(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165482
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61F 1/00 20060101AFI20221025BHJP
B61F 5/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B61F1/00
B61F5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070824
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市位 卓久
(72)【発明者】
【氏名】大島 聡
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(57)【要約】
【課題】
艤装部品を配設するための十分なスペースを確保することができ、かつ、艤装部品の配設が容易な鉄道車両を提供すること。
【解決手段】
軌道25を走行するための台車16と、台車16に支持される台枠11と、台車16の上方で台枠11を構成する枕梁113と、台車16が走行することによる軌道方向の牽引力を台枠11に伝達する中心ピン21と、を備える鉄道車両1において、台枠11は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する中梁114を有すること、中心ピン21が、中梁114に結合されていること、台枠11は、枕梁113の近傍の、軌道25の側の下面または軌道25の側とは反対側の上面に、台枠11の外部に開放された艤装用空間117A,117Bを有すること。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行するための台車と、前記台車に支持される台枠と、前記台車の上方で前記台枠を構成する枕梁と、前記台車が走行することによる軌道方向の牽引力を前記台枠に伝達する伝達部材と、を備える鉄道車両において、
前記台枠は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する中梁を有すること、
前記伝達部材が、前記中梁に結合されていること、
前記台枠は、前記枕梁の近傍の、前記軌道の側の下面または前記軌道の側とは反対側の上面に、前記台枠の外部に開放された艤装用空間を有すること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記枕梁と、前記中梁と、が交差して設けられていること、
前記枕梁は、少なくとも前記中梁と交差している箇所の近傍に、前記中梁の前記軌道の側の下面、または、前記軌道の側とは反対側の上面よりも凹んだ段差部を有すること、
前記艤装用空間は、前記段差部により形成されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記枕梁は、前記台枠の枕木方向の両端部のそれぞれから、前記中梁に向かって延伸すること、
前記枕梁と前記中梁との間には間隙が設けられていること、
前記艤装用空間は、前記間隙により形成されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道を走行するための台車と、前記台車に支持される台枠と、前記台車の上方で前記台枠を構成する枕梁と、前記台車が走行することによる軌道方向の牽引力を前記台枠に伝達する伝達部材と、を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通勤電車、特急電車、新幹線電車等の鉄道車両は、特許文献1に示すように、車体の下面を構成する台枠を備えている。従来技術に係る鉄道車両には、例えば、
図23のような構成の台枠200が用いられる。なお、
図23に示しているのは、台枠200の軌道方向の両端部のうちの一端(例えば鉄道車両の先頭部分)である。また、
図24は、
図23のO-O断面図であり、
図25は、
図23のP-P断面図である。
【0003】
台枠200は、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。また、台枠200は、軌道方向の両端部が、端梁201により形成されている。端梁201の枕木方向の両端部には、軌道方向に沿って設けられる一対の側梁202が結合されている。そして、台枠200の、台車16(
図24参照)の直上に当たる位置には、枕梁203が、一対の側梁202を横架している。この枕梁203の枕木方向の中央部には、中心ピン21が結合されている。この中心ピン21は、台車16が走行することによる軌道方向の牽引力、あるいはブレーキをかけた場合の制動力を台枠200に伝達するための部材である(以下、牽引力や制動力などの台車16から台枠200に伝達される力をまとめて牽引力と記す)。また、枕梁203の枕木方向の両端部には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠200を支持している。また、端梁201の枕木方向の中央部と枕梁203の枕木方向の中央部との間には、一対の中梁204が横架している。この中梁204の、下面(軌道側の面)の端梁201側の端部には、隣接する鉄道車両同士を連結するための連結器19が結合されている。さらに、台枠200は、端梁201と側梁202と枕梁203と中梁204に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床205を備えている。この構造床205は、
図25に示すように、トラス状の断面を有する押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。
【0004】
上記した台枠200には、台車16が走行する際の軌道方向の牽引力(以下、台車16の牽引力という)、台車16が枕ばね18によって台枠11を支持する際の荷重の反力(以下、枕ばね18の反力という)、隣接する鉄道車両から連結器19を介して伝達される荷重(以下、連結器19の荷重という)等、様々な荷重が負荷される。そして、これらの荷重は、台枠200を構成する梁の中でも、特に枕梁203に負荷されるケースが多い。
【0005】
例えば、台車16の牽引力は、中心ピン21によって枕梁203に負荷される。なお、当該牽引力は、枕梁203に負荷された後、
図26(b)に示すように、中梁204を介して端梁201に伝達され(矢印F71参照)、さらに端梁201から側梁202に伝達される(矢印F72参照)。その他、枕梁203から直接に側梁202に伝達される(矢印F81参照)。
【0006】
また、例えば、枕ばね18の反力は、
図27(b)における矢印F91が示すように、枕ばね18によって枕梁203に負荷される。
【0007】
また、例えば、連結器19の荷重は、
図28(b)における矢印F101が示すように、中梁204を伝って枕梁203に負荷される。なお、当該荷重は枕梁203に負荷された後、さらに矢印F102に示すように側梁202に伝達される。
【0008】
以上のように枕梁203に対して荷重が負荷されるケースが多いため、枕梁203は負荷に耐えうるものでなければならない。そのため、枕梁203は、例えば、軌道方向の幅寸法を約800mmとしたり、厚み寸法を約200mmとして、全体として均一な厚みとしたりするなど、台枠200を構成するその他の梁と比べて大型で強固な構造物とされるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-43278号公報
