の丸穴である。貫通穴12cは、たとえば、貫通穴11cと略同形状の四角穴である。貫通穴12bは、貫通穴12cよりも後ろ側に形成され、貫通穴12cは、貫通穴12dよりも後ろ側に形成されている。貫通穴12bは、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。貫通穴12cは、1箇所に形成されている。貫通穴12dは、光軸Lを中心とする120°ピッチで3箇所に形成されている。貫通穴12b~12dは、カム溝12aと重ならない位置に形成されている。
【0036】
貫通穴11bと貫通穴12bとは、前後方向において同じ位置に形成されている。また、貫通穴11bと貫通穴12bとは、レンズ2、3が望遠端に配置されているときに、周方向において同じ位置に配置されており、径方向で重なっている。貫通穴11cと貫通穴12cとは、前後方向において同じ位置に形成されている。また、貫通穴11cと貫通穴12cとは、レンズ2、3が望遠端に配置されているときに、周方向において同じ位置に配置されており、径方向で重なっている。貫通穴11dと貫通穴12dとは、前後方向において同じ位置に形成されている。また、貫通穴11dと貫通穴12dとは、レンズ2、3が望遠端に配置されているときに、周方向において同じ位置に配置されており、径方向で重なっている。
【0037】
(レンズ枠、第1調整機構および第2調整機構の構成)
図2は、図1に示すレンズ鏡筒1の一部分の斜視断面図である。図3は、図1のE部の拡大図である。
【0038】
第1調整機構14は、レンズ枠5、6と一緒に、広角端と望遠端との間で光軸方向(前後方向)に移動する。第1調整機構14は、光軸方向(前後方向)を回動の軸方向としてレンズ枠5に回動可能に保持されるとともに光軸方向(前後方向)を回動の軸方向として回動するとレンズ枠5に対して光軸方向(前後方向)に移動する回動枠18と、レンズ枠5に対して光軸方向(前後方向)の一方側にレンズ枠6を付勢する第1付勢部材としての圧縮コイルバネ19とを備えている。
【0039】
回動枠18は、レンズ枠5の外周側に配置されている。回動枠18は、レンズ枠6の前側に配置されており、圧縮コイルバネ19は、回動枠18に向かってレンズ枠6を付勢している。すなわち、圧縮コイルバネ19は、レンズ枠5に対してレンズ枠6を前側に付勢している。本形態の前側(Z1方向側)は、圧縮コイルバネ19によるレンズ枠6の付勢方向である第1方向側となっており、後ろ側(Z2方向側)は、第1方向側の反対側である第2方向側となっている。
【0040】
また、第1調整機構14は、光軸方向(前後方向)において回動枠18とレンズ枠6との間に配置されるとともに周方向に配列される複数のボール20と、レンズ枠5に対して回動枠18を前側に付勢する第2付勢部材としての圧縮コイルバネ21とを備えている。本形態では、光軸Lを中心とする45°ピッチで8個のボール20が配置されている。ボール20は、レンズ枠5に形成される後述のボール配置穴26eの中に配置されている。
【0041】
第2調整機構15は、レンズ枠5、6と一緒に、広角端と望遠端との間で光軸方向(前後方向)に移動する。第2調整機構15は、周方向に配列されるとともに径方向の外側からレンズ枠6に接触する複数の調整用ネジ22を備えている。調整用ネジ22は、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に配置されている。本形態の調整用ネジ22は、六角穴付止めネジである。調整用ネジ22の先端部は、円錐状に形成されている。すなわち、調整用ネジ22の先端部は、尖っている。調整用ネジ22は、レンズ枠5に形成される後述のネジ穴26dに係合している。
【0042】
回動枠18は、前後方向の長さが短い鍔付きの略円筒状に形成されている。回動枠18の内周面には、雌ヘリコイドネジが形成されている。回動枠18は、回動枠18の前端部から径方向の外側に鍔状に広がる円環状かつ平板状の鍔部18aと、鍔部18aの前面から前側に突出する円筒状の被固定部18bとを備えている。回動枠18の外周面には、複数の歯によって構成される歯車部18cが形成されている。具体的には、鍔部18aの外周面に歯車部18cが形成されており、鍔部18aは、歯車となっている。被固定部18bの軸心は、光軸Lと一致している。被固定部18bは、径方向における鍔部18aの中心よりも径方向の外側で鍔部18aの前面から前側に向かって突出している。なお、図2では、歯車部18cを構成する複数の歯の図示を省略している。
【0043】
被固定部18bは、固定用ネジ23によってレンズ枠5に固定されている。すなわち、レンズ鏡筒1は、レンズ枠5に回動枠18を固定するための固定用ネジ23を備えている。固定用ネジ23は、光軸Lを中心とする120°ピッチで3箇所に配置されている。本形態の固定用ネジ23は、六角穴付止めネジである。固定用ネジ23の先端部の外周面は、円錐台面状に形成されており、固定用ネジ23の先端は、窪んでいる。固定用ネジ23は、レンズ枠5に形成される後述のネジ穴27aに係合している。
