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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165495
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221025BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20221025BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/493
H02M3/28 H
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070846
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長野 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 宏二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】西澤 是呂久
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730BB27
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE07
5H730FG07
5H770AA05
5H770CA01
5H770CA05
5H770DA23
5H770DA41
5H770HA03Z
(57)【要約】
【課題】単相電力脈動に伴う各セル変換器のコンデンサの大型化の抑制。
【解決手段】複数のクラスタと、前記複数のクラスタを制御する制御部と、を備え、前記複数のクラスタは、それぞれ、一対の直流端子と、一対の交流端子と、一又は複数のセル変換器と、を有し、前記セル変換器は、それぞれ、一対の直流セル端子とコンデンサとの間に接続された直流-直流変換器と、一対の交流セル端子と前記コンデンサとの間に接続された直流-交流変換器と、を有し、前記セル変換器のそれぞれの前記一対の直流セル端子は、前記一対の直流端子に並列に接続され、前記セル変換器のそれぞれの前記一対の交流セル端子は、前記一対の交流端子の間で直列に接続され、前記制御部は、前記複数のクラスタのそれぞれにおいて、前記一対の交流端子側の交流電力の脈動と同じ周波数で、前記一対の直流端子側の直流電力を脈動させて、前記コンデンサの電圧リプルを低減する、電力変換装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に結線された複数のクラスタと、
前記複数のクラスタを制御する制御部と、を備え、
前記複数のクラスタは、それぞれ、
一対の直流端子と、一対の交流端子と、一又は複数のセル変換器と、を有し、
前記セル変換器は、それぞれ、
コンデンサと、一対の直流セル端子と、一対の交流セル端子と、前記一対の直流セル端子と前記コンデンサとの間に接続された直流-直流変換器と、前記一対の交流セル端子と前記コンデンサとの間に接続された直流-交流変換器と、を有し、
前記セル変換器のそれぞれの前記一対の直流セル端子は、前記一対の直流端子に並列に接続され、
前記セル変換器のそれぞれの前記一対の交流セル端子は、前記一対の交流端子の間で直列に接続され、
前記制御部は、前記複数のクラスタのそれぞれにおいて、前記一対の交流端子側の交流電力の脈動と同じ周波数で、前記一対の直流端子側の直流電力を脈動させて、前記コンデンサの電圧リプルを低減する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記交流電力の脈動に応じて変化する補償電力を前記直流電力に重畳する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記補償電力の大きさを補償係数に応じて調整する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記コンデンサの電圧リプルの目標値に応じて、前記補償係数を調整する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記補償係数は、固定値である、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記交流電力の脈動を抽出し、抽出した脈動に応じて前記補償電力を調整する、請求項2から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記一対の交流端子側の電圧及び電流を測定し、測定した電圧および電流から前記交流電力の脈動を抽出する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記一対の交流端子側の電圧及び電流を測定した結果から、正相電圧、正相電流、逆相電圧及び逆相電流を算出し、算出した正相電圧、正相電流、逆相電圧及び逆相電流から、前記交流電力の脈動を抽出する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数のクラスタが接続される電力系統の各相の系統電圧の位相を取得し、取得した各相の系統電圧の位相に応じて、前記直流電力を脈動させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直列に接続された複数のセルを相ごとに備え、それらの複数のセルは、それぞれ、DC/DCコンバータと、インバータと、DC/DCコンバータとインバータとの間に接続されたコンデンサとを有するマルチセル電力変換装置が知られている。