【特許文献2】特開2010-173628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
従来、台枠200の下面において、配線や配管、ダクト等の艤装部品の配設が行われることが一般的である。しかし、上述の通り枕梁203は大型で強固な構造物であるため、枕梁203と台車16に挟まれた部分は、その隙間が狭小となり、艤装部品を配設するために十分なスペースを設けることが困難となっている。例えば、
図24を例に挙げれば、枕梁203と台車16との間のスペースは、鉄道車両に乗客が乗るなどして台枠200が下方に沈み込み、枕ばね18が撓んだときの緩衝空間であるため、艤装部品の配設に用いることができない。
【0011】
上記のように艤装部品を配設するために十分なスペースを設けることが困難であるため、艤装部品の配設のためには、例えば、枕梁203に、枕梁203を軌道方向に貫通する孔を設けて、その孔に配線や配管を通すことも考えられる。しかし、孔が貫通することによる枕梁203の強度低下が懸念されるほか、孔を貫通させるための加工や、孔に配線や配管を通す作業は容易でなく、製造コストが増大する。また、特許文献2には、枕梁に交差させた中梁の内部に配線や配管を通す車体構造が開示されているが、配線や配管を中梁の内部に通す作業も容易でなく、製造コストが増大するという問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、艤装部品を配設するための十分なスペースを確保することができ、かつ、艤装部品の配設が容易な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(1)軌道を走行するための台車と、前記台車に支持される台枠と、前記台車の上方で前記台枠を構成する枕梁と、前記台車が走行することによる軌道方向の牽引力を前記台枠に伝達する伝達部材と、を備える鉄道車両において、前記台枠は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する中梁を有すること、前記伝達部材が、前記中梁に結合されていること、前記台枠は、前記枕梁の近傍の、前記軌道の側の下面または前記軌道の側とは反対側の上面に、前記台枠の外部に開放された艤装用空間を有すること、を特徴とする。
【0014】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記枕梁と、前記中梁と、が交差して設けられていること。前記枕梁は、少なくとも前記中梁と交差している箇所の近傍に、前記中梁の前記軌道の側の下面、または、前記軌道の側とは反対側の上面よりも凹んだ段差部を有すること、前記艤装用空間は、前記段差部により形成されていること、を特徴とする。
【0015】
(3)(1)に記載の鉄道車両において、前記枕梁は、前記台枠の枕木方向の両端部のそれぞれから、前記中梁に向かって延伸すること、前記枕梁と前記中梁との間には間隙が設けられていること、前記艤装用空間は、前記間隙により形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄道車両によれば、軌道方向と平行に延伸する中梁に、台車の軌道方向の牽引力を台枠に伝達する伝達部材(例えば中心ピン)が結合されているため、台車の牽引力は中梁に負荷されることになる。したがって、枕梁への負荷が従来よりも軽減される。枕梁への負荷が軽減されれば、枕梁を、従来の枕梁のような大型で強固な構造物とする必要がなくなるため、例えば、(2)に記載の鉄道車両のように、枕梁を、中梁の軌道の側の下面または軌道の側とは反対側の上面よりも凹んだ段差部を有するものとするか、または、(3)に記載の鉄道車両のように、枕梁と中梁との間に間隙を有するものとすることができる。そうすれば、当該段差部または当該間隙を利用して、台枠に艤装用空間を設けることができる。艤装用空間を設けることによって、艤装部品を配設するための十分なスペースを確保することができる。なお、上記間隙には、構造床などを配置し、枕梁と中梁とを構造床を介して接続しても良い。この場合でも、中梁が台車の牽引力の負荷を受けるため、構造床を大型で強固なものとする必要がなく、間隙のうち、構造床が占める割合は最小限に留めることができる。よって、艤装部品を配設するための十分なスペースを確保することができる。また、艤装用空間は、台枠の外部に開放されているため、艤装部品の配設が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図7】第1の実施形態の第1変形例に係る台枠の平面図である。
【
図10】第1の実施形態の第2変形例に係る台枠の平面図である。
【
図13】第2の実施形態に係る台枠の平面図である。
【
図16】第2の実施形態に係る台枠の艤装用空間にダクトを配設した参考図であり、
図13のG-G断面図に相当する。
【
図17】第2の実施形態の第1変形例に係る台枠の平面図である。
【
図20】第2の実施形態の第2変形例に係る台枠の平面図である。
【
図26】(a)は、第1の実施形態に係る台枠における、台車の牽引力の伝達経路を示す図である。(b)は、従来技術に係る台枠における、台車の牽引力の伝達経路を示す図である。
【
図27】(a)は、第1の実施形態に係る台枠における、枕ばねの反力の伝達経路を示す図である。(b)は、従来技術に係る台枠における、枕ばねの反力の伝達経路を示す図である。
【
図28】(a)は、第1の実施形態に係る台枠における、連結器の荷重の伝達経路を示す図である。(b)は、従来技術に係る台枠における、連結器の荷重の伝達経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
本発明に係る鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、
図1においては、連妻構体15側の台車および車体2の一部を省略してある。
【0019】
鉄道車両1は、軌道25上を走行することが可能な、例えば通勤車両であり、
図1に示すように、車体2と、車体2を支持する台車16と、により構成される。
【0020】
車体2は、床部を構成する台枠11と、台枠11の軌道方向の一方の端部に立設されることで車体2の先頭部をなす前面妻構体12と、台枠11の他方の端部に立設されることで車体2の連結部をなす連妻構体15と、台枠11の枕木方向の両端部に立設されることで車体2の側面をなす側構体13と、前面妻構体12,連妻構体15および側構体13の上端部に配置されることで車体2の屋根をなす屋根構体14とにより6面体をなすように構成される。そして、車体2は、枕ばね18を介して車輪17を備えた台車16によって支持されている。
【0021】
台車16は、駆動される車輪17により軌道25上を走行可能であり、これにより車体2を牽引する。また、側構体13には、乗務員室に通じる乗務員昇降口20A、客室に通じる乗客乗降口20Bおよび窓20Cが設けられている。また、台枠11の軌道方向の両端部には、前面妻構体12および連妻構体15よりも車両長手方向の外方に突出するように連結器19が設けられており、隣接する鉄道車両同士を連結することが可能である。
【0022】
以上のような鉄道車両1の台枠11の構成について、以下に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る台枠11の平面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。