【0044】
回動枠18は、直進筒11およびカム筒12よりも径方向の内側に配置されている。本形態では、望遠端にレンズ2、3が配置されているときに、回動枠18の全体が直進筒11およびカム筒12の内周側に配置されており、歯車部18cは、径方向において直進筒11およびカム筒12と重なっている。一方、広角端にレンズ2、3が配置されているときには、回動枠18の被固定部18bのみが直進筒11の内周側に配置されている。また、広角端にレンズ2、3が配置されているときには、歯車部18cは、径方向において固定筒8の前端部の内周側に配置されており、径方向において固定筒8の前端部と重なっている。
【0045】
レンズ枠5は、内周側でレンズ2を保持する主レンズ枠25と、主レンズ枠25に固定されるとともに回動枠18よりも後ろ側に配置される調整用枠26と、主レンズ枠25に固定される固定枠27と、調整用枠26に固定される固定枠28とを備えている。本形態のレンズ枠5は、主レンズ枠25と調整用枠26と固定枠27、28とから構成されている。主レンズ枠25、調整用枠26および固定枠27は、段付きの略円筒状に形成されている。固定枠28は、前後方向の長さが短い円筒状に形成されている。主レンズ枠25の軸心、調整用枠26の軸心、および、固定枠27、28の軸心は、光軸Lと略一致している。
【0046】
主レンズ枠25は、レンズ枠6および回動枠18の内周側に配置される筒状の主レンズ枠筒部としての筒部25aと、筒部25aの前側端に繋がるとともに径方向の外側に鍔状に広がる円環状かつ平板状の主レンズ枠円環部としての円環部25bと、円環部25bの外周端側から前側に突出する円筒状の筒部25cとを備えている。また、主レンズ枠25は、カムフォロア30が取り付けられる取付部25dを備えている。
【0047】
円環部25bは、回動枠18の前側に配置されている。具体的には、円環部25bは、回動枠18の鍔部18aの前側に配置されている。筒部25aは、円筒状に形成されている。筒部25aの前側部分の外周面には、径方向の内側に向かって窪む凹部25eが形成されている。凹部25eは、周方向の全域に亘って形成されている。筒部25aの外周面の、凹部25eよりも前側の部分には、回動枠18の内周面に形成される雌ヘリコイドネジが係合する雄ヘリコイドネジが形成されている。すなわち、レンズ枠5と回動枠18とはヘリコイド係合している。そのため、上述のように、回動枠18は、レンズ枠5に対して前後方向を回動の軸方向として回動すると、レンズ枠5に対して前後方向に移動する。
【0048】
筒部25cの外周側には、固定枠27が配置されている。筒部25cには、固定枠27が固定されている。具体的には、固定枠27の前側部分が固定用ネジ31によって筒部25cに配置されている。固定枠27の後ろ部分には、固定用ネジ23が係合するネジ穴27aが形成されている。ネジ穴27aは、光軸Lを中心とする120°ピッチで3箇所に配置されている。ネジ穴27aは、径方向で固定枠27を貫通している。ネジ穴27aに係合する固定用ネジ23の径方向外側端は、固定枠27の外周面よりも径方向の内側に配置されている。回動枠18の被固定部18bは、径方向において筒部25cの外周面と固定枠27の後ろ部分との間に挟まれた状態で、固定用ネジ23によって主レンズ枠25に固定されている。固定用ネジ23の先端は、被固定部18bの外周面に所定の接触圧で接触している。
【0049】
固定枠27は、直進筒11およびカム筒12よりも径方向の内側に配置されている。すなわち、ネジ穴27aに係合する固定用ネジ23は、直進筒11およびカム筒12よりも径方向の内側に配置されている。本形態では、望遠端にレンズ2、3が配置されているときに、固定用ネジ23は、直進筒11およびカム筒12の内周側に配置されており、径方向において直進筒11およびカム筒12と重なっている。一方、広角端にレンズ2、3が配置されているときには、固定用ネジ23は、直進筒11の内周側に配置されている。
【0050】
取付部25dは、筒部25cの前端部から前側かつ径方向の外側に向かって突出している。上述のように、取付部25dには、カムフォロア30が取り付けられている。カムフォロア30は、主レンズ枠25の前端部から径方向の外側に突出している。カムフォロア30は、固定用ネジによって取付部25dに取り付けられている。カムフォロア30は、直進筒11の直進溝11aおよびカム筒12のカム溝12aに係合している。
【0051】
調整用枠26は、レンズ枠6の外周側に配置される筒状の第1調整用枠筒部としての筒部26aと、レンズ枠6の内周側に配置される筒状の第2調整用枠筒部としての筒部26bと、筒部26aの前端と筒部26bの前端とを繋ぐとともに光軸方向(前後方向)において回動枠18とレンズ枠6との間に配置される円環状かつ平板状の調整用枠円環部としての円環部26c(図3参照)とを備えている。なお、本形態の調整用枠26は、径方向に2分割される略半円筒状の2個の枠部材によって構成されており、この2個の枠部材が径方向で組み合わされて互いに固定されることで調整用枠26が形成される。
