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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165486
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】2層タイプ化粧水
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221025BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20221025BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/03
A61Q19/00
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070829
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 美奈
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB442
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD042
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD261
4C083AD262
4C083CC04
4C083DD05
4C083DD08
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】
マスクによる擦れに強く、化粧持ちに優れた2層タイプ化粧水を提供することを目的とする。
【解決手段】
プルランと球状セルロースを含有する、2層タイプ化粧水。また、さらにエチルヘキシルグリセリン、テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットから選択される1種又は2種以上を含有する、2層タイプ化粧水。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルランと球状セルロースを含有する、2層タイプ化粧水。
【請求項2】
さらに、エチルヘキシルグリセリン、テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットから選択される1種又は2種以上を含有する、請求項1に記載の2層タイプ化粧水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層タイプ化粧水に関する。
【背景技術】
【0002】
メーキャップの仕上げには、油分配合量の少ないフェイスパウダーを用いるのが一般的である。フェイスパウダーは皮脂や汗を吸収することから、ファンデーションの持ちをよくし化粧崩れを防ぐことができ、パウダーが光を拡散して肌を立体的に見せられるといった美的効果もある。アイシャドウのよれやチークのムラも、フェイスパウダーを丁寧につけることで解決することもある。
【0003】
従来のフェイスパウダーは、まずパフでつけ、余分な粉分をフェイスブラシで落とすのが基本であるが、このような手間を省くため、水性揮発性溶媒中に粉体を配合し、メーキャップ化粧料塗布後の顔面に噴霧するスプレー式仕上げ用メークアップ化粧料が提案されている(特許文献1)。しかしながら、粉末のみを配合した仕上げ用化粧料では、化粧もちを向上させることは困難であり二次付着を防止することもできない。
【0004】
同様にメーキャップ後の肌に噴霧するタイプの仕上げ用化粧料(フィニッシングミストと呼ばれる)も市販されており、香料(バラエキス)や保湿成分(アロエエキス)等を配合することにより、メーキャップを定着させ、仕上がりの美しさを長持ちさせると謳われている。しかしながら、その配合成分を考慮すると、化粧崩れや二次付着に対する高い抑制効果は期待できないと推測される。
【0005】
一方、フッソ樹脂、シリコーン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、ポリブテン、ポリイソプレン、アルキド樹脂、PVP変性ポリマーから選択される特定の樹脂を揮発性の油剤に溶解した化粧料(オーバーコートとも呼ばれる)をメーキャップ表面に適用し、前記樹脂膜によって被覆することによって色くすみ化粧崩れや二次付着を防止することも知られている(特許文献2)。しかしながら、これらの化粧料に従来配合されてい
た樹脂から形成される皮膜は硬くてパリパリした感触となり、皮膚の動きへの追従が不十
分であるため、使用感触や効果の点で満足できるものではなかった。
【0006】
また、水性媒体中に、微細セルロース繊維と 皮膜形成能を持つ高分子とを含有する仕上げ用化粧料も開示されている(特許文献3)。しかしながら、粉体の再分散性、化粧持ち効果の点で満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61-183208号公報
【特許文献2】特許第2602053号公報
【特許文献3】特開2018-203646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マスクによる擦れに強く、化粧持ちに優れた2層タイプ化粧水を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
プルランと球状セルロースを含有する、2層タイプ化粧水。
(2)
さらに、エチルヘキシルグリセリン、テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットから選択される1種又は2種以上を含有する、(1)に記載の2層タイプ化粧水。
【発明の効果】
【0010】
本発明の2層タイプ化粧水は、マスクによる擦れに強く、化粧持ちに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
[プルラン]
本発明の2層タイプ化粧水に配合するプルランは、グルコース3分子がα1-44結合したマルトトリオースがα1-6結合で繋がった構造を有する水溶性高分子である。プルランの市販品としては、「化粧品用プルラン」、「食品添加物プルラン」(以上、林原生物化学研究所社製)が挙げられる。