図5は、
図2のAA-AA断面図である。
図6は、
図2のAB-AB断面図である。なお、
図2に示しているのは、台枠11の軌道方向の両端部のうちの一方の端部(例えば、前面妻構体12側の端部)である。ただし、他方の端部(例えば、連妻構体15側の端部)も、同様の構成である。
【0023】
台枠11は、
図2に示すように、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。台枠11は、軌道方向の両端部が、端梁111により形成されている。端梁111の枕木方向の両端部には、軌道方向に沿って設けられる一対の側梁112が結合されている。そして、台枠11の、台車16(
図3参照)の直上に当たる位置には、枕梁113が、一対の側梁112を横架している。枕梁113の枕木方向の両端部には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠11(ひいては車体2)を支持している。
【0024】
枕梁113は、例えば、
図5に示すように、平板状かつ断面ハモニカ状の押出形材が上下に3枚重ねられて結合されることで形成されている。これら押出形材の押出方向は枕木方向と平行になっている。また、枕梁113は、
図3に示すように、下面(軌道25側の面)の枕木方向の中央部に、上面(軌道25側側とは反対側の面)に向かって穿設された凹部113a(段差部の一例)を有している。この凹部113aは、
図6に示すように、3枚重ねられた押出形材のうちの一部(例えば、
図6においては、3枚のうち、下側の2枚の押出形材)を切除することで設けられており、枕梁113の厚みの3分の1から2分の1程度の深さを有するように形成されている。なお、枕ばねにより支持されている部分の枕梁113の厚みは、従来のものと同程度(約200mm)である。また、凹部113aの枕木方向の長さは、
図2に示すように、枕ばね18と重ならないような長さとされており、枕梁113の枕ばね18が支持する箇所の厚みは、従来の枕梁203と同程度の厚みが確保されている。なお、枕梁113を構成する押出形材は、断面ハモニカ状に限定されず、トラス状の押出形材を用いても良い。また、上記の枕梁113は、押出形材を結合することで構成されるものとしているが、これに限定されず、単一の構造物として構成されるものとしても良い。
【0025】
また、台枠11は、
図2中の枕梁113の、端梁111とは反対側(即ち、枕梁113よりも車両の中央側)に、牽引力などの軌道方向の荷重を受けて左右一対の側梁112に伝達(詳細は後述)する横梁119が、枕梁113と平行に、一対の側梁112を横架している。
【0026】
また、台枠11は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する一対の中梁114を有している。中梁114は、枕梁113と交差して配置されており、その一端は端梁111の枕木方向の中央部に結合され、他端は横梁119の枕木方向の中央部に結合されている。中梁114の、端梁111と結合されている箇所と、横梁119と結合されている箇所、および横梁119の両端部と側梁112とが結合されている箇所のそれぞれは、補強部材118により、強固な結合状態が確保されている。
【0027】
中梁114は、枕梁113と交差している箇所において、上面(軌道25側とは反対側の面)から下面(軌道25側の面)に向かって穿設される凹部114a(
図3,
図6参照)を有している。そして、枕梁113の凹部113aと、中梁114の凹部114aとがかみ合うようして結合されている。これにより、枕梁113の凹部113aは、
図3に示すように、中梁114の下面よりも凹んだ段差部となる。そして、この段差部(凹部113a)は、中梁114によって枕木方向に2つに区画されており、区画されたそれぞれの空間が、台枠11の下面(軌道25側の面)に形成される艤装用空間117Aおよび艤装用空間117Bである。この艤装用空間117A,117Bには、例えば配線や配管等の艤装部品22が配設される。
【0028】
艤装用空間117A,117Bは、台枠11の外部に開放されている。つまり、艤装用空間117A,117Bは、
図3において下方に開口した状態である。このため、艤装部品22を配設する際には、艤装用空間117A,117Bの下方側から配設することができる。この配設するための作業は、枕梁を軌道方向に貫通する孔に配線を通すような作業に比べて容易である。
【0029】
中梁114の下面のうち、台車16と対向する箇所には、中心ピン21が結合されている。この中心ピン21は、台車16が軌道25上を走行することによる軌道方向の牽引力を、台枠11に伝達する伝達部材である。さらに、中梁114の、下面の端梁111側の端部には、連結器19が結合されている。
【0030】
また、台枠11は、
図2に示すように、端梁111と側梁112と枕梁113と中梁114に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床115を備えている。この構造床115は、
図4に示すように、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。さらに、台枠11は、
図2に示すように、横梁119と側梁112と枕梁113と中梁114に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床116を備えている。この構造床116は、構造床115と同様に、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。これら構造床115,116の上面の、鉄道車両の高さ方向の位置は、枕梁113の上面の位置と一致されている。
【0031】
上記した構成を有する台枠11には、台車16が軌道25上を走行することによる軌道方向の牽引力(以下、台車16の牽引力という)、台車16が枕ばね18によって台枠11を支持する際の荷重の反力(以下、枕ばね18の反力という)、隣接する鉄道車両から連結器19を介して伝達される荷重(以下、連結器19の荷重という)等、様々な荷重が負荷される。しかし、従来技術に係る台枠(例えば、
図23に示す台枠200)に比して、枕梁113に負荷される荷重が軽減される。
図26~
図28を用いて、以下に詳しく説明する。
図26(a)は、台枠11における、台車16の牽引力の伝達経路を示す図である。
図26(b)は、台枠200における、台車16の牽引力の伝達経路を示す図である。
図27(a)は、台枠11における、枕ばね18の反力の伝達経路を示す図である。
図27(b)は、台枠200における、枕ばね18の反力の伝達経路を示す図である。
図28(a)は、台枠11における、連結器19の荷重の伝達経路を示す図である。
図28(b)は、台枠200における、連結器19の荷重の伝達経路を示す図である。
【0032】
まず、台車16の牽引力について説明する。台車16の牽引力は中心ピン21によって、台枠11に負荷され、これにより、鉄道車両1が軌道25に沿って走行することができる。
【0033】
台枠11においては、中心ピン21は中梁114に結合されているため、台車16の牽引力は、まず中梁114に負荷される。そして、中梁114に負荷された台車16の牽引力は、
図26(a)に示すように、中梁114を介して端梁111に伝達されるとともに横梁119に伝達され(矢印F11および矢印F21参照)、さらに、端梁111から側梁112に伝達され(矢印F12参照)、横梁119から側梁112に伝達される。