【0052】
筒部26aは、略円筒状に形成されている。筒部26aには、調整用ネジ22が係合するネジ穴26dが形成されている。すなわち、レンズ枠5には、ネジ穴26dが形成されている。ネジ穴26dは、筒部26aの前端部に形成されている。ネジ穴26dは、径方向で筒部26aを貫通している。ネジ穴26dは、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。ネジ穴26dに係合する調整用ネジ22の径方向外側端は、調整用枠26の外周面(具体的には、筒部26aの外周面)よりも径方向の内側に配置されている。筒部26aの後端部の内周側には、固定枠28が配置されている。筒部26aには、固定用ネジ32によって固定枠28が固定されている。
【0053】
筒部26bは、円筒状に形成されている。筒部26bは、主レンズ枠25の筒部25aの外周側に配置されている。筒部26bの径方向内側部分は、凹部25eの中に配置されている。筒部26bは、固定用ネジ(図示省略)によって筒部25aに固定されている。上述のように、前後方向における回動枠18とレンズ枠6との間には、ボール20が配置されている。円環部26cには、ボール20が配置されるボール配置穴26eが形成されている。ボール配置穴26eは、前後方向で円環部26cを貫通している。また、ボール配置穴26eは、光軸Lを中心とする45°ピッチで8箇所に形成されている。円環部26cの前後方向の厚さは、ボール20の外径よりも薄くなっている。
【0054】
調整用枠26は、貫通穴7aが形成されるレンズ枠7の前端部よりも径方向の内側に配置されている。また、調整用枠26は、固定筒8、直進筒11およびカム筒12よりも径方向の内側に配置されている。すなわち、ネジ穴26dに係合する調整用ネジ22は、レンズ枠7の前端部、固定筒8、直進筒11およびカム筒12よりも径方向の内側に配置されている。本形態では、望遠端にレンズ2、3が配置されているときに、調整用ネジ22は、直進筒11およびカム筒12の内周側に配置されており、径方向において直進筒11およびカム筒12と重なっている。一方、広角端にレンズ2、3が配置されているときには、調整用ネジ22は、レンズ枠7の前端部および固定筒8の内周側に配置されており、径方向においてレンズ枠7の前端部および固定筒8と重なっている。
【0055】
レンズ枠6は、上述のように、段付きの略円筒状に形成されている。レンズ枠6の後端は、レンズ枠5の後端よりも後ろ側に配置されている。レンズ3は、レンズ枠6の後端部の内周側に取り付けられている。レンズ枠6は、レンズ枠6の前側部分を構成する大径部と、レンズ枠6の後ろ側部分を構成するとともに大径部よりも外径の小さい小径部とから構成されており、大径部と小径部との境界部分には、円環状の段差面6aが形成されている。段差面6aは、前後方向に直交する平面である。段差面6aは、固定枠28よりも前側に形成されている。
【0056】
レンズ枠6の外周面には、調整用ネジ22の先端部が配置されるV溝6bが形成されている。V溝6bは、レンズ枠6の前端部に形成されている。V溝6bは、周方向の全域に亘って形成されている。V溝6bの前側面は、径方向の外側に向かうにしたがって前側に向かって傾斜する傾斜面となっており、V溝6bの後側面は、径方向の外側に向かうにしたがって後ろ側に向かって傾斜する傾斜面となっている。上述のように、調整用ネジ22の先端部は円錐状に形成されている。調整用ネジ22の先端部は、V溝6bの一方の側面に接触している。
【0057】
圧縮コイルバネ21は、前後方向において回動枠18の鍔部18aと調整用枠26の円環部26cとの間に配置されている。上述のように、圧縮コイルバネ21は、レンズ枠5に対して回動枠18を前側に付勢している。すなわち、圧縮コイルバネ21は、回動枠18の前側に配置される円環部25bに向かって回動枠18を付勢している。圧縮コイルバネ19は、前後方向においてレンズ枠6の段差面6aと固定枠28との間に配置されている。上述のように、圧縮コイルバネ19は、レンズ枠5に対してレンズ枠6を前側に付勢している。
【0058】
前後方向におけるボール20と回動枠18との間には薄板33が配置され、前後方向におけるボール20とレンズ枠6との間には薄板34が配置されている。回動枠18と薄板33とは所定の接触圧で接触し、ボール20と薄板33とは所定の接触圧で接触している。また、レンズ枠6と薄板34とは所定の接触圧で接触し、ボール20と薄板34とは所定の接触圧で接触している。
【0059】