【0013】
本発明の2層タイプ化粧水100質量%中のプルランの含有量は、化粧持ち効果の点から、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.003質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。0.001質量%未満の場合、化粧持ち効果が得られない場合がある。1.0質量%を超えて配合すると、べたつきが気になる使用感となる場合がある。
【0014】
[球状セルロース]
本発明の2層タイプ化粧水に配合する球状セルロースは、球状の結晶セルロースであり、顕微鏡法により測定される平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。市販品として、CELLULOBEADS D-10、CELLULOBEADS D-5、CELLULOBEADS USF(以上、大東化成工業社製)、GE-800(東色ピグメント社製)、TEGO Feel C 10(Evonic Operations社製)、ネイチャーソフト800(Micro Powders社製)等があげられる。
【0015】
本発明の2層タイプ化粧水100質量%中の球状セルロースの含有量は、化粧持ち効果の点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下である。0.01質量%未満の場合、使用感がべたつく場合がある。1.0質量%を超えて配合すると、良好な再分散性が得られない場合がある。
【0016】
本発明の2層タイプ化粧水は、使用時に振とうして均質に分散させて使用する。また、使用後に静置することにより粉体層と水層の2層に分離する。
【0017】
本発明の2層タイプ化粧水は、メーキャップを施した肌の上に適用される仕上げ用化粧料として用いることが好ましい。
【0018】
本発明の2層タイプ化粧水の適用方法は特に限られない。例えば、手やパフ等の適用具にとって塗布してもよいし、スプレー、エアゾール又はミスト状に噴霧してもよいが、ミスト状に噴霧するタイプに好適に用いられる。
【0019】
本発明の2層タイプ化粧水は、ミスト状に噴霧するため、エチルヘキシルグリセリン、テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットから選択される1種又は2種以上を配合することが好ましい。
【0020】
エチルヘキシルグリセリンはグリセリンにエチルヘキサノールがエーテル結合した化合物であり、通常化粧料に配合する成分であれば特に限定されない。
【0021】
市販のエチルヘキシルグリセリンとしては、BEG-800(B&B社製)、CleanBio-EHG(Kolon Life Science社製)、dermosoft EHG(Evonic Dr. Straetmans社製)、Lexgard E(Inolex Chemical社製)、Microcare Emollient EHG(ソー・ジャパン社製)、sensiva SC 50 JP(Schule & Mayr社製)、Sharomix E-50(Sharon Laboratories社製)、グリモイスト(日油社製)、アデカノール NHG(ADEKA社製)、1sasKINE 50(SACHEM社製)などがあげられる。
【0022】
テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットは、ソルビットにエチレンオキシドを付加反応して得られたポリオキシエチレンソルビットと脂肪酸とのエステル化反応により得ることができる。
【0023】
構成する脂肪酸残基は、例えば、炭素数6~18の脂肪酸残基である。かかる脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、混合脂肪酸由来の脂肪酸残基も用いることができ、例えば、カプリル酸/カプリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の脂肪酸残基が挙げられる。これら脂肪酸の中でもオレイン酸及び/またはイソステアリン酸が好ましい。
【0024】
ソルビット1分子に対するオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは3~80であり、特に好ましくは6~60であり、更に好ましくは20~60である。平均付加モル数が小さすぎると、眼に沁みやすくなることがあり、平均付加モル数が大きすぎると、化粧持ち効果が低下することがある。
【0025】
テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットは、例えば化粧品表示名称としてテトライソステアリン酸ソルベス-30、テトライソステアリン酸ソルベス-40、テトライソステアリン酸ソルベス-50、テトラオレイン酸ソルベス-30、テトラオレイン酸ソルベス-40、テトラオレイン酸ソルベス-60等があげられる。
【0026】
テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットは、市販のものを用いることもできる。例えばテトライソステアリン酸ソルベス-30としては、ユニオックスST-30IS(日油社製)等が、テトラオレイン酸ソルベス-30としては、NIKKOL GO-430NV(日光ケミカルズ社製)、ユニオックスST-30E(日油社製)、テトラオレイン酸ソルベス-40としては、EMALEX PESO-440(日本エマルジョン社製)、NIKKOL GO-440V(日光ケミカルズ社製)、ユニオックスST-40E(日油社製)等が、テトラオレイン酸ソルベス-60としては、NIKKOLGO-460V(日光ケミカルズ社製)、ユニオックスST-60E(日油社製)等があげられる。
【0027】
本発明の2層タイプ化粧水は、その剤型から、水を必然的に含有する。水の含有量は、2層タイプ化粧水全量に対し、50~95質量%が好ましい。
【0028】
次に本発明の2層タイプ化粧水に配合し得る任意成分について記載する。
【0029】