【0034】
一方、従来技術に係る台枠200においては、中心ピン21は枕梁203に結合されているため、台車16の牽引力は、まず枕梁203に負荷される。そして、枕梁203に負荷された台車16の牽引力は、
図26(b)に示すように、中梁204を介して端梁201に伝達され(矢印F71参照)、さらに端梁201から側梁202に伝達される(矢印F72参照)。その他、枕梁203から直接に側梁202に伝達される(矢印F81参照)。
【0035】
以上のように、従来の台枠200の枕梁203には、台車16の牽引力が直接に負荷されるのに対して、本実施形態の台枠11の枕梁113には、台車16の牽引力が直接に負荷されない。
【0036】
次に、枕ばね18の反力について説明する。台車16は、枕ばね18によって台枠11(ひいては車体2)を支持しているため、枕ばね18には台枠11(車体2)の質量が常に負荷されている。よって、枕ばね18の反力は常に台枠11に負荷された状態となっている。また、鉄道車両に乗客が乗るなどして台枠11が下方に沈み込み、枕ばね18が撓んだ場合には、さらに強い枕ばね18の反力が台枠11に負荷される。
【0037】
台枠11においては、枕ばね18は、枕梁113の枕木方向の両端部に位置し、台枠11を支持しているため、枕ばね18の反力は、
図27(a)に示すように、枕ばね18から枕梁113に負荷される(矢印F31参照)。
【0038】
一方、従来技術に係る台枠200においては、台枠11と同様に、枕ばね18は、枕梁203の枕木方向の両端部に位置し、台枠200を支持しているため、枕ばね18の反力は、
図27(b)に示すように、枕ばね18から枕梁203に負荷される(矢印F91参照)
【0039】
以上のように、枕ばね18の反力については、従来の台枠200、本実施形態の台枠11ともに枕梁203,113に負荷されることに変わりはない。
【0040】
次に、連結器19の荷重について説明する。鉄道車両1が隣接する鉄道車両と連結器19により連結され、当該隣接する鉄道車両に牽引される場合などは、連結器19の荷重が台枠11に負荷される。
【0041】
台枠11においては、連結器19は中梁114に結合されているため、連結器19の荷重は、まず中梁114に負荷される。中梁114は、連結器19が結合されている側とは反対側の端部が、横梁119に結合されているため、中梁114に負荷された連結器19の荷重は、
図28(a)に示すように、中梁114を伝って横梁119に負荷され(矢印F41参照)、さらに横梁119から側梁112に伝達される(矢印F42参照)。また、連結器19の荷重の一部は端梁111から側梁112に伝達される(矢印F51参照)。
【0042】
一方、従来技術に係る台枠200においては、連結器19が中梁204に結合されているため、連結器19の荷重が、まず中梁204に負荷される点は、台枠11と同様である。しかし、中梁204は、連結器19が結合されている側とは反対側の端部が、端梁201と比較して相当に強固な構造体である枕梁203に結合されているため、中梁204に負荷された連結器19の荷重は、
図28(b)に示すように、中梁204を伝って枕梁203に負荷される(矢印F101参照)。その後、さらに枕梁203から側梁202に伝達される(矢印F102参照)。
【0043】
以上のように、従来の台枠200の枕梁203には、連結器19の荷重が負荷されるのに対して、本実施形態の台枠11の枕梁113には、連結器19の荷重が負荷されにくい。
【0044】
以上説明した通り、台枠11の枕梁113は、従来に比して、台車16の牽引力が直接に負荷されず、さらに、連結器19の荷重が負荷されにくい。枕ばね18の反力が負荷される点は従来と同様であるものの、上述したように牽引力や連結器19の荷重など軌道方向の荷重の負担が小さく、枕梁113に負荷される荷重は、従来に比して軽減されていると言える。したがって、枕梁113を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がなくなるため、例えば、本実施形態に示すように、枕梁113に凹部113aを設けることができる。これにより、台枠11に艤装用空間117A,117Bを設けることができる。この艤装用空間117A,117Bによって、艤装部品22を配設するための十分なスペースを確保することができる。また、艤装用空間117A,117Bが設けられたことで、
図4に示すように、構造床115の下方に配置され、軌道方向に延伸するような配線や配管等の艤装部品22を、
図3に示すように、枕梁113を迂回させずに、艤装用空間117A,117Bを通して一直線に延伸させることが可能であるため、艤装部品22を配設する作業も容易となる。
【0045】
(第1の実施形態の第1変形例)
鉄道車両1の台枠11の変形例について説明する。
図7は、第1の実施形態の第1変形例に係る台枠50の平面図である。
図8は、
図7のC-C断面図である。
図9は、
図7のD-D断面図である。なお、
図7に示しているのは、台枠50の軌道方向の両端部のうちの一方の端部(例えば、前面妻構体12側の端部)である。ただし、他方の端部(例えば、連妻構体15側の端部)も、同様の構成である。また、第1の実施形態と同様の構成部材には同一の照号を付してその詳細な説明は省略する(以降の変形例および実施形態についても同様)。
【0046】
台枠50は、
図7に示すように、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。端梁111と、側梁112と、横梁119とは、台枠11と同様の構成である(
図2参照)。
【0047】
また、台枠50は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する一対の中梁504を有している。中梁504の一端は端梁111の枕木方向の中央部に結合され、他端は横梁119の枕木方向の中央部に結合されている。そして、この中梁504は、端梁111側の端部から横梁119側の端部まで、均一の断面形状を有している。中梁504の下面のうち、台車16と対向する箇所には、中心ピン21が結合されている。さらに、中梁504の、下面の端梁111側の端部には、連結器19が結合されている。
【0048】
また、
図8に示すように、台枠50の、台車16の直上に当たる位置には、枕梁が、一対の側梁112を横架するとともに、中梁504と交差している。この枕梁は、中梁504と交差する部分で、枕梁502と枕梁503とに分割されている。そして、枕梁502と枕梁503とのそれぞれの側梁112側とは反対側の端部が、中梁504に結合されることで、枕梁502と枕梁503とが、中梁504を介して、一対の側梁112を横架した状態となっている。枕梁502および枕梁503のそれぞれの下方には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠50を支持している。
【0049】
枕梁502,503は、中梁504側の端部において、下面(軌道25の面)から、上面(軌道25側とは反対側の面)に向かって穿設される切欠き部502a,503a(段差部の一例)を有している。この切欠き部502a,503aは、枕梁502,503の厚みの3分の1から半分程度の深さを有するように形成されている。なお、枕ばね18により支持されている部分の枕梁502,503の厚みは、従来のものと同程度(約200mm)である。また、切欠き部502a,503aの枕木方向の長さは、
図7に示すように、枕ばね18と重ならないような長さとされており、枕梁502,503の枕ばね18が支持する箇所の厚みは、従来の枕梁203と同程度の厚みが確保されている。