薄板33は、ボール20と回動枠18との直接的な接触を防止するための部材である。薄板34は、ボール20とレンズ枠6との直接的な接触を防止するための部材である。ボール20は、圧縮コイルバネ19によってレンズ枠6を介して回動枠18側へ付勢されている。そのため、ボール20と回動枠18とが接触していると、ボール20の材質が回動枠18の材質よりも固い場合、ボール20が回動枠18に食い込んで、回動枠18に凹みや傷が生じるおそれがある。また、ボール20とレンズ6とが接触していると、ボール20の材質がレンズ枠6の材質よりも固い場合、ボール20がレンズ6に食い込んで、レンズ枠6に凹みや傷が生じるおそれがある。
【0060】
本形態では、薄板33、34の材質は、レンズ枠6および回動枠18の材質よりも固くなっており、薄板33がボール20と回動枠18との間に挟み込まれ、薄板34がボール20とレンズ枠6との間に挟み込まれている。そのため、レンズ枠6および回動枠18の凹みや傷を抑制することが可能となっている。また、薄板33、34の、ボール20との接触面を平滑面としたり、薄板33、34の、ボール20との接触面に低摩擦塗装等を施したりすることで、ボール20の回転および摺動をなめらかにして調整を容易にすることも可能である。
【0061】
固定用ネジ23によって回動枠18が固定される前に、回動枠18がレンズ枠5に対して回動して光軸方向(前後方向)に移動すると、レンズ枠6は、ボール20および薄板33、34と一緒に前後方向に移動して、レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置が変わる。本形態では、レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置は、回動枠18によって調整される。すなわち、固定用ネジ23によって回動枠18が固定される前に、レンズ枠5に対して回動枠18を回動させることによって、レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置が微調整される。回動枠18を回動させるときには、所定の治具を用いて歯車部18cを回す。
【0062】
また、ネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量に応じて、レンズ枠6が径方向に移動して、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置が変わる。本形態では、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置は、調整用ネジ22によって調整される。すなわち、ネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量を調整することによって、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置が微調整される。
【0063】
レンズ2、3が広角端に配置されているときには、調整用ネジ22は、レンズ枠7の貫通穴7aおよび固定筒8の貫通穴8aと前後方向および周方向において同じ位置に配置されており、調整用ネジ22と貫通穴7a、8aとは径方向で重なっている。また、レンズ2、3が望遠端に配置されているときには、調整用ネジ22は、直進筒11の貫通穴11bおよびカム筒12の貫通穴12bと前後方向および周方向において同じ位置に配置されており、調整用ネジ22と貫通穴11b、12bとは径方向で重なっている。
【0064】
また、レンズ2、3が望遠端に配置されているときには、歯車部18cは、直進筒11の貫通穴11cおよびカム筒12の貫通穴12cと前後方向において同じ位置に配置されており、歯車部18cの一部分と貫通穴11c、12cとは径方向で重なっている。さらに、レンズ2、3が望遠端に配置されているときには、固定用ネジ23は、直進筒11の貫通穴11dおよびカム筒12の貫通穴12dと前後方向および周方向において同じ位置に配置されており、固定用ネジ23と貫通穴11d、12dとは径方向で重なっている。
【0065】
本形態では、レンズ2、3が広角端に配置されている状態、および、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態のいずれの状態においても、ネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量を調整すること(すなわち、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置を調整すること)が可能になっている。レンズ2、3が広角端に配置されている状態でネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量を調整するときには、調整用ネジ22を回すための工具の一部分が貫通穴7a、8aを通過する。具体的には、調整用ネジ22を回すためのドライバーの先端部が貫通穴7a、8aを通過する。
【0066】