このマルチセル電力変換装置は、インバータの出力端を直列接続することで、高電圧に対応する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-64436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各相のセルは単相電力変換器として機能するので、各セルのコンデンサで単相電力脈動が発生する。各セルのコンデンサ容量が比較的小さい場合、各セルで起きる単相電力脈動によりコンデンサの電圧リプルが大きくなる。この電圧リプルが過大になると、各セルの交流側に流れる交流電流のひずみが大きくなるおそれがある。コンデンサの電圧リプルを小さくするため、各セルのコンデンサの容量を増やすと、各セルのコンデンサが大型化し、ひいては電力変換装置の大型化を招く。
【0005】
本開示は、単相電力脈動に伴う各セル変換器のコンデンサの大型化を抑制可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
相互に結線された複数のクラスタと、
前記複数のクラスタを制御する制御部と、を備え、
前記複数のクラスタは、それぞれ、
一対の直流端子と、一対の交流端子と、一又は複数のセル変換器と、を有し、
前記セル変換器は、それぞれ、
コンデンサと、一対の直流セル端子と、一対の交流セル端子と、前記一対の直流セル端子と前記コンデンサとの間に接続された直流-直流変換器と、前記一対の交流セル端子と前記コンデンサとの間に接続された直流-交流変換器と、を有し、
前記セル変換器のそれぞれの前記一対の直流セル端子は、前記一対の直流端子に並列に接続され、
前記セル変換器のそれぞれの前記一対の交流セル端子は、前記一対の交流端子の間で直列に接続され、
前記制御部は、前記複数のクラスタのそれぞれにおいて、前記一対の交流端子側の交流電力の脈動と同じ周波数で、前記一対の直流端子側の直流電力を脈動させて、前記コンデンサの電圧リプルを低減する、電力変換装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、単相電力脈動に伴う各セル変換器のコンデンサの大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
図2】電力変換装置の入出力電力とコンデンサ電圧との関係の一例を示すタイミングチャートである。
図3】直流-直流変換器(コンバータ側)と直流-交流変換器(インバータ側)との間のコンデンサにおける入出力電力の関係を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る制御部の構成例を具体的に示すブロック図である。
図6】第1実施形態に係る制御部による動作例を示すタイミングチャートである。
図7】第1実施形態に係る制御部による動作例を全体的に示すタイミングチャートである。
図8】第2実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。
図9】正相逆相分離部の構成例を示すブロック図である。
図10】第2実施形態に係る制御部の第1構成例を具体的に示すブロック図である。
図11】第2実施形態に係る制御部の第2構成例を具体的に示すブロック図である。
図12】第3実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。
図13】第3実施形態に係る制御部の構成例を具体的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。図1に示す電力変換装置10は、入力された直流電力を三相の交流電力に変換して三相の電力系統14に出力する。電力変換装置10は、複数のクラスタ11(11U,11V,11W)、複数のリアクトル40(40U,40V,40W)及び制御部30を備える。
【0011】
複数のクラスタ11は、相互に結線され、図1に示す例では、スター結線されている。複数のクラスタ11は、それぞれ、一対の直流端子a,bと、一対の交流端子c,dと、一又は複数のセル変換器20と、を有する。図1に示す例では、複数のクラスタ11は、それぞれ、同一構成の3つのセル変換器20を有し、複数のリアクトル40を介して電力系統14に連系している。電力系統14への連系は、不図示の変圧器を介してもよい。
【0012】
複数のクラスタ11のそれぞれの一対の直流端子a,bは、共通の直流経路に並列に接続される。U相のクラスタ11Uの交流端子cは、リアクトル40Uを介して電力系統14のU相電力線に接続される。V相のクラスタ11Vの交流端子cは、リアクトル40Vを介して電力系統14のV相電力線に接続される。W相のクラスタ11Wの交流端子cは、リアクトル40Wを介して電力系統14のW相電力線に接続される。各相のクラスタ11の交流端子dは、中性点で相互に接続される。