【0050】
上記の切欠き部502a,503aは、
図8に示すように、中梁504の下面よりも凹んだ段差部である。そして、この段差部(切欠き部502a,503a)が、台枠50の下面(軌道25側の面)に形成される艤装用空間507Aおよび艤装用空間507Bである。この艤装用空間507A,507Bには、例えば配線や配管等の艤装部品22が配設される。
【0051】
艤装用空間507A,507Bは、台枠50の外部に開放されている。つまり、艤装用空間507A,507Bは、
図8において下方に開口した状態である。このため、艤装部品22を配設する際には、艤装用空間507A,507Bの下方側から配設することができる。この配設するための作業は、枕梁を軌道方向に貫通する孔に配線を通すような作業に比べて容易である。
【0052】
また、台枠50は、
図7に示すように、端梁111と側梁112と枕梁502(または枕梁503)と中梁504に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床115を備えている。この構造床115は、
図9に示すように、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。さらに、台枠50は、
図7に示すように、横梁119と側梁112と枕梁502(または枕梁503)と中梁504に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床116を備えている。この構造床116は、構造床115と同様に、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。これら構造床115,116の上面の、鉄道車両の高さ方向の位置は、枕梁502,503の上面の位置と一致されている。
【0053】
以上のような構成を有する台枠50によっても、台枠11と同様に、台車16の牽引力および連結器19の荷重は、まず中梁504に負荷されるため、枕梁を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がない。よって、枕梁502,503のように、分割した上、切欠き部502a,503aを設けることができ、これにより艤装用空間507A,507Bを設けることができる。この艤装用空間507A,507Bによって、艤装部品22を配設するための十分なスペースを確保することができる。
【0054】
(第1の実施形態の第2変形例)
鉄道車両1の台枠11の変形例について説明する。
図10は、第1の実施形態の第2変形例に係る台枠60の平面図である。
図11は、
図10のE-E断面図である。
図12は、
図10のF-F断面図である。なお、
図10に示しているのは、台枠60の軌道方向の両端部のうちの一方の端部(例えば、前面妻構体12側の端部)である。ただし、他方の端部(例えば、連妻構体15側の端部)も、同様の構成である。
【0055】
台枠60は、
図10に示すように、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。端梁111と、側梁112と、横梁119とは、台枠11と同様の構成である(
図2参照)。
【0056】
また、台枠60は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する一対の中梁604を有している。この中梁604は、台枠50の中梁504(
図7参照)と同一のものであり、中梁504と同様に中心ピン21および連結器19が結合されている。
【0057】
また、
図11に示すように、台枠60の、台車16の直上に当たる位置には、枕梁が、一対の側梁112を横架するとともに、中梁604と交差している。この枕梁は、中梁604と交差する部分で、枕梁602と枕梁603とに分割されている。そして、枕梁602と枕梁603とのそれぞれの側梁112側とは反対側の端部が、中梁604に結合されることで、枕梁602と枕梁603とが、中梁604を介して、一対の側梁112を横架した状態となっている。枕梁602および枕梁603のそれぞれの下方には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠60を支持している。
【0058】
枕梁602,603は、従来の台枠200の枕梁203よりも厚みが薄く形成されており、その厚みは、例えば、従来の台枠200の半分から3分の2程度である。これに加えて、枕梁602,603の下端面の位置は、枕梁113や枕梁502,503と同一であるため、枕梁602,603の上面が、中梁604の上面よりも凹んだ段差部602a,603aとなる。この段差部602a,603aにより、台枠60の上面(軌道25側とは反対側の面)に、艤装用空間607Aおよび艤装用空間607Bが形成される。そして、この艤装用空間607A,607Bには、艤装部品として、例えば空調機器に用いられるダクト23等が配設される。
【0059】
艤装用空間607A,607Bは、台枠60の外部に開放されている。つまり、艤装用空間607A,607Bの
図11において上方に開口した状態である。このため、ダクト23を配設する際には、艤装用空間607A,607Bの上方側から配設することができる。この配設するための作業は、枕梁を軌道方向に貫通する孔に配線を通すような作業に比べて容易である。
【0060】
また、台枠60は、
図10に示すように、端梁111と側梁112と枕梁602(または枕梁603)と中梁604に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床115を備えている。この構造床115は、
図12に示すように、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。さらに、台枠60は、
図10に示すように、横梁119と側梁112と枕梁602(または枕梁603)と中梁604に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床116を備えている。この構造床116は、構造床115と同様に、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。これら構造床115,116の上面の、鉄道車両の高さ方向の位置は、枕梁602,603の上面の位置と一致されている。
【0061】
以上のような構成を有する台枠60によっても、台枠11,50と同様に、台車16の牽引力および連結器19の荷重は、まず中梁604に負荷されるため、枕梁を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がない。よって、枕梁602,603のように、分割した上、従来よりも厚みを薄く形成することができ、これにより艤装用空間607A,607Bを設けることができる。この艤装用空間607A,607Bによって、ダクト23を配設するための十分なスペースを確保することができる。
【0062】
なお、台枠60の枕梁602,603は、全体として厚みを薄く形成することで艤装用空間607A,607Bを形成しているが、必ずしも全体として厚みを薄く形成する必要はない。例えば、枕梁602,603の中梁604側の端部において、上面(軌道25側とは反対側の面)から、下面(
図11において、軌道25側の面)に向かって切欠き部を穿設し、当該切欠き部により、艤装用空間を形成することとしても良い。
【0063】