また、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態でネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量を調整するときには、調整用ネジ22を回すための工具の一部分が貫通穴11b、12bを通過する。具体的には、調整用ネジ22を回すためのドライバーの先端部が貫通穴11b、12bを通過する。本形態の貫通穴7a、8a、11b、12bは、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させるための第2貫通穴となっている。また、本形態のレンズ枠7、固定筒8、直進筒11およびカム筒12は、径方向における調整用ネジ22の外側に配置される第2筒部材となっている。
【0067】
なお、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置調整が完了すると、接着剤によって調整用ネジ22が調整用枠26に固定される。このときには、貫通穴7a、8a、11b、12bを利用して、固定筒8やカム筒12の外周側から接着剤が塗布される。また、調整用枠26の筒部26aには、レンズ枠6を筒部26aに接着固定するための貫通穴(図示省略)が形成されている。この貫通穴は、径方向で筒部26aを貫通している。この貫通穴は、前後方向において、ネジ穴26dと同じ位置に形成されている。また、この貫通穴は、周方向において、ネジ穴26dとずれた位置に形成されている。また、この貫通穴は、たとえば、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。
【0068】
筒部26aの貫通穴には、固定筒8やカム筒12の外周側から接着剤が塗布される。レンズ枠7、固定筒8、直進筒11およびカム筒12には、筒部26aの貫通穴に接着剤を塗布するための作業用の貫通穴(図示省略)が形成されている。この作業用の貫通穴は、前後方向において、貫通穴7a、8a、11b、12bと同じ位置に形成されている。また、この作業用の貫通穴は、周方向において、貫通穴7a、8a、11b、12bとずれた位置に形成されている。また、この作業用の貫通穴は、たとえば、光軸Lを中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。
【0069】
また、本形態では、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態において、レンズ枠5に対して回動枠18を回動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置を調整することが可能になっている。レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置を調整するときには、歯車部18cを回すための治具の一部分が貫通穴11c、12cを通過する。具体的には、歯車部18cに係合する歯車を含んだ歯車列を有する治具の先端部が貫通穴11c、12cを通過する。本形態の貫通穴11c、12cは、歯車部18cを回すための治具の一部分を通過させるための第1貫通穴となっている。また、本形態の直進筒11およびカム筒12は、回動枠18の外周側に配置される第1筒部材となっている。
【0070】
レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置の調整が完了すると、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態で、固定用ネジ23によって回動枠18をレンズ枠5に固定する。このときには、固定用ネジ23を回すためのドライバーの先端部が貫通穴11d、12dを通過する。本形態では、ネジ穴27aに締め込まれた固定用ネジ23の緩みを防止するため、接着剤によって固定用ネジ23が固定枠27に固定される。このときには、貫通穴11d、12dを利用して、カム筒12の外周側から接着剤が塗布される。
【0071】
また、固定枠27の後ろ側部分には、被固定部18bを固定枠27に接着固定するための貫通穴が形成されている。この貫通穴は、径方向で固定枠27を貫通している。この貫通穴は、前後方向において、ネジ穴27aと同じ位置に形成されている。また、この貫通穴は、周方向において、ネジ穴27aとずれた位置に形成されている。また、この貫通穴は、たとえば、光軸Lを中心とする120°ピッチで3箇所に形成されている。
【0072】
固定枠27の貫通穴には、カム筒12の外周側から接着剤が塗布される。直進筒11およびカム筒12には、固定枠27の貫通穴に接着剤を塗布するための作業用の貫通穴が形成されている。この作業用の貫通穴は、前後方向において、貫通穴11d、12dと同じ位置に形成されている。また、この作業用の貫通穴は、周方向において、貫通穴11d、12dとずれた位置に形成されている。また、この作業用の貫通穴は、たとえば、光軸Lを中心とする120°ピッチで3箇所に形成されている。