【0013】
各相の複数のセル変換器20は、共通の直流経路から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。各相の複数のセル変換器20は、それぞれ、コンデンサ15と、一対の直流セル端子e,fと、一対の交流セル端子g,hと、直流-直流変換器12と、直流-交流変換器13と、を有する。各相の複数のセル変換器20は、それぞれ、一対の交流セル端子g,hを介して直列に接続されている。
【0014】
複数のセル変換器20のそれぞれの一対の直流セル端子e,fは、自身が属するクラスタ11の一対の直流端子a,bに並列に接続されている。複数のセル変換器20のそれぞれの一対の交流セル端子g,hは、自身が属するクラスタ11の一対の交流端子c,dの間で直列に接続されている。
【0015】
直流-直流変換器12は、一対の直流セル端子e,fとコンデンサ15との間に接続されている。直流-直流変換器12は、一対の直流セル端子e,fから入力される直流電力を所定の電圧の直流電力に変換してコンデンサ15に出力する。直流-直流変換器12は、例えば、絶縁型のDC/DCコンバータである。直流-直流変換器12は、例えば、直流電力を高周波の交流電力に変換するインバータ回路16と、この交流電力を所定の交流電圧に変成する高周波変圧器17と、変成された交流電力を所定の電圧の直流電力に変換するコンバータ回路18とを有する。図1は、直流-直流変換器12がDAB(Dual Active Bridge)コンバータの場合を例示する。
【0016】
コンデンサ15は、直流-直流変換器12と直流-交流変換器13との間の直流リンクの電圧を平滑化する容量素子であり、より具体的には、直流-直流変換器12のコンバータ回路18から出力される電圧を平滑化する。
【0017】
直流-交流変換器13は、一対の交流セル端子g,hとコンデンサ15との間に接続されている。直流-交流変換器13は、コンデンサ15から入力される直流電力を所定の電圧と周波数の交流電力に変換して一対の交流セル端子g,hから出力する単相インバータである。直流-交流変換器13は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路19を有する。
【0018】
インバータ回路16、コンバータ回路18及びインバータ回路19は、それぞれ、複数のスイッチング素子を有する電力変換回路と、その電力変換回路を動作させる不図示の駆動回路部とを有する。スイッチング素子は、例えば、トランジスタと、そのトランジスタに逆並列に接続されるダイオードとを有する。トランジスタの具体例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などが挙げられる。
【0019】
制御部30は、複数のクラスタ11を制御する制御装置であり、例えば、メモリとプロセッサを有する。制御部30の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが動作することにより実現される。制御部30の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0020】
電力変換装置10は、制御部30が複数のセル変換器20のそれぞれに互いに異なる位相で電圧波形を出力させることで、スイッチング素子の耐圧以上の電圧を有し、且つ、高調波が低減されたマルチレベル電圧波形を出力できる。
【0021】
電力変換装置10は、例えば、太陽光発電装置のPCS(Power Conditioning System)、無効電力補償装置(STATCOM)、直流送電システム(HVDC)などに適用可能である。
【0022】
次に、コンデンサ15の電圧リプルについて説明する。なお、考えをわかりやすくするため、各相のセル変換器の個数を1として説明する。
【0023】
図2は、電力系統14の系統電圧と系統電流がそれぞれ正弦波であるときの、電力変換装置の入出力電力とコンデンサ電圧との関係の一例を示すタイミングチャートである。図3は、直流-直流変換器12(コンバータ側)と直流-交流変換器13(インバータ側)との間のコンデンサ15における入出力電力の関係を説明するための図である。図2及び図3は、対称三相負荷に電力を供給したときの、U相の入力電力、U相の出力電力、及びその差分電力(=コンデンサ15に出入りする電力)の関係図を示す。
【0024】
入力力率が1の条件では、瞬時入力電力Pは、
【0025】
【数1】

と表される(例:U相)。ただし,Vは、U相の系統電圧の最大値、Iは、U相の系統電流の最大値、ωは系統角周波数、tは時間である。(1)式から明らかなように、U相の出力電力は、系統角周波数ωの2倍で脈動する。このとき、電力脈動でコンデンサ15に出入りする電力によりコンデンサ15の電圧(コンデンサ電圧EDC)が脈動する(脈動ΔEDC)。
【0026】
コンデンサ15の静電エネルギー変化分ΔEは、
【0027】
【数2】