以上説明したように、第1の実施形態の鉄道車両1は、
(1)軌道25を走行するための台車16と、台車16に支持される台枠11(50,60)と、台車16の上方で台枠11(50,60)を構成する枕梁113(502,503,602,603)と、台車16が走行することによる軌道方向の牽引力を台枠11(50,60)に伝達する伝達部材(例えば中心ピン21)と、を備える鉄道車両1において、台枠11(50,60)は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する中梁114(504,604)を有すること、伝達部材(例えば中心ピン21)が、中梁114(504,604)に結合されていること、台枠11(50,60)は、枕梁113(502,503,602,603)の近傍の、軌道25の側の下面または軌道25の側とは反対側の上面に、台枠11(50,60)の外部に開放された艤装用空間117A,117B(507A,507B,607A,607B)を有すること、を特徴とする。
【0064】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、枕梁113(502,503,602,603)と、中梁114(504,604)と、が交差して設けられていること。枕梁113(502,503,602,603)は、少なくとも中梁114(504,604)と交差している箇所の近傍に、中梁114(504,604)の軌道25の側の下面、または、軌道25の側とは反対側の上面よりも凹んだ段差部(例えば凹部113a、または、切欠き部502a,503a、または、段差部602a,603a)を有すること、艤装用空間117A,117B(507A,507B,607A,607B)は、段差部(凹部113aまたは切欠き部502a,503aまたは段差部602a,603a)により形成されていること、を特徴とする。
【0065】
第1の実施形態の鉄道車両1によれば、軌道方向と平行に延伸する中梁114(504,604)に、台車16の軌道方向の牽引力を台枠11(50,60)に伝達する伝達部材(例えば中心ピン21)が結合されているため、台車16の牽引力は中梁114(504,604)に負荷されることになる。したがって、枕梁113(502,503,602,603)への負荷が従来よりも軽減される。枕梁113(502,503,602,603)への負荷が軽減されれば、枕梁113(502,503,602,603)を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がなくなるため、例えば、(2)に記載の鉄道車両1のように、枕梁を、中梁114(504,604)の軌道25の側の下面または軌道25の側とは反対側の上面よりも凹んだ段差部(凹部113aまたは切欠き部502a,503aまたは段差部602a,603a)を有するものとすることができる。そうすれば、段差部(凹部113aまたは切欠き部502a,503aまたは段差部602a,603a)を利用して、台枠11(50,60)に艤装用空間117A,117B(507A,507B,607A,607B)を設けることができる。艤装用空間117A,117B(507A,507B,607A,607B)を設けることによって、艤装部品22(またはダクト23)を配設するための十分なスペースを確保することができる。また、艤装用空間117A,117B(507A,507B,607A,607B)は、台枠11(50,60)の外部に開放されているため、艤装部品22(またはダクト23)の配設が容易である。
【0066】
(第2の実施形態)
本発明に係る鉄道車両の第2の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。第2の実施形態に係る鉄道車両の構成は、車体2の床部が台枠70により構成される点を除いて、第1の実施形態に係る鉄道車両1(
図1参照)と同様である。
【0067】
台枠70の構成について、以下に説明する。
図13は、第2の実施形態に係る台枠70の平面図である。
図14は、
図13のG-G断面図である。
図15は、
図11のH-H断面図である。なお、
図13に示しているのは、台枠70の軌道方向の両端部のうちの一方の端部(例えば、前面妻構体12側の端部)である。ただし、他方の端部(例えば、連妻構体15側の端部)も、同様の構成である。
【0068】
台枠70は、
図13に示すように、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。端梁111と、側梁112と、横梁119とは、第1の実施形態に係る台枠11と同様の構成である(
図2参照)。
【0069】
また、台枠70は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する一対の中梁704を有している。この中梁704は、台枠50の中梁504(
図7参照)と同一のものであり、中梁504と同様に中心ピン21および連結器19が結合されている。
【0070】
また、
図14に示すように、台枠70の、台車16の直上に当たる位置には、枕梁702,703が、側梁112から中梁704に向かって延伸している。枕梁702,703それぞれの下方には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠70を支持している。この枕梁702,703の厚みは従来の枕梁203と同程度の厚みであるため、台枠70の、枕ばね18が支持する箇所の厚みは、従来の台枠200と同程度の厚みが確保されている。また、枕梁702,703は中梁704に直接当接して結合されておらず、枕梁702,703の中梁704側の端面と、中梁704との間には間隙C11が設けられている。
【0071】
また、台枠70は、
図13に示すように、端梁111と側梁112と横梁119と中梁704に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床705,706を備えている。この構造床705,706は、
図15に示すように、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。また、構造床705,706は、
図13に示すように、枕梁702,703の形状にくり抜かれた切欠き705a,706aを有しており、枕梁702,703は、切欠き705a,706a内に収まった状態で、構造床705,706と結合されている。これにより、枕梁702,703と中梁704とが構造床705,706を介して接続される。なお、構造床115,116の上面の、鉄道車両の高さ方向の位置は、枕梁702,703の上面の位置と一致されている。
【0072】
また、台枠70には、
図14に示すように、枕梁702,703と中梁704との間の間隙C11により、台枠70の下面側に、艤装用空間707A,707Bが形成されている。より詳しくは、艤装用空間707A,707Bは、枕梁702,703の中梁704側の端面と、構造床705,706の下面(軌道25側の面)と、中梁704の枕梁702,703側の端面と、により形成される。この艤装用空間707A,707Bには、例えば配線や配管等の艤装部品22が配設される。
【0073】
艤装用空間707A,707Bは、台枠70の外部に開放されている。つまり、艤装用空間707A,707Bは、
図14において下方に開口した状態である。このため、艤装部品22を配設する際には、艤装用空間707A,707Bの下方側から配設することができる。この配設するための作業は、枕梁を軌道方向に貫通する孔に配線を通すような作業に比べて容易である。