【0073】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のレンズ鏡筒1は、内周側でレンズ2を保持するレンズ枠5と、内周側でレンズ3を保持するレンズ枠6と、レンズ枠5に対してレンズ枠6を光軸方向に移動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の光軸方向の位置を調整するための第1調整機構14と、レンズ枠5に対してレンズ枠6を径方向に移動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置を調整するための第2調整機構15とを備えている。第1調整機構14は、レンズ枠5の外周側に配置され光軸方向を回動の軸方向としてレンズ枠5に回動可能に保持されるとともに光軸方向を回動の軸方向として回動するとレンズ枠5に対して光軸方向に移動する回動枠18と、レンズ枠5に対して前側にレンズ枠6を付勢する圧縮コイルバネ19とを備えている。回動枠18は、レンズ枠6の前側に配置され、圧縮コイルバネ19は、回動枠18に向かってレンズ枠6を付勢している。レンズ枠6は、回動枠18がレンズ枠5に対して回動して光軸方向に移動すると、レンズ枠5に対して光軸方向に移動する。第2調整機構15は、レンズ枠5の周方向に配列され径方向の外側からレンズ枠6に接触する複数の調整用ネジ22を備え、レンズ枠5には、調整用ネジ22が係合する複数のネジ穴26dが形成されている。また、レンズ枠5に対するレンズ枠6の光軸方向の位置は、回動枠18によって調整され、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置は、調整用ネジ22によって調整されている。
【0074】
このように本形態のレンズ鏡筒1は、レンズ枠5に対してレンズ枠6を光軸方向に移動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の光軸方向の位置を調整するための第1調整機構14と、レンズ枠5に対してレンズ枠6を径方向に移動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置を調整するための第2調整機構15とを備えており、レンズ枠6に保持されるレンズ3の光軸方向の位置と径方向の位置とが調整可能になっている。そのため、本形態では、レンズ枠5、6に保持されるズームレンズ群の中に効き量の大きいレンズ3が含まれていても、効き量の大きいレンズ3が含まれるズームレンズ群の光学性能を確保することが可能になる。
【0075】
また、本形態では、レンズ枠5の外周側でレンズ枠5に回動可能に保持される回動枠18によって、レンズ枠5に対するレンズ枠6の光軸方向の位置が調整され、レンズ枠5のネジ穴26dに係合する調整用ネジ22によって、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置が調整されており、レンズ枠6の光軸方向の位置と径方向の位置とが独立して調整可能となっている。そのため、本形態では、レンズ枠6の位置の調整を容易に行うことが可能になる。
【0076】
本形態のように、第1調整機構14は、光軸方向において回動枠18とレンズ枠6との間に配置されるとともに周方向に配列される複数のボール20を備えていることが好ましい。このようにすると、回動枠18が回動するときの、レンズ枠6に対する回動枠18の摺動抵抗を軽減することが可能になる。したがって、レンズ枠5に対して回動枠18を円滑に回動させることが可能になる。
【0077】
本形態のように、主レンズ枠25は、筒部25aの前側端に繋がるとともに回動枠18の前側に配置される円環状かつ平板状の円環部25bを備え、第1調整機構14は、光軸方向において回動枠18と調整用枠26との間に配置され円環部25bに向かって回動枠18を付勢する圧縮コイルバネ21を備えることが好ましい。このようにすると、レンズ枠5に対する回動枠18の、光軸方向のがたつきを効果的に抑制することが可能になる。具体的には、回動枠18の内周面に形成される雌ヘリコイドネジと、筒部25aの外周面に形成される雄ヘリコイドネジとの間のがたつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0078】
本形態のように、レンズ鏡筒1は、レンズ枠5に回動枠18を固定するための固定用ネジ23を備えることが好ましい。このようにすると、レンズ枠6の光軸方向の位置を調整した後、回動枠18が回動しないように、回動枠18を確実に固定することが可能になる。
【0079】
本形態のように、レンズ枠5と回動枠18とはヘリコイド係合していることが好ましい。このようにすると、比較的簡易な構成で、レンズ枠5に対して回動枠18を回動させたときに、レンズ枠5に対して回動枠18を光軸方向へ移動させることが可能になる。
【0080】
本形態のように、レンズ枠6の外周面に、調整用ネジ22の先端部が配置されるV溝6bが形成され、調整用ネジ22の先端部は、V溝6bの側面に接触していることが好ましい。このようにすると、レンズ枠6の光軸方向への移動を調整用ネジ22によって規制することが可能になる。