本発明の2層タイプ化粧水は、結晶セルロース以外の粉体を配合することができる。係る粉体としては、ベントナイト、スメクタイトなどの粘土鉱物、タルク、亜鉛華、マイカ、雲母、シリカ、ヒドロキシアパタイト、窒化硼素、硫酸バリウムなどが挙げられる。2層分離のしやすさから、ベントナイトが好ましく用いられる。
【0030】
本発明の2層タイプ化粧水は、保湿剤を配合することができる。保湿剤を配合することにより、良好な使用感を得ることができる。かかる保湿剤としては、化粧水に配合し得るものであれば特に限定されないが、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体等のポリオール類及びその重合体;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールアルキルエーテル類;ソルビット、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコール類;グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、トレオース、キシロース、アラビノース、フコース、リボース、デオキシリボース、マルトース、トレハロース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、グルコン酸、グルクロン酸、シクロデキストリン類(α-、β-、γ-シクロデキストリン、及び、マルトシル化、ヒドロキシアルキル化等の修飾シクロデキストリン)、β-グルカン、キチン、キトサン、ヘパリン及び誘導体、ペクチン、アラビノガラクタン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、エチルグルコシド、メタクリル酸グルコシルエチル重合物若しくは共重合物等の糖類及びその誘導体類;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム;コンドロイチン硫酸ナトリウム;ムコイチン硫酸、カロニン硫酸、ケラト硫酸、デルマタン硫酸;シロキクラゲ抽出物、シロキクラゲ多糖体;フコイダン;チューベロース多糖体、天然由来多糖体;クエン酸、酒石酸、乳酸等の有機酸及びその塩;尿素;2-ピロリドン-5-カルボン酸及びそのナトリウム等の塩;ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、β-アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、ヒスチジン、タウリン等のアミノ酸類及びその塩;コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド等の蛋白ペプチド類及びその誘導体;パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等のアシル化ペプチド類;シリル化ペプチド類;乳酸菌培養液、酵母抽出液、卵殻膜タンパク、牛顎下腺ムチン、ヒポタウリン、ゴマリグナン配糖体、グルタチオン、アルブミン、乳清;塩化コリン、ホスホリルコリン;胎盤抽出液、エラスチン、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス、コンフリーエキス、シルクエキス、イザヨイバラエキス、セイヨウノコギリソウエキス、ユーカリエキス、メリロートエキス等の動物・植物抽出成分、天然型セラミド(タイプ1、2、3、4、5、6)、ヒドロキシセラミド、疑似セラミド、スフィンゴ糖脂質、セラミド及び糖セラミド含有エキス等のセラミド類が挙げられる。
【0031】
これらの保湿剤は、単独又は2種以上を組み合わせて、ローション剤全量に対して0.1~40質量%、好ましくは5~35質量%の割合で配合することができる。配合量が0.1質量%を下回ると、保湿効果が認められない場合がある。配合量が40質量%を越えると、使用時にべたつく場合がある。
【0032】
本発明の2層タイプ化粧水には、上述の必須成分、任意成分の他に、必要に応じて通常2層タイプ化粧水に配合される、水性成分、油性成分、色素、界面活性剤、増粘剤、美容成分、香料、高分子物質、防菌防黴剤、アルコール類、上記以外の粉体、生体由来成分等を適宜配合することができる。
【0033】
本発明の2層タイプ化粧水は、通常の製造方法により製造することができる。
【実施例0034】
[マスクによる擦れに対する耐性評価]
マスクによる擦れに対する耐性評価方法として、雑誌LDK2020年8月号(出版社晋遊舎)を参考に下記の手順で評価した。
市販のファンデーション0.01gを黒色の人工皮革1.5×1.5cmの区画に塗布後、10分間乾燥させた。
本願発明の実施例、比較例をスプレーボトルに充填し、人工皮革から20cm離れた位置から1プッシュ塗布後、10分間乾燥させた。
続いてスプレー容器にそれぞれ充填した、精製水とオレイン酸を同様に塗布した。
人工皮革の上に不織布マスクをセットし、上下を磁石で挟み込み、マスクと人工皮革を引き抜いた。
(目視評価)
マスクに色移りしたファンデーションを目視により、下記の基準で評価した。
〇:メイクキープ力が高い
△:メイクキープ力が少しある
×:メイクキープ力なし
(残存率)
評価した人工皮革の皮溝に残ったFDの面積率を、マイクロスコープにて算出し、下記の基準で評価した。
〇:50%以上残存
△:45%以上残存
×:45%未満残存
【0035】
[ミストの状態]
本願発明の本願発明の実施例、比較例をスプレーボトルに充填し、ミストを噴射した際の細かさ、液だれのなさを下記の基準で評価した。
〇:細かいミストがきれいにでる
△:ミストが若干粗く、少し液だれする
×:ミストが粗く、液だれする
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示した通り、プルランを配合することにより、マスクによる擦れに対する耐性が向上し、化粧持ちが改善することが示された。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示した通り繊維状セルロースを配合した比較例13は、マスクによる擦れに対する耐性、ミストの状態ともに良好なものではなかった。また、エチルヘキシルグリセリン、テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットを配合した実施例3~6は、ミストの状態が良好であった。