【0074】
以上のような構成を有する台枠70によっても、第1の実施形態に係る台枠11と同様に、台車16の牽引力および連結器19の荷重は、まず中梁704に負荷されるため、枕梁を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がない。よって、台枠70を、枕梁702,703と中梁704との間に間隙C11をもった構成とすることができる。さらに、間隙C11において枕梁702,703と中梁704とを接続する構造床705,706も大型で強固なものとする必要がない。よって、間隙C11により艤装用空間707A,707Bを設けることができる。この艤装用空間707A,707Bによって、艤装部品22を配設するための十分なスペースを確保することができる。
【0075】
ここで、従来、台枠200の上面側には、空調機器に用いられるダクトが、軌道方向に沿って配設され、さらにその上方には、床板パネルが配置されることが一般的である。
【0076】
台枠70によれば、例えば、
図16に示すように、艤装用空間707A,707Bにおいて、ダクト23と艤装部品22とを上下に並べて配設することが可能である。なお、このとき、艤装部品22は、枕ばね18が撓み、台枠70が下方に沈み込んだ場合に、台車16に干渉しない程度の高さに位置させる必要がある。
【0077】
このように、台枠70の下面側にダクト23を配設することができれば、台枠70の上面側にダクト23を配設しない分、台枠70の上面側に配置される床板パネル24と、台枠70との距離D11を従来よりも小さくすることができる。つまり、床板パネル24の高さを従来よりも低く位置させることができるため、客室空間をより広く確保できるようになる。なお、ダクト23を台枠の下面側に配設可能なのは、上記した台枠70に限られるものでなく、第1の実施形態に係る台枠11およびその変形例である台枠50も同様に、ダクト23を下面側に配設し、客室空間をより広く確保することが可能である。
【0078】
(第2の実施形態の第1変形例)
鉄道車両1の台枠70の変形例について説明する。
図17は、第2の実施形態の第1変形例に係る台枠80の平面図である。
図18は、
図17のI-I断面図である。
図19は、
図17のJ-J断面図である。なお、
図17に示しているのは、台枠80の軌道方向の両端部のうちの一方の端部(例えば、前面妻構体12側の端部)である。ただし、他方の端部(例えば、連妻構体15側の端部)も、同様の構成である。
【0079】
台枠80は、
図17に示すように、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。端梁111と、側梁112と、横梁119とは、台枠11と同様の構成である(
図2参照)。
【0080】
また、台枠80は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する一対の中梁804を有している。中梁804の一端は端梁111の枕木方向の中央部に結合され、他端は横梁119の枕木方向の中央部に結合されている。この中梁804は、端梁111側の端部から横梁119側の端部まで、均一の断面形状を有しているが、台枠70の中梁704(
図13,14参照)に比べて、後述する構造床805の厚みの分だけ厚みが薄くされている。中梁804の下面のうち、台車16と対向する箇所には、中心ピン21が結合されている。さらに、中梁804の、下面の端梁111側の端部には、連結器19が結合されている。
【0081】
また、台枠80の、台車16の直上に当たる位置には、枕梁802,803が、側梁112から中梁804に向かって延伸している。枕梁802,803それぞれの下方には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠80を支持している。この枕梁802,803は、中梁804と同様に、台枠70の枕梁702,703(
図13,14参照)に比べて、後述する構造床805の厚みの分だけ厚みが薄くされている。また、
図18に示すように、枕梁802,803は、台枠70の枕梁702,703と同様に、中梁804との間に間隙C21を有している。
【0082】
また、台枠80は、
図17に示すように、端梁111と一対の側梁112と横梁119とに囲まれて、かつ、枕梁802,803および中梁804の上面に載置された状態で、それぞれの梁に結合された構造床805を備えている。この構造床805は、
図18,19に示すように、トラス状の断面を有するダブルスキンの押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。
【0083】
上述の通り、中梁804は、台枠70の中梁704(
図13,14参照)に比べて、構造床805の厚みの分だけ厚みが薄くされており、枕梁802,803は、台枠70の枕梁702,703(
図13,14参照)に比べて、構造床805の厚みの分だけ厚みが薄くされているが、中梁804、枕梁802,803ともに上面に載置される構造床805と結合されることで、強度が確保されている。
【0084】
また、台枠80には、
図18に示すように、枕梁802,803と中梁804との間の間隙C21により、台枠80の下面側に、艤装用空間807A,807Bが形成されている。より詳しくは、艤装用空間807A,807Bは、枕梁802,803の中梁804側の端面と、構造床805の下面(軌道25側の面)と、中梁804の枕梁802,803側の端面と、により形成される。この艤装用空間807A,807Bには、例えば配線や配管等の艤装部品22が配設される。
【0085】
艤装用空間807A,807Bは、台枠80の外部に開放されている。つまり、艤装用空間807A,807Bは、
図18において下方に開口した状態である。このため、艤装部品22を配設する際には、艤装用空間807A,807Bの下方側から配設することができる。この配設するための作業は、枕梁を軌道方向に貫通する孔に配線を通すような作業に比べて容易である。
【0086】
以上のような構成を有する台枠80によっても、第1の実施形態に係る台枠11と同様に、台車16の牽引力および連結器19の荷重は、まず中梁804に負荷されるため、枕梁を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がない。よって、台枠80を、枕梁802,803と中梁804との間に間隙C21をもった構成とすることができ、間隙C21により艤装用空間807A,807Bを設けることができる。この艤装用空間807A,807Bによって、艤装部品22を配設するための十分なスペースを確保することができる。
【0087】
(第2の実施形態の第2変形例)
鉄道車両1の台枠70の変形例について説明する。
図20は、第2の実施形態の第2変形例に係る台枠90の平面図である(解りやすくするため、床板パネル24を省略してある)。
図21は、
図20のK-K断面図である。
図22は、
図20のL-L断面図である。なお、
図20に示しているのは、台枠90の軌道方向の両端部のうちの一方の端部(例えば、前面妻構体12側の端部)である。ただし、他方の端部(例えば、連妻構体15側の端部)も、同様の構成である。
【0088】
台枠90は、
図20に示すように、矩形状に形成されており、軌道方向に長手方向を有する。端梁111と、側梁112と、横梁119とは、台枠11と同様の構成である(
図2参照)。
【0089】