【0081】
本形態のように、レンズ枠7に、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させる貫通穴7aが形成され、固定筒8に、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させる貫通穴8aが形成されていることが好ましい。このようにすると、径方向における調整用ネジ22の外側にレンズ枠7および固定筒8が配置されていても、レンズ鏡筒1が組み立てられた状態で、調整用ネジ22を工具によって回すことが可能になる。したがって、径方向における調整用ネジ22の外側にレンズ枠7および固定筒8が配置されていても、レンズ鏡筒1をばらすことなく、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置を調整することが可能になり、その結果、レンズ枠5に対するレンズ枠6の径方向の位置を容易に調整することが可能になる。
【0082】
本形態のように、直進筒11に、歯車部18cを回すための治具の一部分を通過させる貫通穴11cと、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させる貫通穴11bとが形成され、カム筒12に、歯車部18cを回すための治具の一部分を通過させる貫通穴12cと、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させる貫通穴12bとが形成されていることが好ましい。このようにすると、レンズ枠5、6、第1調整機構14および第2調整機構15の外周側に直進筒11やカム筒12が配置されていても、レンズ鏡筒1が組み立てられた状態で、治具によって歯車部18cを回して回動枠18を回動させることが可能になるとともに、調整用ネジ22を工具によって回すことが可能になる。したがって、レンズ枠5、6、第1調整機構14および第2調整機構15の外周側に直進筒11やカム筒12が配置されていても、レンズ鏡筒1をばらすことなく、レンズ枠5に対するレンズ枠6の光軸方向の位置と径方向の位置とを調整することが可能になり、その結果、レンズ枠5に対するレンズ枠6の光軸方向の位置と径方向の位置とを容易に調整することが可能になる。
【0083】
(他の実施の形態)
上述した形態において、第1調整機構14が備えるボール20の数は、9個以上であっても良いし、7個以下の複数個であっても良い。また、上述した形態において、第2調整機構15が備える調整用ネジ22の数は、3個であっても良いし、5個以上であっても良い。さらに、上述した形態において、レンズ鏡筒1が備える固定用ネジ23の数は、2本であっても良いし、4本以上であっても良い。また、上述した形態において、レンズ枠6を付勢する第1付勢部材は、圧縮コイルバネ19以外のバネ部材であっても良いし、回動枠18を前側に付勢する第2付勢部材は、圧縮コイルバネ21以外のバネ部材であっても良い。
【0084】
上述した形態において、第1調整機構14は、ボール20に代えて、前後方向において回動枠18とレンズ枠6との間に配置される円柱状の複数のコロを備えていても良い。この場合には、たとえば、複数のコロは、円柱状に形成されるコロの軸方向と光軸方向に直交する径方向とが一致するように配置されている。また、複数のコロは、コロの軸方向と光軸方向とが一致するように配置されても良い。この場合には、コロが配置される配置穴が調整用枠26の円環部26cに形成されている。また、上述した形態において、ボール20の代わりに、前側に向かって突出する複数の突起がレンズ枠6に形成されていても良い。この場合には、レンズ枠6に形成される突起の先端が薄板33または回動枠18に接触している。また、この場合には、レンズ枠6に形成される突起が配置される配置穴が円環部26cに形成されている。
【0085】
上述した形態では、レンズ枠5と回動枠18とがヘリコイド係合しているが、レンズ枠5と回動枠18とは、カム係合していても良いし、ヘリコイド係合以外のネジ係合をしていても良い。また、上述した形態において、レンズ枠6の外周面にV溝6bが形成されていなくても良い。この場合には、たとえば、固定用ネジ23と同様に、調整用ネジ22の先端の外周面は、円錐台面状に形成されており、調整用ネジ22の先端は、窪んでいる。また、調整用ネジ22の先端は、レンズ枠6の外周面に接触している。
【0086】
上述した形態において、望遠端にレンズ2、3が配置されているときに、歯車部18cは、径方向において直進筒11およびカム筒12のいずれか一方のみと重なっていても良い。この場合には、径方向において歯車部18cと重なる直進筒11またはカム筒12のみに、歯車部18cを回すための治具の一部分を通過させる貫通穴11c、12cと、貫通穴11d、12dとが形成されている。また、上述した形態において、望遠端にレンズ2、3が配置されているときに、調整用ネジ22は、径方向において直進筒11およびカム筒12のいずれか一方のみと重なっていても良い。この場合には、径方向において調整用ネジ22と重なる直進筒11またはカム筒12のみに、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させる貫通穴11b、12bが形成されている。