と表される。
【0028】
(2)式及び(3)式より、コンデンサ電圧リプルDは、
【0029】
【数3】
と表される。U相の系統電圧の最大値VU、U相の系統電流の最大値I、系統角周波数ωおよびコンデンサ電圧EDCは、回路仕様で決定される(固定値)。コンデンサ電圧リプルDを小さくするために、コンデンサ容量Cを増やすと、コンデンサ15が大型化し、ひいては電力変換装置10が大型化してしまう。
【0030】
図1に示す本実施形態では、制御部30は、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動と同じ周波数で、一対の直流端子a,b側の直流電力を脈動させて、コンデンサ15の電圧リプルを低減する。より具体的には、制御部30は、U相のクラスタ11Uの一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動と同じ周波数で、U相のクラスタ11Uの一対の直流端子a,b側の直流電力を脈動させて、U相のクラスタ11Uのコンデンサ15の電圧リプルを低減する。制御部30は、V相のクラスタ11Vの一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動と同じ周波数で、V相のクラスタ11Vの一対の直流端子a,b側の直流電力を脈動させて、V相のクラスタ11Vのコンデンサ15の電圧リプルを低減する。制御部30は、W相のクラスタ11Wの一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動と同じ周波数で、W相のクラスタ11Wの一対の直流端子a,b側の直流電力を脈動させて、W相のクラスタ11Wのコンデンサ15の電圧リプルを低減する。制御部30がこのような制御を行うことで、本実施形態に係る電力変換装置10は、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,dに流れる交流電流のひずみを抑制でき、電力系統14の系統電流に生ずるひずみを抑制できる。複数のクラスタ11のそれぞれのコンデンサ15の電圧リプルが低減されるので、各々のコンデンサ15の容量の増大を抑制できる。その結果、各々のコンデンサ15の大型化を抑制でき、ひいては電力変換装置10の大型化を抑制できる。
【0031】
制御部30は、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動に応じて変化する補償電力を、一対の直流端子a,b側の直流電力に重畳する。制御部30は、各相の当該補償電力を、対応する相の当該直流電力に重畳して、共通の直流経路から入力される直流電力の分配を三相間で調整することで、単相電力脈動でのコンデンサ電圧リプルDを低減する。制御部30がこのような制御を行うことで、本実施形態に係る電力変換装置10は、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,dに流れる交流電流のひずみを抑制でき、電力系統14の系統電流に生ずるひずみを抑制できる。制御部30は、入力電力の分配をクラスタ間で調整し、同じクラスタに属する変換器セルに入力する電力を均等に分配することで、各相のコンデンサ電圧リプルDをより低減できる。
【0032】
制御部30が一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動に応じて各相の一対の直流端子a,bに入力される直流電力を脈動させても、図1に示す回路は三相回路のため、各相の一対の直流端子a,bに接続される直流バス側に与える影響は、ほとんどない。
【0033】
例えば、各相の一対の直流端子a,b側の直流電力の定常分、および、各相の一対の交流端子c,d側の交流電力の定常分が、いずれも、200kWとする。また、U相、V相およびW相の各相の一対の交流端子c,d側の交流電力の脈動分が、それぞれ、200sin2ωt、200sin(2ωt-4π/3)、200sin(2ωt-2π/3)とする(いずれも、単位はkW)。また、αを、1よりも小さい補償係数とする。このとき、制御部30は、U相の直流電力の定常分に、200αsin2ωtの補償電力を重畳し、V相の直流電力の定常分に200αsin(2ωt-4π/3)の補償電力を重畳し、W相の直流電力の定常分に、200αsin(2ωt-2π/3)の補償電力を重畳する。これにより、各相の一対の直流端子a,bに接続される直流バス側に与える影響は、ほとんどない(200αsin2ωt+200αsin(2ωt-4π/3)+200αsin(2ωt-2π/3)=0)。
【0034】