また、台枠90は、枕木方向の中央部に、軌道方向と平行に延伸する一対の中梁904を有している。この中梁904は、台枠70の中梁704(
図13参照)と同一のものであり、中梁704と同様に中心ピン21および連結器19が結合されている。
【0090】
また、
図21に示すように、台枠90の、台車16の直上に当たる位置には、枕梁902,903が、側梁112から中梁904に向かって延伸している。枕梁902,903それぞれの下方には、台車16の枕ばね18が位置しており、台車16は、この枕ばね18により台枠90を支持している。この枕梁902,903は、台枠80の枕梁802,803(
図17参照)と同一のものであり、台枠70の枕梁702,703(
図13,14参照)に比べて、後述する構造床905,906の厚みの分だけ厚みが薄くされている。また、枕梁902,903は、台枠80の枕梁802,803と同様に、中梁804との間に間隙C31を有している。
【0091】
また、台枠90は、
図20に示すように、端梁111と側梁112と横梁119と中梁904に囲まれて、それぞれの梁に結合された構造床905,906を備えている。この構造床905,906は、
図21,22に示すように、トラス状の断面を有する押出形材であり、押出方向は軌道方向と平行に配置されている。
【0092】
また、構造床905,906は、
図21,22に示すように、側梁112側に位置される上辺部905a,906aと、中梁904側に位置される下辺部905b,906bと、上辺部905a,906aと下辺部905b,906bとを接続する傾斜部905c,906cと、によって断面が違い棚状に形成されている。
【0093】
上辺部905a,906aは、枕梁902,903の上面に結合されている。上述の通り、枕梁902,903は、台枠70の枕梁702,703(
図13,14参照)に比べて、構造床905,906の厚みの分だけ、厚みが薄くされているが、枕梁902,903の上面が上辺部905a,906aと結合されることで、強度が確保されている。
【0094】
傾斜部905c,906cは、上辺部905a,906aの中梁904側の端部から、中梁904側に向かって下り坂を形成するように傾斜している。これにより、傾斜部905c,906cによって上辺部905a,906aと接続される下辺部905b,906bは、枕梁902,903と中梁904との間の間隙C31に位置される。そして、下辺部905b,906bは、中梁904の枕梁902,903側の端面に結合されている。
【0095】
また、台枠90には、
図21に示すように、枕梁902,903と中梁904との間の間隙C31により、台枠90の上面側に、艤装用空間907A,907Bが形成されている。より詳しくは、艤装用空間907A,907Bは、間隙C31において、傾斜部905c,906cと、下辺部905b,906bの上面(軌道25側とは反対側の面)と、中梁904の枕梁902,903側の端面と、により形成される。この艤装用空間907A,907Bには、艤装部品として、例えば空調機器に用いられるダクト23等が配設される。
【0096】
艤装用空間907A,907Bは、台枠90の外部に開放されている。つまり、艤装用空間907A,907Bは、
図21において上方に開口した状態である。このため、ダクト23を配設する際には、艤装用空間907A,907Bの上方側から配設することができる。この配設するための作業は、枕梁を軌道方向に貫通する孔に配線を通すような作業に比べて容易である。
【0097】
以上のような構成を有する台枠90によっても、第1の実施形態に係る台枠11と同様に、台車16の牽引力および連結器19の荷重は、まず中梁904に負荷されるため、枕梁を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がない。よって、台枠90を、枕梁902,903と中梁904との間に間隙C31をもった構成とすることができ、間隙C31により艤装用空間907A,907Bを設けることができる。この艤装用空間907A,907Bによって、ダクト23を配設するための十分なスペースを確保することができる。
【0098】
以上説明したように、第2の実施形態の鉄道車両1は、
(3)(1)に記載の鉄道車両1において、枕梁702,703(802,803,902,903)は、台枠70(80,90)の枕木方向の両端部のそれぞれから、中梁704(804,904)に向かって延伸すること、枕梁702,703(802,803,902,903)と中梁704(804,904)との間には間隙C11(C21,C31)が設けられていること、艤装用空間707A,707B(807A,807B,907A,907B)は、間隙C11(C21,C31)により形成されていること、を特徴とする。
【0099】
第2の実施形態の鉄道車両1によれば、軌道方向と平行に延伸する中梁704(804,904)に、台車16の軌道方向の牽引力を台枠70(80,90)に伝達する伝達部材(例えば中心ピン21)が結合されているため、台車16の牽引力は中梁704(804,904)に負荷され、端梁111および横梁119を介して台枠70(80,90)に伝達されることになる。したがって、枕梁702,703(802,803,902,903)への負荷が従来よりも軽減される。枕梁702,703(802,803,902,903)への負荷が軽減されれば、枕梁702,703(802,803,902,903)を、従来の枕梁203のような大型で強固な構造物とする必要がなくなるため、例えば、(3)に記載の鉄道車両1のように枕梁702,703(802,803,902,903)と中梁704(804,904)との間に間隙C11(C21,C31)を有するものとすることができる。そうすれば、間隙C11(C21,C31)を利用して、台枠70(80,90)に艤装用空間707A,707B(807A,807B,907A,907B)を設けることができる。艤装用空間707A,707B(807A,807B,907A,907B)を設けることによって、艤装部品22(またはダクト23)を配設するための十分なスペースを確保することができる。なお、間隙C11には、構造床705,706などを配置し、枕梁702,703と中梁704とを構造床705,706を介して接続しても良い。この場合でも、中梁704が台車16の牽引力の負荷を受けるため、構造床705,706を大型で強固なものとする必要がなく、間隙C11(C21,C31)のうち、構造床705,706が占める割合は最小限に留めることができる。よって、艤装部品22(またはダクト23)を配設するための十分なスペースを確保することができる。また、艤装用空間707A,707B(807A,807B,907A,907B)は、台枠70(80,90)の外部に開放されているため、艤装部品の配設が容易である。
【0100】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、構造床としてダブルスキンの押出形材を用いているが、シングルスキンの押出形材を用いることとしても良い。また、該押出形材は、上記の実施形態においては押出方向が軌道方向に平行なものとされているが、これに限定されず、押出方向を枕木方向に平行なものとしても良い。さらに、該押出形材は、上記の実施形態においてはトラス状の断面を有するものとしているが、これに限定されず、例えばハモニカ状の断面を有するものとしても良い。
【符号の説明】
【0101】
1 鉄道車両
11 台枠
16 台車
21 中心ピン(伝達部材の一例)
25 軌道
113 枕梁
117A 艤装用空間
117B 艤装用空間