【0087】
上述した形態において、カム筒12の外周側に筒状の筒部材が配置されていても良い。この筒部材は、たとえば、回動枠18の外周側に配置されるとともに、径方向における調整用ネジ22の外側に配置されている。この場合には、この筒部材には、歯車部18cを回すための治具の一部分を通過させる第1貫通穴と、調整用ネジ22を回すための工具の一部分を通過させる第2貫通穴とが形成されている。この場合の筒部材は、第1筒部材であるとともに、第2筒部材である。
【0088】
上述した形態において、レンズ2、3が広角端に配置されている状態で、レンズ枠5に対して回動枠18を回動させてレンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置を調整することが可能になっていても良い。この場合には、たとえば、歯車部18cを回すための治具の一部分を通過させる第1貫通穴が固定筒8に形成されており、レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置を調整するときに、歯車部18cを回すための治具の一部分がこの第1貫通穴を通過する。また、この場合には、たとえば、固定用ネジ23を回すためのドライバーの先端部を通過させる貫通穴が直進筒11に形成されている。この場合の固定筒8は、回動枠18の外周側に配置される第1筒部材となっている。
【0089】
また、レンズ2、3が広角端に配置されている状態で、レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置を調整することが可能になっている場合には、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態で、レンズ枠5に対するレンズ枠6の前後方向の位置調整ができなくても良い。この場合には、直進筒11、カム筒12に貫通穴11c、11d、12c、12dが形成されていなくても良い。
【0090】
上述した形態において、レンズ2、3が広角端に配置されている状態、および、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態のいずれか一方のみの状態で、ネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量の調整が可能となっていても良い。レンズ2、3が広角端に配置されている状態でのみ、ネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量の調整が可能となっている場合には、直進筒11、カム筒12に貫通穴11b、12bが形成されていなくても良い。また、レンズ2、3が望遠端に配置されている状態でのみ、ネジ穴26dに対する調整用ネジ22のねじ込み量の調整が可能となっている場合には、レンズ枠7、固定筒8に貫通穴7a、8aが形成されていなくても良い。
【0091】
上述した形態において、固定筒8に対してレンズ枠5、6を前後方向に移動させるための機構は、ヘリコイド機構であっても良い。また、上述した形態において、レンズ2とレンズ3とによってフォーカスレンズ群の一部が構成されていても良い。また、上述した形態において、レンズ2、3は、固定筒8に対して前後方向に移動しない固定レンズであっても良い。この場合には、レンズ枠5は、固定筒8に固定されている。また、この場合には、直進筒11およびカム筒12が不要になる。
【符号の説明】
【0092】
1 レンズ鏡筒
2、3 レンズ
5 レンズ枠(第1レンズ枠)
6 レンズ枠(第2レンズ枠)
6b V溝
7 レンズ枠(第2筒部材)
7a 貫通穴(第2貫通穴)
8 固定筒(第2筒部材)
8a 貫通穴(第2貫通穴)
11 直進筒(第1筒部材、第2筒部材)
11a 直進溝
11b 貫通穴(第2貫通穴)
11c 貫通穴(第1貫通穴)
12 カム筒(第1筒部材、第2筒部材)
12a カム溝
12b 貫通穴(第2貫通穴)
12c 貫通穴(第1貫通穴)
14 第1調整機構
15 第2調整機構
18 回動枠
18c 歯車部
19 圧縮コイルバネ(第1付勢部材)
20 ボール
21 圧縮コイルバネ(第2付勢部材)
22 調整用ネジ
23 固定用ネジ
25 主レンズ枠
25a 筒部(主レンズ枠筒部)
25b 円環部(主レンズ枠円環部)
26 調整用枠
26a 筒部(第1調整用枠筒部)
26b 筒部(第2調整用枠筒部)
26c 円環部(調整用枠円環部)
26d ネジ穴
30 カムフォロア
Z1 第1方向
Z2 第2方向
図1
図2
図3