制御部30は、各相の直流電力に重畳する補償電力の大きさを補償係数αで調整する。コンデンサ15の容量を小さくしすぎると、電圧制御の外乱(制御の安定性)の悪化を招くおそれがある。しかしながら、補償係数αを導入することで、そのような悪化を招くおそれを低減できる。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。図4に示す制御部30Aは、上記の制御部30の一例である。制御部30Aは、電流指令部31および補償部32Aを有する。電流指令部31は、コンデンサ15の電圧が所定の目標電圧となるように直流-直流変換器12内の複数のスイッチング素子をオン又はオフさせるための電流指令を生成する。電流指令部31は、各相のクラスタ11の電流指令を補償部32Aに供給する。補償部32Aは、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,dから出力される交流電力の脈動と同じ周波数で同じ位相で変化する補償電力を、一対の直流端子a,bに入力される直流電力に重畳する。補償部32Aは、脈動抽出部33、補償量算出部34及び加算器35(35u,35v,35w)を有する。
【0036】
図5は、第1実施形態に係る制御部の構成例を具体的に示すブロック図である。図6は、各部の構成例を示す波形図である。補償部32Aは、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,dから出力される交流電力の脈動を抽出し、抽出した脈動に応じて、一対の直流端子a,bに入力される直流電力に重畳する補償電力を調整する。補償部32Aは、脈動抽出部33、補償量算出部34及び加算器35(35u,35v,35w)を有する。
【0037】
脈動抽出部33は、電力系統14の系統電流と系統電圧を相ごとに乗算することで、各相の一対の交流端子c,d側の交流電力(各相の系統側の出力電力)を算出する。脈動抽出部33は、各相の系統側の出力電力を合算し、その合算した値を相数(この場合、3)で除算する。脈動抽出部33は、各相の系統側の出力電力から、その除算により得られた値をそれぞれ減算することで、各相の系統側の出力電力の定常分を除去でき、各相の系統側の出力電力の脈動分を抽出する。
【0038】
補償量算出部34は、抽出した各相の脈動分と補償係数αとの積である補償電力を算出する。これにより、各相に入力される直流電力に重畳する補償電力の大きさを補償係数αで調整できる。補償量算出部34は、各相の補償電力を直流バス電圧の測定値でそれぞれ除算することで、各相の電流指令に重畳する補償電流(補償量の一例)を算出する。直流バス電圧は、一対の直流端子a,bに接続される直流経路の電圧でも、一対の直流端子a,b間の電圧でもよい。
【0039】
加算器35(35u.35v,35w)は、各相の電流指令に、対応する相の補償電流を加算することで、各相の補償された電流指令を生成する。
【0040】
制御部30Aは、各相の補償された電流指令から、各相のクラスタ11内の直流-直流変換器12を制御する制御指令を生成する。制御部30Aは、直流-直流変換器12がDABコンバータの場合、一次側と二次側との間の位相差を制御指令として生成する。制御部30Aは、直流-直流変換器12がLLCコンバータの場合、LLCコンバータの動作周波数を制御指令として生成する。LLCコンバータは、変圧器の漏れインダクタンス及び励磁インダクタンスと容量素子のキャパシタンスとによる共振を利用したコンバータである。
【0041】
補償部32Aによれば、図6に示すように、コンデンサ15に出入りする電力の差が小さくなるので、コンデンサ15の蓄積分が減る。コンデンサ15の蓄積分が減るので、コンデンサ15の電圧リプルが低減する。
【0042】
補償量算出部34は、例えば、コンデンサ15の電圧リプルの目標値に応じて、補償係数αを調整することで、コンデンサ15の電圧リプルを効果的に低減できる。コンデンサ15の電圧リプルの目標値は、例えば、上記の(4)式に基づいて決定される。あるいは、補償係数αは、予め決められた固定値でもよく、この場合、補償量算出部34による補償電力の演算量を削減できる。
【0043】
図7は、第1実施形態に係る制御部による動作例を全体的に示すタイミングチャートである。図7に示すように、第1実施形態に係る制御部によれば、各相のコンデンサの電圧リプルを低減できる。
【0044】
図8は、第2実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図8に示す制御部30Bは、上記の制御部30の一例である。制御部30Bは、電流指令部31および補償部32Bを有する。電流指令部31は、第1実施形態と同様である。補償部32Bは、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,dから出力される交流電力の脈動と同じ周波数で同じ位相で変化する補償電力を、一対の直流端子a,bに入力される直流電力に重畳する。補償部32Bは、正相逆相分離部36、脈動抽出部33、補償量算出部34及び加算器35(35u,35v,35w)を有する。
【0045】
補償部32Bは、系統電圧及び系統電流の各々の正相成分と逆相成分から、補償電力を決定する。各クラスタからの出力電力が不平衡の状態では、当該出力電力に脈動が現れるからである。正相逆相分離部36は、系統電圧と系統電流の測定結果から、下式に示す正相電圧、正相電流、逆相電圧及び逆相電流を算出する。
【0046】
【数4】
図9は、正相逆相分離部の構成例を示すブロック図である。正相逆相分離部は、測定された系統電圧と系統電流のそれぞれを、abc相からdq軸変換を行い、正相分と逆相分に分離して、正相電圧、逆相電圧、正相電流および逆相電流を算出する。
【0047】
図10は、第2実施形態に係る制御部の第1構成例を具体的に示すブロック図である。補償部32Baは、上記の補償部32Bの一例である。補償部32Baは、複数のクラスタ11のそれぞれにおいて、一対の交流端子c,dから出力される交流電力の脈動を抽出し、抽出した脈動に応じて、一対の直流端子a,bに入力される直流電力に重畳する補償電力を調整する。補償部32Baは、正相逆相分離部36、脈動抽出部33、補償量算出部34及び加算器35(35u,35v,35w)を有する。
【0048】
脈動抽出部33は、正相逆相分離部36の出力である正相電流と正相電圧とを相ごとに乗算することによって各相の第1電力を算出し、正相逆相分離部36の出力である逆相電流と逆相電圧とを相ごとに乗算することによって各相の第2電力を算出する。脈動抽出部33は、第1電力と第2電力を相ごとに合算することで、各相の正相電力(第1電力と第2電力との和)を算出し、各相の正相電力を相数(この場合、3)で除算する。脈動抽出部33は、各相の正相電力から、その除算により得られた値をそれぞれ減算することで、各相の系統側の出力電力の定常分を除去でき、各相の系統側の出力電力の脈動分を抽出する。
【0049】
図11は、第2実施形態に係る制御部の第2構成例を具体的に示すブロック図である。補償部32Bbは、上記の補償部32Bの一例である。図11の補償部32Bbは、脈動抽出部33の構成が異なる点で図10の補償部32Baと相違するが、機能的には補償部32Baと同じである。
【0050】
図11の脈動抽出部33は、正相逆相分離部36の出力である正相電流と正相電圧とを相ごとに乗算することによって各相の第1電力を算出し、正相逆相分離部36の出力である逆相電流と逆相電圧とを相ごとに乗算することによって各相の第2電力を算出する。脈動抽出部33は、各相の第1電力を合算した値を相数(この場合、3)で除算する。脈動抽出部33は、各相の第1電力から、その除算により得られた値をそれぞれ減算することで、各相の系統側の第1電力の定常分を除去でき、各相の系統側の第1電力の脈動分を抽出する。脈動抽出部33は、各相の第2電力から、その除算により得られた値をそれぞれ減算することで、各相の系統側の第2電力の定常分を除去でき、各相の系統側の第2電力の脈動分を抽出する。
【0051】
脈動抽出部33は、各相の系統側の第1電力の脈動分と各相の系統側の第2電力の脈動分とを合算し、その合算した各相の脈動分を、補償量算出部34に出力する。
【0052】
図12は、第3実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図12に示す制御部30Cは、上記の制御部30の一例である。図12の補償部32Cは、複数のクラスタ11に接続される電力系統14の各相の系統電圧の位相を取得し、取得した各相の系統電圧の位相に応じて、直流電力を脈動させる。補償部32Cは、位相検出部37、基準信号生成部38、補償量算出部34及び加算器35(35u,35v,35w)を有する。図13は、第3実施形態に係る制御部の構成例を具体的に示すブロック図である。
【0053】
位相検出部37は、電力系統14の各相の系統電圧の位相を取得する。基準信号生成部38は、位相検出部37により検出された各相の系統電圧の位相θを用いて、各相の基準信号を生成する。基準信号生成部38は、U相の基準信号sin2θ、V相の基準信号sin(2θ-4π/3)、W相の基準信号sin(2θ-2π/3)を生成する。
【0054】
補償量算出部34は、各相の基準信号と補償係数αとの積である補償電力を算出する。これにより、各相に入力される直流電力に重畳する補償電力の大きさを補償係数αで調整できる。以降の制御内容は、上記の実施形態と同様である。
【0055】
以上、電力変換装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0056】
例えば、絶縁型DC/DCコンバータは、トランスの1次側と2次側のそれぞれにフルブリッジ回路が設けられた構成に限られず、1次側と2次側の少なくとも一方に設けられるブリッジ回路がハーフブリッジ回路でもよい。また、絶縁型DC/DCコンバータは、DABコンバータに限られず、DABコンバータ以外の形式(例えば、LLCコンバータ、フライバック式、フィードフォワード式など)のコンバータでもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 電力変換装置
11U,11V,11W クラスタ
12 直流-直流変換器
13 直流-交流変換器
14 電力系統
15 コンデンサ
16 インバータ回路
17 高周波変圧器
18 コンバータ回路
19 インバータ回路
20 セル変換器
30,30A 制御部
31 電流指令部
32 補償部
33 脈動抽出部
34 補償量算出部
35u,35v,35w 加算器
36 正相逆相分離部
37 位相検出部
38 基準信号生成部
40U,40V,40W リアクトル
a,b 一対の直流端子
c,d 一対の交流端子
e,f 一対の直流セル端子
g,h 一対の交流セル端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13